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NEWSCONの気になるNEWS(2024年3月第4週)
インドネシア政府はニッケル価格の上限を1,800ドルに抑える施策を実施する可能性があります。インドネシアはニッケルの国際価格に強い影響力を持ちます。最近、インドネシアでニッケル鉱山別の生産割当の承認が遅延し供給懸念が起こり、ニッケル価格が上昇しました。この遅延は3月末迄には解消される予定です。政府は国際的なシェアの維持と価格をコントロールする優位性を維持する為にLME価格を1トン当たり1万8,000ドル以下に維持するよう供給をコントロールする意図を示しています。この措置は他国の鉱山の反発を起こしています。しかしインドネシアは産油国+石炭利用の多い国でコスト競争力が圧倒的にある為、国際的なニッケル市場のコントロールを維持したい意向が強いようです。
▶ https://markets.businessinsider.com/news/stocks/indonesia-aims-to-cap-nickel-prices-at-18000-1033182131
ハーバード・ビジネス・レビューが「なぜEV市場は停滞したのか?」という分析論文を掲載しているので紹介します。内容は学術的で論文調なので難解です。要点を纏めるとイノベーションの採用には段階があり、今回のEV化はメーカーも政策担当者も段階を踏まず、一気にICE(内燃機関車)からEVへの移行を推進した為、アーリーアダプター(初期に採用する人々)からアーリーマジョリティー(初期の大量採用者)の間に大きな「壁」ができ、それに阻まれたというものです。現在、消費者はプレミア価格を払ってでもハイブリッドやプラグインハイブリッドを買う傾向にあり、それらは「壁」を埋める役割を果たしています。消費者は値下げ(補助金)と政府の規制だけではEVを購入しない事が証明されています。提言としてEV化を進めたければ、より多くのHVやPHVを利用できる仕組みを推進する事が結果的に近道となるとしています。
▶ https://hbr.org/2024/03/why-has-the-ev-market-stalled
中東のお金がグリーンアルミに動いています。アブダビの投資会社ムバダラとドバイの投資法人が所有するエミレーツ・グローバル・アルミニウム(EGA)は、ドイツの中堅アルミ鋳造企業Leichtmetall Aluminium Giessereiを買収します。Leichtmetallは製造の80%をリサイクル材から得ており、再生可能エネルギーを利用し、年間3万トンのアルミニウムビレットを生産しています。EGAはアブダビとUAEが共同所有する企業としては最大のものです。欧州では炭素国境調整メカニズム(CBAM)がスタートした事もあり、海外企業による域内炭素集約型企業の買収の流れが加速すると見られていましたが、それが実際に起こりました。1事例ですが象徴的な出来事です。今後もこの傾向は続く可能性があり、EU政府は新たな投資規制と調査を行う事を約束しています。
▶ https://media.ega.ae/ega-to-acquire-leichtmetall-european-producer-of-high-strength-recycled-aluminium/
1兆5300億ドルの資産管理企業である英国の保険&資産運用会社大手Legal and General(L&G)は中国での営業許可取得を延期し、人員を大幅に減らす事が明らかになりました。理由はいくつかあり、中国の株式市場が長期低迷し回復の兆しが無い事、不動産セクターと地方政府の債務危機の深刻化、資本流出、西側諸国との政治的緊張の高まり、更にアジアの金融ハブの1つである香港で国家安全保障条例(基本法第23条)が制定された事も大きな理由となっているようです。第23条により、欧米大手企業は一斉に中国事業との機密に関する情報網を分離しており、今後、事業の縮小に拍車が掛かる事が予想されています。L&Gは象徴的な例となっています。昨年、中国に大きな投資を相次いで行ったドイツ企業群は難しい舵取りになる事が早くも指摘され始めています。
▶ https://www.reuters.com/business/finance/uks-legal-general-shelves-china-business-licence-plan-cuts-headcount-sources-say-2024-03-22/
「持続可能」として販売されている世界のパッシブファンド(インデックスファンド:指数に連動するファンド)の3分の2以上は、実は結果として化石燃料産業に資金を提供している事が判明しています。国際エネルギー機関は、この流れは地球温暖化を1.5度に抑えるパリ協定と矛盾していると述べています。数日前、米テキサス州の教育委員会はブラックロック社との投資終了を発表し、85億ドルの資金を引き出しています。ESGは最近2つの点で大きな問題を抱えています。1つはグリーンウォッシングで、もう1つは投資家へのリターンの少なさです。欧米政府は民間の資金(投資)によるエネルギー転換とサーキュラ―エコノミーを目論んでいる為、ESG投資からの資金の流出は大きな問題です。特に欧州では民間資金の欠如により多くのPJTの遅延や一時停止が問題となって久しいです。その様な状況でESGのインデックスファンドの3分の2以上が化石燃料に投資しているという事実は、今後、問題を更に悪化させるものとなります。
▶ https://finance.yahoo.com/news/most-passive-funds-labeled-esg-000100541.html
欧州資本としては最大となるノースボルトのドイツLIBギガ工場が着工しました。2022年春に計画が発表されましたが、エネルギーや材料コストの上昇により延期が続いてきました。昨年12月に欧州委員会やドイツ政府からの資金援助の約束を取り付け、やっと工場建設に乗り出しました。新工場でのセルの組立は2026年に計画され、最終拡張は2029年に完了する予定です。投資総額は45億ユーロと膨大な額で、補助金の総額は9億200万ユーロ、その内7億ユーロが補助金、2億200万ユーロが融資保証となっています。欧州資本のLIB工場が果たして成功するのか、1つの試金石となりそうです。スウェーデン政府のバックアップもあり華々しくスタートしたノースボルトですが、もう何年も宣伝と資金ばかりが先行し、価格や性能で競争力のあるLIBを市場に出していないという実態があります。
▶ https://www.electrive.com/2024/03/25/northvolt-breaks-ground-for-german-battery-factory/
中国の2月の鉄スクラップ輸入総量は1万1977トンで、2021年11月以来の最低水準となりました。1-2月の鉄スクラップ総輸入量は合計5万1280トンで前年同期比5万8463トン(53.3%)の大幅な減少となっています。2月の日本からの鉄スクラップ輸入量は5,507トンで前年比79.2%減となりました。しかし1-2月の日本からの合計輸入量は2万8815トンで1-2月の鉄スクラップ輸入総額の約56.2%を占めました。つまり全体としては日本からが半分以上を占めている事になります。2月の輸入量の減少は、旧正月の生産停止に加えて、溶銑に対する鉄スクラップの費用対効果の減少、更に中国鉄鋼メーカーの需要低迷が原因と分析されています。やはり気になるのは溶銑に対する価格優位性の低下で、この傾向が続けばアジアの鉄スクラップ価格を抑える動きになる可能性があります。
▶ https://www.mysteel.net/news/5051117-gacc-chinas-jan-feb-ferrous-scrap-imports-slump-53-yoy
デンマークの海運大手マースク(MAERSK)はEUが防衛の為に艦船の派遣を行っているにも関わらず、紅海海域を迂回したルートを継続する事を発表しています。EU軍により他の海運会社は紅海の航行を継続、又は再開を計画しています。しかしマースクは紅海を利用しない旨を発表しました。価格下落を抑える動きになりそうです。
▶ https://www.maersk.com/news/articles/2024/03/19/transforming-pharma-supply-chains
2月の世界の粗鋼生産量ですが、注目すべきはDRI(直接還元鉄)の生産量で2月は前年同月比で7.4%増加、1億3,551万トンまで伸びています。2023年の世界のDRI生産量は2022年比7.4%増加し、インドがトップで総生産量の36%以上を占め、4,933万トン(前年比16.7%増)でした。2030年迄に世界のDRI生産量は基準年の2019年と比較して56.2%増加し、2022年と比較しても40%増、最大1億7,500万トンに達すると予想されています。DRI生産の最大の伸びは、欧州とMENA諸国(中東・北アフリカ地域の国々)で見込まれています。鉄鋼製造のCNに伴い天然ガスを利用したDRIは、鉄スクラップと並び重要な原材料の1つとなると見込まれています。
▶ https://worldsteel.org/media-centre/press-releases/2024/february-2024-crude-steel-production/
いわゆる「バフェット指標」が184%にまで上昇、米国の株価が過大評価されており、大幅な下落が起こり得る状況を示唆し始めています。バフェット指標が200%を超えた2022 年初頭、市場に警告が発せられ、S&P500とハイテク株の多いナスダック総合指数は警告以後(200%を超えて以降)12ヵ月間でそれぞれ19%と33%下落しました。疑念もあったバフェット指標の評価ですが、正しさが証明された例となりました。現在AI株とFRBの利下げ観測から米国の株価が熱狂していますが、やや買われ過ぎという兆候が出ており、警告を発する著名投資家が増えつつあります。
▶ https://www.businessinsider.com/warren-buffett-indicator-stock-market-outlook-bubble-crash-ai-tech-2024-3?utm_source=Iterable&utm_medium=email&utm_campaign=campaign_Insider%20Today,%20March%2025,%202024
米国のエネルギー省は幾つかの産業プロジェクトを発表しています。特に産業実証プログラムではリサイクルを含む銅とアルミの脱炭素化の5つのプロジェクトを選択し、計9億ドル以上の投資を行います。銅とアルミは米国でも重要な原材料に指定されています。米国でも国家の援助による重要な原材料確保の動きは継続しています。
▶ https://www.energy.gov/oced/industrial-demonstrations-program-selections-award-negotiations
更にバッテリーを取り扱うエンジニアを養成する為、米国労働省(DOL)と連携して、バッテリー・マシン・オペレーターの登録に関する「バッテリー労働力イニシアチブ(BWI)国家ガイドライン」のリリースを発表しました。
▶ https://www.energy.gov/articles/doe-and-dol-announce-new-effort-support-and-expand-americas-battery-workforce
米国エネルギー省(DOE)は、米国の大手鉄鋼メーカーのクリーブランド・クリフス社のCN(カーボンニュートラル)化に向け、最大5億7,500万ドルの巨額な資金提供を行います。この資金提供はオハイオ州の一貫製鋼複合施設とペンシルベニア州の電気炉向けの設備に対して行われます。同社はオハイオ州の既存の高炉を年間250万トンの「水素対応」(または天然ガス燃料)のDRIプラントと2基の電炉に置き換える計画を既に発表しています。またペンシルバニア州の高温スラブ再熱炉2基を、4基の電気誘導スラブ再熱炉に置き換え、電磁鋼板の生産品質を維持しながらCNを推進します。この動きは今後の高品位製品向けの品質維持とCNを並立させるトライとして注目に値します。
▶ https://www.clevelandcliffs.com/news/newsroom#news-article-1
中国の余剰生産能力によるダンピングはアルミ箔にも波及し始めています。インド政府の商務省の調査部門である貿易救済総局は中国製のアルミ箔のダンピングの調査を開始しました。インドの同業者からの苦情を受けての対応となります。ダンピングによりインド国内企業に損害を与えた事が判明した場合、貿易救済総局は中国からのアルミ箔に反ダンピング関税を課す可能性があります。この商材もインド市場から制限が掛かると、他のアジア諸国で連鎖のドミノ効果がありそうです。
▶ https://www.firstpost.com/world/is-china-dumping-cheap-aluminium-foil-in-india-theres-prima-facie-evidence-13752843.html
25日にEU廃棄物輸送規則は立法の最終承認が行われました。4月に官報に掲載後、その20日後に正式に発効します。EU政府が選挙前に立法を急いだ1つの法案です。非OECD諸国への全てのプラスチック廃棄物の輸出を2年半で段階的に禁止、非OECD諸国とOECD諸国への廃棄物の輸出に関する義務と基準の強化、処分予定の廃棄物のEU域内への輸送は例外的な状況下のみの許可、及び廃棄物の輸送に関する情報とデータのデジタル化、が主な変更となります。最終テキストが公開されていますが、欧州リサイクル産業連合(EuRIC)は「残念である」旨のプレスリリースを発行しています。理由はリサイクルされた2次原料の自由な輸出が出来なくなる為です。世界で最も野心的なこの規則がリサイクル産業に与える影響は興味深い社会実験とも言えます。
▶ https://euric-aisbl.eu/resource-hub/press-releases-statements/final-adoption-of-revised-eu-waste-shipment-rules-2
低品位のWEEEのリサイクルは、リサイクル産業だけでなく全世界の課題です。様々な方法が研究されています。イリノイ大学の研究者は今月、WEEEから低エネルギーで金及び白金属類を分離する技術を開発し、Nature Chemical誌に掲載されています。有機溶媒と触媒を利用しWEEEを溶解後に3つの連続した抽出電極ブロックを利用してリサイクルするものです。3つの抽出電極は、それぞれ酸化用、浸出用、還元用となります。この研究は米国エネルギー省から援助を受けて、一部の技術は特許を申請しています。
▶ https://chbe.illinois.edu/news/stories/65472
中国が銅を「戦略備蓄」し始めている可能性が指摘されています。在庫量は昨年12月末の30,905トンから2月末までに285,090トンに大幅に増加しています。この増加は季節要因を考慮しても2020年以降で最も大きなものとなっています。更に在庫量にも関わらず輸入量も増加しています。銅スクラップに関しても輸入量が前年比で11%以上伸びています。昨年末に南米を中心に複数の銅鉱山が様々な政治問題から予測生産量を引き下げました。また世界中の多くの銅鉱山が耐用年数の終わりに近づき、鉱石の品質低下が顕著で、低品位の鉱石の採掘が増加し始めています。加えてパナマの銅鉱山の閉鎖と新規鉱山プロジェクトが激減している事から急激に供給圧迫が指摘され始めました。中国が取引所以外の場所にどの程度の銅を在庫しているかは分からない為、実際に中国が戦略的な備蓄を行っているかどうかは不確実です。しかし数字がそれを示し始めているとの予想が出ています。世界の銅製錬で支配的地位にある中国が銅の備蓄を推進すれば、市場に与えるインパクトは大きなものとなります。銅価格の上昇は多くの欧米のグリーンプロジェクトに影響を与えます。こうした動きもあり3月中旬から世界のファンドマネージャーが銅の購入を急ぎ始めています。
▶ https://www.telegraph.co.uk/business/2024/03/27/china-stockpiling-copper-west-net-zero/
米国環境保護庁(EPA)から発表された排ガス規制の計画発表を受け、8つの州が2035年からガソリン車の販売を全面的に禁止する計画を立てています。カリフォルニア州(既に実施済み)、ロードアイランド州、メリーランド州、マサチューセッツ州、ニュージャージー州、ニューヨーク州、オレゴン州、ワシントン州がそれらとなります。EPAから発表された排ガス規制では2032年迄の規制を発表しています。今回の流れはそれに合わせた動きとなっています。ただし足元の2月の販売実績ではディーラーに車が納車されてから販売されるまでの平均日数はHV車で25日以内、ガソリン車は52日、EVは72日となっており、人気に陰りが見えている事は明らかになっています。EPAの規制発表後、米国では多くのドライバーは2032年の最も厳しい最終規制実施後にEVに乗り換える代わりに、古い車を長く使い続ける可能性が高い事が指摘されています。こうした動きは米政府のEV計画に支障をきたし、自動車メーカーに大きな打撃を与える可能性が高いと分析されています。
▶ https://www.dailymail.co.uk/yourmoney/cars/article-13237051/ban-gas-cars-biden-evs-states.html
BYDが2023年の決算を発表し、世界販売台数302万台(内、PHV車144万台)、純利益42億ドル(前期は23億ドル)と大幅に伸びました。しかし第4四半期利益は18.6%増に留まり、2022年第1四半期以来の低水準でした。これは欧米での販売鈍化とEV全体の余剰生産能力に伴う価格競争の激化によるものと分析されています。中国製EVのEUへの輸出は2024年の1-2月で19.6%減少しており、今後のEUによる中国EV産業の補助金の調査次第では更に影響が出ると見られています。こうした中、中国政府は米国のインフレ削減法(IRA)によるEV車への「差別的な補助金」をWTOに提訴しています。それだけ、中国側も苦しくなっているという実態があるようです。
▶ https://finance.yahoo.com/news/byd-profit-soared-80-chinese-164608624.html
大連商品取引所の鉄鉱石5月渡し契約は、2日連続で大幅下落となっています。月曜日に3.7%、火曜日に3.5%の下落となりました。これは鉄鋼消費量が予想を下回り、市場センチメントが冷え始めた為と伝わっています。鉄鋼需要は前月比では増加しましたが、前年同期を下回り、短期的に需要が増加する余地は限られています。中国政府は債務に対処するために地方政府の投資プロジェクト支出を抑制しています。不動産プロジェクトの不振は拡大しており、今年も引き続き不動産分野での鉄鋼需要の減少は継続されると見込まれています。その為、鉄鋼価格の下落がどこで落ち着くのかが焦点になりそうです。
▶ https://www.mysteel.net/market-insights/5051279-pessimism-casts-shadow-over-chinas-iron-ore-market-again
ニッケル価格は2024年もレンジ内かやや下落する可能性が分析されています。世界のニッケル市場は2023年から2027年まで供給過剰が継続し、2027年末の時点で2万7000トンの供給過剰が維持されると見られています。供給過剰は中国の精製能力の拡大とインドネシアの増産です。2021年以降、インドネシアのニッケル生産量は250%増という驚異的な伸びとなっています。一部で減産の予測が出ましたが、現地調査の結果、生産量は今後も供給過剰状態となる程度に維持されるようです。
▶ https://agmetalminer.com/2024/03/27/experts-predict-nickel-price-drop/
ビル・ゲイツの関連団体が出資の1社である米国の新興企業エレクトラはプロトタイプの装置で排出ガスの殆ど出ない工程で鉄の製造に成功した事を発表しました。エレクトラの技術は数年前に開発されたばかりで、ゲイツが出資している事でも注目を集めています。電気的なエネルギーを利用した化学反応と湿式冶金工法を組み合わせた工法で、低品位の鉄鉱石から銑鉄同等品を製造します。行程温度が60度Cでエネルギー利用が少ない事も特徴です。グリーンスチール専用の新興メーカーは現在、大規模施設製造の為に資金調達を活発化させており、スウェーデンのH2 Green Steelは最近16億ドルを調達しています。エレクトラ社も資金確保に向けて積極的にマイルストーンを発表しています。
▶ https://www.electra.earth/media/
米国の財務長官ジャネット・イエレン氏は、中国政府によるクリーンエネルギー産業への補助金の悪影響について中国政府に警告するつもりだと述べています。イエレン氏は近く中国を訪問する計画があるようです。MSNBCのインタビューで「中国は鉄鋼やアルミニウムの生産能力を過剰に構築したのと同じ様に太陽光パネル、EV、リチウムイオン電池を過剰生産しており、世界市場を歪め他の産業分野の雇用を損なっている。過剰生産能力は米国の労働者や企業だけでなく、中国経済の生産性や成長にもリスクをもたらす。私は中国に対して、この問題に対処するよう強く求めるつもりです」と述べています。民主党に極めて近いMSNBCでのインタビューで中国を名指しで批判するというのは、選挙戦を意識したとも言えますが、今後も米中経済摩擦は悪化しそうです。
▶ https://www.voanews.com/a/yellen-warns-she-ll-confront-china-on-its-energy-subsidies-/7546754.html
BYDはベトナムでのEV工場建設を延期します。建設予定の工業団地管理者によるとBYDは自社の戦略とEV市場の減速により建設着工を遅らせる意向があるとの事です。ベトナム政府は昨年5月にBYDがベトナム北部のフート省にEVを生産・組み立てする工場を建設すると発表しました。BYDやテスラでも既に価格競争と過剰状態のEV市場に悩まされており、今後もメーカーによる計画の変更は続く可能性があります。
▶ https://cnevpost.com/2024/03/28/byd-slows-down-plans-ev-plant-vietnam-report/
▶ https://blog.gorozen.com/blog/the-norwegian-illusion
グリーン水素向けの電解槽メーカーの生産能力が余剰となり過ぎて問題化し始めています。電解槽メーカーは政府の水素戦略を見越し投資を急拡大させてきました。しかし実際の機械の発注は大幅に遅れており、「深刻な過剰生産能力」が顕著化しています。米国とEUの補助金が予想よりも遅れていることが主な原因でグリーン水素のプロジェクト開発業者は2023年に予想されていた大規模な発注を行いませんでした。電解槽メーカーは高額な投資をしたにも関わらず殆ど収入が無い状況です。しかし更に多くの電解槽メーカーが市場に殺到しており、現在100社以上が電解槽の製造を計画しています。グリーン水素、洋上風力発電、バイオマス等、政府主導の再生可能エネルギーの推進は欧州で様々な問題が顕著化してきました。
▶ https://www.hydrogeninsight.com/electrolysers/severe-overcapacity-the-global-supply-of-electrolysers-far-outstrips-demand-from-green-hydrogen-projects-bnef/2-1-1618327
ロシアのウクライナ侵攻以来、ロシアから撤退した外国企業の評価損や売上損失は1,070億ドル以上になった事が判明しています。この巨額な損失は昨年8月の前回集計から30%以上増加しています。これは戦争による産業界への経済的打撃の規模を浮き彫りにすると共にロシア経済から西側の投資や専門知識が一斉に引き上げている実情を反映しています。未だにロシアに残る企業は今後、制裁が厳格化するにつれて、より大きな損失を被る可能性があります。ロシアに投資した欧州企業は大損害を受けており、日本企業も今後、地政学を本格的に考慮する必要に迫られます。
▶ https://www.euractiv.com/section/economy-jobs/news/foreign-firms-losses-from-exiting-russia-top-107-billion/
▶ https://markets.businessinsider.com/news/stocks/indonesia-aims-to-cap-nickel-prices-at-18000-1033182131
ハーバード・ビジネス・レビューが「なぜEV市場は停滞したのか?」という分析論文を掲載しているので紹介します。内容は学術的で論文調なので難解です。要点を纏めるとイノベーションの採用には段階があり、今回のEV化はメーカーも政策担当者も段階を踏まず、一気にICE(内燃機関車)からEVへの移行を推進した為、アーリーアダプター(初期に採用する人々)からアーリーマジョリティー(初期の大量採用者)の間に大きな「壁」ができ、それに阻まれたというものです。現在、消費者はプレミア価格を払ってでもハイブリッドやプラグインハイブリッドを買う傾向にあり、それらは「壁」を埋める役割を果たしています。消費者は値下げ(補助金)と政府の規制だけではEVを購入しない事が証明されています。提言としてEV化を進めたければ、より多くのHVやPHVを利用できる仕組みを推進する事が結果的に近道となるとしています。
▶ https://hbr.org/2024/03/why-has-the-ev-market-stalled
中東のお金がグリーンアルミに動いています。アブダビの投資会社ムバダラとドバイの投資法人が所有するエミレーツ・グローバル・アルミニウム(EGA)は、ドイツの中堅アルミ鋳造企業Leichtmetall Aluminium Giessereiを買収します。Leichtmetallは製造の80%をリサイクル材から得ており、再生可能エネルギーを利用し、年間3万トンのアルミニウムビレットを生産しています。EGAはアブダビとUAEが共同所有する企業としては最大のものです。欧州では炭素国境調整メカニズム(CBAM)がスタートした事もあり、海外企業による域内炭素集約型企業の買収の流れが加速すると見られていましたが、それが実際に起こりました。1事例ですが象徴的な出来事です。今後もこの傾向は続く可能性があり、EU政府は新たな投資規制と調査を行う事を約束しています。
▶ https://media.ega.ae/ega-to-acquire-leichtmetall-european-producer-of-high-strength-recycled-aluminium/
1兆5300億ドルの資産管理企業である英国の保険&資産運用会社大手Legal and General(L&G)は中国での営業許可取得を延期し、人員を大幅に減らす事が明らかになりました。理由はいくつかあり、中国の株式市場が長期低迷し回復の兆しが無い事、不動産セクターと地方政府の債務危機の深刻化、資本流出、西側諸国との政治的緊張の高まり、更にアジアの金融ハブの1つである香港で国家安全保障条例(基本法第23条)が制定された事も大きな理由となっているようです。第23条により、欧米大手企業は一斉に中国事業との機密に関する情報網を分離しており、今後、事業の縮小に拍車が掛かる事が予想されています。L&Gは象徴的な例となっています。昨年、中国に大きな投資を相次いで行ったドイツ企業群は難しい舵取りになる事が早くも指摘され始めています。
▶ https://www.reuters.com/business/finance/uks-legal-general-shelves-china-business-licence-plan-cuts-headcount-sources-say-2024-03-22/
「持続可能」として販売されている世界のパッシブファンド(インデックスファンド:指数に連動するファンド)の3分の2以上は、実は結果として化石燃料産業に資金を提供している事が判明しています。国際エネルギー機関は、この流れは地球温暖化を1.5度に抑えるパリ協定と矛盾していると述べています。数日前、米テキサス州の教育委員会はブラックロック社との投資終了を発表し、85億ドルの資金を引き出しています。ESGは最近2つの点で大きな問題を抱えています。1つはグリーンウォッシングで、もう1つは投資家へのリターンの少なさです。欧米政府は民間の資金(投資)によるエネルギー転換とサーキュラ―エコノミーを目論んでいる為、ESG投資からの資金の流出は大きな問題です。特に欧州では民間資金の欠如により多くのPJTの遅延や一時停止が問題となって久しいです。その様な状況でESGのインデックスファンドの3分の2以上が化石燃料に投資しているという事実は、今後、問題を更に悪化させるものとなります。
▶ https://finance.yahoo.com/news/most-passive-funds-labeled-esg-000100541.html
欧州資本としては最大となるノースボルトのドイツLIBギガ工場が着工しました。2022年春に計画が発表されましたが、エネルギーや材料コストの上昇により延期が続いてきました。昨年12月に欧州委員会やドイツ政府からの資金援助の約束を取り付け、やっと工場建設に乗り出しました。新工場でのセルの組立は2026年に計画され、最終拡張は2029年に完了する予定です。投資総額は45億ユーロと膨大な額で、補助金の総額は9億200万ユーロ、その内7億ユーロが補助金、2億200万ユーロが融資保証となっています。欧州資本のLIB工場が果たして成功するのか、1つの試金石となりそうです。スウェーデン政府のバックアップもあり華々しくスタートしたノースボルトですが、もう何年も宣伝と資金ばかりが先行し、価格や性能で競争力のあるLIBを市場に出していないという実態があります。
▶ https://www.electrive.com/2024/03/25/northvolt-breaks-ground-for-german-battery-factory/
中国の2月の鉄スクラップ輸入総量は1万1977トンで、2021年11月以来の最低水準となりました。1-2月の鉄スクラップ総輸入量は合計5万1280トンで前年同期比5万8463トン(53.3%)の大幅な減少となっています。2月の日本からの鉄スクラップ輸入量は5,507トンで前年比79.2%減となりました。しかし1-2月の日本からの合計輸入量は2万8815トンで1-2月の鉄スクラップ輸入総額の約56.2%を占めました。つまり全体としては日本からが半分以上を占めている事になります。2月の輸入量の減少は、旧正月の生産停止に加えて、溶銑に対する鉄スクラップの費用対効果の減少、更に中国鉄鋼メーカーの需要低迷が原因と分析されています。やはり気になるのは溶銑に対する価格優位性の低下で、この傾向が続けばアジアの鉄スクラップ価格を抑える動きになる可能性があります。
▶ https://www.mysteel.net/news/5051117-gacc-chinas-jan-feb-ferrous-scrap-imports-slump-53-yoy
デンマークの海運大手マースク(MAERSK)はEUが防衛の為に艦船の派遣を行っているにも関わらず、紅海海域を迂回したルートを継続する事を発表しています。EU軍により他の海運会社は紅海の航行を継続、又は再開を計画しています。しかしマースクは紅海を利用しない旨を発表しました。価格下落を抑える動きになりそうです。
▶ https://www.maersk.com/news/articles/2024/03/19/transforming-pharma-supply-chains
2月の世界の粗鋼生産量ですが、注目すべきはDRI(直接還元鉄)の生産量で2月は前年同月比で7.4%増加、1億3,551万トンまで伸びています。2023年の世界のDRI生産量は2022年比7.4%増加し、インドがトップで総生産量の36%以上を占め、4,933万トン(前年比16.7%増)でした。2030年迄に世界のDRI生産量は基準年の2019年と比較して56.2%増加し、2022年と比較しても40%増、最大1億7,500万トンに達すると予想されています。DRI生産の最大の伸びは、欧州とMENA諸国(中東・北アフリカ地域の国々)で見込まれています。鉄鋼製造のCNに伴い天然ガスを利用したDRIは、鉄スクラップと並び重要な原材料の1つとなると見込まれています。
▶ https://worldsteel.org/media-centre/press-releases/2024/february-2024-crude-steel-production/
いわゆる「バフェット指標」が184%にまで上昇、米国の株価が過大評価されており、大幅な下落が起こり得る状況を示唆し始めています。バフェット指標が200%を超えた2022 年初頭、市場に警告が発せられ、S&P500とハイテク株の多いナスダック総合指数は警告以後(200%を超えて以降)12ヵ月間でそれぞれ19%と33%下落しました。疑念もあったバフェット指標の評価ですが、正しさが証明された例となりました。現在AI株とFRBの利下げ観測から米国の株価が熱狂していますが、やや買われ過ぎという兆候が出ており、警告を発する著名投資家が増えつつあります。
▶ https://www.businessinsider.com/warren-buffett-indicator-stock-market-outlook-bubble-crash-ai-tech-2024-3?utm_source=Iterable&utm_medium=email&utm_campaign=campaign_Insider%20Today,%20March%2025,%202024
米国のエネルギー省は幾つかの産業プロジェクトを発表しています。特に産業実証プログラムではリサイクルを含む銅とアルミの脱炭素化の5つのプロジェクトを選択し、計9億ドル以上の投資を行います。銅とアルミは米国でも重要な原材料に指定されています。米国でも国家の援助による重要な原材料確保の動きは継続しています。
▶ https://www.energy.gov/oced/industrial-demonstrations-program-selections-award-negotiations
更にバッテリーを取り扱うエンジニアを養成する為、米国労働省(DOL)と連携して、バッテリー・マシン・オペレーターの登録に関する「バッテリー労働力イニシアチブ(BWI)国家ガイドライン」のリリースを発表しました。
▶ https://www.energy.gov/articles/doe-and-dol-announce-new-effort-support-and-expand-americas-battery-workforce
米国エネルギー省(DOE)は、米国の大手鉄鋼メーカーのクリーブランド・クリフス社のCN(カーボンニュートラル)化に向け、最大5億7,500万ドルの巨額な資金提供を行います。この資金提供はオハイオ州の一貫製鋼複合施設とペンシルベニア州の電気炉向けの設備に対して行われます。同社はオハイオ州の既存の高炉を年間250万トンの「水素対応」(または天然ガス燃料)のDRIプラントと2基の電炉に置き換える計画を既に発表しています。またペンシルバニア州の高温スラブ再熱炉2基を、4基の電気誘導スラブ再熱炉に置き換え、電磁鋼板の生産品質を維持しながらCNを推進します。この動きは今後の高品位製品向けの品質維持とCNを並立させるトライとして注目に値します。
▶ https://www.clevelandcliffs.com/news/newsroom#news-article-1
中国の余剰生産能力によるダンピングはアルミ箔にも波及し始めています。インド政府の商務省の調査部門である貿易救済総局は中国製のアルミ箔のダンピングの調査を開始しました。インドの同業者からの苦情を受けての対応となります。ダンピングによりインド国内企業に損害を与えた事が判明した場合、貿易救済総局は中国からのアルミ箔に反ダンピング関税を課す可能性があります。この商材もインド市場から制限が掛かると、他のアジア諸国で連鎖のドミノ効果がありそうです。
▶ https://www.firstpost.com/world/is-china-dumping-cheap-aluminium-foil-in-india-theres-prima-facie-evidence-13752843.html
25日にEU廃棄物輸送規則は立法の最終承認が行われました。4月に官報に掲載後、その20日後に正式に発効します。EU政府が選挙前に立法を急いだ1つの法案です。非OECD諸国への全てのプラスチック廃棄物の輸出を2年半で段階的に禁止、非OECD諸国とOECD諸国への廃棄物の輸出に関する義務と基準の強化、処分予定の廃棄物のEU域内への輸送は例外的な状況下のみの許可、及び廃棄物の輸送に関する情報とデータのデジタル化、が主な変更となります。最終テキストが公開されていますが、欧州リサイクル産業連合(EuRIC)は「残念である」旨のプレスリリースを発行しています。理由はリサイクルされた2次原料の自由な輸出が出来なくなる為です。世界で最も野心的なこの規則がリサイクル産業に与える影響は興味深い社会実験とも言えます。
▶ https://euric-aisbl.eu/resource-hub/press-releases-statements/final-adoption-of-revised-eu-waste-shipment-rules-2
低品位のWEEEのリサイクルは、リサイクル産業だけでなく全世界の課題です。様々な方法が研究されています。イリノイ大学の研究者は今月、WEEEから低エネルギーで金及び白金属類を分離する技術を開発し、Nature Chemical誌に掲載されています。有機溶媒と触媒を利用しWEEEを溶解後に3つの連続した抽出電極ブロックを利用してリサイクルするものです。3つの抽出電極は、それぞれ酸化用、浸出用、還元用となります。この研究は米国エネルギー省から援助を受けて、一部の技術は特許を申請しています。
▶ https://chbe.illinois.edu/news/stories/65472
中国が銅を「戦略備蓄」し始めている可能性が指摘されています。在庫量は昨年12月末の30,905トンから2月末までに285,090トンに大幅に増加しています。この増加は季節要因を考慮しても2020年以降で最も大きなものとなっています。更に在庫量にも関わらず輸入量も増加しています。銅スクラップに関しても輸入量が前年比で11%以上伸びています。昨年末に南米を中心に複数の銅鉱山が様々な政治問題から予測生産量を引き下げました。また世界中の多くの銅鉱山が耐用年数の終わりに近づき、鉱石の品質低下が顕著で、低品位の鉱石の採掘が増加し始めています。加えてパナマの銅鉱山の閉鎖と新規鉱山プロジェクトが激減している事から急激に供給圧迫が指摘され始めました。中国が取引所以外の場所にどの程度の銅を在庫しているかは分からない為、実際に中国が戦略的な備蓄を行っているかどうかは不確実です。しかし数字がそれを示し始めているとの予想が出ています。世界の銅製錬で支配的地位にある中国が銅の備蓄を推進すれば、市場に与えるインパクトは大きなものとなります。銅価格の上昇は多くの欧米のグリーンプロジェクトに影響を与えます。こうした動きもあり3月中旬から世界のファンドマネージャーが銅の購入を急ぎ始めています。
▶ https://www.telegraph.co.uk/business/2024/03/27/china-stockpiling-copper-west-net-zero/
米国環境保護庁(EPA)から発表された排ガス規制の計画発表を受け、8つの州が2035年からガソリン車の販売を全面的に禁止する計画を立てています。カリフォルニア州(既に実施済み)、ロードアイランド州、メリーランド州、マサチューセッツ州、ニュージャージー州、ニューヨーク州、オレゴン州、ワシントン州がそれらとなります。EPAから発表された排ガス規制では2032年迄の規制を発表しています。今回の流れはそれに合わせた動きとなっています。ただし足元の2月の販売実績ではディーラーに車が納車されてから販売されるまでの平均日数はHV車で25日以内、ガソリン車は52日、EVは72日となっており、人気に陰りが見えている事は明らかになっています。EPAの規制発表後、米国では多くのドライバーは2032年の最も厳しい最終規制実施後にEVに乗り換える代わりに、古い車を長く使い続ける可能性が高い事が指摘されています。こうした動きは米政府のEV計画に支障をきたし、自動車メーカーに大きな打撃を与える可能性が高いと分析されています。
▶ https://www.dailymail.co.uk/yourmoney/cars/article-13237051/ban-gas-cars-biden-evs-states.html
BYDが2023年の決算を発表し、世界販売台数302万台(内、PHV車144万台)、純利益42億ドル(前期は23億ドル)と大幅に伸びました。しかし第4四半期利益は18.6%増に留まり、2022年第1四半期以来の低水準でした。これは欧米での販売鈍化とEV全体の余剰生産能力に伴う価格競争の激化によるものと分析されています。中国製EVのEUへの輸出は2024年の1-2月で19.6%減少しており、今後のEUによる中国EV産業の補助金の調査次第では更に影響が出ると見られています。こうした中、中国政府は米国のインフレ削減法(IRA)によるEV車への「差別的な補助金」をWTOに提訴しています。それだけ、中国側も苦しくなっているという実態があるようです。
▶ https://finance.yahoo.com/news/byd-profit-soared-80-chinese-164608624.html
大連商品取引所の鉄鉱石5月渡し契約は、2日連続で大幅下落となっています。月曜日に3.7%、火曜日に3.5%の下落となりました。これは鉄鋼消費量が予想を下回り、市場センチメントが冷え始めた為と伝わっています。鉄鋼需要は前月比では増加しましたが、前年同期を下回り、短期的に需要が増加する余地は限られています。中国政府は債務に対処するために地方政府の投資プロジェクト支出を抑制しています。不動産プロジェクトの不振は拡大しており、今年も引き続き不動産分野での鉄鋼需要の減少は継続されると見込まれています。その為、鉄鋼価格の下落がどこで落ち着くのかが焦点になりそうです。
▶ https://www.mysteel.net/market-insights/5051279-pessimism-casts-shadow-over-chinas-iron-ore-market-again
ニッケル価格は2024年もレンジ内かやや下落する可能性が分析されています。世界のニッケル市場は2023年から2027年まで供給過剰が継続し、2027年末の時点で2万7000トンの供給過剰が維持されると見られています。供給過剰は中国の精製能力の拡大とインドネシアの増産です。2021年以降、インドネシアのニッケル生産量は250%増という驚異的な伸びとなっています。一部で減産の予測が出ましたが、現地調査の結果、生産量は今後も供給過剰状態となる程度に維持されるようです。
▶ https://agmetalminer.com/2024/03/27/experts-predict-nickel-price-drop/
ビル・ゲイツの関連団体が出資の1社である米国の新興企業エレクトラはプロトタイプの装置で排出ガスの殆ど出ない工程で鉄の製造に成功した事を発表しました。エレクトラの技術は数年前に開発されたばかりで、ゲイツが出資している事でも注目を集めています。電気的なエネルギーを利用した化学反応と湿式冶金工法を組み合わせた工法で、低品位の鉄鉱石から銑鉄同等品を製造します。行程温度が60度Cでエネルギー利用が少ない事も特徴です。グリーンスチール専用の新興メーカーは現在、大規模施設製造の為に資金調達を活発化させており、スウェーデンのH2 Green Steelは最近16億ドルを調達しています。エレクトラ社も資金確保に向けて積極的にマイルストーンを発表しています。
▶ https://www.electra.earth/media/
米国の財務長官ジャネット・イエレン氏は、中国政府によるクリーンエネルギー産業への補助金の悪影響について中国政府に警告するつもりだと述べています。イエレン氏は近く中国を訪問する計画があるようです。MSNBCのインタビューで「中国は鉄鋼やアルミニウムの生産能力を過剰に構築したのと同じ様に太陽光パネル、EV、リチウムイオン電池を過剰生産しており、世界市場を歪め他の産業分野の雇用を損なっている。過剰生産能力は米国の労働者や企業だけでなく、中国経済の生産性や成長にもリスクをもたらす。私は中国に対して、この問題に対処するよう強く求めるつもりです」と述べています。民主党に極めて近いMSNBCでのインタビューで中国を名指しで批判するというのは、選挙戦を意識したとも言えますが、今後も米中経済摩擦は悪化しそうです。
▶ https://www.voanews.com/a/yellen-warns-she-ll-confront-china-on-its-energy-subsidies-/7546754.html
BYDはベトナムでのEV工場建設を延期します。建設予定の工業団地管理者によるとBYDは自社の戦略とEV市場の減速により建設着工を遅らせる意向があるとの事です。ベトナム政府は昨年5月にBYDがベトナム北部のフート省にEVを生産・組み立てする工場を建設すると発表しました。BYDやテスラでも既に価格競争と過剰状態のEV市場に悩まされており、今後もメーカーによる計画の変更は続く可能性があります。
▶ https://cnevpost.com/2024/03/28/byd-slows-down-plans-ev-plant-vietnam-report/
▶ https://blog.gorozen.com/blog/the-norwegian-illusion
グリーン水素向けの電解槽メーカーの生産能力が余剰となり過ぎて問題化し始めています。電解槽メーカーは政府の水素戦略を見越し投資を急拡大させてきました。しかし実際の機械の発注は大幅に遅れており、「深刻な過剰生産能力」が顕著化しています。米国とEUの補助金が予想よりも遅れていることが主な原因でグリーン水素のプロジェクト開発業者は2023年に予想されていた大規模な発注を行いませんでした。電解槽メーカーは高額な投資をしたにも関わらず殆ど収入が無い状況です。しかし更に多くの電解槽メーカーが市場に殺到しており、現在100社以上が電解槽の製造を計画しています。グリーン水素、洋上風力発電、バイオマス等、政府主導の再生可能エネルギーの推進は欧州で様々な問題が顕著化してきました。
▶ https://www.hydrogeninsight.com/electrolysers/severe-overcapacity-the-global-supply-of-electrolysers-far-outstrips-demand-from-green-hydrogen-projects-bnef/2-1-1618327
ロシアのウクライナ侵攻以来、ロシアから撤退した外国企業の評価損や売上損失は1,070億ドル以上になった事が判明しています。この巨額な損失は昨年8月の前回集計から30%以上増加しています。これは戦争による産業界への経済的打撃の規模を浮き彫りにすると共にロシア経済から西側の投資や専門知識が一斉に引き上げている実情を反映しています。未だにロシアに残る企業は今後、制裁が厳格化するにつれて、より大きな損失を被る可能性があります。ロシアに投資した欧州企業は大損害を受けており、日本企業も今後、地政学を本格的に考慮する必要に迫られます。
▶ https://www.euractiv.com/section/economy-jobs/news/foreign-firms-losses-from-exiting-russia-top-107-billion/