NEWS
NEWSCONの気になるNEWS(2024年10月第4週)
レアアースのホットスポットであるマレーシアを巡り、様々な事が起こりつつあります。マレーシアのレアアース産業は497億ドル!規模の未開発埋蔵権益を巡り、オーストラリア、米国、中国、日本、韓国が現地のパートナーと協議しています。来年、中国はマレーシアからの加工品を輸入するか決める為、マレーシア政府と協議する予定です。中国政府は中国企業による希土類採掘はすべて中国で処理することを義務付けている為です。マレーシア国内で中国企業が投資し同社の技術を利用しても、中国へ輸出することは容易ではないのが現実です。地政学的な影響も日増しに大きくなる中、マレーシアが希土類製品をどこに販売できるかは、パートナーとして誰を選ぶかによって決まります。米国では懸念国条項が重要鉱物に課されつつあり、今後この問題は希土類の中国依存を減らしたい西側にとっても大きな関心事となりつつあります。
▶ https://www.scmp.com/week-asia/economics/article/3282446/malaysias-rare-earths-ambition-faces-curbs-geopolitics-muddies-waters
英国の財務大臣は現在英国でEV販売を伸ばしている要因の1つであるリース対象者向けの税控除を廃止する可能性に言及しました。この動きは英国のEV普及に大きな打撃を与える可能性があり、業界は反対しています。財務省は会社の貸与車としてEVを購入した従業員がEVリース代金を経費処理し源泉徴収から節税できるこの制度を廃止するか、又は修正する予定です(英国では新政権になって増税路線です)。新車のEV需要が低迷する中、この税控除制度はEV販売を押し上げたと評価されています。しかし、この制度は「富裕層に有利」に働いていると認識されており、シンクタンクのリゾリューション財団は給与天引きや社用車に対する減税措置の撤廃を求めています。英国のEVの販売はかつての補助金や現在のリース税控除で押し上げられており「作られた数字」と言われています。手厚い補助金で販売が伸びる為、EVは如何にも商品力が高いと誤解を受ける報道が続いてきました。しかし原材料の加工から電池のサプライチェーンまで全て揃っている中国を除けば、EVのサプライチェーンを作る事ができない欧米では補助金が終わった途端にEVは「高価な商品」となり販売が急落します。販売増には補助金以外に解決の目途が立たない為「将来は」という期待とは裏腹に技術革新が無ければ、現実的にはかなりEVの普及は困難な道になりそうです。パリモーターショーでは欧州自動車メーカーのトップ達はEUのガソリン車の全面廃止に異議を訴えています。
▶ https://bmmagazine.co.uk/news/reeves-considers-ending-salary-sacrifice-tax-breaks-for-electric-vehicles-sparking-industry-backlash/
プラスチック汚染に関する国際条約の第5回多国間交渉(INC-5)が後1ヵ月強に迫っています。過去4回はプラスチック生産の段階的削減を巡り合意に至らず、草案そのものが未完成のままです。今回の韓国での交渉では草案の初期ドラフトを完成させる予定です。INC-5に先駆け国際持続可能開発研究所(IISD)の地球交渉速報(ENB)とジュネーブ環境ネットワークは、INC-5をプレビューするオンラインイベントを開催しました。概要がメディアのウェブサイトで公開されています。今回のINC-5 では米国が欧州や日本を中心とする野心的な取組を支持するグループに加わります。しかし過去4回は何れも中東産油国やBRICSの一部が賛成せず、今回も大きな変化は無く、どこまで妥協をするか、という事になりそうです。INC-5前に開かれるアゼルバイジャンのCOP29は1ヵ月前になっても殆ど報道される事もなくなりました。
▶ https://sdg.iisd.org/news/ahead-of-inc-5-panel-updates-on-state-of-play-in-plastic-treaty-talks/
非OPECの石油生産国であるオマーン最大の国営石油グループOQEPが新規株式公開(IPO)を行い、同国では過去最高となる約20億3000万ドルを調達したと発表しました。株式は2024年10月28日頃にオマーンのマスカット証券取引所(MSX)で取引開始予定です。OQEPは2009年に設立され、それ以来拡大し続け、生産量は2023年末迄に約14倍に増加しています。機関投資家からの応募は約3.4倍の応募超過、全体でも2.7倍の超過でした。113,000人を超える個人投資家からの応募があり、募集額の40%に相当する8億株が個人投資家に割り当てられました。最近、世界の「再生可能エネルギー」での大型IPOの計画は、インドの国営発電公社(NTPC)の子会社であるNTPCグリーンエナジーが申請したものです。このIPOでの資金調達は11億9,000万ドルですので、化石燃料事業のOQEPはその2倍です。OQEPへの投資はオマーンの社会保護基金や国内の投資機関を除いて、海外勢は全て非公開となっています(その為募集が殺到したようです)。グリーンエネルギーの移行は世界的な政策課題として強力に推進されていますが、世界のグリーンエネルギー株の指標であるS&P Global Clean Energy Indexは、2021年1月のピーク2050ドルから、今は850ドル付近まで下落しています。EUのタクソノミー始め、世界中で投資に対する様々なグリーンイニシアチブがありますが、実際には世界の投資家は「化石燃料が好き」という事が明らかになっています。炭素排出を減らす事は、容易ではないという不都合な事実です。
▶ https://gulfbusiness.com/oq-exploration-and-production-gets-2bn-from-ipo/
海外市場で金価格が史上最高値を更新し、銀も12年振りの高値となりました。中東での緊張の高まりと米国の選挙戦が主な要因です。安全資産としての金の需要が引き続き価格を支えています。金は2024年で最も好調なコモディティーの1つで、今年これまでに30%以上の上昇を記録しています。先週はヒズボラの無人機がネタニヤフ首相の私邸近くで爆発したことを受けて、イランへの次の攻撃についてイスラエルが協議を開始したと伝えられました。これにより中東の地政学上の懸念が再び増しました。アナリストの1人は「金先物は2025年第4四半期に1オンス当たり平均3,000ドルまで上昇する可能性がある」と分析しています。各国の中央銀行の金買いも価格の下支えとなっています。
▶ https://www.mining.com/web/gold-price-hits-fresh-record-silver-at-12-year-high/
中国の人民銀行は、主要貸出金利を引き下げました。1年物ローンのプライムレートは3.35%から3.10%、5年物は3.85%から3.6%に引き下げました。経済の活性化を目指す一連の景気刺激策の1つとして、連続で引き下げられています。中国人民銀行は9月24日にも銀行の準備金比率を0.5%、基準となる7日物リバースレポ金利を0.2%引き下げています。不振の不動産業の支援と消費の押し上げを狙ったものです。金利引き下げに金属やコモディティーは小幅に反応していますが、専門家は「市場参加者は政策緩和疲れを感じているかもしれない。追加緩和が中国と香港の株式市場と人民元にどの程度影響を与えるかは議論の余地がある」との見解を示しています。
▶ https://www.cnbc.com/2024/10/21/china-lowers-benchmark-lending-rates-by-25-basis-points.html
国際エネルギー機関(IEA)が最新のエネルギー見通しを発表しました。盲点として挙げられたのは、エアコンの爆発的な普及による電力消費です。発展途上国の所得増加と気候変動による気温上昇の組み合わせにより、家庭用エアコンに使用される電力は現在の中東全体の電力使用量を上回る量まで増加するとの予測を出しました。報告書によると、この空調要件の変化により2030年迄に697テラワット/時(TWh)の追加の電力供給が必要になります。この量はデータ センターからの追加需要の 3 倍以上です。IEAによれば、これに加えて、EV向けに更に854TWhが必要になる見込みです。IEAのファティ・ビロル事務局長は「世界の電力消費の原動力としてエアコンが如何に重要であるかという点について、多くの政策当事者の盲点となっている」と述べています。
▶ https://www.iea.org/reports/world-energy-outlook-2024
欧州リサイクル産業連合は、繊維リサイクル業が危機的な状況にある事をプレスリリースで発表しています。戦争、アフリカでの物流の課題、超ファストファッションの台頭等により、繊維リサイクル業の収益に大きな問題が生じています。リサイクル素材の需要は低く、リサイクル棉の 2023 年の推定生産量は、世界で僅か 319,000 トンしかありませんでした。バージン棉の生産は2,440 万トンでした。今年、バージン材の価格が安く中古繊維の価格は急落、その一方で廃棄衣料の収集、分別、リサイクルのコストは高騰しています。 2024年春以降、選別された古着販売の価格では加工コストがカバーされなくなり、選別事業者にとって大きな資金繰りの問題に繋がっています。欧州の古着倉庫は既にどこも一杯で、このままこの状況が続けば、繊維廃棄物が焼却されるリスクが高まっています。こうした状況もあり、政府に支援と救済策を求めています。
▶ https://euric-aisbl.eu/resource-hub/press-releases-statements/crisis-in-europes-textiles-sorting-and-recycling-sector-could-trigger-a-domino-effect
中国は国家主導で超大手材料企業による国家リサイクルプラットフォーム用の企業を設立しました。資源リサイクルを中心とする天津の中国資源リサイクル集団(CRRG)で、資本金約14億ドル(約2000億円)、中国国有資産監督管理委員会、中国宝武鋼鉄集団、中国石油化工集団、華潤集団が各20%、中国アルミニウム集団と中国金属集団が残り20%を分割して保有します。CRRGの劉宇会長はCRRGは国有企業の資産と資源リサイクル関連事業を統合し、倉庫保管、加工、配送、下取りサービス、基準策定等の業務を網羅する総合ソリューションプロバイダーになることを目指すと述べています。同グループは鉄スクラップ、電子機器、電気自動車やバイクの使用済みバッテリー、廃風力・太陽光発電設備のリサイクルを含む資源回収ネットワークを扱う複数の「専門子会社」を設立する予定です。中国が国家主導で都市鉱山事業を構築する動きを始めたようです。
▶ https://www.bastillepost.com/global/article/4255874-china-establishes-new-centrally-administered-soe-for-resource-recycling
今回の欧州議会での議題の1つは、欧州の「鉄鋼危機」となります。欧州鉄鋼生産者連合(Eurofer)はEU政府による鉄鋼業への行動計画が急務であるとするプレスリリースを発行しました。世界の余剰鉄鋼生産能力は2023年末には5億5,100万トンにまで達しています。この数量はEUの年間鉄鋼生産量の4倍に相当しますが、なお、増加しています。OECDは2026年までに炭素排出量の多い高炉の生産能力が更に1億5,700万トン増加すると予測しています。 EUの鉄鋼生産量は2008年以降に30%以上も減少しています。過去15年間でEUの鉄鋼業界は約 10 万人の雇用を失っています。直近の EU の鉄鋼生産施設の平均稼働率は約 60%まで下がっており、今や「存続不可能」なレベルとなっています。 こうした背景から炭素国境調整メカニズム(CBAM)の厳格な運用や、セーフガード以外での更なる保護措置を取るように業界が訴えています。鉄鋼業の構造的なOvercapacityは、冷鉄源の価格と流通に大きな影響を与える要因となります。
▶ https://www.eurofer.eu/press-releases/steel-crisis-in-focus-at-ep-plenary-debate-urgent-need-for-robust-eu-steel-action-plan-says-eurofer
メルセデス・ベンツはEVバッテリーのリサイクル工場をオープンしました。ブラックマス(BM)の製造とBMを加工する湿式製錬のプロセスを統合したヨーロッパ初の大型工場となります。欧州の自動車メーカーとしては、BM製造から湿式製錬まで一貫して行う初めての企業となります。リサイクルでの予想回収率は 96% 以上で、リチウム、ニッケル、コバルトを回収する予定です。ベンツのバッテリーリサイクル工場の技術パートナーは、ドイツのエンジニアリング会社SMSグループとオーストラリアのプロセス技術開発会社ネオメタルズの合弁会社であるプリモビウスです。リサイクル工場の年間処理能力は 、2,500 トンです。
▶ https://www.greencarcongress.com/2024/10/20241022-mb.html
米国の司法省は、連邦政府のデータや米国人の個人データが「懸念国」に流出するのを防ぐ為にビジネス取引に新たな制限を設ける規則を提案しました。懸念国が米国の金融・ゲノムデータや健康データをサイバー攻撃やスパイ活動、脅迫に利用することを阻止する為です。米当局者は、TikTok等の中国製アプリが米国ユーザーの機密データを中国の親会社に転送した場合、この提案に違反する可能性があると述べています。この提案は境界線によっては様々な商売に影響が出る規制となります。
▶ https://en.mehrnews.com/news/223367/US-sets-rules-to-block-China-Russia-Iran-access-to-own-data
BRICS首脳会議が開催されました。43ページの最終声明では、ドルの代替決済システムについては殆ど進展がなかったことが示され、米ドルについての言及もありませんでした。しかし代替決済システムへの期待は示されています。ウクライナについては1度しか言及されていませんが、BRICS全体としては紛争の軽減を訴える内容となっています。 NATO加盟国のトルコがBRICS参加に関心を示しており、会議中にロシアとトップ会談を行います。そうした中でトルコで最も重要な防衛・航空会社の1つであるTUSASが何らかの攻撃を受けて、中東はトルコまで巻き込んで混沌としそうです。
▶ https://www.reuters.com/world/xi-modi-discuss-ukraine-war-with-putin-brics-considers-expansion-2024-10-23/
中国は景気のテコ入れの為に金融政策を実施していますが、効果は限定的で反応しても直ぐに戻すような動きとなっています。特に鉄鋼業の回復を助けるには至っていません。中国の新規銀行融資が発表され、予想を下回り、融資全体の伸びが鈍化したことで金属への需要への懸念が高まっています。9月の消費者物価上昇率は低下し、生産者物価デフレは深刻化した様子がデータで示されました。焦点は追加の刺激策を迅速に実施するかです。先週土曜日には景気刺激策の一環として債務を「大幅に増やす」と発表しましたが、不動産市場の支援の金額は明らかにされなかった為、市場の懸念は払拭されていない状況です。金属トレーダーは「週末の政策会合は市場が期待していた刺激策や明確さを提供できなかった。軍が台湾近海で新たな軍事演習を行ったことで不確実性が生じた」と述べています。ドル高もドル調達コストを上げる事から、金属需要を抑制する要因となっています。
▶ https://www.msn.com/en-in/money/markets/lack-of-detail-on-china-stimulus-hit-copper-prices/ar-AA1seCAH?apiversion=v2&noservercache=1&domshim=1&renderwebcomponents=1&wcseo=1&batchservertelemetry=1&noservertelemetry=1
苦悩する欧州鉄鋼業に対し、欧州委員会がグリーンスチール向けの政府支援を承認しました。スウェーデンのSAABに対して、鉄鋼生産の脱炭素化を支援する為に1億2,800万ユーロ(約200億円)をスウェーデン政府が支援します。ルレオ市の生産施設は現在高炉ですが、これをグリーン水素DRI及び鉄スクラップ用の電炉に転換します。この補助金措置により、計画より3年早く、SAABによる水素DRIプロジェクトがスタートします。ただしグリーンスチールは製造コストが高く、現在まで需要が期待した程無い為、今後、CBAMが実施され、どの程度需要が増すかは未知数です。場合によっては製品価格の上昇から需要に歯止めがかかる恐れがあります。
▶ https://www.eureporter.co/politics/state-aid-2/2024/10/23/commission-approves-e128-million-swedish-state-aid-measure-to-support-ssab-in-decarbonising-its-steel-production/
最近の分析によると、投資家は化石燃料関連株を買い増しながら、クリーンエネルギーはネットで売り越している事が判明しています。5兆ドル規模のヘッジファンド業界は、石油、ガス、石炭をネットで買い増していますが、バッテリー、太陽光、電気自動車、水素をネットで売り増している事が明らかになりました。資産運用担当者は、多くのグリーン投資は期待したほど早く、或いは高いリターンを生まないと考えています。S&Pグローバル・クリーンエネルギー指数は2021年のピーク以来60%近く下落している一方で、S&Pグローバル・オイル指数とS&P500指数はその間、共に50%以上上昇しています。重要と考えられている太陽光発電についてもQ3には企業の77%でネットショートがネットロングを上回り、2021年Q1の33%から大幅に増加しました。ヘッジファンドは主に中国の圧倒的な優位性を懸念しています。EV関連銘柄のレーンシェアーズ・エレクトリック・ビークルズ&フューチャー・モビリティ・インデックスETFの銘柄の内、55%が空売りしている状況でグリーン水素関連株も同じような状況が続いています。
▶ https://oilprice.com/Energy/Energy-General/Why-Is-Smart-Money-Betting-Against-Renewable-Energy.html
やや下げ基調でしたが、インドのBig Mintによるエンドカット鉄スクラップ価格指数は、今週1トン当たり1,700ルピー(約3500円)と急激に下落しています。鋼材完成品の需要低迷と鉄鋼メーカーの在庫レベルが適正な事によるものです。スクラップが400ルピー、DRIが200ルピー、銑鉄(鋼グレード)が500ルピー下落しました。
▶ https://www.bigmint.co/insights/detail/india-bigmint-s-scrap-index-drops-inr-1-700-t-w-o-w-on-muted-demand-23-oct-592559
インド最大の巨大コングロマリットであるアダニグループが所有するカッチ・カッパーは、オーストラリアの鉱山大手BHPと年間最大160万トンの銅精鉱の大型供給を協議中で、成約すれば巨額の契約となります。インドではヒンドゥスタン・カッパー社が銅鉱石を生産する唯一の国営企業であり、国内総生産量は約400万トン/年です。これは国内需要の僅か4.5%に過ぎず、輸入への依存度が高いことが課題でした。インド鉱山省はインドの一人当たり銅消費量は0.6kgから1kg/年に増加すると予想しています。世界平均の一人当たり銅消費量は3.2kgです。経済成長に伴いインドの1人当たり銅消費量は更に増えると予想されています。人口が世界1位なので、僅か0.5Kgでも国全体では相当な量になります。
▶ https://www.business-standard.com/companies/news/adani-s-kutch-copper-nears-rs-30-000-crore-copper-sourcing-deal-with-bhp-124102400370_1.html
欧州のEV生産にとってまた1つネガティブなニュースです。ドイツでEV用マイクロチップを製造する30億ユーロ(約5000億円)の工場建設プロジェクトが延期されました。このPJTは米国のウルフスピード社とドイツの自動車部品メーカーZF社によるもので、ドイツの西部ザールラント州で計画されていました。米国企業は国内工場での生産が堅調な為、現時点ではドイツでの計画を実施する必要性が無いと判断しました。先月インテルはドイツ東部のマクデブルクで計画されていた総工費300億ユーロの2つの巨大工場の建設を延期すると発表したばかりです。インテルのPJTにはドイツ政府が100億ユーロという巨額の補助金を支払う予定でした。今回のPJT延期(というより事実上中止)はインテル社の2工場の建設延期、Northvoltの問題、更にVWが検討している大規模のリストラによって、欧州資本のEV製造を取り巻く環境がいかに悪化しているかが示される内容となりました。今回のPJT延期は「需要が期待外れだった為」と説明されています。
▶ https://www.theguardian.com/environment/2024/oct/23/project-to-build-german-ev-microchip-factory-put-on-hold
脱炭素技術の1つとして、科学者から批判が相次いでいる炭素回収・貯留・バイオエネルギー利用(BECCS)ですが、英国でPJTを承認した大臣自身が態度を180度変えて「承認を支持しない」という立場を表明し、注目を集めています。世界最大の木質ペレット発電所である英国のDraxは、2027年に現行の再エネ補助金が切れる事に合わせて、新たな補助金を求め英国政府にBECCSの補助申請を行っていました。今年1月に前政権下で承認されましたが、当時承認したネットゼロ担当大臣は「当時大きな圧力に」直面していた事を認め、この技術の根拠は「単純に崩れ去った」と述べています。Draxは英国政治家や官僚の天下り先であり、欧州投資家が補助金から得られる配当を目当てに作られた会社で、大きな圧力団体でもあります。昨年の輸入木質ペレットは1000万トン近くになります。Envivaの上場廃止予定、Draxへの補助金の議論等、今や輸入木質ペレット発電に関わるステークホルダーは、環境の為ではなく「存続の為」に動いていると言えます。
▶ https://www.letsrecycle.com/news/drax-responds-after-tories-withdraw-support-for-ccs/
LFP電池が伸びている中、アジアの硫酸コバルトと水酸化コバルトの価格は2024年Q4に供給過剰と需要低迷で上値が重い展開が続くと見られています。LFPにも使われるリチウムへの投資は継続しており、今週リオ・ティントがアルカディウム・リチウムを買収する正式契約を発表したばかりでした。EV用のNMC電池の需要の弱まりから、硫酸コバルトと水酸化コバルトはQ4の契約交渉で供給過剰が指摘されています。S&P Plattsは10月16日に電池グレードの20.5%Co硫酸コバルトをDDP中国で26,800元/トンと査定し、2018年5月4日の硫酸コバルト査定開始以来の最低価格を記録しました。
▶ https://www.spglobal.com/commodityinsights/en/market-insights/latest-news/metals/102324-trade-review-asian-cobalt-market-to-face-pressure-from-oversupply-weak-demand-in-q4
▶ https://www.scmp.com/week-asia/economics/article/3282446/malaysias-rare-earths-ambition-faces-curbs-geopolitics-muddies-waters
英国の財務大臣は現在英国でEV販売を伸ばしている要因の1つであるリース対象者向けの税控除を廃止する可能性に言及しました。この動きは英国のEV普及に大きな打撃を与える可能性があり、業界は反対しています。財務省は会社の貸与車としてEVを購入した従業員がEVリース代金を経費処理し源泉徴収から節税できるこの制度を廃止するか、又は修正する予定です(英国では新政権になって増税路線です)。新車のEV需要が低迷する中、この税控除制度はEV販売を押し上げたと評価されています。しかし、この制度は「富裕層に有利」に働いていると認識されており、シンクタンクのリゾリューション財団は給与天引きや社用車に対する減税措置の撤廃を求めています。英国のEVの販売はかつての補助金や現在のリース税控除で押し上げられており「作られた数字」と言われています。手厚い補助金で販売が伸びる為、EVは如何にも商品力が高いと誤解を受ける報道が続いてきました。しかし原材料の加工から電池のサプライチェーンまで全て揃っている中国を除けば、EVのサプライチェーンを作る事ができない欧米では補助金が終わった途端にEVは「高価な商品」となり販売が急落します。販売増には補助金以外に解決の目途が立たない為「将来は」という期待とは裏腹に技術革新が無ければ、現実的にはかなりEVの普及は困難な道になりそうです。パリモーターショーでは欧州自動車メーカーのトップ達はEUのガソリン車の全面廃止に異議を訴えています。
▶ https://bmmagazine.co.uk/news/reeves-considers-ending-salary-sacrifice-tax-breaks-for-electric-vehicles-sparking-industry-backlash/
プラスチック汚染に関する国際条約の第5回多国間交渉(INC-5)が後1ヵ月強に迫っています。過去4回はプラスチック生産の段階的削減を巡り合意に至らず、草案そのものが未完成のままです。今回の韓国での交渉では草案の初期ドラフトを完成させる予定です。INC-5に先駆け国際持続可能開発研究所(IISD)の地球交渉速報(ENB)とジュネーブ環境ネットワークは、INC-5をプレビューするオンラインイベントを開催しました。概要がメディアのウェブサイトで公開されています。今回のINC-5 では米国が欧州や日本を中心とする野心的な取組を支持するグループに加わります。しかし過去4回は何れも中東産油国やBRICSの一部が賛成せず、今回も大きな変化は無く、どこまで妥協をするか、という事になりそうです。INC-5前に開かれるアゼルバイジャンのCOP29は1ヵ月前になっても殆ど報道される事もなくなりました。
▶ https://sdg.iisd.org/news/ahead-of-inc-5-panel-updates-on-state-of-play-in-plastic-treaty-talks/
非OPECの石油生産国であるオマーン最大の国営石油グループOQEPが新規株式公開(IPO)を行い、同国では過去最高となる約20億3000万ドルを調達したと発表しました。株式は2024年10月28日頃にオマーンのマスカット証券取引所(MSX)で取引開始予定です。OQEPは2009年に設立され、それ以来拡大し続け、生産量は2023年末迄に約14倍に増加しています。機関投資家からの応募は約3.4倍の応募超過、全体でも2.7倍の超過でした。113,000人を超える個人投資家からの応募があり、募集額の40%に相当する8億株が個人投資家に割り当てられました。最近、世界の「再生可能エネルギー」での大型IPOの計画は、インドの国営発電公社(NTPC)の子会社であるNTPCグリーンエナジーが申請したものです。このIPOでの資金調達は11億9,000万ドルですので、化石燃料事業のOQEPはその2倍です。OQEPへの投資はオマーンの社会保護基金や国内の投資機関を除いて、海外勢は全て非公開となっています(その為募集が殺到したようです)。グリーンエネルギーの移行は世界的な政策課題として強力に推進されていますが、世界のグリーンエネルギー株の指標であるS&P Global Clean Energy Indexは、2021年1月のピーク2050ドルから、今は850ドル付近まで下落しています。EUのタクソノミー始め、世界中で投資に対する様々なグリーンイニシアチブがありますが、実際には世界の投資家は「化石燃料が好き」という事が明らかになっています。炭素排出を減らす事は、容易ではないという不都合な事実です。
▶ https://gulfbusiness.com/oq-exploration-and-production-gets-2bn-from-ipo/
海外市場で金価格が史上最高値を更新し、銀も12年振りの高値となりました。中東での緊張の高まりと米国の選挙戦が主な要因です。安全資産としての金の需要が引き続き価格を支えています。金は2024年で最も好調なコモディティーの1つで、今年これまでに30%以上の上昇を記録しています。先週はヒズボラの無人機がネタニヤフ首相の私邸近くで爆発したことを受けて、イランへの次の攻撃についてイスラエルが協議を開始したと伝えられました。これにより中東の地政学上の懸念が再び増しました。アナリストの1人は「金先物は2025年第4四半期に1オンス当たり平均3,000ドルまで上昇する可能性がある」と分析しています。各国の中央銀行の金買いも価格の下支えとなっています。
▶ https://www.mining.com/web/gold-price-hits-fresh-record-silver-at-12-year-high/
中国の人民銀行は、主要貸出金利を引き下げました。1年物ローンのプライムレートは3.35%から3.10%、5年物は3.85%から3.6%に引き下げました。経済の活性化を目指す一連の景気刺激策の1つとして、連続で引き下げられています。中国人民銀行は9月24日にも銀行の準備金比率を0.5%、基準となる7日物リバースレポ金利を0.2%引き下げています。不振の不動産業の支援と消費の押し上げを狙ったものです。金利引き下げに金属やコモディティーは小幅に反応していますが、専門家は「市場参加者は政策緩和疲れを感じているかもしれない。追加緩和が中国と香港の株式市場と人民元にどの程度影響を与えるかは議論の余地がある」との見解を示しています。
▶ https://www.cnbc.com/2024/10/21/china-lowers-benchmark-lending-rates-by-25-basis-points.html
国際エネルギー機関(IEA)が最新のエネルギー見通しを発表しました。盲点として挙げられたのは、エアコンの爆発的な普及による電力消費です。発展途上国の所得増加と気候変動による気温上昇の組み合わせにより、家庭用エアコンに使用される電力は現在の中東全体の電力使用量を上回る量まで増加するとの予測を出しました。報告書によると、この空調要件の変化により2030年迄に697テラワット/時(TWh)の追加の電力供給が必要になります。この量はデータ センターからの追加需要の 3 倍以上です。IEAによれば、これに加えて、EV向けに更に854TWhが必要になる見込みです。IEAのファティ・ビロル事務局長は「世界の電力消費の原動力としてエアコンが如何に重要であるかという点について、多くの政策当事者の盲点となっている」と述べています。
▶ https://www.iea.org/reports/world-energy-outlook-2024
欧州リサイクル産業連合は、繊維リサイクル業が危機的な状況にある事をプレスリリースで発表しています。戦争、アフリカでの物流の課題、超ファストファッションの台頭等により、繊維リサイクル業の収益に大きな問題が生じています。リサイクル素材の需要は低く、リサイクル棉の 2023 年の推定生産量は、世界で僅か 319,000 トンしかありませんでした。バージン棉の生産は2,440 万トンでした。今年、バージン材の価格が安く中古繊維の価格は急落、その一方で廃棄衣料の収集、分別、リサイクルのコストは高騰しています。 2024年春以降、選別された古着販売の価格では加工コストがカバーされなくなり、選別事業者にとって大きな資金繰りの問題に繋がっています。欧州の古着倉庫は既にどこも一杯で、このままこの状況が続けば、繊維廃棄物が焼却されるリスクが高まっています。こうした状況もあり、政府に支援と救済策を求めています。
▶ https://euric-aisbl.eu/resource-hub/press-releases-statements/crisis-in-europes-textiles-sorting-and-recycling-sector-could-trigger-a-domino-effect
中国は国家主導で超大手材料企業による国家リサイクルプラットフォーム用の企業を設立しました。資源リサイクルを中心とする天津の中国資源リサイクル集団(CRRG)で、資本金約14億ドル(約2000億円)、中国国有資産監督管理委員会、中国宝武鋼鉄集団、中国石油化工集団、華潤集団が各20%、中国アルミニウム集団と中国金属集団が残り20%を分割して保有します。CRRGの劉宇会長はCRRGは国有企業の資産と資源リサイクル関連事業を統合し、倉庫保管、加工、配送、下取りサービス、基準策定等の業務を網羅する総合ソリューションプロバイダーになることを目指すと述べています。同グループは鉄スクラップ、電子機器、電気自動車やバイクの使用済みバッテリー、廃風力・太陽光発電設備のリサイクルを含む資源回収ネットワークを扱う複数の「専門子会社」を設立する予定です。中国が国家主導で都市鉱山事業を構築する動きを始めたようです。
▶ https://www.bastillepost.com/global/article/4255874-china-establishes-new-centrally-administered-soe-for-resource-recycling
今回の欧州議会での議題の1つは、欧州の「鉄鋼危機」となります。欧州鉄鋼生産者連合(Eurofer)はEU政府による鉄鋼業への行動計画が急務であるとするプレスリリースを発行しました。世界の余剰鉄鋼生産能力は2023年末には5億5,100万トンにまで達しています。この数量はEUの年間鉄鋼生産量の4倍に相当しますが、なお、増加しています。OECDは2026年までに炭素排出量の多い高炉の生産能力が更に1億5,700万トン増加すると予測しています。 EUの鉄鋼生産量は2008年以降に30%以上も減少しています。過去15年間でEUの鉄鋼業界は約 10 万人の雇用を失っています。直近の EU の鉄鋼生産施設の平均稼働率は約 60%まで下がっており、今や「存続不可能」なレベルとなっています。 こうした背景から炭素国境調整メカニズム(CBAM)の厳格な運用や、セーフガード以外での更なる保護措置を取るように業界が訴えています。鉄鋼業の構造的なOvercapacityは、冷鉄源の価格と流通に大きな影響を与える要因となります。
▶ https://www.eurofer.eu/press-releases/steel-crisis-in-focus-at-ep-plenary-debate-urgent-need-for-robust-eu-steel-action-plan-says-eurofer
メルセデス・ベンツはEVバッテリーのリサイクル工場をオープンしました。ブラックマス(BM)の製造とBMを加工する湿式製錬のプロセスを統合したヨーロッパ初の大型工場となります。欧州の自動車メーカーとしては、BM製造から湿式製錬まで一貫して行う初めての企業となります。リサイクルでの予想回収率は 96% 以上で、リチウム、ニッケル、コバルトを回収する予定です。ベンツのバッテリーリサイクル工場の技術パートナーは、ドイツのエンジニアリング会社SMSグループとオーストラリアのプロセス技術開発会社ネオメタルズの合弁会社であるプリモビウスです。リサイクル工場の年間処理能力は 、2,500 トンです。
▶ https://www.greencarcongress.com/2024/10/20241022-mb.html
米国の司法省は、連邦政府のデータや米国人の個人データが「懸念国」に流出するのを防ぐ為にビジネス取引に新たな制限を設ける規則を提案しました。懸念国が米国の金融・ゲノムデータや健康データをサイバー攻撃やスパイ活動、脅迫に利用することを阻止する為です。米当局者は、TikTok等の中国製アプリが米国ユーザーの機密データを中国の親会社に転送した場合、この提案に違反する可能性があると述べています。この提案は境界線によっては様々な商売に影響が出る規制となります。
▶ https://en.mehrnews.com/news/223367/US-sets-rules-to-block-China-Russia-Iran-access-to-own-data
BRICS首脳会議が開催されました。43ページの最終声明では、ドルの代替決済システムについては殆ど進展がなかったことが示され、米ドルについての言及もありませんでした。しかし代替決済システムへの期待は示されています。ウクライナについては1度しか言及されていませんが、BRICS全体としては紛争の軽減を訴える内容となっています。 NATO加盟国のトルコがBRICS参加に関心を示しており、会議中にロシアとトップ会談を行います。そうした中でトルコで最も重要な防衛・航空会社の1つであるTUSASが何らかの攻撃を受けて、中東はトルコまで巻き込んで混沌としそうです。
▶ https://www.reuters.com/world/xi-modi-discuss-ukraine-war-with-putin-brics-considers-expansion-2024-10-23/
中国は景気のテコ入れの為に金融政策を実施していますが、効果は限定的で反応しても直ぐに戻すような動きとなっています。特に鉄鋼業の回復を助けるには至っていません。中国の新規銀行融資が発表され、予想を下回り、融資全体の伸びが鈍化したことで金属への需要への懸念が高まっています。9月の消費者物価上昇率は低下し、生産者物価デフレは深刻化した様子がデータで示されました。焦点は追加の刺激策を迅速に実施するかです。先週土曜日には景気刺激策の一環として債務を「大幅に増やす」と発表しましたが、不動産市場の支援の金額は明らかにされなかった為、市場の懸念は払拭されていない状況です。金属トレーダーは「週末の政策会合は市場が期待していた刺激策や明確さを提供できなかった。軍が台湾近海で新たな軍事演習を行ったことで不確実性が生じた」と述べています。ドル高もドル調達コストを上げる事から、金属需要を抑制する要因となっています。
▶ https://www.msn.com/en-in/money/markets/lack-of-detail-on-china-stimulus-hit-copper-prices/ar-AA1seCAH?apiversion=v2&noservercache=1&domshim=1&renderwebcomponents=1&wcseo=1&batchservertelemetry=1&noservertelemetry=1
苦悩する欧州鉄鋼業に対し、欧州委員会がグリーンスチール向けの政府支援を承認しました。スウェーデンのSAABに対して、鉄鋼生産の脱炭素化を支援する為に1億2,800万ユーロ(約200億円)をスウェーデン政府が支援します。ルレオ市の生産施設は現在高炉ですが、これをグリーン水素DRI及び鉄スクラップ用の電炉に転換します。この補助金措置により、計画より3年早く、SAABによる水素DRIプロジェクトがスタートします。ただしグリーンスチールは製造コストが高く、現在まで需要が期待した程無い為、今後、CBAMが実施され、どの程度需要が増すかは未知数です。場合によっては製品価格の上昇から需要に歯止めがかかる恐れがあります。
▶ https://www.eureporter.co/politics/state-aid-2/2024/10/23/commission-approves-e128-million-swedish-state-aid-measure-to-support-ssab-in-decarbonising-its-steel-production/
最近の分析によると、投資家は化石燃料関連株を買い増しながら、クリーンエネルギーはネットで売り越している事が判明しています。5兆ドル規模のヘッジファンド業界は、石油、ガス、石炭をネットで買い増していますが、バッテリー、太陽光、電気自動車、水素をネットで売り増している事が明らかになりました。資産運用担当者は、多くのグリーン投資は期待したほど早く、或いは高いリターンを生まないと考えています。S&Pグローバル・クリーンエネルギー指数は2021年のピーク以来60%近く下落している一方で、S&Pグローバル・オイル指数とS&P500指数はその間、共に50%以上上昇しています。重要と考えられている太陽光発電についてもQ3には企業の77%でネットショートがネットロングを上回り、2021年Q1の33%から大幅に増加しました。ヘッジファンドは主に中国の圧倒的な優位性を懸念しています。EV関連銘柄のレーンシェアーズ・エレクトリック・ビークルズ&フューチャー・モビリティ・インデックスETFの銘柄の内、55%が空売りしている状況でグリーン水素関連株も同じような状況が続いています。
▶ https://oilprice.com/Energy/Energy-General/Why-Is-Smart-Money-Betting-Against-Renewable-Energy.html
やや下げ基調でしたが、インドのBig Mintによるエンドカット鉄スクラップ価格指数は、今週1トン当たり1,700ルピー(約3500円)と急激に下落しています。鋼材完成品の需要低迷と鉄鋼メーカーの在庫レベルが適正な事によるものです。スクラップが400ルピー、DRIが200ルピー、銑鉄(鋼グレード)が500ルピー下落しました。
▶ https://www.bigmint.co/insights/detail/india-bigmint-s-scrap-index-drops-inr-1-700-t-w-o-w-on-muted-demand-23-oct-592559
インド最大の巨大コングロマリットであるアダニグループが所有するカッチ・カッパーは、オーストラリアの鉱山大手BHPと年間最大160万トンの銅精鉱の大型供給を協議中で、成約すれば巨額の契約となります。インドではヒンドゥスタン・カッパー社が銅鉱石を生産する唯一の国営企業であり、国内総生産量は約400万トン/年です。これは国内需要の僅か4.5%に過ぎず、輸入への依存度が高いことが課題でした。インド鉱山省はインドの一人当たり銅消費量は0.6kgから1kg/年に増加すると予想しています。世界平均の一人当たり銅消費量は3.2kgです。経済成長に伴いインドの1人当たり銅消費量は更に増えると予想されています。人口が世界1位なので、僅か0.5Kgでも国全体では相当な量になります。
▶ https://www.business-standard.com/companies/news/adani-s-kutch-copper-nears-rs-30-000-crore-copper-sourcing-deal-with-bhp-124102400370_1.html
欧州のEV生産にとってまた1つネガティブなニュースです。ドイツでEV用マイクロチップを製造する30億ユーロ(約5000億円)の工場建設プロジェクトが延期されました。このPJTは米国のウルフスピード社とドイツの自動車部品メーカーZF社によるもので、ドイツの西部ザールラント州で計画されていました。米国企業は国内工場での生産が堅調な為、現時点ではドイツでの計画を実施する必要性が無いと判断しました。先月インテルはドイツ東部のマクデブルクで計画されていた総工費300億ユーロの2つの巨大工場の建設を延期すると発表したばかりです。インテルのPJTにはドイツ政府が100億ユーロという巨額の補助金を支払う予定でした。今回のPJT延期(というより事実上中止)はインテル社の2工場の建設延期、Northvoltの問題、更にVWが検討している大規模のリストラによって、欧州資本のEV製造を取り巻く環境がいかに悪化しているかが示される内容となりました。今回のPJT延期は「需要が期待外れだった為」と説明されています。
▶ https://www.theguardian.com/environment/2024/oct/23/project-to-build-german-ev-microchip-factory-put-on-hold
脱炭素技術の1つとして、科学者から批判が相次いでいる炭素回収・貯留・バイオエネルギー利用(BECCS)ですが、英国でPJTを承認した大臣自身が態度を180度変えて「承認を支持しない」という立場を表明し、注目を集めています。世界最大の木質ペレット発電所である英国のDraxは、2027年に現行の再エネ補助金が切れる事に合わせて、新たな補助金を求め英国政府にBECCSの補助申請を行っていました。今年1月に前政権下で承認されましたが、当時承認したネットゼロ担当大臣は「当時大きな圧力に」直面していた事を認め、この技術の根拠は「単純に崩れ去った」と述べています。Draxは英国政治家や官僚の天下り先であり、欧州投資家が補助金から得られる配当を目当てに作られた会社で、大きな圧力団体でもあります。昨年の輸入木質ペレットは1000万トン近くになります。Envivaの上場廃止予定、Draxへの補助金の議論等、今や輸入木質ペレット発電に関わるステークホルダーは、環境の為ではなく「存続の為」に動いていると言えます。
▶ https://www.letsrecycle.com/news/drax-responds-after-tories-withdraw-support-for-ccs/
LFP電池が伸びている中、アジアの硫酸コバルトと水酸化コバルトの価格は2024年Q4に供給過剰と需要低迷で上値が重い展開が続くと見られています。LFPにも使われるリチウムへの投資は継続しており、今週リオ・ティントがアルカディウム・リチウムを買収する正式契約を発表したばかりでした。EV用のNMC電池の需要の弱まりから、硫酸コバルトと水酸化コバルトはQ4の契約交渉で供給過剰が指摘されています。S&P Plattsは10月16日に電池グレードの20.5%Co硫酸コバルトをDDP中国で26,800元/トンと査定し、2018年5月4日の硫酸コバルト査定開始以来の最低価格を記録しました。
▶ https://www.spglobal.com/commodityinsights/en/market-insights/latest-news/metals/102324-trade-review-asian-cobalt-market-to-face-pressure-from-oversupply-weak-demand-in-q4