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NEWSCONの気になるNEWS(2024年1月第1週)

米国では金や銀の地金に消費税を課さない州が42州もあります。今月、ミズーリ州とオクラホマ州は金や銀を商品(コモディティ)ではなく「貨幣」として扱う法案があげられました。貨幣として扱われる為、キャピタルゲイン税は発生しません。同様の動きは2014年にユタ州、アーカンソー州、オクラホマ州でも行われています。この措置により金・銀の取引がより活発になり、州政府が金や銀にアクセスし易くなります。ワールド・ゴールド・カウンシルによれば、今年、世界の中央銀行は金準備高を大幅に増しており、特に突出して中国とポーランド、その後シンガポール、リビア、インド、チェコが大きく買い越しています。10月単月でも世界の中央銀行は42トンを追加しています。この傾向は世界経済とドルの不確実性、そして戦争への対応と見られています。金の取引は必ずしも全てが公表されている訳ではない為、傾向はハッキリしても、その数量は必ずしも正確ではありません。戦争は物理的なものだけでなく、地政学に起因する経済的なものから情報戦、サイバー空間におけるものまで様々で、そうした不確実性に最も有効な準備手段なのが金である事は歴史が示しています。中国は米債から金へ、ウクライナの隣国ポーランドが金を大幅に買い越している事実、米国の州(ブルーもレッドも)が金を貨幣化する動きを見せる等、分断から敵対への準備という側面が見られ始めました。
https://financefeeds.com/us-missouri-and-oklahoma-moving-closer-to-end-capital-gains-tax-on-gold-and-silver/
https://bit.ly/48BP7v9

26日の海外石油市場(WTIとブレント原油)は、2022年9月以来初めて「デッドクロス」(50日移動平均線が200日移動平均線を下回る)を形成しました。(海外では「デス・クロス(Death Crossと呼ばれる事が多い)」)過去このパターンが表れた場合、相場は下がります。ドバイ市場で1バレル80ドルの水準になり、フーシ派武装勢力による紅海での活動懸念、更にOPECの更なる供給制限が示されている中でも市場は来年の供給過剰を予測していると見られています。これは供給に対する需要の減退と考えられ、欧州とアジア市場での低迷が予想されています。株よりも実需の影響を受け易い海外原油市場の低迷予測は、ある程度景気の先行指標として留意しても良いかと思います。
https://www.marketwatch.com/story/crude-oil-sees-first-real-death-cross-since-the-pandemic-plunge-of-early-2020-d93f9c87

2023年が歴史の中で時代の転換期であるもう1つの出来事がありました。今年、ソロスやマードックが完全引退、キッシンジャーが逝去し、年末にジャック・ドロールが死去しました。ジャック・ドロールは東西冷戦末期から国際化時代の1985年~1995年まで欧州委員長を務め、ユーロ単一通貨導入と現在のEUの基礎となるマーストリヒト条約を先導した、欧州の歴史にとって重要な役割を果たした人物でした。ローマクラブの名誉会員で、欧州で市場経済と社会民主主義の融合を実現する為に尽力した超大物政治家でした。日本では無名に近いですが、彼が興したジャック・ドロール研究所(Jacques Delors Institute)の現在のトップは元イタリア首相のエンリコ・レッタで、彼はメローニ政権誕生までイタリア民主党(PD)の党首を務めており、欧州政治に影響力のある人物でした。ジャック・ドロール研究所は欧州本部のあるブリュッセルにも組織があり、この組織(ヨーロッパ・ジャック・ドロール)のトップは欧州委員会名誉理事で、気候変動と持続可能な政策の専門家のジュヌヴィエーヴ・ポンスです。ドロールはレーガノミックスの様な新自由主義を嫌い、欧州を中央がコントロールする社会民主的な政治・経済体制へと導いた最重要人物と言えます。その流れは今も続いています。しかし今年の欧州の選挙ではそうした社会民主主義的な政党が次々に負け、右傾化が顕著になりました。WEFもイデオロギーの継承の為にグローバル・ヤング・リーダーシップという組織を作り、フランスのマクロン、カナダのトルドー、ニュージーランドのアーダーン等の国のトップを排出してきましたが、今年、その影響力が急速に落ち、半分はグローバルサウスが参加する「商談の場」と化しています。ドロールが死去した前日、東西統一後の今のドイツを形作った重鎮政治家のヴォルフガング・ショイブレが死去し、今の欧州を作った独仏の大物が2023年に死去した事は歴史の偶然にしては象徴的なタイミングです。
https://www.bbc.co.uk/news/world-europe-13360806

1月1日より開始された米国の新しいEV税控除規則により、7500ドルの控除を受けられるモデルが43から19に減少した事が伝えられています。来年からは電池材料にも適用される為、この数はより減少すると見込まれています。税額控除対象車両のリストから外れた車両にはフォルクスワーゲン ID.4、テスラ モデル3の一部とサイバートラック4輪駆動車、BMW X5 xDrive50e、アウディQ5 PHEV55、キャデラック リリク、フォード E-Transit、日産リーフ、シボレーブレイザーEVが含まれています。既に米国ではEVの生産過剰からディーラ在庫が増し販売が鈍化している事から、今回の措置でよりEV販売にブレーキが掛かる可能性が指摘されています。中国での過剰な電池生産能力は一層の影響を受ける可能性があり、原材料価格の上値が重くなる可能性があります。
https://www.asiafinancial.com/new-battery-rules-cut-nissan-tesla-evs-from-us-tax-credits

中国の習主席が元旦のTV演説で「中国は必ず統一される。台湾海峡の両側のすべての中国人は共通の目的意識に縛られるべきだ」と述べた事が欧米で広く伝えられています。1月13日に行われる台湾の総統選挙と国会議員選挙に対する牽制と見られていますが、昨年のバイデン大統領との会談でも同じ事を述べており、中国の地政学的な動向に欧米は敏感になっています。経済が芳しくない中国では政府が国債を資金源とするプロジェクトを6月末迄に開始する計画です。製造業の多い河南省では地方政府が支援する主要産業プロジェクト100個のリストを公表する計画です。中国では昨年12月の工場生産が予想以上に低迷し、深刻な不動産不況、地方政府債務リスク、世界需要の低迷を背景に経済回復の見通しに不透明感が増しており、それを払拭する方針の明示となっています。
https://bit.ly/3NM0sAJ
https://bit.ly/4ayGfbg

紅海での安全懸念と緊張の高まりから、今後アジアと欧州を結ぶ路線で最大50%余りの値上げが予測され、更に迂回航路によるサプライチェーンの遅延にも警戒が増しています。紅海を経由、又は中東近郊への出荷には盗難や破壊の恐れから売り手が積荷を差し控え始めています。また特に買い手が運賃を負担するFOBベースの契約では出荷を控えるようアドバイスする専門家も出てきました。デンマークの海運大手マースクは12月30日の自社船への攻撃を受け、紅海とアデン湾を通るすべての輸送を一時停止すると発表したばかりです。この停止は次の通知があるまで継続される予定です。
https://bit.ly/3S13R16

2024年は戦略的資源と金属の年となりそうです。軍需産業に必要なチタンは一大生産国がロシアで、半導体製造に欠かせないガリウムのうち1次ガリウムは中国が98%を生産しています。アルミ地金を製造する為のアルミナの精錬所は米国に1ヵ所しかなく、中国は2022年に4,021万トンのアルミニウムを生産し、その世界シェアは58%です。更に中国外での中国資本によるアルミニウム製造の能力を1000万トン増強する計画を打ち出しています。欧米も日本もいずれも銅の純輸入国です。ニッケル、コバルト、リチウムは話題に上がりますが、今年は地政学と経済分断の中で、銅、アルミ、鉄を含めたベースメタルの戦略的重要性が増す年になる事は間違いなさそうです。リサイクルにとって追い風となる転換年となりそうです。
https://bit.ly/4ayGt26

昨年10月に英国政府が正式に義務化を発表したメーカーによるゼロエミッション車(ZEV)の最低販売率の規制が本日より発効しました。2024年はメーカーが販売する新車(乗用車)の販売の内、22%がゼロエミッション車である必要があります(バンは10%)。ゼロエミッション車は完全なEVもしくは水素自動車となります。規則に違反したメーカーは制限を超えて販売した車両1台につき1万5000ポンド(270万円)を政府に支払う必要が生じます。ただし英国では充電インフラの整備が政府目標より遅れ、消費者に魅力的なEV車両が必ずしも多くない事から、今後どのように運用されるのか注目が集まっています。
https://bit.ly/41M8mzZ
https://www.expressandstar.com/news/uk-news/2024/01/03/minimum-requirement-for-electric-car-sales-comes-into-force/

経営難に陥ったLIBリサイクル企業Li-Cycle Holdingsは上場基準に違反したとしてNY証券取引所から警告を受けています。Li-Cycle社はリリースを発行し「警告通知はLi-Cycle社の普通株式の上場に即時の影響はなく、事業運営にも影響しない」と発信しています。しかし1月2日にはロサンゼルスのポートノイ法律事務所が株価下落を引き起こした要因について調査及び集団訴訟を行う準備があるとして、株主に呼びかけを開始しています。既に他にも集団訴訟を抱え、グレンコア社と欧州で企画した共同計画も頓挫しており、ブームに乗ってリサイクル経験の無い新興企業が上場で資金を集めるビジネスモデルは崩壊の兆しを見せ始めているようです。
https://rbj.net/2024/01/02/li-cycle-says-it-will-cure-deficiency-after-warning-from-nyse/

メキシコ政府がベトナムの冷延鋼板に80%の関税を課します。ただし冷延鋼板及び使われる鉄鋼1次製品が中国以外の国から調達している事を証明出来れば80%の関税は免除されます。中国は鉄鋼の過剰生産能力を輸出に向けており、メキシコ市場だけでなく南米でのダンピング販売が問題化しつつあります。現在、中国産の鉄鋼製品や中間製品は特定のベトナム企業を経由して輸出されており、それらに対抗する措置と見られています。既に中国産鉄鋼製品に高関税を課す米国ではメキシコ産の鉄鋼への措置も検討されており、鉄鋼を巡る保護貿易は今年のテーマになりそうです。最近、WTOの紛争委員会は米国の鉄鋼・アルミニウム関税第232条への報復として導入されたトルコの米国製品への関税に対し、トルコ政府に撤廃を求める判決を出しました。委員会はトルコの関税がWTOの政策と矛盾していると認定しました。これにより米国はトルコに対して紛争解決手続きを開始したばかりです。中国の不動産不況とロシア産の鉄鋼製品の制裁によって引き起こされている一連の鉄鋼のダンピング販売は、今年予測される世界の鉄鋼保護貿易の引き金になりつつあります。
https://agmetalminer.com/2024/01/03/mexico-tariff-vietnamese-steel-prices/

南米やアフリカの一部で起きている資源ナショナリズムにより銅の中期予測が大幅に変化しています。グリーントランジッション政策による銅の需要増加、鉱山供給の混乱、更に2024年後半の金利低下によるドル安予測により、銅価格は今後2年間で急騰するという見通しが出されています。シティバンクが発行した報告書では2030年迄に銅需要はさらに420万トン増加する見込みで、2025年には1トン当たり1万5000ドルに上昇する可能性がります。シティのアナリストが示す前提条件は米国と欧州の経済のソフトランディング、早期の世界成長回復、中国の大幅な緩和措置となっており少し盛りすぎです。ただし鉱山供給の混乱は現実のものとなりつつあり、今年後半からの供給懸念が強まっている事は確かです。
https://www.cnbc.com/2024/01/03/copper-appears-set-to-rally-more-than-75percent-by-2025-analysts-say.html

フランス政府は2024年1月1日より有機廃棄物(生ゴミ)に関する「堆肥義務規則」を発効しています。この規則により食品ロスや残渣等の有機廃棄物はリサイクルが義務付けられます。この規則の発効以前は年間5トンを超える有機廃棄物を排出する企業のみが有機廃棄物を分別リサイクルする義務を負いました。新規則により、自治体は一般有機廃棄物を分別し収集する義務を負う事になります。自治体は政府からの資金援助を受け、生ごみ、野菜の皮、賞味期限切れの食品、庭の廃棄物等の生物廃棄物を分別する方法を住民に提供します。家庭や企業は有機廃棄物を家庭回収用の専用箱に入れるか、自治体の収集場所に廃棄する必要が生じます。欧州では食品ロスと食品廃棄物が分けられており、企業は、食品ロスの低減に責任を負います。しかし家庭で発生する食品廃棄物にまで分別収集の義務を課すこの規則は可也野心的なものです。SDGs12.3では2030年迄に食品ロスと廃棄物の半減が定められており、この問題は何れ批准した国が対応を迫られる事になります。
https://www.euronews.com/green/2024/01/02/france-implements-compulsory-composting-heres-how-it-will-help-slash-emissions

欧州政府は来年の欧州議会選挙前に課題として残る2040年の気候目標を提示する計画です。現在2030年と2050年(ネットゼロ)の目標については決められていますが、2040年の目標は未決定のままでした。1月16日にEU27ヵ国の環境大臣が集まり2040年の目標について議論する予定です。その後、欧州委員会は2月6日に2040年に向けた気候変動目標案を提出すると見られています。更に3月25日に欧州の環境審議会で意見交換が行われ、6月の選挙前には決定を見込んでいます。現在、予想として挙がっている有力な数値はGHGを2040年迄に90%削減するというものです。しかし、これを実現する為には鉄鋼や製錬業などの炭素集約型産業が完全な脱炭素化をする必要があり、現実的には難しいと見られています。6月の議会選挙では環境タカ派の現在の議会から「現実路線」に戻るとも予想されており、その前にレガシーを残したいという思惑が強く働いています。
https://bit.ly/48lA3Sr

中国の2003年の鉄鋼輸出量は日本の粗鋼生産量を上回る9,000万トンを超えると予想されています。1月3日に中国鉄鋼協会(CISA)が発表した最新データでは2023年1月~11月までの中国の鉄鋼輸出は前年比35.6%増の8,266万トンに達し、11月単月でも801万トンとなっています。12月も同様のペースでの出荷が見込まれる事から年間では9,000万トンに到達する見込みです。一方で過剰生産によるダンピング輸出が指摘される価格は前年比で32.2%も急落し、1トン当り947.4ドルでした。既に世界で5ヶ国が中国から輸入される鉄鋼製品の貿易救済調査を開始しており、今後も中国政府が先導する輸出攻勢が進めば、他国のセーフガードによる鉄鋼貿易摩擦がより多く発生しそうです。
https://www.mysteel.net/news/all/5046446-cisa-china-steel-exports-to-exceed-90-mln-t-in-2023



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