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NEWSCONの気になるNEWS(2023年8月第2週)

ここで何度か「アルミニウムは地政学的な戦略物資化しつつある」事をお伝えしていますが、先月末から欧州のアルミニウム貿易団体がメディアを巻き込み舌戦を繰り広げています。元々この舌戦は7月後半に世界最大級のアルミ二ウム生産会社ノルスク・ハイドロ(ノルウェー)がLMEに対し、ロシア産金属の取引の継続を再考せよという声明を発し、メディアが一斉にハイドロによるロシア産金属の全面禁止要求を報道した事に端を発しています。ロシアが黒海の穀物協定から離脱したタイミングでハイドロが出したこのLMEへの要求は民意の感情に訴えました。それに対し、ロシア最大のアルミニウム生産企業であるRusal(ルサール)が即座に反応し、ハイドロ社は自社利益のために(ロシア産金属の)締め出しを画策している、と反論していました。1週間後の先週末、今度は欧州アルミニウム消費者連盟(FACE)と欧州各国のアルミニウム貿易団体がロシア産のアルミニウムをLMEの取引から禁止する事は、欧州全体のアルミ産業において打撃が大きすぎる、というプレスリリースを発行し、更にLMEに共同書簡を送付しました。書簡は欧州の一次アルミニウムの輸入依存度は90%近くに上る為、LMEに対しロシア産の禁止圧力に抵抗するように促しています。EUのアルミニウムの需要は、既に域内生産量の10倍近くになっています。今言われ始めているのは、ロシア産を禁止しても長期的に電力料金の高い欧州にアルミニウムの生産が戻る事は困難な為、重要な原材料法のような資源ナショナリズムの法律で規制する事が必要になっているという事です。
https://face-aluminium.com/resources/calls-to-ban-or-sanction-russian-aluminium-seem-an-oligopolistic-attempt-to-turn-europe-into-a-captive-market/

既に最終段階であった欧州の海運部門の温室効果ガス排出削減に関する「FuelEU 海事イニシアチブ」が欧州理事会で採択され、一部を除き、2025年1月1日から適用される事が決まっています。代替燃料市場の拡大と投資、旧型船舶の早期スクラップ化、特にエンジンを主とする船のアップデート、海運運賃のコストアップ、等が既に予測されています。この法律は炭素削減の為に主に燃料の使用を規制するもので、主なポイントは以下となります。
・使用燃料の温室効果ガス強度:2025年迄に2%、段階的に2050年迄に最大80%まで減少させる
・非生物/植物の再生可能燃料(RFNBO)の導入を支援する
・規制の認証プロセスからの化石燃料の除外
・2030年より旅客船とコンテナがEUの主要港の岸壁に停泊している間、陸上電源を使用する義務
・複数の他の船舶と炭素削減のコンプライアンスに関する残高をプールする事が出来る(複数の合計で達成する義務/措置)
・欧州最外周地域、小島諸島の地域の時限的な例外措置
・罰金の実施とその資金の利用を海事セクターの脱炭素化支援に利用
・規制の実施は報告および審査にて監視する
https://bit.ly/3YjX3go

インドを本社とする市場調査機関のMarket Insight Reportsは「世界の廃棄物エネルギーシステムの市場調査レポート」を発行しています。一般的にWtE(Waste to Energy)と言われる「廃棄物発電システム市場」は、2023年から2029年の間に年率7.9%で成長し、今年(2023年)の385億1,000万ドルから2029年には686億8,000万ドルまで市場が急拡大する見込みです。都市固形廃棄物管理(一廃:RDF/RPF/ガス化)、産業廃棄物管理(産廃:RDF/SRF)、バイオマスエネルギー生産(農業残渣等)が主な方法となります。特に、東南アジア、インド、中国を中心に、アジア全体での成長が高い事が示されています。
https://bit.ly/45foFWw
https://bit.ly/3qlIi07
https://www.marketinsightsreports.com/

いよいよインドも国策として電池関連資源の調達に本格的に動き始めています。インドの国営炭鉱会社コール・インディアはリチウム、コバルト、ニッケルを生産する海外企業の資産買収を検討し始めています。更に非鉄及びその他の重要な鉱物を事業に含める手続きを開始しています。同社は事業領域を広める為の設備投資を加速させており、前会計年度では前年同期比20.90%という大きな投資を行っています。インドは、タタグループが英国南部に40GWhの巨大な電池工場を計画している事を始め、国策として全ての分野で自国生産に大きく政策を転換しており、特に電池はその主要な産業の1つとなっています。
https://www.financialexpress.com/industry/cil-explores-acquisition-of-lithium-cobalt-nickel-assets-abroad/3195898/

先週、正式に米国エネルギー省(DoE)は「銅」「アルミニウム」を米国の重要な原材料に含める事を発表しています。これは「2023年DOE重要物質」の決定を受け、リスト化されたものです。リストは何等かの理由で供給が中断されるリスクが高い主要な原材料に焦点を当てています。最終リストにはアルミニウム、コバルト、銅、ジスプロシウム、ニッケル、ネオジウム、リチウム、マグネシウム、フッ素、ガリウム、イリジウム、天然黒鉛、プラチナ、その他(約十個)が含まれています。米国政府は2023年の重要物質評価において、初めて「銅」を重要物質として含めました。3月には米国地質学会(USGS)が重要鉱物リストに「銅」を追加する要請を拒否し、物議を醸していました。今回、米政府は欧州と同様、銅を含める決定をしました。
https://www.energy.gov/eere/articles/us-department-energy-releases-2023-critical-materials-assessment-evaluate-supply

インドの鉄鋼業者は、中国を含むアジアからの鉄鋼製品の輸入に制限を掛けるよう、政府に働きかけています。これは7月後半に最初に大きく報道されていましたが、実際にデータが出て根拠が明らかになっています。インドの中国からの鉄鋼製品輸入のシェアは2022年の上半期の26.1%から2023年の同期には37.1%に大幅に増加し、ベトナム産も同1%から4.8%に増加しています。これは国内消費の低迷から輸出を増やしている中国鉄鋼メーカーの動きで、同時に競争もありインド国内での製造価格を下回る価格で輸入品が販売されている実態が伝わっています。インド政府は消費者の鉄鋼価格高騰を考慮し、現在は輸入税を課していませんが、アナリストはインドが消費者の利益と国内鉄鋼産業の保護との間でバランスを取ろうとしている為、近い将来「決定が下される」と予想しています。もし発動された場合は、余剰製品がより安価で他地域に販売される可能性があり、市場に影響するため要注目です。
https://agmetalminer.com/2023/08/04/chinese-exports-steel-prices-trigger-crisis/

欧州最大の銅製錬メーカーAurubisが2022-2023会計年度のQ3(2023年6月30日迄)の決算を本日発表しています。前年同期比とほぼ同水準の業績、更に直近の四半期では営業利益が20%増加しましたが、株価が発表直後から一時8%を超える大幅な下落となっています。銅ケーブルをはじめ製品需要も堅調で、リサイクル材の利用増加も決算で伝えられていますが、実態としては2021年にドイツ・シュトルベルク工場で起きた洪水災害に関連した約1500万ユーロの保険償還とエネルギー価格の大幅な低下の恩恵を受けた結果で、それらを含めてもアナリスト予測を僅かに上回ったに過ぎず、収益力に株価が反応した結果となりました。また既に発表している投資額11億ユーロにも及ぶ、米国、ブルガリア、ドイツでの能増計画は、今後コストが想定を上回る可能性があると見られています。
ドイツでの生産活動のコスト増については、既にあらゆる産業で問題視されており、風力発電の巨人であるシーメンス・ガメサは、事業計画を見直すところまで追い詰められています。シーメンス・ガメサの問題もあり、シーメンス・エナジー・グループの2022/2023会計年度の純損失が45億ユーロと予想されており、以前の予想損失の約4倍です。これらの多くはグリーンフレーションによるもので、膨大な補助金がグリーンフレーションを助長している部分もあり、企業は難しい舵取りが要求されています。グリーンフレーションは他人事ではなく、欧米で既に起きていますので、これから要注意すべきテーマです。
https://www.marketscreener.com/quote/stock/AURUBIS-AG-436439/news/Copper-group-Aurubis-confirms-annual-targets-but-shares-fall-44534646/
https://oilprice.com/Latest-Energy-News/World-News/Siemens-Energy-Reviews-Wind-Business-After-Earnings-Hit.html

中国の炭酸リチウム価格は8月一杯まで上値が重い状況が続くと見られています。これは需要が下落傾向の中、反転する状況に無く、炭酸リチウム価格が上昇に転ずるには程遠い状況である事が要因です。先週バッテリーグレードの炭酸リチウムと水酸化リチウムの平均価格はそれぞれ26万2000元/トンと26万元/トンで、前回比でそれぞれ、5.59%と5.45%下落しています。第3四半期の価格交渉については、需要家である電池工場が依然として優位に立っており、需要の伸びは限定的と見られています。電池工場が手持ちの在庫削減を続ける場合には原材料価格の引き下げ要請を続ける可能性が高くなります。
https://www.mysteel.net/news/all/5041687-lithium-carbonate-prices-to-remain-capped-through-aug

鉄鋼価格にも影響があるニュースです。以前から問題視されていた中国の不動産大手開発企業のカントリー・ガーデンは、8月6日期限の利付債(2ドル債クーポン)を支払っていないと発表し、中国不動産業に関する懸念が市場で再発しています。カントリー・ガーデンやCIFIホールディングス等、一部の民間開発会社の債券は既に投資適格未満に格付けされています。大手企業の社債の債務不履行が相次いでいる中、賭けに出ている投資家は逆に中国政府からの支援を受けやすい企業の株式や債券を選好し始めているという事です。恒大集団、サナック・チャイナ・ホールディングス、島尾集団、豫州グループホールディングスは何れも債務再編計画を発表し、更に中国当局も支援政策を展開していますが、不動産セクターの状況は、まだまだ多難のようです。中国税関総局が発表した最新データでは、中国の鉄鋼製品の輸出量は1~7月の7ヵ月間で既に5,089万トンとなり、前年比27.9%増加しています。安価な製品を求める海外需要と中国の余剰生産能力が海外輸出に向けられ続けている為、当面、鉄鋼価格に影響が続きそうです。
https://bit.ly/3rX1oKl

海外の専門サイトで話題になっているMITが開発した新材料のニュースです。現在クリーン エネルギーと関連技術には多額の投資が行われ、多数の新発見/新技術が生れていますが、商業利用出来るものは殆どありません。今回MITの研究者らが発表した革新的な技術は、セメント、水、カーボン ブラックを混合して作られる「エネルギー貯蔵ができる建築材料」で、研究者達は再生可能エネルギー源として道路や建物に使用できると信じています。技術としては、セメント、水、カーボンブラックを混合してスーパーキャパシター(蓄電器/コンデンサー)を製造します。同研究チームは、以前コンクリートとカーボンナノチューブを混合する事で建築材料に電池の様な特性を作り出すことを試みました。しかしナノチューブは製造コストが高い為、商業用建築材料として使用するのは現実的ではないと考えられていました。対照的にカーボンブラックは石炭、植物性物質、または燃料の不完全燃焼物から生成される為、製造コストが遥かに安くなります。MITの研究グループはセメント、水、カーボン ブラックを混合すると「フラクタルのような」電子伝導ネットワークが形成される事を発見しました。最終製品はm厚さ1mm、幅10 mmの小さなプレートを形成する為に使用され、塩化カリウム膜でコーティングされます。この材料で作られた2つの電極が絶縁層で分離されており、強力なスーパーキャパシタになります。電力が供給されるとプレートに一連のLEDが点灯し、エネルギーを貯蔵する為に使用すると、道路や建物で役立つ可能性があると研究チームは考えています。スーパーキャパシタは住宅のコンクリート基礎に組み込む事ができ、追加費用が無く丸1日分のエネルギーを蓄えることが出来るとしています。どこにでもある大量利用が可能な材料からのスーパーキャパシタという事で大きな期待が寄せられています。
https://news.mit.edu/2023/mit-engineers-create-supercapacitor-ancient-materials-0731

今グレンコアが決算発表の中で、今後コバルトの価格を維持する為、コバルトの生産削減や電気自動車用のコバルト材料の備蓄を検討する事を発表しています。コバルト価格は6月末以来15%以上上昇しましたが、需要の低迷とインドネシアからの供給の増加により、昨年10月以降は50%以上下落しています。グレンコアはコンゴ民主共和国のコバルトの主要な生産者で西側では最大手となります。
https://bit.ly/3OtP3F6

分断化の影響が英国のEVにも出始めています。現在英国ではEVに関する「中国依存を減らす」という事が政治的なテーマになっていますが、現実的には可也難しい状況です。そのような中、英国の閣僚の一部は、輸入中国製EVは「スパイ活動を可能にするだろう」と警告しています。超党派の閣僚グループは車両に組み込まれた技術により、位置データ、音声録音、ビデオ映像等の膨大な量の情報収集が可能で、遠隔操作の干渉に対しても脆弱であり、場合によっては様々な機能が無効化されてしまう可能性がある、と懸念を表明しています。英国政府は2020年にファーウェイを英国の5Gネットワークから禁止し、2027年末迄に既に施設された同社の既存製品をネットワークから全て撤去するという方針を発表しました。ただしEV化を中国技術無しで行う事は難しく、更に補助金が間接的に中国企業に渡るという事から、中国製輸入EVには高い関税を課すという議論にまで発展しています。この問題は色々と尾を引きそうです。
https://uk.finance.yahoo.com/news/china-electric-cars-spy-britain-200000263.html

ドイツが自動車産業へのサプライチェーンを主目的とした半導体への巨額な補助金を発表しています。世界最大のチップメーカーであるTSMCはドイツ政府の多額の補助金により、ボッシュ、Wolfspeed、インフィニオン、NXPに続き、ドイツで半導体工場を設立する事を発表しています。総投資額は100億ユーロ以上、その内約半分の50億ユーロは補助金となります。ドイツ政府は多額の補助金を支払う事で主要な半導体チップメーカーを誘致してきました。TSMCのドイツ工場では28/22ナノメートルプレーナCMOS、及び16/12ナノメートルFinFETプロセス技術による12インチウェーハを月産40,000枚生産する事が見込まれています。これらの技術は主に自動車向けと見られ、最新の2ナノメートルの技術ではありません。工場建設は2024年後半、生産開始は2027年に予定されています。先日、欧州理事会で採択された「EUチップ法」ではEUは430億ユーロを活用し、半導体のEUの世界シェアを2030年迄に現在の9%から20%に倍増させると目論でいます。ただしEU内でも熟練工不足とコスト高から、ドイツに誘致したこれらの事業が目論見通りに進むか懐疑的な見方も多く存在しています。
https://edition.cnn.com/2023/08/08/business/germany-tsmc-chip-plant/index.html

非鉄需要を牽引している欧米の再生可能エネルギー企業の新規プロジェクトに関して、投資見通しに懸念が広がっています。世界最大のグリーンエネルギーETFであり、クリーン・エネルギーへの包括的投資であるiシェアーズ・グローバル・クリーン・エネルギーETFは年初から13.4%も下落しています。S&P500は逆に17.5%上昇しています。太陽光と風力エネルギーのベンチマークもそれほど良い状況ではなく、インベスコ・ソーラーETFは年初来13.8%下落、ファースト・トラスト・グローバル風力エネルギーETFも6.3%下落しています。再生可能エネルギーのプロジェクトは多額の資金を前払いする必要がある為、金利に非常に敏感になる傾向があります。その為、再生可能エネルギーから生成された電力のコストは化石燃料から生成された電力と比較して金利上昇の影響を大きく受ける傾向にあります。国際エネルギー機関の2020年の分析では金利が5%上昇すると、風力と太陽光による電力の平準化コストは33%も増加します。それに対し、天然ガス発電所の場合は僅かに増加するだけです。そうした理由から低金利時には再生可能エネルギー、EV、電池、水素生産プロジェクトに資金が殺到しましたが、金利が上昇し続ける中、最近では資金の流入が鈍化しています。最も影響を受ける中国の景気停滞もあり、一昨年起きたような非鉄ブームは宣伝される程に起きにくい状況かも知れません。
https://oilprice.com/Alternative-Energy/Renewable-Energy/Clean-Energy-Earnings-A-Few-Stinkers-Sour-Sentiment.html

中国への海外からの投資が急激に減少しています。先週、中国国家外為管理局は第2四半期の海外直接投資が49億ドル未満に減速し、中国企業による海外投資との純損失(海外からの投資-国内からの対外投資)が341億ドルの過去最高になった事を発表しました。専門家は海外の投資家の心理は5年前とは劇的に変わっており、誰もが製品の代替え調達先を探していると言及しています。これは米国の相次ぐ規制により、投資家がリスク回避を加速しているだけでなく、投資環境そのものが悪化している事も要因としています。既に為替レートにその傾向が表れており、最新のデータでは中国による海外への直接投資の為に中国の銀行を通じたドル購入量は海外からの中国へ投資する為に人民元を購入した量を6ヵ月連続で上回っています。人民元は年初からドルに対して約4%下落しており、国営銀行がスポット市場で買いを入れ支えています。こうした流れが単なる一過性のものか、或いは傾向として加速しているのかは専門家でも意見が分かれていますが、大掛かりな調整局面にある事は変わりがないようです。数ヵ月前から既に需要不足によるデフレ懸念が出ており、政府の刺激政策を求める声が日増しに増加しています。今後、中国企業が海外であるアジア投資を加速していく環境にありそうです。日本企業や資産の購入がより活発になる可能性があります。
https://www.reuters.com/markets/currencies/yuan-loses-core-support-firms-leave-china-2023-08-07/

英国内でのリチウムの精製事業について発表がありました。英国のグリーン・リチウム社は、英国ティーサイドでの工場建設の許認可を得ています。工場稼働は2027年でバッテリーグレードのリチウムの年間生産能力は5万トン、EV換算で100万個分のバッテリーにリチウムを供給できる量となります。原料は西オーストラリア州からスポジュメンを輸入し、工場でリチウムを抽出し、電池に使用できる化学物質に精製します。同社は低エネルギー工程に加え、再生可能電力、水素ガス、二酸化炭素回収技術を利用する事で、二酸化炭素排出量を80%削減する計画です。ただし本事業に本当に価格競争力があるのかは未だ明確ではありません。リチウムを巡っては各国でサプライチェーンの再構築が続いています。
https://www.euronews.com/next/2023/08/07/uk-is-building-europes-first-lithium-refinery-that-could-power-up-to-a-million-electric-ca

ドイツ政府は2,120億ユーロ(約33兆円)の「気候基金」を可決しています。この基金(予算)は気候関連とデジタル化の為に様々なプロジェクトに使われます。期間は2024年から2027年の4年間です。最も資金が当てられるのは、暖房設備の改修で、既存の石油及びガス暖房システムをヒートポンプ等に交換する為に270億ユーロが割り当てられます。2024年単年度の予算は576億ユーロで、2023年より200億ユーロ(約3兆円)以上増加しています。ドイツ政府は、炭素排出量取引制度から2024年単年で190億ユーロの収入を見込んでいます。2024年単年度ではEV充電インフラに47億ユーロ、水素産業に38億ユーロを支出予定です。ヒートポンプやEV充電インフラには銅が多く使われる為、銅価格にも影響があると思われます。銅は実需が横這いの中、ファンドによるロングとオープンポジションが過去最高レベルになっている事が伝えられています。こうした各国の政府によるエネルギートランジッション予算の動きに「賭けている」ようです。
https://www.euractiv.com/section/energy-environment/news/german-government-passes-e212bn-climate-fund/
https://agmetalminer.com/2023/08/10/copper-mmi-copper-prices-today-edge-upward-as-investment-funds-increase-bullish-bets/

低酸素スチールで最も投資が多いDRI(直接還元鉄)の新興企業が原料調達で先手を打っています。スウェーデンのH2グリーンスチール(H2GS)は鉱山大手企業のリオ・ティント(Rio Tinto)のカナダの施設と、同じく大手のヴァーレ(Vale)のブラジルの施設から鉄鉱石ペレットの供給を受ける複数年の契約を締結しました。またH2グリーンスチールが生産する余剰の低炭素熱練炭(HBI)の一部をリオ・ティントに販売する契約にも署名しています。ヴァーレはDRI向けの鉄鉱石ペレットの世界最大のサプライヤーです。リオ・ティントのカナダの子会社で生産される鉄鉱石ペレットの多くはH2グリーンスチールに供給される事になります。DRIでのグリーンスチール製造には材料と再生可能電力の両方が安定的に供給される必要があり、今回H2グリーンスチールは2つの大手供給先からの複数年契約でそれを達成しています。
https://www.h2greensteel.com/latestnews/h2-green-steel-signs-agreements-with-rio-tinto-for-direct-reduction-iron-ore-pellets-and-hot-briquetted-ironnbsp

気候変動に関する多国間の交渉がまた失敗に終わっています。最近COPでさえ統一合意が難しい中、南米の熱帯雨林であるアマゾンを持つ8ヶ国がブラジルで開催した熱帯雨林サミットで「森林破壊を終わらせる」という目標を合意する事が出来ませんでした。ただし環境政策と地域協力を強化する幾つかの項目には合意しています。ボリビアとベネズエラはアマゾン諸国の中で2030年迄に森林破壊阻止に関する2021年協定に署名していません。この協定には世界で100ヵ国以上が署名しています。ベネズエラは石油開発を継続しており、森林破壊防止への正式な署名には応じていません。最終共同声明では、先住民族の権利と保護、水管理、健康、気候変動サミットでの共同交渉、持続可能な開発に関して協力することには合意しています。
https://www.reuters.com/sustainability/amazon-rainforest-nations-gather-forge-shared-policy-brazil-2023-08-08/

大手国際金融機関のINGは「市場の長期インフレ期待は依然として上昇傾向にある」として警告をHPにあげています。エネルギーと食料のインフレが主要因としていますが、広範囲なインフレに警戒する必要があり、これが債権の利回り上昇を引き起こす可能性に言及しています。欧米でインフレが予想以上に長期化する懸念は、ここ数週間で頻繁に報じられるようになりました。中国だけがデフレ懸念となっています。
https://think.ing.com/articles/rates-spark-brewing-inflation-expectations/

予想されていた米政権による中国への追加の投資制限措置の大統領令が署名されています。量子コンピューティングや人工知能を含む機密性の高いハイテク分野に焦点を当てたもので、中国のテクノロジー関連企業への米国からの投資を制限します。既にこの流れは6月のG7で合意を得たもので、英国と欧州連合も同様の方針に沿って進む意向を示していました。ただし、こうした動きを予想して中国のハイテク企業大手企業であるバイドゥ、TikTokの親会社であるバイトダンス、テンセント、アリババ等は、米国エヌビディアに対しA800プロセッサ10万個分、約10億ドルの注文を既に行っており、今年納入予定です。更に40億ドル相当のグラフィック処理装置も発注済みで2024年に納入予定です。半導体露光装置も大量に発注済みとされ、米議会では抜け穴が多いとの指摘も相次いでいます。こうした分断が加速する事で中国の対外需要が弱まり、需要不足でデフレと輸出ダンピングが加速する事が懸念されます。
https://www.theguardian.com/world/2023/aug/10/joe-biden-us-china-investment-ban-who-is-targeted-what-does-it-mean-for-2024-usa-election


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