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NEWSCONの気になるNEWS(2024年7月第1週)
米国ミシガン州の環境・五大湖・エネルギー省(EGLE)はゴム改質アスファルト(リサイクルタイヤ材混入アスファルト)の導入が進んでいる事を発表しています。EGLEは、ミシガン州運輸局、ミシガン州立大学、ミシガン工科大学、ローレンス工科大学、道路委員会、ミネソタ州とアラバマ州のタイヤ協会と提携し、リサイクルタイヤを使用した舗装方法の研究開発を進めています。州の補助金は廃タイヤ用のリサイクル設備や道路の舗装設備に提供されています。ミシガン州では過去22年で230マイルの舗装が行われてきまました。2024年には更に70マイル以上の舗装が行われ、州全体のゴム改質アスファルトは300マイル以上になる予定です。
▶ https://www.michigan.gov/egle/newsroom/mi-environment/2024/06/26/scrap-tires-are-helping-fix-michigans-roads
EUに続き、英国も鉄鋼セーフガードを延長します。英国のビジネス貿易大臣は15種類の鉄鋼製品に対するセーフガード措置を2年間、2026年6月まで延長することを決定しました。この決定は英国貿易救済機構(TRA)の勧告に基づき行われたものです。7月1日に発効します。英国鉄鋼業協会はこの決定を歓迎しました。同協会は、世界の生産過剰能力が拡大し、他市場から製品が流入している為、この決定が英国鉄鋼業界にとって極めて重要である、との見解を述べています。更に英国の鉄鋼メーカーは2026年以降も過剰生産能力の問題に直面し続けるとの見解を示しています。これは英国だけでなく、インドの鉄鋼業も同様の問題を抱えており、超安価な中国材の輸入に苦戦し、今後も問題が続く見込みと業界関係者は発言しています。
▶ https://www.gov.uk/government/publications/extension-of-the-uks-steel-safeguard-measure
6月25日~28日にバーゼル条約のオープンエンド作業部会(OEWG-14)が開催されました。その中でHS商品コードやバーゼル条約付属書のコードの誤分類や誤解釈により、大量のプラスチック廃棄物が条約の規制を受けずに「抜け穴」を利用して国際取引され続けているという指摘が上がっています。プラスチック廃棄物は通常、HS 3915「プラスチックの廃棄物、破片、スクラップ」等のように分類されます。しかし、この商品コードはプラスチック廃棄物の限られた種類にのみ当てはまります。実際には別の商品コードを割り当てることが出来る廃棄物もこのコードが使われています。抜け穴の例として合成繊維、プラスチックベースのゴム製品、回収紙の梱包に混入したプラスチック、プラスチック廃棄物固形燃料、が挙げられています。これらを含めるとOECD諸国から非OECD諸国に輸送されたプラスチック廃棄物の量は報告された数量の2倍になると警告しています。この作業部会を経て、今後、プラスチック廃棄物の混入品や輸出管理は一段と厳しくなる可能性があります。
▶ https://www.basel.int/TheConvention/OpenendedWorkingGroup(OEWG)/Meetings/OEWG14/Overview/tabid/9768/Default.aspx
カリフォルニア大学リバーサイド校の研究で今後炭素排出を抑制しない場合、数十年で熱帯雨林の降雨が北方に移動し、地球の赤道付近の農業や経済に深刻な影響を与えると予測しています。北方への雨の移動は炭素排出による大気の変化に起因するもので、熱帯収束帯の形成に影響を及ぼします。この内容はネイチャー誌に掲載されています。この地域は降雨量が非常に多い為、僅かな変化でも農業や社会経済に大きなインパクトをもたらします。熱帯降雨の北への移動はコーヒー、カカオ、パーム油、バナナ、サトウキビ、茶、マンゴ、パイナップル等の収穫量に影響を与えます。既に今年は各地で熱波が発生しており、北極圏では5年で3度目となる大規模な山火事が発生する等、気候変動の影響が社会生活に影響を与えるレベルまで広がりつつあります。
▶ https://phys.org/news/2024-06-climate-shift-tropical-northward.html
6月29日に中国国務院は輸出を含む希土類の管理を強化する為の新たな措置を導入すると発表しました。規則は10月1日から施行されます。中国政府は希土類金属の採掘、使用、輸出を管理する為にトレーサビリティデータベースを運用する予定です。政府はまた、「希土類金属は国家の財産である」と宣言し「いかなる組織や個人も希土類資源を侵害したり破壊したりしてはならない」と警告しました。中国は世界の希土類金属の約60%を生産しており、世界市場に出回っている精製希土類金属の約90%のシェアがあります。特にネオジウム磁石が100℃を超えるアプリケーションには重希土類(ディスプロジウムやテルビウム)が不可欠ですが、精製時のエネルギ―消費や鉱石によっては放射性物質の処理が必要な為、現在は中国が世界シャアの99%近くを占めています。中国政府による希土類の管理措置は欧米によるEV関税やチップ規制への対抗措置と見られています。
▶ https://english.www.gov.cn/policies/latestreleases/202406/29/content_WS66800cfcc6d0868f4e8e8b15.html
6月中旬に米国下院議会の天然資源委員会は「重要鉱物一貫性法案(HR 8446)」を可決しました。今後、本議会での議論と可決が残されていますが、委員会では超党派が承認したことから、今後の立法過程もスムーズに進むと思われます。米国では2つの重要原材料のリストが存在します。1つは米国地質調査所(USGS)が制定する「重要鉱物リスト」です。もう1つは米国エネルギー省(DOE)が定義する「重要鉱物と原材料リスト」です。両方ともに銅やレアアースが含まれます。HR 8446はこの2つの省のリストを統合し、米国全体で「重要な鉱物と原材料」の確保とサプライチェーンの構築を法律により確実にするものです。欧州の重要原材料法に続き、重要原材料の確保とサプライチェーンの再構築に焦点を当てた法律となります。銅、アルミ、希土類、人造黒鉛等、中国が世界最大のシェアを持つ原材料は最新の欧米の原材料リストには全て含まれています。分断の溝が深まり、欧米によるサプライチェーン構築の動きが本格化している事から今後、日本にも多大な影響を与える可能性が高いと思われます。
▶ https://www.congress.gov/bill/118th-congress/house-bill/8446/all-info
中国は一人当たりのエネルギー消費量が欧州を上回るようになりました。中国の経済成長と長年に亘るインフラ整備により、エネルギー消費量は拡大してきました。中国は再生可能エネルギーに膨大な投資を行ってきましたが、産業の中心が製造業である為、世界最大の温室効果ガス排出国のままです。IEAのデータでは中国のGHG排出量は世界の31.72%を占めています。中国の一人当たりのエネルギー消費量は2001年から2021年迄の20年間で489%増加し、その間の二酸化炭素排出量は244%増加しました。GHGの大量排出は中国1ヵ国が悪いという事ではなく、欧米や他の国も中国の製品を輸入していることから、中国の製造業者に間接的にエネルギーと排出量をアウトソースしている事になります。その点は無視すべきではない、との論調が欧州では聞こえるようになってきました。
▶ https://finance.yahoo.com/news/china-energy-per-person-surpasses-230100385.html
欧州で粗鋼生産の28%以上を占めるドイツでの鉄鋼販売が、5月に前月比で8.9%も減少しました。前年同月でも4%減少しています。鋼板は前月比5.3%減、前年同月比2.3%増ですが、条鋼類は前月比4.2%減、前年同月比13.2%減と大幅に減少しています。これはドイツの経済の弱さとエネルギーや賃金高による生産コストの上昇を反映しています。ドイツは欧州最大の経済大国です。鉄鋼業の低迷の継続は同国の問題を端的に映し出しています。
▶ https://eurometal.net/germany-may-steel-sales-stocks-decline-on-year-amid-economic-slowdown/
フランスは下院(国民)議会総選挙の第1回投票で未知の領域に足を踏み入れました。右派の国民連合(RN)が約34%の得票率を獲得し、左派連合「人民戦線」が28.1%第2位、大統領の所属する中道政党は大敗して第3位の20.3%となりました。保守派の共和党は10.3%で4位でした。投票率は35年振りの高水準でしたので、国民の関心は相当高かったと言えます。第2回目は各選挙区の上記2人~3人による決選投票となり、現地フランスの情報紙による推定では、RNが260から310議席を獲得する可能性があります。ただし、この予測は1週間で大きく変わる可能性があります。過半数を獲得するには289議席が必要です。重要なのはフランスで「何故このような事が起こったのか」という事です。様々な分析が各メディアで分析されています。社会的な背景としてはフランス国民全体が持つフランスの衰退・悲観論の台頭で「国民は自国が変化し力を失ったと感じている」というものです。メインストリーム・メディアはこぞってRNを「極右」「ポピュリスト」とラベル付けしていますが、最近のルペン氏の経済政策の中身は、かつて左派政党が掲げていた政策に近く、安全保障や移民問題についてはより現実的な路線です。昔の出所が「極右」なので、それを利用して攻撃の対象にしているという側面もあります。以前は下火だった右派メディアが台頭してきた事も大きな流れです。米国でも分断は酷いものですが、フランスでもその兆候は明らかに現れ始めているという分析が多く出ています。あまり報道されませんがオランダ、イタリア、フランスだけでなく、ベルギーやドイツでも右派の台頭は顕著です。グリーントランジッションや環境政策の進捗速度は今後かなり影響を受ける可能性が高くなっています。
▶ https://www.politico.eu/article/how-france-pivoted-to-the-right/
米国ではシェブロン原則(Chevron deference )として知られる40年前の判決を最高裁が覆した事で、米政府によるEV義務化が事実上不可能になる可能性が出てきました。Chevron原則とは、法律の解釈が曖昧なケースでは連邦機関による法令の解釈が合理的である場合に裁判所は政府の解釈に従う事を義務付ける判決です。つまり一定の条件下では裁判所ではなく、政府が法律の解釈を決める権限を持つという事です。この判決により、米政府の環境保護庁(EPA)は専門知識に基づいて様々な大気汚染規制を行ってきました。今後、事実上EVを義務とする厳しい自動車排出ガスを規制行う権限がEPAにあるかどうか、議論が避けられない状況です。今後、政府が専門知識を利用して独自に法的解釈を行う事が出来なくなり、曖昧な法律に関する法的解釈は裁判所に委ねられる事になります。この変化により、規制が遅れたり、頓挫したりして、業界の運営やコンプライアンス戦略に影響が及ぶ可能性があります。長年、石油化学業界は「Chevron原則」に異議を唱えてきました。長期的には立法府である議会は法律の中に政府機関が法律をどのように実施するかを具体的に盛り込む必要が生じますがこれも現実的ではありません。
▶ https://www.nortonrosefulbright.com/en/knowledge/publications/5ef22f81/chevron-is-overruled-supreme-court-decision-upends-the-era-of-agency-rule
欧州ではサステナビリティ報告指令(CSRD)の開始と共に低炭素原材料の需要が急速に高まりつつあります。CSRDにより企業は財務諸表と同じレベルでサステナビリティ報告書を発行し、第三者機関による監査と保証を受ける必要があります。罰則には罰金や懲役刑が含まれ、企業は財務諸表と変わらぬ対応が必要です。そのような環境でタタ・スチールのオランダ支社は、「Zeremis Recycled」というブランドでリサイクル含有率30%の鉄鋼の生産を開始しました。同社は特に自動車、包装、建設業界でリサイクル含有量の高い鉄鋼製品の需要が高まると報告しています。タタ・スチール社のグリーン・スチール計画では2030年迄にCO2排出量を40%削減し、スクラップの利用の拡大を目指しています。
▶ https://www.tatasteelnederland.com/nieuws/tata-steel-lanceert-staal-met-een-hoog-gerecycled-gehalte-om-de-circulariteitsdoelen-van-klanten-te-ondersteunen
米国で2035年迄にEVを事実上義務化させる計画は、電力網の問題でも現実的には殆ど不可能に近いと専門家が警告しています。EV化に送電網を対応させる為には2兆5000億ドル(約400兆円)以上のコストが掛かる可能性が試算されています。プリンストン大学の研究によるもので、現米政権のEV目標では電力消費が3,360%%増加する為です。特に運輸部門のEVの電力需要は2035年迄に5倍から10倍に増加すると考えられています。2023年に米国電気電子学会が発行したIEEE Spectrum誌の中で、EV移行に関する報告を掲載し、2035年迄に8,000台の大型発電ユニットと60万(回路)マイルの交流送電線を交換または改良する必要があると結論付けました。米国運輸省によると平均的なアメリカ人は年間約13,500マイル車を運転し、標準的なEVでは年間約3,857kWhの電力を必要とします。
▶ https://www.cnbc.com/2023/07/01/why-the-ev-boom-could-put-a-major-strain-on-our-power-grid.html
欧州議会最大の会派となったEPP党はポルトガルで「勉強会」を開催します。関係者が入手した同党の今後5年間の政策優先事項が注目されています。エネルギー転換に関しては継続するものの、経済競争力とエネルギー安全保障の方を強調しています。エネルギー転換には「水素生産の拡大」「小型モジュール原子炉の業界連合」「炭素回収・貯留・利用技術への投資と炭素取引の市場ルールの策定」そして「低炭素水素のシンプルな定義」が含まれています。注目される2035年のEV化では「2035年以降も代替ゼロ排出燃料の使用を認め、e燃料、バイオ燃料、低炭素燃料を対象とした新しいEU戦略を採用するとしています。自然保護に関してはやや縮小され、農家の利益を損なわない事を強調しています。更に森林伐採規制の適用は一時停止される可能性があります。
▶ https://www.eppgroup.eu/newsroom/epp-group-meets-in-portugal-for-study-days
世界中で中国製品へのドミノ現象と制裁措置への緊張が起こっています。欧米での保護政策、中国の不動産から製品輸出へのシフトが重なり、影響がドミノ化しています。インドネシアは近々、鉄鋼以外を含む広範囲な中国製品に100%~200%の輸入関税を課す予定です。ラテンアメリカ鉄鋼協会は主に中国とロシアからの洪水のような安価な鉄鋼製品の流入で生産が停滞している、と緊急声明を発信しました。メキシコ、チリ、ブラジルは鉄鋼輸入に対する関税を大幅に引き上げ、コロンビアの鉄鋼メーカーも政府に関税を引き上げるよう要請しています。インドの鉄鋼省と商務省は特に中国製品の輸入増加について協議を継続しています。しかし何れの国も中国による対抗措置を恐れています。2016年にはアルゼンチンが行った対中反ダンピング措置に対し、中国は、アルゼンチン産大豆製品の輸入を禁止しました。台湾のバナナや日本の魚介類等の例があり、それぞれ中国の対抗措置を恐れています。欧米の対中露貿易政策は、ドミノ効果を生み出し、各国が歪な貿易の犠牲になっている現状が顕著になり始めています。
▶ https://dialogo-americas.com/articles/chinas-cheap-steel-hurts-latin-americas-industry/
中国(上海市場)でアルミ地金の相場が急落した背景が伝えられています。また短期的には引続き価格が下落傾向と見られています。その理由は製造業が夏の休暇期に入ること、下流工程でのアルミニウムの消費が低迷していること、在庫の増加です。輸入ボーキサイトの価格は若干上がっていますが、それらの理由から地金の上値は重いという分析となっています。
▶ https://www.alcircle.com/press-release/chinas-a00-aluminium-ingot-price-nosedives-by-rmb980-t-m-o-m-amid-subdued-buying-sentiment-111309
2024年は、2010年以来の海上貨物輸送量が予測されています。インドから欧州向けのコンテナ価格は上昇し、今後も更なる上昇が見込まれています。追加料金であるバンカー調整係数(BAF)を8月1日から再導入する事も決定しています。過去2週間で、多くの船舶が現役を退いた為、遊休コンテナ船の数は世界の船舶数の10%にまで増加しました。パリに拠点を置くコンテナ業界データベースAXS-Alphalinerによると、現在遊休となっている船舶は合計520隻で、標準コンテナ数に換算すると128万個になります。これだけの数が減るという事で、米国や西アフリカ向けの貨物料金も夏以降に上昇する見込みです。紅海の混乱とサプライチェーン確保の為の前倒し出荷、更には遊休船舶の増加等の複数の要因で、コンテナ価格は暫く上昇傾向が続きそうです(運賃上昇はインフレを誘導する為、FRBが示しているように、利下げは少し先になるかも知れません。円への影響も懸念されます)。
▶ https://www.hellenicshippingnews.com/container-shipping-rates-to-europe-firm-up/
オランダでは右派を主導とする連立政権が誕生しました。フランスでは今週末の決選投票を控え、何としても右派の国民連合を抑える為、中道及び左派候補210人以上が決選投票から撤退すると発表しました。票が中道と左派で分散しないようにする為です。EU全体では議長国となったハンガリーのオルバン首相がEU議会の複数政党による新たな政治同盟「ヨーロッパの愛国者」を呼びかけています。こうした動き(反動)は欧州だけでなくカナダも同じで、最新の世論調査では、トルドー首相率いる自由党は、対抗する保守党に20ポイントの大差で負けており、トルドー首相自身は不支持が59%で支持はわずか33%まで落ちています。これらの背景にはイデオロギー的な経済と移民政策の相次ぐ失敗があり、その代償が若年層に大きく影響を与えている事実があります。EUでは25歳未満の若年層のが失業率は14.4%で高く、この傾向はずっと変わっていません。世界は2016年~2020年に米国が右派政権だった頃、欧州では圧倒的に強い左派系のリベラル政治が行われ、その後3年半は欧米共にリベラル色の非常に強い政権運営が行われてきました。その流れは反動と共に既に大きく変わりつつあります。頭を切り替えて対応する必要がありそうです。
▶ https://ec.europa.eu/eurostat/web/products-euro-indicators/w/3-02072024-bp
プラスチックのケミカルリサイクルは「リサイクル」と定義できるのか?という論争の中で、ニューヨーク州の包装法案が州議会で議論され、プラスチックのケミカルリサイクルを法の適用当初は「リサイクルとはみなさない」事に同意しました。この法律では包装廃棄物を30%削減することを義務付けています。ケミカルリサイクルは「高度なリサイクル」と定義されていますが、生産(生成物)量が少なく、GHG排出量が多く、副産物が必ずしも全て利用できず、更にエネルギー消費量が多い事が問題視されています。その為、法律上「リサイクル」と定義できるのか、議論となってきました。この問題は欧州に端を発し、米国にも飛び火しています。
▶ https://www.wsj.com/articles/a-fight-over-the-future-of-recycling-brews-as-plastics-legislation-gains-traction-a30be3a4
直近の中国の大連商品取引所の鉄鉱石先物価格は上昇しています。しかしオーストラリア産業科学資源省は鉄鉱石価格が2024年に1トン当り96ドル、2025年には84ドル、2026年には77ドルまで下がるとの予測を発表しています。多国籍商業銀行のHSBCホールディングスは2024年に100ドルと予想、キャピタル・エコノミクスは2024年は99~100 ドル、2025年には85ドルに下がると見ています。全ての関係者の見通しがネガティブに変化している主な理由の1つは鉄鋼需要の世界的な弱まりです。鉄は株と並び景気の先行指標の1つです。少し留意すべき予測と言えます。大連市場は中国政府の不動産テコ入れ策により過剰反応していますが、毎回、反動後の下げが大きい為、中期的な視点が重要となりつつあるようです。
▶ https://www.steelorbis.com/steel-news/latest-news/australia-forecasts-iron-ore-prices-to-drop-to-us96mt-in-2024-1347239.htm
世界で猛暑や水不足、更にハリケーンによる被害が経済活動にまで影響し始めています。中国気象庁は高温や熱波が長期化し、予測不可能な大雨が頻繁に起こると警告を発しました。また中国気象局の年次気候「ブルーブック」では30年以内に全国の最高気温が1.7~2.8度上昇する可能性があり、中国東部と新疆ウイグル自治区北西部が最も大きな被害を受けると警告しています。インドでは首都ニューデリーで熱波による水不足でストライキが起きた後、豪雨で首都の路上が冠水し、空港の屋上ターミナルが崩壊しました。既にカリブ海南東部の一部に壊滅的な被害をもたらしているハリケーン「ベリル」はメキシコのユカタン半島に向かい北上します。その為、米国の製油所に影響を与える可能性が高くなっています。「ベリル」は最大持続風速が時速257キロを超えており、約100年前間の記録の中で最も早いカテゴリー5の大西洋ハリケーンとなっています。過去7月にカテゴリー5の大西洋ハリケーンを記録したのは2005年7月に米国南部に甚大な被害をもたらしたハリケーン「エミリー」の1件だけです。欧米では既にこうした「気候変動は全てのビジネスに不確実性をもたらす」という認識が一般的になりつつあります。
▶ https://www.bbc.co.uk/news/articles/c9r3g572lrno
シンクタンクの国際持続可能開発研究所(IISD)はインドの銅供給に関する特別レポートを発表しました。インドでは銅精鉱の供給ルート確立大と銅製錬の建設は国家的な課題の1つとなっています。インド企業と政府は銅精鉱を確保する為に複数の供給ルートの確保を進めています。地政学的リスクが高まる中、国内での探査と持続可能な採掘を支援しながら、チリ、ペルー、オーストラリア、コンゴ民主共和国、ザンビア等の主要な銅鉱石および精鉱供給国との戦略的パートナーシップを締結するよう活発に動いています。この傾向が続けば新たな大口購入者としてインド企業が加わり、国際的な銅精鉱価格に影響が出る事は避けられない状況です。中期的には銅スクラップの価値が一段上がる可能性があります。
▶ https://www.iisd.org/publications/report/securing-india-copper-supply
上海協力機構(SCO)の年次首脳会議がカザフスタンで行われています。会議の中で中国の習近平国家主席が異例とも言える「米国とその同盟国からの圧力」を暗に示唆し、SCO加盟国に対し「外部からの干渉に抵抗する」為に団結するよう求めました。SCOの加盟国は世界人口の40%以上、世界GDPの約20%を占めています。SCOは中国とインドが中心となり牽引し、GDPは今後も拡大すると見られています。SCOが「反西側」という認識は今までもありましたが、公式な場での明らかな発言は異例とも言えます。欧米の制裁を受けているロシアにインドのモディ首相が訪問する事も発表されており、かなり混沌とした世界になってきました。欧州では選挙後にグリンディールはもはや別の方向に向き始めており、過去1年で世界は大きな変化を迎えています。
▶ https://www.scmp.com/news/china/diplomacy/article/3269211/chinese-leader-warns-shanghai-cooperation-organisation-resist-external-interference-latest-veiled?module=top_story&pgtype=homepage
▶ https://www.michigan.gov/egle/newsroom/mi-environment/2024/06/26/scrap-tires-are-helping-fix-michigans-roads
EUに続き、英国も鉄鋼セーフガードを延長します。英国のビジネス貿易大臣は15種類の鉄鋼製品に対するセーフガード措置を2年間、2026年6月まで延長することを決定しました。この決定は英国貿易救済機構(TRA)の勧告に基づき行われたものです。7月1日に発効します。英国鉄鋼業協会はこの決定を歓迎しました。同協会は、世界の生産過剰能力が拡大し、他市場から製品が流入している為、この決定が英国鉄鋼業界にとって極めて重要である、との見解を述べています。更に英国の鉄鋼メーカーは2026年以降も過剰生産能力の問題に直面し続けるとの見解を示しています。これは英国だけでなく、インドの鉄鋼業も同様の問題を抱えており、超安価な中国材の輸入に苦戦し、今後も問題が続く見込みと業界関係者は発言しています。
▶ https://www.gov.uk/government/publications/extension-of-the-uks-steel-safeguard-measure
6月25日~28日にバーゼル条約のオープンエンド作業部会(OEWG-14)が開催されました。その中でHS商品コードやバーゼル条約付属書のコードの誤分類や誤解釈により、大量のプラスチック廃棄物が条約の規制を受けずに「抜け穴」を利用して国際取引され続けているという指摘が上がっています。プラスチック廃棄物は通常、HS 3915「プラスチックの廃棄物、破片、スクラップ」等のように分類されます。しかし、この商品コードはプラスチック廃棄物の限られた種類にのみ当てはまります。実際には別の商品コードを割り当てることが出来る廃棄物もこのコードが使われています。抜け穴の例として合成繊維、プラスチックベースのゴム製品、回収紙の梱包に混入したプラスチック、プラスチック廃棄物固形燃料、が挙げられています。これらを含めるとOECD諸国から非OECD諸国に輸送されたプラスチック廃棄物の量は報告された数量の2倍になると警告しています。この作業部会を経て、今後、プラスチック廃棄物の混入品や輸出管理は一段と厳しくなる可能性があります。
▶ https://www.basel.int/TheConvention/OpenendedWorkingGroup(OEWG)/Meetings/OEWG14/Overview/tabid/9768/Default.aspx
カリフォルニア大学リバーサイド校の研究で今後炭素排出を抑制しない場合、数十年で熱帯雨林の降雨が北方に移動し、地球の赤道付近の農業や経済に深刻な影響を与えると予測しています。北方への雨の移動は炭素排出による大気の変化に起因するもので、熱帯収束帯の形成に影響を及ぼします。この内容はネイチャー誌に掲載されています。この地域は降雨量が非常に多い為、僅かな変化でも農業や社会経済に大きなインパクトをもたらします。熱帯降雨の北への移動はコーヒー、カカオ、パーム油、バナナ、サトウキビ、茶、マンゴ、パイナップル等の収穫量に影響を与えます。既に今年は各地で熱波が発生しており、北極圏では5年で3度目となる大規模な山火事が発生する等、気候変動の影響が社会生活に影響を与えるレベルまで広がりつつあります。
▶ https://phys.org/news/2024-06-climate-shift-tropical-northward.html
6月29日に中国国務院は輸出を含む希土類の管理を強化する為の新たな措置を導入すると発表しました。規則は10月1日から施行されます。中国政府は希土類金属の採掘、使用、輸出を管理する為にトレーサビリティデータベースを運用する予定です。政府はまた、「希土類金属は国家の財産である」と宣言し「いかなる組織や個人も希土類資源を侵害したり破壊したりしてはならない」と警告しました。中国は世界の希土類金属の約60%を生産しており、世界市場に出回っている精製希土類金属の約90%のシェアがあります。特にネオジウム磁石が100℃を超えるアプリケーションには重希土類(ディスプロジウムやテルビウム)が不可欠ですが、精製時のエネルギ―消費や鉱石によっては放射性物質の処理が必要な為、現在は中国が世界シャアの99%近くを占めています。中国政府による希土類の管理措置は欧米によるEV関税やチップ規制への対抗措置と見られています。
▶ https://english.www.gov.cn/policies/latestreleases/202406/29/content_WS66800cfcc6d0868f4e8e8b15.html
6月中旬に米国下院議会の天然資源委員会は「重要鉱物一貫性法案(HR 8446)」を可決しました。今後、本議会での議論と可決が残されていますが、委員会では超党派が承認したことから、今後の立法過程もスムーズに進むと思われます。米国では2つの重要原材料のリストが存在します。1つは米国地質調査所(USGS)が制定する「重要鉱物リスト」です。もう1つは米国エネルギー省(DOE)が定義する「重要鉱物と原材料リスト」です。両方ともに銅やレアアースが含まれます。HR 8446はこの2つの省のリストを統合し、米国全体で「重要な鉱物と原材料」の確保とサプライチェーンの構築を法律により確実にするものです。欧州の重要原材料法に続き、重要原材料の確保とサプライチェーンの再構築に焦点を当てた法律となります。銅、アルミ、希土類、人造黒鉛等、中国が世界最大のシェアを持つ原材料は最新の欧米の原材料リストには全て含まれています。分断の溝が深まり、欧米によるサプライチェーン構築の動きが本格化している事から今後、日本にも多大な影響を与える可能性が高いと思われます。
▶ https://www.congress.gov/bill/118th-congress/house-bill/8446/all-info
中国は一人当たりのエネルギー消費量が欧州を上回るようになりました。中国の経済成長と長年に亘るインフラ整備により、エネルギー消費量は拡大してきました。中国は再生可能エネルギーに膨大な投資を行ってきましたが、産業の中心が製造業である為、世界最大の温室効果ガス排出国のままです。IEAのデータでは中国のGHG排出量は世界の31.72%を占めています。中国の一人当たりのエネルギー消費量は2001年から2021年迄の20年間で489%増加し、その間の二酸化炭素排出量は244%増加しました。GHGの大量排出は中国1ヵ国が悪いという事ではなく、欧米や他の国も中国の製品を輸入していることから、中国の製造業者に間接的にエネルギーと排出量をアウトソースしている事になります。その点は無視すべきではない、との論調が欧州では聞こえるようになってきました。
▶ https://finance.yahoo.com/news/china-energy-per-person-surpasses-230100385.html
欧州で粗鋼生産の28%以上を占めるドイツでの鉄鋼販売が、5月に前月比で8.9%も減少しました。前年同月でも4%減少しています。鋼板は前月比5.3%減、前年同月比2.3%増ですが、条鋼類は前月比4.2%減、前年同月比13.2%減と大幅に減少しています。これはドイツの経済の弱さとエネルギーや賃金高による生産コストの上昇を反映しています。ドイツは欧州最大の経済大国です。鉄鋼業の低迷の継続は同国の問題を端的に映し出しています。
▶ https://eurometal.net/germany-may-steel-sales-stocks-decline-on-year-amid-economic-slowdown/
フランスは下院(国民)議会総選挙の第1回投票で未知の領域に足を踏み入れました。右派の国民連合(RN)が約34%の得票率を獲得し、左派連合「人民戦線」が28.1%第2位、大統領の所属する中道政党は大敗して第3位の20.3%となりました。保守派の共和党は10.3%で4位でした。投票率は35年振りの高水準でしたので、国民の関心は相当高かったと言えます。第2回目は各選挙区の上記2人~3人による決選投票となり、現地フランスの情報紙による推定では、RNが260から310議席を獲得する可能性があります。ただし、この予測は1週間で大きく変わる可能性があります。過半数を獲得するには289議席が必要です。重要なのはフランスで「何故このような事が起こったのか」という事です。様々な分析が各メディアで分析されています。社会的な背景としてはフランス国民全体が持つフランスの衰退・悲観論の台頭で「国民は自国が変化し力を失ったと感じている」というものです。メインストリーム・メディアはこぞってRNを「極右」「ポピュリスト」とラベル付けしていますが、最近のルペン氏の経済政策の中身は、かつて左派政党が掲げていた政策に近く、安全保障や移民問題についてはより現実的な路線です。昔の出所が「極右」なので、それを利用して攻撃の対象にしているという側面もあります。以前は下火だった右派メディアが台頭してきた事も大きな流れです。米国でも分断は酷いものですが、フランスでもその兆候は明らかに現れ始めているという分析が多く出ています。あまり報道されませんがオランダ、イタリア、フランスだけでなく、ベルギーやドイツでも右派の台頭は顕著です。グリーントランジッションや環境政策の進捗速度は今後かなり影響を受ける可能性が高くなっています。
▶ https://www.politico.eu/article/how-france-pivoted-to-the-right/
米国ではシェブロン原則(Chevron deference )として知られる40年前の判決を最高裁が覆した事で、米政府によるEV義務化が事実上不可能になる可能性が出てきました。Chevron原則とは、法律の解釈が曖昧なケースでは連邦機関による法令の解釈が合理的である場合に裁判所は政府の解釈に従う事を義務付ける判決です。つまり一定の条件下では裁判所ではなく、政府が法律の解釈を決める権限を持つという事です。この判決により、米政府の環境保護庁(EPA)は専門知識に基づいて様々な大気汚染規制を行ってきました。今後、事実上EVを義務とする厳しい自動車排出ガスを規制行う権限がEPAにあるかどうか、議論が避けられない状況です。今後、政府が専門知識を利用して独自に法的解釈を行う事が出来なくなり、曖昧な法律に関する法的解釈は裁判所に委ねられる事になります。この変化により、規制が遅れたり、頓挫したりして、業界の運営やコンプライアンス戦略に影響が及ぶ可能性があります。長年、石油化学業界は「Chevron原則」に異議を唱えてきました。長期的には立法府である議会は法律の中に政府機関が法律をどのように実施するかを具体的に盛り込む必要が生じますがこれも現実的ではありません。
▶ https://www.nortonrosefulbright.com/en/knowledge/publications/5ef22f81/chevron-is-overruled-supreme-court-decision-upends-the-era-of-agency-rule
欧州ではサステナビリティ報告指令(CSRD)の開始と共に低炭素原材料の需要が急速に高まりつつあります。CSRDにより企業は財務諸表と同じレベルでサステナビリティ報告書を発行し、第三者機関による監査と保証を受ける必要があります。罰則には罰金や懲役刑が含まれ、企業は財務諸表と変わらぬ対応が必要です。そのような環境でタタ・スチールのオランダ支社は、「Zeremis Recycled」というブランドでリサイクル含有率30%の鉄鋼の生産を開始しました。同社は特に自動車、包装、建設業界でリサイクル含有量の高い鉄鋼製品の需要が高まると報告しています。タタ・スチール社のグリーン・スチール計画では2030年迄にCO2排出量を40%削減し、スクラップの利用の拡大を目指しています。
▶ https://www.tatasteelnederland.com/nieuws/tata-steel-lanceert-staal-met-een-hoog-gerecycled-gehalte-om-de-circulariteitsdoelen-van-klanten-te-ondersteunen
米国で2035年迄にEVを事実上義務化させる計画は、電力網の問題でも現実的には殆ど不可能に近いと専門家が警告しています。EV化に送電網を対応させる為には2兆5000億ドル(約400兆円)以上のコストが掛かる可能性が試算されています。プリンストン大学の研究によるもので、現米政権のEV目標では電力消費が3,360%%増加する為です。特に運輸部門のEVの電力需要は2035年迄に5倍から10倍に増加すると考えられています。2023年に米国電気電子学会が発行したIEEE Spectrum誌の中で、EV移行に関する報告を掲載し、2035年迄に8,000台の大型発電ユニットと60万(回路)マイルの交流送電線を交換または改良する必要があると結論付けました。米国運輸省によると平均的なアメリカ人は年間約13,500マイル車を運転し、標準的なEVでは年間約3,857kWhの電力を必要とします。
▶ https://www.cnbc.com/2023/07/01/why-the-ev-boom-could-put-a-major-strain-on-our-power-grid.html
欧州議会最大の会派となったEPP党はポルトガルで「勉強会」を開催します。関係者が入手した同党の今後5年間の政策優先事項が注目されています。エネルギー転換に関しては継続するものの、経済競争力とエネルギー安全保障の方を強調しています。エネルギー転換には「水素生産の拡大」「小型モジュール原子炉の業界連合」「炭素回収・貯留・利用技術への投資と炭素取引の市場ルールの策定」そして「低炭素水素のシンプルな定義」が含まれています。注目される2035年のEV化では「2035年以降も代替ゼロ排出燃料の使用を認め、e燃料、バイオ燃料、低炭素燃料を対象とした新しいEU戦略を採用するとしています。自然保護に関してはやや縮小され、農家の利益を損なわない事を強調しています。更に森林伐採規制の適用は一時停止される可能性があります。
▶ https://www.eppgroup.eu/newsroom/epp-group-meets-in-portugal-for-study-days
世界中で中国製品へのドミノ現象と制裁措置への緊張が起こっています。欧米での保護政策、中国の不動産から製品輸出へのシフトが重なり、影響がドミノ化しています。インドネシアは近々、鉄鋼以外を含む広範囲な中国製品に100%~200%の輸入関税を課す予定です。ラテンアメリカ鉄鋼協会は主に中国とロシアからの洪水のような安価な鉄鋼製品の流入で生産が停滞している、と緊急声明を発信しました。メキシコ、チリ、ブラジルは鉄鋼輸入に対する関税を大幅に引き上げ、コロンビアの鉄鋼メーカーも政府に関税を引き上げるよう要請しています。インドの鉄鋼省と商務省は特に中国製品の輸入増加について協議を継続しています。しかし何れの国も中国による対抗措置を恐れています。2016年にはアルゼンチンが行った対中反ダンピング措置に対し、中国は、アルゼンチン産大豆製品の輸入を禁止しました。台湾のバナナや日本の魚介類等の例があり、それぞれ中国の対抗措置を恐れています。欧米の対中露貿易政策は、ドミノ効果を生み出し、各国が歪な貿易の犠牲になっている現状が顕著になり始めています。
▶ https://dialogo-americas.com/articles/chinas-cheap-steel-hurts-latin-americas-industry/
中国(上海市場)でアルミ地金の相場が急落した背景が伝えられています。また短期的には引続き価格が下落傾向と見られています。その理由は製造業が夏の休暇期に入ること、下流工程でのアルミニウムの消費が低迷していること、在庫の増加です。輸入ボーキサイトの価格は若干上がっていますが、それらの理由から地金の上値は重いという分析となっています。
▶ https://www.alcircle.com/press-release/chinas-a00-aluminium-ingot-price-nosedives-by-rmb980-t-m-o-m-amid-subdued-buying-sentiment-111309
2024年は、2010年以来の海上貨物輸送量が予測されています。インドから欧州向けのコンテナ価格は上昇し、今後も更なる上昇が見込まれています。追加料金であるバンカー調整係数(BAF)を8月1日から再導入する事も決定しています。過去2週間で、多くの船舶が現役を退いた為、遊休コンテナ船の数は世界の船舶数の10%にまで増加しました。パリに拠点を置くコンテナ業界データベースAXS-Alphalinerによると、現在遊休となっている船舶は合計520隻で、標準コンテナ数に換算すると128万個になります。これだけの数が減るという事で、米国や西アフリカ向けの貨物料金も夏以降に上昇する見込みです。紅海の混乱とサプライチェーン確保の為の前倒し出荷、更には遊休船舶の増加等の複数の要因で、コンテナ価格は暫く上昇傾向が続きそうです(運賃上昇はインフレを誘導する為、FRBが示しているように、利下げは少し先になるかも知れません。円への影響も懸念されます)。
▶ https://www.hellenicshippingnews.com/container-shipping-rates-to-europe-firm-up/
オランダでは右派を主導とする連立政権が誕生しました。フランスでは今週末の決選投票を控え、何としても右派の国民連合を抑える為、中道及び左派候補210人以上が決選投票から撤退すると発表しました。票が中道と左派で分散しないようにする為です。EU全体では議長国となったハンガリーのオルバン首相がEU議会の複数政党による新たな政治同盟「ヨーロッパの愛国者」を呼びかけています。こうした動き(反動)は欧州だけでなくカナダも同じで、最新の世論調査では、トルドー首相率いる自由党は、対抗する保守党に20ポイントの大差で負けており、トルドー首相自身は不支持が59%で支持はわずか33%まで落ちています。これらの背景にはイデオロギー的な経済と移民政策の相次ぐ失敗があり、その代償が若年層に大きく影響を与えている事実があります。EUでは25歳未満の若年層のが失業率は14.4%で高く、この傾向はずっと変わっていません。世界は2016年~2020年に米国が右派政権だった頃、欧州では圧倒的に強い左派系のリベラル政治が行われ、その後3年半は欧米共にリベラル色の非常に強い政権運営が行われてきました。その流れは反動と共に既に大きく変わりつつあります。頭を切り替えて対応する必要がありそうです。
▶ https://ec.europa.eu/eurostat/web/products-euro-indicators/w/3-02072024-bp
プラスチックのケミカルリサイクルは「リサイクル」と定義できるのか?という論争の中で、ニューヨーク州の包装法案が州議会で議論され、プラスチックのケミカルリサイクルを法の適用当初は「リサイクルとはみなさない」事に同意しました。この法律では包装廃棄物を30%削減することを義務付けています。ケミカルリサイクルは「高度なリサイクル」と定義されていますが、生産(生成物)量が少なく、GHG排出量が多く、副産物が必ずしも全て利用できず、更にエネルギー消費量が多い事が問題視されています。その為、法律上「リサイクル」と定義できるのか、議論となってきました。この問題は欧州に端を発し、米国にも飛び火しています。
▶ https://www.wsj.com/articles/a-fight-over-the-future-of-recycling-brews-as-plastics-legislation-gains-traction-a30be3a4
直近の中国の大連商品取引所の鉄鉱石先物価格は上昇しています。しかしオーストラリア産業科学資源省は鉄鉱石価格が2024年に1トン当り96ドル、2025年には84ドル、2026年には77ドルまで下がるとの予測を発表しています。多国籍商業銀行のHSBCホールディングスは2024年に100ドルと予想、キャピタル・エコノミクスは2024年は99~100 ドル、2025年には85ドルに下がると見ています。全ての関係者の見通しがネガティブに変化している主な理由の1つは鉄鋼需要の世界的な弱まりです。鉄は株と並び景気の先行指標の1つです。少し留意すべき予測と言えます。大連市場は中国政府の不動産テコ入れ策により過剰反応していますが、毎回、反動後の下げが大きい為、中期的な視点が重要となりつつあるようです。
▶ https://www.steelorbis.com/steel-news/latest-news/australia-forecasts-iron-ore-prices-to-drop-to-us96mt-in-2024-1347239.htm
世界で猛暑や水不足、更にハリケーンによる被害が経済活動にまで影響し始めています。中国気象庁は高温や熱波が長期化し、予測不可能な大雨が頻繁に起こると警告を発しました。また中国気象局の年次気候「ブルーブック」では30年以内に全国の最高気温が1.7~2.8度上昇する可能性があり、中国東部と新疆ウイグル自治区北西部が最も大きな被害を受けると警告しています。インドでは首都ニューデリーで熱波による水不足でストライキが起きた後、豪雨で首都の路上が冠水し、空港の屋上ターミナルが崩壊しました。既にカリブ海南東部の一部に壊滅的な被害をもたらしているハリケーン「ベリル」はメキシコのユカタン半島に向かい北上します。その為、米国の製油所に影響を与える可能性が高くなっています。「ベリル」は最大持続風速が時速257キロを超えており、約100年前間の記録の中で最も早いカテゴリー5の大西洋ハリケーンとなっています。過去7月にカテゴリー5の大西洋ハリケーンを記録したのは2005年7月に米国南部に甚大な被害をもたらしたハリケーン「エミリー」の1件だけです。欧米では既にこうした「気候変動は全てのビジネスに不確実性をもたらす」という認識が一般的になりつつあります。
▶ https://www.bbc.co.uk/news/articles/c9r3g572lrno
シンクタンクの国際持続可能開発研究所(IISD)はインドの銅供給に関する特別レポートを発表しました。インドでは銅精鉱の供給ルート確立大と銅製錬の建設は国家的な課題の1つとなっています。インド企業と政府は銅精鉱を確保する為に複数の供給ルートの確保を進めています。地政学的リスクが高まる中、国内での探査と持続可能な採掘を支援しながら、チリ、ペルー、オーストラリア、コンゴ民主共和国、ザンビア等の主要な銅鉱石および精鉱供給国との戦略的パートナーシップを締結するよう活発に動いています。この傾向が続けば新たな大口購入者としてインド企業が加わり、国際的な銅精鉱価格に影響が出る事は避けられない状況です。中期的には銅スクラップの価値が一段上がる可能性があります。
▶ https://www.iisd.org/publications/report/securing-india-copper-supply
上海協力機構(SCO)の年次首脳会議がカザフスタンで行われています。会議の中で中国の習近平国家主席が異例とも言える「米国とその同盟国からの圧力」を暗に示唆し、SCO加盟国に対し「外部からの干渉に抵抗する」為に団結するよう求めました。SCOの加盟国は世界人口の40%以上、世界GDPの約20%を占めています。SCOは中国とインドが中心となり牽引し、GDPは今後も拡大すると見られています。SCOが「反西側」という認識は今までもありましたが、公式な場での明らかな発言は異例とも言えます。欧米の制裁を受けているロシアにインドのモディ首相が訪問する事も発表されており、かなり混沌とした世界になってきました。欧州では選挙後にグリンディールはもはや別の方向に向き始めており、過去1年で世界は大きな変化を迎えています。
▶ https://www.scmp.com/news/china/diplomacy/article/3269211/chinese-leader-warns-shanghai-cooperation-organisation-resist-external-interference-latest-veiled?module=top_story&pgtype=homepage