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NEWSCONの気になるNEWS(2023年12月第4週)

LMEアルミ価格と実勢価格との乖離の懸念が生れています。12月14日に英国政府はロシアに対する制裁措置の最新版を発表しました。この制裁措置には「ロシア産のアルミニウム、ニッケル、鉛銅、亜鉛、錫、コバルトを含む金属を英国人や英国法人が直接又は間接的に取得してはならない」とされており、事実上、英国によるロシア産の金属の入手を阻止する事になります。西側ではロシア産のアルミニウムを回避する動きが続いており、11月のアルミのLME在庫の78%はロシア産となっています。英国の今回の措置によりLMEがロシア産の金属を扱う事の是非についての議論が再燃しています。英国法人の幾つかを通じてロシア産金属の買い手であるシティーグループは、ロシア産金属のLMEからの排除とそれによるLMEの弱体化を懸念しています。現状ではLMEとCME(上海市場)を始めとする主要市場との相関性は崩れていませんが、今回の英国の制裁に欧州政府が追随する可能性が指摘されており、その場合はLMEとCMEの相関性が崩れる可能性が指摘されています。米国も欧州も政府案が通らずウクライナへの支援が大幅に減少しており、ロシアへの代金支払が伴う物品の購入を間接的にも抑える必要が生じています。ロシアは既に停戦への交渉に応じない姿勢を強めており、今後ロシア産金属を間接的に入手する事まで西側が排除すれば、中国やインドを通じて流通するロシア産金属との価格差で市場と流通が分断される可能性があります。
https://www.gov.uk/government/collections/uk-sanctions-on-russia
https://agmetalminer.com/2023/12/22/aluminum-mmi-aluminum-prices-flat/

欧州最大手の鉄鋼メーカーが「バイオ炭」を本格利用する為にテストを開始しています。アルセロールミタルは、高炉での石炭代替として木材や農業製品をトレファクション(半炭化処理)したBio Coal(バイオ炭)をベルギーの製鉄所で利用し、成功した事を発表しています。バイオ炭製造では米国のVega Biofuels社が製造技術で先行しており、バイオマスを焙焼する為のシステムと装置開発を行っています。またトレファクションの技術はオランダが先行しており、既に木質ペレット用に商業利用を一部で開始しています。今後、脱炭素の為に持続可能な材料からバイオ炭を製造する需要は徐々に増えていくものと見られています。
https://bit.ly/3ve318b

WEEE(電子・電気廃棄物)の2025年問題が俄かに浮上してきました。MicrosoftはWindows10の「無料サポート」を2025年10月25日で終了する事を正式にアナウンスしています(有料サポートは2028年まで続く見込みです)。Windows11のシステム要求はスペックが高く、2016年以前に販売されたPCでは推奨スペックに満たない可能性が高いものが殆どだと言われています。その為、期限前にPC(ラップトップ含む)をアップデートする個人や企業が世界的に増えると見込まれています。その量は最大で2億4,000 万台以上のPC、重量換算で約4億8,000万kgと推定されています。ただし、使える部品はまだ存在する為、一部は中古市場で活かされると予想されています。
https://learn.microsoft.com/en-us/lifecycle/end-of-support/end-of-support-2025
https://bit.ly/47amvYB

ESG投資は2024年にも不確実性が予想されています。2021年に5,580億ドルあった新規ESG投資は、2022年には1,580億ドル、そして2023年11月迄の合計は僅か680億ドルにまで大幅に減少しています。2020年、2021年はロックダウンの影響で原油価格(エネルギー価格)が低迷し、投資家の多くは(エネルギーコストで競争力が無い)ESG投資を避け、投資先の多角化を行いました。その後、ESG投資の相次ぐ「グリーンウォッシング」問題が浮上し、人気に陰りが見え始めます。更に2022年からはインフレによる材料コストの高騰と高金利による資金コストの上昇で熱が冷め、ファンドの閉鎖が相次ぎました。COP28が終了して僅か1週間後にはメキシコ湾での原油掘削権入札に大手石油のシェルとヘスを含む幾つかの石油企業がビットした総額は3億8,200万ドルに達しました。これは2015年以来、同湾での競売としては最高額でした。米国のQ4の石油生産量は日量約1,330万バレルに達しています。これは歴史的にも最高値です。現米政権はグリーン化を進め化石燃料削減を選挙公約として誕生しましたが、実際には市場は逆に動いています。2024年も、ESGと化石燃料を必要とする実際の市場との「衝突」が続き、戦争によるサプライチェーンの変化もあり、ESGにやや不利な状況は続きそうです。ESG投資の一部は環境保護や脱炭素を標榜してきましたが、実はグリーンウォッシングで単に欧米主導のマネーゲームが行われてきたという実態を一般人も知る事になり、全体として不人気に拍車が掛かっている、というのが本音のようです。
https://oilprice.com/Energy/Energy-General/Is-the-ESG-Investment-Bubble-Bursting.html

米国のニュージャージー州で米国の州としては初のEVバッテリー管理法が議会を通過しています。対象はトラックを含むEVとHVでバッテリーの収集、輸送、再製造、再利用、リサイクル、廃棄に関するものです。法律が発効後、同州ではEV用バッテリーを埋め立て廃棄する事が禁止されます。この法律ではバッテリーの生産者はバッテリー管理計画を州環境保護局に提出する事が義務付けられます。2027年1月1日以降、州内で販売される動力用のバッテリー(車載を含め)には、州の規則や規制に従って、ラベルを添付する必要が生じます。この法律ではリサイクルが管理項目に追加されており、規定として盛り込まれています。
https://www.njleg.state.nj.us/bill-search/2022/S3723

プラスチック廃棄物の行先として、トルコがホットスポットになる可能性が指摘されています。2021年からバーゼル条約の改正によりプラスチック廃棄物の輸出は原則禁止となり、特別に事前通知と同意(PIC:インフォームドコンセント)が得られた場合にのみ可能となりました。EUでは来年にWSR(廃棄物輸送規則)が発効される見込みで、プラスチック廃棄物の非OECD諸国への輸出が禁止となります。EUは100万トン以上のプラスチック廃棄物を輸出していますが、マレーシア、ベトナム、インドネシア、タイを主な仕向地とする非OECD諸国に出荷される量は50%を超えます。EUのWSRを見込み、ここ数年でトルコへのプラスチック廃棄物の輸出は急増しており、2022年には全体の約33%がトルコ1ヵ国に向けられています。トルコはOECD加盟国であり、WSR後もPIC手続きを踏めば輸出が可能です。欧州ではWSR発効後に低品質のスクラップとプラスチック廃棄物の輸出が大きな問題と予想されています。この問題の抜け穴になる可能性があるのがトルコで、スクラップに関しても「トルコ経由」という流れができる可能性が指摘され始めています。
https://www.politico.eu/article/the-turkey-shaped-hole-in-the-eus-new-waste-export-regime/

2024年に中国が政府主導による対外輸出を更に強化する見込みです。過剰生産能力、新エネルギー産業への過剰投資、更に中国国内での需要の鈍化を受け、より輸出を強化する見込みが伝わっています。コンテナ最大港の1つである寧波は2022年には米国と欧州向け輸出が35%を占めていましたが、今年に入り2.6%減少しています。西側によるチャイナプラスワンへの舵取りと地政学上の規制が重なり、両地域への輸出に影響が出始めています。地域によっては欧米規格に準拠した製品を生産している事から影響が出始めており、生品規格と輸出先をアジアに変更する動きも出ています。EV用バッテリーやソーラーパネルは国内需要で吸収する数倍の生産能力があり、海外で販売する以外に選択肢はありません。中国指導部も「一部の産業の過剰生産能力」が2024年に取り組むべき主要な経済課題の一つであることを認めています。しかしEVとその部品は米国から事実上排除されつつあり、EUも規制への動きを見せています。トルコは中国製EVに40%の追加関税を課し、インドは中国の太陽光発電製品に対する関税を強化しています。中国ではリチウム価格が異常値だった頃に投資を加速したLIBのリサイクル企業は最近倒産する所も出ているという事です。このような状況から中東やアジアへの輸出攻勢は強まると見られています。
https://www.scmp.com/economy/china-economy/article/3246273/get-bolder-please-economic-powerhouse-all-out-lift-exporter-initiative-amid-beijings-urge-bigger
https://www.scmp.com/economy/china-economy/article/3244959/chinas-involuted-new-energy-industry-awash-overcapacity-could-stall-new-economic-driver

今年の欧州は補助金と保護主義的な経済政策が目立つ年でした。2月にはネットゼロ産業法という名の補助金経済政策の指針が示され、その後に法案が提出されました。その後も炭素国境調整メカニズム、重要な原材料法、廃棄物輸送規則、EUデューデリジェンス指令等、保護主義的な規制が次々に出され、同時に補助金が様々なプロジェクトに充てられました。特徴だったのは、安価なロシアの資源とガスを失ったドイツ経済が最も影響を受け続けた年となった事です。巨大な中国市場と環境宣伝を目論みEV化に舵を切ったドイツの自動車メーカーは軒並み失敗に終わり、逆に中国勢に後塵を浴びる結果となっています。エネルギー価格の上昇から、ドイツではエネルギー集約型産業は大打撃を受けており、今後、鉄鋼、金属、化学産業の未来に大きな懸念が生じた年でもありました。こうした影響もあり、欧州最大の経済国であるドイツの経済政策は「フランス化」し、政府による産業保護を次々に打ち出すという矛盾に陥りました。保護主義と補助金に対する効果の検証は来年以降に持ち越しになりそうです。
https://www.euractiv.com/section/economy-jobs/news/2023-in-eu-economic-policy-the-year-germany-went-french-and-back/



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