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NEWSCONの気になるNEWS(2024年6月第2週)
欧州は「改正廃棄物枠組み指令」で繊維廃棄物に拡大生産者責任を採用し、生産者による廃棄物の収集、分別、リサイクルに一定の義務を課します。しかし欧州でのリサイクル能力不足が指摘されており、早急な投資による能力拡大が必要と分析されています。欧州環境局は調査報告を発表し、繊維廃棄物の処理能力の向上が急務と警告しました。繊維産業は欧州では3番目に水と土地を利用し、5番目に原材料の使用量と温室効果ガス排出量が多く、3番目に雇用が多い産業です。1人当り年間16Kgの繊維廃棄物を排出していますが、殆どが未分類のまま廃棄されています。過去20年間で輸出された繊維廃棄物量は3倍に跳ね上がり、170万トンを超えています。その46%はアフリカ、41%はアジア向けとなっています。繊維廃棄物はマイクロプラスチックによる汚染源の1つとされており、今後、世界での規制が徐々に強化されると見られています。
▶ https://bit.ly/3KuxDqe
2024年1月から4月のトルコの鉄スクラップ輸入量は前年同期比2.5%増加し、683万トンになりました。増加の理由は、Q1での景気の回復(5.7%成長)、インフレの安定、通貨の安定が重なり、スクラップ輸入も増えましたが、4月は一転して前年同期比5.9%減少し、前月比17.7%減となりました。トルコには4つの高炉と26の電炉を含む30の製鉄所があり、年間の製鉄能力は約6,000万トンと推定されています。2023年の鉄鋼メーカーの工場稼働率は58.5%と低いままでした。景気にかなり敏感に反応する状況が続いており、トルコ経済指標をウォッチする必要がありそうです。
▶ https://www.steelorbis.com/steel-news/latest-news/turkeys-scrap-imports-up-25-percent-in-january-april-1343419.htm
EU議会選挙がオランダを皮切りに始まりました。オランダでの出口調査では反移民を掲げる極右派が左派と誤差にまで躍進しています。労働党と緑の左翼連合は1議席を失い8議席へ、極右派は1議席から7議席へと伸ばす模様です。欧州議会選挙では、計720議席の改選を行い、今のところ、中道右派が最多の議席を獲得する見込みで、同党の候補者で現職のドイツ人欧州委員会委員長ウルズラ・フォン・デア・ライエン氏が2期目を継続する最有力候補となっています。新議会は2028年から施行されるEUの次の7年間の予算を決定する予定で、ウクライナ、モルドバ、西バルカン諸国は何れもEU加盟を目指しています。EU選挙と米大統領選挙は欧米でのグリーンムーブメントの継続に最も影響があるイベントとして注目されています。
▶ https://www.politico.eu/article/european-election-voting-democracy-propaganda-activism-far-right-green-deal/
アルミの国際市場で超短期はファンド、中長期はファンダメンタルズという流れが出来ています。6日の国際市場ではファンドがポジションを売却した為、価格は下げました。特に中国での高金利による金属需要の減少に対する懸念から、ファンドがポジションを解消、6日は0.83%下落しました。しかしアルミナの国際供給は不足しています。中国の生産量の減少、リオ・ティントのオーストラリアからの輸出減少が供給圧迫をもたらしています。リオ・ティントはガス不足によりアルミナの出荷に対する「不可抗力宣言」を行い、供給懸念が広がりました。国際アルミニウム工業会のデータでは中国の4月のアルミ製品(中間材含む)輸入は4月に前年比72.1%増の38万トンに急増し、最初の4か月間の輸入量は149万トンと前年比86.6%増となりました。ロシアからの輸入量も大幅に増加し、Q1には39万2,775トンに達し、前年同期比127.7%増となりました。こうしたファンダメンタルズにも関わらず、中国内の高金利による懸念で投棄マネーが動き価格が変動するという事態が発生しています。アルミに関しては超短期はファンドによる投機マネーの動き、中長期のトレンドはファンダメンタルズによる供給不足という流れは、暫く続きそうです。アルミナの供給不足解消が1つのターニングポイントになりそうです。
▶ https://in.investing.com/news/commodities-news/aluminium-dropped-amid-concerns-that-high-interest-rates-are-curbing-metals-demand-4237158
米国の下院国土安全保障委員長と同じく米下院の中国共産党問題特別委員長は政府の国土安全保障省に2通の書簡を送り、CATLとゴションハイテックによるウイグル地区での奴隷労働関与を示し、両社を輸入禁止リストに加えるよう要請しました。CATLとゴションは米フォードと独VWと関係のあるEV電池メーカーです。VWチャイナはゴションの株式の26%を保有しています。ゴションもVWチャイナも奴隷労働に対する証拠を否定しています。10日に欧州で中国EVに対する追加関税措置の発表がある中、直前で米国のこのような動きとなっています(ある意味プレッシャー)。ドイツの保険会社アリアンツの子会社アリアンツ・トレードは、最近のレポートで中国製EVは追加関税が無ければ、2030年までに欧州自動車メーカーに年間77億ドル(年間約1兆3000億円)の「利益損失」をもたらす可能性があると分析していました。EUが追加関税を行えば対抗措置が取られる模様で、一層、緊張が増しそうです。
▶ https://bit.ly/4bRrUXK
世界の主要鉄鋼生産国である中・印で政府が牽引する鉄鋼の脱炭素化への動きが本格的に開始されます。これらは世界的な鉄鋼の脱炭素化だけでなく、欧州の国境炭素調整メカニズムに対応する動きの1つとなっています。中国鉄鋼協会(CISA)は今年中に鉄鋼業が国家炭素排出量取引市場に組み込まれる可能性があると認めています。CISAの広報担当者によると、中国の低炭素鋼の基準は現在検討中で今年中に公表される予定です。同時に鉄鋼業界はまもなく炭素排出権取引に参加する予定です。過去2~3年の間に中国の大手鉄鋼会社約80社が炭素排出権取引制度の試験運用を開始しました。排出権取引は、炭素排出量の少ない鉄鋼会社の市場競争力を高めると期待されています。特に低炭素鋼生産技術の開発や低酸素プレミアム鋼の販売促進を念頭に置いています。超低排出を達成するには鉄鋼生産に1トン当たり400元(5ドル)以上、追加の設備メンテナンス費用に1トン当たり70元以上を投資する必要があります。その為、業界団体は政府に対して企業への支援を強化するよう求めています。
▶ https://www.kallanish.com/en/news/steel/market-reports/article-details/chinas-steel-industry-will-enter-carbon-trading-this-year–0624/
インド政府の鉄鋼省は直接還元鉄(DRI)と高炉におけるグリーン水素の使用を調査する為、コンサルタント会社MECONを指名しています。MECONは鉄鋼省の指導の下、2029~30年迄に45億5000万ルピーの予算を掛けてパイロット事業を実施する予定です。インドでの報道によると、環境に優しい鉄鋼生産のための原材料、技術、政策等、様々な側面に取り組む為、14の特別委員会が設置されました。インドは2030年迄に年間500万トンのグリーン水素を生産し、5,000万トンの炭素排出量を削減し、化石燃料の輸入を年間120億ドル以上節約することを目指しています。しかしグリーン水素は現時点では従来の水素よりも価格が高く実用化が困難です。政府は最近、インドをグリーン水素の生産、使用、輸出の世界的な拠点にする為の国家グリーン水素ミッションを立ち上げたばかりです。
▶ https://knnindia.co.in/news/newsdetails/sectors/steel-ministry-brings-in-house-firm-to-study-green-hydrogen-use-in-manufacturing
イタリアで開催されるG7では予定していなかった中国の小規模銀行に対する制裁が議題に上がる予定です。中国の大手銀行は欧米からの制裁に対する懸念から既にロシア人が関与する国境を越えた取引の支払いを制限し、関与を断つ措置を行っています。その為、ロシアとの取引では国境沿いの小規模銀行に頼らざるを得なくなり、地下の資金調達ルートの利用や暗号通貨の禁止が促進されました。西側諸国の当局者は一部の中国金融機関が依然として民生と軍事の両方の用途を持つ商品の取引を促進していることを懸念しています。アルミを始め、ロシアからの金属輸入が急増している中国ですので、これら中小銀行のドル決済が止まれば、ロシア産の金属の流れが一時的に遮断される可能性があります。
▶ https://www.asiafinancial.com/small-chinese-banks-in-g7-spotlight-for-dealings-with-russia
カナダのCyclic Materialsは、北米では初となる本格的な希土類磁石の湿式製錬リサイクル工場を稼働させます。施設はHub100と名付けられ年間100トンの磁性材料をリサイクルする能力があります。生成する物質は磁石に再利用可能なグレードのリサイクル混合希土類酸化物(rMREO)や、ニッケル及びコバルトの水酸化物類です。しかし北米ではリサイクル混合希土類酸化物(rMREO)の市場が構築されておらず、今後の課題となります。中・加の政治的な関係は悪化しており、カナダ国内での希土類サプライチェーンの構築は課題として上がっています。同社は2021年に設立された新興企業ですが、昨年にはカナダ政府からの補助金360万ドルやBMWベンチャーなどから資金を得ています。
▶ https://www.cyclicmaterials.earth/news/cyclic-materials-opens-hub100-facility-for-production-of-recycled-mixed-rare-earth-oxide
EU議会選挙は緑の党が予想を下回る結果となった以外はほぼ事前の予想通りの結果となりました。選挙後のキーパーソンはイタリア首相のメローニです。現欧州委員長のフォンデアライエンの2期目の承認に必要な過半数の361票は見た目上は今回の選挙結果による「大連立」の403議席で容易に達成できそうですが、実態はやや困難な状況です。2019年にフォンデアライエンが議会に承認されたのは僅か9票差でした。フォンデアライエンの所属する欧州人民党(EPP)グループ内の各国代表団は必ずしも彼女の再選に賛成するとは限らない状況です。そうなる可能性がある場合、フォンデアライエンはイタリア首相のメローニ率いるイタリア同胞党(FdI)議員の支持に頼ることになる可能性があります。同党は今回の選挙で大勝しています。しかし極右のメローニに頼ることは左派の同盟者との関係を悪化させるリスクがあります。そうした状況もあり、欧州では早くもグリーンディール政策を順調に進める事ができるのか、懸念が起きています。Politicoは「今回の選挙ではっきりしたのは、たとえ気候変動を信じ対策を行う必要があると考える人々でも、自分の財布の負担が大きくなる政策が続いた場合には、人々は反対票を投じる」と締めくくっています。
▶ https://www.euronews.com/my-europe/2024/06/10/europe-veers-right-but-centre-ground-resists-what-the-eu-election-results-mean-and-whats-n
カナダの天然資源省は重要鉱物リストを更新しました。鉱物と金属合わせて34種類が含まれています。今回、高純度の鉄(High-purity iron)、リン、ケイ素が入りました。高純度鉄が入った理由はグリーン鉄鋼生産にむけた脱炭素化に不可欠な鉱物との理由からです。高純度鉄の定義は明らかではありませんが、様々な情報から「汚染物質の少ない高品位の66.2% 以上のFe鉄鉱石濃縮物」となるようです。世界で初めて重要鉱物リストに高純度鉄鉱石が入るという事で地元の鉄鉱石開発業者は歓迎の意を示しています。
▶ https://www.canada.ca/en/natural-resources-canada/news/2024/06/government-of-canada-releases-updated-critical-minerals-list.html
欧州では、オーストリア、フィンランド、フランス、オランダの4ヵ国が、6月17日の欧州各国環境大臣によるサミット宛に「廃棄物枠組み指令(WFD)」の改正を通じて繊維廃棄物と食品廃棄物を制限する立場を取るよう、政策提言を行いました。今年4月に欧州リサイクル産業連盟は欧州の繊維リサイクル産業が危機的な状況である緊急声明を発表しました。その後、状況は改善せず、未だに繊維リサイクル産業は完全な容量不足に悩まされています。業界内では「リサイクル料金の導入」が避けられない状況とのコンセンサスが形成されつつあります。欧州では繊維廃棄物を(善意の提供物として)域内処理では無く輸出に頼ってきた歴史があります。現在、主な輸出先であるアフリカやアジアでのドル調達コストの上昇、支払いの遅延、コンテナ運賃の上昇、さらには輸出品に対する規制の強化が重なり、繊維廃棄物処理システム全体が重大な危機となっています。オーストリア、フィンランド、フランス、オランダはEU加盟国に対して、安価で使い捨ての衣料品の無駄な流行を取り締まる為の厳しい措置を支持するよう要請しています。同4ヵ国は政府が「ファストファッション」を促進する企業に課税できるような措置を推進しています。
▶ https://www.euronews.com/green/2024/06/06/governments-call-for-crackdown-on-fast-fashion-ahead-of-key-vote
インドのタタスチールは大規模な投資を行う予定です。2025年度に1600億ルピー(約3000億円)規模の設備投資を予定しており、その内、約75%はインド国内の生産能力増強に充てます。残りは英国の脱炭素化プログラムに費やす計画です。同社のインド国内での生産能力は今後数年間で年間4000万トンまで「倍増」します。タタスチールのインド事業の利益は約22%上昇していますが、オランダや英国での事業の損実があり、そちらの対策も必要に迫られています。英国とオランダでは脱炭素化が急務となっており、英国では9月までに2基の高炉を閉鎖し電炉への転換を図り、オランダでも高炉を1基閉鎖しDRI-電炉への転換を図る予定です。
▶ https://www.thehindubusinessline.com/companies/tata-steel-earmarks-16000-cr-capex-for-fy25/article68266218.ece
EU議会選挙の結果を受けて、新たな気候変動に関する法律の制定が困難となる事が予想されています。しかし既存の法律の殆どは存続する可能性が高いと見られています。選挙ではEUの環境政策「グリーンディール」に懐疑的な政党が議席を伸ばし、推進派の緑の党が大敗しました。この結果によりグリーンエネルギーへの移行が遅れるかもしれないという懸念から、再生可能エネルギー企業の株価は下落しています。また自動車に関する政策(2035年にEV義務化)は修正される可能性が高くなっています。欧州や米国を中心にリベラル左派や緑の会派は、今まで保守的な勢力を「極右」や「ポピュリズム」としてラベル付けしてきました。その動きも変わりつつあります。イーロンマスクはXの中で極右と呼ばれる政党のマニフェストのどの政策が「極右」なのか教えてほしい、とコメントし、リベラル色の強いドイツ系のメディアも選挙結果を受けて、レッテル貼りを修正し始めています。今回の選挙で色々な事が変わっていきそうです。
▶ https://www.reuters.com/world/europe/uphill-road-europes-climate-plan-after-eu-election-2024-06-10/
EUは中国製EVに対する追加暫定関税を発表しました。追加税率は以下の通りです。BYD:17.4%、吉利:20%、SAIC:38.1%、EU調査に協力したが個別にサンプルを採取していないその他EVメーカー21%、調査に協力しなかったEVメーカー38.1%。当初、暫定税率は一律20%~25%と見られていましたが、個別の対応となりました。これらの税率は既存の関税(10%)に上乗せされる税率となります。7月4日より適用される予定です。11月にはこの暫定措置を恒久化する為の投票が加盟国間で行われる予定です。課税を廃止するには特別多数決投票による採決が必要となりますが、過去この基準に達することは稀でした。関税率が確定した場合は通常5年間適用されます。ロジウム・グループは4月の報告書の中で「中国のEVは欧州市場で中国国内よりも高く販売でき利益率が良い為、40~50%の関税が必要である。BYDのような垂直統合型メーカーの場合は更に高い関税が必要になる」と分析していました。経済シンクタンクのキール研究所は中国製EVに20%の関税を課せば、輸入が4分の1減少すると試算しました。米国は既に100%の関税を決定しています。中国はEUに対し報復措置を示唆しています。
▶ https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_24_3231
英国の大手スーパーマーケットでプラスチック包装を削減する為の面白い取組が行われています。英大手スーパーマーケットのTescoはアボガドに直接レーザーで商品情報を刻印し、通常表面に貼られているプラスチックの商品ラベルを削減しています。更にプラスチックのトレイや包装を紙製に変更する事でプラスチック廃棄物を出さない取組を運用し始めました。食品等の「接触に敏感なプラスチック包装」は、殆どのものはダウンリサイクルしか方法が無く、更に軟質包装が主な事からリサイクルそのものが困難な状況です。皮を食用とせず、比較的安定した品質の皮を持つ食品への直接レーザー刻印技術は、既に古くから存在しています。最近はAI選別や自動化によるレーザー刻印技術の目覚ましい発展で、このような試験運用が可能となっています。
▶ https://packagingeurope.com/news/tesco-etches-product-information-onto-avocado-skin-and-trials-cardboard-trays/11470.article
気候変動による人権についてスイス下院議会は裁判の判決を無視する旨の採決を行いました。今年4月にスイスの裁判所は、スイス政府が気候変動措置を十分に行っていない為、生存権が脅かされているという訴訟を受けて、原告側が勝訴する判決を下しました。原告は環境団体グリーンピースが支援する高齢女性グループ「クライマ・セニオリネン」です。スイス議会の下院でこの件に関する投票を行い、最高裁の「司法積極主義」を非難する拘束力のない動議に対し賛成111票、反対72票で可決されました。下院は、スイスは既に十分な対策を講じている為、更なる措置を講じる必要はないと主張しています。同じ様な訴訟は、環境団体が支援し、他の国際裁判所でも係争中です。英国は既に欧州人権裁判所からの離脱を示唆し始めています。欧州議会選挙の結果から国際的な気候変動対策に対する政治的反発が懸念される中、環境タカ派への1つの打撃となっています。
▶ https://www.reuters.com/world/europe/why-does-switzerlands-rebuff-european-climate-ruling-matter-2024-06-12/
銅の先行きについて、世界トップの銅トレーダーの見解が割れています。
ブルームバーグのアナリスト:「世界の供給状況を考慮すれば、価格の急激な高騰は不当。ただし将来予測は強気」。
Trafiguaのチーフエコノミスト:「スポット市場のファンダメンタルズよりも(投機の影響で)はるかに高騰している。しかし、ファースト・クォンタム・ミネラルズ社のパナマ鉱山の閉鎖により、最終的には世界の供給が逼迫する」。
GSのアナリスト:「上限は10,000ドルから11,000ドル程度になるだろう。供給ショックがあれば、1万5000ドルから2万ドルに上がる」。
銅強気派は世界的な産業活動の増加、中央銀行の金融緩和政策への転換、鉱山会社の生産拡大への苦戦により、銅市場は逼迫するとみています。鉱山からの供給減少は既に起こっており、精鉱が大幅に不足している状況は変わりありません。ただし、投資フロー(投機マネーによるポートフォリオの変更)の影響で不当な程に価格が上昇・下降するという状況も変わらず起こっています。
▶ https://oilprice.com/Metals/Commodities/Whats-Next-for-Copper-Markets.html
英国最大の金属リサイクル企業EMRが2023年の財務諸表を開示し、損失が明らかになりました。売上高は2022年比で14%近く減少(41億ポンド)、営業利益80%減、当期利益はマイナス2200万ポンド(約43億円の赤字)でした。2022年の当期利益は9,800万ポンド(約195億円の黒字)でした。インフレ、エネルギー高、人件費の上昇、英国経済の減速、発生屑の入札競争の激化等の要因が重なったものです。EMRはライバルSIMS同様、仕入れ競争による利益圧迫を最大のマイナス要因と見ています。欧州のリサイクラーにとって2023年の営業環境はあまり良い物ではありませんでした。2024年のQ1でやや回復傾向にありましたが、足元ではまた減速感が漂い始めています。
▶ https://find-and-update.company-information.service.gov.uk/company/02954623/filing-history
ドイツ自動車工業会(VDA)とドイツ政府の高官らは、EUが発表した中国製EVへの暫定関税を批判しました。この関税はBMWやDachia等、中国で生産している欧州自動車メーカーにも打撃を与えることになります。ドイツのフォルカー・ヴィッシング運輸大臣はXに「EU委員会の懲罰的関税はドイツ企業とその主力製品に影響を及ぼしている」と投稿し、欧州委員会を非難しました。一方でフランスは中国での自動車生産と販売が少ない事から追加暫定税率を歓迎しています。恐らくドイツも本音では歓迎している部分の方が大きいはずですが、これ以上中国を刺激しない為の方策と見られています。2023年にドイツ企業は中国へ約130億米ドル(約2兆円)の直接投資を行い、地政学の緊張にも関わらず、前年比で4.3%の伸びを示していました。ドイツは短期的には中国に依存しないと経済回復が見込めないというジレンマに陥っています。
▶ https://www.deutschlandfunk.de/eu-strafzoelle-auf-chinesische-e-autos-interview-hildegard-mueller-vda-dlf-664de46a-100.html
国際長鋼製品協会(IREPAS)の調査によれば、世界の長尺鋼製品の需要は供給を下回り、生産量も減少し始めています。業界関係者は中国が輸出を減速させると期待していますが、逆に中国メーカーは新たなターゲット市場を探していると見られています。トルコの条鋼製品メーカーはEUの需要が低く、中国材の国際流通量が増えている為、困難な状況が続いています。引続き中国からの輸出が続く場合、トルコの鉄鋼メーカーは生産をさらに削減せざるを得なくなります。EUの需要減は改善の兆しがありません。金利の低下にも関わらず投資は依然として低いままです。また、新しいEU炭素国境調整メカニズムにより輸入も大幅に減り始めています。一方、米国ではインフラ、商業建設プロジェクト、再生可能エネルギープロジェクトからの需要が高まっています。価格面では米国の工場は国内需要を満たすのに十分な能力があり、外国からの供給には適切な関税が課せられる為、消費者にとって輸入品はそれほど魅力的ではありません。5月には世界の鉄筋価格がほとんどの地域で下落しています。このマイナス傾向をもたらした主な要因は、需要の弱さと中国による供給過多です。
▶ https://www.irepas.com/?p=6026
米国でEVの普及を妨げる犯罪の脅威が報告されています。銅価格が上昇している為、充電ステーションのケーブルを盗難する窃盗犯罪が相次ぎ、ケーブルの切断による充電ステーションの停止が起き始めています。アフリカや途上国の一部では既にインフラに使われている銅線が切断され盗まれるというケースが頻発していますが、米国でも車の触媒に続き、充電ステーションを狙った犯罪が起き始めています。全米第2位の直流急速充電器ネットワークを運営するエレクトリファイ・アメリカによると、2年前は968ヵ所の充電ステーションで半年に1回の割合でケーブル犯罪があったが、昨年は125本、今年は5月迄に129本のケーブルが切断された模様です。他の2つの大手EV充電会社、FloとEVgoも盗難の増加を報告しています。EV充電ステーションは新たな対策の必要に迫られています。
▶ https://www.dailymail.co.uk/yourmoney/electric-vehicles/article-13522303/threat-electric-vehicle-ownership-Americans.html
▶ https://bit.ly/3KuxDqe
2024年1月から4月のトルコの鉄スクラップ輸入量は前年同期比2.5%増加し、683万トンになりました。増加の理由は、Q1での景気の回復(5.7%成長)、インフレの安定、通貨の安定が重なり、スクラップ輸入も増えましたが、4月は一転して前年同期比5.9%減少し、前月比17.7%減となりました。トルコには4つの高炉と26の電炉を含む30の製鉄所があり、年間の製鉄能力は約6,000万トンと推定されています。2023年の鉄鋼メーカーの工場稼働率は58.5%と低いままでした。景気にかなり敏感に反応する状況が続いており、トルコ経済指標をウォッチする必要がありそうです。
▶ https://www.steelorbis.com/steel-news/latest-news/turkeys-scrap-imports-up-25-percent-in-january-april-1343419.htm
EU議会選挙がオランダを皮切りに始まりました。オランダでの出口調査では反移民を掲げる極右派が左派と誤差にまで躍進しています。労働党と緑の左翼連合は1議席を失い8議席へ、極右派は1議席から7議席へと伸ばす模様です。欧州議会選挙では、計720議席の改選を行い、今のところ、中道右派が最多の議席を獲得する見込みで、同党の候補者で現職のドイツ人欧州委員会委員長ウルズラ・フォン・デア・ライエン氏が2期目を継続する最有力候補となっています。新議会は2028年から施行されるEUの次の7年間の予算を決定する予定で、ウクライナ、モルドバ、西バルカン諸国は何れもEU加盟を目指しています。EU選挙と米大統領選挙は欧米でのグリーンムーブメントの継続に最も影響があるイベントとして注目されています。
▶ https://www.politico.eu/article/european-election-voting-democracy-propaganda-activism-far-right-green-deal/
アルミの国際市場で超短期はファンド、中長期はファンダメンタルズという流れが出来ています。6日の国際市場ではファンドがポジションを売却した為、価格は下げました。特に中国での高金利による金属需要の減少に対する懸念から、ファンドがポジションを解消、6日は0.83%下落しました。しかしアルミナの国際供給は不足しています。中国の生産量の減少、リオ・ティントのオーストラリアからの輸出減少が供給圧迫をもたらしています。リオ・ティントはガス不足によりアルミナの出荷に対する「不可抗力宣言」を行い、供給懸念が広がりました。国際アルミニウム工業会のデータでは中国の4月のアルミ製品(中間材含む)輸入は4月に前年比72.1%増の38万トンに急増し、最初の4か月間の輸入量は149万トンと前年比86.6%増となりました。ロシアからの輸入量も大幅に増加し、Q1には39万2,775トンに達し、前年同期比127.7%増となりました。こうしたファンダメンタルズにも関わらず、中国内の高金利による懸念で投棄マネーが動き価格が変動するという事態が発生しています。アルミに関しては超短期はファンドによる投機マネーの動き、中長期のトレンドはファンダメンタルズによる供給不足という流れは、暫く続きそうです。アルミナの供給不足解消が1つのターニングポイントになりそうです。
▶ https://in.investing.com/news/commodities-news/aluminium-dropped-amid-concerns-that-high-interest-rates-are-curbing-metals-demand-4237158
米国の下院国土安全保障委員長と同じく米下院の中国共産党問題特別委員長は政府の国土安全保障省に2通の書簡を送り、CATLとゴションハイテックによるウイグル地区での奴隷労働関与を示し、両社を輸入禁止リストに加えるよう要請しました。CATLとゴションは米フォードと独VWと関係のあるEV電池メーカーです。VWチャイナはゴションの株式の26%を保有しています。ゴションもVWチャイナも奴隷労働に対する証拠を否定しています。10日に欧州で中国EVに対する追加関税措置の発表がある中、直前で米国のこのような動きとなっています(ある意味プレッシャー)。ドイツの保険会社アリアンツの子会社アリアンツ・トレードは、最近のレポートで中国製EVは追加関税が無ければ、2030年までに欧州自動車メーカーに年間77億ドル(年間約1兆3000億円)の「利益損失」をもたらす可能性があると分析していました。EUが追加関税を行えば対抗措置が取られる模様で、一層、緊張が増しそうです。
▶ https://bit.ly/4bRrUXK
世界の主要鉄鋼生産国である中・印で政府が牽引する鉄鋼の脱炭素化への動きが本格的に開始されます。これらは世界的な鉄鋼の脱炭素化だけでなく、欧州の国境炭素調整メカニズムに対応する動きの1つとなっています。中国鉄鋼協会(CISA)は今年中に鉄鋼業が国家炭素排出量取引市場に組み込まれる可能性があると認めています。CISAの広報担当者によると、中国の低炭素鋼の基準は現在検討中で今年中に公表される予定です。同時に鉄鋼業界はまもなく炭素排出権取引に参加する予定です。過去2~3年の間に中国の大手鉄鋼会社約80社が炭素排出権取引制度の試験運用を開始しました。排出権取引は、炭素排出量の少ない鉄鋼会社の市場競争力を高めると期待されています。特に低炭素鋼生産技術の開発や低酸素プレミアム鋼の販売促進を念頭に置いています。超低排出を達成するには鉄鋼生産に1トン当たり400元(5ドル)以上、追加の設備メンテナンス費用に1トン当たり70元以上を投資する必要があります。その為、業界団体は政府に対して企業への支援を強化するよう求めています。
▶ https://www.kallanish.com/en/news/steel/market-reports/article-details/chinas-steel-industry-will-enter-carbon-trading-this-year–0624/
インド政府の鉄鋼省は直接還元鉄(DRI)と高炉におけるグリーン水素の使用を調査する為、コンサルタント会社MECONを指名しています。MECONは鉄鋼省の指導の下、2029~30年迄に45億5000万ルピーの予算を掛けてパイロット事業を実施する予定です。インドでの報道によると、環境に優しい鉄鋼生産のための原材料、技術、政策等、様々な側面に取り組む為、14の特別委員会が設置されました。インドは2030年迄に年間500万トンのグリーン水素を生産し、5,000万トンの炭素排出量を削減し、化石燃料の輸入を年間120億ドル以上節約することを目指しています。しかしグリーン水素は現時点では従来の水素よりも価格が高く実用化が困難です。政府は最近、インドをグリーン水素の生産、使用、輸出の世界的な拠点にする為の国家グリーン水素ミッションを立ち上げたばかりです。
▶ https://knnindia.co.in/news/newsdetails/sectors/steel-ministry-brings-in-house-firm-to-study-green-hydrogen-use-in-manufacturing
イタリアで開催されるG7では予定していなかった中国の小規模銀行に対する制裁が議題に上がる予定です。中国の大手銀行は欧米からの制裁に対する懸念から既にロシア人が関与する国境を越えた取引の支払いを制限し、関与を断つ措置を行っています。その為、ロシアとの取引では国境沿いの小規模銀行に頼らざるを得なくなり、地下の資金調達ルートの利用や暗号通貨の禁止が促進されました。西側諸国の当局者は一部の中国金融機関が依然として民生と軍事の両方の用途を持つ商品の取引を促進していることを懸念しています。アルミを始め、ロシアからの金属輸入が急増している中国ですので、これら中小銀行のドル決済が止まれば、ロシア産の金属の流れが一時的に遮断される可能性があります。
▶ https://www.asiafinancial.com/small-chinese-banks-in-g7-spotlight-for-dealings-with-russia
カナダのCyclic Materialsは、北米では初となる本格的な希土類磁石の湿式製錬リサイクル工場を稼働させます。施設はHub100と名付けられ年間100トンの磁性材料をリサイクルする能力があります。生成する物質は磁石に再利用可能なグレードのリサイクル混合希土類酸化物(rMREO)や、ニッケル及びコバルトの水酸化物類です。しかし北米ではリサイクル混合希土類酸化物(rMREO)の市場が構築されておらず、今後の課題となります。中・加の政治的な関係は悪化しており、カナダ国内での希土類サプライチェーンの構築は課題として上がっています。同社は2021年に設立された新興企業ですが、昨年にはカナダ政府からの補助金360万ドルやBMWベンチャーなどから資金を得ています。
▶ https://www.cyclicmaterials.earth/news/cyclic-materials-opens-hub100-facility-for-production-of-recycled-mixed-rare-earth-oxide
EU議会選挙は緑の党が予想を下回る結果となった以外はほぼ事前の予想通りの結果となりました。選挙後のキーパーソンはイタリア首相のメローニです。現欧州委員長のフォンデアライエンの2期目の承認に必要な過半数の361票は見た目上は今回の選挙結果による「大連立」の403議席で容易に達成できそうですが、実態はやや困難な状況です。2019年にフォンデアライエンが議会に承認されたのは僅か9票差でした。フォンデアライエンの所属する欧州人民党(EPP)グループ内の各国代表団は必ずしも彼女の再選に賛成するとは限らない状況です。そうなる可能性がある場合、フォンデアライエンはイタリア首相のメローニ率いるイタリア同胞党(FdI)議員の支持に頼ることになる可能性があります。同党は今回の選挙で大勝しています。しかし極右のメローニに頼ることは左派の同盟者との関係を悪化させるリスクがあります。そうした状況もあり、欧州では早くもグリーンディール政策を順調に進める事ができるのか、懸念が起きています。Politicoは「今回の選挙ではっきりしたのは、たとえ気候変動を信じ対策を行う必要があると考える人々でも、自分の財布の負担が大きくなる政策が続いた場合には、人々は反対票を投じる」と締めくくっています。
▶ https://www.euronews.com/my-europe/2024/06/10/europe-veers-right-but-centre-ground-resists-what-the-eu-election-results-mean-and-whats-n
カナダの天然資源省は重要鉱物リストを更新しました。鉱物と金属合わせて34種類が含まれています。今回、高純度の鉄(High-purity iron)、リン、ケイ素が入りました。高純度鉄が入った理由はグリーン鉄鋼生産にむけた脱炭素化に不可欠な鉱物との理由からです。高純度鉄の定義は明らかではありませんが、様々な情報から「汚染物質の少ない高品位の66.2% 以上のFe鉄鉱石濃縮物」となるようです。世界で初めて重要鉱物リストに高純度鉄鉱石が入るという事で地元の鉄鉱石開発業者は歓迎の意を示しています。
▶ https://www.canada.ca/en/natural-resources-canada/news/2024/06/government-of-canada-releases-updated-critical-minerals-list.html
欧州では、オーストリア、フィンランド、フランス、オランダの4ヵ国が、6月17日の欧州各国環境大臣によるサミット宛に「廃棄物枠組み指令(WFD)」の改正を通じて繊維廃棄物と食品廃棄物を制限する立場を取るよう、政策提言を行いました。今年4月に欧州リサイクル産業連盟は欧州の繊維リサイクル産業が危機的な状況である緊急声明を発表しました。その後、状況は改善せず、未だに繊維リサイクル産業は完全な容量不足に悩まされています。業界内では「リサイクル料金の導入」が避けられない状況とのコンセンサスが形成されつつあります。欧州では繊維廃棄物を(善意の提供物として)域内処理では無く輸出に頼ってきた歴史があります。現在、主な輸出先であるアフリカやアジアでのドル調達コストの上昇、支払いの遅延、コンテナ運賃の上昇、さらには輸出品に対する規制の強化が重なり、繊維廃棄物処理システム全体が重大な危機となっています。オーストリア、フィンランド、フランス、オランダはEU加盟国に対して、安価で使い捨ての衣料品の無駄な流行を取り締まる為の厳しい措置を支持するよう要請しています。同4ヵ国は政府が「ファストファッション」を促進する企業に課税できるような措置を推進しています。
▶ https://www.euronews.com/green/2024/06/06/governments-call-for-crackdown-on-fast-fashion-ahead-of-key-vote
インドのタタスチールは大規模な投資を行う予定です。2025年度に1600億ルピー(約3000億円)規模の設備投資を予定しており、その内、約75%はインド国内の生産能力増強に充てます。残りは英国の脱炭素化プログラムに費やす計画です。同社のインド国内での生産能力は今後数年間で年間4000万トンまで「倍増」します。タタスチールのインド事業の利益は約22%上昇していますが、オランダや英国での事業の損実があり、そちらの対策も必要に迫られています。英国とオランダでは脱炭素化が急務となっており、英国では9月までに2基の高炉を閉鎖し電炉への転換を図り、オランダでも高炉を1基閉鎖しDRI-電炉への転換を図る予定です。
▶ https://www.thehindubusinessline.com/companies/tata-steel-earmarks-16000-cr-capex-for-fy25/article68266218.ece
EU議会選挙の結果を受けて、新たな気候変動に関する法律の制定が困難となる事が予想されています。しかし既存の法律の殆どは存続する可能性が高いと見られています。選挙ではEUの環境政策「グリーンディール」に懐疑的な政党が議席を伸ばし、推進派の緑の党が大敗しました。この結果によりグリーンエネルギーへの移行が遅れるかもしれないという懸念から、再生可能エネルギー企業の株価は下落しています。また自動車に関する政策(2035年にEV義務化)は修正される可能性が高くなっています。欧州や米国を中心にリベラル左派や緑の会派は、今まで保守的な勢力を「極右」や「ポピュリズム」としてラベル付けしてきました。その動きも変わりつつあります。イーロンマスクはXの中で極右と呼ばれる政党のマニフェストのどの政策が「極右」なのか教えてほしい、とコメントし、リベラル色の強いドイツ系のメディアも選挙結果を受けて、レッテル貼りを修正し始めています。今回の選挙で色々な事が変わっていきそうです。
▶ https://www.reuters.com/world/europe/uphill-road-europes-climate-plan-after-eu-election-2024-06-10/
EUは中国製EVに対する追加暫定関税を発表しました。追加税率は以下の通りです。BYD:17.4%、吉利:20%、SAIC:38.1%、EU調査に協力したが個別にサンプルを採取していないその他EVメーカー21%、調査に協力しなかったEVメーカー38.1%。当初、暫定税率は一律20%~25%と見られていましたが、個別の対応となりました。これらの税率は既存の関税(10%)に上乗せされる税率となります。7月4日より適用される予定です。11月にはこの暫定措置を恒久化する為の投票が加盟国間で行われる予定です。課税を廃止するには特別多数決投票による採決が必要となりますが、過去この基準に達することは稀でした。関税率が確定した場合は通常5年間適用されます。ロジウム・グループは4月の報告書の中で「中国のEVは欧州市場で中国国内よりも高く販売でき利益率が良い為、40~50%の関税が必要である。BYDのような垂直統合型メーカーの場合は更に高い関税が必要になる」と分析していました。経済シンクタンクのキール研究所は中国製EVに20%の関税を課せば、輸入が4分の1減少すると試算しました。米国は既に100%の関税を決定しています。中国はEUに対し報復措置を示唆しています。
▶ https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_24_3231
英国の大手スーパーマーケットでプラスチック包装を削減する為の面白い取組が行われています。英大手スーパーマーケットのTescoはアボガドに直接レーザーで商品情報を刻印し、通常表面に貼られているプラスチックの商品ラベルを削減しています。更にプラスチックのトレイや包装を紙製に変更する事でプラスチック廃棄物を出さない取組を運用し始めました。食品等の「接触に敏感なプラスチック包装」は、殆どのものはダウンリサイクルしか方法が無く、更に軟質包装が主な事からリサイクルそのものが困難な状況です。皮を食用とせず、比較的安定した品質の皮を持つ食品への直接レーザー刻印技術は、既に古くから存在しています。最近はAI選別や自動化によるレーザー刻印技術の目覚ましい発展で、このような試験運用が可能となっています。
▶ https://packagingeurope.com/news/tesco-etches-product-information-onto-avocado-skin-and-trials-cardboard-trays/11470.article
気候変動による人権についてスイス下院議会は裁判の判決を無視する旨の採決を行いました。今年4月にスイスの裁判所は、スイス政府が気候変動措置を十分に行っていない為、生存権が脅かされているという訴訟を受けて、原告側が勝訴する判決を下しました。原告は環境団体グリーンピースが支援する高齢女性グループ「クライマ・セニオリネン」です。スイス議会の下院でこの件に関する投票を行い、最高裁の「司法積極主義」を非難する拘束力のない動議に対し賛成111票、反対72票で可決されました。下院は、スイスは既に十分な対策を講じている為、更なる措置を講じる必要はないと主張しています。同じ様な訴訟は、環境団体が支援し、他の国際裁判所でも係争中です。英国は既に欧州人権裁判所からの離脱を示唆し始めています。欧州議会選挙の結果から国際的な気候変動対策に対する政治的反発が懸念される中、環境タカ派への1つの打撃となっています。
▶ https://www.reuters.com/world/europe/why-does-switzerlands-rebuff-european-climate-ruling-matter-2024-06-12/
銅の先行きについて、世界トップの銅トレーダーの見解が割れています。
ブルームバーグのアナリスト:「世界の供給状況を考慮すれば、価格の急激な高騰は不当。ただし将来予測は強気」。
Trafiguaのチーフエコノミスト:「スポット市場のファンダメンタルズよりも(投機の影響で)はるかに高騰している。しかし、ファースト・クォンタム・ミネラルズ社のパナマ鉱山の閉鎖により、最終的には世界の供給が逼迫する」。
GSのアナリスト:「上限は10,000ドルから11,000ドル程度になるだろう。供給ショックがあれば、1万5000ドルから2万ドルに上がる」。
銅強気派は世界的な産業活動の増加、中央銀行の金融緩和政策への転換、鉱山会社の生産拡大への苦戦により、銅市場は逼迫するとみています。鉱山からの供給減少は既に起こっており、精鉱が大幅に不足している状況は変わりありません。ただし、投資フロー(投機マネーによるポートフォリオの変更)の影響で不当な程に価格が上昇・下降するという状況も変わらず起こっています。
▶ https://oilprice.com/Metals/Commodities/Whats-Next-for-Copper-Markets.html
英国最大の金属リサイクル企業EMRが2023年の財務諸表を開示し、損失が明らかになりました。売上高は2022年比で14%近く減少(41億ポンド)、営業利益80%減、当期利益はマイナス2200万ポンド(約43億円の赤字)でした。2022年の当期利益は9,800万ポンド(約195億円の黒字)でした。インフレ、エネルギー高、人件費の上昇、英国経済の減速、発生屑の入札競争の激化等の要因が重なったものです。EMRはライバルSIMS同様、仕入れ競争による利益圧迫を最大のマイナス要因と見ています。欧州のリサイクラーにとって2023年の営業環境はあまり良い物ではありませんでした。2024年のQ1でやや回復傾向にありましたが、足元ではまた減速感が漂い始めています。
▶ https://find-and-update.company-information.service.gov.uk/company/02954623/filing-history
ドイツ自動車工業会(VDA)とドイツ政府の高官らは、EUが発表した中国製EVへの暫定関税を批判しました。この関税はBMWやDachia等、中国で生産している欧州自動車メーカーにも打撃を与えることになります。ドイツのフォルカー・ヴィッシング運輸大臣はXに「EU委員会の懲罰的関税はドイツ企業とその主力製品に影響を及ぼしている」と投稿し、欧州委員会を非難しました。一方でフランスは中国での自動車生産と販売が少ない事から追加暫定税率を歓迎しています。恐らくドイツも本音では歓迎している部分の方が大きいはずですが、これ以上中国を刺激しない為の方策と見られています。2023年にドイツ企業は中国へ約130億米ドル(約2兆円)の直接投資を行い、地政学の緊張にも関わらず、前年比で4.3%の伸びを示していました。ドイツは短期的には中国に依存しないと経済回復が見込めないというジレンマに陥っています。
▶ https://www.deutschlandfunk.de/eu-strafzoelle-auf-chinesische-e-autos-interview-hildegard-mueller-vda-dlf-664de46a-100.html
国際長鋼製品協会(IREPAS)の調査によれば、世界の長尺鋼製品の需要は供給を下回り、生産量も減少し始めています。業界関係者は中国が輸出を減速させると期待していますが、逆に中国メーカーは新たなターゲット市場を探していると見られています。トルコの条鋼製品メーカーはEUの需要が低く、中国材の国際流通量が増えている為、困難な状況が続いています。引続き中国からの輸出が続く場合、トルコの鉄鋼メーカーは生産をさらに削減せざるを得なくなります。EUの需要減は改善の兆しがありません。金利の低下にも関わらず投資は依然として低いままです。また、新しいEU炭素国境調整メカニズムにより輸入も大幅に減り始めています。一方、米国ではインフラ、商業建設プロジェクト、再生可能エネルギープロジェクトからの需要が高まっています。価格面では米国の工場は国内需要を満たすのに十分な能力があり、外国からの供給には適切な関税が課せられる為、消費者にとって輸入品はそれほど魅力的ではありません。5月には世界の鉄筋価格がほとんどの地域で下落しています。このマイナス傾向をもたらした主な要因は、需要の弱さと中国による供給過多です。
▶ https://www.irepas.com/?p=6026
米国でEVの普及を妨げる犯罪の脅威が報告されています。銅価格が上昇している為、充電ステーションのケーブルを盗難する窃盗犯罪が相次ぎ、ケーブルの切断による充電ステーションの停止が起き始めています。アフリカや途上国の一部では既にインフラに使われている銅線が切断され盗まれるというケースが頻発していますが、米国でも車の触媒に続き、充電ステーションを狙った犯罪が起き始めています。全米第2位の直流急速充電器ネットワークを運営するエレクトリファイ・アメリカによると、2年前は968ヵ所の充電ステーションで半年に1回の割合でケーブル犯罪があったが、昨年は125本、今年は5月迄に129本のケーブルが切断された模様です。他の2つの大手EV充電会社、FloとEVgoも盗難の増加を報告しています。EV充電ステーションは新たな対策の必要に迫られています。
▶ https://www.dailymail.co.uk/yourmoney/electric-vehicles/article-13522303/threat-electric-vehicle-ownership-Americans.html