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NEWSCONの気になるNEWS(2023年8月第3週)
米国で大手鉄鋼メーカーによる合併交渉のニュースがありました。米国大手鉄鋼メーカーのCleaveland Cliffs(クリーブランド・クリフス)は7月28日、USスチールの取締役会に対し合併提案を行ったと発表し、これは一旦競合大手であるUSスチールから拒否されました。その後13日にUSスチールが声明を発表し、戦略的代替案を評価する為の正式な検討プロセスを開始し、そのプロセスへの参加をクリーブランドが希望する場合は、受け入れる旨を発表しています。クリーブランド・クリフスは相互に受け入れられる最終合意に向けてUSスチールと「実質的な協議」を行う用意が引き続きあり、文書を完成させる為に必要なあらゆる資源を投入する用意があると発表しています。この合併が成立した場合、約5億ドルの相乗効果が見込まれています。合意が実現すればUSスチール、クリーブランド・クリフス、ニューコア、スティール・ダイナミクスが支配する米国の鉄鋼産業は再編される事になると見られています。ご存知のように、クリーブランド・クリフスは電炉と複数のスクラップ企業を傘下に置く拡大投資を継続しており、今回の大型合併はその延長上にあると考えられます。
▶ https://www.clevelandcliffs.com/news/news-releases/detail/600/cleveland-cliffs-proposes-to-acquire-u-s-steel
中国の炭酸リチウム価格は生産の若干増と需要の低迷から8月は下落傾向が続く見込みです。Mysteelは、LFP材料の生産スケジュールの低下と炭酸リチウムの安定した生産を考慮すると、炭酸リチウムの価格は8月も下落し続けると考えています。8月中は1トン当たり22万~26万元の範囲で推移すると予想されています。
▶ https://www.mysteel.net/news/all/5041928-lithium-carbonate-prices-remain-dragged-on-by-sagging-demand
ゴールドマンサックスは、中国の地方の負債総額は94兆元(13兆ドル:約1,890兆円)に上ると推定しています。また国際通貨基金(IMF)は中国の地方政府融資ビークル(LGFV)が保有する負債総額が66兆元(9兆1,000 億ドル)に上ると推定しており、インフラプロジェクトのための資金調達に利用していると推定しています。2023年初頭より、このLGFVが売却した債務の返済が公的にデフォルトするのではないかとの懸念が高まっています。中国では地方政府が前例のない債務危機に直面しており、中央政府は、この問題に早急に資金を投じる必要があることに気づいた、と国内の経済学者は見ています。アナリストの一部は債務負担の急増と歳入の低迷で投資家が警戒し始めており、これらの金融機関が同国の金融システムの「ブラックホール」になっていると指摘し始めています。中国は地方政府に対し、LGFVの債務返済の為に債券販売を通じて約1兆元(1400億ドル)を調達させる予定ですが、1兆元はLGFVの推定負債総額の僅か1.5%に過ぎない為、懸念を払拭するには小さ過ぎます。短期的には大量の債務不履行が発生するとは予想されていませんが、この問題は額が出る度に予想を上回るものとなっており、金融リスクの懸念が日増しに高まっています。デフォルトが連鎖すると、システミックな金融リスクになる可能性も排除できません。
▶ https://www.scmp.com/economy/china-economy/article/3230828/china-debt-these-3-regions-have-most-daunting-debt-piles-so-what-can-be-done-about-it
欧州では大手鉱山・金属企業のグレンコアとも提携している米国の大手LIBリサイクル企業のLi-Cycleは、6月30日までの第2四半期決算を発表しました。調整後の収益(Revenue:売上)は360万ドル(前年同期はゼロ)で、純損失は3,530万ドル(約51.2億円の赤字:前年同期2,810万ドルの損失)、調整後EBITDAの損失は3,970万ドル(前年同期3,060万ドルの損失)となり、損失が拡大しています。第2四半期の1株当たり損失は0.20ドルで、前年同期の1株当たり0.17ドルから拡大しています。アナリスト予想は1株当たり0.17ドルの損失でしたが、予想を上回るものでした。2023年6月30日時点で、Li-Cycleの手元現金は2億8,880万ドルでした。これが現在の大手LIBリサイクル企業の実態で、先行投資、資金調達、ネットワーク拡大が最大の事業目的でリサイクル自体の実態と利益は殆ど無いという事のようです。
▶ https://www.businesswire.com/news/home/20230814558544/en/Li-Cycle-Reports-Second-Quarter-2023-Operational-and-Financial-Results-Spoke-Hub-Network-on-Path-to-Become-A-Top-Global-Producer-of-Key-Battery-Grade-Materials
現在中国で稼働もしくは計画されている電池工場の生産能力の合計は2025年には4800GWhに達する事が伝えられています。この量は中国の国内需要の4倍に上ると見られ、供給過剰の懸念が高まっています。中国のオンライン投資サイトのGelonghuiは中国の電池メーカー50社の2025年の総生産能力は4,800GWhとなると予測しています。今のペースで能増を続ければ近い将来、供給過剰による過当競争が起きる事が避けられない可能性があります。中国のアナリストは「中国のEV電池メーカーは、自社の生産能力を維持する為、多くの海外EV自動車メーカーと協力する必要があり、小規模な電池メーカーは今後数年間の熾烈な競争で淘汰されるだろう」との見解を示しています。現在、世界の電池生産トップ10社の内、6社は中国メーカーです。先日のBYDトップの発言(中国EVを世界ブランドに押し上げる)を受け、テスラが中国で値下げを断行し、また価格競争が再燃しています。「世界の工場」として、世界経済が膨張する中、海外からの旺盛な需要、更にGDPの2割以上を占める不動産セクターのバブルで繁栄してきた中国の産業は、常に先行投資と「能力増強」が成功の要でした。今回の電池の件も同じような流れになっています。
▶ https://www.scmp.com/business/china-business/article/3230673/chinese-ev-battery-maker-adds-overcapacity-fears-plan-us139-billion-plant-jiangxi
アルミニウムの価格は、2023年下半期もレンジ内にとどまる可能性が高いと複数の専門家が予測しています。中国の製錬所が再稼働するも、欧米の需要が引続き低迷している為、若干の供給過剰状態が少なくとも2023年末まで続く可能性があり、今年下半期もトン当たり2100-2300ドル(LME)の範囲に留まる可能性も指摘されています。直近ではトン当たり2,150ドル付近、2022年のQ1は平均トン当たり3,273ドル、Q2は2,883ドルでした。
▶ https://www.livemint.com/companies/news/falling-aluminium-prices-expected-to-remain-range-bound-in-second-half-of-fy23-11692030038920.html
中国人民銀行は、金融機関への1年融資の金利である中期貸出制度(MLF)金利を2.65%から2.5%に引き下げています。MLF金利の低下は商業銀行の資金調達コストを削減し、商業銀行の融資増加を促し、国内消費を押し上げる為です。専門家は「中国経済は差し迫った下降スパイラルに直面していると考えており、今回の利下げは限定的だが助けになる」との見解を示しています。公式統計では、中国の2023年の第1四半期から第2四半期までの経済成長率は0.8%でした。7月の小売売上高は、6月の前年比3.1%の増加から減少し、2.5%の増加、鉱工業生産も6月の前年比4.4%増から3.7%増に留まりました。
また中国の国家統計局は「労働力調査統計の更なる改善と最適化」の必要性を理由に、今月から年齢層別の失業率データの公表を中止すると発表しています。6月の中国の16歳から24歳の失業率が21.3%という過去最高を記録した事を受けての措置です。若年層の失業率は全体の失業率5.3%を遥かに上回っています。ただこの措置は、透明性確保の面から投資家からは不評です。更に政府支援を受けている中栄国際信託が複数の上場企業に販売した理財商品1億4000万元(1930万ドル)の元本と収入の未払いが明らかになり、中国経済の減速が「金融セクターの流動性問題」に拍車を掛けるのではないかとの懸念が一部で起こりました。
▶ https://www.bbc.co.uk/news/business-66506132
INGが為替に関する短期予測を出しています。米国の高金利と好調な国内経済、軟調な海外投資環境が重なり、今夏はドル高が維持されています。今後数ヵ月でこれが大きく変化するとは考えにくいが、第4四半期迄には米国の景気減速を示す十分な証拠があり、ドルが弱気傾向に転じる、とINGは推測しています。現在キャリートレード(低金利通貨で借入、高金利で運用)への関心が高まっており、人気通貨は日本円、中国人民元、台湾ドルの3通貨です。中国の不動産セクターや米国の債券市場から新たなショックが出現しない限り、キャリーへの関心は続くと思われます。中南米の高利回り債に対する継続的な需要が見込まれ、恐らく日銀は145-150円のレンジで介入し、米ドル/円を売るとINGは見ています。EUR/USDは年末迄に1.15に向かい、当面1.09~1.11の範囲で動くと見ています。
▶ https://think.ing.com/reports/fx-talking-august-the-dollars-still-got-the-groove/
欧州最大の経済大国であるドイツの経済省が「初期の指標は、まだドイツ経済が持続可能な経済回復を示していない」との見解を示しています。同省は、今後数ヵ月間は労働市場が鈍化、対外貿易は依然として成長の兆しが見られない、今後数ヵ月間は持続可能な経済回復は見込めない、と纏めています。個人消費、サービス、投資の回復に希望の兆しが見られるものの、弱い海外需要、インフレ、金融引き締め、更に地政学的要因で、不確実性が高い事を認めています。ブルームバーグの世論調査によると、ドイツ経済は今年下半期も殆ど拡大しない見通しを示しています。
▶ https://www.reuters.com/markets/europe/no-sustained-recovery-horizon-german-economy-econ-min-2023-08-14/
世界最大級の金属リサイクラーである豪州のシムズ・メタルは、米国の金属リサイクル企業ボルチモア・スクラップ・コーポレーション(BSC)とその関連会社を買収する事を発表しています。買収金額は1億7,700万ドル(約250億円)で、買収は2023年10月に完了する予定です。BSCはアメリカ北東部最大の金属リサイクル業者の1つで、5つの州に17の施設を持ち、年間販売量は約60万トン、4台のシュレッダーと港湾インフラを所有しています。内需と輸出の両方に近いという好立地にあります。前日、親会社のシムズは決算を発表しており、純利益は前年比69%減少の1億8,110万オーストラリアドルでした。鉄鋼需要の低迷もあり、鉄及び非鉄金属の価格下落が原因としていました。1株利益は前年同期の2.956オーストラリアドルから0.917オーストラリアドルに減少しています。米国では、大手鉄鋼メーカーが合併交渉を開始するなど再編の動きの中でスクラップ会社を買収してサプライチェーンの再構築を図る動きが続いており、SIMSは金属リサイクラーとしてサプライヤーの1社であったBSC買収に動いたようです。
▶ https://www.businesswire.com/news/home/20230814540692/en/Sims-Metal-Acquires-Baltimore-Scrap-Corp
アイルランド政府は、EUの廃棄物削減目標を達成する為、9月1日より廃棄物管理(埋立処分税)(改正)規則と循環経済(廃棄物回収税) 規則を改定します。この改定により1トン当たり10ユーロの「廃棄物回収税」を導入し、既存の「埋立税」を10ユーロ増額して1トン当たり85 ユーロにします。この賦課金は家庭から排出される一般廃棄物を収集する「黒色ゴミ箱」の廃棄物に適用される為、世帯主は廃棄物を分別し、再利用及びリサイクルして家庭廃棄物全体の料金を最小限に抑える事で賦課金の影響を管理する事が出来ます。このような特定の税システムの導入は今後EU内でどのように展開されるのか注目されています。
▶ https://www.gov.ie/en/press-release/75262-introduction-of-new-environment-levies-will-incentivise-recycling-and-help-ireland-meet-our-eu-waste-targets/
中国の電池大手CATLは、充電時間が僅か10分で400km走行できる急速充電対応のLFP電池を発売しています。商品名は「Shenxing」で、この電池を搭載したEVは2024年の第1四半期に販売予定です。CATLは電池及びEVメーカーのBYDと市場シェアを争い、ややBYDが有利になりつつある中での対応と見られています。CATLはShenxingを「世界初の4C超高速充電LFPバッテリー」と宣伝しています。先週テスラが一部モデルを中国で6%値下げした事で、再度EVの価格競争が始まっており、重慶長安汽車や広州汽車集団などの自動車メーカーは、EV製造コスト削減の為、価格競争力のある小規模な電池サプライヤーからの調達を始めているようです。電池も価格競争が今後展開されそうです。広州先物取引所(GFEX)の炭酸リチウム契約は、20万元/トン(約27.4ドル/kg)を下回り始めています。6月中旬に始まったスポット市場は継続的な下落となっています。中国での競争に拍車が掛かる中、韓国のSK ONは電池工場施設拡張の為、1.5兆ウォン(11億2000万ドル:約162億円)を投資すると発表しています。
▶ https://www.reuters.com/technology/chinas-catl-launches-fast-charging-lfp-battery-mass-production-expected-by-year-2023-08-16/
オーストラリア政府は、欧州と似た国境炭素税を鉄鋼、セメント、アルミ、肥料等を含む炭素集約型の製品に課す為の「炭素国境調整メカニズム」の検討に入ったようです。
▶ https://www.theguardian.com/australia-news/2023/aug/15/steel-and-cement-imports-from-countries-with-lower-climate-goals-may-be-hit-by-carbon-tariffs-labor-says
ゴールドマン・サックス(GS)は15日にレポートを発行し、中国の不動産問題と弱い経済指標を受けて、米国のヘッジファンドが中国株を大量に売却したことを明らかにしています。ロングとショートの両ポジションを解消しています。ヘッジファンドは7月24日の中国政治局会議後に景気刺激策が出るとの憶測から中国株を購入しましたが、既に70%は売却済みという事です。売越は2022年10月以降では最大(10日間の合計)で、過去5年間で最も急な動きの1つでした。14日にはUBSもリポートを発行しており、ヘッジファンドは中国の半導体セクター株も過去2週間で大量に売却していた事を示しています。これに対し、サウジとシンガポールのウェルスファンド(政府系ファンド)は、アリババ、京東、ベイジーン、その他の中国株に積極的に投資を開始し、価格が維持されている、という事です。サウジアラビアとシンガポールの政府系ファンドは昨年、両方ともに巨額の損失を記録しており、地政学により情報戦もかなり変化しているようです。
▶ https://economictimes.indiatimes.com/markets/stocks/news/hedge-funds-dump-chinese-stocks-aggressively-as-growth-outlook-dims/articleshow/102756440.cms?from=mdr
中国政府は、段階的な粗鋼生産抑制政策を実施しており、多くの鉄鋼メーカーが短期的に鉄鋼生産量を削減する予定です。江蘇省の一部の建設用鉄鋼メーカーは鉄鋼生産量を上半期に比して20~30%削減するようです。7月下旬以降、国内の製鉄所は地方当局から今年の粗鋼生産量を2022年の総生産量以下に抑えるよう口頭で通告を受けており、山東省の一部の建設用製鉄所は鉄鋼生産量を半分に削減する計画を立てています。中国国内の鉄スクラップ消費量は今年下半期に全体的に減少すると予想されています。特に東部と中部地域でスクラップ利用が大幅に減少する可能性が高いと見込まれています。トルコとパキスタンは、やや上昇基調になっていますが、中国国内の平均スクラップ価格は先週から下落傾向が続いています。
▶ https://www.mysteel.net/news/all/5042005-flash-more-chinese-mills-to-reduce-steel-output-on-control-policy
▶ https://www.mysteel.net/news/all/5042028-steel-output-controls-may-limit-chinas-steel-scrap-use
欧州委員会は10月1日から開始され、2026年の本格開始までに「段階的に」実施されるEU炭素国境調整メカニズム(CBAM)の移行期間の為の規則を採択しています。この規則では対象製品をEUに輸入する業者の報告義務と排出量の計算方法を定めています。CBAMが完全実施される2026年迄の移行期間では、貿易業者は金銭な支払を行う必要が無く、輸入品のGHG排出量を報告するだけとなります。輸入業者は2023年10月1日からQ4のデータを収集するよう求められ、2024年1月31日までにQ4のデータを報告書として提出する必要があります。鉄鋼、肥料、セメント等の炭素集約製品は対象となる為、手続きと報告が煩雑になり、事実上の保護貿易スキームがスタートする事になります。
▶ https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_23_4186
中国の国家発展改革委員会は、風力発電装置・太陽光発電施設の廃棄、解体、リサイクルの新たな業界基準と規則を策定する、と発表しています。また同委員会は2030年迄に風力タービンと太陽光パネルのリサイクルシステムを構築すると述べています。中国では2030年迄に150万トンの太陽光発電モジュールをリサイクルする必要があり、その数は2050年には約2000万トン/年に大幅に増加する見込みです。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によれば、再生可能エネルギー部門からの世界の廃棄物は、太陽光発電関連だけで2050年迄に年間2億1,200万トンに達する可能性がある為、早急な対応が必要となっています。ここまで廃棄数量が増えると埋め立も出来ませんので、相当な価格での逆有償処理の可能性があります。
▶ https://www.scmp.com/business/china-business/article/3231401/china-scale-wind-and-solar-recycling-tackle-environmental-impact-decommissioned-hardware
メキシコ政府は8月16日から鉄鋼の輸入関税を15%から25%に引き上げました。対象は自由貿易協定を締結していない国からの輸入品になります。2025年7月31日までの期間となります。また鉄鋼製品以外にも、アルミニウム、竹、ゴム、化学製品、石鹸、紙、セラミック製品、ガラス、電気材料、楽器、家具等の他の製品の関税も5%から25%に引き上げています。国内産業を保護する目的としています。今月に入り、カザフスタンがスクラップ輸出の禁止を6ヶ月間延期、キルギスがユーラシア経済連合以外へのスクラップの輸出を6ヶ月禁止する等、原料、製品共に一部で保護貿易化が見られています。
▶ https://www.spglobal.com/commodityinsights/en/market-insights/latest-news/metals/081623-mexico-imposes-25-tariff-on-imports-of-steel-to-improve-domestic-market
ウィスコンシン大学を中心とする研究チームが開発した、廃プラスチックの熱分解油を触媒によりアップグレードするリサイクル技術が注目されています。サイエンス誌の2023年8月11日号に記載されたものです。廃プラの熱分解油からオレフィンを回収、その後新たに開発した「ヒドロホルミル化触媒(homogenous hydroformylation catalysis)」を利用してアルデヒドを生成します。この工程で熱分解油中のオレフィンの90%以上がアルデヒドに変換され、その後、更に還元処理をして付加価値の高い工業用アルコールを生成します。研究チームはこの技術により従来の熱分解油をアップグレードする方法よりも精製物の収益性が極めて高く、行程のエネルギー消費も少ない、と主張しています。従来の熱分解油だけではトン当たり100ドルが限界ですが、この技術を利用し後処理を加える事で、トン当たり1,200ドルを大幅に超える高付加価値な工業用アルコールを精製できる事が可能となります。
▶ https://www.sustainableplastics.com/news/paving-way-cheaper-less-energy-intensive-chemical-recycling
▶ https://www.clevelandcliffs.com/news/news-releases/detail/600/cleveland-cliffs-proposes-to-acquire-u-s-steel
中国の炭酸リチウム価格は生産の若干増と需要の低迷から8月は下落傾向が続く見込みです。Mysteelは、LFP材料の生産スケジュールの低下と炭酸リチウムの安定した生産を考慮すると、炭酸リチウムの価格は8月も下落し続けると考えています。8月中は1トン当たり22万~26万元の範囲で推移すると予想されています。
▶ https://www.mysteel.net/news/all/5041928-lithium-carbonate-prices-remain-dragged-on-by-sagging-demand
ゴールドマンサックスは、中国の地方の負債総額は94兆元(13兆ドル:約1,890兆円)に上ると推定しています。また国際通貨基金(IMF)は中国の地方政府融資ビークル(LGFV)が保有する負債総額が66兆元(9兆1,000 億ドル)に上ると推定しており、インフラプロジェクトのための資金調達に利用していると推定しています。2023年初頭より、このLGFVが売却した債務の返済が公的にデフォルトするのではないかとの懸念が高まっています。中国では地方政府が前例のない債務危機に直面しており、中央政府は、この問題に早急に資金を投じる必要があることに気づいた、と国内の経済学者は見ています。アナリストの一部は債務負担の急増と歳入の低迷で投資家が警戒し始めており、これらの金融機関が同国の金融システムの「ブラックホール」になっていると指摘し始めています。中国は地方政府に対し、LGFVの債務返済の為に債券販売を通じて約1兆元(1400億ドル)を調達させる予定ですが、1兆元はLGFVの推定負債総額の僅か1.5%に過ぎない為、懸念を払拭するには小さ過ぎます。短期的には大量の債務不履行が発生するとは予想されていませんが、この問題は額が出る度に予想を上回るものとなっており、金融リスクの懸念が日増しに高まっています。デフォルトが連鎖すると、システミックな金融リスクになる可能性も排除できません。
▶ https://www.scmp.com/economy/china-economy/article/3230828/china-debt-these-3-regions-have-most-daunting-debt-piles-so-what-can-be-done-about-it
欧州では大手鉱山・金属企業のグレンコアとも提携している米国の大手LIBリサイクル企業のLi-Cycleは、6月30日までの第2四半期決算を発表しました。調整後の収益(Revenue:売上)は360万ドル(前年同期はゼロ)で、純損失は3,530万ドル(約51.2億円の赤字:前年同期2,810万ドルの損失)、調整後EBITDAの損失は3,970万ドル(前年同期3,060万ドルの損失)となり、損失が拡大しています。第2四半期の1株当たり損失は0.20ドルで、前年同期の1株当たり0.17ドルから拡大しています。アナリスト予想は1株当たり0.17ドルの損失でしたが、予想を上回るものでした。2023年6月30日時点で、Li-Cycleの手元現金は2億8,880万ドルでした。これが現在の大手LIBリサイクル企業の実態で、先行投資、資金調達、ネットワーク拡大が最大の事業目的でリサイクル自体の実態と利益は殆ど無いという事のようです。
▶ https://www.businesswire.com/news/home/20230814558544/en/Li-Cycle-Reports-Second-Quarter-2023-Operational-and-Financial-Results-Spoke-Hub-Network-on-Path-to-Become-A-Top-Global-Producer-of-Key-Battery-Grade-Materials
現在中国で稼働もしくは計画されている電池工場の生産能力の合計は2025年には4800GWhに達する事が伝えられています。この量は中国の国内需要の4倍に上ると見られ、供給過剰の懸念が高まっています。中国のオンライン投資サイトのGelonghuiは中国の電池メーカー50社の2025年の総生産能力は4,800GWhとなると予測しています。今のペースで能増を続ければ近い将来、供給過剰による過当競争が起きる事が避けられない可能性があります。中国のアナリストは「中国のEV電池メーカーは、自社の生産能力を維持する為、多くの海外EV自動車メーカーと協力する必要があり、小規模な電池メーカーは今後数年間の熾烈な競争で淘汰されるだろう」との見解を示しています。現在、世界の電池生産トップ10社の内、6社は中国メーカーです。先日のBYDトップの発言(中国EVを世界ブランドに押し上げる)を受け、テスラが中国で値下げを断行し、また価格競争が再燃しています。「世界の工場」として、世界経済が膨張する中、海外からの旺盛な需要、更にGDPの2割以上を占める不動産セクターのバブルで繁栄してきた中国の産業は、常に先行投資と「能力増強」が成功の要でした。今回の電池の件も同じような流れになっています。
▶ https://www.scmp.com/business/china-business/article/3230673/chinese-ev-battery-maker-adds-overcapacity-fears-plan-us139-billion-plant-jiangxi
アルミニウムの価格は、2023年下半期もレンジ内にとどまる可能性が高いと複数の専門家が予測しています。中国の製錬所が再稼働するも、欧米の需要が引続き低迷している為、若干の供給過剰状態が少なくとも2023年末まで続く可能性があり、今年下半期もトン当たり2100-2300ドル(LME)の範囲に留まる可能性も指摘されています。直近ではトン当たり2,150ドル付近、2022年のQ1は平均トン当たり3,273ドル、Q2は2,883ドルでした。
▶ https://www.livemint.com/companies/news/falling-aluminium-prices-expected-to-remain-range-bound-in-second-half-of-fy23-11692030038920.html
中国人民銀行は、金融機関への1年融資の金利である中期貸出制度(MLF)金利を2.65%から2.5%に引き下げています。MLF金利の低下は商業銀行の資金調達コストを削減し、商業銀行の融資増加を促し、国内消費を押し上げる為です。専門家は「中国経済は差し迫った下降スパイラルに直面していると考えており、今回の利下げは限定的だが助けになる」との見解を示しています。公式統計では、中国の2023年の第1四半期から第2四半期までの経済成長率は0.8%でした。7月の小売売上高は、6月の前年比3.1%の増加から減少し、2.5%の増加、鉱工業生産も6月の前年比4.4%増から3.7%増に留まりました。
また中国の国家統計局は「労働力調査統計の更なる改善と最適化」の必要性を理由に、今月から年齢層別の失業率データの公表を中止すると発表しています。6月の中国の16歳から24歳の失業率が21.3%という過去最高を記録した事を受けての措置です。若年層の失業率は全体の失業率5.3%を遥かに上回っています。ただこの措置は、透明性確保の面から投資家からは不評です。更に政府支援を受けている中栄国際信託が複数の上場企業に販売した理財商品1億4000万元(1930万ドル)の元本と収入の未払いが明らかになり、中国経済の減速が「金融セクターの流動性問題」に拍車を掛けるのではないかとの懸念が一部で起こりました。
▶ https://www.bbc.co.uk/news/business-66506132
INGが為替に関する短期予測を出しています。米国の高金利と好調な国内経済、軟調な海外投資環境が重なり、今夏はドル高が維持されています。今後数ヵ月でこれが大きく変化するとは考えにくいが、第4四半期迄には米国の景気減速を示す十分な証拠があり、ドルが弱気傾向に転じる、とINGは推測しています。現在キャリートレード(低金利通貨で借入、高金利で運用)への関心が高まっており、人気通貨は日本円、中国人民元、台湾ドルの3通貨です。中国の不動産セクターや米国の債券市場から新たなショックが出現しない限り、キャリーへの関心は続くと思われます。中南米の高利回り債に対する継続的な需要が見込まれ、恐らく日銀は145-150円のレンジで介入し、米ドル/円を売るとINGは見ています。EUR/USDは年末迄に1.15に向かい、当面1.09~1.11の範囲で動くと見ています。
▶ https://think.ing.com/reports/fx-talking-august-the-dollars-still-got-the-groove/
欧州最大の経済大国であるドイツの経済省が「初期の指標は、まだドイツ経済が持続可能な経済回復を示していない」との見解を示しています。同省は、今後数ヵ月間は労働市場が鈍化、対外貿易は依然として成長の兆しが見られない、今後数ヵ月間は持続可能な経済回復は見込めない、と纏めています。個人消費、サービス、投資の回復に希望の兆しが見られるものの、弱い海外需要、インフレ、金融引き締め、更に地政学的要因で、不確実性が高い事を認めています。ブルームバーグの世論調査によると、ドイツ経済は今年下半期も殆ど拡大しない見通しを示しています。
▶ https://www.reuters.com/markets/europe/no-sustained-recovery-horizon-german-economy-econ-min-2023-08-14/
世界最大級の金属リサイクラーである豪州のシムズ・メタルは、米国の金属リサイクル企業ボルチモア・スクラップ・コーポレーション(BSC)とその関連会社を買収する事を発表しています。買収金額は1億7,700万ドル(約250億円)で、買収は2023年10月に完了する予定です。BSCはアメリカ北東部最大の金属リサイクル業者の1つで、5つの州に17の施設を持ち、年間販売量は約60万トン、4台のシュレッダーと港湾インフラを所有しています。内需と輸出の両方に近いという好立地にあります。前日、親会社のシムズは決算を発表しており、純利益は前年比69%減少の1億8,110万オーストラリアドルでした。鉄鋼需要の低迷もあり、鉄及び非鉄金属の価格下落が原因としていました。1株利益は前年同期の2.956オーストラリアドルから0.917オーストラリアドルに減少しています。米国では、大手鉄鋼メーカーが合併交渉を開始するなど再編の動きの中でスクラップ会社を買収してサプライチェーンの再構築を図る動きが続いており、SIMSは金属リサイクラーとしてサプライヤーの1社であったBSC買収に動いたようです。
▶ https://www.businesswire.com/news/home/20230814540692/en/Sims-Metal-Acquires-Baltimore-Scrap-Corp
アイルランド政府は、EUの廃棄物削減目標を達成する為、9月1日より廃棄物管理(埋立処分税)(改正)規則と循環経済(廃棄物回収税) 規則を改定します。この改定により1トン当たり10ユーロの「廃棄物回収税」を導入し、既存の「埋立税」を10ユーロ増額して1トン当たり85 ユーロにします。この賦課金は家庭から排出される一般廃棄物を収集する「黒色ゴミ箱」の廃棄物に適用される為、世帯主は廃棄物を分別し、再利用及びリサイクルして家庭廃棄物全体の料金を最小限に抑える事で賦課金の影響を管理する事が出来ます。このような特定の税システムの導入は今後EU内でどのように展開されるのか注目されています。
▶ https://www.gov.ie/en/press-release/75262-introduction-of-new-environment-levies-will-incentivise-recycling-and-help-ireland-meet-our-eu-waste-targets/
中国の電池大手CATLは、充電時間が僅か10分で400km走行できる急速充電対応のLFP電池を発売しています。商品名は「Shenxing」で、この電池を搭載したEVは2024年の第1四半期に販売予定です。CATLは電池及びEVメーカーのBYDと市場シェアを争い、ややBYDが有利になりつつある中での対応と見られています。CATLはShenxingを「世界初の4C超高速充電LFPバッテリー」と宣伝しています。先週テスラが一部モデルを中国で6%値下げした事で、再度EVの価格競争が始まっており、重慶長安汽車や広州汽車集団などの自動車メーカーは、EV製造コスト削減の為、価格競争力のある小規模な電池サプライヤーからの調達を始めているようです。電池も価格競争が今後展開されそうです。広州先物取引所(GFEX)の炭酸リチウム契約は、20万元/トン(約27.4ドル/kg)を下回り始めています。6月中旬に始まったスポット市場は継続的な下落となっています。中国での競争に拍車が掛かる中、韓国のSK ONは電池工場施設拡張の為、1.5兆ウォン(11億2000万ドル:約162億円)を投資すると発表しています。
▶ https://www.reuters.com/technology/chinas-catl-launches-fast-charging-lfp-battery-mass-production-expected-by-year-2023-08-16/
オーストラリア政府は、欧州と似た国境炭素税を鉄鋼、セメント、アルミ、肥料等を含む炭素集約型の製品に課す為の「炭素国境調整メカニズム」の検討に入ったようです。
▶ https://www.theguardian.com/australia-news/2023/aug/15/steel-and-cement-imports-from-countries-with-lower-climate-goals-may-be-hit-by-carbon-tariffs-labor-says
ゴールドマン・サックス(GS)は15日にレポートを発行し、中国の不動産問題と弱い経済指標を受けて、米国のヘッジファンドが中国株を大量に売却したことを明らかにしています。ロングとショートの両ポジションを解消しています。ヘッジファンドは7月24日の中国政治局会議後に景気刺激策が出るとの憶測から中国株を購入しましたが、既に70%は売却済みという事です。売越は2022年10月以降では最大(10日間の合計)で、過去5年間で最も急な動きの1つでした。14日にはUBSもリポートを発行しており、ヘッジファンドは中国の半導体セクター株も過去2週間で大量に売却していた事を示しています。これに対し、サウジとシンガポールのウェルスファンド(政府系ファンド)は、アリババ、京東、ベイジーン、その他の中国株に積極的に投資を開始し、価格が維持されている、という事です。サウジアラビアとシンガポールの政府系ファンドは昨年、両方ともに巨額の損失を記録しており、地政学により情報戦もかなり変化しているようです。
▶ https://economictimes.indiatimes.com/markets/stocks/news/hedge-funds-dump-chinese-stocks-aggressively-as-growth-outlook-dims/articleshow/102756440.cms?from=mdr
中国政府は、段階的な粗鋼生産抑制政策を実施しており、多くの鉄鋼メーカーが短期的に鉄鋼生産量を削減する予定です。江蘇省の一部の建設用鉄鋼メーカーは鉄鋼生産量を上半期に比して20~30%削減するようです。7月下旬以降、国内の製鉄所は地方当局から今年の粗鋼生産量を2022年の総生産量以下に抑えるよう口頭で通告を受けており、山東省の一部の建設用製鉄所は鉄鋼生産量を半分に削減する計画を立てています。中国国内の鉄スクラップ消費量は今年下半期に全体的に減少すると予想されています。特に東部と中部地域でスクラップ利用が大幅に減少する可能性が高いと見込まれています。トルコとパキスタンは、やや上昇基調になっていますが、中国国内の平均スクラップ価格は先週から下落傾向が続いています。
▶ https://www.mysteel.net/news/all/5042005-flash-more-chinese-mills-to-reduce-steel-output-on-control-policy
▶ https://www.mysteel.net/news/all/5042028-steel-output-controls-may-limit-chinas-steel-scrap-use
欧州委員会は10月1日から開始され、2026年の本格開始までに「段階的に」実施されるEU炭素国境調整メカニズム(CBAM)の移行期間の為の規則を採択しています。この規則では対象製品をEUに輸入する業者の報告義務と排出量の計算方法を定めています。CBAMが完全実施される2026年迄の移行期間では、貿易業者は金銭な支払を行う必要が無く、輸入品のGHG排出量を報告するだけとなります。輸入業者は2023年10月1日からQ4のデータを収集するよう求められ、2024年1月31日までにQ4のデータを報告書として提出する必要があります。鉄鋼、肥料、セメント等の炭素集約製品は対象となる為、手続きと報告が煩雑になり、事実上の保護貿易スキームがスタートする事になります。
▶ https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_23_4186
中国の国家発展改革委員会は、風力発電装置・太陽光発電施設の廃棄、解体、リサイクルの新たな業界基準と規則を策定する、と発表しています。また同委員会は2030年迄に風力タービンと太陽光パネルのリサイクルシステムを構築すると述べています。中国では2030年迄に150万トンの太陽光発電モジュールをリサイクルする必要があり、その数は2050年には約2000万トン/年に大幅に増加する見込みです。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によれば、再生可能エネルギー部門からの世界の廃棄物は、太陽光発電関連だけで2050年迄に年間2億1,200万トンに達する可能性がある為、早急な対応が必要となっています。ここまで廃棄数量が増えると埋め立も出来ませんので、相当な価格での逆有償処理の可能性があります。
▶ https://www.scmp.com/business/china-business/article/3231401/china-scale-wind-and-solar-recycling-tackle-environmental-impact-decommissioned-hardware
メキシコ政府は8月16日から鉄鋼の輸入関税を15%から25%に引き上げました。対象は自由貿易協定を締結していない国からの輸入品になります。2025年7月31日までの期間となります。また鉄鋼製品以外にも、アルミニウム、竹、ゴム、化学製品、石鹸、紙、セラミック製品、ガラス、電気材料、楽器、家具等の他の製品の関税も5%から25%に引き上げています。国内産業を保護する目的としています。今月に入り、カザフスタンがスクラップ輸出の禁止を6ヶ月間延期、キルギスがユーラシア経済連合以外へのスクラップの輸出を6ヶ月禁止する等、原料、製品共に一部で保護貿易化が見られています。
▶ https://www.spglobal.com/commodityinsights/en/market-insights/latest-news/metals/081623-mexico-imposes-25-tariff-on-imports-of-steel-to-improve-domestic-market
ウィスコンシン大学を中心とする研究チームが開発した、廃プラスチックの熱分解油を触媒によりアップグレードするリサイクル技術が注目されています。サイエンス誌の2023年8月11日号に記載されたものです。廃プラの熱分解油からオレフィンを回収、その後新たに開発した「ヒドロホルミル化触媒(homogenous hydroformylation catalysis)」を利用してアルデヒドを生成します。この工程で熱分解油中のオレフィンの90%以上がアルデヒドに変換され、その後、更に還元処理をして付加価値の高い工業用アルコールを生成します。研究チームはこの技術により従来の熱分解油をアップグレードする方法よりも精製物の収益性が極めて高く、行程のエネルギー消費も少ない、と主張しています。従来の熱分解油だけではトン当たり100ドルが限界ですが、この技術を利用し後処理を加える事で、トン当たり1,200ドルを大幅に超える高付加価値な工業用アルコールを精製できる事が可能となります。
▶ https://www.sustainableplastics.com/news/paving-way-cheaper-less-energy-intensive-chemical-recycling