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欧州リサイクル産業は「法律の操り人形」となるのか?

欧州リサイクル産業協会(EuRIC)の会長であるオリバー・フランシス(Olivier François)氏は、昨年8月にリサイクルインターナショナル紙の取材に対し、「我々リサイクル産業は、政策決定者の奴隷になるだろうWe recyclers will become slaves of policy makers」と発言し、その難しい立場を表した。
この発言は、廃棄物輸指令、包装及び包装廃棄物指令、電池指令、電子機器廃棄物指令、及び使用済み自動車指令、のそれぞれの改訂でリサイクル産業が行ってきた廃棄物管理とリサイクル材の自由な取引に大きな規制が掛かる事が要因である。
フランシス氏はインタビューの中で以下のように語っている。 「誰もがリサイクル業者としての私達に反対しています。私達は世界中で廃棄物の問題を引き起こしている悪者に追いやられています。欧州政府の政策立案者が提案した廃棄物輸送指令の改訂で何をしているのか見て下さい。NGOが私達に対して如何に強力にキャンペーンを行っているかを見てください。そしてヨーロッパの鉄鋼メーカーによるロビー活動を見て下さい。彼等はスクラップの輸出を制限するよう欧州政府に要請しています。『環境保護』は公式の主張ですが、輸出禁止に対する彼らの関心は、量を確保し、価格をコントロールすることを、私達リサイクル産業の人間は皆知っています。」
「今後、使用済み自動車(ELV)指令の改訂により拡大生産者責任が強化される為、自動車メーカーはELVとスクラップ材料の流れをよりコントロール出来るようになります。これは自動車リサイクル産業にとって大きな脅威です。その結果、将来、自動車リサイクル業者は自由な立場ではなくなります。私達は政策立案者が作成したシステムの奴隷になるでしょう。」
http://bit.ly/3JqjL13

廃棄物とスクラップ輸出の大幅な規制を盛り込み1月17日に欧州議会で採択された廃棄物輸送指令を巡っては、1年以上にわたり、リサイクル産業と鉄鋼・製錬メーカー等の素材産業との間で、ロビー活動の戦いが行われてきた。その結果、欧州議会は圧倒的多数で廃棄物とスクラップの輸出を規制する案を支持した。
この結果について、欧州リサイクル産業協会、ドイツ金属貿易業者・リサイクル業者協会(VDM)、欧州廃棄物管理協会(FEAD)と国際リサイクル局(BIR)が相次いで「懸念」を表明した。それに対し、欧州鉄鋼協会(EUROFER)は「前進したがEUは廃棄物の問題を海外に輸出する事を許可すべきではない」と、更なる規制強化を訴えた。
素材メーカー団体と廃棄物管理団体の「場外乱闘」は今も続いており、3月8日に予定されているEUの「重要な原材料法」を巡り、お互いが主張を繰り返している。「重要な原材料法」では、重要な原材料リストに記載された原材料の探査、採掘、供給、生産だけでなく、廃棄物をリサイクルする事で得られる再生原料にも焦点が当てられる事になる。
今までリサイクルされた金属やその他のリサイクル材料を自由に輸出してきた企業には大きな問題となる。輸出品は国際市場で価格が形成されており、域内よりも海外価格が高い場合には、海外に自由に売る事が出来たのだ。しかし今後は、それが自由に出来なくなる可能性が高くなっている。
欧州リサイクル産業協会は、「我々の業者の中には最大で売上の80%、雇用の50%が影響を受ける可能性がある」と苦しい立場を表明している。
フランシス氏の「我々リサイクル産業は、政策決定者の奴隷になるだろう」という発言は、リサイクル産業の明日が政策決定者に委ねられている現実を端的に示し、それは欧州のみならず、いずれ他国や他地域へも広がる事を暗に示唆しているのであろう。

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