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NEWSCONの気になるNEWS(2024年9月第3週)

ロシアのプーチン大統領は欧米の制裁措置への対応として、ニッケル、ウラン、チタンの輸出制限の可能性を示唆しました。これを受けてニッケル価格は2.6%上昇し、ウラン採掘会社の株価も上昇しました。ロシアは世界のウランおよび核燃料サイクル、特にウラン濃縮市場を支配しています。ロシアは世界のウラン濃縮能力の約40~46%を保有し、2023年には世界の濃縮ウラン輸出市場の約35%を占めています。欧米は多くの制裁をロシアに課していますが、濃縮ウランは対象外です。米国は濃縮ウランの約27~28%をロシアから輸入し、EUも約26~31%はロシアに依存しています。特にロシア産ガスが途絶え、周辺国に電力を輸出しているフランスは2022年以降、ロシア産濃縮ウランの輸入を大幅に増加させました。インドと中国は原子力発電や原子炉設置を大幅に増やす予定で、ロシアは既に欧米を顧客として持たなくとも、将来の展望が開け始めています。鉄鋼のグリーン化に欠かせない非化石電力である原子力発電について欧米は大きな岐路に立たされそうです。これで水素の話題がまた活発になりそうです。
https://energynews.pro/en/russia-may-restrict-exports-of-uranium-titanium-and-nickel/

インドの多国籍鉱業会社Vedantaは、EV電池をターゲットとした硫酸ニッケルの生産を増強します。同社は北東アジアにおけるEV用バッテリー材料の需要増加に対応する為、ニッケルと硫酸ニッケルの生産量を増やす計画を発表しました。インドのEV市場はまだ発展途上ですが、EV電池材料で国際的なプレゼンスを高める計画です。更にインド政府に対して、硫酸ニッケルの輸入関税を撤廃する為に日本と韓国と交渉するよう求めています。中国もインドも政府と一体となったEV産業戦略に動いており、電池材料は欧米の私企業による対抗は限界が近づいています。
https://www.vedantaresources.com/

過去10年でEUの鉄スクラップ輸出と輸入は大きく変動しました。輸出は2013年から2021年まで増加し、2022年以降は減少に転じました。2021年のピーク時には年間1,943万トンの鉄スクラップを輸出しました。しかし今後2021年のピークを超える可能性は非常に低いと見られています。2035年にはEUの電炉生産能力が1億~1億1000万トンに達すると予測されている為です。EUの鉄鋼及びスクラップ業界の主な傾向は、3つに集約されると見られています。それらは鉄鋼メーカーによるサプライチェーンの確保の為のスクラップ会社の買収と垂直統合、EU市場におけるスクラップの収集、選別、処理への投資の増加、そしてEUによる貿易規制の厳格化で世界市場におけるスクラップの入手問題の増大です。電炉の本格投資は始まったばかりで、後4-5年で大幅な域内需要の増加が表面化すると見られています。
https://gmk.center/en/infographic/eu-scrap-market-balance/

GSはリチウム市場に対して弱気な見方を維持しており、2024年には世界の供給過剰が26%、2025年には57%になるとの予測を出しました。CATLの生産削減は一時的な価格下支えとなるかもしれませんが、需給見通しを根本的に変えるには開発プロジェクトの大幅な削減が必要だと分析しています。GSは現在のリチウムのスポット価格は、供給側の大きな生産削減反応を引き起こすほど低くはないと見ています。リチウムの全体的な見通しは依然として非常に「ネガティブ」であると強調しました。
https://oilprice.com/Metals/Commodities/Why-Goldman-Sachs-is-Still-Bearish-on-Lithium.html

物議を醸してきたEUによる中国製EVへの追加関税ですが、欧州委員会は中国のEVメーカーによるEUへの「最低輸入価格」の提案を全て拒否しました。これは中国メーカーが高関税を回避する為に余りにも安く販売しないよう、自ら最低価格を設定する、という提案でした。調査を行っている欧州委員会は複数の中国EV輸出業者が価格保証書を提出した事を認めました。欧州委員会はEUの自動車輸入関税10%に加えて、中国で製造されたEVに最大35.3%の追加関税を提案予定です。この提案はEU加盟27ヵ国による投票にかけられます。EU人口の65%を占める15ヵ国の特別多数が課税に反対票を投じない限り、10月末迄に実施される為、追加関税の実施の可能性は高いと見られています。何らかの報復措置がありそうです。
https://www.reuters.com/business/autos-transportation/eu-says-it-has-rejected-minimum-price-offers-chinese-ev-exporters-2024-09-12/

インド政府はグリーンスチール製造に向けた「目標」を発表しました。計画を達成する為に必要な投資額は2,830億ドルと膨大な額で、戦略の主な柱は再生可能エネルギーの割合を2022年の7.2%から2030年には43%に引き上げることです。グリーンスチールの普及の為に生産者とグリーン鉄鋼製品への課税引き下げ、高級自動車メーカーへのグリーン材料の使用義務化が検討されています。費用はこれだけではなく、鉄鋼生産のプロセス移行のコストが追加で必要となり、その額は1,500億ドルになると予測されています。これだけ超巨額な資金を捻出できるかは疑問ですが、過去の中国の様に今、インドは国家をあげて鉄鋼部門の国際競争力強化を推進しています。
https://www.manufacturingtodayindia.com/india-sets-283-billion-investment-target-for-green-steel

スウェーデンの新興企業でグリーンスチールのみを製造するH2グリーンスチールは、社名をStegraに変更しました。同社はグリーン水素とDRIによる超低炭素鋼の製造を事業としています。しかし工場を商業ベースにスケールアップする為の技術的課題が山積みで、スウェーデンの工場拡張は遅れています。今まで集めた総投資額はEUイノベーション基金からの公的援助の2億5000万ユーロを含む65億ユーロ(約1兆円!)です。それでも未だに量産品での採用はごく微量に留まっています。グリーン鋼は価格が高く、需要も少なく、水素製造の十分なグリーン電力供給にも問題を抱え、更に鉄鋼業界特有の10~15年の投資回収サイクルがあり、本当に投資を回収できるのか疑問視されるようになってきました。今回の社名変更の理由は表向きには「事業拡張」ですが、本音は生産を拠点を補助金と天然ガスや太陽光資源の豊富なカナダ、米国、ポルトガルに移す際に、商標(屋号)を取り易くする為と推測されています。
https://stegra.com/

欧州自動車メーカーの現状での1つの生命線とも言える2025年までの自動車のCO2削減目標の2年延期要求は、欧州委員会によって否定されました。EUの自動車、及びバンはCO2平均排出量を2025年には2021年比で15%削減する必要があります。欧州自動車生産者協会はEUの2025年目標に従わなかった場合、最大160億ユーロの罰金を課せられる可能性があると警告し、2年の延期を要望していました。
https://www.euractiv.com/section/electric-cars/news/eu-commission-rebuffs-car-industry-calls-to-delay-co2-targets/

リサイクル業界向けのAIとコネクテッドな選別装置を開発するPellenc ST は、AIで故紙の仕分けを最適化するソリューションを発表しました。開発したAIソリューションは、CNS Brainと名付けられています。CNS Brain は、同社のMistral+ CONNECT、及びCOMPACT+ 製品のアドオンとして後付けが可能です。現在、欧州だけでなく、世界各地で新聞や雑誌の数は減少しています。しかしEコマースの発展により段ボール量は急増しています。また紙のリサイクル率も向上しています。こうした要望に応える為に現在ソーティングにおけるAIの開発と採用が増えています。
https://www.pellencst.com/cns-brain-paper-sorting/

最も注目されてきた選挙後の欧州政府の26人の主要閣僚ポストがフォンデアライエン欧州委員長から指名されました。正式には議会承認が必要ですが、慣例的にほぼ決まります。EUの気候変動と独占禁止政策を主導する最高責任者に指名されたのは元スペインの環境大臣で社会主義者のテレサ・リベラでした。フランス、イタリア等の主要経済国からの重要閣僚ポストは減り、他の加盟国と女性閣僚が主要ポストの半数を占める人事となっています。今回、少し報復的な人事があり、フォンデアライエン氏の男女平等候補者指名要請を無視したいくつかの加盟国からの代表は彼らが求めていた「重要な経済ポスト」を得られませんでした。フォンデアライエンは本来理想主義者では無いのですが、2期目の選出を巡り様々な駆け引きがあり、この様になったと考えられます。これが続くと、次の選挙でまた右傾化が顕著になるという流れになりそうです。
https://www.theguardian.com/world/2024/sep/17/spain-socialist-teresa-ribera-eu-role-climate-antitrust-european-commission-ursula-von-der-leyen

欧州では投資会社がリサイクル関連企業を買収するケースが増えています。オランダの廃棄物選別・リサイクル技術専門企業Bollegraafグループは金融投資会社のSumma Equityによって買収される事になりました。Summa Equityは最近フィンランドのエネルギー企業Fortumのリサイクル・廃棄物管理部門の大部分を買収する契約を結んだばかりです。Fortumは欧州で初となる大規模なLIBの湿式製錬工場を稼働させた企業です。Bollegraafはオランダ、ドイツ、イギリスに拠点を持つ、多国籍のリサイクルエンジニアリング企業で従業員は約350人規模になります。
https://www.chemanalyst.com/NewsAndDeals/NewsDetails/summa-equity-takes-majority-stake-of-bollegraaf-30348

バンカメとBHPが銅の予測に強気の姿勢を見せました。BHPはAIの急速な普及スピードと鉱山開発の遅れから、現在の状況は一時的なもので、銅の需給に強気な見解を示しています。バンカメも2025年迄に銅は1トン当たり1万ドルを超えると予測しています。更にFRBの利下げ(0.5%)により銅価格が高止まりすると予想し、楽観的な見通しを維持しました。国際価格に大きな影響のある中国に関しては、送電網への投資が住宅部門からの需要低下を相殺し、銅価格を支えると見ています。
https://www.mining.com/bank-of-america-sees-copper-price-surging-above-10000-iron-ore-slipping-below-80-by-2025/


インドの石油相は、今後20年間でインドは世界のエネルギー需要の伸びの最大35%を牽引すると自信を見せています。また再生可能エネルギーへの転換も大幅に増やす計画です。再生可能エネルギー大臣は今後、複数の銀行が再エネ産業に総額3,860億ドルの投資を行うと約束しています。同国の試算によれば、2050年迄にインドの天然ガス消費量は2022年の3倍以上の232億立方フィート/日に達する見込みです。現在、インドはロシア産の石油を「爆食い」しており、欧米の制裁にも関わらず7月にインドは中国を抜いてロシア原油の最大の購入国となりました。データによると、インドの7月の輸入総額の内、過去最高の44%がロシアからのものでした。ロシアからの石油輸入量は7月に日量207万バレル(こちらも過去最高)に達しています。インドは世界でも景気(経済発展)がイケイケの数少ない国の1つです。
https://www.energyconnects.com/opinion/features/2024/september/gastech-2024-opens-with-geopolitical-perspective-from-top-ministers-of-five-pivotal-nations-in-global-energy-production-and-trade/

EV Market Reportは、欧州のEV充電インフラは普及ペースが減速しており、地域格差が著しい事を報告しています。欧州はEV普及で他地域をリードしていますが、充電インフラの拡張は遅れており、多くの市場がEV所有者の需要を満たすのに苦労しています。かつてはEV導入の先駆者だったオランダも現在では充電インフラの普及が鈍化しており、拡充ランキングは下がっています。特に欧州全体で「急速充電ネットワーク」の普及が遅れており、急速DC充電器の不足が重大な問題となりつつあります。また東ヨ​​ーロッパの多くの地域で依然として充電施設は整備されておらず、それも課題となっています。こうした原因は殆ど報じられませんが、設置費用と維持経費が高い割に充電ステーション1基当りの「儲けが殆ど無い」というのが実態です(恐らく殆ど赤字です)。儲かるならば、民間企業が既にこぞって投資しています。EV車両自体も充電ステーションも供給者が儲からないという実態が、実は普及を遅らせているのが事実です。
https://evmarketsreports.com/europes-ev-charging-infrastructure-encounters-hurdles-amid-global-transformations/

高ニッケルとLFPの中間に位置する「中ニッケル高電圧」電池が今後普及する可能性が報じられています。中ニッケル含有のカソードは普及が見込まれていましたが、最近のコバルト価格の低下と安全性への懸念により、移行は大幅に遅れていました。現在、中国のNMC生産における中ニッケルのシェアは2023年初頭の約40%から60%近くに急増しています。アナリストらは、こうした現象がLFPの進歩を鈍化させるのに役立ち、バッテリーの変化に不確実性をもたらしていると指摘しています。中ニッケル電池の進歩は技術開発により、高い電圧でより安全かつ持続的に動作できるようになりつつあるようです。
https://www.mining.com/web/ev-batteries-with-nickel-get-boost-in-china-after-prices-retreat/

EUのEV販売の落ち込みが深刻化し始めました。EUの8月のEVの販売は43.9%減少ました。EV化を最も推進したドイツで68.8%減、フランスで33.1%減となり、政策の失敗が浮き彫りになっています。EUにおけるEV販売は4ヵ月連続で減少しました。また景気の低迷とホリデーシーズンが重なった事もあり、新車販売台数は18.3%も減少しました。これは3年振りの低水準です。ハイブリッドは唯一販売を伸ばした車種で6.6%増加しました。ドイツ政府はEV市場を活性化する為、急遽、企業のEV対する最大40%の税額控除に合意しています。欧州自動車生産者協会は緊急声明を発行し、政府による緊急対策(排出規制の延期措置)を要請しています。ステランティス以外のほぼ全ての欧州自動車メーカーは、つい最近まで2030年までの完全EV化、EVによる雇用の創出、EVによる競争力の創出、を宣伝しまくっていたのですが・・・
https://www.acea.auto/press-release/european-auto-industry-calls-for-urgent-action-as-demand-for-evs-declines/

2025年の世界の主要コンテナネットワークが明らかになりました。Sea -Intelligence によると、ジェミニ、プレミア・アライアンス、MSCの3つのネットワークは計画を明らかにし、オーシャンアライアンスは未発表ですが、変化は少ないと見られています。ジェミニによる直接の港湾間ペア航路数が大幅に減少し、シャトル便に重点を置く計画を続行します。MSC、オーシャンアライアンス、プレミア・アライアンスは、アジア・ヨーロッパの港湾間の航路接続を提供し、MSCとオーシャンアライアンスはアジアと北米の間に同程度の直接航路を提供します。またオーシャンアライアンスの港湾ペアは、より寄港頻度が高くなります。アジア・ヨーロッパ間のサービスではMSCがジェミニの約3.5倍の直接接続を提供する事になります。その結果、直接の港間ではMSC がアジア・ヨーロッパ航路において最も多くの航路を提供する見込みです。
https://www.sea-intelligence.com/

国連の人工知能諮問機関はAI関連のリスクとガバナンスのギャップに対処する為の7つの提言を含む最終報告書を発表しました。報告書では人工知能の監視と管理に向けた初の世界的な取り組みを国際機関が監督するよう提案しています。また今後AIとそのリスクに関する最新情報を集める為に「気候変動に関する政府間パネル」に似た機関を設立することを推奨しています。国連は声明で「AIの開発が少数の多国籍企業の手に委ねられている為、人々がその利用方法について意見を述べることができないまま、その技術が人々に押し付けられる危険性がある」と述べています。
https://www.un.org/en/ai-advisory-body

北米BMWは、LIBリサイクル企業のRedwood Materialsと同社のEVに搭載されるLIBのリサイクルを行う契約を締結したと発表しました。BMWは、BMW、ミニ、ロールスロイスなどのブランドにEV、HV、マイルドHV、PHVを揃えており、何れもバッテリーを搭載しています。同社は全電動モデルの古いバッテリーは、リサイクルの為にRedwoodに送るよう販売店に指示を出すと発表しました。Redwoodは2つの施設で使用済みLIBを処理する予定です。1ヶ所目はネバダ州リノで、もう1ヶ所は現在建設中のサウスカロライナ州チャールストンです。同施設はBMW向けのバッテリーセルを製造するAESCのサウスカロライナ州フローレンス工場からそれ程の距離が無い場所にあります。
https://www.press.bmwgroup.com/usa/article/detail/T0445142EN_US?language=en_US


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