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NEWSCONの気になるNEWS(2024年7月第5週)
欧州政府は2期目に突入したウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長が「Europe‘s Choice 」という2024年~2029年までの施政方針を発行しました。その中で、今後5年から7年を掛けて1000億ユーロの予算をAI向けに検討していることを明らかにしています。また全てのリソースを活用できる「欧州AI研究評議会」の設立を提案する事も示されています。詳細は明かされていませんが、今後5年を掛けて巨額な資金を投入してAI産業を活性化する動きは、欧州で確実に進行すると見られています。三中全会で中国でもAIへの投資を加速する事が示されており、次の5年はAIへの政府投資が加速する事になりそうです。
▶ https://commission.europa.eu/document/download/e6cd4328-673c-4e7a-8683-f63ffb2cf648_en
欧州のグリーンディールとサーキュラーエコノミーに関する立法過程では、欧州委員会の次に重要視されている組織に議会常任委員会の「環境・公衆衛生・食品安全委員会(ENVI)」があります。今週、議会選挙後に新メンバーにてENVIが発足しました。注目された新委員長は社会民主党S&Dグループ所属のイタリア選出欧州議会議員アントニオ・デカロ氏で、同氏は欧州議会議員に初選出された人物です。過去10年間、イタリア南部の都市バーリ市の市長を務めていました。元々環境活動家で、環境政策についてはタカ派として知られ、イタリアではメローニ首相の好対象となる人物です。選挙前のENVIは非常に環境タカ派で、あらゆる立法案は環境タカ派的な修正を容易にしてきた経緯があります。今回、議会全体(右傾化)とは対照的にENVIは環境タカ派の色彩が強い組織を継続しています。グリーンディール関連の立法には引き続き、環境タカ派の影響が残ると思われます。
▶ https://www.europarl.europa.eu/committees/en/envi/home/highlights
欧州委員会はアジア産HRC輸入に対する鉄鋼保護の更なる強化を検討しているようです。今年6月にEUは鉄鋼輸入に対するセーフガード措置を2026年6月末まで2年間延長すると正式に発表しました。7月1日より国別の輸入割当が発効しています。しかし欧州の鉄鋼業界は世界的な過剰生産能力の問題に対して、「長期的な解決策が必要」と訴えてきました。今回の更なる見直しは、主に中国製品が第三国を経由してEUが設定した割当を回避する事で「迂回輸出」している事実に基づいています。欧州委員会の措置はHRCを「その他の国」の輸入割り当ての下でEUに供給している一部の輸出国に対して、反ダンピング調査を開始する事から始まる予定です。欧州の鉄鋼製品は、輸入業者による「安価なスパイラル」に陥っており、根本的な対策が急務となっています。
今までインドネシアのニッケル産業を牽引し多額の投資を行ってきた中国企業は、米国の規制を逃れる為、出資比率を削減する動きを見せ始めています。現在インドネシア政府は米国政府と重要な鉱物に関する協定を交渉しています。インドネシア産のニッケル原料がEVバッテリーに使われていても米国のEV減税の対象になるよう要求しています。中国の青山ホールディンググループ、浙江華友コバルト、ライジェンド・リソーシズ・アンド・テクノロジー等の企業は、インドネシアのニッケル産業の主要プレーヤーです。インドネシア当局者は26日に、これらの企業が地元企業の株式保有率を25%以下に減らす為に投資家と協議していると述べています。米国のインフレ削減法(IRA)は、減税対象となる条件としてEVの材料やバッテリーは「懸念される外国企業」の所有が25%以下の企業から供給される事が必要です。中国企業は、建設中または計画段階にある高圧酸浸出(HPAL)プラントでの低比率な提携を求めて、インドネシアと韓国の企業にアプローチしています。鉄鋼しかり、ですが、イタチごっこの様相です。
▶ https://uk.finance.yahoo.com/news/chinese-firms-seek-cut-stakes-055032917.html
マレーシアがBRICSに加盟申請をした事で、BRICSの拡大と一帯一路構想との協力が強化され、勢いを取り戻しつつあります。今年、既にイラン、エジプト、エチオピア、UAEがBRICSに加盟し、インドネシアも検討中、タイも興味を示しています。先週、BRICSは西側諸国の SWIFT システムに類似した新しい金融メッセージングシステムを構築するという意向を示しました。それにより世界貿易の状況を変えるという野心も表しています。これらの動きに対して米ドル(米国とドル保有者)も黙っておらず、米ドルは外国為替市場で BRICS 諸国の通貨を圧迫し続けています。先週末にインドのルピーは米ドルに対して史上最安値を更新しています。BRICSの問題は、このグループが一貫した政治、安全保障、経済のビジョンを共有しておらず、地政学的な同盟でも無い事です。しかし中国とインドは、先進国に「数兆ドル」の気候変動対策資金を要請する等、気候変動においてはグローバルサウスの動きが対立軸となりつつある事は確かです。
▶ https://www.scmp.com/opinion/world-opinion/article/3271841/how-emerging-nations-are-already-dethroning-west
最近の銅の価格下落について3つの要素が挙げられています。
1つ目は、中国での投資支出の減少です。中国では大規模な再生可能エネルギー発電所の建設に大量の銅を使用していますが、今年中盤にかけ、その支出が大幅に減速しました。
2つ目はEVの成長鈍化です。最大のEV大国中国でも現在はEV が過剰に供給され値崩れを起こして久しい状況です。自動車セクターからの銅需要が期待値を下回っています。
3つ目は、予想外の銅の供給過剰です。中国経済の減速、投機マネーが銅から引き上げています。
銅備蓄(在庫)は増加し、中国政府の景気刺激策への期待が膨らみましたが、当局からは具体的な施策の発表が無い為、備蓄は西側諸国に輸出され、世界的な供給の急増により銅価格は下落しました。投機マネーと中国経済の2つは、今後も銅価格に大きな影響を与え続けそうです。
▶ https://finimize.com/content/copper-was-all-the-rage-two-months-ago-then-this-happened
恒大集団のEV子会社2社は、債権者による破産手続きの申請が行われた為、倒産の危機に立たされています。同社の財務報告によると、EV事業は昨年末時点で総額1100億元の損失を計上しており、銀行口座には1億2900万元しか残っていません。中国恒大新能源汽車集団の株価は、月曜正午迄に7.46%下落し、0.31香港ドル(0.04米ドル)まで下落しました。一部では既に倒産するという情報も流れ始めています。
▶ https://www.globaltimes.cn/page/202407/1316933.shtml
北欧で廃棄物管理企業の統廃合が進んでいます。フィンランドのエネルギー半国営企業Fortum社は、自社が持つ廃棄物・リサイクル事業の売却を発表しました。売却先は、北欧の廃棄物管理NGグループで、売却対象事業には一般/産業廃棄物管理、プラスチック、金属、灰、スラグ、有害廃棄物の処理とリサイクルが含まれます。これらの事業はフィンランド、スウェーデン、デンマーク、ノルウェーに所在しています。NGグループの親会社はSumma Equityという資産管理会社となり、NGグループも数年前にSummaの傘下となっています。Fortumは欧州で本格的なLIBの湿式製錬リサイクル工場を最初に立ち上げたばかりで、この事業は将来性がある事から保有を続ける予定です。資産管理会社による廃棄物管理企業の買収は珍しく無くなりました。
▶ https://www.fortum.com/
中国はアフガニスタンの膨大な地下資源の開発に本格的に乗り出しました。アフガニスタンのメス・アイナック鉱床には推定約1150万トンの銅鉱石があります。先週、中国は鉱山施設建設に向けた土木工事を開始しました。その他にもアフガニスタンには約23億トンの鉄鉱石と140万トンの希土類鉱物が埋蔵されており、鉄、金、リチウム等を合わせると約1兆ドル相当の未開発鉱床が存在します。世界でも手付かずの巨大鉱脈であり、中国がその権益確保に向け動き出した事は経済安全保障上も大きな出来事です。特に今回のメス・アイナック鉱床の銅開発は世界2位の埋蔵量と推定される最大のプロジェクトの1つと考えられています。先週末にタリバンの当局者と中国の企業関係や外交官が鉱山現場への道路建設工事の開始を記念するテープカット式典を実施しています。
▶ https://www.rferl.org/a/china-afghanistan-mes-aynak-copper-mining/33050447.html
欧州で相次ぐEV用電池工場プロジェクトの遅延と縮小を受けて、化学大手のドイツBASFはスペインで計画していた大規模なEVバッテリーサイクル工場の建設を一時停止しました。BASFは電池材料の供給メーカーでもあり、欧州でのバッテリープロジェクトの遅延や計画の縮小については最も詳細を知る存在です。リサイクル工場建設は中止したのではなく、あくまで延期と発表されています。同社は今後も時間をかけEVトレンドは続くと確信しており、この分野を引続き成長分野と考えています。しかし直近の動向は急激に変化しており、中国以外、特に欧米でのEVの浸透は大幅に鈍化しています。
▶ https://www.electrive.com/2024/07/29/basf-pauses-construction-of-battery-recycling-plant-in-spain/
インドでは選挙後の連立新政府となり、商工大臣が中国からの外国直接投資(FDI)に慎重な姿勢を示しています。インドの前年度の対中貿易赤字は850億ドルに拡大しています。インドの置かれている立場は現在2択となっています。欧米がチャイナ・プラス・ワンを進め、中国からの直接調達を減らす中、中国のサプライチェーンにインド企業を含め、中国からの輸入を受入れインド企業が部品を加工/組立して製品を輸出するか、中国からの外国直接投資(FDI)を受入れ、インドで中国企業が製造を行い輸出するか、というものです。今回の商工大臣の発言から、インドでは前者を受けいれる可能性が高い事が示されています。
▶ https://www.business-standard.com/economy/news/no-rethinking-to-support-chinese-investments-in-india-says-piyush-goyal-124073000600_1.html
欧州の規制頼みの水素事業の将来に更なる懸念が生じています。グリーン水素製造装置大手の1つであるドイツのティッセンクルップ・ヌセラは、今後、顧客が投資を加速させるだけの「当局のグリーン規制」が不確実で、業績が落ち込む可能性があると発表しました。同社はサウジアラビア、スウェーデン(H2スチール)、オランダ等、多数の大型プロジェクトを受注しています。しかし、これら多くのプロジェクトは実際には欧州が定める「グリーン水素」がどこまで「グリーン」と定義可能なのか未だに曖昧で、更に補助金の決定が遅れており、計画そのものが遅延し続けています。グリーン水素はプロジェクトが決定してから実際に水素製造装置の製造が開始するまでに長い時間が掛かっており、多くの科学者が予想したように、政治主導の水素の宣伝は岐路に立たされ始めています。
▶ https://www.hydrogeninsight.com/electrolysers/we-continue-to-see-strong-sales-in-electrolysers-but-problems-persist-with-the-green-hydrogen-market-thyssenkrupp-nucera/2-1-1684028
自動車部品及びタイヤ大手の独コンチネンタルAGは同社のタイヤに使用するリサイクル材を増やすと発表しています。コンチネンタルは既に自社製タイヤに使用済みタイヤからのゴム、リサイクル鋼、廃PETボトルからのリサイクルポリエステルを利用しています。今回、利用するリサイクル材はカーボンブラック(RCB)です。RCBを調達する為に大手プラスチック及びタイヤの熱分解リサイクラーである独Pyrum Innovations AGと長期購入契約を締結しました。コンチネンタルは乗用車用タイヤの生産にRCBを使用する計画です。コンチネンタルは持続可能性戦略の一環として2050年迄にタイヤに使用する持続可能な素材を100%にまで増やすことを目標にしています。
▶ https://www.continental.com/en/press/press-releases/20240730-pyrum-10-years/
中国では太陽光発電パネルの過剰生産能力により、上半期に太陽光発電パネルの材料や部品を製造する新規プロジェクトが急減し、関連企業の倒産が発生しています。中国太陽光発電産業協会(CPIA)は新規プロジェクトが上半期に前年比で75%以上減少したと発表しています。計画中、又は建設段階にある20件以上のパネル生産プロジェクトが中止または中断され、少なくとも6社が国内工場の一部操業を停止し、2社も海外施設での生産を停止したと報告しています。既に中国製の太陽光発電パネルは価格が下落し、業界の過剰供給は深刻な問題となっています。これらの過剰供給は輸出に向けられ、欧米で地元メーカーに深刻な打撃を与えています。中国の太陽光パネルメーカーは中央政府に対して業界の「過剰投資」を止めるよう、政策導入を求めています。
▶ https://www.intellinews.com/global-solar-panels-global-glut-caused-by-chinese-overproduction-335472/?source=peru
5月の銅価格のピークから既にファンドは200億ドル以上を引き上げています。5月の超強気相場は上昇基調をベースとしたAIデリバティブ取引がその一因だったと見られています。一部の投資家は、この安値を逆に「買い」と見ているようですが、5月のような膨大な投機マネーが戻る事は暫く無いと見られています。
▶ https://www.mining.com/web/funds-pull-20-billion-from-copper-as-mega-bull-trade-unravels/
既に不安定な中東情勢は一層混迷を増しています。トルコのエルドアン大統領はイスラエルがレバノンに侵攻すれば、トルコ軍を派遣すると発信しました。これを受けて、イスラエルの外相は、そのような事があれば「エルドアンはサダムフセインと同じ道を辿る」という旨の発信をして事態は益々エスカレートしています。イスラエルの野党もトルコを非難しており、イスラエルはトルコをNATOから追放するよう欧州に要請しました。既にトルコは5月にイスラエルとの全ての貿易を停止しています。前日にはイスラエル国防軍がレバノンのベイルートを空爆し、ヒズボラの上級司令官を殺害しています。イスラエルはこれ以上の軍事拡大をしないと発信していますが、報復攻撃への対応は示唆し続けています。更にハマスの政治指導者ハニヤ氏が殺害された事でイランが「厳重な処罰」を誓う等、緊張状態がピークに達しています。中東各国は反応を示しており、過去数十年で、情勢は最も危機的なものと言えます。これにより原油価格も高騰しています。中東からの移民の多い欧州では(域内でのテロや反シオニズム運動を恐れてか)EU政府がパレスチナ自治政府に4億ユーロの緊急援助を開始したと発表しています。今後も紅海の海運業への影響のみならず、コスト増がもたらす世界貿易にも影響が出そうです。
▶ https://timesofindia.indiatimes.com/world/middle-east/turkish-president-erdogan-could-end-up-like-saddam-hussein-israel/articleshow/112145320.cms
欧州鉄鋼生産者協会(Eurofer)は最新の欧州メーカーの鉄鋼生産見通しを発表しました。欧州の欧州鉄鋼市場の主要指標は予想以上に急激なマイナスを示し、今年と来年の見通しは悪化しています。エネルギー価格の高騰、インフレの継続、経済の不確実性、地政学的な緊張などの要因によって需要が悪化、建設や自動車セクターからの需要が減ると見ています。鉄鋼の主要な需要部門である建設と自動車の落ち込みは鉄鋼業界の更なる保護貿易への要請と繋がる見込みです。
▶ https://www.eurofer.eu/press-releases/negative-trends-in-steel-market-continue-to-deepen-weakening-recovery-in-2024-and-2025
ライスタッド・エナジーの調査によると、世界のEV用バッテリーへの投資は2020年以降で初めて大幅に減る見込みです。過去4年連続で大幅な成長を遂げてきましたが、欧米でのEV需要の落ち込みが顕著となり、投資に影響が出ています。中国はEVへの補助政策と輸出の拡大によって対応を試みていますが、今年のバッテリーインフラへの投資は大幅に低迷すると見られています。中国のLIB関連企業の株価は2022年初頭にピークを迎え、その後徐々に下落しています。今年、中国のLIB関連上場企業32社は2024年の利益見込みを下は8,000万ドルの純損失~上は3億9,700万ドルの利益と予測しており、前年から大幅な減少となっています。バッテリーもLIBからLFPへの切替が急速に進んでおり、欧州や韓国企業はLIBの計画を見直し、LFPの生産能力を増強する見通しとなっています。
▶ https://www.rystadenergy.com/news/global-battery-investments
米国は8月1日から実施予定であった中国からのハイテク、及び医療品に対する関税引き上げを2週間以上延期すると発表しました。米通商代表部(USTR)が大幅関税の引き上げを延長した背景には高関税が既存の国内サプライチェーンに与える影響が大きい為です。その為、1,100の物品に対しては関係者からの意見を検討中で今月下旬に最終決定を出す予定です。現実的には中国をサプライチェーンから切り離す事は相当難しいようです。
▶ https://www.asiafinancial.com/us-forced-to-delay-tariff-hikes-on-chinese-evs-batteries-tech
インドの鉄鋼生産への大型投資が続いています。インド鉄鋼省は、2029年までに3兆ルピー近い投資を行い、インドの鉄鋼生産能力を2,500万トン増強する計画です。つい最近、インド第3位の鉄鋼メーカーであるJSPLは7年以内に生産能力を年間5,000万トンにまで拡大するという計画を発表したばかりです。インド政府は2017年に国家鉄鋼政策を制定し、2030年迄に鉄鋼生産能力を3億トンにすることを目標としています。また2047年迄にインドを先進国とする「先進インド」のビジョンを掲げ、今後10年以内に国内の経済規模を10兆ドルにまで引き上げる事を目標としています。鉄鋼業は、その目標を達成する為に主要な中心産業の1つであるとインド政府は考えています。
▶ https://www.manufacturingtodayindia.com/indias-steel-industry-set-for-rs-30000-cr-growth-spurt-by-2029-reveals-secretary/
インドのアルミ/銅製造企業であるヒンダルコ・インダストリーズは、米国子会社のノベリス社を含め、今後3~5年間で約70億ドル(約1兆円)という膨大な額の設備投資を計画していると発表しています。今後3~5年でノベリスには49億ドル、ヒンダルコ・インディアに20億ドルの戦略的設備投資を実行する予定です。北米では缶用シートの需要が供給を常に上回っており、アジアから輸入に依存しています。その為、41億ドルを投資し、米国のベイミネット工場を増強(年60万トン追加)する計画です。ノベリス社は北米に今年稼働する予定の自動車リサイクルセンターを建設する為に3億6500万ドルを投資し、韓国のリサイクル工場にも6500万ドルを投資予定です。米国/アジアのアルミスクラップの流通にも影響が出そうです。
▶ https://www.msn.com/en-in/money/markets/hindalco-to-spend-nearly-7-billion-on-capex-in-3-5-years/ar-BB1qTGN9
▶ https://commission.europa.eu/document/download/e6cd4328-673c-4e7a-8683-f63ffb2cf648_en
欧州のグリーンディールとサーキュラーエコノミーに関する立法過程では、欧州委員会の次に重要視されている組織に議会常任委員会の「環境・公衆衛生・食品安全委員会(ENVI)」があります。今週、議会選挙後に新メンバーにてENVIが発足しました。注目された新委員長は社会民主党S&Dグループ所属のイタリア選出欧州議会議員アントニオ・デカロ氏で、同氏は欧州議会議員に初選出された人物です。過去10年間、イタリア南部の都市バーリ市の市長を務めていました。元々環境活動家で、環境政策についてはタカ派として知られ、イタリアではメローニ首相の好対象となる人物です。選挙前のENVIは非常に環境タカ派で、あらゆる立法案は環境タカ派的な修正を容易にしてきた経緯があります。今回、議会全体(右傾化)とは対照的にENVIは環境タカ派の色彩が強い組織を継続しています。グリーンディール関連の立法には引き続き、環境タカ派の影響が残ると思われます。
▶ https://www.europarl.europa.eu/committees/en/envi/home/highlights
欧州委員会はアジア産HRC輸入に対する鉄鋼保護の更なる強化を検討しているようです。今年6月にEUは鉄鋼輸入に対するセーフガード措置を2026年6月末まで2年間延長すると正式に発表しました。7月1日より国別の輸入割当が発効しています。しかし欧州の鉄鋼業界は世界的な過剰生産能力の問題に対して、「長期的な解決策が必要」と訴えてきました。今回の更なる見直しは、主に中国製品が第三国を経由してEUが設定した割当を回避する事で「迂回輸出」している事実に基づいています。欧州委員会の措置はHRCを「その他の国」の輸入割り当ての下でEUに供給している一部の輸出国に対して、反ダンピング調査を開始する事から始まる予定です。欧州の鉄鋼製品は、輸入業者による「安価なスパイラル」に陥っており、根本的な対策が急務となっています。
今までインドネシアのニッケル産業を牽引し多額の投資を行ってきた中国企業は、米国の規制を逃れる為、出資比率を削減する動きを見せ始めています。現在インドネシア政府は米国政府と重要な鉱物に関する協定を交渉しています。インドネシア産のニッケル原料がEVバッテリーに使われていても米国のEV減税の対象になるよう要求しています。中国の青山ホールディンググループ、浙江華友コバルト、ライジェンド・リソーシズ・アンド・テクノロジー等の企業は、インドネシアのニッケル産業の主要プレーヤーです。インドネシア当局者は26日に、これらの企業が地元企業の株式保有率を25%以下に減らす為に投資家と協議していると述べています。米国のインフレ削減法(IRA)は、減税対象となる条件としてEVの材料やバッテリーは「懸念される外国企業」の所有が25%以下の企業から供給される事が必要です。中国企業は、建設中または計画段階にある高圧酸浸出(HPAL)プラントでの低比率な提携を求めて、インドネシアと韓国の企業にアプローチしています。鉄鋼しかり、ですが、イタチごっこの様相です。
▶ https://uk.finance.yahoo.com/news/chinese-firms-seek-cut-stakes-055032917.html
マレーシアがBRICSに加盟申請をした事で、BRICSの拡大と一帯一路構想との協力が強化され、勢いを取り戻しつつあります。今年、既にイラン、エジプト、エチオピア、UAEがBRICSに加盟し、インドネシアも検討中、タイも興味を示しています。先週、BRICSは西側諸国の SWIFT システムに類似した新しい金融メッセージングシステムを構築するという意向を示しました。それにより世界貿易の状況を変えるという野心も表しています。これらの動きに対して米ドル(米国とドル保有者)も黙っておらず、米ドルは外国為替市場で BRICS 諸国の通貨を圧迫し続けています。先週末にインドのルピーは米ドルに対して史上最安値を更新しています。BRICSの問題は、このグループが一貫した政治、安全保障、経済のビジョンを共有しておらず、地政学的な同盟でも無い事です。しかし中国とインドは、先進国に「数兆ドル」の気候変動対策資金を要請する等、気候変動においてはグローバルサウスの動きが対立軸となりつつある事は確かです。
▶ https://www.scmp.com/opinion/world-opinion/article/3271841/how-emerging-nations-are-already-dethroning-west
最近の銅の価格下落について3つの要素が挙げられています。
1つ目は、中国での投資支出の減少です。中国では大規模な再生可能エネルギー発電所の建設に大量の銅を使用していますが、今年中盤にかけ、その支出が大幅に減速しました。
2つ目はEVの成長鈍化です。最大のEV大国中国でも現在はEV が過剰に供給され値崩れを起こして久しい状況です。自動車セクターからの銅需要が期待値を下回っています。
3つ目は、予想外の銅の供給過剰です。中国経済の減速、投機マネーが銅から引き上げています。
銅備蓄(在庫)は増加し、中国政府の景気刺激策への期待が膨らみましたが、当局からは具体的な施策の発表が無い為、備蓄は西側諸国に輸出され、世界的な供給の急増により銅価格は下落しました。投機マネーと中国経済の2つは、今後も銅価格に大きな影響を与え続けそうです。
▶ https://finimize.com/content/copper-was-all-the-rage-two-months-ago-then-this-happened
恒大集団のEV子会社2社は、債権者による破産手続きの申請が行われた為、倒産の危機に立たされています。同社の財務報告によると、EV事業は昨年末時点で総額1100億元の損失を計上しており、銀行口座には1億2900万元しか残っていません。中国恒大新能源汽車集団の株価は、月曜正午迄に7.46%下落し、0.31香港ドル(0.04米ドル)まで下落しました。一部では既に倒産するという情報も流れ始めています。
▶ https://www.globaltimes.cn/page/202407/1316933.shtml
北欧で廃棄物管理企業の統廃合が進んでいます。フィンランドのエネルギー半国営企業Fortum社は、自社が持つ廃棄物・リサイクル事業の売却を発表しました。売却先は、北欧の廃棄物管理NGグループで、売却対象事業には一般/産業廃棄物管理、プラスチック、金属、灰、スラグ、有害廃棄物の処理とリサイクルが含まれます。これらの事業はフィンランド、スウェーデン、デンマーク、ノルウェーに所在しています。NGグループの親会社はSumma Equityという資産管理会社となり、NGグループも数年前にSummaの傘下となっています。Fortumは欧州で本格的なLIBの湿式製錬リサイクル工場を最初に立ち上げたばかりで、この事業は将来性がある事から保有を続ける予定です。資産管理会社による廃棄物管理企業の買収は珍しく無くなりました。
▶ https://www.fortum.com/
中国はアフガニスタンの膨大な地下資源の開発に本格的に乗り出しました。アフガニスタンのメス・アイナック鉱床には推定約1150万トンの銅鉱石があります。先週、中国は鉱山施設建設に向けた土木工事を開始しました。その他にもアフガニスタンには約23億トンの鉄鉱石と140万トンの希土類鉱物が埋蔵されており、鉄、金、リチウム等を合わせると約1兆ドル相当の未開発鉱床が存在します。世界でも手付かずの巨大鉱脈であり、中国がその権益確保に向け動き出した事は経済安全保障上も大きな出来事です。特に今回のメス・アイナック鉱床の銅開発は世界2位の埋蔵量と推定される最大のプロジェクトの1つと考えられています。先週末にタリバンの当局者と中国の企業関係や外交官が鉱山現場への道路建設工事の開始を記念するテープカット式典を実施しています。
▶ https://www.rferl.org/a/china-afghanistan-mes-aynak-copper-mining/33050447.html
欧州で相次ぐEV用電池工場プロジェクトの遅延と縮小を受けて、化学大手のドイツBASFはスペインで計画していた大規模なEVバッテリーサイクル工場の建設を一時停止しました。BASFは電池材料の供給メーカーでもあり、欧州でのバッテリープロジェクトの遅延や計画の縮小については最も詳細を知る存在です。リサイクル工場建設は中止したのではなく、あくまで延期と発表されています。同社は今後も時間をかけEVトレンドは続くと確信しており、この分野を引続き成長分野と考えています。しかし直近の動向は急激に変化しており、中国以外、特に欧米でのEVの浸透は大幅に鈍化しています。
▶ https://www.electrive.com/2024/07/29/basf-pauses-construction-of-battery-recycling-plant-in-spain/
インドでは選挙後の連立新政府となり、商工大臣が中国からの外国直接投資(FDI)に慎重な姿勢を示しています。インドの前年度の対中貿易赤字は850億ドルに拡大しています。インドの置かれている立場は現在2択となっています。欧米がチャイナ・プラス・ワンを進め、中国からの直接調達を減らす中、中国のサプライチェーンにインド企業を含め、中国からの輸入を受入れインド企業が部品を加工/組立して製品を輸出するか、中国からの外国直接投資(FDI)を受入れ、インドで中国企業が製造を行い輸出するか、というものです。今回の商工大臣の発言から、インドでは前者を受けいれる可能性が高い事が示されています。
▶ https://www.business-standard.com/economy/news/no-rethinking-to-support-chinese-investments-in-india-says-piyush-goyal-124073000600_1.html
欧州の規制頼みの水素事業の将来に更なる懸念が生じています。グリーン水素製造装置大手の1つであるドイツのティッセンクルップ・ヌセラは、今後、顧客が投資を加速させるだけの「当局のグリーン規制」が不確実で、業績が落ち込む可能性があると発表しました。同社はサウジアラビア、スウェーデン(H2スチール)、オランダ等、多数の大型プロジェクトを受注しています。しかし、これら多くのプロジェクトは実際には欧州が定める「グリーン水素」がどこまで「グリーン」と定義可能なのか未だに曖昧で、更に補助金の決定が遅れており、計画そのものが遅延し続けています。グリーン水素はプロジェクトが決定してから実際に水素製造装置の製造が開始するまでに長い時間が掛かっており、多くの科学者が予想したように、政治主導の水素の宣伝は岐路に立たされ始めています。
▶ https://www.hydrogeninsight.com/electrolysers/we-continue-to-see-strong-sales-in-electrolysers-but-problems-persist-with-the-green-hydrogen-market-thyssenkrupp-nucera/2-1-1684028
自動車部品及びタイヤ大手の独コンチネンタルAGは同社のタイヤに使用するリサイクル材を増やすと発表しています。コンチネンタルは既に自社製タイヤに使用済みタイヤからのゴム、リサイクル鋼、廃PETボトルからのリサイクルポリエステルを利用しています。今回、利用するリサイクル材はカーボンブラック(RCB)です。RCBを調達する為に大手プラスチック及びタイヤの熱分解リサイクラーである独Pyrum Innovations AGと長期購入契約を締結しました。コンチネンタルは乗用車用タイヤの生産にRCBを使用する計画です。コンチネンタルは持続可能性戦略の一環として2050年迄にタイヤに使用する持続可能な素材を100%にまで増やすことを目標にしています。
▶ https://www.continental.com/en/press/press-releases/20240730-pyrum-10-years/
中国では太陽光発電パネルの過剰生産能力により、上半期に太陽光発電パネルの材料や部品を製造する新規プロジェクトが急減し、関連企業の倒産が発生しています。中国太陽光発電産業協会(CPIA)は新規プロジェクトが上半期に前年比で75%以上減少したと発表しています。計画中、又は建設段階にある20件以上のパネル生産プロジェクトが中止または中断され、少なくとも6社が国内工場の一部操業を停止し、2社も海外施設での生産を停止したと報告しています。既に中国製の太陽光発電パネルは価格が下落し、業界の過剰供給は深刻な問題となっています。これらの過剰供給は輸出に向けられ、欧米で地元メーカーに深刻な打撃を与えています。中国の太陽光パネルメーカーは中央政府に対して業界の「過剰投資」を止めるよう、政策導入を求めています。
▶ https://www.intellinews.com/global-solar-panels-global-glut-caused-by-chinese-overproduction-335472/?source=peru
5月の銅価格のピークから既にファンドは200億ドル以上を引き上げています。5月の超強気相場は上昇基調をベースとしたAIデリバティブ取引がその一因だったと見られています。一部の投資家は、この安値を逆に「買い」と見ているようですが、5月のような膨大な投機マネーが戻る事は暫く無いと見られています。
▶ https://www.mining.com/web/funds-pull-20-billion-from-copper-as-mega-bull-trade-unravels/
既に不安定な中東情勢は一層混迷を増しています。トルコのエルドアン大統領はイスラエルがレバノンに侵攻すれば、トルコ軍を派遣すると発信しました。これを受けて、イスラエルの外相は、そのような事があれば「エルドアンはサダムフセインと同じ道を辿る」という旨の発信をして事態は益々エスカレートしています。イスラエルの野党もトルコを非難しており、イスラエルはトルコをNATOから追放するよう欧州に要請しました。既にトルコは5月にイスラエルとの全ての貿易を停止しています。前日にはイスラエル国防軍がレバノンのベイルートを空爆し、ヒズボラの上級司令官を殺害しています。イスラエルはこれ以上の軍事拡大をしないと発信していますが、報復攻撃への対応は示唆し続けています。更にハマスの政治指導者ハニヤ氏が殺害された事でイランが「厳重な処罰」を誓う等、緊張状態がピークに達しています。中東各国は反応を示しており、過去数十年で、情勢は最も危機的なものと言えます。これにより原油価格も高騰しています。中東からの移民の多い欧州では(域内でのテロや反シオニズム運動を恐れてか)EU政府がパレスチナ自治政府に4億ユーロの緊急援助を開始したと発表しています。今後も紅海の海運業への影響のみならず、コスト増がもたらす世界貿易にも影響が出そうです。
▶ https://timesofindia.indiatimes.com/world/middle-east/turkish-president-erdogan-could-end-up-like-saddam-hussein-israel/articleshow/112145320.cms
欧州鉄鋼生産者協会(Eurofer)は最新の欧州メーカーの鉄鋼生産見通しを発表しました。欧州の欧州鉄鋼市場の主要指標は予想以上に急激なマイナスを示し、今年と来年の見通しは悪化しています。エネルギー価格の高騰、インフレの継続、経済の不確実性、地政学的な緊張などの要因によって需要が悪化、建設や自動車セクターからの需要が減ると見ています。鉄鋼の主要な需要部門である建設と自動車の落ち込みは鉄鋼業界の更なる保護貿易への要請と繋がる見込みです。
▶ https://www.eurofer.eu/press-releases/negative-trends-in-steel-market-continue-to-deepen-weakening-recovery-in-2024-and-2025
ライスタッド・エナジーの調査によると、世界のEV用バッテリーへの投資は2020年以降で初めて大幅に減る見込みです。過去4年連続で大幅な成長を遂げてきましたが、欧米でのEV需要の落ち込みが顕著となり、投資に影響が出ています。中国はEVへの補助政策と輸出の拡大によって対応を試みていますが、今年のバッテリーインフラへの投資は大幅に低迷すると見られています。中国のLIB関連企業の株価は2022年初頭にピークを迎え、その後徐々に下落しています。今年、中国のLIB関連上場企業32社は2024年の利益見込みを下は8,000万ドルの純損失~上は3億9,700万ドルの利益と予測しており、前年から大幅な減少となっています。バッテリーもLIBからLFPへの切替が急速に進んでおり、欧州や韓国企業はLIBの計画を見直し、LFPの生産能力を増強する見通しとなっています。
▶ https://www.rystadenergy.com/news/global-battery-investments
米国は8月1日から実施予定であった中国からのハイテク、及び医療品に対する関税引き上げを2週間以上延期すると発表しました。米通商代表部(USTR)が大幅関税の引き上げを延長した背景には高関税が既存の国内サプライチェーンに与える影響が大きい為です。その為、1,100の物品に対しては関係者からの意見を検討中で今月下旬に最終決定を出す予定です。現実的には中国をサプライチェーンから切り離す事は相当難しいようです。
▶ https://www.asiafinancial.com/us-forced-to-delay-tariff-hikes-on-chinese-evs-batteries-tech
インドの鉄鋼生産への大型投資が続いています。インド鉄鋼省は、2029年までに3兆ルピー近い投資を行い、インドの鉄鋼生産能力を2,500万トン増強する計画です。つい最近、インド第3位の鉄鋼メーカーであるJSPLは7年以内に生産能力を年間5,000万トンにまで拡大するという計画を発表したばかりです。インド政府は2017年に国家鉄鋼政策を制定し、2030年迄に鉄鋼生産能力を3億トンにすることを目標としています。また2047年迄にインドを先進国とする「先進インド」のビジョンを掲げ、今後10年以内に国内の経済規模を10兆ドルにまで引き上げる事を目標としています。鉄鋼業は、その目標を達成する為に主要な中心産業の1つであるとインド政府は考えています。
▶ https://www.manufacturingtodayindia.com/indias-steel-industry-set-for-rs-30000-cr-growth-spurt-by-2029-reveals-secretary/
インドのアルミ/銅製造企業であるヒンダルコ・インダストリーズは、米国子会社のノベリス社を含め、今後3~5年間で約70億ドル(約1兆円)という膨大な額の設備投資を計画していると発表しています。今後3~5年でノベリスには49億ドル、ヒンダルコ・インディアに20億ドルの戦略的設備投資を実行する予定です。北米では缶用シートの需要が供給を常に上回っており、アジアから輸入に依存しています。その為、41億ドルを投資し、米国のベイミネット工場を増強(年60万トン追加)する計画です。ノベリス社は北米に今年稼働する予定の自動車リサイクルセンターを建設する為に3億6500万ドルを投資し、韓国のリサイクル工場にも6500万ドルを投資予定です。米国/アジアのアルミスクラップの流通にも影響が出そうです。
▶ https://www.msn.com/en-in/money/markets/hindalco-to-spend-nearly-7-billion-on-capex-in-3-5-years/ar-BB1qTGN9