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NEWSCONの気になるNEWS(2024年3月第3週)
インドは今年から来年に掛けて銅の純輸出国になる見込みです。今年、インドの大富豪アダニ氏が持つアダニ・エンタープライズは子会社Kutch Copper Ltd (KCL)の銅製錬工場(年間50万トン)を稼働させます。KCLは50万トンの精製銅の他に250万トンの銅棒、150万トンの硫酸、25トンの金、250トンの銀、150トンのセレンを生産する予定でです。KCLの稼働後、インドの銅生産能力は63%増加し、総生産量は約100万トンに達する可能性があります。今までインドが純輸入国であった事を考えると、銅の国際流通と銅鉱石の価格上昇に繋がる動きとなります。一方で中国の大手銅製錬企業の江西銅業、銅陵非鉄金属集団、金川集団、チャイナ・コッパー等は一部の赤字工場を共同で減産するという「極めて異例の措置」を取るようです。これは懸念されていた銅鉱石の不足に対応するという為です。南米やアフリカの鉱山問題はより具体的な供給不足への流れを作り始めており価格をサポートしそうです。
▶ https://bit.ly/49RKpdr
フランス議会はファストファッションの規制法案を下院で可決しています。この法案は今後、上院で採決される予定です。特に短期間で使用済みとなり捨てられる超低価格のファストファッションブランドをターゲットにしています。この法案が発効するとファストファッションの広告が禁止される可能性があります。また環境への影響が大きい低価格衣料品には罰則を課すことが含まれています。かなり厳しい内容となっています。
▶ https://www.france24.com/en/france/20240222-france-s-fast-fashion-kill-bill-green-move-or-penalty-for-the-poor
欧州で2つの重要な規則案が立法に向け前進しました。
1つ目は、企業がバリューチェーンで人権や環境を保護する義務を制度化したEUの企業デューデリジェンス指令(CSDDD)です。当初の案より大幅に緩和された内容で欧州委員会とEUの代表の間で合意され、今後議会の採択を経て採用される見込みです。昨年12月には対象企業を上場企業で年間売上高が3億ユーロとしていましたが、4億5千万ユーロに増額しています。これにより具体的な対象となる企業数は16,389社から5,421社に減り、大きく緩和される事になりました。イタリアやドイツが厳しい内容に躊躇・反発しており、合意が延期されていましたが、最終的には合意に至りました。6月のEU議会選挙前には成立の見込みとなっています。中国はこの指令に懸念を示しています。
▶ https://www.euronews.com/green/2024/03/14/exclusive-belgium-triples-corporate-due-diligence-thresholds-in-bid-for-last-ditch-deal
2つ目は、包装及び包装廃棄物規則(PPWR)で、EU加盟国の常任代表会議がPPWRの修正テキストを支持しました。詳細な修正テキストが公開されていない為不明な点もありますが、PPWRでは事実上、EU域外からの再生プラスチックの輸入を不可能にする条件があり、中国は早くも反応しています。PPWRではパッケージに再生材を使う比率が定められているだけでなく、将来的に全ての包装をリサイクル可能とする条件が盛り込まれる等、かなり厳しい内容となっています。
▶ https://www.scmp.com/news/china/diplomacy/article/3255622/eu-approves-laws-recycling-and-human-rights-may-sharply-affect-trade-china?module=top_story&pgtype=homepage
中国では今後数年間でポリアミド6(PA 6:ナイロン6)の年間生産能力が336万トン増加する事が調査で判明しています。ただしPA6を製品にする下流工程の生産容量が増さない事が分かっており、材料が国際市場に流れる可能性が高まっています。日本のポリアミド系樹脂の生産量は僅か23万トン余りなので、かなり影響を受ける分野になると思われます。
▶ https://www.mysteel.net/news/5050410-336-million-ty-pa6-capacity-to-be-released-in-the-next-few-years
今週のWEEEの話題は酵母によるリサイクルです。オーストリアのウィーン天然資源生命科学大学のチームは、ビール製造時のビール酵母残渣を使用してWEEEから金属を回収する技術を発表しています。酵母表面の静電相互作用によって金属イオンが表面に付着する原理を利用しており、化学薬品や熱を利用するものに比べて環境負荷が少なくコストも安いという利点があります。実験では使用済みのビール酵母20リットルを使用して、WEEEからアルミニウムの50%以上、銅の40%以上、亜鉛の70%以上を回収しています。また、テストを経た酵母を利用する事で銅、亜鉛の回収率をそれぞれ50%と90%に上げています。WEEEの金属回収技術の開発は英国を含め、欧州の各研究機関で盛んに行われるテーマとなっています。
▶ https://www.environmentenergyleader.com/2024/03/brewing-a-solution-spent-yeasts-role-in-e-waste-recycling/
2024年は送電網整備開始の年と言われています。中国や欧州では太陽光発電や風力発電容量に対して、送電網が追い付かないという問題を抱えています。中国では昨年1年間に追加した太陽光発電容量は、現在の米国の太陽光発電容量を上回ります。又、追加した風力発電の容量は1年間で75.9GWに達し、これも過去最高を記録しています。その為、中国では今年から送電網と蓄電整備に向けて40億ドル規模のプロジェクトが開始されています。銅の鉱山セクターは、南米を中心に抗議活動、閉鎖、鉱石の品位の低下等に悩まされている事に加えて、生産量制約に直面しています。送電網と蓄電設備への大型国家投資は今後、銅価格のサポート要因となる可能性があります。
▶ https://oilprice.com/Latest-Energy-News/World-News/China-Launches-4-Billion-Power-Transmission-and-Storage-Project.html
米国の上院は、リサイクル及び堆肥化のインフラ強化を目指す2つの法案を可決しています。1つ目は「リサイクルインフラストラクチャー及びアクセシビリティ法(S. 1189)」で、2つ目は「リサイクル及び堆肥化責任法(S. 1194)」となります。これら2つの法案は全米の平均リサイクル率32.1%を2030年迄に50%に引き上げるという目標に向けて提出されたものです。
▶ https://www.congress.gov/bill/118th-congress/senate-bill/1194
▶ https://www.congress.gov/bill/118th-congress/senate-bill/1189
欧州理事会は、欧州議会の立場を承認し「EU重要原材料法(CRMA)」を採択しました。これによりEU重要原材料法は、欧州議会議長と理事会議長の署名後、欧州連合官報に掲載され、公開後20日目に発効する事になります。銅、アルミ、レアアースを含む重要原材料は34種類、この法律で新たに指定された戦略的原材料は17種類となります。CRMAはEUの原材料の年間消費量について10%は域内で採掘し、40%はEU内で加工(精製)し、25%はリサイクル材料から作る事を目標とします。特に戦略的原材料が含まれた廃棄物のリサイクルには一定の条件が課される事になり、廃棄物処理にも少なからず影響が出ます。
▶ https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2024/03/18/strategic-autonomy-council-gives-its-final-approval-on-the-critical-raw-materials-act/
中国政府の生態環境省は、3月15日に通知を発行し、アルミニウム精錬所の排出量計算、報告、検証ガイダンスに関する協議を開始した事を公表しています。中国では、排出権取引制度(ETS)を導入する前に、2025年迄に一次アルミニウム生産で使用される総エネルギーの25%以上を再生可能エネルギーとし、2030年迄に30%以上とする事を義務付けています。2023年の中国の一次アルミニウム(アルミ地金)生産量は4,200万トンで、世界シェアの55%以上となります。アルミ地金の生産は日本はゼロ、欧米でも数ヵ所しかなく、中国製の地金を利用した製品が欧州等に輸出される際、炭素排出量を理由に「締め出す」事への対応と見られています。既に欧州ではCBAMによる炭素排出量報告が始まっており、中国製のアルミニウムは影響を受け始めています。
▶ https://www.spglobal.com/commodityinsights/en/market-insights/latest-news/energy-transition/031824-china-starts-consultation-for-enrolling-aluminum-smelters-into-compliance-carbon-market
最近グレンコアより優先担保転換社債で7500万ドルの資金提供を発表した北米のLIBリサイクル企業Li-Cycleは、2023年の財務結果を発表しました。純損失は約1億3,800万ドル(2022年は7,080万ドルの損失)、調整後EBITDAの損失は約1億5,640万ドル(2022年は1億1,850万ドルの損失)、資産は1億4,900万ドル、流動負債は1億5,600万ドルでした。売上高は僅か1,830万ドルしかなく、損失が1億3,800万ドルと膨大で、既に中止した一部欧州のPJTや、同社最大のPJTであるローチェスターのハブについても専門家から疑問の声が上がっています。Li-Cycleは株主訴訟を含む幾つかの訴訟に直面しており、今後ハブが完成する資金を調達できるか疑問視されてきました。
▶ https://investors.li-cycle.com/news/news-details/2024/Li-Cycle-Reports-Full-Year-2023-Results/default.aspx
▶ https://www.wxxinews.org/local-news/2024-03-18/li-cycle-posts-138m-loss-as-outlook-dims-for-rochester-hub
米国証券取引所(SEC)は上場企業に気候変動関連情報の開示を義務付ける規則を採択しました。予想通り、この決定は差し止め請求に合い、連邦裁判所はSECの新規則の差し止めを認めました。これは一時的な停止の為、必ずしも訴訟が最終的に成功することや規則が覆されることを意味するわけではありません。しかし裁判官は、反対派の主張を少なくともある程度受け入れている事が示されました。SECの規則では一部の大企業や中堅企業に対して、自社が直接排出している二酸化炭素の量とエネルギー使用による二酸化炭素の排出量を開示するよう求めています。対象企業の一部はこの制度に反対してきました。欧州ではCSRDが発効していますが、米国でのこの動きにより、企業による排出量開示の世界的な動きが、やや後退する恐れがあります。
▶ https://thehill.com/policy/energy-environment/4535659-court-halts-sec-climate-disclosure-rule/
韓国の経済紙によると、中国が韓国の税金の抜け穴を利用して銅スクラップを積極的に輸入している為、韓国の非鉄金属産業は銅スクラップの調達に問題を抱える状況との事です。Q1の中国への銅スクラップ輸出は前年同期比2倍余りの2万4967トンになると予想しており、韓国の銅スクラップ輸出総額の73%を占める見込みです。中国による銅スクラップ輸入の要因はGHG排出量が少ない銅スクラップ利用の増加と建築などの解体から出る銅スクラップが減少している事が重なっている為と伝わっています。韓国の銅製品メーカーの多くは銅スクラップの調達に苦慮しており、生産の削減を余儀なくされ、一部は倒産も発生しているようです。韓国では年間約65万トンの銅スクラップが流通しており、その内30~40%は税金の処理を行わず取引されていると推定されています。現在、韓国のスクラップ業者は中国人バイヤーへの販売が活発になっています。日本にも一定の影響があるかも知れません。
▶ https://www.kedglobal.com/commodities/newsView/ked202403180017
米国の環境保護庁(EPA)は、数日以内に「史上最も厳しい」自動車の排気ガス規制を発表する予定です。この規制が実施された場合、EPAは2030年迄に乗用車と小型車の販売台数の50%がEVに、2032年には約3分の2がEVになる必要があると予測しています。これらの数字はEPAが掲げるの目標となっています。この規制は2032年の目標を目指しながら、短期的にはそれほど厳しくない排出削減目標を設定し、段階的に厳しくするものになると予想されています。
▶ https://spectrumnews1.com/ca/la-west/transportation/2024/03/14/ap-sources–epa-car-rule-will-push-huge-increase-in-ev-sales
メーカーによる金属スクラップ企業の買収や協業は継続しています。大手アルミニウム製品メーカーのHydro(本社ノルウェー:ノルスク・ハイドロASA)は、北米の押出品工場向けに金属スクラップの世界的な大手SIMS(シムズ)と調達契約を発表しています。SIMSは2021年に米国でアルミニウムスクラップ企業Alumisourceを買収し、Sims Alumisourceと改名しています。Hydroは昨年傘下のスクラップ企業Alumetal(ポーランド)への大型投資を計画したばかりです。
▶ https://www.hydro.com/en/media/news/2024/bringing-more-post-consumer-aluminium-scrap-back-to-life-in-north-america/
欧米では電池材料の中国依存を減らす取組が政治的にも活発になっています。しかし果たして現実可能なのか?という問題を分析したものは殆ど表に出てきません。つい最近、BASFがフィンランドで計画している正極材用の前駆体製造工場の稼働が延期となりました。これは象徴的な出来事です。直接の原因は環境問題です。環境保護団体が提訴した事により、フィンランドの裁判所が工場の稼働を延期するよう命じました。工場での硫酸塩廃棄物処理計画に問題があると環境団体が告発していました。
電池前駆体材料のpCAM(precursor cathode active material)を精製する工程では、硫酸塩廃棄物と廃水が出ます。また炭酸リチウムは水酸化物に変換されます。水酸化物は反応性と腐食性があり、取り扱いが難しく、保存寿命が短いという特徴があります。更にそこからバッテリー材料に処理する為に熱を加える複数の工程で大量のエネルギーを消費します。この工程は数日を要します。環境負荷とエネルギー消費の問題はフィンランドの同工場だけでなく、欧州や北米で電池材料の製造計画を持つ全ての企業が抱える問題です。フィンランドは再生可能エネルギーの調達が容易である事から選ばれた経緯がありますが、欧州(北米含む)の環境規制は厳しく、エネルギーコストも高い事から中国並みのコスト競争力を持つ事は実際には不可能と見られています。フィンランドのBASFの工場は正極材料を製造するドイツの工場に年間3万トンの前駆体精製材料を供給する予定でした。今回の延期はドイツ工場にもドミノ効果で問題を引き起こします。これはリサイクル業にも影響がある出来事で、前駆体を製造する工場(市場)が域内に無ければ、結局中国(資本)にリサイクル材料を販売する事になり、事態に変化が起きないという事になります。欧州でバッテリー材料の製造を行うには環境対応コスト、エネルギーコストが割高となり、更にリサイクルからのコスト増も重なる事で、結局EV自体のコスト増になり市場の拡大に問題が生じます。こうした連鎖問題は計画が実行されるこれから数年内に欧州(と一部北米)で見られる現象となる可能性があります。
▶ https://www.thearmchairtrader.com/basf-battery-materials-delay-strengthens-the-case-for-nano-one-technology/
インドでは特に熱間圧延コイルの価格が低下し、週の平均価格では2020年12月以来の最低水準となっています。需要が弱まり始めた事に加えて、安価な輸入品による価格の低下圧力がある為です。今年、インドの鉄鋼メーカーは生産能力を2,200万トン以上増強する予定で余剰感による価格下落圧力が懸念され始めています。西ヨーロッパでも同様な状況が続いており、景気低迷による需要の先細り感から多くの関係者が更なる価格下落を予測しています。
▶ https://www.ndtvprofit.com/business/indian-steel-prices-suffer-amid-chinas-caution
▶ https://agmetalminer.com/2024/03/19/european-steel-prices-decline/
中国の鉄鋼協会は、予想を下回る需要と鉄鋼メーカーの利益率の低下により、鉄鋼生産の抑制を求める動きを見せています。特に在庫量の多い圧延鋼材の急速な価格下落を抑える事が目的としています。既に雲南省では建設用鋼材の生産を月当たり50万トン(月平均生産量の40%以上)削減するよう求め、広東省も鉄鋼生産量を削減する計画を発表しています。中国21都市の主要5種類の圧延鋼材在庫は1422万トンに達し、2月初頭から33%増加しています。中国の不動産セクターは引続き資金流動性の逼迫に悩まされており、新規プロジェクトへの投資が萎縮、経済成長の足枷となっています。この資金逼迫は2024年を通じて、特に長尺鋼品の国内需要に圧力をかけると見込まれています。
▶ https://www.steelorbis.com/steel-news/latest-news/local-steel-associations-in-china-call-for-steel-output-curbs-to-halt-price-fall-1332537.htm
ニュージーランド資本の企業がスクラップ専用の国際取引用BtoBアプリをリリースします。Buddy(会社名もBuddy)というアプリで、既に韓国、中国、インド、ベトナム、ドバイ、ドイツで運用開始が予定されています。このアプリは4月から北米、オーストラリア、ニュージーランドの金属リサイクル業者に提供される他、4月にラスベガスで開催されるISRIコンベンション&エキスポ、5月にコペンハーゲンで開催されるBIR世界リサイクル大会という業界最大規模の2つのイベントで利用可能になる予定です。過去にも似たようなBtoBサイトはありましたが、今回はニュージーランドのベンチャーキャピタル会社GD1(Global From Day One)が出資し、更に創設者がスクラップ業界に精通している事から一部では注目され始めています。
▶ https://www.tradebuddy.io/
EUのEV推進は2つの選択肢に委ねられ、6月の選挙後にその方向性が決まると見込まれています。現在EUでEVの販売数が鈍化している最大の理由は安価な大衆車が無い事です。欧州メーカーは安価なEVを開発する兆候は無く、また低価格EVでは赤字になる可能性がある事から高価なSUV-EVの開発と販売を強化しています。EVは裕福で新しい物が好きな「アーリーアダプター」への販売が昨年一巡し、その後、税優遇のある法人が購入の大半を占めました。中国メーカーは安価な大衆EVをラインナップし、欧州で販売を伸ばす可能性があります。EV比率を高めるには中国製EVを流通させる事ですが、その場合には多くの欧州メーカーを苦境に立たせる事になり雇用にも影響します。別の選択肢はEUの排気ガス排出基準を緩和し、エンジン車輛の延命を図る事により欧州での何百万人もの雇用を守る事です。6月の選挙後でどちらの選択肢になるか決まると見られています。現状の調査では急進右派の台頭が顕著な事から後者になる可能性が高いと見られています。米国はメキシコ経由の中国製EVの排除も検討し始めており、欧米が揃って中国製EV排除に動いた場合の中国のEV余剰生産能力問題はかなり深刻になる可能性があります。
▶ https://www.forbes.com/sites/neilwinton/2024/03/18/european-ev-sales-pause-waiting-for-cheap-mass-market-vehicles/
予想通り、米国の環境保護庁は2027年~2032年に発売する乗用車、小型トラック、中型車に対する最終的な排出ガス基準を発表しました。最終案は予想された事前報道よりも大幅に緩和されており、事実上2030迄でEV化を遅らせる事を可能にします。2032年に販売される自動車の67%をEVにすることを義務づけた以前の提案が撤回された事になります。ただし米政権は「史上最強の自動車汚染基準を最終決定した」と発表を誇張しています。小型・中型自動車の基準では「2027年モデル以降の小型車両、及び中型車両の排出基準」は現在の基準(2023年~2026年モデル)を継続する事になります。この緩和は「業界にもっと自由度を与えるべきだ」という自動車メーカー、自動車ディーラー、全米自動車労働組合によるロビー活動が反映されたものとなりました。この規則に基づくEPAの試算では2030年から2032年迄に乗用車とトラックの新車の約30%から56%をEVが占める可能性があると予測しています。最終的に大幅に譲歩した理由は、バイデン大統領が再選キャンペーンで直面する政治的圧迫を反映していると分析されています。自動車産業が主産業であるミシガン州、工業州であるウィスコンシン州やペンシルベニア州は何れもスウィングステートで、選挙戦では落とせない州となっています。共和党のトランプ氏は、政府によるEV義務化を非難し一定の支持を集めている事も要因のようです。この決定は米国に大きな投資をしてきた(いる)EV関連企業にとっては、少なからず打撃となる可能性があります。
▶ https://www.epa.gov/newsreleases/biden-harris-administration-finalizes-strongest-ever-pollution-standards-cars-position
欧州自動車工業会(ACEA)は2月のEU新車販売実績を発表しました。販売台数はEU全体で前年同月比10.1%の伸びとなりましたがEV販売の伸び率は9%に留まりました。予算が枯渇しEV補助金が廃止されたドイツのEV販売台数は15.4%減少しました。しかし、汚染による批判を浴びているディーゼル車はドイツでは逆に販売が9.7%増加しました。他国で何れもディーゼル車の販売は減少しています。一方、ハイブリッド車の販売は、EU全体で前年同月比24.7%増加しました。
▶ https://www.acea.auto/pc-registrations/new-car-registrations-10-1-in-february-2024-battery-electric-12-market-share/
国連トレーニング研究所(UNITAR)は、膨大な量のWEEEがリサイクルされずに廃棄されている実態を発表しています。2022年の世界の電子機器廃棄物の年間排出量は6,200万トンで、2010年比82%増加しました。WEEEの発生量は年間260万トンずつ増加しており、2030年迄に8,200万トンに達する可能性があります。WEEEの増加は、WEEEのリサイクル能力の増加を圧倒的に上回るもので、このままのペースで増加した場合、廃棄処分されるWEEEを減らす事は不可能です。WEEEの回収・リサイクル率は2022年の22.3%から2030年迄に20%に低下すると予測しています。電気・電子製品は性能向上が短期間で行われ、更に修理も専門的で難しい為、買い替えが最も効率が良い商品の1つです。携帯電話や電動歯ブラシ等の小さな製品は、最終的に埋立地に行き着く可能性が高い傾向にあります。また2022年には約60万トンの太陽光発電パネルが廃棄されたと推定されており、こちらも今後、更に大きな問題となる事が確実視されています。2025年のバーゼル改訂で世界的にWEEEの越境は禁止されます。その為、各国でEPRが採用されると思われます。
▶ https://www.unitar.org/about/news-stories/press/global-e-waste-monitor-2024-electronic-waste-rising-five-times-faster-documented-e-waste-recycling
全米鉄鋼労働組合(USW)は米国のジョー・バイデン大統領が日本製鉄によるUSスチールの合併に反対すると表明してから1週間も経たない内に大統領を支持する声明を発表しています。141億ドルの今回の買収は11月の大統領選挙に先立って大きな政治問題となっています。USWと民主・共和両党の議員は米国製造業の象徴的なUSスチールを外国企業に売却する事に反対してきました。USWは3月14日に声明を発行し、バイデン大統領がUSスチールを国内で所有・運営し続けるよう求める呼びかけを歓迎していました。
▶ https://m.usw.org/news/media-center/releases/2024/usw-endorses-joe-biden-for-reelection-as-president
▶ https://m.usw.org/news/media-center/releases/2024/usw-welcomes-bidens-call-for-u-s-steel-to-remain-domestically-owned-and-operated
PETをアルカリによる加水分解とマイクロ波による分離工程でリサイクルする技術を開発したスイスのgr3nは、スペインで実証プラントを計画しています。工場はスペインのIntecsa Industrial社との合弁で設立され、1時間当たりのPET処理量は60Kgとなります。リサイクルを通じて年間4万トンのバージン材同等品質のPETを製造します。gr3nの独自のケミカルリサイクル技術は繊維廃棄物を含む様々なPETを処理する事が可能な為、注目されてきました。しかし実証実験に進む事が中々できず、今回、合弁会社を設立する事で量産体制を整えます。
▶ https://gr3n-recycling.com/
紅海でのフーシ派海賊による欧米船舶への襲撃で、ソマリア沖の国際警備海軍が手薄になっている事から、10年間活動を休止していたソマリアの海賊が新たに動き出しています。既に20件の海賊行為あるいは未遂を発生させており、新たな脅威となりつつあります。今年から数年間はコンテナ新造船の相次ぐ就航で国際線コンテナ価格が大幅に下がる事が確実視されています。しかしアデン湾での新たな脅威は国際貨物に少なからず影響を与える事になりそうです。
▶ https://www.reuters.com/world/africa/somali-pirates-return-adds-crisis-global-shipping-companies-2024-03-21/
▶ https://bit.ly/49RKpdr
フランス議会はファストファッションの規制法案を下院で可決しています。この法案は今後、上院で採決される予定です。特に短期間で使用済みとなり捨てられる超低価格のファストファッションブランドをターゲットにしています。この法案が発効するとファストファッションの広告が禁止される可能性があります。また環境への影響が大きい低価格衣料品には罰則を課すことが含まれています。かなり厳しい内容となっています。
▶ https://www.france24.com/en/france/20240222-france-s-fast-fashion-kill-bill-green-move-or-penalty-for-the-poor
欧州で2つの重要な規則案が立法に向け前進しました。
1つ目は、企業がバリューチェーンで人権や環境を保護する義務を制度化したEUの企業デューデリジェンス指令(CSDDD)です。当初の案より大幅に緩和された内容で欧州委員会とEUの代表の間で合意され、今後議会の採択を経て採用される見込みです。昨年12月には対象企業を上場企業で年間売上高が3億ユーロとしていましたが、4億5千万ユーロに増額しています。これにより具体的な対象となる企業数は16,389社から5,421社に減り、大きく緩和される事になりました。イタリアやドイツが厳しい内容に躊躇・反発しており、合意が延期されていましたが、最終的には合意に至りました。6月のEU議会選挙前には成立の見込みとなっています。中国はこの指令に懸念を示しています。
▶ https://www.euronews.com/green/2024/03/14/exclusive-belgium-triples-corporate-due-diligence-thresholds-in-bid-for-last-ditch-deal
2つ目は、包装及び包装廃棄物規則(PPWR)で、EU加盟国の常任代表会議がPPWRの修正テキストを支持しました。詳細な修正テキストが公開されていない為不明な点もありますが、PPWRでは事実上、EU域外からの再生プラスチックの輸入を不可能にする条件があり、中国は早くも反応しています。PPWRではパッケージに再生材を使う比率が定められているだけでなく、将来的に全ての包装をリサイクル可能とする条件が盛り込まれる等、かなり厳しい内容となっています。
▶ https://www.scmp.com/news/china/diplomacy/article/3255622/eu-approves-laws-recycling-and-human-rights-may-sharply-affect-trade-china?module=top_story&pgtype=homepage
中国では今後数年間でポリアミド6(PA 6:ナイロン6)の年間生産能力が336万トン増加する事が調査で判明しています。ただしPA6を製品にする下流工程の生産容量が増さない事が分かっており、材料が国際市場に流れる可能性が高まっています。日本のポリアミド系樹脂の生産量は僅か23万トン余りなので、かなり影響を受ける分野になると思われます。
▶ https://www.mysteel.net/news/5050410-336-million-ty-pa6-capacity-to-be-released-in-the-next-few-years
今週のWEEEの話題は酵母によるリサイクルです。オーストリアのウィーン天然資源生命科学大学のチームは、ビール製造時のビール酵母残渣を使用してWEEEから金属を回収する技術を発表しています。酵母表面の静電相互作用によって金属イオンが表面に付着する原理を利用しており、化学薬品や熱を利用するものに比べて環境負荷が少なくコストも安いという利点があります。実験では使用済みのビール酵母20リットルを使用して、WEEEからアルミニウムの50%以上、銅の40%以上、亜鉛の70%以上を回収しています。また、テストを経た酵母を利用する事で銅、亜鉛の回収率をそれぞれ50%と90%に上げています。WEEEの金属回収技術の開発は英国を含め、欧州の各研究機関で盛んに行われるテーマとなっています。
▶ https://www.environmentenergyleader.com/2024/03/brewing-a-solution-spent-yeasts-role-in-e-waste-recycling/
2024年は送電網整備開始の年と言われています。中国や欧州では太陽光発電や風力発電容量に対して、送電網が追い付かないという問題を抱えています。中国では昨年1年間に追加した太陽光発電容量は、現在の米国の太陽光発電容量を上回ります。又、追加した風力発電の容量は1年間で75.9GWに達し、これも過去最高を記録しています。その為、中国では今年から送電網と蓄電整備に向けて40億ドル規模のプロジェクトが開始されています。銅の鉱山セクターは、南米を中心に抗議活動、閉鎖、鉱石の品位の低下等に悩まされている事に加えて、生産量制約に直面しています。送電網と蓄電設備への大型国家投資は今後、銅価格のサポート要因となる可能性があります。
▶ https://oilprice.com/Latest-Energy-News/World-News/China-Launches-4-Billion-Power-Transmission-and-Storage-Project.html
米国の上院は、リサイクル及び堆肥化のインフラ強化を目指す2つの法案を可決しています。1つ目は「リサイクルインフラストラクチャー及びアクセシビリティ法(S. 1189)」で、2つ目は「リサイクル及び堆肥化責任法(S. 1194)」となります。これら2つの法案は全米の平均リサイクル率32.1%を2030年迄に50%に引き上げるという目標に向けて提出されたものです。
▶ https://www.congress.gov/bill/118th-congress/senate-bill/1194
▶ https://www.congress.gov/bill/118th-congress/senate-bill/1189
欧州理事会は、欧州議会の立場を承認し「EU重要原材料法(CRMA)」を採択しました。これによりEU重要原材料法は、欧州議会議長と理事会議長の署名後、欧州連合官報に掲載され、公開後20日目に発効する事になります。銅、アルミ、レアアースを含む重要原材料は34種類、この法律で新たに指定された戦略的原材料は17種類となります。CRMAはEUの原材料の年間消費量について10%は域内で採掘し、40%はEU内で加工(精製)し、25%はリサイクル材料から作る事を目標とします。特に戦略的原材料が含まれた廃棄物のリサイクルには一定の条件が課される事になり、廃棄物処理にも少なからず影響が出ます。
▶ https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2024/03/18/strategic-autonomy-council-gives-its-final-approval-on-the-critical-raw-materials-act/
中国政府の生態環境省は、3月15日に通知を発行し、アルミニウム精錬所の排出量計算、報告、検証ガイダンスに関する協議を開始した事を公表しています。中国では、排出権取引制度(ETS)を導入する前に、2025年迄に一次アルミニウム生産で使用される総エネルギーの25%以上を再生可能エネルギーとし、2030年迄に30%以上とする事を義務付けています。2023年の中国の一次アルミニウム(アルミ地金)生産量は4,200万トンで、世界シェアの55%以上となります。アルミ地金の生産は日本はゼロ、欧米でも数ヵ所しかなく、中国製の地金を利用した製品が欧州等に輸出される際、炭素排出量を理由に「締め出す」事への対応と見られています。既に欧州ではCBAMによる炭素排出量報告が始まっており、中国製のアルミニウムは影響を受け始めています。
▶ https://www.spglobal.com/commodityinsights/en/market-insights/latest-news/energy-transition/031824-china-starts-consultation-for-enrolling-aluminum-smelters-into-compliance-carbon-market
最近グレンコアより優先担保転換社債で7500万ドルの資金提供を発表した北米のLIBリサイクル企業Li-Cycleは、2023年の財務結果を発表しました。純損失は約1億3,800万ドル(2022年は7,080万ドルの損失)、調整後EBITDAの損失は約1億5,640万ドル(2022年は1億1,850万ドルの損失)、資産は1億4,900万ドル、流動負債は1億5,600万ドルでした。売上高は僅か1,830万ドルしかなく、損失が1億3,800万ドルと膨大で、既に中止した一部欧州のPJTや、同社最大のPJTであるローチェスターのハブについても専門家から疑問の声が上がっています。Li-Cycleは株主訴訟を含む幾つかの訴訟に直面しており、今後ハブが完成する資金を調達できるか疑問視されてきました。
▶ https://investors.li-cycle.com/news/news-details/2024/Li-Cycle-Reports-Full-Year-2023-Results/default.aspx
▶ https://www.wxxinews.org/local-news/2024-03-18/li-cycle-posts-138m-loss-as-outlook-dims-for-rochester-hub
米国証券取引所(SEC)は上場企業に気候変動関連情報の開示を義務付ける規則を採択しました。予想通り、この決定は差し止め請求に合い、連邦裁判所はSECの新規則の差し止めを認めました。これは一時的な停止の為、必ずしも訴訟が最終的に成功することや規則が覆されることを意味するわけではありません。しかし裁判官は、反対派の主張を少なくともある程度受け入れている事が示されました。SECの規則では一部の大企業や中堅企業に対して、自社が直接排出している二酸化炭素の量とエネルギー使用による二酸化炭素の排出量を開示するよう求めています。対象企業の一部はこの制度に反対してきました。欧州ではCSRDが発効していますが、米国でのこの動きにより、企業による排出量開示の世界的な動きが、やや後退する恐れがあります。
▶ https://thehill.com/policy/energy-environment/4535659-court-halts-sec-climate-disclosure-rule/
韓国の経済紙によると、中国が韓国の税金の抜け穴を利用して銅スクラップを積極的に輸入している為、韓国の非鉄金属産業は銅スクラップの調達に問題を抱える状況との事です。Q1の中国への銅スクラップ輸出は前年同期比2倍余りの2万4967トンになると予想しており、韓国の銅スクラップ輸出総額の73%を占める見込みです。中国による銅スクラップ輸入の要因はGHG排出量が少ない銅スクラップ利用の増加と建築などの解体から出る銅スクラップが減少している事が重なっている為と伝わっています。韓国の銅製品メーカーの多くは銅スクラップの調達に苦慮しており、生産の削減を余儀なくされ、一部は倒産も発生しているようです。韓国では年間約65万トンの銅スクラップが流通しており、その内30~40%は税金の処理を行わず取引されていると推定されています。現在、韓国のスクラップ業者は中国人バイヤーへの販売が活発になっています。日本にも一定の影響があるかも知れません。
▶ https://www.kedglobal.com/commodities/newsView/ked202403180017
米国の環境保護庁(EPA)は、数日以内に「史上最も厳しい」自動車の排気ガス規制を発表する予定です。この規制が実施された場合、EPAは2030年迄に乗用車と小型車の販売台数の50%がEVに、2032年には約3分の2がEVになる必要があると予測しています。これらの数字はEPAが掲げるの目標となっています。この規制は2032年の目標を目指しながら、短期的にはそれほど厳しくない排出削減目標を設定し、段階的に厳しくするものになると予想されています。
▶ https://spectrumnews1.com/ca/la-west/transportation/2024/03/14/ap-sources–epa-car-rule-will-push-huge-increase-in-ev-sales
メーカーによる金属スクラップ企業の買収や協業は継続しています。大手アルミニウム製品メーカーのHydro(本社ノルウェー:ノルスク・ハイドロASA)は、北米の押出品工場向けに金属スクラップの世界的な大手SIMS(シムズ)と調達契約を発表しています。SIMSは2021年に米国でアルミニウムスクラップ企業Alumisourceを買収し、Sims Alumisourceと改名しています。Hydroは昨年傘下のスクラップ企業Alumetal(ポーランド)への大型投資を計画したばかりです。
▶ https://www.hydro.com/en/media/news/2024/bringing-more-post-consumer-aluminium-scrap-back-to-life-in-north-america/
欧米では電池材料の中国依存を減らす取組が政治的にも活発になっています。しかし果たして現実可能なのか?という問題を分析したものは殆ど表に出てきません。つい最近、BASFがフィンランドで計画している正極材用の前駆体製造工場の稼働が延期となりました。これは象徴的な出来事です。直接の原因は環境問題です。環境保護団体が提訴した事により、フィンランドの裁判所が工場の稼働を延期するよう命じました。工場での硫酸塩廃棄物処理計画に問題があると環境団体が告発していました。
電池前駆体材料のpCAM(precursor cathode active material)を精製する工程では、硫酸塩廃棄物と廃水が出ます。また炭酸リチウムは水酸化物に変換されます。水酸化物は反応性と腐食性があり、取り扱いが難しく、保存寿命が短いという特徴があります。更にそこからバッテリー材料に処理する為に熱を加える複数の工程で大量のエネルギーを消費します。この工程は数日を要します。環境負荷とエネルギー消費の問題はフィンランドの同工場だけでなく、欧州や北米で電池材料の製造計画を持つ全ての企業が抱える問題です。フィンランドは再生可能エネルギーの調達が容易である事から選ばれた経緯がありますが、欧州(北米含む)の環境規制は厳しく、エネルギーコストも高い事から中国並みのコスト競争力を持つ事は実際には不可能と見られています。フィンランドのBASFの工場は正極材料を製造するドイツの工場に年間3万トンの前駆体精製材料を供給する予定でした。今回の延期はドイツ工場にもドミノ効果で問題を引き起こします。これはリサイクル業にも影響がある出来事で、前駆体を製造する工場(市場)が域内に無ければ、結局中国(資本)にリサイクル材料を販売する事になり、事態に変化が起きないという事になります。欧州でバッテリー材料の製造を行うには環境対応コスト、エネルギーコストが割高となり、更にリサイクルからのコスト増も重なる事で、結局EV自体のコスト増になり市場の拡大に問題が生じます。こうした連鎖問題は計画が実行されるこれから数年内に欧州(と一部北米)で見られる現象となる可能性があります。
▶ https://www.thearmchairtrader.com/basf-battery-materials-delay-strengthens-the-case-for-nano-one-technology/
インドでは特に熱間圧延コイルの価格が低下し、週の平均価格では2020年12月以来の最低水準となっています。需要が弱まり始めた事に加えて、安価な輸入品による価格の低下圧力がある為です。今年、インドの鉄鋼メーカーは生産能力を2,200万トン以上増強する予定で余剰感による価格下落圧力が懸念され始めています。西ヨーロッパでも同様な状況が続いており、景気低迷による需要の先細り感から多くの関係者が更なる価格下落を予測しています。
▶ https://www.ndtvprofit.com/business/indian-steel-prices-suffer-amid-chinas-caution
▶ https://agmetalminer.com/2024/03/19/european-steel-prices-decline/
中国の鉄鋼協会は、予想を下回る需要と鉄鋼メーカーの利益率の低下により、鉄鋼生産の抑制を求める動きを見せています。特に在庫量の多い圧延鋼材の急速な価格下落を抑える事が目的としています。既に雲南省では建設用鋼材の生産を月当たり50万トン(月平均生産量の40%以上)削減するよう求め、広東省も鉄鋼生産量を削減する計画を発表しています。中国21都市の主要5種類の圧延鋼材在庫は1422万トンに達し、2月初頭から33%増加しています。中国の不動産セクターは引続き資金流動性の逼迫に悩まされており、新規プロジェクトへの投資が萎縮、経済成長の足枷となっています。この資金逼迫は2024年を通じて、特に長尺鋼品の国内需要に圧力をかけると見込まれています。
▶ https://www.steelorbis.com/steel-news/latest-news/local-steel-associations-in-china-call-for-steel-output-curbs-to-halt-price-fall-1332537.htm
ニュージーランド資本の企業がスクラップ専用の国際取引用BtoBアプリをリリースします。Buddy(会社名もBuddy)というアプリで、既に韓国、中国、インド、ベトナム、ドバイ、ドイツで運用開始が予定されています。このアプリは4月から北米、オーストラリア、ニュージーランドの金属リサイクル業者に提供される他、4月にラスベガスで開催されるISRIコンベンション&エキスポ、5月にコペンハーゲンで開催されるBIR世界リサイクル大会という業界最大規模の2つのイベントで利用可能になる予定です。過去にも似たようなBtoBサイトはありましたが、今回はニュージーランドのベンチャーキャピタル会社GD1(Global From Day One)が出資し、更に創設者がスクラップ業界に精通している事から一部では注目され始めています。
▶ https://www.tradebuddy.io/
EUのEV推進は2つの選択肢に委ねられ、6月の選挙後にその方向性が決まると見込まれています。現在EUでEVの販売数が鈍化している最大の理由は安価な大衆車が無い事です。欧州メーカーは安価なEVを開発する兆候は無く、また低価格EVでは赤字になる可能性がある事から高価なSUV-EVの開発と販売を強化しています。EVは裕福で新しい物が好きな「アーリーアダプター」への販売が昨年一巡し、その後、税優遇のある法人が購入の大半を占めました。中国メーカーは安価な大衆EVをラインナップし、欧州で販売を伸ばす可能性があります。EV比率を高めるには中国製EVを流通させる事ですが、その場合には多くの欧州メーカーを苦境に立たせる事になり雇用にも影響します。別の選択肢はEUの排気ガス排出基準を緩和し、エンジン車輛の延命を図る事により欧州での何百万人もの雇用を守る事です。6月の選挙後でどちらの選択肢になるか決まると見られています。現状の調査では急進右派の台頭が顕著な事から後者になる可能性が高いと見られています。米国はメキシコ経由の中国製EVの排除も検討し始めており、欧米が揃って中国製EV排除に動いた場合の中国のEV余剰生産能力問題はかなり深刻になる可能性があります。
▶ https://www.forbes.com/sites/neilwinton/2024/03/18/european-ev-sales-pause-waiting-for-cheap-mass-market-vehicles/
予想通り、米国の環境保護庁は2027年~2032年に発売する乗用車、小型トラック、中型車に対する最終的な排出ガス基準を発表しました。最終案は予想された事前報道よりも大幅に緩和されており、事実上2030迄でEV化を遅らせる事を可能にします。2032年に販売される自動車の67%をEVにすることを義務づけた以前の提案が撤回された事になります。ただし米政権は「史上最強の自動車汚染基準を最終決定した」と発表を誇張しています。小型・中型自動車の基準では「2027年モデル以降の小型車両、及び中型車両の排出基準」は現在の基準(2023年~2026年モデル)を継続する事になります。この緩和は「業界にもっと自由度を与えるべきだ」という自動車メーカー、自動車ディーラー、全米自動車労働組合によるロビー活動が反映されたものとなりました。この規則に基づくEPAの試算では2030年から2032年迄に乗用車とトラックの新車の約30%から56%をEVが占める可能性があると予測しています。最終的に大幅に譲歩した理由は、バイデン大統領が再選キャンペーンで直面する政治的圧迫を反映していると分析されています。自動車産業が主産業であるミシガン州、工業州であるウィスコンシン州やペンシルベニア州は何れもスウィングステートで、選挙戦では落とせない州となっています。共和党のトランプ氏は、政府によるEV義務化を非難し一定の支持を集めている事も要因のようです。この決定は米国に大きな投資をしてきた(いる)EV関連企業にとっては、少なからず打撃となる可能性があります。
▶ https://www.epa.gov/newsreleases/biden-harris-administration-finalizes-strongest-ever-pollution-standards-cars-position
欧州自動車工業会(ACEA)は2月のEU新車販売実績を発表しました。販売台数はEU全体で前年同月比10.1%の伸びとなりましたがEV販売の伸び率は9%に留まりました。予算が枯渇しEV補助金が廃止されたドイツのEV販売台数は15.4%減少しました。しかし、汚染による批判を浴びているディーゼル車はドイツでは逆に販売が9.7%増加しました。他国で何れもディーゼル車の販売は減少しています。一方、ハイブリッド車の販売は、EU全体で前年同月比24.7%増加しました。
▶ https://www.acea.auto/pc-registrations/new-car-registrations-10-1-in-february-2024-battery-electric-12-market-share/
国連トレーニング研究所(UNITAR)は、膨大な量のWEEEがリサイクルされずに廃棄されている実態を発表しています。2022年の世界の電子機器廃棄物の年間排出量は6,200万トンで、2010年比82%増加しました。WEEEの発生量は年間260万トンずつ増加しており、2030年迄に8,200万トンに達する可能性があります。WEEEの増加は、WEEEのリサイクル能力の増加を圧倒的に上回るもので、このままのペースで増加した場合、廃棄処分されるWEEEを減らす事は不可能です。WEEEの回収・リサイクル率は2022年の22.3%から2030年迄に20%に低下すると予測しています。電気・電子製品は性能向上が短期間で行われ、更に修理も専門的で難しい為、買い替えが最も効率が良い商品の1つです。携帯電話や電動歯ブラシ等の小さな製品は、最終的に埋立地に行き着く可能性が高い傾向にあります。また2022年には約60万トンの太陽光発電パネルが廃棄されたと推定されており、こちらも今後、更に大きな問題となる事が確実視されています。2025年のバーゼル改訂で世界的にWEEEの越境は禁止されます。その為、各国でEPRが採用されると思われます。
▶ https://www.unitar.org/about/news-stories/press/global-e-waste-monitor-2024-electronic-waste-rising-five-times-faster-documented-e-waste-recycling
全米鉄鋼労働組合(USW)は米国のジョー・バイデン大統領が日本製鉄によるUSスチールの合併に反対すると表明してから1週間も経たない内に大統領を支持する声明を発表しています。141億ドルの今回の買収は11月の大統領選挙に先立って大きな政治問題となっています。USWと民主・共和両党の議員は米国製造業の象徴的なUSスチールを外国企業に売却する事に反対してきました。USWは3月14日に声明を発行し、バイデン大統領がUSスチールを国内で所有・運営し続けるよう求める呼びかけを歓迎していました。
▶ https://m.usw.org/news/media-center/releases/2024/usw-endorses-joe-biden-for-reelection-as-president
▶ https://m.usw.org/news/media-center/releases/2024/usw-welcomes-bidens-call-for-u-s-steel-to-remain-domestically-owned-and-operated
PETをアルカリによる加水分解とマイクロ波による分離工程でリサイクルする技術を開発したスイスのgr3nは、スペインで実証プラントを計画しています。工場はスペインのIntecsa Industrial社との合弁で設立され、1時間当たりのPET処理量は60Kgとなります。リサイクルを通じて年間4万トンのバージン材同等品質のPETを製造します。gr3nの独自のケミカルリサイクル技術は繊維廃棄物を含む様々なPETを処理する事が可能な為、注目されてきました。しかし実証実験に進む事が中々できず、今回、合弁会社を設立する事で量産体制を整えます。
▶ https://gr3n-recycling.com/
紅海でのフーシ派海賊による欧米船舶への襲撃で、ソマリア沖の国際警備海軍が手薄になっている事から、10年間活動を休止していたソマリアの海賊が新たに動き出しています。既に20件の海賊行為あるいは未遂を発生させており、新たな脅威となりつつあります。今年から数年間はコンテナ新造船の相次ぐ就航で国際線コンテナ価格が大幅に下がる事が確実視されています。しかしアデン湾での新たな脅威は国際貨物に少なからず影響を与える事になりそうです。
▶ https://www.reuters.com/world/africa/somali-pirates-return-adds-crisis-global-shipping-companies-2024-03-21/