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NEWSCONの気になるNEWS(2024年8月第2週)

GSが年末までの米国の景気後退の確率を引き上げたばかりですが、JPモルガン(JPM)も、米国の景気後退の可能性を25%から35%に引き上げました。JPMのアナリストは労働市場が予想外に活発でないことから、景気が悪化する可能性があると考えています。更に2025年後半までに景気後退に陥る可能性は45%に上がるとしています。多くのアナリストは、FRBが利下げを遅らせており、これが米国の景気後退につながると考えています。
JPMはFRBが年末迄に少なくとも100ベーシスポイント(1%)の金利引き下げを行うと予想しています。
https://eurasiabusinessnews.com/2024/08/08/jp-morgan-raised-likelihood-of-a-recession-in-the-us-from-25-to-35/

中国乗用車協会が発表するデータは背景を精査する必要があります。7月の新エネルギー車(EV+HV+PHV)の販売台数が前年同期比で37%増加し、全自動車販売台数の50.7%を占める等、過去最高を記録したと発表しました。純電気自動車(EV)の販売は7月に14.3%増となり6月の9.9%増から上昇しました。しかし自動車販売全体は▲3.1%で4ヵ月連続の減少となりました。中国では自動車市場が低迷している事から政府が7月下旬に購入補助金を2倍(1回の購入につき最大2万元(2,785ドル))に増額し、更に4月に遡って適用すると発表しました。また自動車購入台数を制限している一部の都市が規制を緩和し始めています。首都北京市では先月、新エネルギー車の免許割当台数を2万台追加すると発表しました。これは2011年に厳格な割当台数制度が導入されて以来、初めての規制緩和です。現実は景気低迷で市場が余剰の為、無理やり補助金で台数を稼いでいるような状況です。そうした背景もあり、EVの過剰生産問題を抱える中国はEUの対中EV関税に対してWTOに正式に苦情を申し立てました。
http://www.cpcaauto.com/

インドの最高裁が「鉱物税」を承認した事でインドの鉄鋼生産コストが1トン当たり18ドル弱上昇する可能性があります。インドの最高裁判所は全州政府に鉱物資源への課税権限を与え、鉱山会社が支払うロイヤルティは「税金」として認めないという判決を出しました。鉄鋼、アルミニウム、セメント、石油・ガス、石炭業者、及びこれらの材料を消費する産業に影響する可能性があります。インド国内の鉄鋼価格は現在、中国からの輸入材とほぼ同価格です。その為、これ以上の値上げはインド鉄鋼会社の競争力低下を招くと懸念が広がっています。S&P Global Ratingsの推計によると鉄鉱石に15%の税金が一律に適用された場合、鉄鋼1トン当たりのコストが約17.8ドル上昇する見込みです。既にインドの鉄鋼業界は輸入中国材に対する保護貿易措置を政府に請願しており、この傾向は一層強まると見られています。
https://energy.economictimes.indiatimes.com/amp/news/coal/mineral-taxation-greenlit-by-supreme-court-could-raise-steel-costs-by-1500-per-tonne/112361222

木質ペレット発電所にとってはかなりの逆風となる報告書が発行されています。英国のシンクタンクのEmberが発行した最新のデータでは世界で最も多くの木質ペレットを燃焼させて発電している英国のエネルギー企業Draxは、2023年に1,150万トンの二酸化炭素を排出し、英国最後の石炭火力発電所であるラトクリフ・オン・ソア石炭発電所の4倍のCO2を排出した事が判明しています。Draxは2023年に再エネ補助金を5億5000万ポンド(約1000億円)受け取っており、受け取った補助金を含む公的資金の総額は約70億ポンド(約1,300億円)に達します。EUと英国(と日本)ではバイオマス発電所に排出量の報告義務を課していません。世界の科学者約900人以上が2022年には再生林を利用し輸入する木質ペレット発電所は「グリーンでは無く」再生可能エネルギー施設から除外すべきという請願に署名しているにも関わらず、多くの国際金融機関と投資会社が実質的に株を所有する欧米の木質ペレット企業とその産業は根深い利権に守られた膨大な補助金によって存続し続けています。
https://ember-climate.org/insights/research/drax-co2-emissions-biomass/

米国の下院議会で「鉄鋼近代化法案」が提出されました。法案は産業が衰退した都市に鉄鋼工場を建設し、世界の次世代クリーン鉄鋼業を米国がリードする事です。それにより製造業を強化し、雇用の維持と産業競争力を高めます。全米鉄鋼労働組合、米国鉄鋼協会(AISI)、米国の鉄鋼メーカー、そして何より全米最大級の政治ロビー団体であるNRDCが共に支持を表明しています。選挙前に鉄鋼関係者からの支持が欲しいという政党の背景もあり、今回法案が提出されているようです。しかし米国が「鉄鋼業の再生」に向けて本格的に動き始めている事は確かです。これは地政学的な影響による部分も多分に有ります。
https://khanna.house.gov/media/press-releases/release-khanna-introduces-bill-build-new-iron-and-steel-plants#:~:text=Washington%2C%20DC%20%E2%80%93Today%2CRep,and%20increase%20US%20industrial%20competitiveness

欧州リサイクル産業連盟(EuRIC)は、建設/解体産業向けに「建設部門の循環性の向上:欧州の再構築」というマニフェストを発表しました。このマニフェストは欧州政府向けに発行されており、今後5年間に遂行すべき5つの政策を提言しています。リサイクルの強化、原材料確保の自立、イノベーションの促進、雇用の創出、経済成長を促進させるリサイクル業の育成、が含まれています。欧州選挙後に新政府となり、建設/解体業にリサイクル業を組み込む狙いがあります。マニフェストでは建設業にリサイクル材利用を課す法律を推進するよう求めています。
https://euric-aisbl.eu/resource-hub/reports-studies/eu-recyclers-manifesto-increasing-circularity-in-the-construction-sector

中国国務院は、企業の炭素排出量削減を支援する為、人民銀行が金融機関に低利融資を提供するプログラムを3年間延長すると発表しました。中国人民銀行の融資制度は2021年に開始され、銀行は適格融資の元本の最大60%を、貸出金利1.75%で受け取ることができます。延長発表に先立ち、国務院は「グリーン・低炭素発展への金融支援に関するガイドライン」を発行し、記者への質問と回答に関するQ&AをHP上で発表しています。中国政府は、2030年までに非化石エネルギー消費の割合を約25%に増やす計画です。今回発表された計画では、2035年までに経済を「完全にグリーンかつ低炭素の軌道に乗せる」としています。
http://www.pbc.gov.cn/en/3688006/3995557/5336109/index.html

中国から前四半期に外国人投資家が引き上げた資金の純総額は過去最高の150億ドルに達しています。中国の国家外為管理局が発表したもので、中国の国際収支における直接投資負債は4~6月期に約150億ドル減少し、実質的なマイナスになりました。2024年の半期では約500万ドルのマイナスで、このまま実質のマイナスが続けば1990年以降、初の年間マイナスになる可能性があります。中国への外国投資は2021年に過去最高の3,440億ドルに達していました。しかし景気の悪化だけでなく、様々な規制により海外投資家の懸念が深まり、急激な資金の引き上げとなっています。
https://www.firstpost.com/world/foreign-investors-pulling-record-amount-of-money-from-china-economic-slowdown-13803739.html

EV電池リサイクルに自動車メーカーが本格的に参入します。仏ルノーが正式にEVバッテリー材料リサイクルの合弁事業に参加することになりました。元々欧州最大の廃棄物管理会社Suezとバッテリーリサイクル企業Erametが合弁でEVバッテリーリサイクル企業を立ち上げる計画があり、ルノーが参画する予定でした。しかし自動車メーカーであるルノーが公正な競争に影響を与える可能性がありEU当局からの承認が必要でした。先週、EU当局は正式にルノーが合弁に参画する事を認めています。正確にはSuez、Eramet、ルノー子会社のザ・フューチャー・イズ・ニュートラル(TFIN)による2つの合弁事業に対し、欧州の競争当局が承認を出しました。この合弁は自動車メーカーが直接関与する「垂直統合型の合弁会社」となる事から、独立系の電池リサイクル業者に影響を与えると考えられていました。3社は合弁会社における個々の株式について詳細を明らかにしていません。しかし推定投資額は3億ユーロ(500億円)以上と巨額なものになる予定です。ルノーは既にSuez子会社であるブーン・コメノール・メタリンペックス(BCM)の株式を 33% 保有しており、BCMはクラップや産業廃棄物の非鉄金属のリサイクルを行っています。欧州では独立系のLIBリサイクル事業者は、BASF、Glencore、Solvayのような大手化学系や鉱山系の企業であっても計画を延期したり、縮小する傾向にあります。今後、欧州ではメーカーの垂直統合による競争力確保が必要であると欧州政府が判断した可能性があります。
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/HTML/?uri=OJ:C_202404651

世界最大の金属リサイクル企業であるSimsは英国の金属(リサイクル)事業を英国に登記するUnimetals Groupに1億9500万ポンドで売却する事に合意しました。Simsは昨年の決算発表時より英国の事業戦略の見直しの一環として、金属事業の売却先を探す事を示唆していました。今回の売却額はSimsの英国資産の価値を大幅に上回るプレミア売却で施設28ヶ所と4台のシュレッダーが含まれます。この売却による資金で事業基盤が強化されると見込まれ、オーストラリア証券市場(ASX)でSimsの株価は一時30%近く上昇しました。近年、英国事業は人件費の高騰、エネルギー価格の高騰、Brexit後の人手不足や国内での競争により経営状態が悪化していると報道されていました。Simsは今後オーストラリア、ニュージーランド、米国の事業に集中する旨を述べています。
https://www.mrw.co.uk/news/sims-sells-uk-metals-business-12-08-2024/

中国は7月に起こった集中豪雨と洪水等の異常気象により約101億ドルの経済損失を受け、この額は今年上半期(1-6月)の気候関連損失とほぼ同額でした。中国の副首相は深刻な洪水問題が続く為、農業保護と防災の強化を発信しています。7月は異常気象による電力供給の問題からアルミニウムの生産にも影響が出ました。7月の被害は全土で約2,640万人に及び、110万人が避難、1万2000軒の家屋が倒壊、15万7000軒の家屋と約242万ヘクタール分の農作物も被害を受けました。オックスフォードエネルギー研究所によると、中国の氷河の80%以上が溶解しつつあり、近い将来、約2億7000万人に影響が出ると考えられています。こうした状況もあり、中国は先進国に対し数兆ドル規模の気候変動対策資金を要求する事になりました。中国気象庁は排出量が高止まりした場合、中国で50年に1度発生すると予想されている猛暑が今世紀末迄に2年毎に発生する可能性があると警告しています。異常気象による経済損失の問題は世界各地で深刻に捉えられるようになっています。
https://www.devdiscourse.com/article/science-environment/3050085-chinas-vice-premier-urges-strengthening-disaster-prevention-in-agriculture

今、インドネシアを軸に世界のニッケル市場でどのような事が起きているのか、パシフィックフォーラムの研究インターンでハワイ大学マノア校の政治学文学修士課程の学生であるKayla Anandiaが執筆したレポートが掲載されていますので、リンクをお送りします。2023年9月の ASEAN首脳会議でインドネシアと米国は「重要鉱物特定 自由貿易協定 (CMS-FTA)」を議論しました。この協定が締結されれば米国のIRAの税制優遇がインドネシア産の鉱物を使った製品に適用される事になります。既にインドネシアのニッケル産業は中国に独占された状態でしたが、この協定の議論により一層中国資本によるインドネシアへの参画が顕著になりました。インドネシアが2019年にニッケル鉱石の輸出禁止措置を行った際もインドネシアの中国企業はアクセスが可能な状態でした。輸出禁止措置により、買い手であるインドネシアの中国企業はインドネシア産のニッケル鉱石を安価にする圧力を掛けられる状態が日常化しました。中国によるインドネシアニッケルの寡占支配は国際市場のニッケル価格の下落を生み、更に過剰生産により他国のニッケル鉱石価格の低下という「負のスパイラル」を生み出しました。しかしCMS-FTAに対する懸念が米国議会で表明され、ホワイトハウスは懸念国条項を設ける事になり、IRAの優遇措置を受ける為には懸念国の資本が25%以下に抑えられる必要が生じました。現在、中国企業はその対応を行っています。インドネシアのジョコ・ウィドド大統領による鉱物資源政策は一見成功に見えますが、中国企業の寡占という長期的には負の遺産を抱える状態になり始めています。今後一番懸念されるのは、政治的判断でニッケル市場が大きな影響を受ける事です。ニッケル価格は7月に急落し、ステンレス月次金属指数(MMI)も下落しました。ステンレス鋼のサービスセンター、ライアソンやミドルビー等の大手エンドユーザーは需要の低迷と出荷量の減少を報告し、オウトクンプは「市場環境の軟化」を認め、第3四半期の出荷も現状維持と予測しています。
https://asiatimes.com/2024/08/the-true-cost-of-chinas-hold-on-indonesias-nickel/

現在、炭素除去・貯留(CCS)と並び炭素除去で期待されているものに「遺伝子組み換え木(Genome-edited trees)」があります。これは遺伝子組換技術により、成長を早め多くの炭素を吸収・貯蔵し、更に木の成分であるリグニンを減らす事で加工を容易にし、強度を上げます。採用されたのは「遺伝子組み換えポプラ」で、成長が通常よりも早い為に炭素吸収が多く、更に加工した時の強度が1.5倍になるだけでなく、リグニンの減少で加工工程におけるエネルギー使用量が減ります。遺伝子組み換え技術により総合的に炭素削減を行う事が可能となります。この内容は科学誌に掲載され、各国の主要メディアで取り上げられています。ゲノム編集技術は米国が圧倒的に強い為、今後、この分野の投資は益々増えそうです。しかし本当に環境に優しいかは全く別問題です。
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S2590238524003965

欧州資本最大のLIBメーカーであるNorthvolt は電池生産の遅延により深刻な問題を引き起こし始めています。6月にはBMWからの約10億ユーロの受注を失いました。今回VWとも問題も抱えています。VWはNorthvoltの生産の遅れから、社内にタスクフォースを設置しました。タスクフォースの目的は電池の納品と緊急時の代替調査です。Northvoltは量産に入り、生産と品質が追いつかないとの憶測が長く続いています。2023年の最初の3四半期の損失は前年比 8倍の約11億ドルまで膨張していました。現在までに150億ドル以上を資金調達し、2024年内にIPOを実施する計画でしたが、IPOは2025年に延期されるという見方が強まっています。昨年は2件の死亡事故を起こしました。華々しい宣伝と大きな資金調達は逆に障害となりつつあります。既に欧州でもEV販売の鈍化から電池供給は過剰気味になっており、Northvolt社製電池を使う理由が薄れてきている可能性は高くなりつつあります。スウェーデン政府や欧州政府までもが多額の資金援助を行ったNorthvoltのプロジェクトは計画の相次ぐ変更と延期で暗雲が垂れ込めています。
https://www.electrive.com/2024/07/11/vw-allegedly-sets-up-task-force-on-northvolt-problems/

UBSグローバル・リサーチは銅価格の最近の急激な調整はほぼ一巡したと見ており、現在の水準は投資家にとって魅力的な「中期的参入ポイント」と分析しています。マクロ経済情勢は欧州と中国の景気低迷から予想より弱い状態ですが、銅の長期的なファンダメンタルズは引続き堅調と見ています。UBSは2024年後半から2025年にかけて市場が徐々に逼迫すると予想しています。しかし第3四半期中に急速な市場逼迫や価格反発に繋がるような要因が発生するとは予想していません。価格が8,000~8,500ドルの範囲に下がれば、魅力的な投資機会と見ています。鉱山の混乱もあり、今年(2024年)の銅鉱山からの供給は1%未満の成長になると予測しています。
https://finance.yahoo.com/news/ubs-sees-copper-correction-buying-113550411.html

英国やEUで中古EV価格が下落し、様々な問題が発生しています。英国では中古EVの価格は前年比で約30%下落、ガソリン車の価格下落率のほぼ5倍に達しています。ドイツでもパンデミック前に比べて24%下落しています。EV中古価格が下落している為、リース会社がEVのリース料金を大幅に上げ始めています。Data Forceによるとドイツ、英国、フランス、スペインを含む欧州16の市場では新車EVの60%が企業車両や商用車購入者に販売されています。これらはほぼ全てがリース車両で、残り40%の個人購入者の約半分もリースです。通常リースの価格は推定される3年後の中古再販価格、又は残存価値に基づいて、リース期間の減価償却を計算し決められます。仮にリース終了時に中古車価格が推定価格よりも低かった場合、リース会社は損失を出すことになります。EUと英国のリース会社は今年、急激な中古価格の下落による損失を防ぐ為にリース料金を一斉に上げています。ドイツのシンクタンクCARセンター・オートモーティブ・リサーチによれば2021年8月時点で価格が4万5000ユーロのEVのリース料金は、当時月額284ユーロでした。当時は同等の化石燃料車の月額リース料金は473ユーロで、EVのリース料金が大幅に下回っていました。リース会社は今年、大きな損失を出しています。2024年8月現在、同等のEVのリース料金は当時の2倍以上の621ユーロに上昇しています。一方、ガソリンやディーゼル燃料車のリース料金は逆に468ユーロに下がっています。EUと英国では、EVのリース料金が大幅に上がる事、そして補助金が終了する(した)事で一層EVの販売ペースが鈍化すると見られています。
https://ca.news.yahoo.com/finance/news/leasing-model-behind-europes-ev-050308818.html

世界の炭素クレジット市場で利権と正義の対立が起きています。国連が支援し、世界の炭素クレジットの実質的な科学的検証標準機構である「科学的根拠に基づく目標イニシアチブ(SBTi)」は今年4月の理事会において「企業がネットゼロ目標設定において炭素クレジットをより多く利用できるようにしたい」と発信しました。SBTi は企業のネットゼロ計画を検証する世界最大の独立した第三者機関であり、気候科学を根拠としている事から国際的にも最も信頼性の高い標準機構と考えられています。現在、世界では欧米の多国籍企業を中心に約 6,000 社が SBTi を利用して排出目標を検証しています。更に今後2,000 社以上が自社目標の検証をSBTiのガイダンスに沿って受けることを約束しています。先月SBTiは同団体が実行中の「炭素クレジットに関する研究」を終える前に「企業の炭素クレジットの使用を認める」という意向を表明し、内部の職員やアドバイザーから反発を招きました。内部からの反発だけでなくカーボン・マーケット・ウォッチ等の独立系の監視団体が抗議し、内部告発では理事会が専門家の意見を無視し、会社の規則に違反したとも主張しています。これは炭素クレジットが必ずしも全体的な炭素削減に寄与していない可能性があるというSBTi自身の研究発表を行う前に上層部の決定で炭素クレジットの使用を認めるという意向が対外的に表明されたからです。こうした経緯から、SBTiは企業が排出目標達成の為に炭素クレジットによるカーボンオフセットを利用できるかどうかの最終決定を、2025年まで延期しました。
炭素クレジットの市場規模は2023年に約7億2,300万ドルでした。SBTiの目論見では2030年迄にその100倍以上の1,000億ドルに拡大する可能性があると言われています。理由はCSRD等の規制が企業の目標設定に「2030年の削減目標と「スコープ3」を明確に含めており、大企業は自社でコントロールできないスコープ3に炭素クレジットを利用せざるを得ないからです。
SBTi へ資金を提供している主な団体はIKEA財団、アマゾン、ベゾス・アース・ファンド、We Mean Business連合(CDP、Climate Group、BSR等から成る連合)、ロックフェラー・ブラザーズ・ファンド、UPS財団等です。更にSBTi のパートナー団体はCDP、国連グローバル・コンパクト、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)です。全てが欧米系の団体です。そしてSBTiによる(自主的)炭素クレジットを最も推進している1人は米国の元気候変動特使ジョン・ケリーです。
という事で、SBTiの理事会は利権を拡大する為に炭素オフセットを何が何でも進めたい、SBTiの職員や科学者から成るアドバイザーは炭素クレジットが必ずしも科学的に正義とは考えていない、という利権と正義の戦いが繰り広げられている状況です。こうした事実は報道すべきですが主流メディアでは黙殺され続けています。
https://www.reuters.com/sustainability/sustainable-finance-reporting/carbon-offset-setback-risks-corporate-backtrack-climate-goals-2024-08-13/

中国の鉄鋼業界は伝えられている以上に深刻なようです。世界最大の鉄鋼メーカー宝武鋼鉄集団(世界シェア約9%)は、中国の鉄鋼業界が2008年と2015年の鉄鋼不況より深刻な状況であると警告しています。宝武鋼鉄集団の胡王明会長は半期の総会で今回の危機は鉄鋼業界が予想していたよりも長期化し、深刻化する可能性が高いと警告を発しています。1-7月の中国全体の鉄鋼生産量は前年同期比で2.2%の減少、特に7月は6月比9.5%減、前年同月比9%の減となっています。元々の分母が大きい為、9%は膨大な量です。宝武鋼鉄は危機管理の為に「キャッシュ経営」に完全に舵を切っており、支払遅延や架空取引の検出等、管理を強化しています。中国の鉄鋼業界は2008~2009年の世界金融危機と2015~2016年のチャイナショックの2度の危機を経験しています。それらの危機は中国政府による「大規模な」景気刺激策によって解決しました。2016年は在庫処理の為に鉄鋼輸出が過去最高に達しました。しかし中国政府はバブルの再燃を警戒して過去と同様な景気刺激策を打てない状況です。中国の製鉄所は国内市場での価格下落を受け生産を削減し、輸出を増やしています。輸出は今年1億㌧を超えるペースで進められ、2016年以降では最高水準となっています。この中国の状況を受けて、市場では世界的な鉄鋼価格の下げ圧力と鉄スクラップを含む原料価格下落の懸念が出始めています。
https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-08-14/china-steel-industry-in-crisis-as-baowu-warns-of-severe-winter

ドイツとユーロ圏(通貨ユーロを使う20ヵ国)の投資家による景況感指数が極端に下落しています。金融関係者や投資家の景況期待を測る主要指標であるドイツZEW景気信頼感指数は7月の41.8から、8月には19.2ポイントに劇的に低下しました。 事前の予想値は32でした。同様にユーロ圏の経済情勢も悪化し、同様のユーロ圏での指数は43.7から17.9に大幅に低下し、2月以来最低となりました。予想は35.4でした。この数値はパンデミックが始まった2020年4月以来、月間では最も悪化した月となっています。ドイツとユーロ圏の景況感指数の悪化の主な要因は中国景気です。輸出と投資を中国に大きく依存してきたドイツはこの影響を最も受け、ドイツを軸としたユーロ経済圏も同様にセンチメントが悪化しています。それ以外にもEUの曖昧な金融政策、米国経済の期待外れの事業データ、中東紛争の激化に対する懸念が挙げられています。ZEW経済研究所所長は「ドイツの経済見通しは崩れつつある」と認めています。
https://www.zew.de/en/

7月は中国国内での景気低迷が予想を上回り銅在庫が海外の倉庫で積み増しされてきました。しかし最近その状況が解消される気配があります。LMEのデータによると中国産銅は7月の取引所在庫増加分の72%を占め、7月末時点で総在庫の53%を占め、6月の45%から増加しています。LMEの金属原産地の情報では銅の輸出が記録的なペースで進んでいる中国の公式データと、中国本土に近い韓国と台湾での在庫が大量に積み上がっているデータが一致していました。しかし最近、中国への精錬銅輸入取引が再開され、輸入が再び中国業者の利益を生む状況になりつつあります。需要の指標の一つである輸入銅の洋山プレミアムが回復し、LMEが追跡する倉庫から銅を引き揚げる注文も出始めています。
https://www.bnnbloomberg.ca/business/international/2024/08/13/wave-of-chinese-copper-fills-warehouses-abroad-as-demand-weakens/

EV大国ノルウェーは今年、石油産業への投資が大幅に増加しています。2024年の投資額は2,400億ノルウェークローネと推定されており前回調査による推定額を11%上回っています。ノルウェーはCOPで化石燃料を段階的に廃止する事を推進している国ですが、昨年から今年にかけて石油・ガス田への投資を複数承認しています。ノルウェーの年金やEVへの補助金はこうした石油ガス産業から得られる利益と税金で支えられており、自国をグリーンな国家として売り込む事に多大な化石エネルギーを使っています。欧州ではグリーンへの動きは表面上止まっていませんが、戦争と分断以降、言われる程グリーンではないのが実情です。
https://www.ssb.no/en/energi-og-industri/industri-og-bergverksdrift/statistikk/investeringer-i-olje-og-gass-industri-bergverk-og-kraftforsyning/articles/new-estimates-for-oil-investment-indicate-clear-growth-this-year



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