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NEWSCONの気になるNEWS(2024年11月第3週)
中国非鉄金属工業協会の葛宏林会長が発言し「銅製錬所の利益は多くの場合、銅ではなく副産物から得られており、一部は既に損失を被っている」と述べています。葛氏は中国企業に対し、海外の政治的に安定した地域から「リサイクル銅」を確保するよう奨励しました。中国は最近、リサイクル銅の輸入規制を緩和し、一次原料への依存を減らす為に国が支援するリサイクル企業を立ち上げています。葛氏は銅の価格はアルミニウムの3.5倍以上であることに言及し、銅の代替としてアルミニウムを使用することで大きな経済的利益が得られると強調しました。また中国はアルミニウム生産に必要な資源の60%を輸入に頼っていると指摘し、中国企業が80億トン以上の外国産ボーキサイトの所有権を確保している実情を説明しています。この量は世界の埋蔵量の4分の1以上に相当する為、中国は膨大なアルミ権益を持っている事を強調しました。
▶ https://www.alcircle.com/news/aluminium-and-recycled-copper-china-s-strategy-to-address-copper-scarcity-112547
米国トランプ新政権ではインフレ抑制法(IRA)の目玉措置であるEVへの補助金(税控除)の廃止を本格検討している事が伝わっています。廃止はトランプ氏のエネルギー政策移行チームの会議で議論されています。トランプ新政権で政府の効率化担当に内定しているテスラのマスク氏は、今年初めに補助金の廃止はテスラの売り上げに若干の打撃を与えるかもしれないが、ゼネラル・モーターズ等の老舗自動車メーカーを含む米国のEV競合各社には壊滅的な打撃を与えるだろうと発言していました。一方、米国の大手自動車メーカーの業界団体オートアライアンスはEV税額控除の維持を望んでいます。次期大統領は、米国の石油生産量を増やす事、EVクレジット、風力発電、太陽光発電、水素への補助金の減額や廃止、クリーンエネルギー計画の撤回などを選挙の公約としています。
▶ https://www.cnbc.com/2024/11/14/trumps-transition-team-aims-to-kill-biden-ev-tax-credit-reuters.html
欧州のバッテリー業界は、域内での材料自給に向け重大な課題に直面しています。欧州では既に計画されていたバッテリー工場10件が事実上キャンセルされています。S&Pの予想では、こうした複数の工場のキャンセルにより、バッテリー需要が増加した場合には対応できなく、72%の供給不足が予測されています。域内生産では需要の4分の3近くを満たす事ができない為、欧州は引き続きバッテリーの輸入に大きく依存せざるを得なくなる見込みです。欧州で稼働中のバッテリー工場の 91% はニッケル・マンガン・コバルト (NMC) 電池を生産しています。欧州で工場のキャンセルは主にNMC電池を生産する工場に集中しています。理由は市場でLFP 電池の需要が高まっている為です。施行されたEUの重要原材料法では、2030年までにバッテリーの主要金属について、域内でEUの消費量の40%を加工、10%を抽出することを義務付けています。しかし、この目標をサポートする資金は未だにありません。欧州内でこれらの材料の入手が限られている為、サプライチェーンに脆弱性が生じ、電池工場への投資が停滞しています。この重要な課題の解決に糸口が見えない状況です。
▶ https://www.spglobal.com/commodityinsights/en/market-insights/blogs/energy-transition/111524-europe-battery-supply-chain-hurdles-nmc-lfp-lithium-cobalt
欧州には、国家エネルギー・気候計画(NECP)があります。この計画により、加盟国は10 年間で排出量を削減し、化石燃料を段階的に廃止し、再生可能エネルギーを導入する方法を決定します。残念ながら、多くの政府は2024年6月の改訂版NECPの提出期限に間に合わず、期限内に提出できた政府も重大な欠陥だらけの計画を作成しています。フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、スウェーデンを含む欧州各地のNGOによる初期評価では、EUの気候目標を危うくするだけでなく、公正な移行の約束も危うくする大きなギャップが明らかになっています。最大の問題は「法的拘束力を持つ各国の気候・エネルギー目標」と、NECPで提示された政策公約との間にギャップがあり、各国の目標がNECPの公約どおりとなっていない事です。国として法律としてしまうと、達成が難しい野心的な目標が多い為です。 NECPは今、エネルギー転換への深刻な危機に瀕しています。
▶ https://www.euractiv.com/section/eet/opinion/commission-must-hold-eu-countries-to-account-on-climate-obligations/
EUでは電池のサプライチェーンに関して、政府が「断固たる措置」を取れるかに、その将来が委ねられている状況です。実はEVや蓄電だけでなく、電池は既に兵器に多く利用されている実態があります。中国政府は、米国最大のドローンメーカーであるスカイディオに制裁を課し、同社への中国製バッテリーの販売を禁止しています。スカイディオはウクライナへの最大のドローン供給業者です。その為、中国からの電池の供給が途絶えた場合、西側の防衛産業にもリスクがあります。欧米の防衛計画立案者にとって、革新的で耐久性のある電池供給の調達は優先すべき課題になりつつあります。電池は既に地経学的競争の中心にあり「電池戦争」は現実化しています。中国の政策で電池市場が生まれ、その過程で中国は市場を独占しました。欧州産業の未来とエネルギー転換を決定づける電池の支配と影響力をめぐり、EUは厳しい決断を迫られている状況です。
▶ https://batteriesnews.com/recharge-or-regret-why-the-eu-must-act-decisively-to-secure-europes-struggling-battery-industry/#google_vignette
CATLが第2世代ナトリウム電池を発表しました。技術者は電池の開発状況を明らかにし、2025年に発売する予定だと述べています。
第1世代電池との最大の違いはマイナス40℃の極低温でも正常に放電できる点です。更にエネルギー密度を維持しながら、より優れた安全性能と低温耐性を保ちます。新型電池のエネルギー密度は公開されていませんが、200Wh/kg超を目指してきました。電池は2025年に発売される予定ですが、量産規模での販売は2027年になる見込みです。
▶ https://carnewschina.com/2024/11/18/catl-announces-second-generation-sodium-battery-normal-discharge-at-40c/
インドの鉄鋼大臣は輸入品の増加に対して「国内産業を保護する為に様々な措置を検討している」と発言しています。これは政府が何等かの行動を起こす可能性が高い事を示唆するもので、方法を本格的に検討する段階に入っている事を示しています。また現在やや停滞している国内需要も、今後数ヶ月で大幅に改善すると述べています。政府が何等かの刺激策を行う可能性に含みを持たせています。
▶ https://www.etnownews.com/economy/govt-taking-steps-steel-secretary-hints-at-big-relief-in-steel-price-in-coming-months-article-115307481
トランプ当選のもう1つの影響に銅価格があります。アナリストは銅価格が今後4ヵ月以内に1トン当たり8,500ドルまで下落する可能性を指摘しました。CRUワールド・カッパー・カンファレンス・アジアでは「米国の新政権による保護貿易政策」「豊富な在庫量」、「1月下旬からの春節休暇」、「西側諸国の需要低迷」が重なり、2025年Q1は50万トン近くの「余剰」が生じると予想しています。Citiのアナリストは銅価格の予想を3ヵ月以内に当たり9,500ドル⇒8,500ドルに引き下げました。一旦落ち込むものの、その後は鉱山問題もあり、2025年の平均価格は9,475ドルから9,575ドルになると予想しています。
▶ https://www.miningweekly.com/article/copper-price-could-fall-to-8-500-as-trump-win-boosts-dollar-threatens-demand-2024-11-15
EUの使用済み自動車規則が現在の案から緩和される可能性が高まっています。自動車業界は「バランスの取れた生産者責任」を要求しています。野心的で断片的なアプローチはサプライチェーンでのコストを上昇させ、手軽な価格での車輛製造に影響が出ると懸念しています。VWの技術担当はリサイクルプラスチックの製品への含有量を現案の25%から15%に減らす事を求めています。しかし、全体としてはリサイクル活動を拡大させる事が重要との認識で一致しています。
▶ https://www.euractiv.com/section/eet/news/eus-end-of-life-vehicle-rules-face-tough-challenges-say-stakeholders/
欧州ではグリーンスチールの価格の高さが購入意欲を減退させている一つの原因となっています。グリーンスチールのオファーとビッドの差が150から200ユーロ程乖離しています。グリーンスチールの低迷は、高額価格に加えて、欧州の公共プロジェクト(グリーン鋼の調達を主張できるプロジェクト)が不足している為です。欧州鉄鋼業界団体のEuroferは、鉄鋼メーカーの保護政策と公共調達や公売におけるグリーンスチールを請願しています。しかし、現実は上手く回っていないようです。
▶ https://eurometal.net/european-green-steel-premiums-steady-despite-economic-woes-limiting-buying-interest/
国際エネルギー機関が「重要鉱物のリサイクル」に関する特別レポートを発行しました。報告書には重要鉱物のリサイクルを加速する為の重要な政策提言が含まれています。現在、銅、リチウム、ニッケル、コバルト、希土類などの重要な鉱物を生産する為には多額の投資が必要となっています。その為、リサイクルは、鉱物供給の安全性と持続可能性に不可欠なものとして、今後「政策的に推進されるべき」と強調しています。
▶ https://www.iea.org/reports/recycling-of-critical-minerals/executive-summary
プーチン大統領はロシアの主要軍事文書の改訂版と新核ドクトリンを承認しました。新しいガイドラインではロシアは大量破壊兵器や大規模な通常兵器を保有する敵対国や軍事ブロックに対して核抑止力を使用する権利を留保していると述べています。この改訂はバイデン米大統領がウクライナに提供された長距離兵器をロシア領内に長距離攻撃することを承認したとの報道が浮上した事を受けての措置となりました。ロシア軍で移動式の核シェルターの配備が一部で行われる等、新たな緊張となっています。ポーランド政府は早速、国内企業と爆発物製造に関する契約を締結しています。米国の承認にはウクライナでの兵士の数不足と疲弊、北朝鮮による今後最大3万~10万人の派兵があり、ドイツもフランスも政府がレイムダック状態で、英国の労働党政権も殆ど交渉に役立たずの為、欧州のバックアップが不十分である事があげられます。
▶ https://timesofindia.indiatimes.com/videos/international/putins-nuclear-order-fire-missile-on-russia-face-nukes-doctrine-revised-after-bidens-trigger/videoshow/115452101.cms
アンチモンが今月上昇しています。既に今年は200%値上がりしており、米中対立で供給不足への懸念が急速に高まっています。半導体、電池、塗料、難燃材料、太陽光、他の金属の強度を向上させる合金として使用されているアンチモンは、世界の供給の内、中国が原料の48%と精製と加工の約65%を占めています。またアンチモンは軍需産業にとって最も重要な鉱物の1つです。徹甲弾や暗視ゴーグル、レーザー照準器、爆発物製剤、核兵器製造、赤外線センサーから軍用電子機器まで、その他の軍事ニーズのあらゆるものに使用されています。米国はアンチモンの60%以上を中国から得ています。技術的なレベルでは米国は自国でアンチモンを精製することができますが、鉱山を持っていない為、依然としてサードパーティの原材料供給に依存しています。米中対立によって既に何種類かの金属への輸出規制が敷かれており、今後、政治的な判断で重要鉱物の価格が大きく変化しそうです。
▶ https://www.argusmedia.com/metals-platform/metal/minor-and-specialty-metals-antimony
EV化を最も推進したVWが工場閉鎖や大量の解雇を計画、日産は世界で9000人を削減、そして今度は同じくEV化を進めたフォードが欧州で4000人規模の人員削減を行うと発表しました。英国で800人、ドイツで2,900人の人員削減を予定し、その他も合わせ、欧州の従業員2万8000人のうち約14%を削減します。人員削減は2027年末迄に完了する予定です。今年、EV化を推進し、欧州政府が大量のグリーン雇用をもたらすと言い続けたドイツメーカーのVW、メルセデス・ベンツ、BMW等、欧州大陸の大手企業の多くの利益は急落しました。英国ではEV比率義務化の規則に対する批判がメーカーから巻き起こっていますが、充電器会社やリース等の車両所有者は、規則の変更によって数十億ポンドの投資が危険に晒されると主張して政府も判断が付かない状況です。EV比率の義務化を止めれば投資家が損をし、ますます投資が減ります。しかし義務化を続ければ、今度はメーカーがリストラをして雇用が減るという、蟻地獄のような状況です。それでもなお、欧州のメディアは未だにこぞってEVのバラ色の世界を宣伝している歪んだ状況です。
▶ https://www.bbc.co.uk/news/articles/c20626dy9d6o
アルミニウム製品に対する輸出リベート(税金の還付)を終了するという中国の決定は、世界のアルミニウム価格に影響を与えると予想されています。またアルミナの供給制約は、ギニアの輸出禁止措置によって悪化し、アルミニウム価格に上昇圧力をかけています。これらの2つはアルミ市場で強気のシグナルを発していますが、何故か11月の世界の卑金属市場は全体的な弱気トレンドです。背景には中国を中心とする過剰生産の問題、欧州発の景気減速、そして政治問題があります。バランスがどこで崩れるか、というポイントに市場は注視し始めています。
▶ https://agmetalminer.com/2024/11/19/rebates-alumina-supply-aluminum-prices/
米国の次期政権が商務長官としてハワード・ラトニック氏を指名すると発表した事で、早くも世界貿易に多大な影響が出ると懸念されています。同氏は製造業の雇用を米国に戻し、仮想通貨の導入を促進する次期大統領の構想を支持しています。更に関税、とりわけ中国に対する関税の強力な支持者です。次期商務長官は退任するバイデン政権が人工知能、半導体、量子コンピューター等、中国の先端技術開発を阻止する為に導入した一連の規則の「施行」を担当することになります。ロイターが最近行った調査では対象となった経済学者の23人中19人は、中国政府が最近発表した財政・金融刺激策は、不動産不況に悩む中国の経済回復にほとんど影響を与えていない、と回答しています。その為、米国の新たな関税は中国のGDPを最大1%押し下げる可能性があります。しかし米国に向けられていた商品は他地域に向けられる(ダンピング含め)為、今後も輸出は中国のGDPの重要な柱となると見込まれています。アジアと日本への影響が増すと懸念されています。
▶ https://www.nytimes.com/2024/11/20/business/dealbook/howard-lutnick-commerce-secretary-trump.html
中国の大手電池メーカーCATLが欧州でバッテリーリサイクル事業を立ち上げる協議を行っています。CATLはハンガリーを含む欧州各国政府と工場建設予定地について協議中と伝えられています。今年4月にCATLはスウェーデンのEV推進自動車メーカーであるボルボ・カーズとバッテリーリサイクル分野での戦略的協力の覚書を締結しています。CATL傘下の広東ブランプ・リサイクル・テクノロジー社に加え、欧州企業もこの取り組みの潜在的なパートナーになる可能性があると伝えられています。
▶ https://www.ttnews.com/articles/catl-ev-battery-recycling
欧州の鉄鋼業が再編に向かいつつあります。スペインの鉄鋼会社グルポ・セルサは、英国と北欧の工場(セルサ・スチールUKとセルサ・ノルディック)をチェコの投資ファンド、セヴエン・グローバル・インベストメンツ(セヴエンGI)に売却すると発表しました。Celsa Steel UK と Celsa Nordic は合わせて年間 200 万トンの鉄鋼を生産し、2,700 人以上の従業員を雇用しています。また欧州最大手の鉄鋼メーカー アルセロール・ミッタルは、サービスセンター事業の再編の一環として、フランスのサービスセンター2か所の閉鎖を検討していると伝えられています。アルセロール・ミタルは発表した声明の中で、金属・鉱物の卸売りを専門とする子会社アルセロール・ミタル・サービスセンターを再編するプロジェクトを発表したばかりでした。
▶ https://www.celsagroup.com/en/news-posts/celsa-group-approves-a-capital-increase-to-drive-efficiency-and-strategic-growth/
欧州政府は、かねてから噂があった、EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)の影響を受ける鉄鋼やアルミニウム等の欧州産業を支援する為の措置を行う予定です。来年行われるCBAMの改正の一環として行われる計画で、2026年に関連提案が出される予定です。欧州政府はEUは域内の輸出業者がCBAMの副作用に対処出来るよう、「あらゆる手を尽くして支援する」目論見です。一方、米国は独自の CBAM に類似した国境炭素措置の開発を求めており、最近では民主党と共和党の両党が関連する提案を提出しています。
▶ https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-11-19/eu-considers-changes-to-carbon-border-levy-to-help-exporters
世界の企業の配当金は2024年Q3に過去最高の4,311億ドルに達しました。Q3の配当金は世界全体で3.1%増加し、企業の88%が配当金を維持、又は増額しました。この増加に最も大きく貢献したのは銀行とメディア企業でした。逆には下げたのは、鉱業部門の企業でした。米国は配当総額が10%増加し、1598億ドルに達し、最も大きな増加を記録した国の一つでした。今年の潜在的成長の6分の1以上は、実はアリババやメタなどの企業が初めて配当を支払うことによるもので、これらの比較的新しいセクターが成熟し、蓄積した多額の現金の一部を株主に還元し始めていることを示しています。
▶ https://uk.finance.yahoo.com/news/global-dividends-record-high-uk-151750329.html
国際製錬銅協会(IWCC)は半期毎の銅の需給予測を出しました。2024年と2025年は世界の銅生産が需要を上回ると予想しています。2024年の鉱山生産量は2,258万トン(1.6%増)、2025年には2.2%増加すると予測。2024年の精錬銅生産量は2,671万トン(3.4%増)、2025年には2,727万トンと予測。2024年の世界の精製銅需要は2,614万トン(2.2%増)、2025年には2.3%増加と予測。日本は2024年の精銅需要は2.3%増の83.5万トンとなり、2025年には2.0%増加すると予測されています。
▶ https://commersant.ge/en/news/business/tbilisi-city-hall-is-set-to-receive-60-million-gel-from-gambling-fees-115-million-gel-from-fines-in-2025
▶ https://www.alcircle.com/news/aluminium-and-recycled-copper-china-s-strategy-to-address-copper-scarcity-112547
米国トランプ新政権ではインフレ抑制法(IRA)の目玉措置であるEVへの補助金(税控除)の廃止を本格検討している事が伝わっています。廃止はトランプ氏のエネルギー政策移行チームの会議で議論されています。トランプ新政権で政府の効率化担当に内定しているテスラのマスク氏は、今年初めに補助金の廃止はテスラの売り上げに若干の打撃を与えるかもしれないが、ゼネラル・モーターズ等の老舗自動車メーカーを含む米国のEV競合各社には壊滅的な打撃を与えるだろうと発言していました。一方、米国の大手自動車メーカーの業界団体オートアライアンスはEV税額控除の維持を望んでいます。次期大統領は、米国の石油生産量を増やす事、EVクレジット、風力発電、太陽光発電、水素への補助金の減額や廃止、クリーンエネルギー計画の撤回などを選挙の公約としています。
▶ https://www.cnbc.com/2024/11/14/trumps-transition-team-aims-to-kill-biden-ev-tax-credit-reuters.html
欧州のバッテリー業界は、域内での材料自給に向け重大な課題に直面しています。欧州では既に計画されていたバッテリー工場10件が事実上キャンセルされています。S&Pの予想では、こうした複数の工場のキャンセルにより、バッテリー需要が増加した場合には対応できなく、72%の供給不足が予測されています。域内生産では需要の4分の3近くを満たす事ができない為、欧州は引き続きバッテリーの輸入に大きく依存せざるを得なくなる見込みです。欧州で稼働中のバッテリー工場の 91% はニッケル・マンガン・コバルト (NMC) 電池を生産しています。欧州で工場のキャンセルは主にNMC電池を生産する工場に集中しています。理由は市場でLFP 電池の需要が高まっている為です。施行されたEUの重要原材料法では、2030年までにバッテリーの主要金属について、域内でEUの消費量の40%を加工、10%を抽出することを義務付けています。しかし、この目標をサポートする資金は未だにありません。欧州内でこれらの材料の入手が限られている為、サプライチェーンに脆弱性が生じ、電池工場への投資が停滞しています。この重要な課題の解決に糸口が見えない状況です。
▶ https://www.spglobal.com/commodityinsights/en/market-insights/blogs/energy-transition/111524-europe-battery-supply-chain-hurdles-nmc-lfp-lithium-cobalt
欧州には、国家エネルギー・気候計画(NECP)があります。この計画により、加盟国は10 年間で排出量を削減し、化石燃料を段階的に廃止し、再生可能エネルギーを導入する方法を決定します。残念ながら、多くの政府は2024年6月の改訂版NECPの提出期限に間に合わず、期限内に提出できた政府も重大な欠陥だらけの計画を作成しています。フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、スウェーデンを含む欧州各地のNGOによる初期評価では、EUの気候目標を危うくするだけでなく、公正な移行の約束も危うくする大きなギャップが明らかになっています。最大の問題は「法的拘束力を持つ各国の気候・エネルギー目標」と、NECPで提示された政策公約との間にギャップがあり、各国の目標がNECPの公約どおりとなっていない事です。国として法律としてしまうと、達成が難しい野心的な目標が多い為です。 NECPは今、エネルギー転換への深刻な危機に瀕しています。
▶ https://www.euractiv.com/section/eet/opinion/commission-must-hold-eu-countries-to-account-on-climate-obligations/
EUでは電池のサプライチェーンに関して、政府が「断固たる措置」を取れるかに、その将来が委ねられている状況です。実はEVや蓄電だけでなく、電池は既に兵器に多く利用されている実態があります。中国政府は、米国最大のドローンメーカーであるスカイディオに制裁を課し、同社への中国製バッテリーの販売を禁止しています。スカイディオはウクライナへの最大のドローン供給業者です。その為、中国からの電池の供給が途絶えた場合、西側の防衛産業にもリスクがあります。欧米の防衛計画立案者にとって、革新的で耐久性のある電池供給の調達は優先すべき課題になりつつあります。電池は既に地経学的競争の中心にあり「電池戦争」は現実化しています。中国の政策で電池市場が生まれ、その過程で中国は市場を独占しました。欧州産業の未来とエネルギー転換を決定づける電池の支配と影響力をめぐり、EUは厳しい決断を迫られている状況です。
▶ https://batteriesnews.com/recharge-or-regret-why-the-eu-must-act-decisively-to-secure-europes-struggling-battery-industry/#google_vignette
CATLが第2世代ナトリウム電池を発表しました。技術者は電池の開発状況を明らかにし、2025年に発売する予定だと述べています。
第1世代電池との最大の違いはマイナス40℃の極低温でも正常に放電できる点です。更にエネルギー密度を維持しながら、より優れた安全性能と低温耐性を保ちます。新型電池のエネルギー密度は公開されていませんが、200Wh/kg超を目指してきました。電池は2025年に発売される予定ですが、量産規模での販売は2027年になる見込みです。
▶ https://carnewschina.com/2024/11/18/catl-announces-second-generation-sodium-battery-normal-discharge-at-40c/
インドの鉄鋼大臣は輸入品の増加に対して「国内産業を保護する為に様々な措置を検討している」と発言しています。これは政府が何等かの行動を起こす可能性が高い事を示唆するもので、方法を本格的に検討する段階に入っている事を示しています。また現在やや停滞している国内需要も、今後数ヶ月で大幅に改善すると述べています。政府が何等かの刺激策を行う可能性に含みを持たせています。
▶ https://www.etnownews.com/economy/govt-taking-steps-steel-secretary-hints-at-big-relief-in-steel-price-in-coming-months-article-115307481
トランプ当選のもう1つの影響に銅価格があります。アナリストは銅価格が今後4ヵ月以内に1トン当たり8,500ドルまで下落する可能性を指摘しました。CRUワールド・カッパー・カンファレンス・アジアでは「米国の新政権による保護貿易政策」「豊富な在庫量」、「1月下旬からの春節休暇」、「西側諸国の需要低迷」が重なり、2025年Q1は50万トン近くの「余剰」が生じると予想しています。Citiのアナリストは銅価格の予想を3ヵ月以内に当たり9,500ドル⇒8,500ドルに引き下げました。一旦落ち込むものの、その後は鉱山問題もあり、2025年の平均価格は9,475ドルから9,575ドルになると予想しています。
▶ https://www.miningweekly.com/article/copper-price-could-fall-to-8-500-as-trump-win-boosts-dollar-threatens-demand-2024-11-15
EUの使用済み自動車規則が現在の案から緩和される可能性が高まっています。自動車業界は「バランスの取れた生産者責任」を要求しています。野心的で断片的なアプローチはサプライチェーンでのコストを上昇させ、手軽な価格での車輛製造に影響が出ると懸念しています。VWの技術担当はリサイクルプラスチックの製品への含有量を現案の25%から15%に減らす事を求めています。しかし、全体としてはリサイクル活動を拡大させる事が重要との認識で一致しています。
▶ https://www.euractiv.com/section/eet/news/eus-end-of-life-vehicle-rules-face-tough-challenges-say-stakeholders/
欧州ではグリーンスチールの価格の高さが購入意欲を減退させている一つの原因となっています。グリーンスチールのオファーとビッドの差が150から200ユーロ程乖離しています。グリーンスチールの低迷は、高額価格に加えて、欧州の公共プロジェクト(グリーン鋼の調達を主張できるプロジェクト)が不足している為です。欧州鉄鋼業界団体のEuroferは、鉄鋼メーカーの保護政策と公共調達や公売におけるグリーンスチールを請願しています。しかし、現実は上手く回っていないようです。
▶ https://eurometal.net/european-green-steel-premiums-steady-despite-economic-woes-limiting-buying-interest/
国際エネルギー機関が「重要鉱物のリサイクル」に関する特別レポートを発行しました。報告書には重要鉱物のリサイクルを加速する為の重要な政策提言が含まれています。現在、銅、リチウム、ニッケル、コバルト、希土類などの重要な鉱物を生産する為には多額の投資が必要となっています。その為、リサイクルは、鉱物供給の安全性と持続可能性に不可欠なものとして、今後「政策的に推進されるべき」と強調しています。
▶ https://www.iea.org/reports/recycling-of-critical-minerals/executive-summary
プーチン大統領はロシアの主要軍事文書の改訂版と新核ドクトリンを承認しました。新しいガイドラインではロシアは大量破壊兵器や大規模な通常兵器を保有する敵対国や軍事ブロックに対して核抑止力を使用する権利を留保していると述べています。この改訂はバイデン米大統領がウクライナに提供された長距離兵器をロシア領内に長距離攻撃することを承認したとの報道が浮上した事を受けての措置となりました。ロシア軍で移動式の核シェルターの配備が一部で行われる等、新たな緊張となっています。ポーランド政府は早速、国内企業と爆発物製造に関する契約を締結しています。米国の承認にはウクライナでの兵士の数不足と疲弊、北朝鮮による今後最大3万~10万人の派兵があり、ドイツもフランスも政府がレイムダック状態で、英国の労働党政権も殆ど交渉に役立たずの為、欧州のバックアップが不十分である事があげられます。
▶ https://timesofindia.indiatimes.com/videos/international/putins-nuclear-order-fire-missile-on-russia-face-nukes-doctrine-revised-after-bidens-trigger/videoshow/115452101.cms
アンチモンが今月上昇しています。既に今年は200%値上がりしており、米中対立で供給不足への懸念が急速に高まっています。半導体、電池、塗料、難燃材料、太陽光、他の金属の強度を向上させる合金として使用されているアンチモンは、世界の供給の内、中国が原料の48%と精製と加工の約65%を占めています。またアンチモンは軍需産業にとって最も重要な鉱物の1つです。徹甲弾や暗視ゴーグル、レーザー照準器、爆発物製剤、核兵器製造、赤外線センサーから軍用電子機器まで、その他の軍事ニーズのあらゆるものに使用されています。米国はアンチモンの60%以上を中国から得ています。技術的なレベルでは米国は自国でアンチモンを精製することができますが、鉱山を持っていない為、依然としてサードパーティの原材料供給に依存しています。米中対立によって既に何種類かの金属への輸出規制が敷かれており、今後、政治的な判断で重要鉱物の価格が大きく変化しそうです。
▶ https://www.argusmedia.com/metals-platform/metal/minor-and-specialty-metals-antimony
EV化を最も推進したVWが工場閉鎖や大量の解雇を計画、日産は世界で9000人を削減、そして今度は同じくEV化を進めたフォードが欧州で4000人規模の人員削減を行うと発表しました。英国で800人、ドイツで2,900人の人員削減を予定し、その他も合わせ、欧州の従業員2万8000人のうち約14%を削減します。人員削減は2027年末迄に完了する予定です。今年、EV化を推進し、欧州政府が大量のグリーン雇用をもたらすと言い続けたドイツメーカーのVW、メルセデス・ベンツ、BMW等、欧州大陸の大手企業の多くの利益は急落しました。英国ではEV比率義務化の規則に対する批判がメーカーから巻き起こっていますが、充電器会社やリース等の車両所有者は、規則の変更によって数十億ポンドの投資が危険に晒されると主張して政府も判断が付かない状況です。EV比率の義務化を止めれば投資家が損をし、ますます投資が減ります。しかし義務化を続ければ、今度はメーカーがリストラをして雇用が減るという、蟻地獄のような状況です。それでもなお、欧州のメディアは未だにこぞってEVのバラ色の世界を宣伝している歪んだ状況です。
▶ https://www.bbc.co.uk/news/articles/c20626dy9d6o
アルミニウム製品に対する輸出リベート(税金の還付)を終了するという中国の決定は、世界のアルミニウム価格に影響を与えると予想されています。またアルミナの供給制約は、ギニアの輸出禁止措置によって悪化し、アルミニウム価格に上昇圧力をかけています。これらの2つはアルミ市場で強気のシグナルを発していますが、何故か11月の世界の卑金属市場は全体的な弱気トレンドです。背景には中国を中心とする過剰生産の問題、欧州発の景気減速、そして政治問題があります。バランスがどこで崩れるか、というポイントに市場は注視し始めています。
▶ https://agmetalminer.com/2024/11/19/rebates-alumina-supply-aluminum-prices/
米国の次期政権が商務長官としてハワード・ラトニック氏を指名すると発表した事で、早くも世界貿易に多大な影響が出ると懸念されています。同氏は製造業の雇用を米国に戻し、仮想通貨の導入を促進する次期大統領の構想を支持しています。更に関税、とりわけ中国に対する関税の強力な支持者です。次期商務長官は退任するバイデン政権が人工知能、半導体、量子コンピューター等、中国の先端技術開発を阻止する為に導入した一連の規則の「施行」を担当することになります。ロイターが最近行った調査では対象となった経済学者の23人中19人は、中国政府が最近発表した財政・金融刺激策は、不動産不況に悩む中国の経済回復にほとんど影響を与えていない、と回答しています。その為、米国の新たな関税は中国のGDPを最大1%押し下げる可能性があります。しかし米国に向けられていた商品は他地域に向けられる(ダンピング含め)為、今後も輸出は中国のGDPの重要な柱となると見込まれています。アジアと日本への影響が増すと懸念されています。
▶ https://www.nytimes.com/2024/11/20/business/dealbook/howard-lutnick-commerce-secretary-trump.html
中国の大手電池メーカーCATLが欧州でバッテリーリサイクル事業を立ち上げる協議を行っています。CATLはハンガリーを含む欧州各国政府と工場建設予定地について協議中と伝えられています。今年4月にCATLはスウェーデンのEV推進自動車メーカーであるボルボ・カーズとバッテリーリサイクル分野での戦略的協力の覚書を締結しています。CATL傘下の広東ブランプ・リサイクル・テクノロジー社に加え、欧州企業もこの取り組みの潜在的なパートナーになる可能性があると伝えられています。
▶ https://www.ttnews.com/articles/catl-ev-battery-recycling
欧州の鉄鋼業が再編に向かいつつあります。スペインの鉄鋼会社グルポ・セルサは、英国と北欧の工場(セルサ・スチールUKとセルサ・ノルディック)をチェコの投資ファンド、セヴエン・グローバル・インベストメンツ(セヴエンGI)に売却すると発表しました。Celsa Steel UK と Celsa Nordic は合わせて年間 200 万トンの鉄鋼を生産し、2,700 人以上の従業員を雇用しています。また欧州最大手の鉄鋼メーカー アルセロール・ミッタルは、サービスセンター事業の再編の一環として、フランスのサービスセンター2か所の閉鎖を検討していると伝えられています。アルセロール・ミタルは発表した声明の中で、金属・鉱物の卸売りを専門とする子会社アルセロール・ミタル・サービスセンターを再編するプロジェクトを発表したばかりでした。
▶ https://www.celsagroup.com/en/news-posts/celsa-group-approves-a-capital-increase-to-drive-efficiency-and-strategic-growth/
欧州政府は、かねてから噂があった、EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)の影響を受ける鉄鋼やアルミニウム等の欧州産業を支援する為の措置を行う予定です。来年行われるCBAMの改正の一環として行われる計画で、2026年に関連提案が出される予定です。欧州政府はEUは域内の輸出業者がCBAMの副作用に対処出来るよう、「あらゆる手を尽くして支援する」目論見です。一方、米国は独自の CBAM に類似した国境炭素措置の開発を求めており、最近では民主党と共和党の両党が関連する提案を提出しています。
▶ https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-11-19/eu-considers-changes-to-carbon-border-levy-to-help-exporters
世界の企業の配当金は2024年Q3に過去最高の4,311億ドルに達しました。Q3の配当金は世界全体で3.1%増加し、企業の88%が配当金を維持、又は増額しました。この増加に最も大きく貢献したのは銀行とメディア企業でした。逆には下げたのは、鉱業部門の企業でした。米国は配当総額が10%増加し、1598億ドルに達し、最も大きな増加を記録した国の一つでした。今年の潜在的成長の6分の1以上は、実はアリババやメタなどの企業が初めて配当を支払うことによるもので、これらの比較的新しいセクターが成熟し、蓄積した多額の現金の一部を株主に還元し始めていることを示しています。
▶ https://uk.finance.yahoo.com/news/global-dividends-record-high-uk-151750329.html
国際製錬銅協会(IWCC)は半期毎の銅の需給予測を出しました。2024年と2025年は世界の銅生産が需要を上回ると予想しています。2024年の鉱山生産量は2,258万トン(1.6%増)、2025年には2.2%増加すると予測。2024年の精錬銅生産量は2,671万トン(3.4%増)、2025年には2,727万トンと予測。2024年の世界の精製銅需要は2,614万トン(2.2%増)、2025年には2.3%増加と予測。日本は2024年の精銅需要は2.3%増の83.5万トンとなり、2025年には2.0%増加すると予測されています。
▶ https://commersant.ge/en/news/business/tbilisi-city-hall-is-set-to-receive-60-million-gel-from-gambling-fees-115-million-gel-from-fines-in-2025