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NEWSCONの気になるNEWS(2023年9月第4週)

「革新的」と言われるプラスチックリサイクル事業の難しさを示す例が英国で明らかになっています。流動床反応器を使いプラスチックのケミカルリサイクル技術を開発し、多額の資金を集めていた英国のRecycling Technologies社は、追加の資金が得られず今月正式に管理人下に置かれる事になりました。同社は流動床反応器RT7000を開発し、プラスチック廃棄物を合成油(Plaxx)に精製する技術開発を行ってきました。住友SHI FWとも提携を行っています。当初は59社の買収候補が居ましたが、最終的に事業全体の買収を申し出た者は1者(社)もなく、会社の売却は今の所、不成立に終わっています。機械を含む資産を31万ポンドと算定しオファーを出すも、総額2,280万ポンドの負債を抱えており、買い手は残りませんでした。ロンドン証券取引所に上場する計画も失敗に終わり、2022年1月から8月迄に560万ポンドの損失が報告されていました。プラスチック廃棄物のリサイクルが困難な端的な例です。これはプラスチック廃棄物のリサイクルだけに限った事ではなく、長年リサイクルのノウハウと事業性を判断できる十分な経験・知識が無い新興企業が1つのテクノロジーを売りに市場からIPOを目論んだ多額の費用を得ても結局成功しないという事例となりました。2019年から最近にかけ、欧州ではこのような単一のテクノロジーに依存したリサイクル新興企業が多額の資金を集め華々しくネットを賑わし投資家から資金を得てきましたが、今後こうした「ゾンビ」企業がどれだけ成功できるか、懐疑的な見方が出始めています。
https://recyclingtechnologies.co.uk/
https://www.energyportal.eu/news/what-happened-to-groundbreaking-swindon-company-that-collapsed-into-administration/266172/

ロシア最大、換算値で推定2,670万トンの銅資源がある鉱床の開発が正式にスタートしました。この鉱床はロシアが独自で難度の高い鉱石の採掘と精鉱を行う技術が無い為、1949年の発見以来、長い間未開発のままでした。更に欧米から開発会社が制裁の対象となり、精鉱の買い手がおらず、商業販売の目途が立っていませんでした。しかし中国の近隣に位置し、中国からの需要を期待する事で開発が進められる事になりました。金属含有量40~45%の硫化銅精鉱の生産を目指し、操業開始は2024年、最大1,500万トンの鉱石の処理能力を持ち、年間最大15万トン分の銅精鉱を生産する計画です。2028年迄に鉱山冶金複合施設の第2段階を建設し、年間生産能力を鉱石2,400万~2,800万トン、銅精鉱の生産量は最大45万トンまで増やす計画です。
https://www.reuters.com/markets/commodities/russian-miner-udokan-copper-launches-processing-plant-2023-09-11/

インド政府は米国への鉄鋼及びアルミニウムの非課税輸出を可能とする為の米印共同の監視メカニズムを設立する交渉に入っています。非課税枠は最低33万6,000トンの予定です。現在、米国は鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の従価関税を課しています。この従価関税は米国が輸入品を不当と見なした場合に課されます。この通商交渉でインドは米国からの8つの製品に対する報復関税を撤廃しています。中国と欧米のデカップリングが進む中、インドへの恵国待遇と欧米投資が益々鮮明になっています。クリントン政権以後、特に西欧と米国による「対日から対中への投資」が加速し、日本の製造業が空洞化、日本の余剰生産能力が海外移転し、失われた30年が始まった様に今回のデカップリングで中国の余剰生産能力がどこに向かうのか注視する必要がありそうです。欧米と異なりフルオープンの日本市場には今後も中国資本のスクラップ業者が一層増えるかも知れません。対中デカップリング規制が厳しさを増す欧州では、中国資本でドイツのスクラップ大手Sholtzは早くも影響が出ていると報じられています。
https://www.business-standard.com/economy/news/india-us-to-set-up-mechanism-to-enable-steel-exports-at-concessional-rates-123091200997_1.html

欧州議会はEUの重要な原材料をEUが独自で供給可能とする計画を承認しています。これは特定の資源国をパートナー国とする事で、戦略的なプロジェクトを共同で実行する事に重点を置くものです。特にコバルト、リチウム、マンガン、レアアース等の鉱石を大量に埋蔵しているオーストラリアやチリ等が候補の例として上げられています。更に様々な煩雑な手続の廃止、イノベーションの促進、代替材料の開発が、承認された内容に盛り込まれています。欧米は議会でも資源争奪に関して積極的で、デカップリング後に備えた法整備が次々に進められています。
https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20230911IPR04927/critical-raw-materials-securing-the-eu-s-supply-and-sovereignty

9月15日に中国の国家統計局(NBS)が8月の経済データを発表しています、鉱工業生産は前年同月比4.5%増、小売売上高は前年同月比4.6%増となり、鉱工業生産、消費ともに伸びています。消費支出はやや改善、最近の金融緩和や経済刺激策が実を結び始めている事を示唆しています。固定資産への投資も1月-8月で前年同期比3.2%増となっています。しかし不動産不況が全体の足枷となっています。1月-8月の不動産投資は前年同期比8.8%減、床面積別の不動産販売も7.1%減少しています。特に不動産セクターへの信頼度が下がり、健全性をめぐる不安が継続している事から格付会社のムーディーズは、不動産セクター全体の見通しを下方修正しています。中国は部分的な景気刺激と利下げを実施していますが、人民元安を招いている事からキャピタルフライトへの規制が一層厳しくなると見られています。過剰生産能力と人民元安は、輸出市場での影響を増す事が予想されています。
https://edition.cnn.com/2023/09/14/economy/china-august-data-growth-hnk-intl/index.html

EUは、EVだけでなくLIBに関しても中国排除を検討する可能性があります。ガスのロシア依存と同様にリチウムイオン電池の中国依存に対する危機感が欧州政府内で増大しています。この内容は10月5日に開催されるEU首脳会議向けに作成された内部文章に記載されているものです。作成したのは議長国であるスペインで、経済安全保障に関するテーマとして取り上げられる予定です。先週、欧州委員長が中国製EVへの関税について調査を発表し、中国が猛反発しました。その後、報復に対する懸念が上がっていましたが、欧州政府の上級幹部は、それらの報復にEUが耐える力がある旨を強調していました。米国はIRAにより事実上輸入EVが締め出されましたが、欧州も似たような流れになりつつあります。問題はEUの対応により、肥大し過ぎた過剰生産能力を持つ中国のEVと電池産業がどの市場へ向かうかという事です。ブラジルも輸入EVへの関税を検討し始めています。
https://www.reuters.com/business/energy/eu-may-become-hooked-china-batteries-it-was-russian-energy-paper-2023-09-17/

国際通貨基金(IMF)は、中国に構造改革を促しています。IMFの専務理事による警告で従来のインフラへの資金注入ではなく、国内消費を促進し、問題を抱えている不動産セクターに対処、地方政府債務を抑制するよう促しています。中国は今年世界の経済成長の約3分の1を生み出しており、その成長率は「アジアにとって重要であり、その他の世界にとっても重要だ」との見解を示すと同時に「構造改革が無ければ中国の中期成長率は4%を下回る可能性がある」と予想しています。また「中国によるEVの大々的な推進が、不公平な競争を生み出す形で補助金を利用して行われない様にする事が重要だ」と警告しています。
https://www.channelnewsasia.com/business/exclusive-imf-urge-china-shift-growth-model-towards-consumption-georgieva-says-3775296

今後も原油高騰が続くと見られています。今月サウジとロシアは合計日量130万バレルの供給削減を2023年末まで延長すると発表しました。ANZ(Australia New Zealand Bank)の計算では、10月以降のQ4で世界は日量200万バレルの供給不足に陥る可能性があり、在庫の取り崩しにより対応できるが、その影響は2024年に更なる価格高騰を招くと警告しています。米国のCity Bankは、ブレントの価格が今年1バレル当たり100ドルを超える可能性があると予測値を出しました。IEAも先週、OPEC+の継続的な供給削減は「大幅な供給不足」を引き起こし、進行中の価格変動にかなりの脅威を齎すと警告したばかりでした。エネルギーコストの上昇によるインフレ懸念が再燃し始めています。
https://www.theguardian.com/business/2023/sep/17/global-inflation-fears-as-oil-price-rises-towards-100-a-barrel

世界でグリーンスチールのみを製造する最も先進的かつ資金を集めている新興企業は、スウェーデンのH2 Green Steelとアメリカのボストンメタル(Boston Metal)の2社である事は疑いようが有りません。この2社ですが、今月に追加で巨額の資金提供を受けています。H2 Green Steelは15億ユーロ、Boston Metalは2億6200万ドルです。H2 Green Steelの資金提供を主導した1社はJust Climateというファンドです。このファンド実はアル・ゴアの投資会社Generation Investmentの事業投資ファンドで、15億ドルのファンド資金の提供先はスウェーデンのH2 Green SteelとMeva Energy、スイスの重電の子会社ABB E-モビリティ(スウェーデン)の3社です。このファンドの最も有力な機関投資家の顧客がマイクロソフトの気候イノベーション・ファンドです。Boston Metalが資金提供を受けた2億6200万ドルは、3回目の資金募集(シーリーズC)からのもので、この前の2回の出資募集(シリーズA&B)でも今回同様の資金提供をしているのは、Breakthrough Energy Venturesという投資会社で、この投資会社はビルゲイツが事実上所有している投資会社です。また同様にマイクロソフトの気候イノベーション・ファンドもBoston Metalに投資しています。Boston Metalは欧州最大の鉄鋼メーカーであるアルセロールミタルが資金提供した会社でもあります。上記のグリーンスチール製造新興企業の2社は異常な位に欧米メディアに頻繁に登場し、有力な顧客が既についています。この2社は今後間違いなくIPOに進み、ファンドに巨額なリターンをする事になると容易に想像がつきます。この2社のIPO迄は暫く鉄鋼の脱炭素化への海外発の圧力は続くものと予想できます。
https://bit.ly/3EJRU8I

FastMarketは、9月20日からブラックマス(BM)価格の指標を追加します。既に3つのBMグレードで価格指標を出していますが、更に8つのBMグレードが追加され、より細かな価格指標を提示します。追加されたものは品質グレードだけではなく、日本、韓国、欧州、東南アジアCIF、欧州輸出等の地域による価格指標も網羅しており、より実態を反映したものとなります。これで海外の大まかなBMの取引価格が他のコモディティーの様にある程度分かるようになると思われます。
https://www.fastmarkets.com/insights/fastmarkets-unveils-eight-new-black-mass-prices

フランス政府は、中国製EVをターゲットとしたEV補助金に対する条件変更を行います。現在EV1台当たり5,000ユーロ、世帯所得により最大7,000ユーロを補助し、予算として約10億ユーロ(1550億円)が確保されている国の補助金(グリーンボーナス)に対し、生産地や製造迄の炭素排出量の規定を設ける予定です。フランスには、大手のルノーと世界4位のメーカーであるステランティスがあり、EU市場に進出している中国製EVに対するロビーが強化されてきました。補助金条件の変更内容は「鉄鋼とアルミ生産からの排出」、「EVの組立と販売地までの輸送の排出」、「EVとバッテリーの両方での重要な原材料の使用」等を含む、6つのCO2排出条件を課すと見られています。フランス政府は「石炭発電を利用して製造した中国製の自動車は、グリーンボーナスの恩恵を受けられない事」を明言しています。先週の欧州政府の対中国製EV関税への調査発言を受け、中国政府は国内自動車製造に海外製の部品を排除するよう要請を出しています。俄かに報復合戦が始まる気配です。欧州商工会議所は安全保障を理由に欧州が中国からの自立の道を歩むのか、EUの理念通りに市場開放を維持するのか、その立場を知る必要がある、と政治的な曖昧さに警告しています。EVの需要は、充電インフラが揃い所得の多い地域に限られます。その為、欧米(とブラジル)の両方で中国製EVの排除が進む中、勢力地図は徐々に政治的に変えられそうです。
https://www.euractiv.com/section/electric-cars/news/france-rolls-out-new-cash-incentives-for-electric-cars-takes-aim-at-china/

LME関連で3つ情報があります。銅:LMEの銅在庫は、ここ2カ月で2倍以上に増加し、2022年5月以来の高水準となっています。これは欧米の製造業の停滞だけでなく中国の弱い銅需要を反映しています。ニッケル:LMEはニッケルの流動性(取引回数含む)が低く、グローバル・コモディティ・ホールディングスや上海先物取引所(SHFE)が独自の国際ニッケル先物契約の創設を検討している為(LMEが)世界的な価格ベンチマークを維持する事に苦労している状況です。スクラップを利用するステンレス生産者は最近、何故LMEのニッケル価格を指標として使用する必要があるのか?という疑問を持ち始めています。それはスクラップ価格とLMEニッケル価格の間には依然としてかなりの幅があり、スクラップ価格を正確に知る事がステンレスの実際の生産コストにとってより重要だからです。計算方法の変更:そのような中、LMEは取引の透明性を確保する目的で「終値の計算方法の変更」を発表しています。
https://www.reuters.com/markets/commodities/copper-grounded-by-rising-exchange-inventories-2023-09-19/
https://finance.yahoo.com/news/lme-losing-grip-global-nickel-170000503.html
https://www.lme.com/en/News?sc_camp=E648FC72E35D4937B619F85539637517

上海にある米国商工会議所が年次調査をリリースし、調査回答者325社の内、今後5年の中国事業が楽観的であるという割合が1999年の調査以来過去最低の52%となり、更に60%が米中関係の緊張が中国でのビジネス上の最大の課題と回答しています。中国向けの投資を東南アジア向けるよう考えている企業は、昨年の34%から40%に増加しています。米国と欧州企業は、中国投資からその大部分をインド、メキシコ、ベトナム、マレーシアに切り替えている実態を反映しています。
https://www.amcham-shanghai.org/en/article/amcham-shanghai-releases-report-business-climate-china

ベトナムの鉄鋼業協会は、2050年迄にカーボンニュートラルとなる事を発表しています。ベトナムの温室効果ガス排出量の平均率は世界平均より約23%高く、鉄鋼部門での排出量削減は大きな課題となっています。鉄鋼製造の排出削減には大幅な技術の進歩と運用の変更が必要です。同協会は、国が推進する「デジタル変革」、「技術の最適化」、「全体的な効率の向上」を通じた持続可能性への取り組みに積極的に参加しています。ベトナムの一部の製鉄所は、工場で発生する余熱を再利用しエネルギー効率を高める事で、より環境に優しい生産に移行しています。政府は2030年迄に産業と商業部門でカーボンニュートラルを達成する為の行動計画を立ち上げています。ベトナムの方がやや脱炭素への政府の取組が進んでいるようです。
https://www.energyportal.eu/news/vietnams-steel-industry-eyes-carbon-neutrality-by-2050/275294/

OECDは2023年の中間経済見通しを発表しています。2024年の世界成長率は低下すると予測しています。コアインフレは依然として高止まりとなっており、世界経済の成長加速は長続きしない可能性があります。2023年の成長率は3.0%、2024年は2.7%に減速すると予想しています。米国と日本は比較的堅調な成長となっていますが、欧州の殆どの地域の成長率は低く、特にドイツは最悪の打撃を受ける国となりました。OECDはドイツの主要な貿易相手国である中国の成長は、予想よりも鈍く、一方で欧州全土の経済活動は頑固なインフレと金利高によって圧迫され続けていると分析しています。英国のインフレ率は、トルコ、アルゼンチンに次いでG20の中で最も高く、2023年の平均インフレ率は7.2%、2024年には回復する可能性があるが、年内は高止まりと見ています。
https://www.oecd.org/economic-outlook/september-2023/

欧州最大の銅生産会社のAurubisで発生した在庫の詐欺被害は1億8500万ユーロに上る事が同社から発表されています。詐欺はサプライヤーが従業員と共謀して行ったもので、過去にない大規模な打撃となっています。
https://www.aurubis.com/en/media/press-releases/press-releases-2023/aurubis-ag-extraordinary-inventory-completed-and-new-forecast-for-2022-23-fiscal-year

欧州議会で承認された「欧州重要な原材料法」に関して欧州リサイクル産業連盟(EURIC)が猛反発をしています。この法律では、欧州委員会が必要と判断すれば新たな原材料リストに二次原料(リサイクル原料)を追加することが可能となった事、その例(可能性)として鉄スクラップが挙げられていました。議会承認での主な変更点は、アルミニウムが新たに創設された「戦略的原材料」のリストに加わった事です。これはEURICがこの法案が最初に提出された時から懸念していた事で、科学的根拠に基づかないとの批判をしていました。この法律により、域内での加工・精製(40%)やリサイクルからの原料(15%)等の具体的な数値が規定されている事から、スクラップの所有権が「より川上」に移動すると予想されています。更に廃棄物輸送規則の変更による選別スクラップの域外輸送制限が加わる為、EURICは大きな反発を表明していると言えます。
https://euric-aisbl.eu/resource-hub/press-releases-statements/crms-report-euric-rejects-the-creation-of-secondary-strategic-raw-materials-list-proposes-solutions-for-a-green-steel-industry

英国は2030年からガソリン車とディーゼル車の新車販売禁止を5年間延期する事を含む新たな緩和措置を発表しています。この政策転換は「苦境にある家族」を「容認出来ないコスト増」から守ることを目的とした「新たなアプローチ」としており、政府は環境政策の緩和を認めました。この発表は自動車業界や活動家を巻き込み政治的な騒動となっています。首相は「今回の現実主義的な方針は野心を失ったり、約束を放棄したりする事を意味するものではない」と説明しています。英国の国務長官は「英国を破産させる事で地球は救えない」と発言し、現実的な解決と実態に比例した政策に転換するよう、強硬な姿勢を見せていました。これに対して野党やEV化に多額の出資をしている自動車メーカーは猛反発をしています。
実はこのような政治的なShowとは異なり、世界の大口投資家は非情なまでにクリーン・エネルギーから資金を引き揚げ始めています。世界最大のクリーン・エネルギー上場投資信託(ETF)のiシェアーズ・グローバル・クリーン・エネルギーETF(ICLN)では、8月迄に7億6,500万ドルが引き出され、同ファンドによる投資家からの資金純流出としては記録上、群を抜いて最大です。他にもファースト・トラスト・ナスダック・クリーンエッジ・グリーン・エネルギー指数(QLN))からは1億9,700万ドルが純流出となり、バンエック低炭素エネルギーETF(SMOG)からも2,360万ドルが純流出となっています。これらは何れも過去最大です。海外の大手投資家はクリーン・エネルギーから投資先をAIにシフトしており、これは気候変動のグルであるアル・ゴアのGeneration Investmentも同じです。世界指標の1つであるS&P Global Clean Energy Indexは年率で既にマイナス30%のイールドになっています。特に最も宣伝してきた英・米の洋上風力発電の入札は参加者すら得られない状況に陥っています。英国の政策転換は中国とロシアへの投資、更にエネルギー安で好景気だった頃に策定された欧米主導のグリーン化政策が世界の巻き戻しになって予定通り実現が難しくなり、政権交代で「コロッと」転換したという事例となっています。
https://news.sky.com/story/rishi-sunak-confirms-hes-delaying-ban-on-new-petrol-and-diesel-cars-and-boosts-boiler-upgrade-scheme-12965656
https://www.reuters.com/markets/us/clean-energy-investing-loses-lustre-despite-climate-crisis-2023-09-20/

米国でより厳しいEVの脱中国化が進みそうです。米国の下院歳入委員長はテスラに対し、中国のCATLと契約を締結しているか、又は契約を検討しているのかを書簡で質問しています。日産に対しても、電池サプライヤーの詳細と米国での製造計画に「EV用電池、又は電池部品の生産が含まれているか」どうかを質問した書簡を送っています。米国のIRA(インフレ削減法)では、電池部品が「懸念される外国企業」によって製造または組み立てされた場合、EVの税額控除が得られません。米国の財務省は、IRAは「中国にアウトソーシングするのではなく、米国への投資と安全なサプライチェーンの構築を奨励している」とし「今後も国内外のサプライチェーンに関連する国家安全保障上の懸念を評価し対応していく」との見解を示しています。輸入EVに対する保護政策と異なり、懸念外国企業が国内で工場を建設し雇用を創出して製造を行う事まで対象にするという意味で、米国のEVから中国の影響を本格的に排除する流れが強くなっています。
https://www.reuters.com/business/autos-transportation/republican-lawmaker-seeks-details-tesla-relationship-with-chinese-battery-2023-09-19/

USスチールが見通しを発表し、下半期の厳しい状況を投資家に説明しています。USスチールは2023年第3四半期の調整後1株当たり純利益予想を前四半期から約40%ダウンすると見ています。また同社はイリノイ州の高炉の1つを一時的に休止し、生産を他の国内施設に再配分する計画です。アーカンソー州のミニミル部門の利益も第2四半期より減少すると予想しています。何れも需要の減少によるものです。
https://investors.ussteel.com/news-events/news-releases/detail/643/united-states-steel-corporation-provides-third-quarter-2023

南ウェールズの高炉を大規模な電気炉に転換する為、タタ・スチールと英国政府は12億5,000万ポンドの共同投資パッケージを発表しています。この投資には英国が鉄鋼業に支援する過去最大となる5億ポンドの補助金が含まれます。電気炉の年間生産能力は300万トンです。非公式乍ら英国の閣僚の1人は「英国の鉄スクラップは同工場に向けられる」という趣旨の発言をし、英国の鉄スクラップ協会が「今後も相当量は輸出を続ける」と反発しています。過去10年以上、英国はトルコやエジプトへの鉄スクラップ輸出大国でEMRやWARD等の大手スクラップ業者は港湾施設を充実させてきました。しかし年間300万トンもの需要が国内に発生する為、今後、英国内の鉄スクラップの流れは大きく変わらざるを得ない状況です。電気炉の商業生産日程は明らかにされていませんが、第一段として4年で7億ポンドをEAF建設に向けると発表しており、商業生産は2027年頃になりそうです。米国とインドは輸入関税、欧州は国境炭素税でそれぞれ域内鉄スクラップ需要が増すだけでなく、世界各地で電気炉への投資が続いており、国際流通する鉄スクラップにも影響が続きそうです。
https://www.gov.uk/government/news/welsh-steels-future-secured-as-uk-government-and-tata-steel-announce-port-talbot-green-transition-proposal

19日に「欧州鉄鋼会議」が開催され、その内容の一部がカラニッシュで伝えられています。電炉の急激な増加による鉄スクラップ不足への懸念が欧州メーカーで本格的に起き始めており、鉄スクラップをEUの「戦略的原材料」として確保する従来の意見が強調されています。低炭素に向けた取り組みとして、水素ベースの工法はコストが掛かり過ぎる為、高炉から鉄スクラップを使用した電炉生産に転換する以外に「他の選択肢はない」との見解が示されています。また主催国であるポーランド鉄鋼協会は、自国からの鉄スクラップ輸出がESG要件に適合しない海外メーカーに送られ、製品が海外から輸入される事に懸念を示しています。米国の様に鉄スクラップを原料とした製品が棒鋼から平圧延鋼板にシフトしつつある為、銅、錫等の不純物を除去し「純度の高い鉄スクラップ」の需要が高まると見ています。この動きは既に米国で先行しており、9月20日に大手鉄鋼メーカーのスティール・ダイナミクス社が、メルセデスベンツのアラバマ工場に年間5万トン以上の低炭素鋼(70%以上スクラップ含有の平圧延鋼板)を供給する契約を締結したばかりです。
https://www.kallanish.com/en/news/steel/market-reports/article-details/steelmaking-electrification-to-cause-eu-scrap-deficit-conference-0923/

中国は8月からガリウムとゲルマニウムの輸出を許可制としましたが、実際には8月に1トンも輸出されなかった事が判明しています。手続き上は輸出業者が許可申請をし、許可が承認されれば輸出は可能です。申請処理に約45営業日が必要との情報ですが、生産者も輸出者も許可を待っている状態と伝わっています。海外勢は7月に「買い溜め」をした為、7月は通常の2倍の輸出量となっていました。半導体製造に必要な特殊材料の為、今後、多少の影響がありそうです。中国の調査会社「安泰科」によると、世界のゲルマニウムの約60%、ガリウムの約90%が中国で生産されています。しかし中国にはこれら素材からその後の半導体や光学製品を作る能力はなく、大部分が日本や欧州の企業に輸出されています。アルミニウムが欧米で相次いで「重要な原材料」になった最終的な切っ掛けは、この中国の動きによるものです。
https://www.asiafinancial.com/china-blocked-exports-of-two-chipmaking-metals-in-august

ドイツ企業は、政府の政策とは反対に中国への投資を強めています。ドイツ経済研究所が発表した調査結果では2023年上半期にドイツ企業による中国への海外直接投資(FDI)は103億ユーロで、パンデミック前の2019年の55億ユーロの約2倍と判明しています。過去 10年間の上半期の平均投資額は40億ユーロです。ドイツによる中国へのFDIは2022年の上期も120億ユーロと大幅に伸びており、政府の要請や対中投資保証の大幅削減にも関わらず、ドイツ企業が中国への多額の投資を続けているという懸念を浮き彫りにしています。ドイツの中国依存体質はEVで明確になっており、GotionやCATLがドイツに電池工場を設立する事が既に決まっています。
https://www.reuters.com/world/german-investment-china-eases-h1-after-record-high-2023-09-20/

欧州の排ガス規制ユーロ7が緩和される可能性が高くなっています。欧州連合の加盟国は、提案された排出規制ユーロ7を緩和する妥協案を議論している事が明らかになっています。ユーロ7は提案以来、対応コストが高過ぎる上、環境上の利益も無視しているという理由から欧州の自動車メーカーが反対してきました。来週開催される欧州競争力理事会で議長国のスペイン政府が妥協案を用意しています。最近、欧州議会はWHOの大気質基準をEUが準拠する期日を2030年から2035年に延期する事で可決しています。ここ数ヵ月で欧州は環境規制の緩やかな緩和や新たな規制の抑制、原材料の確保、保護貿易等、状況は一変してきています。
https://www.transportenvironment.org/discover/euro-7-pollution-standards-for-cars-effectively-killed-off-by-spanish-eu-presidency-proposals/

ブラジルは、GHG排出量削減量目標を強化しています。2005年に対し、2025年迄に48%、2030年迄に53%削減します。これはブラジルの環境相が国連の気候サミットで明らかにしたものです。更に2030年迄に森林破壊をゼロにすることを目指し、クリーンな電力とバイオ燃料を生産する「クリーンエネルギーハブ」となる可能性を示唆しています。政権が変わり、ブラジルでは環境目標が大幅に強化されています。
https://www.argusmedia.com/en//news/2491346-brazil-targets-53pc-emissions-reduction-by-2030

今年、欧米政治のフィクサーとして長年君臨してきたジョージ・ソロスが引退し、息子が後継者となりました。そして欧州事業を大幅に縮小すると発表しました。同じ90歳代で長年世界のメディア王として君臨してきたルパード・マードックも引退する事を発表しています。米国で彼が所有するニューズ・コープ社は、地方紙、全国紙、国際報道機関を含めると100以上と言われ、世界の英語出版社「ビッグ5」の1つであるHarperCollins、ウォール・ストリート・ジャーナル、保守系タブロイド紙ニューヨーク・ポスト等を傘下に持っています。英国では毎日販売される全国紙の3分の1近くを発行しており、ニューズUK、サン、タイムズ紙は傘下の新聞です。それ以外にもケーブルTVネットワークのFOX corpを所有しており、80年代後半から欧米の世論形成に多大な影響を与えてきました。ソロスやマードックがいつ引退するのかは10年以上前からの話題でした。2人とも90歳代まで現役で世界政治に影響を与えてきましたが遂に2023年、ほぼ同時に引退する事になりました。2人ともソ連崩壊で国際化が始まった90年初頭から本格的に頭角を現し、過去30年間世論形成と国際政治に影響を与えてきましたが、戦争を機に世界が国際化からデカップリングに本格的に変化する中で引退するという事は歴史の象徴的な出来事と言えるかも知れません。
https://www.cnbc.com/2023/09/21/rupert-murdoch-steps-down-as-chairman-of-fox-and-news-corp.html
https://www.foxnews.com/media/rupert-murdoch-announces-transition-new-role-chairman-emeritus-fox-news-corp



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