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NEWSCONの気になるNEWS(2023年8月第5週)
フランスは重要な原材料の採掘と加工に外資規制の適用を拡大する方針を打ち出しています。現行法を拡大適用するもので事実上、中国を念頭にしていると見られています。EUは重要な原材料の内、14品目をほぼ100%海外に依存しており、別の3品目でも95%を海外に依存しています。中国は重要な原材料を直接採掘していなくとも、加工において優位に立っています。世界のリチウムの内、中国で採掘されている量は9%ですが、約60%は中国で精製されています。このような背景もあり、フランス国内や合弁での海外からの投資に規制を掛ける事になっています。欧州の専門家は、EUが打ち出した重要原材料法(CRMA)の定められた期限内に目標を達成する事は非常に困難で、導入速度について楽観的すぎると警告しています。
▶ https://www.euractiv.com/section/economy-jobs/news/eyeing-china-france-mulls-foreign-investment-screenings-in-raw-materials-sector/
中国はインドネシアで行った「ニッケルモデル」と言われる資源戦略をアルミニウムに拡張する動きを活発化させています。その詳細をAG Metal Minorが紹介しています。中国政府は汚染とエネルギー消費を削減する為に、国内で新規のアルミ製錬所の建設に上限を課しました。しかし、需要拡大が続く中、中国企業は内外での生産能力を年間1,000万トン拡大する計画を立てています(中国国内の総生産量は、2022年に4,021万トンでした)。拡大は東南アジア諸国で、中心となるのがインドネシアです。これらの膨大な生産能力と供給量の追加は近い将来、アルミの国際取引価格に影響が出ると懸念されています。インドネシアは既にボーキサイトの輸出を禁止しています。6月に中国アルミ大手の山東南山アルミニウムは、インドネシアに生産能力25万トンのアルミナ精錬所を建設する計画を発表し、7月には中国政府が華豊グループのインドネシアに生産能力200万トンの製錬所に投資する事を許可しています。2022年の中国国内生産の25%にあたる生産能力の追加は、アルミの国際価格の上値を重くする可能性がある、と同サイトは分析しています。
▶ https://agmetalminer.com/2023/08/24/aluminum-prices-china-and-indonesia/
ベトナム政府が2020年に打ち出した廃棄物の拡大生産者責任(EPR)の施行を巡り、特に包装材に関して業界団体が一貫して反対しています。ベトナムでは2020年の環境法及び政令第8号により、2024年1月1日からバッテリー、タイヤ、潤滑剤及び梱包材を輸入または生産する企業に対して、製品及び梱包材のリサイクルが義務付けられます。また電子機器を輸入、又は製造する企業は2025年1月1 日からリサイクル義務化の対象となり、自動車を輸入または生産する企業は2027年1月1日以降に適用になります。輸入業者と生産者が製品やパッケージを独自にリサイクルしない場合、ベトナム環境保護基金に手数料を支払い、品目のリサイクルを支援してもらう必要があります。2023年7月、政府はガイダンスを開催し、料金について詳細を説明しています。これらの料金について、在ベトナム米国商工会議所、ベトナム水産物輸出生産者協会、ベトナム繊維アパレル協会を含む14団体は、ベトナムのリサイクルが最近の法案により先進国よりも高い料金を要求している事に懸念を示しています。ベトナムのアルミニウム包装のリサイクル手数料は、西欧州14ヶ国の平均より1.26倍高く、ガラスのリサイクル料金は2.12倍です。各協会はリサイクル手数料の支払いが年間6兆1,300億ドン(2億5,735万ドル)に達すると見積っています。ベトナムの労働者の給料はヨーロッパ諸国の労働者の給与の僅か10%である為、理想的なコストはヨーロッパ諸国の30?50%であるべきと考えています。協会はメーカーと消費者がリサイクル業者を支援する為に「毎年数兆ドン」を支払うのは不合理である、との見解を示しています。
▶ https://www.retailnews.asia/recycling-fees-in-vietnam-higher-than-in-europe/
▶ https://english.thesaigontimes.vn/recycling-seen-sending-business-costs-in-vietnam-soaring/
▶ https://www.globalcompliancenews.com/2022/03/19/vietnam-new-extended-producer-responsibility-regime090322/
24日まで開催されたBRICS会議で、アルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、UAEが加盟国として招待され、来年1月1日から正式な加盟国となります。サウジ、イラン、UAE、エジプトが含まれている事から、中東中心の地政・経済に重点を置き、有事で西側(G7等)による制裁が発生しても、エネルギー問題で2次的な影響を受けない下地を作っています。また加盟国の拡張により「貿易に新たな道が開かれる」と見ています。新たな道の最も大きな変化点は、交易時に相互通貨を利用する事で、今後、米ドルの影響を軽減する方策が益々拡大していくことになります。今回、中国が「アフリカの工業化」にコミットした事、またアフリカの中核国であるエジプトとエチオピアが加入する事で、ナイジェリアとケニアの2ヵ国を除き、近い将来、アフリカの残りの殆どの国々が「西側から東側に立場を移す」事になると見ています。分析では、それらの国々が西側陣営にいる事で何の利益も得られないという結論となっています。
▶ https://www.aljazeera.com/news/2023/8/24/analysis-wall-of-brics-the-significance-of-adding-six-new-members
24日に英国政府は、今後数ヵ月以内に政府による「バッテリー戦略」を策定・公表する為、企業、投資家、電池関連の専門家の意見を求める「意見募集」を開始しました。期限は9月28日迄となっています。英国政府は、電池を英国内で設計、製造し、電池産業が長期的に発展する事を優先課題とすると発表しています。
▶ https://www.gov.uk/government/calls-for-evidence/uk-battery-strategy#:~:text=The%20UK%20government%20expects%20battery,growth%2C%20productivity%2C%20and%20jobs
中国の明らかな景気減速が金属価格を「デフレ」に導いている可能性が分析されています。Q3 に入り中国では、原油とアルミニウムの輸入が減少しています。原油は上半期に輸入したものは消費されたのではなく主に備蓄に回され、現在の貯蔵レベルは米国の戦略備蓄の約 3 倍と推定されています。アルミはロシアの安価なアルミニウム輸入があるにも関わらずQ3に入り、国内での生産・在庫が十分な事から輸入量は減少し続けています。中国は低迷する株式市場を活性化させる試みとして、28日から株式取引の印紙税を半額にした為、金属価格は上昇しましたが、これは一時的な措置によるものです。また中国政府による民間部門の圧政も懸念点に上がっています。中国専門の研究者は、中国共産党は民間部門の経済バブルが党の権力保持を脅かす可能性を懸念しており、景気減速や不動産部門への大胆な景気刺激策が遅れ、逆に規制をする事で金属価格に更に影響を与える可能性を指摘しています(17ヵ月振りに取引再開された恒大株は8月28日の1日で一時87%も下げています。BRICS会議で習近平氏がスピーチをパスした事といい、実際にはかなり悪い為、何かあるのかも知れません)。
▶ https://agmetalminer.com/2023/08/28/chinas-slowdown-affecting-metal-prices/
2023年末から2024年前半にかけての炭酸リチウム価格に影響を与える要素を、MySteel Globalが解説しています。この時期にアフリカのリチウム鉱山の生産量が増加するか?が炭酸リチウムの生産の回復速度と価格の鍵となると結論づけています。現時点では、オーストラリア産のスポジュメンの供給量が炭酸リチウムの価格に影響を与える重要な要素です。オーストラリアはスポジュメンの世界供給量の 85% を占めており、現在計画中のものを入れると13のプロジェクトが進行中です。リチウム精鉱の供給量は世界の50%を占めており、中国のリチウム精鉱輸入量の65%はオーストラリアからです。炭酸リチウム価格は今後上昇すると見込まれていますが、少なくとも上昇までには2ヵ月を要する見込みです。中国では、自社が鉱山を所有する製錬所の炭酸リチウム価格は、市場の底値に耐える事が出来ますが、外部からリチウム精鉱を購入する製錬所の場合、精鉱購入価格を下げる事ができない為、加工コストを加えた自社の総コストでしか炭酸リチウムの販売ができません。その為、炭酸リチウムの市場価格が下がると、生産を停止又は削減せざるを得ません。そうした現象が起こると、市場全体の炭酸リチウムの供給は減少し始めます。こうして炭酸リチウムの供給が減少している時にEV市場が急速に活性化すると、過去の様に炭酸リチウムの価格が大きく反応します。それは自社で鉱山を所有しない中国メーカーの多くが数社の精鉱供給先に依存している場合が多いからです。その為、今年末から来年に掛けて、アフリカのリチウム鉱山の生産量が増加すれば、供給の多様化と精鉱量が増加し、価格は安定してくると見られています。
▶ https://www.mysteel.net/news/all/5042391-lithium-supply-in-australia-a-key-factor-influencing-lithium-carbonate-prices-
欧州と米国が、鉄鋼とアルミニウムの貿易に向け、炭素排出量を測定する為の共通の方法論について協力する意向を示しています。しかし現実には様々な困難が伴うようです。先週、欧州委員会の通商責任者と米通商代表が会談した際に協力を明らかにし、10月迄に合意に達する事を望んでいる事を強調しました。米国は欧州からの鉄鋼とアルミの輸入への関税を2018年から開始し、欧州政府も相殺関税を課しました。2021年10月31日に2年の期限付きで「持続可能な鉄鋼とアルミニウムに関する世界的な取り決め」の共同声明に署名する事で、鉄鋼とアルミニウムの関税を一時的に棚上げしています。しかし10月31日の期限で双方の関税が復活する為、その前に何等かの合意が必要となっています。欧州ではEU炭素市場とそれに対応する(ゲームチェンジャーと言われる)炭素国境調整メカニズム(CBAM:国境炭素税)が整備されていますが、米国ではこのような包括的な炭素市場と炭素税は議会で成立しない見込みです。その為、時間を引き延ばす為の「非常に緩やかな協力や合意になる」と見られています。鉄鋼やアルミといった炭素集約型の産業に対するアプローチの違いが、気候変動に対する米国と欧州の哲学の違いを浮き彫りにしていると専門家は見ています。これはまた「別の保護貿易」を生み出す要素になりそうです。
▶ https://news.yahoo.com/eu-trade-chief-aiming-steel-142411296.html
欧州が水素でモロッコに多額の投資をしています。モロッコにおける、水素の累積投資は、総額で約164億ユーロ(2兆5000億円)に達しています。欧州大陸や欧州のモロッコにおけるプロジェクトが主要な供給先となります。モロッコは欧州のグリーン水素市場における最重要なプレーヤーを目指し、2050年迄に総出力160TW/時を達成するという目標を掲げて、計画を加速しています。それでも欧州全体のグリーン水素の需要の5%を満たすに過ぎず、いかに水素製造や輸送を含むインフラに巨額な投資が必要なのかを示しています。現在、世界の総水素生産量の内、「グリーン」なものは0.04%未満に過ぎません。また水の電気分解で生成するグリーン水素は製造工程で使用エネルギーの約1/3 がエネルギー損失として失われます。更に水素の輸送には燃料換算で 10% が失われる事から、その分を追加する必要があります。1923年2 月 4 日に水電気分解で産業用グリーン水素を製造するというアイデアが提案されて100年目の今年、グリーン水素については、巨額な投資が世界中で展開され続けています。
▶ https://www.moroccoworldnews.com/2023/08/357268/morocco-rising-to-become-key-player-in-europes-green-hydrogen-market
▶ https://www.theguardian.com/commentisfree/2023/aug/27/the-guardian-view-on-hydrogen-hype-its-perhaps-not-as-green-as-you-think
世界最大の銅産出国であるチリの銅の採掘コストが今年に入り29%も上昇しています。この上昇は採掘される鉱石品位の低下から来ており、同じ量の銅を抽出するにはより多くの岩石を破砕する必要がある為です。他にも賃金、エネルギー、精鉱料金の上昇が重なっており、銅精鉱から得られる副産物としてのモリブデンと金の売却益が無ければ、コスト上昇は更に深刻になっています。この傾向は既に色々な所で言及されており、今後開発される銅鉱山は比較的品位が落ちる所になる為、より採掘と精鉱コストが上がると見られています。銅は世界的な景気循環や中国での一時的な需要の低迷もあり、現在スーパーサイクルの間にあると言われています。しかし今年に入り欧州でも米国でも政府が重要な原材料リストに加える等、重要性は益々上がっています。世界的なコモディティー市場であるロンドン・シティーの関係者は、フォーチュン誌に「2008年の歴史的な石油価格高騰は、2025年迄に予想される銅ブームに比べれば「子供の遊び」のようだ」と述べるなど、強気の見方が急激に台頭し始めています。
▶ https://www.mining.com/web/top-copper-producing-nation-chile-sees-mining-costs-jump-29/
スイスの大手包装関連プロバイダーであるSchweizerische Industrie Gesellschaft(SIG) は世界的に問題となっている食品に利用される複合素材多層フィルムの内、アルミニウムフィルムを含有するものを2025年迄に85%、2030年迄に90%削減する事を発表しています。欧州では大手のテトラパック社もアルミ・樹脂多層フィルムの削減とリサイクル性への取組を発表しています。SIGは、同時に完全バリアのアルミニウムフリーの紙(繊維)ベースの無菌包装構造を開発する意向を発表しました。現在アルミニウムフィルムを含有した複合素材多層フィルムをリサイクルする技術が乏しく、リサイクル材料も品質が劣る事から問題となっています。ガスや液体のバリア性能が高い複合素材多層フィルムは長年食品包装に広く採用されてきました。欧州では現在提案されている「包装及び包装廃棄物指令の改訂」により、拡大生産者責任(EPR)が採用されると同時に、医療品等を除き、包装材料に一定のリサイクル材料を使う事が義務付けられている為、メーカーは一斉に動き出しています。
▶ https://www.sig.biz/gb/media/press-releases/sig-commits-to-producing-aseptic-cartons-with-increasing-fiber-content-to-over-90-to-enter-paper-recycling-stream
連続式の熱分解技術を廃タイヤに利用し商業化する事が発表されています。米国InnoVent Renewables社は独自の熱分解技術を開発し、昨年まで実証試験を行ってきました。細断されたタイヤを熱分解時に工程内で発生するガスを利用し予熱処理を行い効率化する為にバッチ式ではなく連続式の工程が可能になっています。生成された熱分解油は、処理後に製品に向けた中間材として販売されます。商業利用の為の新工場はメキシコのモンテレーに計画されており、生産開始は2024年内となっています。
▶ https://innoventrenewables.com/news/innovent-renewables-launches/
先週、トルコの中央銀行が政策金利を0.75%引き上げ25%にした事で、市場は大きく反応しています。発表後1日で7%という急激なトルコリラ(TRY)高となり、TRYでの長鋼販売は価格を引き下げ、もしくは販売を一時停止しました。またUSドルでの国内販売では価格が上昇し、需要家は影響を受けました。同じくドル建ての鉄筋も上昇しました。エルドアン政権下で原則を無視した金融政策を行い経済が混乱した為、トルコ投資を敬遠していた海外投資家は、再びトルコに注目し始めています。トルコの金融当局が正統な金融政策を示し続ければ、トルコに海外資産が戻る可能性が高いと伝えられています。専門家はトルコが「世界規範に沿ったルールに基づいた政策に従う」限り、外国投資家にとって大きな望みとなると述べています。市場では暫く時間が掛かると見られていますが、トルコ経済は正常化に向けて大きくかじ取りをしており、早くも投資家が動き始めています。大地震後に経済・金融政策の失政で超高インフレと通貨暴落を起こした為、暫く国内の鉄鋼需要が弱く鉄スクラップ輸入への影響も続いていましたが、今後徐々に解消しそうです。
▶ https://www.reuters.com/markets/rates-bonds/after-turkeys-giant-rate-hike-foreign-investors-mull-return-2023-08-28/
「EV乗用車の普及が道路交通全体における化石燃料の消費減に直接結び付くのか?」という問題は広く議論されてきました。今回、調査会社のRystad Energyが行った調査が、今まで思われていたものと違う結果を示している事が注目されています。ノルウェーを対象に行われた調査では、道路交通における全体の燃料消費量に最も関係するものは、バスやトラック等の大型商用車と全体の車の数が影響を与えている事が判明しています。現在ノルウェーの新車(乗用車)販売の約90%はEVが占めています。しかしノルウェーの道路交通における燃料需要は2017年から2023年の間に僅か10%しか減少しなかったというデータが出ています。ノルウェーでもEV化が困難で燃料消費が多い大型バス・トラックのEV率は7.6%に過ぎず、また運転年齢人口の増加により1人当たりの乗用車台数は2005の0.65台から2023年には0.75台に増えています。道路交通全体における化石燃料の消費減には複雑な要素が絡み、乗用車のEV化が唯一の解ではないという事が示されています。
▶ https://www.rystadenergy.com/news/norway-fuel-demand-electric-car-bus-truck-gasoline-diesel
欧州では巨大なバッテリーギガ工場で起きている環境や労働問題が取り沙汰され始めています。CATLはハンガリーの工場で汲み戻し量の3倍以上の速さで周囲の地下水を汲み上げた事で、深刻な過剰使用問題を引き起こし、環境省からの調査が入っています。欧州連合の地下水指令に違反したものです。同じくハンガリーでは、韓国のリチウムイオン電池リサイクル業者ソンイール・ハイテック・ハンガリーは、労働者への重大な危険、災害管理違反、有害廃棄物の不適切な取扱いで繰り返し罰金を科されています。CATLは1年前にデブレツェンに欧州最大となる100GW電池工場を建設する為に73億ユーロ(1兆1300億円)という巨額の投資を発表しました。しかし規模が巨大で様々なアセスメントが必要な事と需要の鈍化により、中国本社は建設を「段階的に実施する」と発表内容を最近になって変更しています。欧州の環境・労働規制は中・韓とは比較にならない程厳しい為、こうした問題は予想されていました。ハンガリーにはEve Energy、Sunwoda Electronic、BYD、Huayou Cobaltも生産拠点を持っています。
▶ https://www.yicaiglobal.com/news/eu-launches-probe-into-catls-battery-plant-in-hungary-over-groundwater-directive-local-politician-says
ウガンダ政府が中古衣類品の輸入禁止を9月1日から実施すると発表し、欧米で大きな反響が起きています。ウガンダの措置は、輸入中古衣料がウガンダの綿織物産業に影響を与えている事に対応したものです。2020年にウガンダの衣類輸出は過去最高を記録しています。2016年に東アフリカ共同体(EAC)は、環境問題や闇取引の横行から3年以内に古着の輸入を全面的に禁止する事で合意していました。その後、米国政府は恵国待遇である「アフリカ成長機会法(AGOA)」をEACに対し停止すると宣言した事から、ルワンダのみが輸入禁止に踏み切りました。ウガンダは他のアフリカ諸国と同様に大量の中古衣料を輸入してきました。Oxfamによれば、欧米の慈善団体に寄付された衣服の約70%はアフリカに送られています。英国の繊維産業界は、ウガンダの禁止措置を緊急事態として、英国政府と協議を開始しています。EU 環境庁 EEA の報告によるとEU から輸出される廃棄繊維の量は 20 年間で 3 倍に増加しています。先進国で慈善団体等に寄付された古着は「輸出地で役立つ」という消費者の考えと現実は全く一致しておらず、再利用されない膨大な量の中古衣料は不法に投棄されています。近年、先進国の中古衣料品は、問題が大きくなった事から、アフリカからアジアに流れ始めています。ウガンダの今回の措置には「裏話」があります。2018年、2016年のEACの決定を受け、米国の二次材料リサイクル繊維協会(SMRTA)が、米国通商代表部(USTR)に「請願書」を提出します。請願書にはEACが中古衣料品の輸入を禁止した場合、米国の雇用4万人と輸出額で1億2,400万ドルが失われるとの内容がありました。当時のトランプ政権は、米国通商代表部(USTR)を通じて、東アフリカのケニア、ウガンダ、タンザニア、ルワンダの4ヵ国を米国のアフリカ成長機会法(AGOA)から外すと脅しをかけ、関税を復活させる交渉を行いました。その為、繊維産業が盛んでないウガンダ以外が禁止措置に踏み切る事を止めました。人口が多い欧米では繊維廃棄物と価値の低いWEEE(電気・電子廃棄物)は頭痛の種で、毎年「中古」と称して膨大な量が東アフリカ諸国を通じてアフリカ全土に流れ、多くが最終的に廃棄されています。
▶ https://fashionunited.in/news/business/uganda-bans-the-import-of-discarded-clothing-from-europe-and-the-us/2023082841304
EUの自動車メーカー団体ACEAは、再生プラスチックを新車に少なくとも25%利用する事を含む新しいEU使用済み自動車指令(ELV指令)に一貫して反対しています。既に1カ月程前には「大きな懸念」をポジションペーパーとして公式に発表していますが、その後もEURACTIVの調査で反対している事が伝わっています。ACEAはEURACTIVの取材に対し、「含有量目標には直接反対していないが、(25%という)目標が実行不可能な場合がある」と警告しています。プラスチックの業界団体であるPlastic Europeも同様に懸念を示しています。自動車に使用される高品質ポリマーは「リサイクルが非常に難しい場合がある」と認め、ELV改正案の25%目標は「マテリアルリサイクルだけでなく、ケミカルリサイクル組み合わせによってのみ達成可能であり、今後多額の投資が必要となる」と警告しています。欧州委員会は、リサイクルプラスチックを25%新車に利用するコストをわずか「40ユーロ」と推定しています。しかし、このコストは余りにも楽観的過ぎるとの声が上がっているのも事実です。環境イメージは自動車メーカーにとって最も重要な要素の為、遠回しな懸念を示していますが、本心はコスト増で頭を悩ませているという事です。現在の欧州の政治情勢から行くと、この指令案もある程度妥協される可能性があります。
▶ https://www.euractiv.com/section/circular-materials/news/recyclers-applaud-eus-new-plastic-recycling-goal-for-cars-automakers-wary/
ポーランド政府は、欧州の4つの気候関連法に対して、欧州連合司法裁判所に公式に異議申し立てを行いました。乗用車と小型商用車の排ガス規制と2035年以降の内燃機関車の新車販売の禁止、2030年のGHG排出削減目標と土地利用と森林に関する法律(LULUCF)、EUの炭素市場における汚染許容量を変更する法案、EU温室効果ガス排出量取引システムの市場安定準備金に関する法律、の4つが何れも事前の立法条件を満たしていないという趣旨の内容となっています。更にポーランドは今後、EUの炭素国境調整メカニズム(国境炭素税)にも異議を申し立てる意向を示しています。ポーランドの気候環境大臣は「EUはポーランド人がどのような車を運転するかについて権威主義的な決定を下し、ポーランドのエネルギー価格を引き上げたいのでしょうか?ポーランド政府は欧州政府の独裁を許さない」と発言しています。ポーランド政府は土地利用や森林に関する法律は国家の主権的決定に影響を与える為、EU加盟国の全会一致で合意されるべきだったと主張し、新しい内燃機関車の販売禁止は欧州の自動車産業、関連経済部門、更に広い社会に深刻な影響を与えるリスクがあると言及しています。これに対し欧州政府は、この訴訟は欧州議会と欧州理事会に対するものとの認識を示し、ポーランドの主張を拒否しています。過去の判例から、この訴訟が成功する可能性は殆ど無いと見られていますが、秋に行われるポーランドの総選挙と国民投票に大きな影響があると見られています。
▶ https://eulawlive.com/polands-legal-challenges-against-carbon-emission-tax-published-in-oj/
更にドイツ政府とフランス政府が共同で、欧州政府に対し、企業の報告業務の削減を要請しています。仏独によるこのイニシアチブは欧州政府が新たな環境規則を策定する事を「一時停止」するよう求めた仏マクロン大統領の発言から来ています。マクロンがこの発言をした当時、ドイツの法務大臣はこれを歓迎、連立政権の緑の党は批判していました。欧州企業には気候関連の非財務開示情報、GHG排出報告、アセスメントやデューデリジェンスに関する報告等、非常に負担の掛かる規則が複数課されています。8月29日にドイツ政府は低迷する経済の刺激策として「10項目の計画」を発表し、中小企業向けの年間約70億ユーロの減税措置を発表しています。ドイツ政府にとって現在は経済政策が最優先事項となっており、10項目の計画の中で「重要な優先事項の 1 つはドイツ国内及びEUレベルで手続きを迅速化し、官僚制度を削減し、可能であれば新たな官僚制度(法律や報告義務)を創設すべきではない」と主張しています。この10項目の計画には、反対していたドイツ緑の党が政策転換し、策定に参加しています。欧州委員会は既に企業に対するEUの報告義務を秋までに「25%削減する計画」を提示する予定で、9月12日頃に提示する中小企業向けの「救済策」の一部となる可能性が高いと見られています。企業の持続可能性デューデリジェンス指令(CSD)には影響が出ると考えられています。9月13日には現欧州政権のトップであるフォン・デ・アライエン委員長の任期中最後の「欧州連合教書演説」があります。その後は、来年6月の欧州議会選挙(5年に1度)まで、選挙モードに大きく切りかわります。現在の経済情勢では気候関連法案は暫く停滞しそうです。
▶ https://www.euractiv.com/section/economy-jobs/news/germany-france-ask-eu-to-cut-bureaucracy-for-companies/
新たな研究により電極の問題解決が前進した事で、充電式空気亜鉛電池 (ZAB)の商業利用にむけ注目が集まっています。オーストラリアのエディス・コーワン大学(ECU)の研究によるもので、安価な新素材を使用して亜鉛空気電池の効率、出力密度、寿命を向上させる事に成功しています。この発表は各方面で報道され始めています。空気亜鉛電池は、亜鉛負極と空気正極で構成されています。これまでの主な欠点は空気電極の性能が悪く寿命が短い為に出力が制限される事でした。電極にカーボン、鉄、コバルト化合物を利用する事でZABの性能を向上させ、高いピーク電力密度 、0.77 V の低い電圧ギャップ、更に950 時間の超長寿命を実現しています。EVには向きませんが、蓄電用途等での利用が期待されています。
▶ https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/eom2.12394
▶ https://www.theengineer.co.uk/content/news/zinc-air-batteries-offer-lithium-alternative/
電池材料で中国とのデカップリングを急ぐ米国企業に資金が流入しています。米国のバッテリー材料とリサイクルの新興企業Redwood Materialsは新たに10億ドル(1450憶円)以上を調達しました。同社は最近、米エネルギー省から20億ドルの融資の約束も取り付けています。10億ドルの資金調達は複数の大手投資機関が参加しています。これらの資金は生産能力と米国内の電池サプライチェーンを拡大する事に当てられ、「米国製」のリチウム、ニッケル、コバルトを生産する事にあります。同社は2023年末迄に銅箔生産を開始する為に米国内での銅使用を促進します。米国は年間数十万トンの銅や銅スクラップをアジアに輸出している為、重要な原材料に指定された銅が国外に流出しています。2025 年迄に正極活物質と負極箔の年間生産能力を約 100 GWhまで高める事を計画しています。更に2030年迄には生産量を年間500GWhまで拡大し500万台のEVに電池材料を供給する計画です。
▶ https://www.redwoodmaterials.com/news/redwood-series-d/
インドが本格的に「修理する権利(R2R:Right to Repair)」に向かい動き始めています。英国政府は2021 年に「修理の権利に関する規制」を制定し、欧州政府は2023年3月に「消費者が『修理』をする権利とそのツールを利用可能とする」規則を採択し、米国ではニューヨーク州が「デジタルフェア修復法」を制定、今年7月に発効しています。米国の R2R は州ごとにレベルが異なります。米国の現政権は2021年に「米国経済の競争促進に関する大統領令」を発令し、その中でR2Rに似た指令を出していますが、今のところ殆ど成果をあげていません。今年6月G20で「持続可能な開発の為のライフスタイルに関するG20ハイレベル原則」が採択されました。この原則により、循環経済へのアプローチがより明確になり、増大する電子廃棄物に取り組む法的インセンティブが生まれています。「修理する権利」は徐々に世界に浸透しており、インド消費者省(MoCA)は今年R2Rポータルを立ち上げています。
▶ https://www.atlanticcouncil.org/blogs/new-atlanticist/indias-embrace-of-right-to-repair-can-transform-the-electronics-sector/
Recycling Todayが主催する米国のスクラップエキスポ(Scrap Expo)が9月12~13日にケンタッキー州で開催されます。エキスポを前に同誌が米国の鉄鋼業者とスクラップ業者の関係について述べています。大手鉄鋼メーカーのNucorに代表される電炉への投資とスクラップ企業の垂直統合はトレンドとなっており、今後もこの傾向は続くものと見られています。今回のエキスポの話題の1つは垂直統合が業界に与える影響で、その点についてエキスポでは徹底的な議論を行う予定です。Nucorの戦略的スクラップ企業の買収は安定した品質と量の原材料を確保する事で生産プロセスを合理化し、更にコストを削減しただけでなく、「業界の性質を変えた」と見られており、この点は注目されています。
▶ https://www.recyclingtoday.com/news/scrap-expo-2023-consolidation-steel-industry-vertical-integration-session-preview/
通貨ユーロを使う20ヵ国の景気は引き続き低調な予測となっています。31日に出された最新のデータは、引続き頑固なインフレを示し、企業と家計への融資額の減少と景気停滞を伝えています。特に住宅セクターは今後数ヵ月の見通しが暗い事を示しています。またECBが金融政策を更に引き締める可能性が高く、状況が直ぐに改善する可能性は低いと見られています。ECBの引き締めにより、経済活動は更に悪化する可能性があり、景気後退のリスクが高まっています。
▶ https://www.ft.com/content/4816aa38-e135-4b31-9c1a-bcddf452b780
グレンコアは事業の目論見書に「虚偽記載」をしたという理由で、国際的な大手金融機関数十社から損害賠償請求を起こされ係争中です。これによりコバルトを始めとした天然資源価格に影響が出る懸念が湧いています。訴訟はバンガード、リーガル&ジェネラル、HSBCを含む大手数十社が起こしています。グレンコアは過去にコンゴ民主共和国の銅とコバルトの鉱山に関連する贈収賄容疑で罰金を受けており、当時の事業目論見書に虚偽記載が行われた事が起訴理由となっています。グレンコアは昨年、刑事事件としての国際捜査の結果、贈収賄と市場操作を認め有罪となり、米国に10億ドル、英国に2億8000万ポンド、ブラジルに4000万ドルの罰金を支払っています。今回は民事集団訴訟となっており、賠償金額によっては投資や事業に影響が出ると見られています。
▶ https://www.ft.com/content/6e1e447a-fe5c-49c7-a393-e7e57a1c6ccb
Business Insiderが中国経済について分析を行っています。「基本的に中国政府は社会的な不安定の兆候を非常に恐れており、国内の金融システムが脆弱なため危機を引き起こす可能性があると懸念している。中央政府は経済問題を不動産等の破綻セクターへの是正を考慮せずに「最も顕著なものから順に、断片的に処理」している。時間が経つにつれて、このやり方は債務問題を悪化させるだけであり、システムの不安定性を増す事になる」というものです。習近平氏はBRICSでのスピーチを避け、来月開催のG20 も欠席するとの噂から色々な憶測が飛び始めています。金利が高い現在、付利されない(利息が付かない)金価格が急上昇している事も投資家心理を示しているのかも知れません。
▶ https://www.businessinsider.com/china-xi-jinping-hiding-bad-data-economy-debt-real-estate-2023-8?r=US&IR=T
▶ https://www.euractiv.com/section/economy-jobs/news/eyeing-china-france-mulls-foreign-investment-screenings-in-raw-materials-sector/
中国はインドネシアで行った「ニッケルモデル」と言われる資源戦略をアルミニウムに拡張する動きを活発化させています。その詳細をAG Metal Minorが紹介しています。中国政府は汚染とエネルギー消費を削減する為に、国内で新規のアルミ製錬所の建設に上限を課しました。しかし、需要拡大が続く中、中国企業は内外での生産能力を年間1,000万トン拡大する計画を立てています(中国国内の総生産量は、2022年に4,021万トンでした)。拡大は東南アジア諸国で、中心となるのがインドネシアです。これらの膨大な生産能力と供給量の追加は近い将来、アルミの国際取引価格に影響が出ると懸念されています。インドネシアは既にボーキサイトの輸出を禁止しています。6月に中国アルミ大手の山東南山アルミニウムは、インドネシアに生産能力25万トンのアルミナ精錬所を建設する計画を発表し、7月には中国政府が華豊グループのインドネシアに生産能力200万トンの製錬所に投資する事を許可しています。2022年の中国国内生産の25%にあたる生産能力の追加は、アルミの国際価格の上値を重くする可能性がある、と同サイトは分析しています。
▶ https://agmetalminer.com/2023/08/24/aluminum-prices-china-and-indonesia/
ベトナム政府が2020年に打ち出した廃棄物の拡大生産者責任(EPR)の施行を巡り、特に包装材に関して業界団体が一貫して反対しています。ベトナムでは2020年の環境法及び政令第8号により、2024年1月1日からバッテリー、タイヤ、潤滑剤及び梱包材を輸入または生産する企業に対して、製品及び梱包材のリサイクルが義務付けられます。また電子機器を輸入、又は製造する企業は2025年1月1 日からリサイクル義務化の対象となり、自動車を輸入または生産する企業は2027年1月1日以降に適用になります。輸入業者と生産者が製品やパッケージを独自にリサイクルしない場合、ベトナム環境保護基金に手数料を支払い、品目のリサイクルを支援してもらう必要があります。2023年7月、政府はガイダンスを開催し、料金について詳細を説明しています。これらの料金について、在ベトナム米国商工会議所、ベトナム水産物輸出生産者協会、ベトナム繊維アパレル協会を含む14団体は、ベトナムのリサイクルが最近の法案により先進国よりも高い料金を要求している事に懸念を示しています。ベトナムのアルミニウム包装のリサイクル手数料は、西欧州14ヶ国の平均より1.26倍高く、ガラスのリサイクル料金は2.12倍です。各協会はリサイクル手数料の支払いが年間6兆1,300億ドン(2億5,735万ドル)に達すると見積っています。ベトナムの労働者の給料はヨーロッパ諸国の労働者の給与の僅か10%である為、理想的なコストはヨーロッパ諸国の30?50%であるべきと考えています。協会はメーカーと消費者がリサイクル業者を支援する為に「毎年数兆ドン」を支払うのは不合理である、との見解を示しています。
▶ https://www.retailnews.asia/recycling-fees-in-vietnam-higher-than-in-europe/
▶ https://english.thesaigontimes.vn/recycling-seen-sending-business-costs-in-vietnam-soaring/
▶ https://www.globalcompliancenews.com/2022/03/19/vietnam-new-extended-producer-responsibility-regime090322/
24日まで開催されたBRICS会議で、アルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、UAEが加盟国として招待され、来年1月1日から正式な加盟国となります。サウジ、イラン、UAE、エジプトが含まれている事から、中東中心の地政・経済に重点を置き、有事で西側(G7等)による制裁が発生しても、エネルギー問題で2次的な影響を受けない下地を作っています。また加盟国の拡張により「貿易に新たな道が開かれる」と見ています。新たな道の最も大きな変化点は、交易時に相互通貨を利用する事で、今後、米ドルの影響を軽減する方策が益々拡大していくことになります。今回、中国が「アフリカの工業化」にコミットした事、またアフリカの中核国であるエジプトとエチオピアが加入する事で、ナイジェリアとケニアの2ヵ国を除き、近い将来、アフリカの残りの殆どの国々が「西側から東側に立場を移す」事になると見ています。分析では、それらの国々が西側陣営にいる事で何の利益も得られないという結論となっています。
▶ https://www.aljazeera.com/news/2023/8/24/analysis-wall-of-brics-the-significance-of-adding-six-new-members
24日に英国政府は、今後数ヵ月以内に政府による「バッテリー戦略」を策定・公表する為、企業、投資家、電池関連の専門家の意見を求める「意見募集」を開始しました。期限は9月28日迄となっています。英国政府は、電池を英国内で設計、製造し、電池産業が長期的に発展する事を優先課題とすると発表しています。
▶ https://www.gov.uk/government/calls-for-evidence/uk-battery-strategy#:~:text=The%20UK%20government%20expects%20battery,growth%2C%20productivity%2C%20and%20jobs
中国の明らかな景気減速が金属価格を「デフレ」に導いている可能性が分析されています。Q3 に入り中国では、原油とアルミニウムの輸入が減少しています。原油は上半期に輸入したものは消費されたのではなく主に備蓄に回され、現在の貯蔵レベルは米国の戦略備蓄の約 3 倍と推定されています。アルミはロシアの安価なアルミニウム輸入があるにも関わらずQ3に入り、国内での生産・在庫が十分な事から輸入量は減少し続けています。中国は低迷する株式市場を活性化させる試みとして、28日から株式取引の印紙税を半額にした為、金属価格は上昇しましたが、これは一時的な措置によるものです。また中国政府による民間部門の圧政も懸念点に上がっています。中国専門の研究者は、中国共産党は民間部門の経済バブルが党の権力保持を脅かす可能性を懸念しており、景気減速や不動産部門への大胆な景気刺激策が遅れ、逆に規制をする事で金属価格に更に影響を与える可能性を指摘しています(17ヵ月振りに取引再開された恒大株は8月28日の1日で一時87%も下げています。BRICS会議で習近平氏がスピーチをパスした事といい、実際にはかなり悪い為、何かあるのかも知れません)。
▶ https://agmetalminer.com/2023/08/28/chinas-slowdown-affecting-metal-prices/
2023年末から2024年前半にかけての炭酸リチウム価格に影響を与える要素を、MySteel Globalが解説しています。この時期にアフリカのリチウム鉱山の生産量が増加するか?が炭酸リチウムの生産の回復速度と価格の鍵となると結論づけています。現時点では、オーストラリア産のスポジュメンの供給量が炭酸リチウムの価格に影響を与える重要な要素です。オーストラリアはスポジュメンの世界供給量の 85% を占めており、現在計画中のものを入れると13のプロジェクトが進行中です。リチウム精鉱の供給量は世界の50%を占めており、中国のリチウム精鉱輸入量の65%はオーストラリアからです。炭酸リチウム価格は今後上昇すると見込まれていますが、少なくとも上昇までには2ヵ月を要する見込みです。中国では、自社が鉱山を所有する製錬所の炭酸リチウム価格は、市場の底値に耐える事が出来ますが、外部からリチウム精鉱を購入する製錬所の場合、精鉱購入価格を下げる事ができない為、加工コストを加えた自社の総コストでしか炭酸リチウムの販売ができません。その為、炭酸リチウムの市場価格が下がると、生産を停止又は削減せざるを得ません。そうした現象が起こると、市場全体の炭酸リチウムの供給は減少し始めます。こうして炭酸リチウムの供給が減少している時にEV市場が急速に活性化すると、過去の様に炭酸リチウムの価格が大きく反応します。それは自社で鉱山を所有しない中国メーカーの多くが数社の精鉱供給先に依存している場合が多いからです。その為、今年末から来年に掛けて、アフリカのリチウム鉱山の生産量が増加すれば、供給の多様化と精鉱量が増加し、価格は安定してくると見られています。
▶ https://www.mysteel.net/news/all/5042391-lithium-supply-in-australia-a-key-factor-influencing-lithium-carbonate-prices-
欧州と米国が、鉄鋼とアルミニウムの貿易に向け、炭素排出量を測定する為の共通の方法論について協力する意向を示しています。しかし現実には様々な困難が伴うようです。先週、欧州委員会の通商責任者と米通商代表が会談した際に協力を明らかにし、10月迄に合意に達する事を望んでいる事を強調しました。米国は欧州からの鉄鋼とアルミの輸入への関税を2018年から開始し、欧州政府も相殺関税を課しました。2021年10月31日に2年の期限付きで「持続可能な鉄鋼とアルミニウムに関する世界的な取り決め」の共同声明に署名する事で、鉄鋼とアルミニウムの関税を一時的に棚上げしています。しかし10月31日の期限で双方の関税が復活する為、その前に何等かの合意が必要となっています。欧州ではEU炭素市場とそれに対応する(ゲームチェンジャーと言われる)炭素国境調整メカニズム(CBAM:国境炭素税)が整備されていますが、米国ではこのような包括的な炭素市場と炭素税は議会で成立しない見込みです。その為、時間を引き延ばす為の「非常に緩やかな協力や合意になる」と見られています。鉄鋼やアルミといった炭素集約型の産業に対するアプローチの違いが、気候変動に対する米国と欧州の哲学の違いを浮き彫りにしていると専門家は見ています。これはまた「別の保護貿易」を生み出す要素になりそうです。
▶ https://news.yahoo.com/eu-trade-chief-aiming-steel-142411296.html
欧州が水素でモロッコに多額の投資をしています。モロッコにおける、水素の累積投資は、総額で約164億ユーロ(2兆5000億円)に達しています。欧州大陸や欧州のモロッコにおけるプロジェクトが主要な供給先となります。モロッコは欧州のグリーン水素市場における最重要なプレーヤーを目指し、2050年迄に総出力160TW/時を達成するという目標を掲げて、計画を加速しています。それでも欧州全体のグリーン水素の需要の5%を満たすに過ぎず、いかに水素製造や輸送を含むインフラに巨額な投資が必要なのかを示しています。現在、世界の総水素生産量の内、「グリーン」なものは0.04%未満に過ぎません。また水の電気分解で生成するグリーン水素は製造工程で使用エネルギーの約1/3 がエネルギー損失として失われます。更に水素の輸送には燃料換算で 10% が失われる事から、その分を追加する必要があります。1923年2 月 4 日に水電気分解で産業用グリーン水素を製造するというアイデアが提案されて100年目の今年、グリーン水素については、巨額な投資が世界中で展開され続けています。
▶ https://www.moroccoworldnews.com/2023/08/357268/morocco-rising-to-become-key-player-in-europes-green-hydrogen-market
▶ https://www.theguardian.com/commentisfree/2023/aug/27/the-guardian-view-on-hydrogen-hype-its-perhaps-not-as-green-as-you-think
世界最大の銅産出国であるチリの銅の採掘コストが今年に入り29%も上昇しています。この上昇は採掘される鉱石品位の低下から来ており、同じ量の銅を抽出するにはより多くの岩石を破砕する必要がある為です。他にも賃金、エネルギー、精鉱料金の上昇が重なっており、銅精鉱から得られる副産物としてのモリブデンと金の売却益が無ければ、コスト上昇は更に深刻になっています。この傾向は既に色々な所で言及されており、今後開発される銅鉱山は比較的品位が落ちる所になる為、より採掘と精鉱コストが上がると見られています。銅は世界的な景気循環や中国での一時的な需要の低迷もあり、現在スーパーサイクルの間にあると言われています。しかし今年に入り欧州でも米国でも政府が重要な原材料リストに加える等、重要性は益々上がっています。世界的なコモディティー市場であるロンドン・シティーの関係者は、フォーチュン誌に「2008年の歴史的な石油価格高騰は、2025年迄に予想される銅ブームに比べれば「子供の遊び」のようだ」と述べるなど、強気の見方が急激に台頭し始めています。
▶ https://www.mining.com/web/top-copper-producing-nation-chile-sees-mining-costs-jump-29/
スイスの大手包装関連プロバイダーであるSchweizerische Industrie Gesellschaft(SIG) は世界的に問題となっている食品に利用される複合素材多層フィルムの内、アルミニウムフィルムを含有するものを2025年迄に85%、2030年迄に90%削減する事を発表しています。欧州では大手のテトラパック社もアルミ・樹脂多層フィルムの削減とリサイクル性への取組を発表しています。SIGは、同時に完全バリアのアルミニウムフリーの紙(繊維)ベースの無菌包装構造を開発する意向を発表しました。現在アルミニウムフィルムを含有した複合素材多層フィルムをリサイクルする技術が乏しく、リサイクル材料も品質が劣る事から問題となっています。ガスや液体のバリア性能が高い複合素材多層フィルムは長年食品包装に広く採用されてきました。欧州では現在提案されている「包装及び包装廃棄物指令の改訂」により、拡大生産者責任(EPR)が採用されると同時に、医療品等を除き、包装材料に一定のリサイクル材料を使う事が義務付けられている為、メーカーは一斉に動き出しています。
▶ https://www.sig.biz/gb/media/press-releases/sig-commits-to-producing-aseptic-cartons-with-increasing-fiber-content-to-over-90-to-enter-paper-recycling-stream
連続式の熱分解技術を廃タイヤに利用し商業化する事が発表されています。米国InnoVent Renewables社は独自の熱分解技術を開発し、昨年まで実証試験を行ってきました。細断されたタイヤを熱分解時に工程内で発生するガスを利用し予熱処理を行い効率化する為にバッチ式ではなく連続式の工程が可能になっています。生成された熱分解油は、処理後に製品に向けた中間材として販売されます。商業利用の為の新工場はメキシコのモンテレーに計画されており、生産開始は2024年内となっています。
▶ https://innoventrenewables.com/news/innovent-renewables-launches/
先週、トルコの中央銀行が政策金利を0.75%引き上げ25%にした事で、市場は大きく反応しています。発表後1日で7%という急激なトルコリラ(TRY)高となり、TRYでの長鋼販売は価格を引き下げ、もしくは販売を一時停止しました。またUSドルでの国内販売では価格が上昇し、需要家は影響を受けました。同じくドル建ての鉄筋も上昇しました。エルドアン政権下で原則を無視した金融政策を行い経済が混乱した為、トルコ投資を敬遠していた海外投資家は、再びトルコに注目し始めています。トルコの金融当局が正統な金融政策を示し続ければ、トルコに海外資産が戻る可能性が高いと伝えられています。専門家はトルコが「世界規範に沿ったルールに基づいた政策に従う」限り、外国投資家にとって大きな望みとなると述べています。市場では暫く時間が掛かると見られていますが、トルコ経済は正常化に向けて大きくかじ取りをしており、早くも投資家が動き始めています。大地震後に経済・金融政策の失政で超高インフレと通貨暴落を起こした為、暫く国内の鉄鋼需要が弱く鉄スクラップ輸入への影響も続いていましたが、今後徐々に解消しそうです。
▶ https://www.reuters.com/markets/rates-bonds/after-turkeys-giant-rate-hike-foreign-investors-mull-return-2023-08-28/
「EV乗用車の普及が道路交通全体における化石燃料の消費減に直接結び付くのか?」という問題は広く議論されてきました。今回、調査会社のRystad Energyが行った調査が、今まで思われていたものと違う結果を示している事が注目されています。ノルウェーを対象に行われた調査では、道路交通における全体の燃料消費量に最も関係するものは、バスやトラック等の大型商用車と全体の車の数が影響を与えている事が判明しています。現在ノルウェーの新車(乗用車)販売の約90%はEVが占めています。しかしノルウェーの道路交通における燃料需要は2017年から2023年の間に僅か10%しか減少しなかったというデータが出ています。ノルウェーでもEV化が困難で燃料消費が多い大型バス・トラックのEV率は7.6%に過ぎず、また運転年齢人口の増加により1人当たりの乗用車台数は2005の0.65台から2023年には0.75台に増えています。道路交通全体における化石燃料の消費減には複雑な要素が絡み、乗用車のEV化が唯一の解ではないという事が示されています。
▶ https://www.rystadenergy.com/news/norway-fuel-demand-electric-car-bus-truck-gasoline-diesel
欧州では巨大なバッテリーギガ工場で起きている環境や労働問題が取り沙汰され始めています。CATLはハンガリーの工場で汲み戻し量の3倍以上の速さで周囲の地下水を汲み上げた事で、深刻な過剰使用問題を引き起こし、環境省からの調査が入っています。欧州連合の地下水指令に違反したものです。同じくハンガリーでは、韓国のリチウムイオン電池リサイクル業者ソンイール・ハイテック・ハンガリーは、労働者への重大な危険、災害管理違反、有害廃棄物の不適切な取扱いで繰り返し罰金を科されています。CATLは1年前にデブレツェンに欧州最大となる100GW電池工場を建設する為に73億ユーロ(1兆1300億円)という巨額の投資を発表しました。しかし規模が巨大で様々なアセスメントが必要な事と需要の鈍化により、中国本社は建設を「段階的に実施する」と発表内容を最近になって変更しています。欧州の環境・労働規制は中・韓とは比較にならない程厳しい為、こうした問題は予想されていました。ハンガリーにはEve Energy、Sunwoda Electronic、BYD、Huayou Cobaltも生産拠点を持っています。
▶ https://www.yicaiglobal.com/news/eu-launches-probe-into-catls-battery-plant-in-hungary-over-groundwater-directive-local-politician-says
ウガンダ政府が中古衣類品の輸入禁止を9月1日から実施すると発表し、欧米で大きな反響が起きています。ウガンダの措置は、輸入中古衣料がウガンダの綿織物産業に影響を与えている事に対応したものです。2020年にウガンダの衣類輸出は過去最高を記録しています。2016年に東アフリカ共同体(EAC)は、環境問題や闇取引の横行から3年以内に古着の輸入を全面的に禁止する事で合意していました。その後、米国政府は恵国待遇である「アフリカ成長機会法(AGOA)」をEACに対し停止すると宣言した事から、ルワンダのみが輸入禁止に踏み切りました。ウガンダは他のアフリカ諸国と同様に大量の中古衣料を輸入してきました。Oxfamによれば、欧米の慈善団体に寄付された衣服の約70%はアフリカに送られています。英国の繊維産業界は、ウガンダの禁止措置を緊急事態として、英国政府と協議を開始しています。EU 環境庁 EEA の報告によるとEU から輸出される廃棄繊維の量は 20 年間で 3 倍に増加しています。先進国で慈善団体等に寄付された古着は「輸出地で役立つ」という消費者の考えと現実は全く一致しておらず、再利用されない膨大な量の中古衣料は不法に投棄されています。近年、先進国の中古衣料品は、問題が大きくなった事から、アフリカからアジアに流れ始めています。ウガンダの今回の措置には「裏話」があります。2018年、2016年のEACの決定を受け、米国の二次材料リサイクル繊維協会(SMRTA)が、米国通商代表部(USTR)に「請願書」を提出します。請願書にはEACが中古衣料品の輸入を禁止した場合、米国の雇用4万人と輸出額で1億2,400万ドルが失われるとの内容がありました。当時のトランプ政権は、米国通商代表部(USTR)を通じて、東アフリカのケニア、ウガンダ、タンザニア、ルワンダの4ヵ国を米国のアフリカ成長機会法(AGOA)から外すと脅しをかけ、関税を復活させる交渉を行いました。その為、繊維産業が盛んでないウガンダ以外が禁止措置に踏み切る事を止めました。人口が多い欧米では繊維廃棄物と価値の低いWEEE(電気・電子廃棄物)は頭痛の種で、毎年「中古」と称して膨大な量が東アフリカ諸国を通じてアフリカ全土に流れ、多くが最終的に廃棄されています。
▶ https://fashionunited.in/news/business/uganda-bans-the-import-of-discarded-clothing-from-europe-and-the-us/2023082841304
EUの自動車メーカー団体ACEAは、再生プラスチックを新車に少なくとも25%利用する事を含む新しいEU使用済み自動車指令(ELV指令)に一貫して反対しています。既に1カ月程前には「大きな懸念」をポジションペーパーとして公式に発表していますが、その後もEURACTIVの調査で反対している事が伝わっています。ACEAはEURACTIVの取材に対し、「含有量目標には直接反対していないが、(25%という)目標が実行不可能な場合がある」と警告しています。プラスチックの業界団体であるPlastic Europeも同様に懸念を示しています。自動車に使用される高品質ポリマーは「リサイクルが非常に難しい場合がある」と認め、ELV改正案の25%目標は「マテリアルリサイクルだけでなく、ケミカルリサイクル組み合わせによってのみ達成可能であり、今後多額の投資が必要となる」と警告しています。欧州委員会は、リサイクルプラスチックを25%新車に利用するコストをわずか「40ユーロ」と推定しています。しかし、このコストは余りにも楽観的過ぎるとの声が上がっているのも事実です。環境イメージは自動車メーカーにとって最も重要な要素の為、遠回しな懸念を示していますが、本心はコスト増で頭を悩ませているという事です。現在の欧州の政治情勢から行くと、この指令案もある程度妥協される可能性があります。
▶ https://www.euractiv.com/section/circular-materials/news/recyclers-applaud-eus-new-plastic-recycling-goal-for-cars-automakers-wary/
ポーランド政府は、欧州の4つの気候関連法に対して、欧州連合司法裁判所に公式に異議申し立てを行いました。乗用車と小型商用車の排ガス規制と2035年以降の内燃機関車の新車販売の禁止、2030年のGHG排出削減目標と土地利用と森林に関する法律(LULUCF)、EUの炭素市場における汚染許容量を変更する法案、EU温室効果ガス排出量取引システムの市場安定準備金に関する法律、の4つが何れも事前の立法条件を満たしていないという趣旨の内容となっています。更にポーランドは今後、EUの炭素国境調整メカニズム(国境炭素税)にも異議を申し立てる意向を示しています。ポーランドの気候環境大臣は「EUはポーランド人がどのような車を運転するかについて権威主義的な決定を下し、ポーランドのエネルギー価格を引き上げたいのでしょうか?ポーランド政府は欧州政府の独裁を許さない」と発言しています。ポーランド政府は土地利用や森林に関する法律は国家の主権的決定に影響を与える為、EU加盟国の全会一致で合意されるべきだったと主張し、新しい内燃機関車の販売禁止は欧州の自動車産業、関連経済部門、更に広い社会に深刻な影響を与えるリスクがあると言及しています。これに対し欧州政府は、この訴訟は欧州議会と欧州理事会に対するものとの認識を示し、ポーランドの主張を拒否しています。過去の判例から、この訴訟が成功する可能性は殆ど無いと見られていますが、秋に行われるポーランドの総選挙と国民投票に大きな影響があると見られています。
▶ https://eulawlive.com/polands-legal-challenges-against-carbon-emission-tax-published-in-oj/
更にドイツ政府とフランス政府が共同で、欧州政府に対し、企業の報告業務の削減を要請しています。仏独によるこのイニシアチブは欧州政府が新たな環境規則を策定する事を「一時停止」するよう求めた仏マクロン大統領の発言から来ています。マクロンがこの発言をした当時、ドイツの法務大臣はこれを歓迎、連立政権の緑の党は批判していました。欧州企業には気候関連の非財務開示情報、GHG排出報告、アセスメントやデューデリジェンスに関する報告等、非常に負担の掛かる規則が複数課されています。8月29日にドイツ政府は低迷する経済の刺激策として「10項目の計画」を発表し、中小企業向けの年間約70億ユーロの減税措置を発表しています。ドイツ政府にとって現在は経済政策が最優先事項となっており、10項目の計画の中で「重要な優先事項の 1 つはドイツ国内及びEUレベルで手続きを迅速化し、官僚制度を削減し、可能であれば新たな官僚制度(法律や報告義務)を創設すべきではない」と主張しています。この10項目の計画には、反対していたドイツ緑の党が政策転換し、策定に参加しています。欧州委員会は既に企業に対するEUの報告義務を秋までに「25%削減する計画」を提示する予定で、9月12日頃に提示する中小企業向けの「救済策」の一部となる可能性が高いと見られています。企業の持続可能性デューデリジェンス指令(CSD)には影響が出ると考えられています。9月13日には現欧州政権のトップであるフォン・デ・アライエン委員長の任期中最後の「欧州連合教書演説」があります。その後は、来年6月の欧州議会選挙(5年に1度)まで、選挙モードに大きく切りかわります。現在の経済情勢では気候関連法案は暫く停滞しそうです。
▶ https://www.euractiv.com/section/economy-jobs/news/germany-france-ask-eu-to-cut-bureaucracy-for-companies/
新たな研究により電極の問題解決が前進した事で、充電式空気亜鉛電池 (ZAB)の商業利用にむけ注目が集まっています。オーストラリアのエディス・コーワン大学(ECU)の研究によるもので、安価な新素材を使用して亜鉛空気電池の効率、出力密度、寿命を向上させる事に成功しています。この発表は各方面で報道され始めています。空気亜鉛電池は、亜鉛負極と空気正極で構成されています。これまでの主な欠点は空気電極の性能が悪く寿命が短い為に出力が制限される事でした。電極にカーボン、鉄、コバルト化合物を利用する事でZABの性能を向上させ、高いピーク電力密度 、0.77 V の低い電圧ギャップ、更に950 時間の超長寿命を実現しています。EVには向きませんが、蓄電用途等での利用が期待されています。
▶ https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/eom2.12394
▶ https://www.theengineer.co.uk/content/news/zinc-air-batteries-offer-lithium-alternative/
電池材料で中国とのデカップリングを急ぐ米国企業に資金が流入しています。米国のバッテリー材料とリサイクルの新興企業Redwood Materialsは新たに10億ドル(1450憶円)以上を調達しました。同社は最近、米エネルギー省から20億ドルの融資の約束も取り付けています。10億ドルの資金調達は複数の大手投資機関が参加しています。これらの資金は生産能力と米国内の電池サプライチェーンを拡大する事に当てられ、「米国製」のリチウム、ニッケル、コバルトを生産する事にあります。同社は2023年末迄に銅箔生産を開始する為に米国内での銅使用を促進します。米国は年間数十万トンの銅や銅スクラップをアジアに輸出している為、重要な原材料に指定された銅が国外に流出しています。2025 年迄に正極活物質と負極箔の年間生産能力を約 100 GWhまで高める事を計画しています。更に2030年迄には生産量を年間500GWhまで拡大し500万台のEVに電池材料を供給する計画です。
▶ https://www.redwoodmaterials.com/news/redwood-series-d/
インドが本格的に「修理する権利(R2R:Right to Repair)」に向かい動き始めています。英国政府は2021 年に「修理の権利に関する規制」を制定し、欧州政府は2023年3月に「消費者が『修理』をする権利とそのツールを利用可能とする」規則を採択し、米国ではニューヨーク州が「デジタルフェア修復法」を制定、今年7月に発効しています。米国の R2R は州ごとにレベルが異なります。米国の現政権は2021年に「米国経済の競争促進に関する大統領令」を発令し、その中でR2Rに似た指令を出していますが、今のところ殆ど成果をあげていません。今年6月G20で「持続可能な開発の為のライフスタイルに関するG20ハイレベル原則」が採択されました。この原則により、循環経済へのアプローチがより明確になり、増大する電子廃棄物に取り組む法的インセンティブが生まれています。「修理する権利」は徐々に世界に浸透しており、インド消費者省(MoCA)は今年R2Rポータルを立ち上げています。
▶ https://www.atlanticcouncil.org/blogs/new-atlanticist/indias-embrace-of-right-to-repair-can-transform-the-electronics-sector/
Recycling Todayが主催する米国のスクラップエキスポ(Scrap Expo)が9月12~13日にケンタッキー州で開催されます。エキスポを前に同誌が米国の鉄鋼業者とスクラップ業者の関係について述べています。大手鉄鋼メーカーのNucorに代表される電炉への投資とスクラップ企業の垂直統合はトレンドとなっており、今後もこの傾向は続くものと見られています。今回のエキスポの話題の1つは垂直統合が業界に与える影響で、その点についてエキスポでは徹底的な議論を行う予定です。Nucorの戦略的スクラップ企業の買収は安定した品質と量の原材料を確保する事で生産プロセスを合理化し、更にコストを削減しただけでなく、「業界の性質を変えた」と見られており、この点は注目されています。
▶ https://www.recyclingtoday.com/news/scrap-expo-2023-consolidation-steel-industry-vertical-integration-session-preview/
通貨ユーロを使う20ヵ国の景気は引き続き低調な予測となっています。31日に出された最新のデータは、引続き頑固なインフレを示し、企業と家計への融資額の減少と景気停滞を伝えています。特に住宅セクターは今後数ヵ月の見通しが暗い事を示しています。またECBが金融政策を更に引き締める可能性が高く、状況が直ぐに改善する可能性は低いと見られています。ECBの引き締めにより、経済活動は更に悪化する可能性があり、景気後退のリスクが高まっています。
▶ https://www.ft.com/content/4816aa38-e135-4b31-9c1a-bcddf452b780
グレンコアは事業の目論見書に「虚偽記載」をしたという理由で、国際的な大手金融機関数十社から損害賠償請求を起こされ係争中です。これによりコバルトを始めとした天然資源価格に影響が出る懸念が湧いています。訴訟はバンガード、リーガル&ジェネラル、HSBCを含む大手数十社が起こしています。グレンコアは過去にコンゴ民主共和国の銅とコバルトの鉱山に関連する贈収賄容疑で罰金を受けており、当時の事業目論見書に虚偽記載が行われた事が起訴理由となっています。グレンコアは昨年、刑事事件としての国際捜査の結果、贈収賄と市場操作を認め有罪となり、米国に10億ドル、英国に2億8000万ポンド、ブラジルに4000万ドルの罰金を支払っています。今回は民事集団訴訟となっており、賠償金額によっては投資や事業に影響が出ると見られています。
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Business Insiderが中国経済について分析を行っています。「基本的に中国政府は社会的な不安定の兆候を非常に恐れており、国内の金融システムが脆弱なため危機を引き起こす可能性があると懸念している。中央政府は経済問題を不動産等の破綻セクターへの是正を考慮せずに「最も顕著なものから順に、断片的に処理」している。時間が経つにつれて、このやり方は債務問題を悪化させるだけであり、システムの不安定性を増す事になる」というものです。習近平氏はBRICSでのスピーチを避け、来月開催のG20 も欠席するとの噂から色々な憶測が飛び始めています。金利が高い現在、付利されない(利息が付かない)金価格が急上昇している事も投資家心理を示しているのかも知れません。
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