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NEWSCONの気になるNEWS(2024年7月第3週)

中国の鉄鋼製品の洪水のような輸出量は、データで明らかになりました。中国鉄鋼協会は2024年1~6月の鉄鋼輸出量を発表し、前年同期比24%増となる5,340万トンに達した事を報告しています。輸入量は3.3%減少し362万トンでした。鉄鉱石の輸入量も6.2%増加し6億1,118万トンに達しています。6月の平均輸出価格は、国内価格の下落もあり1トン当り772.6ドル(前月比-1.6%)と低価格が継続しています。間接的(自動車や船舶に使われる鉄鋼)な鉄鋼輸出も9%増加し、2024年末には1億2,700万トンに達すると予想されています。
http://english.chinaisa.org.cn/do/index.jsp

米政府は、米国の自動車メーカービッグ3と米国に生産拠点を持つ欧州自動車メーカーの一部に対し、工場のEV化の為に17億㌦を援助する事を決めました。対象となるのは米国の8州にある11工場で、内燃機関車の生産ラインをEVの組み立てと部品製造に転換するために支援します。この資金の別の目的は15,000人の既存雇用を維持し、3,000人の新規雇用を創出する事です。米国でのEV需要が鈍化している中で自動車メーカーは補助金を求めていました。一方欧州では、ドイツのフォルカー・ヴィッシング運輸相が、2035年までに内燃機関自動車の禁止を「撤回」しなければ、今回のEU選挙の公約違反であるとの投稿をXにする等、2035年のEV義務化撤回へ動き始めています。
https://www.energy.gov/articles/biden-harris-administration-announces-nearly-2-billion-support-american-auto-workers

今月に入り、ノースボルトのバッテリーリサイクル合弁会社ハイドロボルトがフランスにリサイクル施設を開設し、更にルノーのバッテリー子会社Ampere(アンペア)がコスト20%を掲げLFPの導入を決める等、欧州でも徐々にですが、LFP化とリサイクルの動きが表れ出しています。しかし6月のEUのEV販売は約7%減となっています。EVとPHEVの世界販売は中国が牽引し、13%増となりました。調査会社は今年の世界のEV販売台数の予想を5%引き下げて1660万台としました。中国国内では競争激化からEVとバッテリーの低価格化が進んでいますが、採算性には懐疑的な見方も出ています。
https://www.reuters.com/business/autos-transportation/global-ev-sales-up-13-june-down-7-europe-rho-motion-says-2024-07-11/

世界最大の食品メーカーの1つであるネスレは2020年に設定した野心的なプラスチック戦略をやや後退させています。この後退はユニリーバに続くものです。過去、両社とも野心的な目標を設定し注目を集め、世界の企業に無言の圧力を与える存在でした。ネスレは元々2025年迄に「リサイクル可能又はリユース可能なプラスチックパッケージのみを使う」としていたものを「プラスチックパッケージの95%以上をリサイクル用に設計することを目指す」と後退させています。更に技術的、及び供給上の課題により2025 年までにリサイクル可能なパッケージを 100%にすることは困難であると公に認めました。この問題は、欧州では食品包装におけるプラスチックリサイクルの難しさを示す例と認識されています。
https://www.nestle.com/ask-nestle/environment/answers/tackling-packaging-waste-plastic-bottles

脱炭素化、循環経済、エネルギー効率の面でEUをリードではイタリアの鉄鋼業界は代替燃料として「バイオメタン」に注目しています。イタリア鉄鋼生産者協会の会長が言及したもので、これはイタリアの上院が審議中の農業法令第5条の修正案を承認した事を受けてのものです。この法令により、鉄鋼等の排出量削減が難しい分野の生産者と企業の間で「バイオメタン売買契約」を締結する事が可能となります。バイオメタンは農業残渣、食品加工工程や残渣から得られるもので、新たな脱炭素のエネルギーとして業界は注目し始めています。イタリアのエネルギー価格は他の欧州地域と差があり、競争力に大きく影響しています。脱炭素化と同時にエネルギー価格の低減が大きなテーマとなっています。
https://gmk.center/en/news/biomethane-will-help-in-the-decarbonization-of-the-italian-steel-industry-federacci/

バーゼル条約のオープンエンド作業部会(OEWG)の第14回会合後に、来年のバーゼル締約国会議(COP17)の議題が取り上げられています。今後、バーゼル条約の戦略枠組みを2030年迄の国連SDGs目標に整合させる方向性が示されました。具体的には廃電気電子機器 (e-waste)、廃電池、廃タイヤの技術ガイドラインの変更や、「廃棄物」の定義の見直し、更にプラスチックのケミカルリサイクルに関する技術ガイドラインの作業を開始するかどうか、という内容です。これらが動き出すとリサイクル業界/スクラップ貿易にもかなり影響がありそうです。
https://sdg.iisd.org/news/basel-convention-oewg-moves-to-align-strategic-framework-with-2030-agenda/

世界的な供給過剰による価格の低迷を受けて、BHPは西オーストラリア州のニッケル・ウェスト事業とウェスト・マスグレイブ・プロジェクトを一時中止すると発表しました。世界のニッケル業界はインドネシアに起因する多くの構造的変化が起きており、価格は周期的に低迷しています。ニッケル・ウェストはこうした市場状況から操業の一時停止に至っています。この一次停止は業界にとって大きなニュースとなっています。
https://www.bhp.com/news/media-centre/releases/2024/07/western-australia-nickel-to-temporarily-suspend-operations

タイ経済は、今、工場閉鎖と安価な中国からの輸入品によりかなりの困難に直面し始めています。タイでは昨年、約2,000カ所の工場が閉鎖され、GDPの約4分の1を占める製造業が大きな打撃を受けました。日本のスズキは2025年末迄にタイの工場を閉鎖する計画を6月7日に発表しています。タイ国家経済社会開発評議会のサイチュア議長は「タイの何十年にもわたる製造業主導の経済モデルは崩壊している。中国は現在あらゆる手段を使って製品を輸出しようとしている。こうした安価な輸入品は本当に問題を引き起こしている」と述べています。タイはこの状況に対応するのか、保護政策を取るのかの選択に迫られています。
https://www.reuters.com/markets/asia/thai-economy-faces-upheaval-due-factory-closures-cheap-chinese-imports-2024-07-14/

トランプ前大統領の暗殺未遂により、彼がホワイトハウスに返り咲く確立が過去最高に高まった事で「トランプ」をテーマにしたトークンや仮想通貨が全般的に上昇しました。こうした流れが加速しはじめており、エネルギートランジッションや電化の流れが弱まる可能性が指摘され始めています。特にEV義務化は廃止し、消費者の自由な選択に委ねると公約しており、何か事件があれば今後も市場が反応しそうです。
https://finance.yahoo.com/news/global-markets-ramp-trump-trade-200000254.html

6月11日に世界材料フォーラムが開催され、カーボンニュートラルに関する政策的遅延の懸念から、主要鉱物への投資を遅らせる動きが出ている事が明らかになっています。鉱山関係者はエネルギー転換の「期限設定」に対する多くの反対があり、それらがリチウム、コバルト、銅の鉱山プロジェクトに暗い影を落としている実態を述べています。電池材料を供給する欧州の大手化学グループは、多くの企業が欧州でのエネルギー転換は約2年遅れると想定しており、2030年の予測が現在2032年になると考えています。また高金利や資材インフレにより資金調達が困難になっている事もプロジェクト遅延発生の大きな要因としています。
https://worldmaterialsforum.com/home.html

様々な要因から自動車メーカーがEVへの投資を抑制する動きが続いています。マイクロチップの世界的な不足、更にチップ製造に不可欠なガリウムとゲルマニウムに対する中国の制限、EV販売の鈍化とそれに伴う生産抑制、中国による更なる希土類の規制計画等が重なり、メーカーは計画を修正しています。EV化を最も推進してきたメーカーであるボルボは、ポールスターの所有権を含む電気自動車プログラムへの資金を削減しました。自動車メーカーはEVの生産コスト上昇と納車の遅延から、何れもEV部門に問題を抱えており、2024年の下期は回復の見込みが無いと考えています。
https://agmetalminer.com/2024/07/12/fewer-rare-earths-electric-vehicles/

英国の廃棄物管理サービス企業のReconomy (リコノミー)は、英国の新政権に向けて廃棄物の循環性を高める政策的枠組みを提言しています。これはコンサルタント会社Sancroftと共同で作成したもので、内容はEUの政策と非常に似ています。今後、全ての廃棄物処理業者が義務として行う持続可能性の「国家最低基準」を制定する事が含まれています。本提言にはEUと類似した、廃棄物管理に対する拡大生産者責任の導入、エコデザイン基準の導入、情報の透明性とデジタル化、が含まれています。EUと貿易関係の強い国々は今後、廃棄物に関してもEUの規制に何らかのかたちで合わせた対応が必要になります。英国の廃棄物管理産業もEUと同じ動きをすると思われます。
https://www.reconomy.com/article/reconomy-launches-10-point-regulatory-framework-to-help-new-government-reform-waste-sector-to-unlock-growth-and-meet-net-zero-targets/

世界中でLIBの火災数が増加しています。英国では最近LIBによる大火災が2件発生し、地元の消防が本格的な対策に乗り出しています。西オーストラリアでは、廃棄物管理におけるLIBの火災が1年で43%増加しました。また電子タバコ内のバッテリーが一般のゴミとして埋め立てられた後に火災を起こすケースも増えています。欧米の各自治体は、特定のアプリケーションの禁止や収集を含む対策を本格的に行うようになっています。
https://www.themandarin.com.au/250767-tenfold-increase-in-lithium-battery-fires-in-sydneys-west-ignites-urgent-policy-response/

米政府は来月、中国製自動車(主にEV)に搭載されるソフトウェアに制限を課す規則を発表する予定です。この規則は「敵国」とみなされる他の国々にも適用され、一部の部品は米国の「同盟国」とみなされる国々で製造することが義務付けられます。コネクテッドカーにはインターネットへのアクセスを可能にする統合ネットワーク ハードウェアが搭載されており、車内外のデバイスとデータを共有できます。米国の商務次官(産業・安全保障担当)は「EVソフトウェアに関する脅威は深刻だ」と述べています。アナリストは、この規則が実施された場合、米国向けのEVは米国の安全保障上のパートナーである日本やタイなどの国での生産が増加する可能性があると指摘しています。
https://www.msn.com/en-gb/news/world/us-to-issue-proposed-rules-limiting-chinese-vehicle-software-in-august/ar-BB1q6MTK

ドイツの CDUとCSU groupの2つの政党は、欧州の鉄鋼業界の空洞化を防ぐ為に政府が対策を急ぐよう要請しました。この要請には欧州鉄鋼生産者協会も支持を表明しています。要請の中には鉄鋼メーカーが鉄スクラップへのアクセスをより強固なものにする事が含まれています。また欧州議会の最大会派であるEPPは鉄鋼や金属産業を主要産業セクターの1つとして強化する為の具体的な措置を講じる予定です。EPPの政策には欧州の原材料産業を強化する「Made in Europe」の材料拡大措置が含まれています。
https://www.cducsu.eu/artikel/radtkeehler-stahlproduktion-ist-unverzichtbar-fuer-europa

2023年のEUの木質ペレット消費量は1.2%減の2,450万トンで、2015年以降初めての減少となりました。理由は電力産業の需要が減少した事です。暖冬も一つの要因でした。電力産業のペレット需要は2024年も低迷すると見込まれていますが、住宅暖房用バイオマスの需要は回復すると見込まれています。世界最大の木質ペレット消費国である英国は2021年に913万㌧、2022年に752万トン、2023年の1月-11月の11ヵ月間は600万トンを割り込む量となり、大きく減少しています。最大の理由は北米のメーカーの生産量の低下と価格の上昇です。最大産地である北米のメーカーは採算に苦しんでおり、業界全体にドミノ現象を起こし続けています。
https://www.bioenergy-news.com/news/eu-wood-pellet-consumption-dropped-by-1-2-last-year/

トランプ氏はブルームバーグ・ビジネスウィーク誌の独占インタビューで、大統領に就任した場合、米国国内の石油生産を拡大する為に幾つかの規制を撤廃すると約束しました。トランプ氏は国内のエネルギー問題についてはあまり語りませんでしたが、米国の石油・ガス生産を引き続き支援する意向を明らかにしています。 メタン規制、新規LNG輸出許可の一時停止、EV義務化、連邦石油・ガスリース、更にはインフレ削減法(IRA)の一部等、エネルギー・気候政策に影響が出ると見られています。ただし IRAに関しては下院と上院の両方で共和党が多数を占める議会が必要であり、共和党の多い州に有利な政策でもある為、IRA自体が覆される事は難しそうです。既に米国では石油の生産量は大幅に増加している為、これらの規制緩和が実際にどの程度の効果が表れるかは未知数です。トランプ氏がホワイトハウスに返り咲いた場合、当面はGHG排出量が少なく需要が高い天然ガスの国際市場価格が下がる可能性があります。
https://www.bloomberg.com/news/videos/2024-07-17/exclusive-trump-talks-tariffs-taiwan-oil-with-bloomberg-video

海運大手のマースクは、紅海経由のコンテナ輸送の混乱が極東と欧州間に留まらず、同社の世界ネットワーク全体に及んでいると発表しました。この厳しい状況は今後数ヵ月間、継続すると警告しています。海運各社は昨年12月以来、紅海を避けアフリカの南部を迂回するルートを利用しています。その影響で航海時間が長くなり、運賃も上昇しています。混乱の連鎖的な影響は極東アジア、西中央アジア、欧州発着便だけでなく、代替ルートや積み替え拠点での渋滞にまで及んでいます。特にシンガポール、オーストラリア、上海を含むアジア各地の港では船舶の航路変更やスケジュールの乱れが発生し、遅延が常態化している実態を説明しています。
https://www.reuters.com/world/middle-east/disruptions-container-shipping-via-red-sea-have-expanded-maersk-says-2024-07-17/

インド材料リサイクル協会(MRAI)はアルミニウムスクラップの輸入関税を撤廃するようインド政府に要請しました。協会はインド政府が次年度の予算を準備している最中であり、政策への反映を求めこの要請を行っています。インドの一人当たりアルミニウム消費量は2.5kgで世界平均の11kgを大きく下回っています。その為、一次地金に比べ低炭素、低エネルギーで製造できる再生アルミニウムの原料となるアルミスクラップが大幅に不足しています。インドの今後数年間のアルミニウムの需要はGDPの高い成長とインフラ開発計画により、大幅に高まると予想されています。
https://www.business-standard.com/budget/news/budget-2024-mrai-urges-govt-to-remove-import-duty-on-aluminium-scrap-124071800228_1.html

フランスの多国籍アルミニウム生産メーカーConstellium(コンステリウム)は、世界初の商業規模でのアルミニウムの水素を利用した鋳造を成功したと発表しています。試作は12トン炉で行われました。同社の溶融アルミニウム中の不純物検出ツールBatscan™での監視の結果、水素燃焼による品質への影響が無かった事を確認しています。アルミ二ウムの鋳造に水素エネルギーを使う取組として注目されていますが、コストや水素の難しい管理に課題があり、今後が注目されています。

https://www.constellium.com/news/worlds-first-industrial-scale-aluminium-slab-using-hydrogen-combustion

タタ・スチールは年次株主総会を行い、2030年までに鉄鋼生産を年間4,000万トンにまで拡大する為に、毎年大型投資を継続すると発表しました。投資には生産能力の増強だけでなく炭素排出削減の新技術の導入も含まれています。特にカリガナガル工場の生産能力を 3 百万トンから 8 百万トンに拡張、その後は 13 百万トンまで増強します。買収した子会社NINLも現在の100万トンから550万トンに拡大する計画です。これらの拡張計画は、主に営業キャッシュフローからの資金を活用し、借入を可能な限り削減する計画です。インド全体を見ても、6月の製造業購買担当者指数(PMI)が急上昇しており、その牽引約は鉄鋼産業とサービス産業でした。このような鉄鋼生産の大型投資が続くというのは、過去に急成長した時期の中国との類似性が高いと言えます。既に世界の鉄鋼生産は過剰状態の為、更なる供給増が産み出す連鎖反応には注意が必要と思われます。
https://www.tatasteel.com/#spotlight

「三中全会」(中国共産党指導部の非公開会議)が終了し、ハイテク経済構想と国家安全保障の強化政策を承認しました。詳細はこれから出てきますが、現在西側諸国によるコンピュータチップ関連の規制が増える中、人口知能を含むハイテク分野での自立した経済成長に向けた戦略を実行する計画です。同時に「国家安全保障は重要な基礎である」とし、「党の指導こそが、その目標を達成するための基本的な保証である」との声明を発表しています。市場を開放する一方で中国の政治的イデオロギーの重要性を強調しており、この部分は今までとあまり変わっていません。過去数十年間中国経済を引っ張ってきた不動産と金属・材料産業(鉄鋼、銅、アルミニウムの黄金時代)については、今後は成長分野と見ていないようです。一部の報道では、中国国内のソーシャルメディアで「ガーベッジタイム」のタグが増える等、景気悪化の中で国の「長期的な経済成長軌道を回復する為の会議」と認識されています。独自のハイテク経済構想がレアアースやレアメタルの規制に繋がるのか、注目したいところです。
https://www.mfa.gov.cn/eng/zxxx_662805/202407/t20240718_11456274.html




再生可能エネルギーのコンサルタント会社であるWood Mackenzieは報告書を発行し、現時点では、循環型経済(サーキュラーエコノミー)への移行は主要な製造業にほとんど影響を与えていない、という状況を説明しています。7月のHorizo​​nsレポート「廃棄物から富へ:循環型バリューチェーンの解放」では、企業によるコミットメントと規制目標が高まっているにもかかわらず、循環型経済モデルの進歩は「極めて遅い」と報告しています。理由は、循環型のバリューチェーンから得られる利益は複雑で、一部の事業体にのみ利益がもたらされ、他のバリューチェーンの大部分が利益を上げる事が困難な為、と伝えています。特に、ポリエステルなどの合成繊維を含むプラスチック産業やバイオ燃料、電子機器は、伝統的なバリューチェーンやビジネス慣行によってCEの進歩が妨げられている分野と特定しています。本来バリューチェーン全体で取り組むCEですが、大企業を中心とした一部のCEがもたらす利益だけでは対応が難しいという課題を浮き彫りにしています。
https://www.woodmac.com/horizons/unlocking-circular-value-chains/




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