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NEWSCONの気になるNEWS(2024年12月第3週)
鉄スクラップの供給源である船舶解体について、欧州リサイクル産業連合の船舶リサイクルグループ(ESRG)はEUの船舶リサイクルを強化する為の措置を求めるマニフェストを発表しました。このマニフェストではEUと同様の基準を満たさない施設を持つ第三国に解体用の船舶を輸出する事を禁止し、厳格な環境と安全基準に準拠するEU内での施設で船舶リサイクルを行う事を強く要求しています。欧州は最近、圧倒的に船舶リサイクルが多い南アジアの3ヵ国をターゲットにし始めています。
▶ https://euric-aisbl.eu/resource-hub/press-releases-statements/europes-ship-recyclers-publish-manifesto-calling-for-stronger-eu-measures-to-keep-vessels-in-the-eu-and-ensure-material-recovery-and-environmental-protection
大手商品取引会社のTrafiguraは、モンゴルでの数十億ドルの石油詐欺が発覚した為、2024年の利益が急減し、自己資本と利益を下方修正しました。Trafiguraは一昨年、ニッケルの件で世界的な問題となった取引を誘発しました。2024年の利益は前年比60%減の28億ドルとなり、2020年以来の最低となりました。モンゴルでの詐欺は同社がニッケル取引に関連して6億ドルを失った後、2年間で2度目の巨額な損失となりました。最近、海外でこうした事例が散見される為、注意が必要です。
▶ https://finance.yahoo.com/news/trafigura-net-profit-equity-drops-111410411.html
欧州のアルミニウム業界団体でありロビー団体でもあるヨーロピアン・アルミニウム(EA)は、欧州域内にアルミニウムスクラップを留めるよう述べています。EAはEU政府が海外のスクラップ消費国と対等な競争条件を保つ為の戦略に取り組む必要があると考えています。EAは生産に多くの電気エネルギーを使うアルミについて、スクラップを欧州内に留めておくことは、エネルギー危機の影響から業界を守るという事に密接に関係していると強調しています。「スクラップの輸出はエネルギーの輸出に等しく、より多くのスクラップを利用することで生産者はエネルギーの量を削減できる、と主張しています。アルミの業界団体も、鉄と同様に資源確保に動き始めました。
▶ https://www.spglobal.com/commodity-insights/en/news-research/latest-news/metals/121224-interview-european-aluminium-wants-to-level-the-playing-field-for-global-aluminum-recycling
欧州理事会は、EU 包装及び包装廃棄物規制 (PPWR)の承認投票を行い、オーストリアとマルタを除く合意で承認されました。11月に議会承認が完了しており、事実上、これが立法過程の最後となります。 包装廃棄物の目標は2018 年と比較して 2030 年迄に 1 人当たりの包装廃棄物の量を 5%、2035 年迄に10%、2045年迄に15%削減する必要があります。その他、リサイクル材の比率やリサイクル可能な包装以外の禁止条項が盛り込まれており、野心的な内容となっています。18ヶ月の移行期間を経て完全な施行となります。
▶ https://environment.ec.europa.eu/topics/waste-and-recycling/packaging-waste_en
オランダの多国籍金融機関のING銀行は、来年、EUの炭素価格が1トン当り74ユーロに達すると予測しました。2026年には国境を越えた炭素調整メカニズム(CBAM)の課金がスタートする予定で、炭素価格は貿易摩擦に直結します。EUではエネルギー価格の高騰と需要の低迷が相まって、生産活動が停滞しています。その為、炭素価格の高騰は産業活動衰退のリスクと貿易摩擦の激化をもたらす可能性がある事を指摘しています。
▶ https://think.ing.com/articles/sluggish-carbon-demand/
米国で政権が変わる事から、最近言われているのは、“decarbonizeation” equals “decarbonisation”(脱炭素はイコール産業空洞化)という事です。実際に欧州で起こっている事を、批判を込めて表している言葉ですが、既に新政権では幾つかの公約が実行される可能性が高くなっています。前回のトランプ政権時代と同様にパリ協定から離脱、石炭、ガス、石油採掘に対する規制緩和、炭素排出に関する規制緩和、インフレ抑制法の限定的な削減です。こうした政策への賛同は、米国だけでなく、欧州の一部でも選挙結果に表れ出しており、今までと違う対応が必要となっています。
▶ https://www.morningstar.co.uk/mobile/Article.aspx?Site=uk&articleid=258444
トランプ次期米大統領の政権移行チームは、EVと充電ステーションへの支援を打ち切り、中国からの自動車、部品、電池材料の輸入を禁止する抜本的な改革を行う計画です。選挙運動中、トランプ氏は、エンジン車に対する規制を緩和し、バイデン大統領のEV義務化政策を撤回すると公約していました。内部文書によると政権移行チームは世界中の全てのバッテリー材料に関税を課し、その後同盟国と個別に免除を交渉することを推奨しています。政権移行チームの計画では、充電ステーションの建設やEVの低価格化に現在流れている資金を、中国に依存しないバッテリーやバッテリー製造に不可欠な鉱物の確保等、経済安全保障の優先事項に振り向けます。現在、米国はアンチモンのリソース確立に猛烈な勢いで動いています。
▶ https://www.reuters.com/business/autos-transportation/trump-transition-team-plans-sweeping-rollback-biden-ev-emissions-policies-2024-12-16/
VW傘下のアウディーはEV需要の減速でベルギーのEV工場を閉鎖すると発表しました。3,000人の雇用に影響が出る模様で、Q8 e-tronモデルの今後の生産については発表されていません。最近、ステランティス傘下のボクスフォールも 2025年4月に英国の1工場を閉鎖する計画を発表し、理由を英国政府のゼロエミッション車(ZEV)規制のせいであると述べていました。高級ブランドのランボルギーニは、高級車EV市場の準備がまだ出来ていない為、自社初のEV発売を2029年に延期するとCEO自らが述べています。一方で欧州の各メーカーは来年からの欧州の新排ガス規制に対応する為、ガソリン車を値上げし、EV価格を下げています。
▶ https://www.thisismoney.co.uk/money/electriccars/article-14201035/Audi-close-Brussels-EV-factory-Q8-e-tron-February-electric-car-demand-slows-strikes-erupt-Germany-parent-company-Volkswagen-threatened-plant-closures.html?ico=comment-anchor
ドイツでは、オラフ・ショルツ首相の不信任を受けて、来年2月末に総選挙が行われます。これは「遅きに失した」との評価で、衰退するドイツ経済は現在も更に加速しています。ロシアの安価なエネルギーを失い、メルケルの軽率な判断で原子力を止めると決断し、更に好景気な中国に市場を頼った結果全てが負の遺産として残り、その3重苦は今、ドイツ経済を非常に厳しい状況に置いています。ドイツは現在、世界でも最も高い電力価格に苦しんでおり、産業基盤に不可欠な化学品などの重工業を壊滅させています。いずれにしても、構造的な不況から抜本的に抜け出す為には総選挙で相当な改革派が勝利しなければ難しいと見られています。
▶ https://www.telegraph.co.uk/business/2024/12/17/germany-election-wont-stop-rot-at-heart-of-eurozone/
順調だった欧州の太陽光発電設備は、今年、増加のペースを大幅に下げました。増加は2023年比で僅か4%となりました。過去3年間は伸び率が年間40~50%もありました。最大の問題は送電網が対応できない事です。送電網のアップデートにはとてつもない投資が必要です。2024年にEUは合計65.5GWの太陽光発電設備を導入し、これは年間の設備導入量としては過去最高です。しかし伸び率は大幅に鈍化しました。2021年と2022年には、それぞれ40%増加しており、2023年は、前年比で50%と急増しました。EUは太陽光発電容量目標を達成する為に2030年まで毎年70GWの太陽光発電を設置する必要がありますが、このペースでは達成は難しいと見られています。
▶ https://www.reuters.com/business/energy/eu-solar-growth-slows-raising-fears-energy-transition-2024-12-17/
ステンレス市場は、需要の低迷、供給過剰、ニッケル価格の下落により、2024年は厳しい年となりました。インドネシアのニッケル生産量の増加は世界的な余剰を生み出し、価格を下落させ、ステンレス産業に大きな影響を与え続けています。現在も流通業者の在庫が過剰となり、価格に圧力が掛かっています。それでもインドネシア政府はニッケル市場での優位性を追求しており、特に欧米でのEV需要の鈍化もあり、供給が大幅に増加しました。USGSのデータによるとインドネシアは2022年と2023年に鉱山供給の48%と50%を占めると推定されています。2024年は生産量の増加と他の鉱山の閉鎖に支えられ、インドネシアのシェアは更に拡大すると予想されており、この状況は政府の政策転換が無い限りは、しばらくは続きそうです。
▶ https://agmetalminer.com/2024/12/16/stainless-bearish-nickel-prices/
カナダは政治的に混乱に陥っています。トルドー首相は元副首相兼財務大臣のクリスティア・フリーランドの突然の辞任を受けて、完全なレイムダック状態となっています。トルドー首相がどのような決断を下すにせよ、今後数ヶ月以内に選挙が行われる可能性が高くなっています。法律上は来年10月迄に次の選挙を実施しなければなりませんが、それよりも早まる可能性があります。11月に実施した調査によるとカナダ人の42%が次回の選挙で野党の保守党に投票する予定だと答え、政権党の自由党を支持したのは僅か26%でした。カナダ人の7割はトルドー政権に不満を持っていると答えています。次期首相に最も近いと言われている保守党のピエール・ポワリエヴル党首は、ここ2年程頻繁に英語圏のSNSに登場し人気があり、トランプ同様「カナダ・ファースト」を掲げ、炭素税の廃止を訴え、現政権のイデオロギー路線とは真反対の政策を掲げています。今月に入りフランスでは首相が不信任で追放され新首相も予算協議で分裂、ドイツは政権が完全に崩壊して来年2月末に総選挙、そして、カナダも政権がレイムダック状態となり、グリーンアジェンダを先導した世界の3大国がいずれも今月大きな転換点を迎えています。
▶ https://nationalpost.com/news/canada/poilievre-demands-election-before-trump-inauguration
遂にインドが鉄鋼のセーフガード関税の導入に動くようです。税率は最大で25%、この税の目的は、安価な中国製品の輸入増加による国内鉄鋼メーカーの保護です。最終決定はインドの貿易救済局による調査後に行われ、1ヵ月以内に完了する予定です。税導入にあたり懸念となっていた、安価な鋼材を望む中小企業への影響を和らげる為、JSWスチール、タタ・スチール、アルセロール・ミッタル・ニッポン・スチール・インディアなどの大手鉄鋼会社は中小企業に鋼材を値下げして販売することに合意しました。それら登録中小企業は、市場価格より約20%安い価格で鉄鋼材を購入できる見込みです。
▶ https://www.reuters.com/markets/commodities/india-plans-up-25-temporary-tax-curb-cheap-chinese-steel-imports-2024-12-17/
同じくEUでも、ひっそりと鉄鋼セーフガードの見直しを開始する通知が発行されています。対象となる可能性が高いのは、中国鋼材に加え、エジプト、日本、インド、ベトナム製の熱延コイル(HRC)、ベトナムの溶融亜鉛メッキ鋼板、韓国とインドネシアの鋼板、台湾とその他アジアの地域からの冷延コイルとなっています。この措置は国や製品による関税割当の配分を変えるものです。欧州では既に今週に入りドイツのリヴァ・ヘニングスドルフが3か月間の操業停止を計画、スイス政府は低迷する鉄鋼業界への国家援助を承認する等、鉄鋼企業の不況は続いています。今年、世界の余剰鉄鋼生産能力が6億トンに迫ると見られており、構造的な問題は貿易の保護主義以外ではそう簡単に解決できない事を、インドと欧州のセーフガード措置が示しています。
▶ https://eur-lex.europa.eu/eli/C/2024/7515/oj
欧州リサイクル産業連合EURICは、欧州域内でプラスチックリサイクル業者の苦境が続いている事から共同のプレスリリースを発行し、政策当局と業界関係者に直ちに行動に出るよう求めています。不況は複数の要因から構造的に起こっています。それらはEU域外からのリサイクルプラスチックの輸入増加、国内原材料の生産とリサイクルへの投資の減少、EU産バージンプラスチックとリサイクルプラスチックの需要不足です。プラスチックは欧州の様に「いくらか規制を強化」しても、リサイクル業にとっては難しいアイテムである事が欧州で実証されてしまいました。
▶ https://nypost.com/2023/01/11/biden-admin-officials-worked-at-biden-center-where-classified-papers-found-report/
米国のアルミニウム協会は新政権と新議会に向けて戦略的な政策概要を発表しました。この政策提言書は「アメリカの為のアルミニウム」と題されたもので、アルミニウムの権益を優先する国家戦略を求めています。提言では国内リサイクルの促進、重要な金属供給源の確保、サプライチェーンの確保、アルミニウムへの投資、を促進するよう求めています。
▶ https://www.alcircle.com/news/aluminum-association-outlines-key-policy-priorities-for-incoming-us-administration-and-congress-112843
米国のミネソタ州では、2025年1月1日からにスクラップ銅の売買が免許制(許可制)になります。ミネソタ州では公共設備から銅線が盗まれる事例が複数起き、当局によって規制が課される事になりました。申請はミネソタ州商務省長官宛に行う必要があります。申請手続きの際には、事業の為に許可書を合法的に取得する必要があると認められなければなりません。ミッドウェスト支部のスクラップリサイクル産業協会はこの規制を阻止しようと裁判を起こしていましたが、判事は制度を有効としました。他州への影響が懸念されています。
▶ https://kstp.com/kstp-news/local-news/minnesota-to-require-license-for-buying-selling-scrap-metal-copper/
米国プラスチック協定(US Plastic Pact)は、2023~2024年のインパクトレポートを発行しました。報告書は米国におけるプラスチックのイノベーションと、政府及び利害関係者の緊急の行動を呼びかけています。報告書はプラスチックリサイクルの定義の標準化、拡大生産者責任(EPR)の実施、リサイクルデータ収集の義務化等、循環性を推進する為の国家政策を求めています。また、協定の目標を達成するために必要なインフラを拡大するには、連邦政府の行動が不可欠であると強調しています。欧州ではPPWRが法律になる目前ですが、世界的にプラスチック政策が行き詰まっており、このレポートでも、その緊急性を強調しています。
▶ https://usplasticspact.org/2023-24-impact-report/
米国環境保護庁(EPA)は、カリフォルニア州の大気浄化に関する2つの規則を承認しました。この規則には2035年迄に州全体でガソリン車の新車販売を禁止すること等が含まれています。「先進クリーンカーII規則」では、カリフォルニア州で販売される新車の内、ゼロエミッション車、又はプラグインハイブリッド車の割合を増やすことが義務付けられており、同規制では最終的に2035年迄にガソリン車の新車販売が禁止される事になります。施行は2026年の予定です。2035年迄にガソリン車の新車販売を禁止する政策を採用しているのは欧州連合(27カ国)、英国、カナダの3地域で、カリフォルニア州は同じ規制を採用する4番目の地域となります。
▶ https://www.latimes.com/environment/story/2024-12-18/epa-oks-california-ev-mandate-and-tailpipe-emission-rule
欧州自動車工業会(ACEA)が11月の欧州の新車販売データを発表しました。新車登録台数は1.9%減少し、EUの4大市場の内、プラス成長はスペインのみ(6.4%)でした。EVの販売台数は9.5%減少し、市場シェアは昨年の16.3%から15%に低下しました。ガソリン車の販売台数は7.8%減少、ディーゼル車は15.3%減少しました。ハイブリッド車の登録台数は18.5%増加し、市場シェアは昨年11月の27.5%から33.2%に上昇しています。ハイブリッドは3ヵ月連続でガソリン車の登録台数を上回りました。
▶ https://www.acea.auto/pc-registrations/new-car-registrations-1-9-in-november-2024-year-to-date-battery-electric-sales-5-4/
▶ https://euric-aisbl.eu/resource-hub/press-releases-statements/europes-ship-recyclers-publish-manifesto-calling-for-stronger-eu-measures-to-keep-vessels-in-the-eu-and-ensure-material-recovery-and-environmental-protection
大手商品取引会社のTrafiguraは、モンゴルでの数十億ドルの石油詐欺が発覚した為、2024年の利益が急減し、自己資本と利益を下方修正しました。Trafiguraは一昨年、ニッケルの件で世界的な問題となった取引を誘発しました。2024年の利益は前年比60%減の28億ドルとなり、2020年以来の最低となりました。モンゴルでの詐欺は同社がニッケル取引に関連して6億ドルを失った後、2年間で2度目の巨額な損失となりました。最近、海外でこうした事例が散見される為、注意が必要です。
▶ https://finance.yahoo.com/news/trafigura-net-profit-equity-drops-111410411.html
欧州のアルミニウム業界団体でありロビー団体でもあるヨーロピアン・アルミニウム(EA)は、欧州域内にアルミニウムスクラップを留めるよう述べています。EAはEU政府が海外のスクラップ消費国と対等な競争条件を保つ為の戦略に取り組む必要があると考えています。EAは生産に多くの電気エネルギーを使うアルミについて、スクラップを欧州内に留めておくことは、エネルギー危機の影響から業界を守るという事に密接に関係していると強調しています。「スクラップの輸出はエネルギーの輸出に等しく、より多くのスクラップを利用することで生産者はエネルギーの量を削減できる、と主張しています。アルミの業界団体も、鉄と同様に資源確保に動き始めました。
▶ https://www.spglobal.com/commodity-insights/en/news-research/latest-news/metals/121224-interview-european-aluminium-wants-to-level-the-playing-field-for-global-aluminum-recycling
欧州理事会は、EU 包装及び包装廃棄物規制 (PPWR)の承認投票を行い、オーストリアとマルタを除く合意で承認されました。11月に議会承認が完了しており、事実上、これが立法過程の最後となります。 包装廃棄物の目標は2018 年と比較して 2030 年迄に 1 人当たりの包装廃棄物の量を 5%、2035 年迄に10%、2045年迄に15%削減する必要があります。その他、リサイクル材の比率やリサイクル可能な包装以外の禁止条項が盛り込まれており、野心的な内容となっています。18ヶ月の移行期間を経て完全な施行となります。
▶ https://environment.ec.europa.eu/topics/waste-and-recycling/packaging-waste_en
オランダの多国籍金融機関のING銀行は、来年、EUの炭素価格が1トン当り74ユーロに達すると予測しました。2026年には国境を越えた炭素調整メカニズム(CBAM)の課金がスタートする予定で、炭素価格は貿易摩擦に直結します。EUではエネルギー価格の高騰と需要の低迷が相まって、生産活動が停滞しています。その為、炭素価格の高騰は産業活動衰退のリスクと貿易摩擦の激化をもたらす可能性がある事を指摘しています。
▶ https://think.ing.com/articles/sluggish-carbon-demand/
米国で政権が変わる事から、最近言われているのは、“decarbonizeation” equals “decarbonisation”(脱炭素はイコール産業空洞化)という事です。実際に欧州で起こっている事を、批判を込めて表している言葉ですが、既に新政権では幾つかの公約が実行される可能性が高くなっています。前回のトランプ政権時代と同様にパリ協定から離脱、石炭、ガス、石油採掘に対する規制緩和、炭素排出に関する規制緩和、インフレ抑制法の限定的な削減です。こうした政策への賛同は、米国だけでなく、欧州の一部でも選挙結果に表れ出しており、今までと違う対応が必要となっています。
▶ https://www.morningstar.co.uk/mobile/Article.aspx?Site=uk&articleid=258444
トランプ次期米大統領の政権移行チームは、EVと充電ステーションへの支援を打ち切り、中国からの自動車、部品、電池材料の輸入を禁止する抜本的な改革を行う計画です。選挙運動中、トランプ氏は、エンジン車に対する規制を緩和し、バイデン大統領のEV義務化政策を撤回すると公約していました。内部文書によると政権移行チームは世界中の全てのバッテリー材料に関税を課し、その後同盟国と個別に免除を交渉することを推奨しています。政権移行チームの計画では、充電ステーションの建設やEVの低価格化に現在流れている資金を、中国に依存しないバッテリーやバッテリー製造に不可欠な鉱物の確保等、経済安全保障の優先事項に振り向けます。現在、米国はアンチモンのリソース確立に猛烈な勢いで動いています。
▶ https://www.reuters.com/business/autos-transportation/trump-transition-team-plans-sweeping-rollback-biden-ev-emissions-policies-2024-12-16/
VW傘下のアウディーはEV需要の減速でベルギーのEV工場を閉鎖すると発表しました。3,000人の雇用に影響が出る模様で、Q8 e-tronモデルの今後の生産については発表されていません。最近、ステランティス傘下のボクスフォールも 2025年4月に英国の1工場を閉鎖する計画を発表し、理由を英国政府のゼロエミッション車(ZEV)規制のせいであると述べていました。高級ブランドのランボルギーニは、高級車EV市場の準備がまだ出来ていない為、自社初のEV発売を2029年に延期するとCEO自らが述べています。一方で欧州の各メーカーは来年からの欧州の新排ガス規制に対応する為、ガソリン車を値上げし、EV価格を下げています。
▶ https://www.thisismoney.co.uk/money/electriccars/article-14201035/Audi-close-Brussels-EV-factory-Q8-e-tron-February-electric-car-demand-slows-strikes-erupt-Germany-parent-company-Volkswagen-threatened-plant-closures.html?ico=comment-anchor
ドイツでは、オラフ・ショルツ首相の不信任を受けて、来年2月末に総選挙が行われます。これは「遅きに失した」との評価で、衰退するドイツ経済は現在も更に加速しています。ロシアの安価なエネルギーを失い、メルケルの軽率な判断で原子力を止めると決断し、更に好景気な中国に市場を頼った結果全てが負の遺産として残り、その3重苦は今、ドイツ経済を非常に厳しい状況に置いています。ドイツは現在、世界でも最も高い電力価格に苦しんでおり、産業基盤に不可欠な化学品などの重工業を壊滅させています。いずれにしても、構造的な不況から抜本的に抜け出す為には総選挙で相当な改革派が勝利しなければ難しいと見られています。
▶ https://www.telegraph.co.uk/business/2024/12/17/germany-election-wont-stop-rot-at-heart-of-eurozone/
順調だった欧州の太陽光発電設備は、今年、増加のペースを大幅に下げました。増加は2023年比で僅か4%となりました。過去3年間は伸び率が年間40~50%もありました。最大の問題は送電網が対応できない事です。送電網のアップデートにはとてつもない投資が必要です。2024年にEUは合計65.5GWの太陽光発電設備を導入し、これは年間の設備導入量としては過去最高です。しかし伸び率は大幅に鈍化しました。2021年と2022年には、それぞれ40%増加しており、2023年は、前年比で50%と急増しました。EUは太陽光発電容量目標を達成する為に2030年まで毎年70GWの太陽光発電を設置する必要がありますが、このペースでは達成は難しいと見られています。
▶ https://www.reuters.com/business/energy/eu-solar-growth-slows-raising-fears-energy-transition-2024-12-17/
ステンレス市場は、需要の低迷、供給過剰、ニッケル価格の下落により、2024年は厳しい年となりました。インドネシアのニッケル生産量の増加は世界的な余剰を生み出し、価格を下落させ、ステンレス産業に大きな影響を与え続けています。現在も流通業者の在庫が過剰となり、価格に圧力が掛かっています。それでもインドネシア政府はニッケル市場での優位性を追求しており、特に欧米でのEV需要の鈍化もあり、供給が大幅に増加しました。USGSのデータによるとインドネシアは2022年と2023年に鉱山供給の48%と50%を占めると推定されています。2024年は生産量の増加と他の鉱山の閉鎖に支えられ、インドネシアのシェアは更に拡大すると予想されており、この状況は政府の政策転換が無い限りは、しばらくは続きそうです。
▶ https://agmetalminer.com/2024/12/16/stainless-bearish-nickel-prices/
カナダは政治的に混乱に陥っています。トルドー首相は元副首相兼財務大臣のクリスティア・フリーランドの突然の辞任を受けて、完全なレイムダック状態となっています。トルドー首相がどのような決断を下すにせよ、今後数ヶ月以内に選挙が行われる可能性が高くなっています。法律上は来年10月迄に次の選挙を実施しなければなりませんが、それよりも早まる可能性があります。11月に実施した調査によるとカナダ人の42%が次回の選挙で野党の保守党に投票する予定だと答え、政権党の自由党を支持したのは僅か26%でした。カナダ人の7割はトルドー政権に不満を持っていると答えています。次期首相に最も近いと言われている保守党のピエール・ポワリエヴル党首は、ここ2年程頻繁に英語圏のSNSに登場し人気があり、トランプ同様「カナダ・ファースト」を掲げ、炭素税の廃止を訴え、現政権のイデオロギー路線とは真反対の政策を掲げています。今月に入りフランスでは首相が不信任で追放され新首相も予算協議で分裂、ドイツは政権が完全に崩壊して来年2月末に総選挙、そして、カナダも政権がレイムダック状態となり、グリーンアジェンダを先導した世界の3大国がいずれも今月大きな転換点を迎えています。
▶ https://nationalpost.com/news/canada/poilievre-demands-election-before-trump-inauguration
遂にインドが鉄鋼のセーフガード関税の導入に動くようです。税率は最大で25%、この税の目的は、安価な中国製品の輸入増加による国内鉄鋼メーカーの保護です。最終決定はインドの貿易救済局による調査後に行われ、1ヵ月以内に完了する予定です。税導入にあたり懸念となっていた、安価な鋼材を望む中小企業への影響を和らげる為、JSWスチール、タタ・スチール、アルセロール・ミッタル・ニッポン・スチール・インディアなどの大手鉄鋼会社は中小企業に鋼材を値下げして販売することに合意しました。それら登録中小企業は、市場価格より約20%安い価格で鉄鋼材を購入できる見込みです。
▶ https://www.reuters.com/markets/commodities/india-plans-up-25-temporary-tax-curb-cheap-chinese-steel-imports-2024-12-17/
同じくEUでも、ひっそりと鉄鋼セーフガードの見直しを開始する通知が発行されています。対象となる可能性が高いのは、中国鋼材に加え、エジプト、日本、インド、ベトナム製の熱延コイル(HRC)、ベトナムの溶融亜鉛メッキ鋼板、韓国とインドネシアの鋼板、台湾とその他アジアの地域からの冷延コイルとなっています。この措置は国や製品による関税割当の配分を変えるものです。欧州では既に今週に入りドイツのリヴァ・ヘニングスドルフが3か月間の操業停止を計画、スイス政府は低迷する鉄鋼業界への国家援助を承認する等、鉄鋼企業の不況は続いています。今年、世界の余剰鉄鋼生産能力が6億トンに迫ると見られており、構造的な問題は貿易の保護主義以外ではそう簡単に解決できない事を、インドと欧州のセーフガード措置が示しています。
▶ https://eur-lex.europa.eu/eli/C/2024/7515/oj
欧州リサイクル産業連合EURICは、欧州域内でプラスチックリサイクル業者の苦境が続いている事から共同のプレスリリースを発行し、政策当局と業界関係者に直ちに行動に出るよう求めています。不況は複数の要因から構造的に起こっています。それらはEU域外からのリサイクルプラスチックの輸入増加、国内原材料の生産とリサイクルへの投資の減少、EU産バージンプラスチックとリサイクルプラスチックの需要不足です。プラスチックは欧州の様に「いくらか規制を強化」しても、リサイクル業にとっては難しいアイテムである事が欧州で実証されてしまいました。
▶ https://nypost.com/2023/01/11/biden-admin-officials-worked-at-biden-center-where-classified-papers-found-report/
米国のアルミニウム協会は新政権と新議会に向けて戦略的な政策概要を発表しました。この政策提言書は「アメリカの為のアルミニウム」と題されたもので、アルミニウムの権益を優先する国家戦略を求めています。提言では国内リサイクルの促進、重要な金属供給源の確保、サプライチェーンの確保、アルミニウムへの投資、を促進するよう求めています。
▶ https://www.alcircle.com/news/aluminum-association-outlines-key-policy-priorities-for-incoming-us-administration-and-congress-112843
米国のミネソタ州では、2025年1月1日からにスクラップ銅の売買が免許制(許可制)になります。ミネソタ州では公共設備から銅線が盗まれる事例が複数起き、当局によって規制が課される事になりました。申請はミネソタ州商務省長官宛に行う必要があります。申請手続きの際には、事業の為に許可書を合法的に取得する必要があると認められなければなりません。ミッドウェスト支部のスクラップリサイクル産業協会はこの規制を阻止しようと裁判を起こしていましたが、判事は制度を有効としました。他州への影響が懸念されています。
▶ https://kstp.com/kstp-news/local-news/minnesota-to-require-license-for-buying-selling-scrap-metal-copper/
米国プラスチック協定(US Plastic Pact)は、2023~2024年のインパクトレポートを発行しました。報告書は米国におけるプラスチックのイノベーションと、政府及び利害関係者の緊急の行動を呼びかけています。報告書はプラスチックリサイクルの定義の標準化、拡大生産者責任(EPR)の実施、リサイクルデータ収集の義務化等、循環性を推進する為の国家政策を求めています。また、協定の目標を達成するために必要なインフラを拡大するには、連邦政府の行動が不可欠であると強調しています。欧州ではPPWRが法律になる目前ですが、世界的にプラスチック政策が行き詰まっており、このレポートでも、その緊急性を強調しています。
▶ https://usplasticspact.org/2023-24-impact-report/
米国環境保護庁(EPA)は、カリフォルニア州の大気浄化に関する2つの規則を承認しました。この規則には2035年迄に州全体でガソリン車の新車販売を禁止すること等が含まれています。「先進クリーンカーII規則」では、カリフォルニア州で販売される新車の内、ゼロエミッション車、又はプラグインハイブリッド車の割合を増やすことが義務付けられており、同規制では最終的に2035年迄にガソリン車の新車販売が禁止される事になります。施行は2026年の予定です。2035年迄にガソリン車の新車販売を禁止する政策を採用しているのは欧州連合(27カ国)、英国、カナダの3地域で、カリフォルニア州は同じ規制を採用する4番目の地域となります。
▶ https://www.latimes.com/environment/story/2024-12-18/epa-oks-california-ev-mandate-and-tailpipe-emission-rule
欧州自動車工業会(ACEA)が11月の欧州の新車販売データを発表しました。新車登録台数は1.9%減少し、EUの4大市場の内、プラス成長はスペインのみ(6.4%)でした。EVの販売台数は9.5%減少し、市場シェアは昨年の16.3%から15%に低下しました。ガソリン車の販売台数は7.8%減少、ディーゼル車は15.3%減少しました。ハイブリッド車の登録台数は18.5%増加し、市場シェアは昨年11月の27.5%から33.2%に上昇しています。ハイブリッドは3ヵ月連続でガソリン車の登録台数を上回りました。
▶ https://www.acea.auto/pc-registrations/new-car-registrations-1-9-in-november-2024-year-to-date-battery-electric-sales-5-4/