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NEWSCONの気になるNEWS(2024年8月第3週)

中国政府は9月15日からアンチモンの金属、鉱石、酸化物の輸出規制を課すと発表しました。アンチモンは蓄電池の鉛の硬化剤として使用し、はんだや弾丸用の鉛とスズの合金にも使用されます。更に半導体装置にも使用されています。中国政府は「この措置が国家安全保障と核不拡散の履行に役立つ」と述べています。今回の措置は米国の半導体技術規制への対抗措置と考えられています。アンチモンは軍事装備品の製造に不可欠であることから、武器の生産を困難にする可能性があります。世界有数のアンチモンの産出国である中国は西側への対抗措置としてアンチモンを利用してきました。この傾向は今後も続くと見られています。
https://www.scmp.com/economy/economic-indicators/article/3274602/china-control-exports-critical-mineral-antimony-next-month

米国のイリノイ州で電池リサイクル法が成立しました。この法律により電池の販売業者や流通業者は2026年迄に小型及び中型サイズの電池のリサイクルプログラムを提供する必要があります。中型電池には電動自転車や電動スクーター用の電池が含まれます。住民は電池の回収にリサイクルセンターを利用し、電池販売業者は、電池リサイクルに関する責任ある措置を提供することが要求されます。更に2029年迄に全てのバッテリーにリサイクルラベルを貼付する必要が生じます。
https://www.wglt.org/local-news/2024-08-09/koehler-chung-battery-recycling-bill-becomes-illinois-law

世界的な山火事(Wildfire)についての研究報告書 が発表されました。この報告書は季節毎の見通し、及び10年毎の予測を示しています。近年、カナダ、ギリシャ、アマゾン川西部で異常気象による山火事の増加が記録されており、地球規模での炭素排出が懸念されています。2023年3月から2024年2月迄の1年の間に世界全体で900万km²が山火事で焼失しました。火災による二酸化炭素排出量は過去の平均を16%上回り、合計86億トンのとなりました。昨年はサバンナ地帯での火災が少なく、過去最大の排出量には至りませんでしたが(過去最大は2003年)、北米とカナダで火災が増加し、二酸化炭素排出量の約4分の1を占めるまでに拡大しました。この研究では2023~24年に火災が発生しやすい気象条件となる可能性は、カナダで3倍、西アマゾンで20倍、ギリシャでは2倍になると警告しています。今年それらの地域では既に大規模な山火事が発生しています。
https://essd.copernicus.org/articles/16/3601/2024/

恐らくプラスチックのサーキュラーエコノミー(CE)で今年最大の動きになる可能性がある米国政府の方針転換がありました。国連環境計画によるプラスチック国際条約の政府間交渉委員会(INC-5)は11月25日から韓国の釜山で行われます。4月のオタワでの会議では、中国やサウジアラビア等の反対で殆ど進展はありませんでした。プラスチック生産量の削減目標を設定する事と段階的に廃止すべき有害化学物質のリストを作成する事にそれらの国が反対した為です。米国は賛成も反対もせず、どちらかと言えばプラスチックの生産量削減には反対の立場を取って来ました。しかし方針を大きく転換し、プラスチック生産量削減と廃止すべき有害化学物質のリスト作成を「支持する」という立場を取る事になりました。この変更に対し、米国のプラスチック生産者協会(PLASTICS)は声明を出し、大反対しています。この転換の背景には大統領選挙があるようです。現政権であるカマラ・ハリス副大統領はZ世代、無党派、環境保護団体の支援を狙い、石油化学産業の規制緩和を狙うドナルド・トランプ前大統領との対決軸を明確にする狙いがあるようです。
https://www.plasticsindustry.org/newsroom/plastics-strongly-opposes-white-house-position-change-on-plastic-production-caps/

エネルギー大手コンサルタント企業の英国ウッド・マッケンジー(WM)は、欧米が中国と対立しても今後も「中国の銅に対する支配的地位は変わらない」との調査レポートを発行しています。中国に代わる新たな加工・製造能力には数千億ドルが必要になる為、投資回収が不可能と見込んでいます。欧米諸国は銅のサプライチェーンを構築して供給リスクを軽減する事はできますが、現在の中国の銅サプライチェーンの支配力の大きさを考えると、完全な代替は不可能と結論づけています。2000年以降、中国は世界の製錬所の能力増加分の75%を占めています。今後もしばらくは重要原材料である「銅の囲い込み」が欧米で盛り上がりそうです。
https://www.woodmac.com/horizons/securing-copper-supply-china-energy-transition/

EUは2024年8月16日に中国産HVO(水素化処理植物油)とFAME(脂肪酸メチルエステル)の輸入品に暫定反ダンピング関税を課すことを決定しました。輸入関税は12.8%から36.4%の範囲です。この決定は欧州委員会が欧州バイオディーゼル委員会からの苦情を受けて行われました。 EUの関税で打撃を受けた中国の大手バイオ燃料生産者は、アジアのバイオ燃料バンカリング市場への参入を検討しています。ロイターのデータでは昨年、中国からEUへのバイオディーゼル輸出量は過去最高の180万トンに達しています。EUは中国からのバイオディーゼル輸出の90%という大きなシェアである為、中国にとっては大きな打撃となります。昨年ダンピング税の調査がEUで開始されて以来、 中国のEU向けバイオディーゼル輸出は2024年上半期に前年比51%減の56万7,440トンに落ち込んでいます。
https://www.reuters.com/business/energy/chinas-biodiesel-producers-seek-new-outlets-hefty-eu-tariffs-bite-2024-08-16/

英国ではEV推進に大きな打撃となりそうな政策が進んでいます。今年からEV義務化比率を自動車メーカーに課している英国ですが、EVが免除されていた自動車税が来年4月からが課される事になります。ガソリン車やディーゼル車とEVが同等の扱いとなり、年間190ポンドの支払いが必要になります。更に中古車も含め、車輌価格が4万ポンド超の車に対して、登録後最大6年間、410ポンドの「高級車」追加料金が課せられる予定です。これらの措置により、EV の所有コストは年間で合計 600 ポンド(約10万円)増加します。また英国では一部の車種で深刻な中古EV車の査定価格崩壊が起きており、Polestar等の新興メーカーのEVは1年で50%近く中古車の査定価格が落ちるというケースも発生しています。
https://www.wired.com/story/evs-are-losing-up-to-50-percent-of-their-value-in-one-year/

インドの複数の鉄鋼メーカーは、インド商務省に対してベトナム産、又はベトナムから輸出された熱間圧延鋼板の輸入に関する反ダンピング調査を要請しました。ベトナムを経由して中国産が迂回輸出されているという懸念がある中、インドの鉄鋼業に大きな損害が生じ始めていると警告しています。6月に鉄鋼省は同件について商務省と協議中であると報じられました。鉄鋼業界は鉄鋼省に様々な書簡を送り、中国とベトナムの2カ国に対してダンピング疑惑を申し立てていました。昨年インドがベトナムから輸入したHRCと鋼板は、62万トンで同品種の輸入量の約20%を占めています。東南アジア諸国からの輸入は、2023年度は前年の3倍に増加していました。
https://www.telegraphindia.com/business/modi-government-initiates-anti-dumping-probe-into-vietnam-steel-imports-after-prod-from-jsw-amns-india/cid/2041556

欧州でEV普及を妨げる1つの理由に最近の「保険料金の急上昇」があります。英国の保険ブローカーHowden Groupeは、英国のEVの平均自動車保険料金が約50%上昇し、昨年末に年間1,344ポンド(約21万円)に急騰したと報告しています。これはガソリン車の約2倍です。今年6月に世界最大の再保険会社であるスイス再保険(Swiss Re)は報告書を発行し、2030年までにEV保険市場が現在の4倍以上の2000億ドルを超えると予測し、EVリスクに対する懸念を説明しています。EV保険料金の上昇は修理技術者の不足、修理費の高騰、部品流通の不足、事故での修理性の悪さ等が理由で、特に中国製EVは英国ではサービスや部品供給が不十分の為、春には保険が掛けられないという事態が発生していました。中国製EVは7月に始まった暫定関税措置の影響でEUでの販売量が前月比で45%も減少しました。一方でこうした輸出の減少を補う為、4月から導入した廃車をEVに切り替える補助金の倍増で中国国内では年末までにEVが最大110万台増加すると予測されています。EV販売の伸びは、世界中で補助金と連動しており、商品力や市場の拡大とは別の数字になっています。
https://au.lifestyle.yahoo.com/electric-cars-cost-twice-much-102008196.html

中国科学院はチベット高原が「超高温多湿の段階に入り、今世紀末迄に一部地域で氷河の半分以上が溶け、湖の水位が10メートル以上上昇すると警告しています。過去15年間で草原と森林の面積は6~12%増加、アジアのモンスーン循環に大きな変化をもたらし、中国における異常気象の頻度が増加する可能性があると述べています。世界気象機関は先月末に、少なくとも10ヵ国で気温が50度を超えたと報告しており、中国は先月だけで101億ドルの経済的損失を被っています。異常気象は、既に経済活動に大きな影響を与え始めており、この傾向がより厳しくなると見込まれています。
https://www.scmp.com/news/china/science/article/3275068/extreme-weather-risks-rising-tibetan-plateau-gets-hotter-and-wetter-scientists-warn

銅相場から撤退した投機マネーは今後数ヶ月間は市場に戻る事が無いと予想されています。暫くは現物取引による実需ベースの価格形成となりそうです。投資熱が冷め、製造業の活動が弱含む中、現物取引が再び主導権を握る状況が続いています。マッコーリー銀行のアナリストは銅の供給過剰が予想以上に早く訪れ、今年は26万5000トン、2025年には30万5000トン、2026年には43万6000トンの余剰になると予想しています。BNPパリバは、今年の銅の余剰は15万~20万トンになると予想しています。今後の価格の上昇は取引所の在庫量次第と見られています。2024年のQ4に在庫が減れば、価格の回復と銅関連株の上昇が見られると分析しています。銅実需は世界経済の成長次第との見方が強く、成長が鈍化し需要が減れば、2025年と2026年の余剰量が更に大きくなると見込んでいます。直近では景気後退懸念とFRBの金利政策による米経済の影響が大きいと考えられています。
https://www.investing.com/news/stock-market-news/physical-buyers-win-battle-for-copper-market-as-funds-retreat-3576965

中国は今週、記録的な発電用原子炉の建設を承認しました。数は11基で、5つの新規プロジェクト、金額は280億ドルを超えるとみられています。中国核能力協会のデータでは中国には稼働中の原子炉が56基ありますが、その総発電量シェアは約5%しかありません。投資銀行の中信証券は中国が今後3~5年で「毎年10基」のペースで新たな原子力発電所建設を承認し続けると予想しています。エネルギー安全保障に対する万全の姿勢を示しているだけでなく、グリーン鉄鋼やグリーン製品への輸出機会の基礎となります。現在中国内で建設中の原子炉は26基あり、完成すれば国内の総発電容量が30GW以上増加する予定です。ロシアが濃縮ウランの最大の供給先であるという点でも、大きな利点となっているようです。
https://www.scmp.com/economy/china-economy/article/3275184/china-seeks-heat-economy-us28-billion-nuclear-power-investment-11-reactors?module=top_story&pgtype=section

インドのタタ・スチールは小型原子炉(BSR)を鉄鋼生産に利用する事を検討しているようです。BSRで発電した電気を使い電解装置でグリーン水素を製造し、その水素を原料炭の代替として使用する計画です。インドの関係筋によると同社は220Mの発電能力を持つバーラトBSRを約200基建設(合計約45GW)する可能性を検討しているという事です。インドの財務大臣は7月23日の予算演説でBSRについて語り、インド政府はBSRの設置に民間部門と提携すると述べていました。インドで民間企業が原子力発電施設を所有し運営する為には現在の法律を改正する必要があります。インド政府は法律の適切な改正を計画していると伝えられています。安全保障や核管理の問題から他国が反対する可能性がありますが、もしこれが実現した場合、世界の鉄鋼業界としてはかなりインパクトを持つ動きになると思います。
https://www.thehindubusinessline.com/companies/tata-steel-wants-to-go-nuclear-for-green-steel-mulling-200-bsrs/article68546335.ece

上期と、特に6月に中国からの「希に見る」銅輸出の急増、それによる在庫の積み増しと価格の下落は必ずしも生産量の増加と国内需要の弱さによるものでなく、コンゴ産の銅の「行き場」に起因している可能性が指摘されています。コンゴ民主共和国は昨年ペルーを抜いて世界第2位の銅生産国(精鉱含め)となり、コンゴからの中国の輸入量は上半期に前年比91%増の69万8000トンに達しました。一方、中国は上半期に590万トンの精錬銅を生産しています。これは前年比6.5%増で、増加分は35万9100トンに上りました。世界の3大市場であるCME、LME、ShFEの間でシームレスな現物取引が行われていれば、中国は余剰分をCMEに直接出荷することも、コンゴ産の余剰銅を米国に転用することもできました。しかし当時それがスムーズに行われず在庫が積み上がるという事態が発生しました。現在、ShFEの在庫は7月初めから減少しており、中国の輸出量も同様に7月から大幅に減り始めています。その為、イレギュラーが解消されつつあり、今後は需給に沿った価格形成になる可能性があります。
https://www.mining.com/web/column-chinas-rare-copper-export-boom-signals-more-than-weak-demand/

EUでは本来6月迄に提出する必要のある「国家エネルギー・気候計画(NECP)」を多くの国が未だに提出していません。期限内に提出したのは僅か4ヵ国だけでした。加盟27ヵ国中、現在迄にNECPを提出したのは僅か10ヵ国で、特にEUの排出量上位5ヵ国の内、提出したのはフランスとイタリアのみ、ドイツ、ポーランド、スペインは未提出です。EUの長期気候計画はCO2排出量そのものを削減することは期待されておらず、計画された対策と評価を単に纏めたものに過ぎません。COP 30を前に、EUの気候計画への意思を見せる必要がありましたが、殆どの国は期限を無視しています。欧州委員会はこの問題を重要視しており、提出を強く要請しています。特に選挙後、EUは気候変動対策においても一枚岩でないという側面を見せています。次回のCOPも形骸化しそうです。
https://www.euractiv.com/section/energy-environment/news/austria-submits-2030-climate-plan-late-as-germany-spain-flout-june-deadline/

EUと中国の貿易報復合戦が過熱し始めています。中国商務省はEUの乳製品に対する補助金調査を開始すると発表しました。チーズ、牛乳、クリーム等が対象となります。声明ではEUの20の補助金制度を調査すると述べています。中国税関局のデータでは、EUは2023年の中国の乳製品輸入総額の少なくとも36%を占め、ニュージーランドに次いで2番目に大きな供給国となっています。中国はEV関税への報復措置として既に6月にEU産豚肉の輸入に対する反ダンピング調査を開始しており、スペイン、オランダ、デンマークからの輸出に影響が出始めています。
https://www.sharecast.com/news/international-economic/china-launches-probe-into-eu-dairy-subsidies–17298512.html

中国の鉄鋼不況は、先日宝武鋼鉄集団の胡王明会長が予想以上に深刻である状況を伝えました。この状況はデータにも表れ、米国の一般紙にも掲載される状況となっています。金融情報会社Windは中国の鉄筋価格が今年既に20%以上下落している事、BMIの商品分析責任者は、鉄鋼需要の失望的減退、更にFact Setのデータでも鉄鉱石価格が28%下落した事を挙げています。中国の需要は2025年まで低迷が続く見込みで、メーカーは赤字操業の所も増えて「持続不可能な市場環境」と見られています。
https://www.cnbc.com/2024/08/21/the-worlds-largest-steel-industry-is-going-through-a-winter-amid-a-supply-glut-and-weak-demand-.html

世界最大の金属スクラップ企業Sims Ltdが年次決算を公開しました。売上は前年比6%増、しかし減益となり、Underlying EBITが前年比83%減少、法定純利益(Statutory NP AT)は、前年のAU$ 1億8,100万からAU$5,780の純損失となっています。ただしUnderlying EBITのAU$ 4,290 万は、当初の予測である AU$2,000 ~ 2,500 万を上回りました。20日の決算発表後に株価は大幅に下げましたが、22日には下げた分を戻しています。ただし年間で株価は30%近く下げています。今月発表された英国の資産売却で一時株価は戻していました。
https://www.simsltd.com/investors/

EUの外交トップの1人であるジョセップ・ボレル外交政策上級代表は「中国との貿易戦争は避けられないかもしれない」と警告を発しました。同氏は「我々は甘い考えを持ってはならない。貿易戦争に巻き込まれるつもりはないが、恐らくそれは避けられない。それが物事の論理でもあるのだ」と21日にスペインで発言し、今後の見通しを示しました。欧州の指導者達は「中国の台頭を封じ込める」意図は無い事を発していますが、ボレル氏は中国とEUの投資協定の復活の可能性には「懐疑的である」との見解を示しています。
https://news.az/news/eu-s-borrell-alerts-that-eu-china-trade-war-could-be-unavoidable

既に規定路線と言われていましたが、米国で最もEV化に力を入れていたメーカーであるフォードはEV戦略を見直すと公式に発表しました。戦略転換の理由はコストです。EVへの支出を年間投資額の40%から30%に引き下げ、今後ハイブリッド車や手頃な価格の車種の開発に注力すると発表しました。フォードは既に今年だけでEV部門が55億ドルの損失を予想している状況です。トランプ共和党大統領候補は「税額控除や税制優遇措置は一般的にあまり良いものではない」と述べ、当選した場合にはEV税額控除を廃止する可能性について言及しています。米国でのEVは、選挙戦に関わらず暫く鈍化し、選挙結果によっては一層鈍化する可能性があります。
https://www.dailymail.co.uk/yourmoney/cars/article-13765291/Ford-ditches-new-EV-major-strategy-shift-amid-plummeting-demand-electric-cars.html

投資家は銅から金へ資金をシフトし、金へのエクスポージャーを増しています。投資家が金に傾倒している要因は、FRBによる利下期待、根強いインフレ、地政学的緊張、中央銀行による購入増加、更に金が過去3年間のパフォーマンスでビットコインや指数投資を上回っている為です。特に経済の不確実性とインフレに対するヘッジとして機能してきた経緯があります。中央銀行が金を買う動機は、金には流動性があり、信用リスクがなく、地政学的干渉を受けない為です。
https://www.cityam.com/gold-hits-record-high-on-hopes-of-fed-rate-cut/



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