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NEWSCONの気になるNEWS(2023年9月第3週)
EU重要な原材料法が一歩前進しています。9月7日に現法案を一部修正し、欧州議会の産業委員会で採択されました。今後11日~14日で行われる本議会で採択される予定となりました。主なポイントはEU重要原材料リストの鉱物(原材料)の域内精製・加工能力の目標を40%から50%に引き上げた事、本法で新設された「戦略的原材料」のリサイクル率を最低45%とした事です。これにより「EU重要な原材料」リストの原材料は、欧州の消費量の内、少なくとも10%は域内で抽出(採掘や鉱石からの抽出)、少なくとも50%は域内で精製・加工、少なくとも15%はリサイクルから得る事となりました。更に「戦略的原材料」のリストに入った原材料は、リサイクル率を最低45%とする事となりました。戦略的原材料は以下となります:銅、タングステン、コバルト、ニッケル-電池グレード、マグネシウム金属、白金族金属類、マンガン-電池グレード、天然黒鉛-電池グレード、ゲルマニウム、ホウ素-冶金グレード、磁石用の希土類元素、チタン金属、ビスマス、ガリウム、リチウム-電池グレード、シリコン金属。(白金族金属類には、イリジウム、パラジウム、白金、ロジウム及びルテニウムが含まれる。磁石の希土類元素には、ネオジウム、プラセオジウム、テルビウム、ジスプロシウム、ガドリニウム、サマリウム、セリウムが含まれる)。欧州のリサイクルや非鉄の関連団体はこの採択を一斉に歓迎しています。
▶ https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20230904IPR04618/critical-raw-materials-meps-back-plans-to-secure-eu-own-supply-and-sovereignty
ITや電子機器のトレンドを調査する専門会社Trend Forceは8月のバッテリー価格の動向と9月の市場予測を発表しています。EVの角型三元系セル、LFPセル、パウチ三元系セルの平均価格は8月に10%下落し、EVの成長鈍化を表す結果となっています。需要低迷がリチウム塩価格に圧力を掛け、8月には平均23万元/トンまで下落し、前四半期比20%の急落となりました。しかしEVバッテリーの需要と供給のギャップは徐々に解消され、9月は下落が一旦底打ちする可能性を言及しています。蓄電池に関しては中国の蓄電池生産能力が過剰で価格競争は避けられず、年内は緩やかな価格下落が続くと予想しています。
▶ https://www.trendforce.com/presscenter/news/20230907-11835.html
インド政府は、インドの鉄鋼業がEUの炭素税(EU炭素国境調整メカニズム:CBAM)に対応する為の会合を開いています。現在、インド政府は欧州政府とCBAMに関する協議を継続しており、同時に国内での炭素クレジット取引制度(CCTS)を準備しています。今後、欧州がインドのCCTSを互換性のある排出権取引制度として認めた場合、インドの鉄鋼メーカーは国内でCCTSにクレジットを支払う事でEUの国境で課税を免除される可能性があります。インドの鉄鋼業界は、必要に応じて炭素排出に関する認証を提供する立場を取っています。シンクタンクのグローバル・トレード・リサーチ・イニシアティブによると、現在の状況では欧州のCBAMが始まると実質で20~35%の輸入関税に相当すると計算しています。欧州政府は欧州域内の地元企業にも炭素排出権取引制度でCBANと同じ負担が課されている為、WTOの規則に準拠していると主張し続けています。しかしインドや他の地域でEUに鉄鋼やアルミを輸出している国々はCBAMが保護貿易制限措置である、と見ています。
▶ https://www.financialexpress.com/business/industry-govt-takes-stock-of-steel-industrys-readiness-to-meet-eu-carbon-rules-3235422/
米国政府はクリーンエネルギーの税制優遇措置に関する修正ガイダンスを年末迄に発表する計画です。このガイダンスは米国企業が中国のサプライチェーンに依存する事を阻止する条項を含んでいます。更にクリーンエネルギー製品に対する特定の生産者税も示される見込みです。米国との貿易協定締結国以外による米国バッテリー工場への投資に関しては、既にガイダンスで規定されている「外国懸念企業規則」を適用し、2024年から製品としての電池に、2025年からは電池の製造に使用される重要な鉱物も対象となります。修正は現在議会で物議を醸しているフォードとCATLによるミシガン州での合弁電池工場の投資に影響を与えると見られています。こうした保護措置を既に考慮し始めている中国EV及び電池メーカーは次の大型市場である欧州に目標を定めて投資と欧州OEMメーカーとの連携を加速しています。EVは高価格であり、税制優遇や補助金、充電ステーションが充実した欧米が需要地である為、米国から切り離される事で中国EV&電池の欧州シフトがより明確になると思われます。
▶ https://www.businesstimes.com.sg/esg/us-treasury-issue-more-clean-energy-tax-credit-guidance-end-2023
英国のタイヤ回収協会(TRA)は廃棄タイヤの輸出を前面禁止するよう、英国の環境大臣宛てに書簡を出しています。英国政府は廃タイヤの輸出に制限を掛けていますが、実際は中古として輸出されており、その量はインド向けだけで推定20万トン/年と言われています。トルコやその他の地域にも輸出されており、結果として英国内での廃タイヤリサイクルへの投資が進んでいません。TRAはオーストラリアでは2年以上前にタイヤの輸出を禁止し、その後国内のリサイクルと処理能力が向上したと指摘しています。
▶ https://www.mrw.co.uk/news/defra-urged-to-halt-whole-end-of-life-tyre-exports-08-09-2023/
国連は11月に行われる予定のプラスチックの国際条約の多国間交渉に向け、「ゼロ草案」と呼ばれるドラフトを開示しました。6月にパリで行われた多国間交渉では、殆ど進展がなく、単に国家間の意見の違いが表面化したのみでした。今回提示された初稿に関して様々な団体から「懸念」と「賞賛」という2つの意見が有ります。賞賛に関しては概ね「プラスチック生産量の削減」、「懸念されるポリマーや化学物質、短寿命のプラスチック製品の排除」、「再利用目標の設定」、「リサイクルの促進」があります。一方、懸念については「リサイクルプラスチックの含有量」、「拡大生産者責任」、「廃棄物管理」の内容は十分に野心的でなく、リサイクル重視の「間違った」結果を生み出す可能性があるというものです。またプラスチック生産者業界はこのドラフトでは業界の「選択肢が無い」との懸念を示しています。このゼロ草案はあくまで交渉のスタートに過ぎず、今後議論を経て修正される見込みです。米国の政府高官の1人は6月の分裂後に、国際的なアプローチよりもイノベーションを軸とした国家主導のアプローチの方が最終的には「より成功する」との見解を述べていました。
▶ https://wedocs.unep.org/bitstream/handle/20.500.11822/43239/ZERODRAFT.pdf
低炭素化に向けて欧州では垂直統合が鉄鋼業だけでなく、アルミニウム業界にまで拡大しつつあります。世界最大のアルミニウム会社の1つであるノルウェーのNorsk Hydro ASA(ハイドロは)6月に買収したばかりのポーランドのアルミニウムリサイクル会社Alumetalに2億クローネ(27.6億円)を投資し、工場の近代化と拡張を行います。鋳造用合金の生産能力を年間3万トン増強し、特に自動車市場からのアルミニウムのリサイクルを強化します。欧州の重要な原材料にアルミニウムが入った事からメーカーによる様々な投資が加速し始めています。
▶ https://www.hydro.com/en/media/news/2023/hydro-invests-in-modernization-of-alumetal-recycling-plant-in-kty-poland/
中国のMysteelは炭酸リチウムの価格が9月は18万~21万元/トンの間で推移すると予測しています。先週末の価格は19万7,500元(炭酸リチウム)と19万4,000元(水酸化リチウム)で、前週比でそれぞれ2.95%、3.96%下落しました。需要が比較的乏しく、炭酸リチウムの価格は短期的には更に下落すると見ています。しかしリチウム塩精錬所と電池工場の両方が保有する炭酸リチウムの在庫は低い為、9月末迄に自動車販売が予想通りに回復すれば、炭酸リチウムの価格は上昇に転ずると予測しています。金利の引き下げと地方政府によるEVの需要喚起もあり、中国でのEV販売は伸びると見られています。ただし電池工場の「完成電池」の在庫は多く、この点は炭酸リチウム価格の下落要因となる可能性がある為、底打から上昇に転じても、上値は重たい状況が続く可能性が示唆されています。
▶ https://www.mysteel.net/news/all/5042854-lithium-carbonate-prices-expected-to-rally-by-end-sep
米国鉄鋼協会(AISI)によると、7月の米国鉄鋼メーカーの製品出荷量は755万トンで、前年同期比で1.6%減少、2023年の累積でも3.3%減少しています。鉄鋼輸入監視分析(SIMA)の統計では、2023年の累積の鉄鋼輸入総量(完成品および半製品)は1,959万トン強で、前年より10.9%減少しています。米国市場関係者は、製造、輸入とも前年比割れで警戒感を持ち始めているようです。スクラップ市場は供給源の中でも需要が伸びずバランスしており安定、トルコ、バングラデシュ、パキスタンへの輸出はやや低迷、唯一の伸びはインドという内訳です。インフラ投資雇用法(IIJA)が2022年からスタートしている割には、意外と鉄鋼需要は伸びていなく、懸念が出始めています。
▶ https://www.steel.org/2023/09/july-shipments-down-1-4-percent-from-prior-month/
▶ https://www.steel.org/2023/09/aisi-releases-august-sima-imports-data-4/
欧州鉄鋼生産者協会(EUROFER)と欧州非鉄生産者協会(Eurometaux)が共同声明を発表しています。両団体は欧州域内での金属の持続可能な調達に関して、欧州政府と協力して政策的な枠組みを構築するプロセスに入っている事を伝えています。それらは「移行経路(Transition Pathway)」と呼ばれる政策的な方針で、この活動により金属の持続可能な調達を高める為の課題、必要な投資、政策的な枠組みを決めていく事になります。2024年3月末迄にはこのプロセスを完了する計画です。両協会は共にリサイクルを強調しており、廃棄物を原料として確保する動きが確実に強化されると見られています。米国でも保護貿易化が進む中、日本でもそろそろ業界が政策提言をする時期かも知れません。今回の声明で少々の懸念があるとすれば、EUROFERは鉄スクラップをEU重要な原材料に入れる事を望みロビーを続けてきた事です。この「移行経路」の方針により、域内での資源確保が一層強化されると見られています。
▶ https://bit.ly/44UtljH
希土類磁石の本格的なリサイクルの流れが加速しています。オーストラリア証券取引所に上場する希土類の開発会社アイオニック・レア・アース社は、北アイルランドのベルファストに希土類磁石のリサイクル工場を建設し、英国内のフォードのEV駆動装置工場にそれらを供給する事を発表しています。リサイクル工場の建設には英国政府も支援を行います。工場で分離された高純度の希土類金属は、磁石合金を生産する為のLCM(Less Common Metals)として供給され、最終的にはフォード車のEV磁石に利用される予定です。フォードは英国のヘイルウッドに駆動装置工場を持ち、2026年迄に年間50万台の駆動装置を生産する計画です。リサイクル工場を経由して年間600トンを超える磁石原料を確保する予定です。
▶ https://ionicre.com.au/latest-news/
欧州委員会が経済予測を出しています。今年春に出した経済予測を下方修正しており、2023年のEUの経済成長率を1%⇒0.8%に、2024年の成長率を1.7%⇒1.4%、通貨ユーロを利用するユーロ圏20ヵ国の成長率は2023年を1.1%⇒0.8%に、2024年の成長率を1.6%⇒1.3%に、それぞれ下方修正しています。経済成長の鈍化は、消費(需要)の弱さが続いている事が最大の要因です。エネルギー価格の下落、低失業率、雇用の拡大、賃金上昇等、比較的良いデータが出ているにも関わらず、商品やサービスの消費者物価が高くインフレが続いている事が成長鈍化の要因です。金融引締政策の影響で経済活動は今後も抑制される見通しで、2024年も成長力は弱いと見ています。
▶ https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_23_4408
英国でリサイクル事業者向けの「許可」に関する改革が進められる見込みです。現在は許可申請が必要の無い「低リスク」の廃棄物管理施設に対し、今後は許可申請を求めるという改革です。2024年4月に改正案を開示する予定です。これに対し、英国のリサイクル協会は法律等が新に課される前に「既に取得した権利」を持つ場合は、その権利は法律が変わっても有効であるという法的慣習を根拠として許可申請の必要を無くすように求めています。この改革に関して、今秋に英国の環境庁は諮問を予定しています。改革後、現在許可免除の下で操業している廃棄物管理施設は新たな厳しい基準を満たす必要があります。リサイクル協会は、現在のインフレとコスト高では対応出来ない工場が多く、大量の廃業を招く危険があると警告しています。英国では毎週のようにリサイクル工場で(リチウムイオン電池が原因の)火災が発生しており、更に違法な輸出や不法投棄が後を絶たない事から、廃棄物管理の厳格化を求める動きが浮上していました。
▶ https://www.therecyclingassociation.com/sites-with-waste-exemptions-should-continue-without-need-for-permit-says-the-recycling-association/
ここ数ヵ月、欧米ではEV化の真の勝利者は「黒鉛(グラファイト)」企業であるという論調が徐々に始まっています。Reutersがバッテリー用合成黒鉛について特集を組んでいます。合成黒鉛市場は今後5年間で40%以上成長し、2028年には42億ドルに達すると予想されています。欧米でも投資が始まっていますが、それらの企業は中国企業との激しい競争に直面し、困難を極めています。中国はEVバッテリーの負極に使用される世界の天然黒鉛の90%以上を精製し、その産業は成熟しており既に商業的に成功しています。中国大手のBTRやShanshanは既に他社と比較ができない程大きくEU電池指令によって支えられています。それらの法的な防護壁や政府支援があったとしても、中国企業に対抗する為の投資は膨大で資本(資金)の注入量が足りないという問題が続いています。中国の合成黒鉛の生産量は2030年には200万トンに増加すると予測されており、専門家は中国の独占的な地位は変わらないとの見解を示しています。現在EVバッテリー用の高純度な合成黒鉛を製造、供給できるメーカーは世界でも10社程度しかありません。
▶ https://www.reuters.com/world/china/synthetic-graphite-ev-batteries-can-west-crack-chinas-code-2023-09-12/
▶ https://www.reuters.com/markets/commodities/few-suppliers-synthetic-graphite-ev-batteries-2023-09-12/
インド政府は特定の中国製鉄鋼製品について5年間の反ダンピング関税を課す事を発表しています。過剰生産能力と国内需要の減少から海外輸出を増加させてきた中国の鉄鋼業は、ここに来て各方面から規制の対象となり始めています。インドの対応は先月より噂されていました。中国からインドへの鉄鋼輸出量はインド国内での鉄鋼需要の伸びもあり、今年4月から7月の間に前年比62%も増加しました。一方でインドからの鉄鋼製品の海外輸出は33%も減少しています。中国は今年、インドへの最大の鉄鋼輸出国となっています。米国と欧州政府も特に中国からの鉄鋼製品を対象とする新たな貿易関税を策定する交渉を行っています。現在、北西ヨーロッパの鉄鋼メーカーは域内需要が減退しているにも関わらず、熱延コイルの価格を20ユーロ値上する様に顧客に求めている状況です。これは生産コストの上昇によるものです。安価な中国製品の流入は欧州メーカーが最も懸念している事でした。今後、行き先が絞られた中国鉄鋼製品は規制対象以外の国に流れる事が予想され、スクラップにも少なからず影響が出る可能性があります。中国の過剰生産能力の問題は鉄鋼だけで無く、様々なもので今後も他市場に影響を与える可能性があります。
▶ https://www.livemint.com/news/india/india-clamps-down-on-chinese-steel-enacts-5-year-anti-dumping-duty-as-import-rises-62-11694483592968.html
予想されていましたが、欧州政府は中国製EVへの輸入関税を課すかについて調査を開始します。昨日、欧州委員長のフォン・デア・ライエンは議会の年次演説で「世界市場には安価な電気自動車が溢れている。その価格は巨額の国家補助金によって人為的に低く抑えられている。欧州委員会は中国製電気自動車に対する補助金調査を開始する」と言及しました。この方針は中国を始め、各国で反響を呼んでいます。これに対する英国、イタリア、ドイツの3ヵ国の反応が、それぞれの立場を端的に示しているので記載します。
英国:自国の自動車産業の繁栄が優先。
イタリア:長年懸念し主張したが、欧州政府は動きが遅い。欧州政府は無能なのか中国と共謀しているのか?
ドイツ:中国の反応が心配。関税には反対。欧米の対中デカップリングは、徐々に拡大しています。
▶ https://www.reuters.com/world/europe/eu-launches-anti-subsidy-investigation-into-chinese-electric-vehicles-2023-09-13/
▶ https://www.reuters.com/business/autos-transportation/view-reactions-eu-probe-chinese-electric-cars-imports-2023-09-13
中国の駆動用LFP需要は、通常需要がピークを迎える9月にやや回復し、前月比で8.81%増加する見込みです。しかし原料と製造コストが上昇する為、材料メーカーには圧力が掛かる環境となっています。懸念点は素材メーカーの新規受注が予想を下回っている事です。一方、三元系正極材の生産量は9月に前月比3.05%減、前年比4.71%減の5万3600トンになると予想しています。
▶ https://www.mysteel.net/news/all/5042926-lfp-demand-likely-to-miss-traditional-seasonal-high-in-sep
スウェーデンの大手ファッションブランドH&Mは、ロンドンの店舗で古着や中古のアクセサリーの販売を開始します。欧州政府は2022年3月に「持続可能かつ循環型繊維に関するEU戦略」を発表し、その後、2023年7月に繊維製品に拡大生産者責任(EPR)を適用したEU規則を提案しました。この規則案は再利用目的を装った廃棄物の不法輸出の防止、更に繊維廃棄物の分別収集を義務付ける事が含まれています。その為、大手ファッションブランドは対応を急いでおり、様々な対策を実施し始めています。欧州政府と議会はファストファッションに対し厳しい措置を取る姿勢を示しており、圧力が強まっています。
▶ https://thefinancialexpress.com.bd/trade/hm-plans-to-sell-second-hand-clothes-at-london-store
ESGの次のターゲットと言われている「水」に関して、ロックフェラー・アセット・マネジメントとクレーンシェアーズは、海洋及び淡水資源を開発し、持続可能な環境で管理することを目指す「ブルーエコノミー」の上場投資信託(ETF)を立ち上げています。「クレインシェアーズ・ロックフェラー・オーシャン・エンゲージメントETF」という名前で、海洋の健全性を目指し、世界の水産養殖、廃棄物管理、商業漁業、再生可能エネルギー、物流企業への投資を計画しているとプレスリリースで言及しています。
▶ https://kraneshares.com/ksea/
アルミニウムの重要性が一段と増しています。西側のアルミニウム製造関連団体が共同でG7の政治家向けのブリーフィングペーパーを発行しています。4ページの共同ブリーフィングを発行したのは、国際アルミニウム協会、欧州アルミニウム協会、カナダアルミニウム協会、日本アルミニウム協会です。このブリーフィングペーパーはG7向けに発行したもので、アルミニウムの戦略的な重要性を詳説し、持続可能なアルミニウムの調達と製造を実現する為の政策的協力を呼び掛けています。中国は8月からガリウムとゲルマニウムの輸出規制を開始し大きな問題となっています。ガリウムは、ボーキサイトからアルミナAl2O3を精製する工程で生成される副生成物で現在、中国が世界生産の80%を占めています。9月4日には欧州のアルミニウム関連11団体が組織するEuropean Aluminumが欧州議会に共同書簡を送り、アルミニウムを「戦略的原材料」に含めるよう請願したばかりでした。アルミニウムがEU重要な原材料に入ったばかりですが、こうした動きは一気に加速しています。
▶ https://www.aluminum.org/news/international-aluminum-associations-release-action-plan-ahead-g7-trade-ministers-meeting
米国の環境省(EPA)は、プラスチックリサイクルの為に、1億ドルの補助金を開始しました。廃棄物リサイクルにおいては約30年振りとなる大規模な取組みとなります。米国のリサイクル戦略は、リサイクル率を2030年迄に50%とすることを目標としています。プラスチック廃棄物については、リサイクル率は僅か5%程度に留まっています。同時に米国の一人当たりのプラスチック廃棄物量は1980年から2018年迄に263%増加しました。中国やトルコがプラスチック廃棄物の輸入を禁止した為、米国からの輸出量が投棄するプラスチック廃棄物が増加した為、結果として米国のプラスチックのリサイクル率が低下しました。
▶ https://www.epa.gov/newsreleases/biden-harris-administration-invests-more-100-million-recycling-infrastructure-projects
世界最大の金属スクラップ企業であるSIMSは、市況に関するレポートを発行し、利益が減少している事を伝えました。FNARENAがその内容を分析し掲載しています。この分析は、海外市況のトレンドを端的に示しています。SIMSは発表で市場の低迷が続く中、24年度第1四半期の金利・税引前利益(EBIT)がほぼ「損益分岐点(Breakeven)」になると言及しています。世界的な鉄鋼需要の低迷が価格下落となり、スクラップ回収業者の利益率も圧縮、販売量も低迷する事で「低水準の」短期収益が続くと見られています。UBS始め主要な金融機関はSIMSの2024会計年度第2四半期も引続き低迷が続くと見ており、株を「売り推奨」としています。中期的な予想では2025年にはスクラップの価格と流通量の両方で若干の改善が見込まれ、長期的には脱炭素化の恩恵を受けると見ています。SIMSは発表の中で「以前は堅調だった米国市場が弱体化しつつある兆候がある」との認識も示しています。
▶ https://www.fnarena.com/index.php/2023/09/14/short-term-pain-continues-for-sims/
インドネシアが次のEV製造の投資先として活気づき始めています。今週ベトナムのEVメーカーVinFastがインドネシアでのEV生産の為に12億ドルを投資する計画を発表しました。生産開始は2026年を予定しています。更にインドネシア政府は中国の自動車メーカー吉利汽車控股有限公司に2026年迄に国産EVの製造を開始出来るように支援を要請しています。吉利汽車はこの要求に合意していると伝えられています。
▶ https://www.reuters.com/business/autos-transportation/indonesia-asks-chinas-geely-help-build-homegrown-ev-by-2026-2023-09-14/
イタリアの大手鉄鋼メーカーArvediグループのAcciaieria Arvediは自社で鉄スクラップを処理する為に7000馬力の大型シュレッダーを導入しています。シュレッダーはダニエリ製で電炉工場の近隣に金属処理施設を設置しており、今回はその場所への導入となっています。処理能力は毎時最大200トンで年間100万トンの処理が可能です。非鉄回収ラインがあり主にZorbaやZurikの回収も行います。鉄鋼メーカーがスクラップ生産を自社で大規模で行うという点で1つの新しいトレンドと言えるかも知れません。
▶ https://www.danieli.com/en/news-media/news/danieli-heavy-duty-shredder-plant-operation-acciaieria-arvedi_37_841.htm
▶ https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20230904IPR04618/critical-raw-materials-meps-back-plans-to-secure-eu-own-supply-and-sovereignty
ITや電子機器のトレンドを調査する専門会社Trend Forceは8月のバッテリー価格の動向と9月の市場予測を発表しています。EVの角型三元系セル、LFPセル、パウチ三元系セルの平均価格は8月に10%下落し、EVの成長鈍化を表す結果となっています。需要低迷がリチウム塩価格に圧力を掛け、8月には平均23万元/トンまで下落し、前四半期比20%の急落となりました。しかしEVバッテリーの需要と供給のギャップは徐々に解消され、9月は下落が一旦底打ちする可能性を言及しています。蓄電池に関しては中国の蓄電池生産能力が過剰で価格競争は避けられず、年内は緩やかな価格下落が続くと予想しています。
▶ https://www.trendforce.com/presscenter/news/20230907-11835.html
インド政府は、インドの鉄鋼業がEUの炭素税(EU炭素国境調整メカニズム:CBAM)に対応する為の会合を開いています。現在、インド政府は欧州政府とCBAMに関する協議を継続しており、同時に国内での炭素クレジット取引制度(CCTS)を準備しています。今後、欧州がインドのCCTSを互換性のある排出権取引制度として認めた場合、インドの鉄鋼メーカーは国内でCCTSにクレジットを支払う事でEUの国境で課税を免除される可能性があります。インドの鉄鋼業界は、必要に応じて炭素排出に関する認証を提供する立場を取っています。シンクタンクのグローバル・トレード・リサーチ・イニシアティブによると、現在の状況では欧州のCBAMが始まると実質で20~35%の輸入関税に相当すると計算しています。欧州政府は欧州域内の地元企業にも炭素排出権取引制度でCBANと同じ負担が課されている為、WTOの規則に準拠していると主張し続けています。しかしインドや他の地域でEUに鉄鋼やアルミを輸出している国々はCBAMが保護貿易制限措置である、と見ています。
▶ https://www.financialexpress.com/business/industry-govt-takes-stock-of-steel-industrys-readiness-to-meet-eu-carbon-rules-3235422/
米国政府はクリーンエネルギーの税制優遇措置に関する修正ガイダンスを年末迄に発表する計画です。このガイダンスは米国企業が中国のサプライチェーンに依存する事を阻止する条項を含んでいます。更にクリーンエネルギー製品に対する特定の生産者税も示される見込みです。米国との貿易協定締結国以外による米国バッテリー工場への投資に関しては、既にガイダンスで規定されている「外国懸念企業規則」を適用し、2024年から製品としての電池に、2025年からは電池の製造に使用される重要な鉱物も対象となります。修正は現在議会で物議を醸しているフォードとCATLによるミシガン州での合弁電池工場の投資に影響を与えると見られています。こうした保護措置を既に考慮し始めている中国EV及び電池メーカーは次の大型市場である欧州に目標を定めて投資と欧州OEMメーカーとの連携を加速しています。EVは高価格であり、税制優遇や補助金、充電ステーションが充実した欧米が需要地である為、米国から切り離される事で中国EV&電池の欧州シフトがより明確になると思われます。
▶ https://www.businesstimes.com.sg/esg/us-treasury-issue-more-clean-energy-tax-credit-guidance-end-2023
英国のタイヤ回収協会(TRA)は廃棄タイヤの輸出を前面禁止するよう、英国の環境大臣宛てに書簡を出しています。英国政府は廃タイヤの輸出に制限を掛けていますが、実際は中古として輸出されており、その量はインド向けだけで推定20万トン/年と言われています。トルコやその他の地域にも輸出されており、結果として英国内での廃タイヤリサイクルへの投資が進んでいません。TRAはオーストラリアでは2年以上前にタイヤの輸出を禁止し、その後国内のリサイクルと処理能力が向上したと指摘しています。
▶ https://www.mrw.co.uk/news/defra-urged-to-halt-whole-end-of-life-tyre-exports-08-09-2023/
国連は11月に行われる予定のプラスチックの国際条約の多国間交渉に向け、「ゼロ草案」と呼ばれるドラフトを開示しました。6月にパリで行われた多国間交渉では、殆ど進展がなく、単に国家間の意見の違いが表面化したのみでした。今回提示された初稿に関して様々な団体から「懸念」と「賞賛」という2つの意見が有ります。賞賛に関しては概ね「プラスチック生産量の削減」、「懸念されるポリマーや化学物質、短寿命のプラスチック製品の排除」、「再利用目標の設定」、「リサイクルの促進」があります。一方、懸念については「リサイクルプラスチックの含有量」、「拡大生産者責任」、「廃棄物管理」の内容は十分に野心的でなく、リサイクル重視の「間違った」結果を生み出す可能性があるというものです。またプラスチック生産者業界はこのドラフトでは業界の「選択肢が無い」との懸念を示しています。このゼロ草案はあくまで交渉のスタートに過ぎず、今後議論を経て修正される見込みです。米国の政府高官の1人は6月の分裂後に、国際的なアプローチよりもイノベーションを軸とした国家主導のアプローチの方が最終的には「より成功する」との見解を述べていました。
▶ https://wedocs.unep.org/bitstream/handle/20.500.11822/43239/ZERODRAFT.pdf
低炭素化に向けて欧州では垂直統合が鉄鋼業だけでなく、アルミニウム業界にまで拡大しつつあります。世界最大のアルミニウム会社の1つであるノルウェーのNorsk Hydro ASA(ハイドロは)6月に買収したばかりのポーランドのアルミニウムリサイクル会社Alumetalに2億クローネ(27.6億円)を投資し、工場の近代化と拡張を行います。鋳造用合金の生産能力を年間3万トン増強し、特に自動車市場からのアルミニウムのリサイクルを強化します。欧州の重要な原材料にアルミニウムが入った事からメーカーによる様々な投資が加速し始めています。
▶ https://www.hydro.com/en/media/news/2023/hydro-invests-in-modernization-of-alumetal-recycling-plant-in-kty-poland/
中国のMysteelは炭酸リチウムの価格が9月は18万~21万元/トンの間で推移すると予測しています。先週末の価格は19万7,500元(炭酸リチウム)と19万4,000元(水酸化リチウム)で、前週比でそれぞれ2.95%、3.96%下落しました。需要が比較的乏しく、炭酸リチウムの価格は短期的には更に下落すると見ています。しかしリチウム塩精錬所と電池工場の両方が保有する炭酸リチウムの在庫は低い為、9月末迄に自動車販売が予想通りに回復すれば、炭酸リチウムの価格は上昇に転ずると予測しています。金利の引き下げと地方政府によるEVの需要喚起もあり、中国でのEV販売は伸びると見られています。ただし電池工場の「完成電池」の在庫は多く、この点は炭酸リチウム価格の下落要因となる可能性がある為、底打から上昇に転じても、上値は重たい状況が続く可能性が示唆されています。
▶ https://www.mysteel.net/news/all/5042854-lithium-carbonate-prices-expected-to-rally-by-end-sep
米国鉄鋼協会(AISI)によると、7月の米国鉄鋼メーカーの製品出荷量は755万トンで、前年同期比で1.6%減少、2023年の累積でも3.3%減少しています。鉄鋼輸入監視分析(SIMA)の統計では、2023年の累積の鉄鋼輸入総量(完成品および半製品)は1,959万トン強で、前年より10.9%減少しています。米国市場関係者は、製造、輸入とも前年比割れで警戒感を持ち始めているようです。スクラップ市場は供給源の中でも需要が伸びずバランスしており安定、トルコ、バングラデシュ、パキスタンへの輸出はやや低迷、唯一の伸びはインドという内訳です。インフラ投資雇用法(IIJA)が2022年からスタートしている割には、意外と鉄鋼需要は伸びていなく、懸念が出始めています。
▶ https://www.steel.org/2023/09/july-shipments-down-1-4-percent-from-prior-month/
▶ https://www.steel.org/2023/09/aisi-releases-august-sima-imports-data-4/
欧州鉄鋼生産者協会(EUROFER)と欧州非鉄生産者協会(Eurometaux)が共同声明を発表しています。両団体は欧州域内での金属の持続可能な調達に関して、欧州政府と協力して政策的な枠組みを構築するプロセスに入っている事を伝えています。それらは「移行経路(Transition Pathway)」と呼ばれる政策的な方針で、この活動により金属の持続可能な調達を高める為の課題、必要な投資、政策的な枠組みを決めていく事になります。2024年3月末迄にはこのプロセスを完了する計画です。両協会は共にリサイクルを強調しており、廃棄物を原料として確保する動きが確実に強化されると見られています。米国でも保護貿易化が進む中、日本でもそろそろ業界が政策提言をする時期かも知れません。今回の声明で少々の懸念があるとすれば、EUROFERは鉄スクラップをEU重要な原材料に入れる事を望みロビーを続けてきた事です。この「移行経路」の方針により、域内での資源確保が一層強化されると見られています。
▶ https://bit.ly/44UtljH
希土類磁石の本格的なリサイクルの流れが加速しています。オーストラリア証券取引所に上場する希土類の開発会社アイオニック・レア・アース社は、北アイルランドのベルファストに希土類磁石のリサイクル工場を建設し、英国内のフォードのEV駆動装置工場にそれらを供給する事を発表しています。リサイクル工場の建設には英国政府も支援を行います。工場で分離された高純度の希土類金属は、磁石合金を生産する為のLCM(Less Common Metals)として供給され、最終的にはフォード車のEV磁石に利用される予定です。フォードは英国のヘイルウッドに駆動装置工場を持ち、2026年迄に年間50万台の駆動装置を生産する計画です。リサイクル工場を経由して年間600トンを超える磁石原料を確保する予定です。
▶ https://ionicre.com.au/latest-news/
欧州委員会が経済予測を出しています。今年春に出した経済予測を下方修正しており、2023年のEUの経済成長率を1%⇒0.8%に、2024年の成長率を1.7%⇒1.4%、通貨ユーロを利用するユーロ圏20ヵ国の成長率は2023年を1.1%⇒0.8%に、2024年の成長率を1.6%⇒1.3%に、それぞれ下方修正しています。経済成長の鈍化は、消費(需要)の弱さが続いている事が最大の要因です。エネルギー価格の下落、低失業率、雇用の拡大、賃金上昇等、比較的良いデータが出ているにも関わらず、商品やサービスの消費者物価が高くインフレが続いている事が成長鈍化の要因です。金融引締政策の影響で経済活動は今後も抑制される見通しで、2024年も成長力は弱いと見ています。
▶ https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_23_4408
英国でリサイクル事業者向けの「許可」に関する改革が進められる見込みです。現在は許可申請が必要の無い「低リスク」の廃棄物管理施設に対し、今後は許可申請を求めるという改革です。2024年4月に改正案を開示する予定です。これに対し、英国のリサイクル協会は法律等が新に課される前に「既に取得した権利」を持つ場合は、その権利は法律が変わっても有効であるという法的慣習を根拠として許可申請の必要を無くすように求めています。この改革に関して、今秋に英国の環境庁は諮問を予定しています。改革後、現在許可免除の下で操業している廃棄物管理施設は新たな厳しい基準を満たす必要があります。リサイクル協会は、現在のインフレとコスト高では対応出来ない工場が多く、大量の廃業を招く危険があると警告しています。英国では毎週のようにリサイクル工場で(リチウムイオン電池が原因の)火災が発生しており、更に違法な輸出や不法投棄が後を絶たない事から、廃棄物管理の厳格化を求める動きが浮上していました。
▶ https://www.therecyclingassociation.com/sites-with-waste-exemptions-should-continue-without-need-for-permit-says-the-recycling-association/
ここ数ヵ月、欧米ではEV化の真の勝利者は「黒鉛(グラファイト)」企業であるという論調が徐々に始まっています。Reutersがバッテリー用合成黒鉛について特集を組んでいます。合成黒鉛市場は今後5年間で40%以上成長し、2028年には42億ドルに達すると予想されています。欧米でも投資が始まっていますが、それらの企業は中国企業との激しい競争に直面し、困難を極めています。中国はEVバッテリーの負極に使用される世界の天然黒鉛の90%以上を精製し、その産業は成熟しており既に商業的に成功しています。中国大手のBTRやShanshanは既に他社と比較ができない程大きくEU電池指令によって支えられています。それらの法的な防護壁や政府支援があったとしても、中国企業に対抗する為の投資は膨大で資本(資金)の注入量が足りないという問題が続いています。中国の合成黒鉛の生産量は2030年には200万トンに増加すると予測されており、専門家は中国の独占的な地位は変わらないとの見解を示しています。現在EVバッテリー用の高純度な合成黒鉛を製造、供給できるメーカーは世界でも10社程度しかありません。
▶ https://www.reuters.com/world/china/synthetic-graphite-ev-batteries-can-west-crack-chinas-code-2023-09-12/
▶ https://www.reuters.com/markets/commodities/few-suppliers-synthetic-graphite-ev-batteries-2023-09-12/
インド政府は特定の中国製鉄鋼製品について5年間の反ダンピング関税を課す事を発表しています。過剰生産能力と国内需要の減少から海外輸出を増加させてきた中国の鉄鋼業は、ここに来て各方面から規制の対象となり始めています。インドの対応は先月より噂されていました。中国からインドへの鉄鋼輸出量はインド国内での鉄鋼需要の伸びもあり、今年4月から7月の間に前年比62%も増加しました。一方でインドからの鉄鋼製品の海外輸出は33%も減少しています。中国は今年、インドへの最大の鉄鋼輸出国となっています。米国と欧州政府も特に中国からの鉄鋼製品を対象とする新たな貿易関税を策定する交渉を行っています。現在、北西ヨーロッパの鉄鋼メーカーは域内需要が減退しているにも関わらず、熱延コイルの価格を20ユーロ値上する様に顧客に求めている状況です。これは生産コストの上昇によるものです。安価な中国製品の流入は欧州メーカーが最も懸念している事でした。今後、行き先が絞られた中国鉄鋼製品は規制対象以外の国に流れる事が予想され、スクラップにも少なからず影響が出る可能性があります。中国の過剰生産能力の問題は鉄鋼だけで無く、様々なもので今後も他市場に影響を与える可能性があります。
▶ https://www.livemint.com/news/india/india-clamps-down-on-chinese-steel-enacts-5-year-anti-dumping-duty-as-import-rises-62-11694483592968.html
予想されていましたが、欧州政府は中国製EVへの輸入関税を課すかについて調査を開始します。昨日、欧州委員長のフォン・デア・ライエンは議会の年次演説で「世界市場には安価な電気自動車が溢れている。その価格は巨額の国家補助金によって人為的に低く抑えられている。欧州委員会は中国製電気自動車に対する補助金調査を開始する」と言及しました。この方針は中国を始め、各国で反響を呼んでいます。これに対する英国、イタリア、ドイツの3ヵ国の反応が、それぞれの立場を端的に示しているので記載します。
英国:自国の自動車産業の繁栄が優先。
イタリア:長年懸念し主張したが、欧州政府は動きが遅い。欧州政府は無能なのか中国と共謀しているのか?
ドイツ:中国の反応が心配。関税には反対。欧米の対中デカップリングは、徐々に拡大しています。
▶ https://www.reuters.com/world/europe/eu-launches-anti-subsidy-investigation-into-chinese-electric-vehicles-2023-09-13/
▶ https://www.reuters.com/business/autos-transportation/view-reactions-eu-probe-chinese-electric-cars-imports-2023-09-13
中国の駆動用LFP需要は、通常需要がピークを迎える9月にやや回復し、前月比で8.81%増加する見込みです。しかし原料と製造コストが上昇する為、材料メーカーには圧力が掛かる環境となっています。懸念点は素材メーカーの新規受注が予想を下回っている事です。一方、三元系正極材の生産量は9月に前月比3.05%減、前年比4.71%減の5万3600トンになると予想しています。
▶ https://www.mysteel.net/news/all/5042926-lfp-demand-likely-to-miss-traditional-seasonal-high-in-sep
スウェーデンの大手ファッションブランドH&Mは、ロンドンの店舗で古着や中古のアクセサリーの販売を開始します。欧州政府は2022年3月に「持続可能かつ循環型繊維に関するEU戦略」を発表し、その後、2023年7月に繊維製品に拡大生産者責任(EPR)を適用したEU規則を提案しました。この規則案は再利用目的を装った廃棄物の不法輸出の防止、更に繊維廃棄物の分別収集を義務付ける事が含まれています。その為、大手ファッションブランドは対応を急いでおり、様々な対策を実施し始めています。欧州政府と議会はファストファッションに対し厳しい措置を取る姿勢を示しており、圧力が強まっています。
▶ https://thefinancialexpress.com.bd/trade/hm-plans-to-sell-second-hand-clothes-at-london-store
ESGの次のターゲットと言われている「水」に関して、ロックフェラー・アセット・マネジメントとクレーンシェアーズは、海洋及び淡水資源を開発し、持続可能な環境で管理することを目指す「ブルーエコノミー」の上場投資信託(ETF)を立ち上げています。「クレインシェアーズ・ロックフェラー・オーシャン・エンゲージメントETF」という名前で、海洋の健全性を目指し、世界の水産養殖、廃棄物管理、商業漁業、再生可能エネルギー、物流企業への投資を計画しているとプレスリリースで言及しています。
▶ https://kraneshares.com/ksea/
アルミニウムの重要性が一段と増しています。西側のアルミニウム製造関連団体が共同でG7の政治家向けのブリーフィングペーパーを発行しています。4ページの共同ブリーフィングを発行したのは、国際アルミニウム協会、欧州アルミニウム協会、カナダアルミニウム協会、日本アルミニウム協会です。このブリーフィングペーパーはG7向けに発行したもので、アルミニウムの戦略的な重要性を詳説し、持続可能なアルミニウムの調達と製造を実現する為の政策的協力を呼び掛けています。中国は8月からガリウムとゲルマニウムの輸出規制を開始し大きな問題となっています。ガリウムは、ボーキサイトからアルミナAl2O3を精製する工程で生成される副生成物で現在、中国が世界生産の80%を占めています。9月4日には欧州のアルミニウム関連11団体が組織するEuropean Aluminumが欧州議会に共同書簡を送り、アルミニウムを「戦略的原材料」に含めるよう請願したばかりでした。アルミニウムがEU重要な原材料に入ったばかりですが、こうした動きは一気に加速しています。
▶ https://www.aluminum.org/news/international-aluminum-associations-release-action-plan-ahead-g7-trade-ministers-meeting
米国の環境省(EPA)は、プラスチックリサイクルの為に、1億ドルの補助金を開始しました。廃棄物リサイクルにおいては約30年振りとなる大規模な取組みとなります。米国のリサイクル戦略は、リサイクル率を2030年迄に50%とすることを目標としています。プラスチック廃棄物については、リサイクル率は僅か5%程度に留まっています。同時に米国の一人当たりのプラスチック廃棄物量は1980年から2018年迄に263%増加しました。中国やトルコがプラスチック廃棄物の輸入を禁止した為、米国からの輸出量が投棄するプラスチック廃棄物が増加した為、結果として米国のプラスチックのリサイクル率が低下しました。
▶ https://www.epa.gov/newsreleases/biden-harris-administration-invests-more-100-million-recycling-infrastructure-projects
世界最大の金属スクラップ企業であるSIMSは、市況に関するレポートを発行し、利益が減少している事を伝えました。FNARENAがその内容を分析し掲載しています。この分析は、海外市況のトレンドを端的に示しています。SIMSは発表で市場の低迷が続く中、24年度第1四半期の金利・税引前利益(EBIT)がほぼ「損益分岐点(Breakeven)」になると言及しています。世界的な鉄鋼需要の低迷が価格下落となり、スクラップ回収業者の利益率も圧縮、販売量も低迷する事で「低水準の」短期収益が続くと見られています。UBS始め主要な金融機関はSIMSの2024会計年度第2四半期も引続き低迷が続くと見ており、株を「売り推奨」としています。中期的な予想では2025年にはスクラップの価格と流通量の両方で若干の改善が見込まれ、長期的には脱炭素化の恩恵を受けると見ています。SIMSは発表の中で「以前は堅調だった米国市場が弱体化しつつある兆候がある」との認識も示しています。
▶ https://www.fnarena.com/index.php/2023/09/14/short-term-pain-continues-for-sims/
インドネシアが次のEV製造の投資先として活気づき始めています。今週ベトナムのEVメーカーVinFastがインドネシアでのEV生産の為に12億ドルを投資する計画を発表しました。生産開始は2026年を予定しています。更にインドネシア政府は中国の自動車メーカー吉利汽車控股有限公司に2026年迄に国産EVの製造を開始出来るように支援を要請しています。吉利汽車はこの要求に合意していると伝えられています。
▶ https://www.reuters.com/business/autos-transportation/indonesia-asks-chinas-geely-help-build-homegrown-ev-by-2026-2023-09-14/
イタリアの大手鉄鋼メーカーArvediグループのAcciaieria Arvediは自社で鉄スクラップを処理する為に7000馬力の大型シュレッダーを導入しています。シュレッダーはダニエリ製で電炉工場の近隣に金属処理施設を設置しており、今回はその場所への導入となっています。処理能力は毎時最大200トンで年間100万トンの処理が可能です。非鉄回収ラインがあり主にZorbaやZurikの回収も行います。鉄鋼メーカーがスクラップ生産を自社で大規模で行うという点で1つの新しいトレンドと言えるかも知れません。
▶ https://www.danieli.com/en/news-media/news/danieli-heavy-duty-shredder-plant-operation-acciaieria-arvedi_37_841.htm