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世界の環境関連ニュース(2022年07月第3週)

7月14日に欧州委員会が予定通り、EUの経済見通しを発表しています。EU(加盟27ヵ国)の経済成長は2022年に2.7%、2023年に1.5%成長で、インフレ率は2022年に8.3%、2023年に4.6%と予測しています。これらは、悪化する可能性があります。今後の戦争の進展が不確実な為、成長予測は更なる悪化の可能性がある事を示唆しています。ガス供給の削減や停止等により下振れリスクがある事も認めています。7月13日に通貨ユーロは米ドルと1:1にまで下落しています。一部でしか語られませんが、ドイツ経済圏を中心に過去十数年繁栄した欧州の経済モデルは、ロシアからの安価なエネルギー、EUの移動の自由と移民政策による安価な労働力の供給、中国、ロシア経済との強い結び付き、通貨ユーロをギリシャやリトアニア等の経済小国に採用する事で意図的な「通貨安」政策を採用した、等によるもので、それらがこの戦争で全て反転した、という事です。ロシアをG7 に加えG8にしたり、ある意味過去の地政学を甘く見たマクロ政策の失敗が一気に噴出している、という評価は強ち間違いではありません。今起きている事は、特にドイツ経済圏を中心とするビジネスモデル全体の崩壊なので、景気循環や戦争による一時的なリセッションと同じと考えない方が良いかもしれません。
https://bit.ly/3veianl

大手化学メーカーの「BASF」が廃プラスチックの熱分解で得られる油を精製する為の新しい添加剤の製品ラインナップを紹介しています。プラスチック廃棄物の熱分解(ケミカルリサイクルの1つ)で得られる油には、不純物や工程内で発生する特定の物質の処理が課題となっています。それらに対応する為に数種類の添加剤を開発し「PuriCycle®」としてラインナップしています。欧州では、2019年7月に改訂された欧州指令Directive(EU)2018/852(94/62 / EC改訂)「包装および包装廃棄物に関する指令」により包装廃棄物のリサイクル比率が設定され、 2020年10月に発行したCOMMISSION DELEGATED REGULATION (EU) 2020/2174「廃棄物の輸送に関する欧州議会および理事会の規則」によりプラスチック廃棄物が非OECD加盟国への輸出が禁止されています。更に2021年1月に欧州委員会が示したEU Plastic Packaging Levyの指針によりプラスチック包装税(リサイクルできないプラスチックへの課税)が近い将来に実施される事が決まっており、機械的なリサイクルだけでは対応できない軟質系のプラスチックのリサイクルの為に、熱分解を含むプラスチックのケミカルリサイクルへの投資が急速に増えています。
https://bit.ly/3PbFBp8

マッキンゼー&カンパニーが「ヨーロッパにおける繊維リサイクルの拡大 – 廃棄物を価値に変える」(Scaling textile recycling in Europe—turning waste into value)という論文を掲載しています。欧州の繊維廃棄物の最大の発生源は、衣類や家庭用繊維製品の廃棄物で、全体の約85パーセントを占めています。欧州だけでなく、その他の地域でもこれらの繊維廃棄物の殆どは焼却、若しくは埋め立てによって最終的に処理されています。論文では、これらの最終廃棄物を減らす為に、繊維をリサイクルして別の製品にする繊維間リサイクルを推奨しており、2030年に総繊維廃棄物の18〜26パーセントを繊維間リサイクルにする必要を示しています。これを達成する為には、2030年までに60億ユーロから70億ユーロの設備投資が必要になる、と予測しています。投資は、繊維の収集、選別、リサイクルを含むバリューチェーン全体で行う大規模なものが必要である、としています。
https://mck.co/3APkDIk

S&Pグローバルが銅の将来需給に関する重要な調査結果を公表しています。この調査によると、ネットゼロを2050年までに達成する為のエネルギー転換に必要な銅の需要と将来の銅供給との間に大きな隔たりが生じる事を報告しています。S&Pグローバルのダニエル会長は「世界は短期間でこれほど多くの銅を生産したことが無い。2035年までに世界の銅需要が倍増すると、大幅な不足が生じるだろう」との見解を述べています。世界全体の設備稼働率が上昇し、更に銅のリサイクルが史上最高のレベルで行われたと仮定しても、銅市場は2030年代のほとんどを通じて供給不足となり、2035年には約160万トンが不足しその後も不足が続く、としています。このような需給ギャップは、世界経済全体に広範な影響を及ぼし、エネルギー転換産業と非エネルギー転換産業の両方のサプライチェーンを混乱させる、と研究は結論づけています。短期的には3個所の銅鉱山の操業開始と世界の景気低迷により価格が下落する予測が出ていますが、ネットゼロを推進する為には中長期的には銅はかなり高価な金属にならざるを得ないようです。
https://bit.ly/3ySMW5T

Schwalbe(シュワルベ)ブランドで有名な自転車用のタイヤメーカーである「Ralf Bohle GmbH」が、タイヤリサイクルの革新的な企業である「Pyrum Innovations AG」と提携してタイヤ・トゥー・タイヤのリサイクルに乗り出す事を、フランクフルトで開催された世界最大の自転車見本市Eurobikeで発表しています。リサイクル技術はケルン工科大学とPyrum Innovationsが共同で開発したもので、タイヤを粉砕しゴムの顆粒、繊維、スチールに分離後にゴム顆粒を熱分解しガス化するものです(無酸素状態で700度C)。また、熱分解コークスを使用して、タイヤ用のリサイクルカーボンブラック(rCB)を作成します。残りはオイル分となり、それらは再生繊維を作るために使用します。
https://bit.ly/3aMheiM

最近は「Heatflation(ヒートフレーション)」という言葉がしばしば使われるようになっています。熱波による農作物収量の低下によって引き起こされる食料価格の値上げです。戦争による農作物や肥料の供給問題に加え輸送費の高騰、更に今年は欧米の両方で熱波が比較的長期に観測される地域があり、欧州では農作物の収量予測が毎月少しずつ減っています。特に欧州と英国は春先の降水量の減少から、農作物の育成にも問題を抱える地域が増えつつあります。米国の専門家の一部は、9月頃に食料価格の高騰がピークを迎える可能性を示唆しています。スリランカが例ですが、食料を他国に頼っている国は、食料インフレが大きな問題となっています。これが第二の地政学に発展するのでは、という論調も欧米で報道されるようになっています。
https://bit.ly/3v1BIv0
https://bit.ly/3v1nCtn

Recycling Todayが米国での鉄スクラップの取引を追跡する「MSA Inc.」が提供する『Raw Material Data Aggregation Service(RMDAS)』の最新の動向を掲載しています。米国の製鉄所がプライムグレードの鉄スクラップの購入に支払った額は、6月20日から7月19日の1ヵ月とその前の1ヶ月では23%も下落しているという事です。解体プロジェクトは継続しており、HMSのヤード持ち込みは継続していますが、不動産所有者が鉄鋼価格の回復を待つ為に、解体活動が低下し始めている、という事です。これによりフローが減少し、供給が減る事で価格が持ち直す期待があるようです。輸出市場は依然として不安定で、東海岸のトルコ向けは前年比で2.8%減少、西海岸の韓国向けは3.4%減少した可能性を示唆しています。
https://bit.ly/3PtLm1y
https://bit.ly/3znZdkm

同じくRecycling Todayからですが、Davis Indexによると中国政府が鉄鉱石の貿易に参入する為にstate-owned enterprise (SOE:国有企業)を設立した事が伝えられています。これは、海外の中国企業から鉄鉱石の生産と購入のサプライチェーン全体を監督するための企業で、中国鉱物資源グループ(CMRG)が設立したSOEである、と伝えています。同社は30億ドル(約4000億円)近くの資金を調達しており、海外での鉄鉱石の採掘活動を監督する、とのことです。ブルームバーグや他のメディアによると、CMRGの主要幹部の1人は鉄鋼メーカーの宝鋼集団の出身で、もう1人は中国アルミニウム株式会社(Chalco)の元取締役会議長です。CMRGの調達モデルが鉄だけでなく国内の他の金属産業(銅やアルミ)に浸透するかどうかを見守っている、という事です。
https://bit.ly/3OrdfpH
https://bit.ly/3cxpRy8

独自の亜臨界~超臨界水による加水分解を用いた廃フラスチックのケミカルリサイクル技術(HydroPRS技術)のライセンサーである英国の「Mura Technology」と米国「ダウ・ケミカル」が米国とヨーロッパに複数のプラスチックのケミカルリサイクル施設を建設する計画を発表しています。2030年までに合計60万トンのリサイクル能力が追加され、HydroPRS技術の拡張が可能になる、と両社は述べています。フィルムやポット等の機械的なリサイクルが困難な軟質系の多層プラスチックのリサイクルを目的としています。水を高温(300〜400°C)高圧力(200〜300 bar)で加水分解に利用する水熱液化(Hydrothermal liquefaction:HTL)技術は日本を始め、海外でも多く研究がされていますが、商業ベースでライセンスを大規模に行っているのは、英国のMura Technology社が有名です。
https://bit.ly/3PFjcAi

メジャーなメディアではありませんが、Real Clear Marketsが欧州景気について過去の事例を踏まえた分析をしていますので、リンクを貼ります。記事の執筆者はJeff Snider氏で、Atlas Financialのチーフ・ストラテジストであり、ポッドキャストEurodollar Universityの共同ホストです。タイトルは「欧州の利上げは世界経済の死へのキス」というものです。過去の分析から、欧州政府の政策担当者は経済的な変調を一時的なものと見做す傾向が強く、対応が後手に回る、また結局(欧州経済)は原油(エネルギー)価格が全てに勝るという教訓(oil-over-everything)を今回も活かしてないというものです。また、Politicoが似たような分析をしており、欧米の首脳が相次いで 中東からの代替供給を模索する努力を行ったが、何れも大部分は失敗し、石炭火力発電所はEU全体で再び稼働し、産業は燃料油に切り替え、排出規制に関する気候政策がスローダウンしている事を伝えています。両記事共に、過去の事例もあり、代替ソースの政策変更(OPECが大増産する等)が無い限り、この状況は思ったよりも続くと結論づけています。
https://bit.ly/3zq2Fec
https://politi.co/3zokMRY

鉱業技術の専門ウェブサイトであるMining Technologyが「ヨーロッパと重要な金属供給ギャップ」というタイトルで拡大するクリーンエネルギー向けの非鉄金属の需給のアンバランスについて記載しています。記事によると、クリーンエネルギーに向けた重要な金属の供給ギャップが拡大している為、欧州の再生可能エネルギーの目標は危険に晒されている、としています。国際エネルギー機関STEPSとSDSシナリオでは、クリーンエネルギー技術が現在の世界の脱炭素目標を達成する為には、年率10%〜40%で成長する必要があります。欧州では、2030年までに、エネルギー転換の目標を達成する為には、亜鉛が年10%〜15%、アルミが30%、銅が 35%、シリコンが 45%、ニッケルが100%増となる事が必要で、更に3倍近いコバルトが必要になります。新しい鉱山の開設には通常約10年から20年掛かり、多額の設備投資が必要で、短期間に需要を満たすことは困難、としています。
https://bit.ly/3RTtQFB

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