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NEWSCONの気になるNEWS(2024年11月第1週)

欧州鉄鋼生産者協会(EUROFER)は最新の欧州鉄鋼市場の見通しを発表しました。欧州の鉄鋼市場は、需要の低迷及び輸入シェアの持続的な高止まりにより、見通しがますます厳しくなっています。これらの要因は全体的な経済見通しの弱さ、地政学的緊張の高まり、EUのエネルギーコストの高騰と相まって、ここ数四半期に観察された下降傾向を更に深刻化させています。EUROFERの見通しによると、鉄鋼消費量は以前の予測(+1.4%)のように2024年に回復することはなく、再び景気後退(-1.8%)になると予想しています。しかし需要の減速は2023年(-6%)よりは穏やかです。
https://www.eurofer.eu/press-releases/steel-market-outlook-continues-to-worsen-as-demand-and-consumption-decline-amid-high-import-shares

英国政府は、EUと同等の炭素国境調整メカニズム(UK CBAM)を2027年1月から導入する事を正式に発表しました。10月30日に公開された協議文書で明らかにしています。この措置はアルミニウム、鉄鋼、セメント、肥料、水素等、様々な分野から英国に輸入される商品の炭素価格を設定することになります。以前の提案と異なる点は、ガラスおよびセラミック製品が2027年からの対象製品に含まれていない事です。
https://www.businessgreen.com/news/4374847/government-confirms-plans-carbon-border-adjustment-mechanism

英国プラスチック連盟は、プラスチックの再利用とリサイクルの目標を下方修正しました。2021年に発行されたリサイクルロードマップの初版では2030年迄に69%のリサイクル率が達成されると想定していました。BPFは現在、2030年に到達出来るのは55%にとどまると考えています。BPFがRecoup組織と共同で作成したリサイクルロードマップの第2版でも、リサイクル率は2035年まで70%には達しないと予測されています。プラスチックは各国ともに野心的な目標を掲げてスタートしましたが、達成に至るまでには様々な課題がある事を浮き彫りにしています。
https://www.bpf.co.uk/article/new-bpf-recycling-roadmap-70-rate-for-recycling-and-reuse-ach-3661.aspx

コンサルティング会社ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンスによると、リチウムやコバルト等の原材料価格の継続的な下落により、世界のバッテリーセル価格は9月に過去最低を記録しました。バッテリー材料価格は供給過剰と予想を下回るEV販売により、今年に入って下落が続いています。炭酸リチウムの価格は今年これまでに29%下落しました。バッテリー価格の下落はリン酸鉄リチウム(LFP)セルが主導し、加重平均価格に基づくと9月には1キロワット時(kWh)当り59ドルまで下落しています。報告書の中で、LFP細胞は今年これまでに価値の5分の1(20%)を失った、と述べています。欧州ではSVOLTがドイツで2番目のギガファクトリーを中止し、ノースボルトがボルボに対して合弁会社ノボ・エナジーへの支払不履行でボルボが株式を取得、更にフィンランドの電池材料の化学メーカー、テラフェイムが人員削減の申請を行うなど、電池の価格下落とEV販売の鈍化で関連企業の事業の修正が続いています。
https://www.benchmarkminerals.com/lithium-ion-batteries

先週末終了したCOP16では先進国から提供される300億ドルを含む年間2000億ドルの保全資金を2030年迄にどのように利用するかについて、合意が出来ませんでした。幾つかの進展はあったものの、重要な問題は未解決のまま混乱の内に終了しました。各国政府は自然保護への資金援助や今後10年間の目標の監視方法等、重要な問題で合意できませんでした。各国は来年バンコクで開催される暫定会議で協議を継続する予定です。最近の環境関連の国際会議では殆ど重要問題で進展が見られず今回も同じ結果でした。11月末から開催されるプラスチック汚染の国際条約の第5回多国間交渉は非常に注目されています。
https://www.theguardian.com/environment/2024/nov/03/cop16-ends-in-disarry-and-indecision-despite-biodiversity-breakthroughs

南アフリカのアルセロール・ミッタルSA(アムサ)が同国からの鉄スクラップ輸出税を廃止するよう当局に求めました。既に国内の鉄鋼供給過剰に苦しんでいる南アの電炉各社は団結して反対しています。アムサの提案はQ4に4億6600万ランドの損失を出した後に行われました。南アでは「条鋼」生産能力の75%は小規模メーカーが占めており、大メーカー対小規模電炉との「戦争勃発」と言われています。小規模メーカーは南アの「鋼板」生産は事実上アムサが独占しており、政府はアムサへの保護措置(関税措置)を取っていると反論しています。アムサ社の業績不振はスクラップ輸出税とは無関係と見られていますが。過剰生産能力による価格競争が同社の業績悪化に関わっている事は確かなようです。伝えられませんが、鉄スクラップの保護措置は南アの様に国内スクラップ価格の下落と過剰生産を起こす懸念があります。ダブついて安い原料と整備稼働率の向上から生産過剰が常態化する事です。
https://www.citizen.co.za/business/steel-producers-slam-arcelormittals-call-to-end-scrap-export-tax/

プラスチック汚染に関する国際条約について、当初、米国はプラスチックの生産上限規制に反対していたました。先週末に同国の10州が米国連邦政府に対して、国連のプラスチック条約でより強力な措置を主張するよう求めました。この要求はプラスチック生産の上限を定めるだけでなく、誤ったリサイクルによる問題解決を解消するものが含まれています。これは大きな変化です。各国の思惑が異なる中、国連環境法センターは第 5 回プラスチック条約交渉(INC-5)の準備資料を公開しました。欧州を中心にINC-5 への期待が高まっています。今回の交渉が成功しなければ、プラスチック汚染に関する解決の機会を大幅に遅らせる事になると言われています。
https://www.ciel.org/reports/materials-for-plastics-treaty-inc-5/

中国の太陽光パネルメーカーは、対米輸出向けにアジア進出を続けています。昨年、中国企業が米国に輸出したパネルの80%は、ベトナム、タイ、マレーシア、カンボジアからのものでした。関税を回避する為に他の国に生産拠点を移している実態が反映しています。米国の関税の及ばないインドネシアとラオスに中国資本の新しい生産施設が次々と建設されています。ロイターによると計画容量は昨年米国に設置されたパネルの約半分を供給するのに十分という事です。米政権の元上級顧問は「これは巨大な猫とネズミのゲームだ」と語っています。本件はソーラーパネルですが、他の関税対象製品も今後同様の動きを見せる可能性が高くなっています。リンクにマップがあるので参考となります。
https://www.reuters.com/graphics/USA-CHINA/SOLAR-HISTORY/gdpzkdeqlvw/

インドの鉄鋼省は「鉄鋼部門全体でAIを活用する事を目指す」と言及しました。同省は鉄鋼中央公営企業に対して、従来の慣行に挑戦し、業務効率を高める為の革新的な戦略を採用するよう求めています。AIは生産工程だけでなく、資産管理、安全性、品質管理、データ分析、環境影響評価、人材管理を強化する目的で使われます。AI だけでなく、機械学習 (ML) の可能性も強調されました。また高炉操業における新たな省エネイニシアチブについても言及しています。
https://www.constructionworld.in/policy-updates-and-economic-news/steel-ministry-explores-ai-adoption-for-enhanced-process-optimisation/64402

カナダ政府は石油・ガス産業にGHG排出の上限を課し、排出量を2019年比で2030年迄に35%低くする規制案を発表しました。連邦政府は「技術的に実行可能」で、石油・ガス産業は2030~32年迄に規制を導入しても、2019年より16%生産を増やすことが出来ると述べています。しかし、この突然の発表により、アルバータ州の州知事は「この措置に怒っている」と非難の声明を発表しました。カナダでは2019年に導入した炭素税への批判も高まっており、アルバータ州は家庭用暖房への化石燃料の使用から炭素税を除くよう、司法手続きを行ったばかりでした。
https://www.cbc.ca/news/politics/oil-gas-emissions-cap-early-election-1.7372512

英国で10月の新車販売台数が発表されました。ガソリン(-14%)、ディーゼル(-20%)、HV(-1.6%)、PHV(-3.2%)、BEV(+24.5%)と唯一純粋なEVが販売を伸ばしています。しかし、事実と実態は別の話です。今年、EVの平均値引き価格が1台当り5,500ポンド(約105万円)となる等、メーカーは今年から導入されたゼロエミッション車の販売割合の義務化(22%)を達成する為に、殆ど利益を無視して販売している状況です。英国の自動車生産者協会は「このレベルの値下げは長期的には「持続不可能」である」と警告を発しています。英国は、現在欧州で2番目に大きなEV市場となっていますが、メーカーの投資やインフラ整備への民間投資は弱っており、政府の補助金への要望が日増しに高まっています。
https://www.smmt.co.uk/vehicle-data/car-registrations/

欧州の炭素価格は2024年第Q4に1トン当り70〜80ユーロの範囲になると予測されています。欧州ではエネルギー価格の高騰から火力発電が増加し、炭素クレジットの需要が増加すると予想しています。2024年11月1日、EU炭素価格は64.33ユーロでした。アナリストは政策的な措置によりEUの炭素価格は2027年まで上昇すると予想しています。2027年の炭素価格の平均予測は1トン当り111.14ユーロでした。専門家は2025年と2026年の予測を殆ど変えていません。2025は平均76.88ユーロ/トン、2026年は92.48ユーロ/トンと予測しています。CBAM(国境炭素調整措置)は既にスタートしており、2026年1月からは対象製品の輸入業者はCBAM証明書を購入しなければなりません。証明書の価格は前週のEU ETSの炭素価格の平均となる為、炭素価格についての予測が初めて出ています。
https://eurometal.net/eu-carbon-falls-below-eur65-mt-due-to-weaker-fundamentals/

欧州でのエネルギー供給が変化し始めています。現在2基の原子炉を持ちロシア産の核燃料に依存しているブルガリア政府は、米国の技術を使用して原子炉2基を建設する、約3億5000万ドル相当の初の大型契約を締結しました。2基の新しい原子炉の内、最初の原子炉では2034年に電力が供給される予定です。ウクライナはブルガリアが所有しながら使用していないロシアの原子炉2基を、ウクライナで利用する事を望んでいます。ブルガリアは常に東西交流の交差点であり、今日ではヨーロッパのエネルギー拠点としての地位を確立しつつあります。これは、この地域の戦略にもかなり大きな意味を持つプロジェクトとなりそうです。
https://www.euractiv.com/section/politics/news/bulgaria-starts-constructing-an-irreversible-nuclear-project-with-us-reactors/

欧州で金属スクラップ企業が大手鉄鋼メーカーを買収するという動きが出ています。ドイツの大手鉄鋼メーカーのSalzgitter AG(ザルツギッター)は、株主の1社であるGP Günter Papenburg AG(GPギュンター・パペンブルク)と大手金属リサイクル企業であるTSRリサイクリングと共同での買収提案を受けています。ザルツギッターは自主的な株式公開買付の通知を受けた事を認めています。EUの脱炭素規制もあり、鉄スクラップは製鉄工程で重要な原材料となります。これがTSR が ザルツギッター の株式取得に関心を持っている理由です。更に理由はもう一つあります。TSRの親会社は、欧州の大手廃棄物管理会社であるRemondisです。同社はドイツ最大の金属リサイクル業者でもあり、現在「非鉄」を含めた処理能力拡大への投資を強化しています。ザルツギッターは欧州最大の銅製錬企業のAurubisの株式を29.99% 保有し筆頭株主です。その為、ザルツギッターを買収する事でAurubis AGの間接的筆頭株主となります。TSR とRemondis グループにとって戦略的な意味を持ちます。最近、株式市場ではAurubis AGの買収の可能性について多くの憶測が飛び交っています。ドイツのドラッグストアチェーンの創業者ディルク・ロスマン氏は、10月に同社の株式保有を15%に増やしました。投資銀行のゴールドマン・サックスは同グループの株式の10%以上を取得しています。ザルツギッターの様な大手鉄鋼メーカーが金属スクラップ企業に買収されるとすれば、ちょっとした出来事です。
https://www.marketscreener.com/quote/stock/SALZGITTER-AG-436258/news/Major-Salzgitter-shareholder-Papenburg-confirms-takeover-talks-48262247/

フランスの著名紙ル・モンドは「ノースボルトの没落、欧州の深刻な失速の象徴」というタイトルの分析記事をあげています。創立から8年、EVトレンドとグリーン規制の波に乗り、ここまで150億ドル(約2兆2000億円) 以上の資金を集めてきた同社は深刻な資金不足に陥っており、投資家を青冷めさせています。今年1月には工場拡張の為に50億㌦という欧州で過去最大のグリーンローンを得た同社の工場拡張計画は、僅か8ヶ月で中止となり、本当に工場拡張の資金であったのか、表向きの工場拡張で、資金繰りへの補填だったのか、一部では疑問の声も聞かれます。スウェーデン国債庁や欧州投資銀行が一部のローン保証を行う等、投資家を安心させてきましたが、今ではスウェーデン政府がタスクフォースを立ち上げるなど、政府も対策に乗り出さざるを得ない状況です。この問題は遠いスウェーデンの1つの出来事では無く、欧州のグリーン化政策が「誤った方向」に進められてきた1つの象徴といえる可能性があります。ル・モンドはその点を鋭く分析しています。
https://www.lemonde.fr/en/economy/article/2024/11/06/northvolt-s-downfall-a-symbol-of-acute-european-stalling_6731752_19.html#

中国の鉄スクラップの消費量は今年3%減少する見込みです。年間消費量は2億3642万トンと予測され、7790万トンは電炉、2億3642万トンは高炉で使用されます。一方で鉄鋼輸出は今年1億1000万トン、2025年には各国の保護政策もあり9000万~1億トンに減少すると見込まれています。中国鉄鋼メーカーは依然として過剰生産能力と国内需要の低迷への対応に苦戦している為、輸出の水準は、下がるとはいえ、来年も高水準を維持すると見られています。
https://gmk.center/en/news/scrap-consumption-in-china-to-fall-by-3-y-y-in-2024-analysts/#:~:text=The%20annual%20volume%20of%20consumption,Circular%20Economy%20conference%2C%20Kallanish%20reports.

銅精鉱のTC(銅精鉱を精錬銅に加工する為に鉱山会社が製錬所に支払う料金)は 2024年に一貫して低水準で推移しています。3月以降はトン当たり10ドルを下回り続けています。 2024年の銅精鉱のベンチマークは1トン当り80ドルに設定されています。つまり業者のマージンは高い条件によってある程度保護されています。殆どの業者はそのレベルで契約している為、支払われる総額は年間を通じて一貫して1トンあたり10ドルを遥かに上回っています。2025年には供給の逼迫によりベンチマークが急落すると予想されています。多くの市場参加者はベンチマークが1トン当たり30ドルを下回ると予想しています。来年の低いTC予測は製錬所に懸念を引き起こしています。TC は銅カソードの最終価格と製錬所の収益性を決定する重要な要素です。こうした事情もあり、中国がロシアからの銅スクラップの輸入を増やしています。今後TCのベンチマークの下落は銅スクラップ使用の増加を招く可能性があり、要注目です。
https://www.fastmarkets.com/insights/copper-smelters-to-face-tough-time-in-2025/



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