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NEWSCONの気になるNEWS(2023年2月第4週)

自動車産業が主要な産業の1つであるチェコの自動車産業協会(AutoSAP)は、発表された排ガス規制ユーロ7/VIIに対し「非現実的である」という趣旨のプレスリリースを発表しています。提案では最短で2030年の都市バス販売のゼロエミッション化やCO2排出量 45%削減等が含まれ、それらが過度に野心的であると主張しています。ユーロ7/VIIへの対応はコスト増をもたらし、メーカーだけでなく、企業や一般市民にも多大な影響を与えると警告しています。EUの商品と旅客の約78%が道路輸送で行われています。AutoSAPは、都市バスのゼロエミッション化の早期禁止を撤回し、2035年まで延期、更に再生可能またはCO2ニュートラル燃料を使用可能とする事を求めています。
https://autosap.cz/en/aktualita/euro-7-vii-vysoke-naklady-vs-zanedbatelne-prinosy/

米国がロシア産アルミニウムに200%の関税をかける影響についてAg Metal Minorが分析しています。既に欧州ではロシア産の製品を回避する傾向が顕著となっており、米国がロシア産のアルミの輸入を事実上終了する事で欧米の調達先が変わり、欧米でのアルミ供給に問題が生ずる可能性を予測しています。ただし、米国はカナダ産を代替として利用できるため、供給逼迫を引き起こす懸念は生まれていませんが、価格上昇圧力は問題として残ります。ロシア産のアルミの受け入れ先は中国に移っている為、安価なロシア産のインゴットが中国に記録的な量で流入しており、中国の製錬所の生産量も増加傾向にあります。LMEの3ヵ月物アルミニウム価格は2月に下落していますが、MW USアルミプレミア価格は上昇しています。これは不況で需要が弱まると予想される一方で、アルミが不足する可能性を示唆しています。最終的には需要減と供給不足が交錯し、アルミ製造業者はマージンの減少圧力に晒される可能性があります。
https://agmetalminer.com/2023/02/15/aluminum-shortage-possible-2023/

欧州最大の鉄鋼メーカーであるアルセロールミッタルが水素還元鉄の製造プロジェクトの為に欧州及びスペイン政府から多額の資金を得ています。スペインのヒホンでの水素DRI建設に向け欧州とスペイン政府から共同で4億6000万ユーロが提供され、ドイツ・ハンブルクの水素DRI実証工場には欧州政府から5,500万ユーロが提供されます。スペイン工場の生産能力は年間230万トンで、現在建設を開始しており、年間160万トンの電炉も併せて導入予定です。ハンブルグでは年間10万トンの小規模な水素DRI実証工場を建設する予定です。水素DRIは必ずしも鉄鋼の脱炭素の切り札とは言えない面もありますが、欧米では投資が進んでいます。
https://www.recyclingtoday.com/news/steel-europe-ec-funding-dri-scrap-recycling-decarbonization/

リサイクルされた鉄スクラップをEUの重要な原材料に含めるべきでは無い、という声明を発表したばかりの欧州リサイクル産業連盟(EuRIC)が、新たに欧州政府本部があるブリュッセルでリサイクル業者と政策立案者を集めたイベントを開催する事を発表しています。このイベントは3月30日に開催され、現在懸案となっている規制に焦点を当てて話し合う予定です。現在、欧州のリサイクル産業は廃棄物輸送規制、重要原材料法、包装及び包装廃棄物規制、繊維戦略、今後のエコデザイン規制、更に化学物質法等により過去に例を見ない重大な局面を迎えており、来るべき課題の波に臨まなければなりません。全く減らない世界的な廃棄物による汚染源の1つが先進国から途上国に流れる廃棄物にある為、欧州の政策立案者は早急かつ非常に厳しい規制を課すような法案を次々に出しています。この問題はリサイクル産業そのものを変える要素を多く含んでいます。
https://www.euric-aisbl.eu/position-papers/item/651-press-release-euric-event-set-to-gather-recyclers-and-policymakers-in-brussels-to-discuss-regulatory-hurdles

中国最大手のEVバッテリーメーカーであるCATLが大幅な値引き戦略を実行している事が伝えられています。CATLは先週Nio、Li Auto、Huawei、Zeekr等の中国国内顧客に1トン当りUS$29,163の炭酸リチウム価格に基づく価格でのバッテリーを3年契約で提供する事に合意したと、伝えられています。足元の炭酸リチウムのスポット価格に比べ大幅に割安での契約の為、バッテリーは大幅な値引きと言えます。この価格戦略については、米国で歴史のある投資情報サービスBarron’sにも掲載され、先週17日のリチウム関連株の暴落のキッカケとなりました。リチウム価格はEV需要の増加により過去数年間で約9倍に上昇しています。CATLは独自にリチウムの一部を採掘しており、は採掘事業の収益をバッテリーシェア増の為に利用している可能性が指摘されています。CATLは価格戦略に関するコメントの要求に応答していません。
https://www.scmp.com/business/china-business/article/3210872/chinas-top-ev-battery-maker-catls-big-discounts-nio-li-auto-could-force-rivals-cut-prices-benefits
https://www.barrons.com/articles/lithium-stocks-tesla-ev-battery-shares-40aa53d0

20日発行されたドイツ連邦銀行による経済見通しによると、ドイツのGDPは2四半期連続で減少、景気後退に陥ると予測しています。同行は「2023年の第1四半期の経済は対前四半期で再度減少する可能性が高い」と警告しています。低迷する工業生産と外需、高金利、供給品のコスト高、不振の建築部門など、全てが弱含みで推移していると指摘しています。歳入出については「支出が歳入を大幅に上回り、債務負担が増大する」と予想しています。欧州委員会が1月に発表した経済見通しでは2023通年ではドイツの経済見通しを0.2%成長としていました。
https://www.bundesbank.de/resource/blob/904856/e30314dfeb6a4f1c0b74c781937d5fa0/mL/2023-02-ueberblick-data.pdf

英国スエズが廃棄食糧をエネルギーに変換する(WtE)施設建設の許可を得ています。投資額は約480億円で、7000世帯分の電力供給をする能力を備えます。この施設は、食品廃棄物をバイオガスに変換後にバイオメタン化し、ガスとしてそのまま利用するか、発電機燃料として電力に変換します。残渣はバイオ肥料として使用します。欧州や英国ではWtE施設の計画が発表されており、廃棄物のエネルギー変換への流れは引続き継続するものと見られています。
https://www.suez.co.uk/en-gb/news/press-releases/230217-suez-recycling-and-recovery-uk-plans-to-build-anaerobic-digestion-facility-in-darwen-approved

欧州議会および理事会が廃電気電子機器(WEEE)に関する指令2012/19/EUの修正案を提示しています。これは欧州政府による一連の製品規制に並行して行われているものです。この改定の主な趣旨は消費者が該当する機器を無料で返却できる「収集スキームの作成」を規定しています。改定の背景は2022年1月25日に欧州連合司法裁判所が同EU指令 2012/19/EUの第13条(1)が部分的に無効であるとの判決を出した事によります。改定案のテキストでは、一般家庭以外向けの太陽光パネルと電子機器の生産者は、資金を確保し、廃棄品の収集と適切な処理を行う事が規定さています。拡大生産者責任の一部と言えます。
https://ec.europa.eu/transparency/documents-register/detail?ref=COM(2023)63&lang=en

ブルームバーグが「ロシアと中国は世界の食料安全保障を支配している」というタイトルの記事を掲載しました。 ロシアのウクライナ侵攻前、世界の農業用肥料はロシア、ベラルーシ、中国が3大大国で、特にアフリカ、アジア、ラテンアメリカは、この3ヵ国に大きく依存していました。それは現在も続いています。ロシアは制裁にも関わらず2022年には前年比70%増の収益を肥料輸出で上げています。戦争により食料と肥料のコスト・ショックが大きい国は現在48ヵ国指定されています。この3大大国への依存を減らす為に米国、カナダ、モロッコが増産を開始していますが、価格が敵わない状況です。欧米がロシアのエネルギーを排除した事でガスや原油の国際価格が上昇したように、肥料でも同じ事が起きています。裕福な先進国である欧米は購入余力がありますが、それ以外の国はエネルギーも肥料も原材料もロシア-中国依存を続け、地政学上も安全保障上も欧米に追随していません。食料価格の高騰は今年の作付けが始まるこれからが本番です。これが現在の国際情勢をより複雑にしている1つの要因と言えます。ちなみに先週、バイデン大統領がウクライナへの軍事援助を拡大すると発表する前に、ミュンヘン安全保障会議が行われた同じ場所でジョージ・ソロスが「米国はウクライナへの軍事支援を強化する」と(ホワイトハウス発表より)前もって発言して話題になっていました。ソロスはロシアがウクライナ戦争で敗北した場合(実際は存在しないが実質的な)「ロシア帝国」は解体されるだろう、と述べて世界中のメディアで取り上げられました。つまり米国民主党最大の寄付者(かつフィクサー)であるソロスがそれを強く望んでいるという事で、西側の軍事援助がエスカレートしています。ソロスがバックアップして強力に推進するWEFのヤング・グローバル・リーダープログラムに参加している現在のドイツ外相アナレナ・ベアボックがドイツが躊躇していたウクライナへの最新の「戦車」の供給に賛成したのも、そういう理由のようです。ベアボックは緑の党の元共同党首で、ドイツの反原発とグリーン化を推進してきた1人です。ソロスの最近の発言を読むと、彼はロシアが相当軍事的に疲弊していると見ているようです。
https://advisoranalyst.com/2023/02/20/global-food-security-at-risk-as-russia-and-china-dominate-fertilizer-supply.html/

鉛電池リサイクル大手のEcobat社がアリゾナ州で自社としては米国初のチウムイオンバッテリー(LIB)のリサイクル工場を建設します。年間処理能力は10,000トンで、今年の第3四半期に稼働予定です。同工場では使用済みのLIBからブラックマスの製造を行います。同社は英国、ドイツに施設があり、今月初めにドイツの金属加工処理事業を世界的なコモディティートレーダーであるTrafigura社に売却しています。インフラ削減法後の米国内でのLIBリサイクルへの投資は引き続き活発です。
https://ecobat.com/about-us/news-insights/

MySteel Globalが中国のLIB材料の2月第4週の概況を材料別に掲載しています。リチウム化合物は下流の需要が改善せず月末まで価格の下落が続く、硫酸コバルトは生産量の減少はあるがコスト面では採掘会社が価格引き下げに消極的で、近々は価格の低下は僅か、硫酸マンガンの価格は短期的に安定、三元系正極材料は電池メーカーが在庫回転を短縮して価格を抑えている為に価格下落、となっています。やはり中国メーカーの懸念は、米国のインフレ削減法のようです。
https://www.mysteel.net/news/all/5036369-a-glance-of-china-lithium-ion-battery-materials-week-4-feb-2023

欧州で鉄鋼メーカーによるスクラップ会社の買収が続いています。ドイツ大手鉄鋼メーカーのSalzgitter AGが子会社を通じてリサイクル会社Must-Metalle-Container-Recycling GmbHを買収した事を発表しています。欧州の鉄鋼メーカーは脱炭素化に当りスクラップ利用の推進を掲げており、Salzgitter Groupもスクラップのリサイクルを大幅に拡大する計画を既に発表しています。欧州最大の鉄鋼メーカーのアルセロールミッタルは過去12ヶ月で4社、計130万トン規模のスクラップ会社の買収をしており、米国のNucor、Steel Dynamics、Commercial Metalsは電炉の拡張とスクラップ会社の買収により低炭素鋼製造への原料確保を推進しています。この流れは欧米でまだ続きそうです。
https://www.salzgitter-ag.com/en/newsroom/press-releases/details/salzgitter-group-expanding-regional-scrap-recycling-20490.html

1月末に最初に報道されたフィリピン通商産業省(DTI)による未加工ニッケル材への輸出関税や禁輸について続報が入っています。現在、政府はニッケル鉱の輸出に10%の課税を検討しています。これは政府が鉱工業からの歳入増を計画している政策の1つであり、それ以外にも大規模な鉱山企業から3%のロイヤルティを検討しています。フィリピン政府による関税が市場に与える影響は低いものの価格を下支えする要因にはなり得ます。フィリピンがこの政策を進めた場合、最も影響を受けるのは中国でその次に日本と予想されています。現在フィリピンのニッケル輸出の約90%は中国向けとなっています。
https://oilprice.com/Metals/Commodities/Philippines-Looks-To-Replicate-Indonesias-Nickel-Market-Success.html

2024年に内容の合意を目指すプラスチックの国際条約の交渉に先立ち、各国の意見が分かれている事が伝えられています。欧州とアフリカ諸国の大部分はプラスチックの「供給削減」を推進する一方で、米国とサウジアラビアは供給削減を行わず、「リサイクルをより増やす事」を推進しています。米国やサウジアラビア等の主要な石油・ガス生産国はプラスチック生産の削減を求めていません。この問題は気候交渉と同様、誰が関連事項に資金を提供し利益を上げているか?という問題が鍵になると認識されています。実は欧州でも化学産業がGDPの10%を占めるドイツは、欧州の化学物質規制であるREACH規制の改訂に難色を示し、1年以上改訂案の発表が遅れています。改定案の提出は今年第4四半期を予定しています。ドイツの化学部門は昨年、ガスと電力の価格急騰で深刻な打撃を受けており大手企業のBASFは欧州での事業を縮小する事を示唆していました。
https://www.climatechangenews.com/2023/02/22/less-plastic-or-more-recycling-nations-split-ahead-of-treaty-talks/

欧州外交評議会(ECFR)が1月に実施した「世論調査」が大変興味深い結果を示しています。調査はEU9ヵ国、英、米、中国、ロシア、インド、トルコの市民を対象に行われました。調査結果は戦争、民主主義、地政学に対する地理的な違いが明確な事を示しています。調査結果を分析した研究者はロシアのウクライナ侵略は「ポスト欧米」の世界秩序の出現を示すターニングポイントになる、と明確に言及しています。戦争により西側諸国は団結しましたが、世界への影響力が弱まり、中国、インド、トルコ等の大国を説得する事に完全に失敗しました。西側の大多数はロシアを「敵」と見なしEU 9ヵ国の平均55%は経済的困難を犠牲にしても対ロシア制裁の継続を支持しました。しかし中国、インド、トルコは、ウクライナの領土保全を公式に認めつつも、中国(79%)、インド(79%)、トルコ(69%)はロシアを戦略的な「同盟国」であり「必要なパートナー」であると考えています。更に西側諸国の積極的な戦争関与の理由となる「民主主義を擁護する」という訴えは他の国では十分な信頼を得られず、西側諸国の外で懐疑論を引き起こしている事も明らかになっています。調査によると非西側諸国は自国の民主主義が最も機能している民主主義であると考えており、その数は中国で77% 、インドでは57%となっています。興味深い事に西側の大多数の人々は戦争後の国際秩序を「西側と東側」、「民主主義と権威主義の間の冷戦型の二極化の復活」と定義していますが、中国、インド、トルコの人々は全く違う見解を持っているという事です。調査分析者は最終的に西側諸国は自らの努力を非西側諸国に支持してもらう事を期待せず、彼らと協力して新しい秩序を構築する必要がある、と結論づけています。
https://ecfr.eu/publication/united-west-divided-from-the-rest-global-public-opinion-one-year-into-russias-war-on-ukraine/

中国で開催されたナトリウムイオン電池(NIB)第2回中国全国会議で、HiNa BatteryとJAC Group が共同で製造したNIB搭載の5人乗りEVがデモで展示され、今後の量産予定が計画されている事が発表されています。NIBの電池サイズは 25kWhでエネルギー密度は140Wh/kg、1回の充電での最高航続距離は250kmです。LIBに比べ、リチウムを使わないNIBは低コストで安全性が高く、サイクル性能に優れている為、商業利用が可能なLIB代替候補として期待されています。先日のCATLの低価格戦略も、このような新タイプの低価格電池が市場に出始めた事によるものと推測できます。
https://equalocean.com/news/2023022319489

独リサイクル大手のRemondisと大手ファッションブランドH&Mが衣類と繊維のサーキュラ―エコノミーの為の合併会社を設立しています。会社名はLooper Textileで出資比率はH&M グループが50%、Remondisが50%、古着や廃棄衣料品を収集、分類、販売する事を目的としています。欧州内で操業を開始し、2023年は約4,000万着の衣類を処理することを目指しています。事業計画には革新的な繊維リサイクルプロジェクトがあり、新しい収集スキームのテスト、近赤外線選別装置を利用した自動化選別技術の実装が含まれています。更にリユースとリサイクルのパートナーを探す事も検討事項に上がっています。Remondisは大手飲料メーカー向けにPETリサイクル事業に投資したのも早く、欧州のCEの流れをよくつかんでいるリサイクラーと言えます。欧州政府は今年新たな繊維・衣料産業向けの規制を計画しており、今後国際条約となるプラスチック条約にはマイクロプラスチックが含まれる事から、繊維産業は次のCEの目玉と言われています。
https://www.loopertextile.com/

欧州委員会はスタッフに対しTikTokの使用を禁止する通達を出しています。欧州委員会は中国との緊張の高まりを受けセキュリティ上の問題から中国のソーシャルメディア・アプリであるTikTokの使用を禁止しました。中国共産党とその諜報機関が世界中で膨大な量のデータを収集するのを支援しているという事が理由です。 欧州委員会の全スタッフはTikTokを公式デバイスから削除するよう命じられ、個人のデバイスにも仕事関連のアプリがインストールされている場合は、個人のデバイスからもTikTokを削除するよう要請しています。英・米・蘭・インド等ですでにこの動きは進んでいました。TikTokは先週、欧州のユーザー情報を欧州の3拠点のデータセンターに保管する事を検討していると発表したばかりでした。現在は香港でデータが閲覧できる状態にあるという事でした。
https://www.politico.eu/article/european-commission-to-staff-dont-use-tiktok/

グレンコアが合弁会社を通じてアルミスクラップリサイクル事業に参入する事が伝えられています。事業はスクラップ仲介会社の Zeb Metalsと提携して、米国サウスカロライナ州でアルミスクラップとドロスのリサイクルを行います。グレンコアは米国、カナダ、イタリア、チリで銅と貴金属スクラップのリサイクルに取り組んでいますが、アルミスクラップのリサイクルは初の進出となります。工場の稼働は今年の年末を予定しています。米国のインフレ削減法、欧州のグリーンディール産業計画法によって保護貿易と地域経済ブロック化が進む中、金属スクラップは貴重な地域発生資源として大手を中心に投資が続いています。今後、欧米でリサイクルへの投資が進む事で、スクラップの国際貿易にもかなり影響が出るものと推測されます。
https://yieh.com/en/NewsItem/139623

1月に欧州の業界団体27個が意見書を提出し、現在審議中の「EUデューディリジェンス指令案」ですが、鉱業部門は賛成する立場を続けています。ドイツの機械工学協会(VDMA)はこの指令を「欧州の競争力に対する脅威」と呼んで反対しており、様々な業界で「追加負担」と受け取られていす。しかし欧州の鉱工業の各企業は既にレベルの高い環境/人権保護基準の遵守義務を負っており、他国の競合他社に有利となります。EUデューディリジェンス指令は人権や環境保護を企業やその製品、サービスに要求するもので、現在の途上国の基準では欧州に比べ不利な点が多いと言えます。
https://www.euractiv.com/section/energy-environment/news/eus-due-diligence-law-could-boost-competitiveness-of-mining-sector/

今年のリチウム価格に関してゴールドマンサックス(GS)が23日に顧客向けに出したメモの内容が伝わっています。下落傾向は続き、今年後半に中国での需要増で一時的に下支えするものの供給が需要を上回ると見ています。GSの予測では中国のスポット炭酸リチウム価格は2023年の通年平均がUS$ 53,304/tですが、12ヶ月後はUS$ 34,000/tとしています。2023年から2025年にかけて、リチウムの供給は需要が年間25%で伸びるのに対し、供給が平均で34%増加すると予想しています。今後9~12ヶ月ではコバルトとニッケルの価格もリチウムと共に下落すると予想しています。銅の供給が停滞しているのに対し、バッテリー材料の供給トレンドが増している為、引き続き銅のロング(買い)とリチウムのショート(売り)を推奨しているようです。
https://www.marketwatch.com/story/the-cooling-of-the-red-hot-lithium-market-is-far-from-over-warns-goldman-sachs-c556bb56

S&P Globalが欧州の国境炭素税で最も影響を受けるのは途上国であるとする影響グラフを掲載しています。EU の炭素境界調整メカニズム(CBAM)は、2026 年から段階的に導入されます。エネルギー集約型の材料産業や製品産業を対象としており、EU への輸入に際し、EU 排出権取引制度の炭素価格と輸出原産国の炭素市場の価格との差額を税(課金)として課します。S&P Global Commodity Insightsによると、カナダ、ブラジル、南アフリカ、トルコがCBAMの影響を最も受けやすく、製品としては鉄鋼が圧倒的に影響を受ける産業部門になると分析しています。中でもトルコは鉄鋼とセメントという主要な2つの産業が影響を受ける為、トルコ経済全体にとっても影響は避けられないと思われます。現在トルコには炭素取引市場がなく、サプライチェーン全体で発生する炭素に課税される事が予想されています。
https://www.spglobal.com/commodityinsights/en/market-insights/latest-news/energy-transition/022423-infographic-cbam-countries-hit-hardest-eu-carbon-border-tax

欧州で老舗の資産管理・投資会社である(あの)ロンバーオディエが自主的炭素市場に関する投資家向けのレポートを掲載しています。既に世界の炭素取引市場は推定年間US$ 9,000億以上の市場に成長しており、今後、主要なコモディティ市場に匹敵する規模になると予測しています。世界最大のコンプライアンス市場(自主的でない国や公的な自治体が行う炭素市場)は、欧州排出権コモディティEU ETS)で2022年の取引額は€6,830億、その炭素取引価格は2017年の€7/tから2022年の最高値は€98/tにまで急上昇しています。自主的炭素市場は2016年以来、発行されたクレジット数は4倍以上に成長し、企業のネットゼロへのコミットメントで更に需要が高まり、年間取引額が2030年までにUS$ 500億に達すると推定されています。ロンバーオディエはコンプライアンスと自主的の両方の炭素市場はサステナビリティ革命全体の中で「最も重要で影響力のある投資機会の1つである」と投資家に発信しています。Research and Marketが発行した最新予測によると世界のカーボンクレジット市場は2023年から2028年の期間中に年率 21.14%で成長すると予想されています。これが、日本を毎回COPで「化石賞」にする欧米の金融業界のロビーによる圧力の真の理由という事は、あまり語られないのかもしれません。地球の隅々にまで存在する二酸化炭素を9,000億ドルのコモディティにするという、冷静に考えれば納得しにくい仕組みを「環境正義」と「2050年までに1.5度」という条件を基作る欧米の国際金融資本というのは、ジャンク債を分割して証券化するのと同様、ある意味現代の錬金術師と言えます。
https://www.lombardodier.com/contents/corporate-news/ft-rethink/2023/february/carbon-markets-the-emerging-asse.html

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