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NEWSCONの気になるNEWS(2023年9月第1週)

欧州に続き、米国でも電子廃棄物(WEEE)の輸出規制が行われる可能性があります。少し前になりますが6月末に米国の下院議会で「安全な電子廃棄物輸出、及びリサイクル法(SEERA)」案が再導入されています。元々は安全保障上の理由から2021年に最初の法案が提出され、修正されてきました。電子廃棄物(WEEE)が米国政府によるチェックが無く輸出されている事から、国家安全保障上の懸念が続いているという事が理由です。2030年迄に2,700万トンになる見込みのWEEEの流れを抑制する事が目的です。個人や企業の機密情報を含むWEEEに関しては、気候変動に対処する事と同時にサイバーセキュリティの為にも重要です。この法案はWEEEの海外輸出を制限し、国内でWEEEをリサイクルする為の新しい基準を作成するという条項があり、今後、議会で議論されていく事になりそうです。米国はバーゼル条約に加盟していない為、この法案が可決した場合、欧州と同じような規制が掛かる可能性があります。
https://bit.ly/45waUD7

米エネルギー省の外部機関であるREMADE Institute(リ・メイド研究)は、リサイクル・アルミから溶融時に不純物を除去する新技術のライセンスを開始しています。同技術の採用により、リサイクル材を利用し製造したアルミニウムの品質が向上し、EV等の高品質のアルミを利用する製品への用途が広がると見られています。研究は現在も進行中の「溶融アルミニウム合金からの元素の選択的回収」という開発プロジェクトで現在特許を準備中の為、技術の詳細は機密扱いで公表されていません。この新技術は米国内の二次アルミニウム製造業者にライセンス供与されます。
https://remadeinstitute.org/news-and-articles/remade-announcement-tech-licensing-for-aluminum-industry

EUで2035年以降にゼロエミッション車(EV)のみを販売する規則に抵抗が続いています。2021年に欧州で出された2035年以降のZE車化(内燃機関の廃止)の提案は当時から大きな抵抗に合い、2023年3月にはCO2等から製造する合成燃料(e-fuel)を利用する内燃機関車の販売を2035年以降も許可するという妥協となりました。その後「CO2ニュートラル燃料」の定義を巡り、EUの官庁である域内市場担当総局(DG GROW)と気候変動対策担当総局(DG CLIMA)が対立していました。ドイツのポルシェ、ボッシュ、石油大手のエクソンモービル、レプソル、エニ等が加盟するeFuel Allianceは6月にポジションペーパーを発行し、e-fuelの生産には大気から回収されたCO2だけでなく、工場等から排出されるCO2の使用も含めるべきと主張しました。現在、EU内部では域内市場担当総局(DG GROW)がこの考えを更に拡大し「非生物起源の再生可能燃料」(RFNBO)であれば良いという提案をしています。「非生物起源の再生可能燃料」(RFNBO )は既にEU再生可能エネルギー指令の中で定義されています。この問題には自動車生産国であるチェコも賛成しており、今後も議論が続くと見られています。e-fuelの定義問題を含めた車輛の排出基準について、10月初旬にEU27ヵ国による作業部会が開かれる予定です。
これには裏話があり、ポルシェはVWグループですが、ドイツ3大メーカーは、既に大々的にEVオンリー戦略を宣伝してしまい、自社ブランド(VW, BMW, Benz)では反対できない事情もあり、ボッシュとポルシェの組合せになったようです。更に欧州メーカーも米国メーカーもEV部門は赤字が続いており、特に独3大メーカーはグリーンディーゼルが大規模な詐欺事件に発展し、グリーン化の巻き返しで100%EV戦略を打ち出したものの、結局儲からないという事実が明らかになり、「ステルスロビー」をしている、というものです。
https://www.efuel-alliance.eu/

中国製品の大きな受け皿となってきたインド市場が、中国の安価な鉄鋼製品の輸入急増を受けて対策に乗り出す模様です。インド鉄鋼協会は同件に関し、政府に書簡を出す計画です。ただしインド政府による貿易措置には時間が掛かる為、関税等の主な変更までには15ヵ月以上掛かると見られています。インドは2024年度の最初の4ヵ月で既に57万トンの鉄鋼製品を中国から輸入しており、前年同期比で63%増加しています。一方、韓国からの輸入量は68万5000トンで前年比4%減少しました。 インドは中国が不動産不況で鉄鋼需要が減った分、インドの輸入が中国の生産増加を促したと見ています。インドの鉄鋼輸出は中国製品との競争の影響で33%も減少しています。
https://www.constructionworld.in/steel-news/isa-aims-to-address-rise-in-chinese-steel-imports/43838

欧州で、生物多様性への投資に対し監視が強化される予定です。欧州証券市場局(ESMA)は8月31日に2023年第2回トレンド、リスク、脆弱性(TRV)に関するレポートを発行し公開しています。レポートの中では、投資家がESG投資の「次のフロンティア」と考える生物多様性への投資が急増している事が挙げられています。資金(基金の設立)の流れは、2023年6月迄に過去2年間で8億5,400万ユーロに達し、その73%はEUが生物多様性の法規制を本格的に議論し始めた2022年以降に行われたものです。欧州証券市場局(ESMA)は過去の事例から、本件について「グリーンウォッシングへの監視」を強化する必要がある事を強調しています。ESMAはサステナブル投資におけるデータが正当かつ科学的に根拠があるものかを巡り、多くの課題がある事を認めています。レポートではこの問題が生物多様性投資の増加で更に悪化する可能性がある事を言及しています。新しい環境規制が出来るとそれを利用して「環境に優しい」というイメージで企業業績が上がる団体が出てきます。投資家や企業は、新しい規制に対して先行投資を行い、業績を上げるのですが、それらの投資は本当にデータに基づき環境に優しいのかは、非常に不透明です。過去に度重なるグリーンウォッシングで莫大な儲けを出した投資家や企業が存在している事から、ESMAは、監視を強化するつもりです。しかし生物多様性のデータは非常に複雑で、評価が難しいという問題がより一層大きくなる、という事です。
https://www.esma.europa.eu/press-news/esma-news/esma-sees-prevailing-market-uncertainty-downside-risks-rise

タタスチールが所有するウェールズ南部のポートタルボット製鉄所には2基の高炉が稼働中です。設備耐応年数の経過と、よりグリーンな鉄鋼生産への移行から、電炉への切替投資に対し、英国政府が5億ポンド(約925億円)の支援を行う交渉が続けられています。これはタタスチールが自社から7億ポンドの設備投資支出に同意する事が条件となっています。電炉は2基、もしくは最大3基を予定しています。英国は欧州最大の鉄スクラップ輸出の1ヵ国である為、この投資によりトルコやエジプト向けのスクラップ輸出量に影響が出ると考えられます。8月末には環境団体のGreen Allianceが英国内でより鉄スクラップを利用するよう、訴えかけたばかりでした。
https://www.bbc.co.uk/news/uk-wales-66697658
https://green-alliance.org.uk/publication/a-brighter-future-for-uk-steel/

欧米自動車関連メーカーは、調達活動で持続可能性への取組を減らしています。1,000人以上の業界経営者を対象とした調査では、二酸化炭素排出量のマッピング、排出量削減の為のルートの最適化、産地や生産情報のリスト化等、サステナビリティへの取り組みを展開している企業数は2022年から2023年の間に9~11%減少しています。代わりに最も注力しているのは、地政学的リスクを回避する事だと判明しています。過去 2 年間でそれまでに確立した域外拠点からの調達(オフショア調達)は22%減少、世界的な再調整が進行しています。欧州はこの傾向が最も顕著で2021年以来オフショア調達を25%余り削減しました。アジアパシフィック地域は20%、米国は18%削減しています。報告書はEV生産が急増し、主要な電子部品の製造拠点が移転する為、自動車関連企業は海外拠点からの調達を2025年迄に更に19%減少させると予想しています。
https://www.capgemini.com/gb-en/news/press-releases/with-automotive-supply-chains-stabilising-focus-on-sustainability-expected-to-rise-back-up-automakers-agendas/

中国の動力(EV)用電池生産の伸びは7月に鈍化し、8月も在庫調整が続きました。しかし9月以降はやや楽観的な見方となっています。7月のEV電池生産量は61GWh、6月から1.5%の緩やかな増加に留まっています(ただし前年比では47.7%増加)。2023年の累計生産量は345.5 GWhとなり、前年比で36.1%増加しました。LFP生産は7月に前月より3.8%減少、三元系は2.5%増となっています。LFPは減少しましたが、LFPの生産量は市場全体の3分の2以上を占めています。8月は電池メーカーが「在庫整理」に重点を置きました。今後ですが、中国での(政策)金利の低下により消費市場が刺激されると見られています。Mysteel GlobalはQ4の中国国内のEV販売とバッテリー需要については楽観的に見ています。炭酸リチウムの価格もこれに伴いやや上昇する可能性があります。
https://www.mysteel.net/news/all/5042626-chinas-power-battery-production-loses-momentum-in-july

5日から10日までドイツ・ミュヘンで開催されるIAAモビリティ国際展示会で、ドイツ自動車各社のCEOや幹部がEVに対するコメントを出しています。ベンツはEV生産コストが当面高止まりする為、現在バッテリーのコストダウンに最も注力しています。ルノーは中国製EVとの競争を警戒し「中国EVは一世代先にいる」という認識を示しています。中国EVメーカーは欧州市場をターゲットにしています。2023年の7月末までの販売累計台数は前年比約55%増の82万台に達しました。今年のIAA展示会の出展者の約41%はアジアに本社があり、中国のEVメーカーBYDやXpeng、更に電池メーカーのCATL等、中国企業はおよそ前回の2倍の出展者数となっています。BYDは欧州での販売増もあり、2023年の販売予測をテスラ社(の目標)の1.7倍の300万台としています。BMWは2035年からの内燃機関車の販売禁止を「欧州自動車メーカーの差し迫ったリスク」と認識し、中国の競合他社と同じカテゴリーでのEV価格戦争に勝つ可能性は低い、と見ています。ただし中国メーカーには無い高級ブランドの分野での勝算は十分にあると考えています。VWは中国との提携を軸に電池価格を50%削減する事を目標としており、今後EVのラインアップを強化する事で2035年に向け準備が出来ている事を強調しています。こうした欧州の「電化」の動きに呼応するかの様に、中国工業省は中国の「電力機器産業」が年間9%の成長を達成する為の支援計画を発表しています。

中国の自動車産業が苦境に立たされている現実が特集されています。国による巨額な補助金により生産能力が拡大し過ぎた自動車産業は価格競争が起きている現在、労働者の酷使や大幅な賃金カット、電力料金の安い夜間への生産シフト等により対応せざるを得なくなっています。全土で起こっている若年層の雇用問題の一部を浮き彫りにしています。中国は2022年末時点で年間4,300万台の車両生産能力を持ちますが、工場稼働率は僅か54.5%です。2017年の工場稼働率は66.6%でした。つまり生産能力の増強に需要がバランスしていない事になります。2023年7月末までの中国の国内販売台数は1140万台で、前年比僅か1.7%の伸びに留まっています。一方、輸出は81%急増し200万台となっています。現在の中国自動車産業の成長は「輸出」に支えられています。専門家は今後国内での十分な需要が無い場合、余剰生産能力と価格競争の余波で在庫過剰、更なる値下げ、最終的には企業業績の悪化という悪循環に繋がると見ています。部品サプライヤーに対してもコストダウンが行われており、通常年1回の価格交渉が4半期ベースになっている状況です。電池メーカーも同様で8月のLFP価格は、5ヵ月前と比べ21%安くなり、ニッケルコバルト電池は9%~18%安くなっています。こうした不釣り合いな需給バランスから本日、中国の工業情報化省は現在自動車購入数量の制限を課している地域で年間自動車購入目標を増やすよう奨励する声明を出しています。鉄鋼や非鉄金属製品、それらの半製品も同様で補助金や投機で嵩上げされた国内(ゾンビ)需要に対応して生産能力が過剰になり過ぎた為に、現在、減産命令や能力拡大許可の停止等が相次いで報告されています。今後、中国によるダンピング(や市場よりやや安売りの)輸出攻勢は、アジア市場を徐々に変えていくかも知れません。
https://bit.ly/3LeomDB

今年末よりインドへの非鉄ミックス品の輸出及びインド国内での非鉄ミックスの販売に影響が出る情報です。インド政府は2023年12月以降、低品位のアルミニウム、銅、ニッケルの販売基準を厳格化します。この措置は鉱山省の品質管理(QC)命令によって行われます。
インドのThe Economic Times(ET)は、今年6月に規格外の輸入品を阻止する為に、鉱山省が品質管理制度を導入する予定である事を最初に報じました。12月以降、この指令により低品質のアルミニウム、銅、ニッケルの販売が規制され、販売業者はインド規格局(BIS)が規定する品質基準を採用する義務が課されます。中国や東南アジア諸国が行ったものと似ていると予想されます。インドは欧州の低品位非鉄スクラップを購入する大国であるので、影響は避けられないと思われます。
https://bit.ly/44ypRmY

通貨ユーロを利用するユーロ圏20ヵ国と英国で景気減速が想定を上回る悪い結果が出ています。ユーロ圏の購買担当者景気指数(PMI)は7月の48.6から8月は46.7に低下し、2020年11月以来の低水準に留まっています。更に主要なサービスPMIも50.9から47.9に低下し、筋目となる50を割っています。これは様々な借り入れ手数料が増加した事と、生活費の高騰により借金を抱えた消費者が支出を抑制した為と分析されています。また企業は雇用を控えており、総合雇用指数は7月の51.4から50.2に低下しています。一方英国は8 月の製造業PMIが39ヵ月振りの低水準である43.0となり、製造業生産量も6ヵ月連続で減少しました。需要の減速が明らかで、パンデミックの数年を除けば、新規受注の減少は金融危機以来最速となっています。ユーロ圏も英国も政府が不況を回避する為にどのような措置を取るべきか、頭の痛い問題を抱えています。
https://finance.yahoo.com/news/euro-zone-august-downturn-deeper-080039018.html

米国の大手鉄鋼メーカーであるクリーブランドクリフス社(CLF)がUSスチールの買収に乗り出した事で業界再編が始まる中、同社の戦略的な背景を分析した内容が掲載されていますので提供します。CLFは2020年にAKスチールを30億ドルで買収し、アルセロール・ミタルの米国事業を33億ドルで買収しています。CLFの目論見は自動車外装鋼板のシェアを独占する事で、電炉では品質的に達成できない製品に的を絞っています。CLFは高炉を所有する企業を買収する事で北米最大の自動車産業への鉄鋼サプライヤーとなる戦略を実行しています。自動車産業はアルミ化が進む中でも、高炉からの高品質鋼を求める姿勢は変わっていません。USスチールはもう1つの高炉を持つ鉄鋼メーカーであり、買収が成功すればCLFは世界トップ10内の鉄鋼メーカーになります。CLFはまた電炉用の鉄スクラップを調達するのではなく、高炉用の鉄鉱石を社内で生産することに賭けています。ただしCLFの昨年の粗利率は11%で、電炉のみで操業する競合2社のNucor(粗利率30%)とSteel Dynamics(粗利率27.5%)、更に高炉を持つUSスチールの粗利率20.6%をも大きく下回っています。CLFはHBIの使用を増やし水素DRIのテストも開始し炭素削減活動を続けています。しかし脱炭素化が進む鉄鋼業の中で、今後も自動車産業で必要とされる高級鋼板へターゲットを絞った異色の戦略を継続しています。その為、USスチールの買収はMustとなっています。米国の電炉2社がスクラップ企業の垂直統合を加速している中、全く異なる買収戦略で巨大鉄鋼メーカーを誕生させようとしているCLFの動きは、米国の鉄鋼産業の地図を変える可能性が高いと言えます。
https://www.reuters.com/sustainability/inside-cleveland-cliffs-bid-keep-us-blast-furnaces-smelting-2023-09-05/

ケニア政府は、EU が援助するグリーン水素戦略とロードマップを立ち上げました。このロードマップはEUの協力の基に作成され、グリーン水素産業を発展させるというケニアの野心を示しています。EUはケニアのグリーン水素産業の官民投資を活用する為に、約1,200万ユーロの補助金を約束しました。ケニアはグリーン エネルギーへの移行を推進しており、2030年迄に温室効果ガス排出量を3 分の1削減する計画です。現在、電力の大半が再生可能資源を利用している等、大幅な進歩を遂げています。 欧州政府は水素製造の為にアフリカに積極的に投資しています。
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_23_4324

EU重要な原材料法は、9月7日に欧州議会での修正及び採択が予定されています。議会に提出された法案の修正文章では「戦略的原材料」に分類されている原材料の内、16個のものについて、リサイクル能力を更に10%向上させ(現在の法案は20%)、 EU内の廃棄物に含まれる各材料の45%を収集、分別、処理する事を提案しています。リサイクル能力の+10%の向上は、技術的及び経済的な実現可能性を条件としている為、これらの条件が満たされた場合に限定されています。詳細については、修正採択後に明らかになっていくと同時にEURICが反応を示すと思われます。重要な原材料を含む廃棄物は、域内での移動の緩和と域外への移動の厳格化が議論されており、これは廃棄物輸送規則とリンクする事なので、トレーダーにとっては影響が出る内容となります。
https://www.reuters.com/sustainability/eu-lawmakers-see-recycling-key-search-critical-minerals-2023-09-06/

EU重要な原材料法に関連し、欧州のアルミニウム関連11団体が組織するEuropean Aluminiumは共同書簡を欧州議会に提出しています。アルミニウムは今年様々な議論を経て、EU重要な原材料リストに追加されています。しかし新たに創設された「戦略的原材料」のリストには入っていません。共同書簡は、議会に対してアルミニウムの戦略的性質を正式に認識するよう求めています。同協会は「行動に移す時期が来た」と主張し、アルミが含まれる現在のEU重要な原材料法案を承認・採択するよう、議会に支援を求めています。
https://european-aluminium.eu/

家具販売の世界的な大手IKEA(イケア)のフランチャイズ権を所有するINGKA Groupの投資部門、INGKA Investmentは、リサイクルのプラットフォームを計画している事が伝わっています。ロンドンで開催されたロイター・インパクト会議のパネルディスカッションで述べたもので、現在行われているオランダでのリサイクルの取組みをフランス、ベルギー、及びスカンジナビアを含む他市場にも拡大する意向を示しています。
https://www.marketscreener.com/news/latest/REUTERS-IMPACT-Ingka-Investments-looking-to-build-recycling-platforms-executive–44780761/

欧州持続可能性報告基準(ESRS)を起草するEUの諮問機関EFRAGと、企業の情報開示基準を定める世界標準化団体GRIは双方の基準の相互運用に関する共同声明を発表しています。相互運用に関する明確な回答は長い間待ち望まれていました。ESRSに基づいて報告する企業は、GRI基準を参照して報告していると見做される為、複数の報告の負担が回避されます。GRIは国際持続可能性基準理事会(ISSB)と提携し、企業収益に関する気候変動要因の開示規則を最近完成させました。報告基準の違いによる複数の作業や手続き上の負担から、所謂「規則の雪崩」と呼ばれる現象が起こりつつある事を企業側が非常に懸念していました。スポーツウェアーメーカーのプーマのCEOはこの点を懸念した発言をしています。現在プーマでは、第一次/第二次サプライヤーからGHG排出量、エネルギー、水の消費量、廃棄物発生量データに加え、離職率や賃金などの社会データも収集しており、非常に負担が大きいようです。本音を言えばISOやIFRSに代表されるヨーロッパ伝統の「規格ビジネス」ですが・・・・。あっちこっちで利権ができたので、調整する必要性があったというものです。
https://www.efrag.org/News/Public-444/EFRAG-GRI-Joint-statement-of-interoperability-?AspxAutoDetectCookieSupport=1

著名投資家と言えばウォーレン・バフェットが日本でも有名ですが、この夏、最も話題を呼んでいるのは2007年のサブプライムローン危機とその後の2008年の金融危機を当て億万長者になったMichael Burry(マイケル・バリー)です。彼は元々医師であり、自らもアスペルガー症候群を持つ異色の投資家です。彼が2008年の金融危機前に実行したショートポジションの投資は、米国で映画「ビッグショット」として公開され、彼の現在のニックネームにもなっています。3週間前、彼は、2023年末迄の株価暴落に賭け、16億ドル規模のショートポジションを持っていた事が大きな話題になっています。米国で著名な経済学者のSteve Hanke(スティーブ・ハンケ)は、ウォーレン・バフェットが景気後退に備えている可能性があり、マイケル・バリーの大型空売りは「良い動き」であると評して、これも話題になりました。バリーは今年1月に彼の140万人のフォロワーに向けて「売る」とツイートしましたが、3月には「売ると言ったのは間違いだった」と撤回しています。そしてこの夏に、また巨額なショートポジションを持つ事になっています。ただし公開情報となった最新の彼の保有株トップ5は、実は長期投資を考慮した多様な株式戦略となっています。相変わらず巨額なショートポジションは維持しつつです。将来の事は誰にも分かりませんが、少なくとも世界的に著名な投資家は景気後退への「準備」を考慮し始めているようです。「気候変動のグル」と言われるアル・ゴアのGeneration Investmentも短期から長期投資銘柄にポートフォリオを組み直していた事が8月には伝わっていました。因みにアル・ゴアの投資ポートフォリオには、気候変動やクリーンエネルギー関連はゼロでした。
https://finbold.com/big-short-michael-burrys-top-5-portfolio-positions/
https://finance.yahoo.com/news/al-gores-generation-investment-management-194130580.html

欧州非鉄金属生産者協会Eurometauxは、欧州委員会に書簡を送り、欧州内で重要な鉱物の処理能力を増強する為に政府の投資(援助)を増やすよう求めました。書簡ではエネルギー集約型産業の脱炭素化の為に設立されている「EUイノベーション基金」の対象に重要な鉱物を含めるよう要請しています。この書簡はUmicore、Solvay、Aurubis、更に電池メーカーであるNorthvoltを含む大手数社が署名しています。Eurometauxはクリーンテクノロジー投資を促進する「欧州戦略技術プラットフォーム」は十分ではなく、目標も不十分である。一方、米国はIRAにより巨額な投資パッケージで急速に追いつきつつあるが、欧州の投資環境は戦争もあり悪化している」とその理由を述べています。
https://uk.finance.yahoo.com/news/metal-industry-urges-eu-invest-040350601.html

内需の減速と生産能力過剰が顕著になりつつある中国のEV電池メーカーは、欧州自動車メーカーへの供給をターゲットにして、欧州での投資を増やす戦略に出ている事が明らかになり始めています。中国の電池メーカーCALBグループは欧州への投資を強化する中、2026年迄に必要な主要材料の最低70%を現地で調達できる可能性を示唆しています。CATLも既にハンガリー工場の投資を続けており、将来的には最大100GWhまで拡張する事を示しています。現在ミュヘンで行われている自動車国際展示会で、ドイツのシュルツ首相は中国ブランドとの競争について「競争は我々を怖がらせるのではなく、刺激するべきだ」と述べ、受け入れる姿勢を明確にしています。ドイツメーカーは中国電池メーカーとの提携拡大を続けており、中国とロシアで繁栄してきたドイツの姿を明確にした展示会となっています。
https://www.channelnewsasia.com/business/chinas-calb-says-european-battery-makers-could-source-70-inputs-locally-2026-3752896

世界の2大資産運用会社がESG投資を絞り始めています。運用資産8兆ドルで世界第2位のバンガードは、株主提案によるESG投資に対し、2%(7件)しか賛成票を投じていません。提案は359件ありました。昨年の賛成率は12%の為、大幅に減少しています。これはNo.1のブラックロックも同様で、2021年に気候関連提案325件中64件、2022年は184件中84件に賛成票を投じましたが、今年は提案399件の内、賛成票を投じたのは僅か26件でした。双方がほぼ同じ見解を示しており、「過度に規範的、又は経済的メリットに欠ける提案がより多く見られた」としています。更に行われた提案は一般的な温室効果ガス排出量の目標設定、気候変動のロビー活動、及び化石燃料への資金提供に関連するもので、既に多くの企業がそれらの要求に応えている為、新たな投資先としての適格要件を満たしていないと判断したようです。クリーンエネルギー関連のESG投資の1つの国際指標であるS&P Global Clean Energy Indexは夏から下落、既に年初来最低となっているだけでなく、年率のリターンが▲28.63%まで拡大しています。投資の実態が思わしくない事を示しています。陸上風力発電を倍増する計画のドイツでは、巨大なタービンブレードを輸送する許可費用が10倍になっただけでなく、許可待ち案件が15,000件を超え、総諸経費額が180億円近くオーバー、更に風力タービン輸送用トラックの駐車場も不足するという事態に直面しています。卓上のFS通りに進まない攻めたESG投資は現在の景気低迷とコスト高の中、やや熱が冷めています。
https://www.irmagazine.com/esg/vanguard-joins-blackrock-backing-fewer-esg-proposals-during-2023-proxy-season

ロビイストに屈し、長い間資金と政治資本を枯渇させていると言われている「欧州の水素戦略」ですが、実態も目標とは程遠い段階である事が判明しています。欧州委員会のエネルギー総局が今年行った調査では、2030年迄に欧州産業界のグリーン水素需要は最大でも約300万トンになると予想しています。欧州水素戦略では欧州域内でのグリーン水素生産を2030年迄に1,000万トンとし、輸入を1,000万トンとする事が目標として定められています。水素擁護団体のHydrogen Europe(水素ヨーロッパ)でさえ、2030年の欧州でのグリーン水素の需要は850万トンになると見積もっています。欧州委員会は域内で1,000万トンのグリーン水素を生産、輸送、消費するには、最大4,710億ユーロ相当の膨大な額の投資が必要になると試算していますが、民間投資は予想額とは程遠いレベルでしか行われていません。欧州ではグリーン水素1kg当り最大4.5ユーロの補助金を獲得する事が可能で米国の1Kg当り3ユーロを上回っています。それでも投資が進まないのは、過去の事例から卓上でのFSが実行に移された際、乖離が大きく成功した事例が殆ど無い事にあります。従っていつ実行に移せば良いか判断が出来ない状況が続いている事にあります。また実際の需要が少ない事も大きな理由となっています。歴史的に水素のエネルギー利用が成功した例が無い事は明らかで、そこにはもっと大きな政治的な力があるという事は理解した方が良さそうです。
https://www.euractiv.com/section/energy-environment/opinion/the-brief-waking-up-from-hydrogen-daydreams/
https://www.euractiv.com/section/energy-environment/news/eus-hydrogen-economy-struggles-to-pick-up-pace/

スウェーデンでグリーンスチールを専門に製造する鉄鋼会社H2グリーンスチールは、主力工場を建設する為に約15億ユーロ(2350億円)を調達しました。商業生産は2025年末を予定しています。既に資金調達は35億ユーロ(5500億円)に達しています。完全な新興鉄鋼メーカーがこれ程巨額な資金を集め、グリーンスチールのみを製造する試みが成功するのか注視する必要が有りそうです。今回の投資には日本の日立エナジーも参加しています。日立エナジーは7月にH2グリーンスチールとMoUを締結し、出資、製鉄・大規模電解プラント向け電力インフラの構築・整備に必要な製品・サービスの提供、更にはH2 Green Steelからグリーン鋼材の調達を行う計画を発表していました。
https://www.h2greensteel.com/latestnews/h2-green-steel-raises-15-billion-in-equity-to-build-the-worlds-first-green-steel-plantnbsp


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