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NEWSCONの気になるNEWS(2024年5月第2週)
米国財務省と歳入庁はインフレ削減法(IRA)のEVの適格要件について最終規則を提示しました。バッテリーに利用される鉱物資源やバッテリーの部品に関しては、外国懸念企業 (FEOC)の制限が適用されます。しかし一部の重要な鉱物(黒鉛)に関しては、2年間の延長措置を設ける事で緩和されています。FEOC規則は中国、ロシア、北朝鮮、イランからの製品に適用される為、FEOCを直ちに採用すると事実上米国でEVを生産出来なくなる為です。この緩和措置によりEV購入に対する税控除が受けられる車種は増えますが、EV販売の伸び鈍化を食い止められるかどうかは疑問が残るところです。インフラ整備の遅れやEVの価格帯などからIRAによる税控除は特定の地域の一部の購入者層に限ら得るとの見方も優勢となっています。この緩和措置は自動車メーカーの要望によるもので、中国製黒鉛を規制対象とすると、米国でEVが作れなくなる為、それを避ける目的の方が強いとの見方が優勢です。
▶ https://home.treasury.gov/news/press-releases/jy2323
フランス政府はEV販売の新たな目標を設定する広範な協定を自動車業界と締結します。フランスの自動車メーカーは2030年までに200万台のEV又はPHVを生産するという目標を設定します。フランス財務省の会見によると、政府とメーカーの新たな中期計画協定に基づき自動車業界はEVの販売台数を2027年までに80万台とする暫定目標に合意する予定です。フランスで販売される新車のほぼ20%がEVですが、フランスで製造されたEVは12%に過ぎません。EV販売が急激に鈍化している為、フランス政府は政策的に更にEV促進を打ち出しています。
▶ https://wmbdradio.com/2024/05/06/french-carmakers-target-fourfold-jump-in-ev-sales-by-2027/
企業の非財務開示情報にとって懸念事項であった2つの国際標準団体は、共同で相互運用ガイダンスを発行しました。IFRS財団と欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)は、ESRS-ISSB基準相互運用性ガイダンスの発行を発表しました。このガイダンスは、ISSB標準とESRSの両方を適用する企業向けに、それぞれの標準による複雑な開示基準や、片方の基準だけが持つ断片化された要求事項を明確にし、重複を避け、報告時の負担を軽減するように設計されています。このガイダンスには両方の持続可能性報告基準の遵守を目指す企業へのサポートも含まれています。それぞれの基準は今後数年間で数万社の企業に対するサステナビリティ報告義務の基礎となると予想されており、多くの企業が両方の遵守を義務付けられるか、或いは遵守することを選択する可能性があります。
▶ https://www.efrag.org/News/Public-515/IFRS-Foundation-and-EFRAG-publish-interoperability-guidance?AspxAutoDetectCookieSupport=1
インドのエネルギー・環境・水評議会(CEEW)はインドのアルミニウム産業を排出量ネットゼロにする為の研究報告書を発表しています。インドのアルミ産業をネットゼロにする為には約290億ドルという巨額な設備投資が必要となります。インドでは主要産業を脱炭素化する為のシミュレーションが行われた事が無く、ほぼ初の試みとなっています。インドのアルミニウム産業の二酸化炭素排出量は2020年に7,700万トンに達しており、その殆どは工場で使用される電力から来ています。これを再生可能エネルギーに置き換え、更にネットゼロにする場合には現在より生産コストが61%高くなると見積もっています。地政学問題でロシアと中国製のアルミニウムへの規制が欧米で徐々に進む中、インド産のアルミニウムは注目されていますが、炭素排出による制限を受ける事が問題として上がっています。この報告書は、そうした背景によりインド政府がグリーンアルミに本格的に動き出す第一歩と見られています。
▶ https://www.ceew.in/press-releases/net-zero-sustainable-aluminium-industry-will-need-usd-29-billion-capex-in-india
サウスチャイナモーニングポスト紙は、中国の鉄鋼業が危機的な状況の手前である事を伝えています。過剰生産能力の懸念は既知の事実ですが、国内のインフラ投資の減速や欧米の鉄鋼輸入規制だけでなく、最近はチリやベトナムまでが輸入制限の調査を検討し始める等、行き場を失う可能性が出てきました。中国の鉄鋼業は主に、不動産、インフラ建設、工場設備や改修等の投資によって支えられてきました。しかし、それらが全て低迷する中、ダンピングによる輸出攻勢が世界の鉄鋼業を混乱させている状況を生み出しています。オックスフォード・エコノミクスによればQ1の中国の鉄鋼製品の輸出量は前年同期比で13%増加し、パンデミック前の水準を80%上回っています。これは供給過剰に起因するダンピング行為の証拠と警告しています。「他国の鉄鋼製品に対する保護貿易の激化は、中国の鉄鋼輸出に課題をもたらし、業界の急速な転換点になる可能性がある」と同紙は警告しています。
▶ https://www.scmp.com/economy/global-economy/article/3261344/chinas-steel-industry-risks-falling-cliff-overcapacity-concerns-point-end-era
先週の米国の雇用統計を機に米経済の先行きに対する懸念が再び起こっています。著名資産運用会社の専門家は顧客へのメモの中で懸念を説明し、又Black Rockは投資家に保有する米ドル現金の一部を米ドル債権に移すよう薦めています。4月の債権市場が上昇した事も要因ですが、一部では年末迄に「景気悪化による利下げ」が織り込まれた事も原因の1つです。インフレと好調な経済指標により高金利が続き、最近まで利下げ観測が後退していましたが、雇用統計を受けて著名投資家による米景気のハードランディング論が再燃しています。特に米ドルはQ3から年末迄に変化する傾向が指摘され始めています。
▶ https://watcher.guru/news/brics-blackrock-issues-huge-us-dollar-warning
自動車がEVに移行する中で燃料関連の税金が世界で約1,100億ドル不足する為、各国政府は新たなEV課金を検討し始めています。これはEV所有者のコストを増加させる事になります。既に英国、NZ、イスラエル、米国の多くの州はガソリンとディーゼルに掛かる税金の減少を補う為、EVやハイブリッド車に対する税変更や課徴金を導入しています。それらの課税は登録料金、走行距離に応じた道路使用料、公共充電ポイントの税金等、様々なものがあります。昨年の世界の燃料税の減収額の60%を占めたのは、燃料税が高い欧州でした。米国ではEVに登録料金を課してもガソリン税の減収を補えず、州や連邦当局が直面する税収課題は解決の見込みが無い状況です。米国のハイウェイ信託基金は政策の変更がなければ2028年迄に債務超過になると予測しています。普及を目指し税優遇と手厚い補助金制度を整えてきたEVですが、税収減とそれを補う新たな課金により、所有者の負担は今後増える事になります。その為、EV普及にブレーキが掛かる事を懸念し、課金に対し環境団体が反対しています。
▶ https://www.ft.com/content/9e4e38af-acb6-426b-9cd5-5f7e938d4443
豪州のCSIROは複数の研究機関と共同でインドにおけるプラスチック廃棄物を大幅に削減する為のロードマップを発行しています。このロードマップは、インドが2035年迄に次の事をする必要が強調されています。1)プラスチックの2/3はリサイクルが可能であること、2)使い捨てプラスチックは段階的に廃止すること、3)プラスチック廃棄物を再資源化し、温室効果ガスの排出量を20~50%削減すること。インドでは毎日最低26,000トンのプラスチック廃棄物が発生しており、この量は米国とEUを除けば他のどの国よりも多く、大きな社会問題となっています。インド政府は本格的にプラスチック廃棄物削減に取り組む予定です。
▶ https://bit.ly/3WvPXGR
イタリア政府は農地を新たに太陽光発電施設として利用する事を禁止しました。新しい法令は現在承認中のプロジェクトには適用されません。農地の太陽光発電施設への転用は過去より問題となってきました。表向きは農地の「砂漠化」を避けることですが、実態としては大手投資ファンドによる投機により土地のメンテナンスが行われず、農地が再生不可能になる事を防ぐ事にあります。イタリア農業協会はこの禁止措置を歓迎しています。しかし太陽光発電業界は反対しています。再エネは補助金と電力課金が長期に保証される為、農業従事者に良いオファーを出す大手投資ファンドが世界中で乱立し問題となっていました。今回やっとイタリア政府も重い腰をあげたようです。
▶ https://www.pv-magazine.com/2024/05/07/italy-bans-pv-from-agricultural-land/
カンボジアは中国から17億ドルの資金提供を受けて、プノンペン港からタイ湾まで運河を拡張する計画を発表しています。この運河拡張によりカンボジアからベトナムの港を経由する輸送は約70%も削減される事になります。この拡張はベトナムのメコンデルタ地域のコメの生産、流域の住民、環境まで影響を与える可能性があると指摘されています。カンボジア政府は運河によりベトナムの港を通る輸送が削減され、経済的利益があると述べています。しかしベトナム政府は流域に住む何百万人の雇用や住居、コメの一大産地である脆弱なメコンデルタへの環境影響に強い懸念を示しています。全長180kmのこの運河はカンボジアとその周辺国の流通を変える可能性があります。専門家は中国の資金提供は中国の軍艦が上流にアクセスする為と見ていますが、カンボジア政府は否定しています。このプロジェクトによりベトナムとカンボジアの間の緊張関係が増すと見られています。
▶ https://www.asiafinancial.com/cambodian-plan-for-china-funded-mekong-canal-worries-hanoi
米国政府はインテルやクアルコム等のコンピュータチップメーカーが中国の華為技術(ファーウェイ)にチップを販売する許可(ライセンス)を廃止しました。クアルコムは5G技術をファーウェイにライセンス供与しています。ファーウェイは昨年、自社のHiSilicon部門が設計した5Gチップの使用を開始しました。アナリストはこのチップが米国の制裁に違反して製造されたと批判していました。ファーウェイは昨年8月にSMIC製の高性能チップを搭載した新型携帯電話を発表し、業界に衝撃を与えました。この携帯電話の成果でファーウェイのスマートフォン販売は2024年の最初の6週間で前年比64%も増加していました。既に米国議会(特に共和党)は相当タカ派になっており、今後チップだけでなく様々な貿易に影響が出ると思われます。インテルやクアルコムは中国での利益が大きい事から最近まで米政権も妥協してきましたが、この措置は大きな転換点とも言えます。
▶ https://www.bbc.co.uk/news/articles/cgxwpql2e82o
英国自動車製造貿易協会は4月の英国の新車登録台数を発表しました。伸び率は1%増に留まりましたが21ヵ月連続で増加しました。EVの市場シェアは前年の15.4%から16.9%増加しています。しかしEVの購入者は税制上の優遇措置を受けられるレンタカー会社等のフリート業者が大半を占め、販売されたEVの84%以上は、フリートによる購入となっています。インセンティブの無い一般消費者のEV購入はEV販売全体の僅か16%程度に留まり、自動車メーカーは危機感を増しています。英国一般人が急速にEVの購入を控え始めており、自動車メーカーにとって大きな問題になりつつあります。この傾向は、欧州全土で同じようなものとなっています。
▶ https://www.smmt.co.uk/2024/05/new-car-market-growth-continues-despite-declining-private-demand/
欧州内では中国製EVに対する入り混じった方針が交錯しています。欧州委員長のフォンデアライエンは、キリスト教民主同盟の党大会で「中国が巨額の補助金を出したEVをEU域内市場に氾濫させることを阻止する必要がある」と述べ、改めて中国EVへの制限を強調しました。しかし中国市場抜きでは事業が成り立たないBMWのCEOはすぐさま反応し「EUによる中国EVへの調査は自由貿易に反する」と警告しています。ドイツは首相と産業代表が訪中し、最近ではフランス大統領も中国の首席と会い、更にフランスはプーチン大統領の就任式にG7で唯一代表を送る等、それぞれ足元の景気悪化と産業界からの突き上げで、欧州政府との歩調が乱れています。来月の欧米議会選挙結果次第では様々な方針が変わりそうです。
▶ https://finance.yahoo.com/news/bmw-says-eu-probe-china-110017929.htm
欧州委員会が管理するコペルニクス気候変動庁(C3S)は、今年4月が産業革命以来最も暑い4 月であったと報告しています。また過去12ヵ月間の平均気温も高く、産業革命以前の1850年から1900年の平均を1.61℃上回りました。「多くの科学者は、気候システムに変化が起こる可能性があると考えている」とC3Sの上級気候科学者は述べています。1.61℃は、パリ協定の目標である1.5℃を既に上回っています。
▶ https://climate.copernicus.eu/copernicus-global-temperature-record-streak-continues-april-2024-was-hottest-record
中国当局はバッテリーの過剰生産を抑制する方針を取るようです。中国工業情報化省は電池仕様を定めた一連の新たな規則草案を発表し、企業に対し「単に生産能力を拡大するだけ」の新規工場建設を控えるよう勧告しました。草案文書は工業情報化省のHP内で政策文章の告示として掲載されており、業界からのフィードバックの対象となります。中国の電池生産能力は既に世界需要を上回っており、供給過剰への懸念が高まっています。新しい規則案はバッテリーの品質を向上させて不必要な生産拡大を阻止することを目的としている、と伝えられています。
▶ https://www.miit.gov.cn/zwgk/zcwj/wjfb/gg/art/2024/art_16f93de76eac4243abdd4baea5128cd2.html
欧州廃棄物管理協会(FEAD)はリサイクルの経済性を促進する為にリサイクル材料の産業需要を促進するマニフェストを発表しました。このマニフェストは欧米議会選挙に先立ち作成され、欧州政府に「循環物質使用法(CMUA)」の制定を求めています。提案されている CMUAは法的拘束力のある目標を2つ定めています。1つ目は循環物質使用率(原材料や製品に含まれるリサイクル材の比率)の目標を2030年迄に25%、2040年迄に30%、2050年迄に35 %とする事。2つ目は全ての廃棄物のリサイクル率を最低75%とする事です。FEADの提案は欧州の産業が「リサイクル材料」の利用を推進し、その為にイノベーションを進展させえるという考えに基づいています。現状では資源循環はリニアエコノミーの資源利用に対し効率やコスト面で劣る為、法制度が無ければ進展が難しく、欧州では製品へのリサイクル材の含有量を法的に定めるよう、廃棄物管理業界がロビー活動を行っています。
▶ https://fead.be/position/fead-2024-manifesto/
インドの鉄鋼大臣は政府のインフラ政策により、インドの鉄鋼需要は今後数年間二桁の伸び率で推移するとの見解を示しました。インドは2023-2024会計年度で需要が13-14%増加しています。2023-2024年度の粗鋼生産量は約1億4,500万トン、消費量は1億3,600万トンでした。引続き対外投資や国内インフラ需要が好調で今後も鉄鋼生産と需要の両方での伸びが期待できる事が改めて強調されています。
▶ https://www.business-standard.com/india-news/india-s-steel-demand-boom-to-continue-to-grow-at-10-over-next-few-years-124050800445_1.html
欧州最大の経済大国であるドイツ経済の低迷が続いています。昨年末、今年のドイツ経済は2023年より良くなると予想されていましたが多くの指標が状況の悪化を示しています。欧州委員会は当初2024年のドイツの経済成長見通しを1.1%としていましたが、2度下方修正し、それぞれ0.8%、直近では0.3%となりました。IMFも4月に下方修正し、1月時点での予測0.5%から0.2%としました。ドイツ当局もGDP成長率予想を従来の1.3%から0.2%に大幅に下げています。専門家は世界の地政学と経済に次の「ブラック・スワン」が現れた場合(それらは中東情勢の激化、原油価格の高騰、新たな世界的な物流問題)、ドイツのマクロ経済指標は2024年に「マイナス成長」に陥る可能性が高いと警戒感を強めています。鉄鋼産業の状況も悪く、過去2年連続で減少しており、この状況は今年も続くと見られています。
▶ https://www.reuters.com/markets/europe/german-economy-likely-stagnate-2024-iw-forecasts-2024-05-08/
白金族金属(PGM)及び特殊化学品の世界大手Johnson Mattheyは今年、プラチナ、パラジウム、ロジウム等の全てのPGMが供給不足になると報告しています。特にプラチナは供給不足量が2023年の51万8,000オンスから今年は59万8,000オンスになり、過去10年で最大の不足になるとの見通しを示しています。パラジウムの不足量は35万8000オンス(2023年は102万オンス)、ロジウムの不足量は6万5,000オンス(2023年は12万5,000オンス)と予測しています。企業の在庫も一掃しつつあり、価格上昇のトリガーになる可能性があります。
▶ https://www.reuters.com/markets/commodities/platinum-set-biggest-deficit-decade-2024-says-johnson-matthey-2024-05-08/
▶ https://home.treasury.gov/news/press-releases/jy2323
フランス政府はEV販売の新たな目標を設定する広範な協定を自動車業界と締結します。フランスの自動車メーカーは2030年までに200万台のEV又はPHVを生産するという目標を設定します。フランス財務省の会見によると、政府とメーカーの新たな中期計画協定に基づき自動車業界はEVの販売台数を2027年までに80万台とする暫定目標に合意する予定です。フランスで販売される新車のほぼ20%がEVですが、フランスで製造されたEVは12%に過ぎません。EV販売が急激に鈍化している為、フランス政府は政策的に更にEV促進を打ち出しています。
▶ https://wmbdradio.com/2024/05/06/french-carmakers-target-fourfold-jump-in-ev-sales-by-2027/
企業の非財務開示情報にとって懸念事項であった2つの国際標準団体は、共同で相互運用ガイダンスを発行しました。IFRS財団と欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)は、ESRS-ISSB基準相互運用性ガイダンスの発行を発表しました。このガイダンスは、ISSB標準とESRSの両方を適用する企業向けに、それぞれの標準による複雑な開示基準や、片方の基準だけが持つ断片化された要求事項を明確にし、重複を避け、報告時の負担を軽減するように設計されています。このガイダンスには両方の持続可能性報告基準の遵守を目指す企業へのサポートも含まれています。それぞれの基準は今後数年間で数万社の企業に対するサステナビリティ報告義務の基礎となると予想されており、多くの企業が両方の遵守を義務付けられるか、或いは遵守することを選択する可能性があります。
▶ https://www.efrag.org/News/Public-515/IFRS-Foundation-and-EFRAG-publish-interoperability-guidance?AspxAutoDetectCookieSupport=1
インドのエネルギー・環境・水評議会(CEEW)はインドのアルミニウム産業を排出量ネットゼロにする為の研究報告書を発表しています。インドのアルミ産業をネットゼロにする為には約290億ドルという巨額な設備投資が必要となります。インドでは主要産業を脱炭素化する為のシミュレーションが行われた事が無く、ほぼ初の試みとなっています。インドのアルミニウム産業の二酸化炭素排出量は2020年に7,700万トンに達しており、その殆どは工場で使用される電力から来ています。これを再生可能エネルギーに置き換え、更にネットゼロにする場合には現在より生産コストが61%高くなると見積もっています。地政学問題でロシアと中国製のアルミニウムへの規制が欧米で徐々に進む中、インド産のアルミニウムは注目されていますが、炭素排出による制限を受ける事が問題として上がっています。この報告書は、そうした背景によりインド政府がグリーンアルミに本格的に動き出す第一歩と見られています。
▶ https://www.ceew.in/press-releases/net-zero-sustainable-aluminium-industry-will-need-usd-29-billion-capex-in-india
サウスチャイナモーニングポスト紙は、中国の鉄鋼業が危機的な状況の手前である事を伝えています。過剰生産能力の懸念は既知の事実ですが、国内のインフラ投資の減速や欧米の鉄鋼輸入規制だけでなく、最近はチリやベトナムまでが輸入制限の調査を検討し始める等、行き場を失う可能性が出てきました。中国の鉄鋼業は主に、不動産、インフラ建設、工場設備や改修等の投資によって支えられてきました。しかし、それらが全て低迷する中、ダンピングによる輸出攻勢が世界の鉄鋼業を混乱させている状況を生み出しています。オックスフォード・エコノミクスによればQ1の中国の鉄鋼製品の輸出量は前年同期比で13%増加し、パンデミック前の水準を80%上回っています。これは供給過剰に起因するダンピング行為の証拠と警告しています。「他国の鉄鋼製品に対する保護貿易の激化は、中国の鉄鋼輸出に課題をもたらし、業界の急速な転換点になる可能性がある」と同紙は警告しています。
▶ https://www.scmp.com/economy/global-economy/article/3261344/chinas-steel-industry-risks-falling-cliff-overcapacity-concerns-point-end-era
先週の米国の雇用統計を機に米経済の先行きに対する懸念が再び起こっています。著名資産運用会社の専門家は顧客へのメモの中で懸念を説明し、又Black Rockは投資家に保有する米ドル現金の一部を米ドル債権に移すよう薦めています。4月の債権市場が上昇した事も要因ですが、一部では年末迄に「景気悪化による利下げ」が織り込まれた事も原因の1つです。インフレと好調な経済指標により高金利が続き、最近まで利下げ観測が後退していましたが、雇用統計を受けて著名投資家による米景気のハードランディング論が再燃しています。特に米ドルはQ3から年末迄に変化する傾向が指摘され始めています。
▶ https://watcher.guru/news/brics-blackrock-issues-huge-us-dollar-warning
自動車がEVに移行する中で燃料関連の税金が世界で約1,100億ドル不足する為、各国政府は新たなEV課金を検討し始めています。これはEV所有者のコストを増加させる事になります。既に英国、NZ、イスラエル、米国の多くの州はガソリンとディーゼルに掛かる税金の減少を補う為、EVやハイブリッド車に対する税変更や課徴金を導入しています。それらの課税は登録料金、走行距離に応じた道路使用料、公共充電ポイントの税金等、様々なものがあります。昨年の世界の燃料税の減収額の60%を占めたのは、燃料税が高い欧州でした。米国ではEVに登録料金を課してもガソリン税の減収を補えず、州や連邦当局が直面する税収課題は解決の見込みが無い状況です。米国のハイウェイ信託基金は政策の変更がなければ2028年迄に債務超過になると予測しています。普及を目指し税優遇と手厚い補助金制度を整えてきたEVですが、税収減とそれを補う新たな課金により、所有者の負担は今後増える事になります。その為、EV普及にブレーキが掛かる事を懸念し、課金に対し環境団体が反対しています。
▶ https://www.ft.com/content/9e4e38af-acb6-426b-9cd5-5f7e938d4443
豪州のCSIROは複数の研究機関と共同でインドにおけるプラスチック廃棄物を大幅に削減する為のロードマップを発行しています。このロードマップは、インドが2035年迄に次の事をする必要が強調されています。1)プラスチックの2/3はリサイクルが可能であること、2)使い捨てプラスチックは段階的に廃止すること、3)プラスチック廃棄物を再資源化し、温室効果ガスの排出量を20~50%削減すること。インドでは毎日最低26,000トンのプラスチック廃棄物が発生しており、この量は米国とEUを除けば他のどの国よりも多く、大きな社会問題となっています。インド政府は本格的にプラスチック廃棄物削減に取り組む予定です。
▶ https://bit.ly/3WvPXGR
イタリア政府は農地を新たに太陽光発電施設として利用する事を禁止しました。新しい法令は現在承認中のプロジェクトには適用されません。農地の太陽光発電施設への転用は過去より問題となってきました。表向きは農地の「砂漠化」を避けることですが、実態としては大手投資ファンドによる投機により土地のメンテナンスが行われず、農地が再生不可能になる事を防ぐ事にあります。イタリア農業協会はこの禁止措置を歓迎しています。しかし太陽光発電業界は反対しています。再エネは補助金と電力課金が長期に保証される為、農業従事者に良いオファーを出す大手投資ファンドが世界中で乱立し問題となっていました。今回やっとイタリア政府も重い腰をあげたようです。
▶ https://www.pv-magazine.com/2024/05/07/italy-bans-pv-from-agricultural-land/
カンボジアは中国から17億ドルの資金提供を受けて、プノンペン港からタイ湾まで運河を拡張する計画を発表しています。この運河拡張によりカンボジアからベトナムの港を経由する輸送は約70%も削減される事になります。この拡張はベトナムのメコンデルタ地域のコメの生産、流域の住民、環境まで影響を与える可能性があると指摘されています。カンボジア政府は運河によりベトナムの港を通る輸送が削減され、経済的利益があると述べています。しかしベトナム政府は流域に住む何百万人の雇用や住居、コメの一大産地である脆弱なメコンデルタへの環境影響に強い懸念を示しています。全長180kmのこの運河はカンボジアとその周辺国の流通を変える可能性があります。専門家は中国の資金提供は中国の軍艦が上流にアクセスする為と見ていますが、カンボジア政府は否定しています。このプロジェクトによりベトナムとカンボジアの間の緊張関係が増すと見られています。
▶ https://www.asiafinancial.com/cambodian-plan-for-china-funded-mekong-canal-worries-hanoi
米国政府はインテルやクアルコム等のコンピュータチップメーカーが中国の華為技術(ファーウェイ)にチップを販売する許可(ライセンス)を廃止しました。クアルコムは5G技術をファーウェイにライセンス供与しています。ファーウェイは昨年、自社のHiSilicon部門が設計した5Gチップの使用を開始しました。アナリストはこのチップが米国の制裁に違反して製造されたと批判していました。ファーウェイは昨年8月にSMIC製の高性能チップを搭載した新型携帯電話を発表し、業界に衝撃を与えました。この携帯電話の成果でファーウェイのスマートフォン販売は2024年の最初の6週間で前年比64%も増加していました。既に米国議会(特に共和党)は相当タカ派になっており、今後チップだけでなく様々な貿易に影響が出ると思われます。インテルやクアルコムは中国での利益が大きい事から最近まで米政権も妥協してきましたが、この措置は大きな転換点とも言えます。
▶ https://www.bbc.co.uk/news/articles/cgxwpql2e82o
英国自動車製造貿易協会は4月の英国の新車登録台数を発表しました。伸び率は1%増に留まりましたが21ヵ月連続で増加しました。EVの市場シェアは前年の15.4%から16.9%増加しています。しかしEVの購入者は税制上の優遇措置を受けられるレンタカー会社等のフリート業者が大半を占め、販売されたEVの84%以上は、フリートによる購入となっています。インセンティブの無い一般消費者のEV購入はEV販売全体の僅か16%程度に留まり、自動車メーカーは危機感を増しています。英国一般人が急速にEVの購入を控え始めており、自動車メーカーにとって大きな問題になりつつあります。この傾向は、欧州全土で同じようなものとなっています。
▶ https://www.smmt.co.uk/2024/05/new-car-market-growth-continues-despite-declining-private-demand/
欧州内では中国製EVに対する入り混じった方針が交錯しています。欧州委員長のフォンデアライエンは、キリスト教民主同盟の党大会で「中国が巨額の補助金を出したEVをEU域内市場に氾濫させることを阻止する必要がある」と述べ、改めて中国EVへの制限を強調しました。しかし中国市場抜きでは事業が成り立たないBMWのCEOはすぐさま反応し「EUによる中国EVへの調査は自由貿易に反する」と警告しています。ドイツは首相と産業代表が訪中し、最近ではフランス大統領も中国の首席と会い、更にフランスはプーチン大統領の就任式にG7で唯一代表を送る等、それぞれ足元の景気悪化と産業界からの突き上げで、欧州政府との歩調が乱れています。来月の欧米議会選挙結果次第では様々な方針が変わりそうです。
▶ https://finance.yahoo.com/news/bmw-says-eu-probe-china-110017929.htm
欧州委員会が管理するコペルニクス気候変動庁(C3S)は、今年4月が産業革命以来最も暑い4 月であったと報告しています。また過去12ヵ月間の平均気温も高く、産業革命以前の1850年から1900年の平均を1.61℃上回りました。「多くの科学者は、気候システムに変化が起こる可能性があると考えている」とC3Sの上級気候科学者は述べています。1.61℃は、パリ協定の目標である1.5℃を既に上回っています。
▶ https://climate.copernicus.eu/copernicus-global-temperature-record-streak-continues-april-2024-was-hottest-record
中国当局はバッテリーの過剰生産を抑制する方針を取るようです。中国工業情報化省は電池仕様を定めた一連の新たな規則草案を発表し、企業に対し「単に生産能力を拡大するだけ」の新規工場建設を控えるよう勧告しました。草案文書は工業情報化省のHP内で政策文章の告示として掲載されており、業界からのフィードバックの対象となります。中国の電池生産能力は既に世界需要を上回っており、供給過剰への懸念が高まっています。新しい規則案はバッテリーの品質を向上させて不必要な生産拡大を阻止することを目的としている、と伝えられています。
▶ https://www.miit.gov.cn/zwgk/zcwj/wjfb/gg/art/2024/art_16f93de76eac4243abdd4baea5128cd2.html
欧州廃棄物管理協会(FEAD)はリサイクルの経済性を促進する為にリサイクル材料の産業需要を促進するマニフェストを発表しました。このマニフェストは欧米議会選挙に先立ち作成され、欧州政府に「循環物質使用法(CMUA)」の制定を求めています。提案されている CMUAは法的拘束力のある目標を2つ定めています。1つ目は循環物質使用率(原材料や製品に含まれるリサイクル材の比率)の目標を2030年迄に25%、2040年迄に30%、2050年迄に35 %とする事。2つ目は全ての廃棄物のリサイクル率を最低75%とする事です。FEADの提案は欧州の産業が「リサイクル材料」の利用を推進し、その為にイノベーションを進展させえるという考えに基づいています。現状では資源循環はリニアエコノミーの資源利用に対し効率やコスト面で劣る為、法制度が無ければ進展が難しく、欧州では製品へのリサイクル材の含有量を法的に定めるよう、廃棄物管理業界がロビー活動を行っています。
▶ https://fead.be/position/fead-2024-manifesto/
インドの鉄鋼大臣は政府のインフラ政策により、インドの鉄鋼需要は今後数年間二桁の伸び率で推移するとの見解を示しました。インドは2023-2024会計年度で需要が13-14%増加しています。2023-2024年度の粗鋼生産量は約1億4,500万トン、消費量は1億3,600万トンでした。引続き対外投資や国内インフラ需要が好調で今後も鉄鋼生産と需要の両方での伸びが期待できる事が改めて強調されています。
▶ https://www.business-standard.com/india-news/india-s-steel-demand-boom-to-continue-to-grow-at-10-over-next-few-years-124050800445_1.html
欧州最大の経済大国であるドイツ経済の低迷が続いています。昨年末、今年のドイツ経済は2023年より良くなると予想されていましたが多くの指標が状況の悪化を示しています。欧州委員会は当初2024年のドイツの経済成長見通しを1.1%としていましたが、2度下方修正し、それぞれ0.8%、直近では0.3%となりました。IMFも4月に下方修正し、1月時点での予測0.5%から0.2%としました。ドイツ当局もGDP成長率予想を従来の1.3%から0.2%に大幅に下げています。専門家は世界の地政学と経済に次の「ブラック・スワン」が現れた場合(それらは中東情勢の激化、原油価格の高騰、新たな世界的な物流問題)、ドイツのマクロ経済指標は2024年に「マイナス成長」に陥る可能性が高いと警戒感を強めています。鉄鋼産業の状況も悪く、過去2年連続で減少しており、この状況は今年も続くと見られています。
▶ https://www.reuters.com/markets/europe/german-economy-likely-stagnate-2024-iw-forecasts-2024-05-08/
白金族金属(PGM)及び特殊化学品の世界大手Johnson Mattheyは今年、プラチナ、パラジウム、ロジウム等の全てのPGMが供給不足になると報告しています。特にプラチナは供給不足量が2023年の51万8,000オンスから今年は59万8,000オンスになり、過去10年で最大の不足になるとの見通しを示しています。パラジウムの不足量は35万8000オンス(2023年は102万オンス)、ロジウムの不足量は6万5,000オンス(2023年は12万5,000オンス)と予測しています。企業の在庫も一掃しつつあり、価格上昇のトリガーになる可能性があります。
▶ https://www.reuters.com/markets/commodities/platinum-set-biggest-deficit-decade-2024-says-johnson-matthey-2024-05-08/