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NEWSCONの気になるNEWS(2023年12月第2週)

国際アルミニウム協会(IAI)は温室効果ガス(GHG)排出量削減の進捗を追跡する為の新しいイニシアチブを開始します。IAIの会員はGHG排出の進捗情報を毎年報告する事になります。この様な国際的な統一のイニシアチブは、アルミニウム産業では初めて行われる事になります。今後このイニシアチブでは、一次アルミニウム(新地金)のGHG計算に関するメソドロジー、カーボンフットプリントとその透明性の定義、アルミニウムスクラップを利用する場合の計算のガイドライン等の共通化が計画されています。しかし世界のアルミ新地金の55%以上は中国産であり、今回のイニシアチブには中国、ロシア、インド等の一部の大手企業は参加していません。
https://international-aluminium.org/resource/aluminium-industrys-new-greenhouse-gas-initiative/

アルミ市場を裏で押し下げている波及効果の1つの話題です。LME在庫が積みあがる中、アルミニウム産業の業界団体ヨーロピアン・アルミニウムはロシア産への制裁強化を訴える緊急声明を出しています。EUはロシア産のアルミニウム線、管、パイプの輸入禁止を新たな制裁パッケージに盛り込んでいます。しかし業界はこれ以外の製品も対象に入れる事を望んでいます。現在ロシア産のEU向けアルミニウム輸出の85%以上は一次アルミ二ウム(新地金)であり、新地金は今回の制裁の対象外となる予定です。EUは今年1-9月の間に合計240万トン、63億ドルのアルミ新地金を輸入し、内11%がロシア産でした。ロシア産は激減しており、戦争前と比較し20%まで落ち込んでいます。しかしロシア産は、原油、木材、ニッケル等で同じ事がよく言われていますが、制裁回避国を通じて市場より安値で流通しており、これが正規品の販売価格に影響を与え在庫が増えるという状況が続いています。正確な統計データや追跡が出来ない為、この問題は政策担当者にとっても頭の痛い問題となっています。EUは原材料価格高やエネルギーの高騰からロシア産のアルミ新地金を全て制裁対象にする事が難しいという事情があります。
https://european-aluminium.eu/resource-hub/news-events/

欧州-中国サミットでは、結局、様々な点で根深い相違を解決できる兆候は殆どありませんでした。特に貿易の不均衡(EUの対中貿易赤字)、中国製EVの補助金調査問題、台湾海峡、ロシア関係、の4つの点では溝は埋まらず、あくまでも「双方が対立に陥る」事を避ける為の協調をするという事に留まっています。中国側は欧州商品の消費地である中国の価値を宣伝していましたが、具体的な妥協案は出てきませんでした。
https://www.euractiv.com/section/eu-china/news/in-china-eu-leaders-confront-beijing-on-trade-imbalance-russia-ties/

12月4日に改訂エコデザイン指令に関する欧州議会と理事会の合意がありました。これを受けて繊維業界への影響が懸念され始めています。改定案では売れ残った繊維製品や履物製品の廃棄の禁止が含まれています。この禁止措置は規制の発効から2年後に大企業に課され、6年後には中堅企業へも義務化される予定です。ファストファッションを終わらせるという欧州政府の強い意向が反映された結果となっています。廃棄が出来ない場合、中古でアフリカに流れるルートがありますが、今後この扱いが焦点になりそうです。売れ残り品の廃棄禁止措置は将来、他の製品にも拡大する見込みです。環境保護団体は売れ残った電気・電子機器の廃棄の禁止を求めていましたが、欧州議会は廃棄の禁止ではなく、環境への影響評価を優先し、将来に決定を持ち越しました。
https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20231204IPR15634/deal-on-new-eu-rules-to-make-sustainable-products-the-norm

米上院の民主・共和両党の議員計8名は米国環境局(EPA) が提案している、主に高炉やコークス炉への排出基準の厳格化について再考を求めています。理由はEPAの提案は鉄鋼産業の国際競争力を弱め、国家安全保障を損なう危険があり、更に世界全体で見た場合、鉄鋼産業からの排出量の純削減にはならない可能性が高いというものです。有害な大気汚染の削減を支持するとしながらも、EPAの提案は国家と経済の安全保障、雇用と産業保護、公衆衛生とのバランスを満たしていないと主張しています。議員らは米国の鉄鋼産業は世界で最もクリーンな鉄鋼の生産プロセスを持ち、更なる排出基準の厳格化は不利益の方が多いという事を述べています。このような主張が超党派から出てきたという事は、気候変動一辺倒の政策から安全保障や国家利益とのバランスを取る政策への変化の表れと考えられます。
https://bit.ly/3RgyMVp

EUでは世界初となるAI法が立法プロセスの最終段階を終了しています。基本的人権と安全性の確保に重点が置かれており、幾つかの禁止事項が導入されています。例としてはAI(ソフトやアプリ)による人々への認知行動操作、職場や教育機関での感情認識、社会的スコアリング、性的指向や宗教等の機密データを推測する為の生体認証の分類が含まれています。更に個人の特性に基づいて将来、罪を犯すリスクを評価する「予測警察ソフトウェア」も禁止されます。
https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2023/12/09/artificial-intelligence-act-council-and-parliament-strike-a-deal-on-the-first-worldwide-rules-for-ai/

欧米でのEV電池新興企業の困難を反映する出来事がありました。米ミシガン州のEV電池スタートアップのONE社は中国からの脱却、米国内での電池製造、そしてクリーンテクノロジー関連の新たな大量雇用をもたらすと宣伝され、現米政権の「代表作」として言われてきました。しかし相次ぐ人員削減と資金難の為、即日でCEOの交代を発表しています。先月500人の従業員の内、128人が解雇されたばかりでした。背景には、あのアル・ゴア元米副大統領の投資会社Generation Investmentのロンドンの投資ファンドJust Climateが終了し、新たな資金募集ラウンドに対応しなかった事が挙げられます。辞任したCEOはオバマ政権時代に米政府が多額の資金提供したA123 Systems(後術)のメンバーの1人でした。
この様に欧米のクリーンテクノロジー関連スタートアップは政治的な絡みがあって宣伝が豊富、関連ファンドはIPOでガッポリ儲け、という目論見は幾つもあり、よく背景を知った方が良いと思われます。代表的なものの1つはEnvivaです。今後もこの様なに資金が潮が引くように離れていくケースがあると思われます。アル・ゴアのJust Climateは、ESG投資の投資回収率が悪化した今年6月にあっさりと「役割を果たした」として追加資金をクローズしています。
https://one.ai/news
https://www.justclimate.com/

2009年に米国政府から多額の補助金を得て、大きな期待が込められたリチウムイオン電池の開発新興企業A123 Systemsは、その後破堤し、中国企業(万向集团)の傘下となり、重要なリチウムイオン電池の技術が2013年に中国企業のものとなりました。ほぼ同じ様な失敗例は米国のソーラパネル製造企業のSolyndraです。こちらも5億㌦以上の補助金を得て従業員も増加、事業を拡大する予定でしたが破堤しました。この2つに共通しているのは「革新的な技術や設計を導入した製品にも関わらず、先駆的な市場=Lead Market(リード市場)」が存在しなかった事です。「いったい誰が幾らで買う」という顧客ベースの市場形成が無く、革新技術とカリフォルニア州の先行する野心的な法規制に依存した事業目論見によって、最終的には破堤しました。社会主義の様に国家がリード市場を強引に作り出す場合を除き、市場原理に委ねられた製品やサービスはリード市場を創る事は非常に希です。
実は同じ事が欧州の「グリーンスチール」で行われており、炭素排出に関する厳しい規制が多く制定される中で、あまりリード市場が存在していないという事実があります。グリーンスチールは棒鋼を除いた、特に高品質な鉄鋼製品の製造では大変高価になります。現状では、その様な高価な材料を使い消費者が満足する製品のリード市場は鉄鋼製品では存在していません。車1台をグリーンスチールで製造した場合の価格の見積すら出ていない状況です。
補助金は技術革新を保証するものでも無ければ、リード市場を創り出すものでもありません。規制によってリード市場が創られるかは壮大な(欧州の)社会実験です。市場原理の中で革新技術がリード市場を創り出すというケースは、失敗例の方が成功例よりも何百倍も多いという事は、理解した方が良いかと思います。失敗した場合は、補助金=税金がドブに棄てられる事になります・・・・。
https://www.euractiv.com/section/future-of-mobility/opinion/what-previous-failures-tell-us-about-europes-green-steel-ambitions/

2024年はやや供給過剰と予測されていた銅ですが、大きな動きがあり一転して供給不足の懸念が増しています。パナマ政府は世界最大級の銅鉱山の1つであるファースト・クォンタム・ミネラルズに対して国内銅鉱山の全操業を停止するよう正式に命令しました。更にアングロ・アメリカン社は南米の主力銅事業の生産量を削減すると発表しています。アングロ・アメリカン社は同社の来年の銅生産目標を約20万トン削減します。20万トンは実質的に銅鉱山が1つ閉鎖されるのと同じ量が減ると考えられています。この2つの大幅な供給減少により、銅供給に大きな懸念が生じ、来年は需給逼迫に陥る可能性が浮上しています。ここまで順調に鉱山開発が進み供給過剰が予測されていただけに、予期せぬ展開となりそうです。鉱山の閉鎖は何れも労働者による政治的な影響です。
https://www.mining.com/web/the-worlds-copper-supply-is-suddenly-looking-scarce/

11月の中国の消費者物価指数(CPI)は前年比0.5%下落、これは2020年11月以来の大幅な下落でした。更に生産者物価指数(PPI)も14カ月連続で低下、11月は前年同月比3%下落しています。FTは即座に市場洞察のコラムをあげ「中国は債務デフレループのリスクに直面している」と分析しています。債務比率が上昇、更に人口動態が弱体化傾向(生産年齢人口の減少)にある事が問題をより困難なものにしています。デフレ下で実質賃金が上昇すれば、債務者の負担は増加します。債務の伸びは鈍化しても、名目GDP成長率を上回る水準が続く事が確実視されている事から債務の対GDP比は上昇し続けます。GDPデフレーターの低下は企業収益を悪化させ、企業は賃金の伸びを抑制します。賃金抑制は総需要の更なる低下とデフレ圧力という悪循環を生み出します。これが債務デフレのループであり、経済の縮小につながるスパイラルとなります。更に中国の投資は依然として対GDPで42%と高過ぎます。この過剰投資の傾向は収益の減少、過剰生産能力、供給過多、デフレ圧力という悪循環のスパイラルを生み出します。通常は消費刺激策を取るのですが、それらの公金が一部の人々のポケットに入る為、並行して取締の強化をするという中国独特の政策運営も問題を複雑にしています。先週末に中国当局はベンチャーキャピタルやプライベートエクイティーへの規制を強化し、これが企業の資金調達を困難にするという状況を生み出す懸念が急速に高まっています。中国のデフレ圧力は不動産業と地方政府のバランスシートのレバレッジ解消に起因しています。バランスシート上の負債の合計はGDPの約100%にまで膨れ上がっている事から解消は困難な状況です。需給のアンバランスもあり、中国国務院は11日に貿易支援の措置を発表しました。欧米のような保護貿易に舵を切っていない日本はスポットになりそうです。
https://www.ft.com/content/925e1ab5-dbf9-4c38-adaf-f4ffa44998c9

IMFの高官は「現在の世界経済は第二次冷戦の瀬戸際にあり、ソ連崩壊以来の進歩を「消滅」させる可能性がある」と強い警告を出しています。IMF第一副専務理事のギタ・ゴピナートは米国と中国を中心に地域ブロック化へ世界経済の細分化が加速しており、世界の生産高が”何兆ドル”も消滅する危険があると述べています。第二次冷戦に突入した場合、グローバリゼーションで構築された国際貿易の利益はその多くが消滅する可能性があります。経済ブロック化は一方が行うと対抗して他方も行う「報復合戦」に発展します。現在、世界1、2位の経済大国である米国と中国でこれが見られ、更にその他の地域でも経済が断片化し始めている事から「第二次冷戦の瀬戸際」と定義しています。資源やエネルギーではそれが起き始めており、後戻りできない可能性があります。
https://www.investmentweek.co.uk/news/4155778/imf-official-world-economy-risk-cold-war

米国のインフレ削減法(IRA)は、多くの人にその本当の意味が理解されていません。インフレ削減法という名前は、人々をミスリードするもので、この法案は米国の歴史上最大の政府投資で「産業政策」「グリーン政策」「貿易政策」の3つを税控除と補助金によって達成するものです。インフレには全くと言っていい程関係の無い政策です。先週、FTはYoutubeで30分にも及ぶIRAに関する特別映像(番組)を公開しています。実はこのIRA政策はトランプ時代に推進された「アメリカ第一主義」をより超える、グローバリゼーションの終焉とアメリカでの産業の回帰を目的としたものであると分析しています。
副題は、以下のようになっています
米国は何十年にも亘って自由市場のグローバリゼーションの模範でした。それはドナルド・トランプの「アメリカ第一主義」の政策で変わった。ジョー・バイデン大統領の画期的なインフレ抑制法は、国内のクリーンエネルギーのサプライチェーンの構築を目的として、税額控除、融資、補助金を活用して再産業化を推進し続けている。FTはIRAの奨励金を利用して対米投資を行っている3社を取り上げ、この法案がグローバリゼーションの終焉を示唆しているのか検証する。
https://www.youtube.com/watch?v=cfaubxeS5HU&t=1168s

英国の鉄鋼業協会(UK Steel)が鉄スクラップ輸出禁止を求める声明を出したのに続き、欧州鉄鋼生産者協会(Eurofer)は、鉄スクラップをEU域内に留められない場合、鉄鋼生産の脱炭素化に大きな影響が出るという警告文を掲載しています。Euroferは鉄スクラップが重要原材料法(CRMA)のリストに入らなかった事に懸念を示すと共にEU廃棄物輸送規則における強制執行の罰則が弱められた事に触れています。11月末にEU重要な原材料法の「戦略的原材料」に人工黒鉛が土壇場でリスト入りしたように、この問題は高度な政治的テーマとして暫くは業界と政界との交渉が続きそうです。
https://www.eurofer.eu/press-releases/missed-opportunities-in-securing-eu-scrap-supply-risk-delaying-industrial-decarbonisation-warns-eurofer

米国の上院議会で、食品容器などに使われる発泡ポリスチレン(EPS:発泡スチロール)を2026年迄に段階的に廃止する法案が提出されています。PS/EPSはリサイクルが難しいプラスチックとして認識されています。非常に軽い為に廃棄物の輸送コストが掛かりリサイクルできたとしても採算を取りにくいプラスチックです。欧州では、PSをリサイクルする為のPS Loopが立ち上げられていますが、現在、商業ベースで十分な採算が取れているとは言えません。更にEPSはマイクロプラスチックになり易く、水路に流入する事が懸念されています。米国では毎年少なくとも56億個のEPS製品が市場に流通しています。法案では罰則が設けられ、最初の違反には250ドル、2回目の違反には500ドル、3回目以降の違反には1,000ドルとなっています。
https://www.vanhollen.senate.gov/news/press-releases/van-hollen-doggett-lead-charge-to-curb-foam-container-pollution-to-protect-our-environment-improve-public-health#:~:text=Today%2C%20U.S.%20Senator%20Chris%20Van,adverse%20health%20effects%20and%20pollute

COP28は延長戦の末に、「化石燃料の消費を削減する事」で合意しました。EU政府はこの合意に対し「脱化石燃料時代の始まり」と称賛の意を表しています。しかし実は産油国が合意した理由は協定書の28条にあります。28条では「(この協定の)締約国に対し、パリ協定、異なる国家間の状況、及び取組を考慮し、各国が決めた方法で、世界的な取り組みに貢献する」との文言があり、化石燃料削減による温室効果ガス削減への貢献は各国独自で決める事を明記したものとなっています。罰則規定もなければ、数値や資金のコミットメントもない、大きな抜け穴のある合意となりました。欧米の保守系のメディアは何も決まらない茶番劇と評価し、リベラル系メディアは「一定の評価を与える」という2週間前と何も変わらないものとなっています。
https://www.reuters.com/business/environment/cop28-agreeable-saudis-it-lets-nations-chart-own-course-source-2023-12-13/

最新の調査により、再生可能エネルギーへの支持はフランスとドイツがEU26ヵ国で最低となりました。この調査は欧州の著名な調査機関であるデンマークのノルスタット研究所が実施したものです。EUで最も人口の多いフランスとドイツは再生可能エネルギーに対して最も懐疑的で支持する姿勢を示しているのは、それぞれ54%と57%に過ぎませんでした。更に26ヶ国全体で支持を表明したのは、平均で66%に留まっています。この調査で判明したのは再生可能エネルギーへの支持が年齢層によって大きく変わらないことでした。若い世代は再生可能エネルギーを支持する傾向が強いと思われがちですが、情報リテラシーは若年層の方が高い傾向にあり、実態を良く把握している事が明らかになっています。欧州のY世代やZ世代はリベラルや社会主義的傾向が強いという認識が一般的ですが、実際には必ずしも正しくありません。2021年にチェコの西ボヘミア大学が行った調査では、Y/Z世代は個人主義的であり、自立を重視する傾向があります。この世論調査では16歳から24歳の若者が増税よりも歳出削減を圧倒的に支持していることが判明しています。補助金と膨大な政府支出を伴う再生可能エネルギーへの不支持は、むしろ若年層の方が先鋭化し易いとの評価が多いのも事実です。あれだけ再生可能エネルギー先進国になると世界中を巻き込み宣伝していた張本人の2ヵ国で、国内支持がEUで最低という結果は政策の失敗を映し出していると言えます。
https://andel.dk/en/news/new-european-study-several-major-countries-express-skepticism-toward-green-energy-transition/

11-12日で中国の非公開政府会議、中央経済工作会議が行われました。関係筋の情報では、景気にテコ入れをする為、2024年に景気刺激策を策定する可能性が高いようです。中国当局は技術革新分野を優先し、既存産業のアップグレードとサプライチェーンの回復力向上に重点を置く計画です。特にデジタル、人工知能、生物/医学、航空宇宙を戦略的分野と定める予定です。GDP、財政赤字比率、地方債枠、失業抑制のそれぞれの数値目標は、来年3月の全人代で正式に発表・承認される予定です。専門家は中国の地方債務問題は相当深刻な為、地方政府は中央政府の財政援助に更に依存する事になると分析しています。
https://www.asiafinancial.com/chinas-leaders-meet-to-set-growth-stimulus-target-for-2024

EUの理事会と議会はEUデューデリジェンス指令(CSDDD)の最終立法プロセスに向け合意しました。デューデリジェンス指令は、大企業の事業、その子会社の事業、更にサプライチェーンの事業者にも影響を与えます。この指令は児童労働、奴隷制、労働搾取、汚染、森林伐採、過剰な水の使用等を含む、人権と環境への悪影響を軽減する義務を企業に課します。合意した内容では企業が指令に違反した場合、最大で売上高の5%の罰金、又は、事業の停止措置が含まれています。指令の発効後の初期の対象は、従業員数が500人以上で世界の売上高が1億5,000万ユーロ以上の大企業を対象としており、親会社がEU域外の企業の場合、指令発効後3年後にEU内で売上高が3億ユーロに達した場合に適用されます。欧州委員会は指令の対象となる非EU企業(EU域外の企業)のリストを公表します。
https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20231205IPR15689/corporate-due-diligence-rules-agreed-to-safeguard-human-rights-and-environment

鉱山の閉鎖で来年の供給不足が懸念されている銅ですが、インドで来年3月に稼働を開始する生産能力年間50万トンの製錬工場により更に需給バランスが悪くなる可能性が指摘されています。会社は世界トップ5に入るインドの大富豪ガウタム・アダニが所有するKutch Copperで工場が稼働した場合、精鉱の輸入が急増し、世界的な鉱石の供給が更に逼迫すると見られています。この工場だけでインドの銅生産が80%増加する事になります。インドの銅精鉱輸入量は2023年の推定130万トンから2024年には200万トンにまで増加すると見られています。中国とインドの製錬能力が増加する事で2025年には銅精鉱市場は更に逼迫すると見られています。
https://www.moneycontrol.com/news/business/adanis-new-copper-foray-to-further-tighten-worlds-ore-supply-11904731.html

欧州政府は2020年初頭から4年間の期間で行われているEUのタイヤリサイクルプロジェクト「LIFE GREEN VULCAN」について報告しています。このプロジェクトではタイヤリサイクルで最も困難なものの1つである脱硫プロセスの開発と再生ゴムの品質向上に焦点を当てています。欧州では、タイヤと自動車部品がゴムの全需要の3/4を占めています。このプロジェクトは、タイヤ及びタイヤリサイクル業者とイタリアのトレント大学が主体となって行われています。プロジェクトは来年2月に終了する予定です。
https://cinea.ec.europa.eu/news-events/news/life-project-aims-revolutionise-europes-approach-recycling-end-life-tyres-2023-12-14_en
https://www.lifegreenvulcan.eu/

欧州首脳会議が開催され、ウクライナへの支援が1つの焦点となっています。米国議会は、年内でのウクライナ支援議決がほぼ無理な状況で、欧州もハンガリーが取引条件(ハンガリーへのEU資金凍結の解除)を出しており、ウクライナへの支援は予断を許さない状況が続いています。この首脳会議に合わせる様に、プーチン大統領は侵攻後初の年次会見を開き「ロシアの目標が達成されるまでウクライナの平和は来ない」と発言し、戦争の長期化がさらに現実的になっています。
そんな中、ウクライナの首都キエフの新聞「キエフポスト(Kyiv Post)」がウクライナ人の現在の「最優先事項」に関する世論調査を発表しています。この世論調査は3月にも実施され、3月と11月のそれぞれの差も掲載されています。優先事項の1位は「ロシア軍のウクライナ攻撃」ですが、2位は「汚職」、3位は「インフラの破壊」、4位「不公正な裁判」、5位「物価高」となっています。興味深いのは1位の「ロシア軍のウクライナ攻撃」は3月より11月が2%下がっているのですが、2位の「汚職」と4位の「不公正な裁判」はそれぞれ11%と15%も上昇している事です。今年に入ってからも最高裁判所の長官(フセヴォロド・クニャジエフ:賄賂)、国務大臣(オレクシー・レズニコフ:公金流用)、選挙時にゼレンスキー大統領の大物支援者(事実上、傀儡とも言えるイホル・コロモイスキー:資金洗浄)が解任や拘束されています。それ以外でもこれ程の高官でない人物は多数解任されています。ウクライナは世界汚職国ランキングでフィリピンやザンビアと並び116位となっており、過去、ロシアと東欧を結ぶマネロンの集約地であった事はあまり知られていません。欧州委員会は11月にウクライナの特別報告書を出していますが、そこでも汚職対策は十分で無い事を認めています。報道されませんが、未だに続く司法を含む汚職文化が、支援をより複雑にしている側面があります。
https://www.kyivpost.com/post/25400
https://www.ft.com/content/bd7c9cfb-56ea-40e2-ad67-96cc9739c955
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/QANDA_23_5631


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