NEWS

NEWSCONの気になるNEWS(2024年5月第5週)

豪州で未加工の鉄スクラップ輸出禁止に対する業界の動きが活発化しています。豪州からは毎年250万トン以上のスクラップが海外に輸出されており、未加工のスクラップは約100万トンと算定されています。未加工のスクラップとは、スクラップ加工工程を経ない使用済みの製品が大半を占めます。豪州の鉄鋼メーカーとリサイクル金属企業は、国内の供給不足を理由に未加工のスクラップの輸出禁止を求めており、今年10月に連邦上院で検討される予定です。豪州での問題はスクラップ母材の確保だけでなく、違法な取引にあります。NSW州では2016年にスクラップの現金買取が禁止されました。これは使用済みの製品を中古品として扱い、雑品に近いやり取りが横行した為です。しかし現在も多くの違法業者により現金売買が行われており、その金額は年間5億ドルに達すると見積もられています。その為、未加工のスクラップ金属の輸出を禁止すれば、闇市場を撲滅できると考えられています。豪州では未加工の鉄スクラップ輸出を禁止すると、年間約120万トンの炭素排出量を削減できるとの認識が広がっており、このままいけば禁止措置が取られる可能性が高くなります。
https://www.abc.net.au/news/2024-05-22/businesses-back-ban-on-scrap-metal-exports/103869580

英国のバース大学と米国マサチューセッツ州のウースター工科大学は、ポリスチレン(PS)の熱分解リサイクルの効率を上げる技術開発に成功しました。現在PSのリサイクル率は5%未満です。熱分解リサイクルでは処理を繰り返すと材料品質が劣化し、強度と柔軟性が失われます。また、あまりにも軽い為、輸送費がリサイクルの採算を阻害しています。PSのリサイクルは世界的な問題で欧州でも公的機関の支援で取組が行われてきました。今回開発された方法は無酸素チャンバー内でPSを450°C以上でモノマーに分解します。その後精製工程を経てバージン材と同等品質にします。熱分解反応器、熱交換器、蒸留工程で構成されており、PSを「モノマーグレード」のスチレンと油分に分け生成します。この工程での収率は60%で使用済みPS 1kgに対して純度99%モノマーグレードのスチレンを600g生成します。このプロセスでの炭素排出量の削減コストはCO2換算1トンあたり約1.5 ドルで、他の多くのリサイクルプロセスよりも大幅に低いと主張しています。
https://phys.org/news/2024-05-polystyrene-recycling-world-economical-energy.html#google_vignette

米国経済のハードランディング論が改めて米国の大手銀行から発せられています。1人目は全米4位の銀行であるシティグループの米国担当チーフエコノミストからで「労働市場の弱体化が今後雪だるま式に大きくなり、最終的にはハードランディングのような状況になる傾向がある」と述べています。米国の中小企業の雇用意欲は2016年以来最低レベルにある事がデータから示されています。2人目はJPモルガンのCEOで「米国にとってハードランディングの可能性は排除できず、今後、インフレは継続し失業率が高くなり成長が鈍化するスタグフレーションになる可能性がある」と述べています。
https://www.cnbc.com/amp/2024/05/23/jpm-jamie-dimon-us-could-see-hard-landing-stagflation-is-worst-outcome.html

人がマイクロプラスチック(MP)をどれだけ体内に取り込んでいるのかを国や地域別にマッピングした研究が発表されました。コーネル大学の研究者が109ヶ国におけるMPの摂取状況を調査しました。その結果、インドネシア、マレーシア、フィリピン等の東南アジア諸国は一人当たりの食事から摂取されるMPの量が世界トップで、中国、モンゴル、英国はMPを最も多く「吸い込む」国でトップとなっています。中国とモンゴルの住民は1ヵ月当り280万個以上の粒子を吸入し、米国の住民は1ヵ月当り約30万個の粒子を吸入しています。地中海とその周辺地域の住民はこれより少なく、スペイン、ポルトガル、ハンガリーでは1ヵ月当り約6万?24万個の粒子を吸入しています。中国、韓国、日本を含む東アジアでは、1人当たり1日153~269mgのMPを食事から摂取しています。これらの国では穀物の製粉、乾燥、プラスチック包装の過程で生成されるMPで汚染されていることが多い精製穀物が、魚介類に蓄積されたMPと相まって、食事から得られる摂取量の20%以上を占めています。
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.est.4c00010

アフリカ、東南アジアと並び、中米のカリブ海の島はプラスチック廃棄物で溢れており、川や周囲の海を汚染し、魚介類に被害を与えています。しかし、この地域の政府は長年、廃棄物管理に本腰を入れてきませんでした。例えばキュラソー島民の1人当たりの年間ゴミ量は平均1.2トンです。この量はラテンアメリカ諸国の平均の3倍です。今、カリブ海のごみ問題は主要産業である観光業を脅かし始めています。カリブ海諸国の8ヶ国は廃棄物管理の改善に向け「カリブ・サーキュラーエコノミー同盟」を結成しました。カリブ・サーキュラーエコノミー同盟は5月23日にラテンアメリカとカリブ諸国が環境問題に取り組む為、拡大生産者責任(EPR)を実施する国際イベントを開催しました。廃棄物汚染問題の切り札として、カリブ海諸国にまで浸透しつつあるEPRは今後も世界で広まる政策コンセプトとなると思われます。
https://coalicioneconomiacircular.org/en/events/extended-producer-responsibility-opportunities-for-latin-america-and-the-caribbean/

5年前の欧州議会選挙時に起きた「グリーンウェーブ」が今回の選挙では起きていない実態が伝わっています。前回選挙前の2019年春のピーク時にはEU本部のあるブリュッセルに7万人が集結し、気候変動対策の強化を声高に要求しました。この運動は成果をあげ、その後の選挙で「グリーンウェーブ」が起き、新しい議会と政府によって過去5年間の一連の気候変動関連法が制定されてきました。今回の選挙では気候デモは小規模で散発的となっており、記録的な世界気温もグリーンディールへの脅威もデモ参加者達を街頭に繰り出す動機には十分では無い事態となっています。専門家は現在の二極化と不安定化が進む世界では「気候変動はもはや政治を超えた存在でいることはできない」と分析しています。このような状況では気候変動の様に「一つの単純な統一メッセージ」を維持するのは難しいと結論づけています。イデオロギー化し行き過ぎた反動と、世界情勢の大変化が重なり、欧州でも気候変動やグリーンニューディールのブームは以前より勢いを失っているようです。
https://www.euractiv.com/section/climate-environment/news/europes-missing-climate-marches/

欧州では包装及び包装廃棄物規則(PPWR)が今年中には発効する予定進められています。2030年から包装材はリサイクル/再利用/堆肥肥化可能が義務化されるだけでなく、包装材に一定のリサイクル材料を含有させる事が義務化される等、非常に厳しい規制となります。包装材の原料としてプラスチックから紙への切替が進められていますが、環境フットプリントの面で議論が起こっています。CO2everything.comの提供するカーボンフットプリントの計算方法では、実は使い捨てプラスチックが最もカーボンフットプリントが少ないという結果が出ます。又、紙袋の製造はプラスチック袋の製造よりも70%多くのGHGを含む汚染物質が発生し、94%も水の使用量が多い事も挙げられています。1,000個の紙袋を製造するには1,004ガロンの水が必要で1,500個のプラスチックバッグを製造するには58ガロンの水しか必要有りません。オランダの金融サービス企業Rabobankの最近の調査では、環境フットプリントの面からプラスチックと紙ベースの包装では、それ程差が無い事が報告されています。大きな違いは処理されず不法に投棄された場合、プラスチックは自然環境に留まる事で汚染や動植物に被害をもたらしますが、紙は汚染を引き起こす度合いがプラスチックに比べ非常に小さい事です。今後、企業は代替材を探すに当たり、環境フットプリントを考慮した場合、どちらを選択するかという問題に直面する事になります。欧州のPPWRはプラスチックの削減を主な方針としている内容となっており、この点では代替が進む事になります。しかし環境フットプリントを考慮すればプラスチック廃棄物を域内で確実に処理すれば、あまり変わらないという事にもなりかねません。
https://www.packaging-gateway.com/features/sustainable-showdown-plastic-vs-paper-bags/?cf-view

MITは元々MITからスピンオフしたボストンメタル社について進捗を報告しています。ボストンメタルは、溶融酸化物電解プロセスという新工法で高炉の代替えとなる鉄の製造を行う技術開発を成功させてきた新興企業です。溶融酸化物電解(MOE)工法は、市バス程度の大きさのモジュール式セルで行われます。カソード(マイナス端子)と液体電解質に浸された不活性アノードのあるセルに鉄鉱石を投入します。アノードは不活性の為、電解質に溶解せず、プラス端子として「機能」する以外に反応はしません。アノードとカソードの間に電気が流れ、セル温度が上昇し、約1,600度に達すると鉄鉱石の酸化物の結合が分解され、底部に採取可能な純粋な液体金属が生成されます。反応の副産物は酸素でこの工程では水、石炭(コークス)、化学物質、貴金属触媒を利用しません。同社はこれまでに欧州、アジア、南北アメリカ、中東の組織から3億7,000万ドル以上を調達しています。ボストンメタル社は再生可能エネルギーを利用する事で鉄鋼生産の脱炭素化を具現化する計画で、2026年に商業運転を開始する予定です。既にブラジルの工場ではMOE技術を導入しています。
https://news.mit.edu/2024/mit-spinout-boston-metal-makes-steel-with-electricity-0522

LMEはインドネシアからは初となるPT CNGR Ding Xing New Energyのニッケルの取引を開始しました。DX-zwdxとブランドつけられています。同工場の年間生産能力は5万㌧です。この措置は2022年の危機後にニッケル取引量を回復させる為に行われました。同ブランドのニッケルはLME登録倉庫の在庫の流動性を高めるのに役立ちます。インドネシアブランドのLMEによる承認は他の地元企業がインドネシアの低品位鉱石をLME基準のクラス1金属に変換し始めているため、LMEに出荷可能なニッケルの他の生産者との競争が激化することを意味しています。昨年はインドネシアによるニッケルの大増産で価格が45%下落しました。今年はインドネシア政府が採掘割当承認の申請を審査し、一部の赤字生産者の生産を休止または削減したことから、これまでに22%上昇しています。今後インドネシア産がLEMに登録された事で同国の他社が同様の動きを見せると思われます。
https://www.lme.com/en/News?sc_camp=E648FC72E35D4937B619F85539637517

米国の大手鉄鋼メーカー、クリーブランド・クリフスは温室効果ガス排出量削減の新目標を発表しました。新たな目標には生産される鉄鋼1トン当りのスコープ1とスコープ2の温室効果ガス排出量を30%削減すること、スコープ3の排出量を2023年レベルと比較して2035年迄に20%削減すること、そして2050年迄に排出量をほぼゼロにすること、等が含まれています。スコープ1、及びスコープ2の温室効果ガスの絶対排出量を2017年レベルと比較して2030年迄に25%削減するという現在の目標は既に予定より大幅に早く完了している事も報告しています。同社は垂直統合を経営の方針に掲げ、ここ数年で幾つかのスクラップディーラーを買収してきました。2021年には米国の大手鉄スクラップ処理業者であるフェラス・プロセッシング・アンド・トレーディング・カンパニーを現金約7億7500万ドルという巨額で買収しています。
https://www.clevelandcliffs.com/news/news-releases/detail/639/cleveland-cliffs-announces-new-greenhouse-gas-emissions

欧州理事会は持続可能な製品の要件を定めるエコデザイン規則(エコデザイン規則)を採択しました。既存のエコデザイン「指令」から「規則」に格上げされ、更にエネルギー製品だけでなく、例外を除き全てのEUに流通する製品に適用されます。鉄鋼やアルミ等の中間製品にも適用されます。この規則は「持続可能性要件」と「情報要件」の2つから構成されており、両方を満たす必要があります。製品設計の段階で耐久性、再利用性、アップグレード性、修理可能性、循環性を妨げる物質の存在、エネルギーと資源(水含む)の効率性、リサイクルされたコンテンツ量、炭素と環境フットプリント等の「持続可能性要件」を満たす必要が生じます。更に公開が必要なそれらの情報は今回導入されるデジタル・プロダクト・パスポート(DDP)に記録され、ユーザーに公開される必要があります。それらの要件は今後18ヵ月以内に詳細が発表される予定です。サーキュラ―エコノミー(CE)を実現する為に動脈産業に厳しい規制をかける本規則はCEの切り札の法規制とも言われています。
https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2024/05/27/green-transition-council-gives-its-final-approval-to-the-ecodesign-regulation/

欧州理事会はネットゼロ産業法案(NZIA)を最終承認しました。NZIAは元々米国のIRAに対する懸念から欧州で同様のものを立法化する声が高まり、提案されたものです。産業のグリーン技術とネットゼロ技術を促進する為の補助金を含む、包括的な支援の為の規則となります。太陽光発電パネル、風力タービン、バッテリー、ヒートポンプ等の製造能力をEU需要の40%にする事、それらの技術のEUシェアを2040年迄に世界生産の15%にすること、が目標には含まれています。中国は2010年代初頭から国の補助金と国策によりグリーン関連産業を発展させてきました。米国はIRAによる巨額な予算でネットゼロ技術と雇用の回復を狙い、今回、欧州が追随したものとなりました。しかし、欧州には予算上限やプライマリーバランスの議論が常にあり、軌道に乗るかは壮大な社会実験になりそうです。
https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2024/05/27/industrial-policy-council-gives-final-approval-to-the-net-zero-industry-act/

ドイツ鉄鋼リサイクル・廃棄物管理企業連盟(BDSV)は、他の2業界団体と協力して、主要産業で使用される金属に「リサイクル材料の含有量表示」を義務付けるよう政府に要請しました。ドイツの二次原材料・廃棄物処理連盟(BVSE)によると、ドイツ国内の製鉄所による鉄スクラップ購入量は2022年の1280万トンから昨年は1170万トンと8.6%減少しています。協会は鉄スクラップ等の「リサイクル材料の割合」を示すラベルによって、将来二次原材料のリサイクルが促進される可能性があると訴えています。
https://www.bdsv.org/unser-service/presse/news-pm-von-bdsv-und-vdm-stahl-und-metallrecyclingwirtschaft-zum-habeck-konzept-fuer-gruene-leitmaerkte/

ミャンマーの新聞によれば、中国の鉄鋼業は岐路に立たされており、1兆ドル規模の市場を失う瀬戸際に立っている事が伝えられています。中国の鉄鋼業は重要な雇用創出源であり、間接部門を含めると1000万人以上の雇用があります。専門家は近い将来300万人から500万人の失業を生み出す可能性を指摘しています。サウスチャイナ・モーニング・ポストは過剰生産能力と雇用問題を何度か警告しています。今後、業界内で適切な規律がなければ、世界貿易における中国の長年の優位性にも問題を生ずる可能性を指摘しています。中国の鉄鋼業界の現状は種を撒き過ぎた畑に例えることができ、その結果、作物の成長が阻害されています。現在の課題は「どの種を取り除くか」を決定することであり、誰もが潜在的な衰退を回避するために身構える必要がある、と報じられています。
https://eng.mizzima.com/2024/05/27/10267

英国政府は排出権取引制度(UK ETS)の範囲を拡大する為の2つの協議を発表しました。今後、関係者に意見を求めます。1つ目の協議では廃棄物からのエネルギー回収(ごみ発電)と廃棄物の焼却をETSに含めることです。2028年から、これらの業種がETSに含まれる計画です。2026年から2年間の段階的導入期間があり、その期間中は2028年に完全に対象になるまで、排出権の購入や放棄の義務はありません。ただし排出量を監視、報告、検証する必要があります。
2つ目の協議では直接大気から炭素を回収した場合等、温室効果ガス除去(GGR)技術をUK ETSにどのように統合できるかを検討します。これらの動きは既にEUで先行しており、今後、EUの国境炭素調整メカニズムに対応が必要な英国では必須な動きとなっています。
https://www.gov.uk/government/news/proposals-to-expand-the-uk-emissions-trading-scheme

欧州理事会はメタンの排出とガスの輸入を制限する法律を承認しました。メタンは二酸化炭素と比較して20年で84倍、100年でも28倍の温室効果があります。天然ガスの主成分であり、二酸化炭素に次ぐ温暖化の原因と言われています。具体的には2030年からEUは欧州市場に流通する化石燃料に「最大メタン強度値」を課すことになります。欧州委員会はその日までに正確なメタン制限値を策定する予定です。強度値の制限を超えているにも関わらず無視して輸入した石油・ガス業者は、罰金を科せられる可能性があります。また欧州の生産者に対して漏れがないか定期的に点検することを義務付けるとともに、石油・ガス会社が意図的に燃やしたり、不要なメタンを大気中に放出したりするフレアリング/ベント(燃焼/放出)の大半を禁止します。現米政権はEUと共に2030年迄にメタン排出量を30%削減するよう各国に呼びかけており、EUのメタン法を歓迎しています。
https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2024/05/27/fit-for-55-council-gives-final-green-light-to-cut-methane-emissions-in-the-energy-sector/

カナダのリチウム精製及び関連製品のメーカーFull Circle Lithium(FCL)は、消化能力が大幅に向上し毒性煙の発生が最小化されたLIB専用の消火剤を開発しました。EVメーカーやジョージア州の港湾局が共同参画してテストが行われ、著しい性能向上を達成した事を伝えています。試験は家庭用電化製品、電動スクーター、EVで使用されるLIBを対象として米国認定の研究所によって3種類の試験が行われました。同社はこの消火剤をFCL-Xとブランド化し、商業販売を行う予定です。
https://www.fullcirclelithium.com/2024/05/28/full-circle-lithium-successfully-tests-its-proprietary-lithium-ion-battery-fire-extinguishing-agent-with-global-ev-oem-and-the-georgia-ports-authority/

欧州ではグリーン水素の夢が廃れ始め、炭素回収・貯留が脱炭素のテーマとして浮上しています。どちらも科学者からは元々「無謀」との意見があった中での流れです。欧州のグリーン水素プロジェクトは顧客不足、再生可能エネルギーの不足、サプライチェーンの遅れ、資金調達の課題に悩まされてきました。また中国製の電解槽が欧州メーカーに圧力を掛け始めており、欧州メーカーは政策当局に救済を求め始めています。今年初めに国際エネルギー機関は欧州の水素生産の2028年予測を50%下方修正しました。グリーン水素の目途が立ちにくくなり、浮上してきものが炭素回収・貯留(CCS)技術です。グリーン水素と炭素回収・貯留は、欧州で過去も失敗を繰り返した歴史がありますが、政治家は何故か大好きで新聞紙面も好きなテーマです。しかし、世界の投資家はあまり見向きもしなくなっています。
https://www.euractiv.com/section/energy-environment/news/out-with-green-hydrogen-in-with-carbon-capture/

インドの総選挙は来週終了する予定です。5段階で行われている今回の選挙では現職のナレンドラ・モディ首相が異例の3期目に再選されるのは確実と思われています。しかし最初の4つの段階の選挙では投票率が著しく低下しており、モディ首相率いるインド人民党(BJP)が3回連続で絶対多数を獲得するのか、注目が集まっています。インドの有権者は選挙を5年に一度、最貧困層が権力を発揮できる「お祭り」と考え、投票意思を秘密にしている事が殆どです。アナリストはモディ首相は殆どの世論調査でリードしているものの、その勝利の差は当初の予想よりも小さくなるかもしれないと分析し始めています。昨年、外国人投資家はインド株に207億4000万ドルを投資しました。これはアジアの新興市場では最大です。4回までの投票率の大幅な落ち込みを見て、投資家は身構え始めました。インド人民党(BJP)が過半数を取れば、経済運営は継続し国内、対外投資ともに活発化すると見られています。万が一連立を組む事になれば、短期的な反動があると見られています。今年は選挙を前にやや海外からの投資が引き下げられているのが実情です。現在、世界的にみてもインドの経済規模と成長の著しさは突出しており、選挙結果次第では特に金属市場への影響が出る可能性があります。
https://agmetalminer.com/2024/05/28/angloamerican-coking-coal-divestment/

ブルームバーグは米国の大手鉄鋼メーカーであるクリーブランド・クリフス(CLF)がロシア最大の鉄鋼メーカー、ノボリペツク・スチール(NLMK)の米国工場を買収する交渉を行っている、と伝えました。NLMKの米ペンシルバニア州の工場は同社が所有する世界最大の工場です。CLFはUSスチール買収に失敗し、その後、日本製鉄がUSスチールの買収交渉を行っている経緯はご存知かと思います。NLMKのオーナーは、ロシア最大の億万長者の1人Vladimir Lisin(ウラジミール・リシン)です。リシンは統一ロシア党の超大口スポンサーであり、長年多額の献金を行い、その見返りを経てオリガルヒになった人物です。鉄鋼だけでなく海運やエレクトロニクスにまで傘下を広げたロシアン・コングロマリット企業群のオーナーです。ちなみに統一ロシア党の先代の党首はプーチンで、現党主はメドベージェフです。ロシア軍需産業にも近いリシンは欧・英・米が1,200人以上のロシア人富豪を制裁リストに載せているのですが、そのブラックリストの中には入っていません。何故リシンが制裁リストに入らないのかは、欧州政府も関係者も硬く口を閉ざして理由を話しません。同じロシアの大手鉄鋼メーカーを所有するオリガルヒのViktor Rashnikov(ヴィクトル・ラシニコフ)は、制裁リストに入っています。実は何人か欧米の制裁リストに入るべきロシア人がいるのですが、リストに入らない謎は欧米政府も理由を明かしていません。リシンはその一人です。リシンが所有する海運会社は、250隻近い船舶を所有し、その内タンカーは45隻、タンカーの何隻かは「瀬取」を行いロシア産石油を他のタンカーに海上で移し替えていた事実が判明しています。こうした瀬取が無ければ、ギリシャを始めとするEUの数ヵ国は完全なエネルギー不足に陥ってしまいます。更にリシンが所有する鉄鋼メーカーの工場はフランスやベルギーで雇用を創出しているだけでなく、パートナーのファンド企業が西側の鉄鋼企業の幾つかを持ち分として所有しています。つまり米英欧はリシンを制裁対象とする事で、自身に火の粉が掛かることを避けてきたのです。そして先週G7蔵相会議で西側に残るロシア資産の活用について協議が始まりました。その後、間髪を入れずに出てきたのが、今回のCLFによるNLMKの買収の話です。CLFはUSスチール買収に失敗、米政府は日本製鉄のUSスチール買収を好意的に思っていません。そしてG7会議を経てCLFがNLMKの買収交渉となり「線」がつながりました。今後、日本製鉄がUSスチールを買収してもCLFが規模を拡大する事で米政権が望む「基幹産業の国内所有」が現実のものとなるという事です。
https://seekingalpha.com/news/4110774-cleveland-cliffs-in-talks-to-buy-us-plants-of-russias-nlmk-bloomberg
https://disclose.ngo/en/article/how-an-oligarch-with-links-to-the-russian-weapons-industry-is-shielded-from-eu-sanctions

欧州理事会は「EU修理をする権利指令(R2R指令)」を最終承認しました。この法律により、消費者は、買い替えや交換ではなく修理を求めやすくなります。具体的には技術的に修理可能な製品の修理をメーカーに義務付ける、修理プロセスに関する明確な情報(期限、価格等)が記載された修理フォームを利用出来るようにすること、消費者が簡単に修理サービスを見つけられる欧州のオンラインプラットフォームの設立、消費者が交換ではなく修理を選択した場合に保証を12ヵ月延長すること、等が含まれます。一連の気候変動と循環経済に関する立法が選挙前の5月に駆け込みで採択されています。
https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2024/05/30/circular-economy-council-gives-final-approval-to-right-to-repair-directive/

イタリアの世界的な大手鉄鋼製造用機械メーカーDANIELI(ダニエリ)は、子会社の鉄鋼生産企業Acciaierie Bertoli Safau(ABS)に今後2-3年で約6億ユーロ(約1000億円)を投資し、生産量を200万トン、売上高を30億ユーロに引き上げる事を計画しています。同社は最近、効率的な電炉への受注が順調で過去1年で株価は27%上昇しています。同社が直接子会社ABSでの鉄鋼製造能力を拡大する背景には欧州の自動車メーカーからの低排出ガス鋼の需要の高まりがあります。自動車メーカーは低排出鋼に対しプレミアムを支払う機運が高まっており、大型投資となりました。この流れは鉄スクラップ需要の増大と域内流通の加速を促す原動力となっています。
https://www.danieli.com/en/news.htm

インドの堅調なインフラ、製造業、建設部門は今後数年間で鉄鋼、鉄鉱石、原料炭、スクラップの需要を大幅に伸ばす見込みです。この需要の急増は政府が「Make in India」プログラムの下で行っている投資と連動しましす。インドは産業基盤の強化とクリーンエネルギーへの移行の為、リチウム等の重要な鉱物資源の確保への取り組みを強化しています。今年3月にインド政府は低酸素鋼開発に向けて、バイオ炭を活用するタスクフォースを立ち上げる等、様々な国家的施策を進めています。
https://energy.economictimes.indiatimes.com/news/renewable/indias-metals-demand-set-to-surge-bolstered-by-infrastructure-and-clean-energy-plans/110517899

BIRコペンハーゲン会議での非鉄部門のサマリーが掲載されています。非鉄スクラップの現時点での世界貿易での懸念事項が要約されています。1)世界中の政府が保護主義を強めており、銅スクラップの自由貿易は減少傾向にあり、世界中で規制を含めた銅スクラップの囲い込みが起きている事、2)その為、精錬所(製錬所)は、低グレードのスクラップ消費を増やし始めている事、3)アルミニウムに関しては世界で生産者が多い事から供給不足の懸念は銅とは比較にならないほど少ない事、4)EUの炭素国境調整メカニズムによる膨大な作業量が発生している事、等があげられています。又、今後、更に銅価格が高騰すれば、資金調達コストが上昇している現在、既に苦境に立たされている企業は大きな打撃を受ける事にも触れています。既に欧州ではリサイクラーの業務が政策による影響を強く受け出しており、今後、声高に政策立案者に要求を行う重要性を強調しています。
https://www.bir.org/news-press/news/item/bir-copenhagen-2024-non-ferrous-metals-division-copper-scrap-availability-continues-to-be-tight-despite-lme-surge




NEWSCON Inc. TEL. 03-3528-6223

営業時間 09:00-18:00
(土日・祝日・年末年始を除きます。)

CONTACTお問合せフォーム