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NEWSCONの気になるNEWS(2023年7月第4週)
既に恒大集団が過去2年で11兆2000億円という膨大な経常赤字を積み上げていた事が今週判明したばかりですが、比較的優良と見られていた大連万達グループが24日に4億ドル、29日に4億8800万ドル、来年1月には6億ドルの保証金を支払わなければならない事が伝えられています。大連万達は国内最大の商業不動産開発会社であり、全国で多くのショッピングモール、オフィス、ホテルを管理しています。大連万達の債券価格は極端に変動しており、市場はかなり敏感になっています。更に今週は債券が急落したカントリー・ガーデンとシノ・オーシャン・グループのデフォルト懸念が投資家の間で増しており、万が一将来デフォルトになった場合は、大きな衝撃が市場に広がる可能性があります。来年1月には、債務危機により更に多くの不動産大手が破綻するのではないかとの懸念が高まっています。特にオフショア債務(海外勢の債務)に関しては、政府の援助が受けられないとの見方もあり、どこまで金融危機が国際的に連鎖するか未知数です。
▶ https://www.asiafinancial.com/chinas-dalian-wanda-may-be-next-property-giant-to-fall
今後EV市場に大きな影響をもたらす可能性のある中国のEV電池の過剰生産能力問題について中国紙が報じています。中国のEV向け電池の生産能力は2025年迄に国内EV需要の4倍に達する見込みです。その為、小規模なEV電池企業は倒産する可能性が指摘されています。現状の予測では中国のメーカー約50社のEV電池容量は2025年には何と4,800GWhに達します。5月の設置容量は合計28.1GWhで前年比にて44%も増加しています。現在、上位10社の電池メーカーが中国市場シェアの97%を占めています。アナリストは中国のEV電池産業が今後2年間で深刻な生産能力過剰に直面し、多くの小規模企業が倒産すると警告しています。1GWhの生産能力で約10,000台のEVに電池を供給可能です。鉄鋼や不動産も同じですが、国家政策によって民間投資資金が過熱化し、あっという間に過剰生産に陥るケースです。余剰製品によるダンピングがどの程度周辺地域への影響を及ぼすのか懸念されます。中国の上位6社の世界市場に占めるシェアは既に今年の1-5月の期間に62.6%に達しています。2023年には中国だけで世界のリチウム供給量の62.5%、コバルトの76%、世界の天然黒鉛供給量の65%、人工黒鉛供給量の72.5%が精製されると予測されています。
▶ https://www.scmp.com/business/china-business/article/3228224/overcapacity-chinas-ev-battery-industry-reach-four-times-demand-2025-putting-small-players-risk
再生可能エネルギーへの投資指標の1つと言われているS&P Global Clean Energy Indexの過去1年のYieldがマイナス5.04%、2023年は現在までマイナス5.84%と下げ基調が続いています。7月単月ではプラス2.2%ですが、今年に入っての下げトレンドを回復する力強さがありません。インフレによる建設コストや人権費の高騰、世界景気の鈍化等が要因と見られ、メディアで宣伝されるより投資家は冷静に見ているようです。この傾向は米国でのビルド・バック・ベター法でも同じような状況となっており、高騰する建設コストで補助金によるメリットが薄れている事が多く伝わるようになっています。
▶ https://www.spglobal.com/spdji/en/indices/esg/sp-global-clean-energy-index/#overview
米国のLIBリサイクル企業Aqua Metalsは韓国の電池及び電池材料企業のYulho Co. Ltd(ユルホ)とその子会社であるYulho Materialsと戦略的提携を結んだ事を発表しています。ユルホはAqua Metalsに500万ドルの株式投資を行う予定です。Aqua Metalsは自社の特許技術をユルホにライセンスする契約を締結し、ユルホは同技術を韓国でLIBリサイクルに利用する事も同時に発表しています。
▶ https://aquametals.com/news/aqua-metals-and-yulho-partnership-unlocking-global-potential-for-sustainable-recycling/
欧州委員会の副委員長でEU気候変動のトップ、欧州グリーンディールのトップであるフランシス・ティメルマンスが、次期オランダの首相を目指し出馬する為に、欧州委員会の職を辞する事が伝えられています。欧州グリーンディールの重鎮中の重鎮であり欧州グリーンディールが最も重要な時期に離脱する事から大きなニュースとなっています。取り敢えず、欧州のグリーンディールに多少の空白が出来る事は避けられない状況です。米国のジョン・ケリーと共に気候変動政策を次々に出してきた張本人でもある為、今後、影響が出る事は間違いありません。
▶ https://www.politico.eu/article/eu-climate-czar-timmermans-to-leave-brussels-to-run-in-dutch-election/
欧州最大の鉄鋼メーカーが発生先とのスクラップ提携に動いています。欧州最大の鉄鋼メーカーアルセロールミタルのフラットロール部門であるアルセロールミタルヨーロッパは、ドイツの自動車ボディーTire1サプライヤーの大手Gestamp Metal Forming GmbH(ゲシュタンプ)と鉄スクラップの取り扱いに関する契約を締結したと発表しています。この合意には「両社間で鉄リサイクルを強化する循環計画の共同プロジェクトとその実施が含まれる」と伝えられています。契約ではゲシュタンプから発生するプレス・スクラップの収集と処理、そして最終的にはリサイクル材を含む「アルセロールミッタルXCarb鋼」製品の原料としての使用が含まれています。つまり発生したスクラップをそのままリサイクル材を含む製品として戻すという事になります。アルセロールミタルは、これを「循環協定」の枠組みの1つと定義しています。大手の需要家や発生先と提携し、種類別の新断スクラップを完全に混ざり物がない状態で収集する事で循環性を高めるという試みは今後加速する可能性があります。
▶ https://corporate.arcelormittal.com/media/news-articles/arcelormittal-and-gestamp-sign-circularity-agreement-to-boost-sustainability-of-automotive-supply-chain
洋上風力発電事業の頓挫が相次いでいます。スペインの再生可能エネルギー開発大手のIberdrola SAは米国マサチューセッツ州沖に計画されている風力発電所からの電力販売契約をキャンセルする事に同意しています。またデンマークの風力発電大手のOrsted A/Sは米国ロードアイランド州への洋上風力発電供給の入札に敗れ、その理由に大幅なコスト上昇を挙げています。更にスウェーデン国営電力会社Vattenfall ABはインフレを理由に英国沖の風力発電所計画を中止しました。再生可能エネルギーの需要が急増しているにも関わらず様々なコストの高騰により、洋上風力発電プロジェクトが相次いで頓挫しています。材料費の高騰で風力タービンメーカーは製品の価格を引き上げただけでなく、タービンを設置するための専用船等、他のサービスのコストも大幅に高騰しています。更に金利の上昇により借入コストが上がった事で全体のプロジェクトの資金繰りと回収に大きな変化が起きています。この状況は現在行われているPJTでも同じ事が言えますが表に出てきておりません。エネルギーで言えば低酸素(グリーン)水素と洋上風力発電は元々コスト高が言われ続けていましたので、今後も注意が必要です(宣伝されていますが、過去の一部を除けば、殆ど商業的に成功していないという実態があります)。
▶ https://www.mining.com/web/worlds-biggest-wind-power-projects-are-in-crisis-just-when-world-needs-them-most/
22日まで4日間インドで開催されたG20では、一部の化石燃料の生産国による反対を受け、化石燃料の使用を段階的に削減するロードマップについて合意できず、石炭については言及すら無かった事が話題となっています。G20による総GHG排出量と総GDPは世界の4分の3以上を占めており、G20による脱炭素化への積極的な取組は非常に重要であると見られてきました。今年5月にはG7で「化石燃料の段階的廃止を加速する」事を合意しましたが、G20では同じ事が実現しませんでした。
▶ https://www.scmp.com/economy/global-economy/article/3228628/g20-energy-ministers-fail-agree-road-map-ending-use-fossil-fuels
7月21日に中国初となるリチウム先物取引が広州先物取引所(GFEX)で開始されました。初日の取引での2024年1月渡しの炭酸リチウム先物価格はトン当たり21万5,100人民元で、基準価格のトン当たり24万6,000人民元から12%以上も下落し、話題となっています。2024年2月-2024年7月渡しの先物契約はトン当たり21万1600人民元となり、基準価格より14%も下落し、初日の下限に達しました。分析では来年のリチウム供給過剰の予想、及び欧米でのサプライチェーンの独自構築という側面がある一方で中国の備蓄は毎年第1四半期にはやや遅い事が価格下落に寄与した可能性が指摘されています。中国での炭酸リチウム生産のコストの下限は1トン当たり約150,000元と見なされており、今年4月20日の約180,000万元/トンを底に上昇し始め、一時期は32万元/トンまで反発しましたが、現在は28万~30万元/トンの範囲で落ちついています。
▶ http://www.aastocks.com/en/stocks/news/aafn-con/NOW.1280249/recommend-news/HK6
23日にスペインの総選挙が行われ、右派が最大得票率を獲得し躍進しましたが、右派、左派政党は共に過半数に達せず、政治的空白が生まれる事態となっています。今年に入り、欧州各国の選挙では今まで政権を担っていた中道左派から右傾化が進み、今回のスペイン選挙でも同様に保守(右)派が躍進しています。欧州では、夏休み前の選挙はこのスペインの選挙で一旦終わりますが、その後も多くの選挙が控えています。夏休み明けには、スロバキアで9月30日に総選挙が予定されており、その次にルクセンブルクの議会選挙が10月8日の投票で予定されています。更に秋にはスイスで議会選挙と国民投票、ポーランドでは議会選挙が行われる予定です。その後11月22日にはオランダで議会選挙が行われる予定です。欧州では比較的景気が良かったパンデミック前にはグリーン化と移民受入を主軸に左派政党が躍進してきましたが、戦争でロシアからの資源の禁輸によるエネルギー危機、高インフレ、更に分断による中国との関係悪化もあり、全く逆の動きが出始めています。
▶ https://www.theguardian.com/world/2023/jul/24/what-happened-spain-snap-general-election
先日、欧州理事会によってEU重要な原材料法(CRM)にアルミニウムが追加されました。当初欧州委員会の案ではアルミを含める事が検討されていましたが、結果的に正式な法案には含まれていませんでした。中国商務省と中国税関は7月3日に国家安全保障と国益の保護を目的に希少金属のガリウム及びゲルマニウムの関連製品を8月1日から輸出管理の対象に加えると発表しました。ガリウムは半導体、光ファイバー、衛星用太陽電池の生産に不可欠な原材料です。ガリウムは中国が世界の生産量の94%を占めており、EUの需要の80%を供給しています。ガリウムはアルミナをアルミニウムにする工程で生成される副生成物の1つです(アルミン酸ソーダ溶液)。過去、中国産のアルミニウムに価格で歯が立たなくなった多くの先進国では、多くのアルミ二ウムとアルミが使われた製品を中国から輸入するようになり、必然的に中国でのガリウムの生産も増え、価格も低下しました。欧州のアルミ業界団体であるEUROPEAN ALUMINIUMは7月3日に中国政府によるガリウムとゲルマニウム製品の輸出規制の発表当日にこの重大な問題を即座にTweetし、欧米の半導体メーカーも一斉に原料確保と調達の不安払拭の声明を発表していました。アルミ二ウムの生産は地政学的な原材料供給の問題から何れは欧州に戻らざるを得ない状況です。「EU重要な原材料法」はスクラップにも規制が掛かる為、スクラップ業者にも影響が出る事が避けられないものとなります。
▶ https://twitter.com/EU_Aluminium/status/1679479155765792772
中国国際テレビ網(CGTN)は、中国の政府と政府研究機関による大規模なLIBリサイクルの取組について報道しています。2023年の1月~5月に中国でリサイクルされたLIBバッテリーの総量は約11万5,000トンで既に2022年の総量を上回っています。中国工業情報化部(MIIT)傘下のCCIDコンサルティングによると、中国の廃バッテリーは大幅に増加しており、2022年には約27万7,000トンの動力用電池(LIB)が廃棄バッテリーとなっています。2025年以降は、使用済みのバッテリーは年間100万トンに達すると予想されています。このような状況から中国科学院傘下の青海塩湖研究所の研究チームは使用済みのLIBから膜分離技術を応用して酸浸出によりリチウムを抽出する方法を発明し、回収した炭酸リチウムの純度を99.69%にまで高める事に成功してます。この工法では全工程でのリチウムの回収率は92.24%に達しています。研究チームはリサイクル会社と協力してこの新しい技術を導入し始めています。この技術を利用した河北省邯鄲市のプロジェクトでは年間2万トンの廃LIBを処理する事ができ、現在テストを開始しています。中国では政府省庁もリサイクル企業が技術を向上させるよう指導する政策を打ち出しています。
▶ https://news.cgtn.com/news/2023-07-25/China-boosts-recycling-tech-to-meet-power-battery-challenge-1lIEUVwHxcc/index.html
中国の習金平主席は24日、中国共産党中央委員会政治局のグループ学習会を主宰し、政策調整と経済刺激策を示唆しています。この指示により今後数ヵ月以内に内需の拡大、信頼感の向上、リスクの防止に焦点を当てた、更なる政策支援が展開される事が予想されています。新華社通信によれば、中国政府は自動車、電子機器、家庭用品の需要を高め、観光を促進し、更に不動産政策の調整を行う事に言及しています。この発言から中国政府が不動産規制を更に緩和するとの観測が強まり、香港のハンセン本土不動産指数は14.4%上昇、CSI300不動産指数は8%以上上昇しました。ただしアナリストの多くは、地方政府や民間の債務リスクの増大に対する懸念から、政策当局者が「積極的な刺激策」を講じる可能性はあまり高くないと見ています。
▶ https://english.news.cn/home.htm
欧州委員会は、重要企業レジリエンス指令(CER)の対象となる11の産業分野のリストを採択しています(resilience:リジリエンスとは「回復力」の事で、戦争や地政学的な問題で何かが影響を受けても「直ぐに回復できる」という事を目的にした指令です)。リストに入った産業分野は、エネルギー、輸送、銀行業務、飲料水、下水、食品の生産と加工と流通、健康、宇宙、金融市場インフラとデジタルインフラストラクチャーの各分野です。これは国境を跨いだ主要なインフラを利用するサービスの相互が増大している為です。特定された産業は回復力を強化する為の措置を講じる事が求められます。これにはエネルギーや原材料のサプライチェーンも含まれてくる為、それらの流通業務にも影響が出ると考えられます。
▶ https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_23_3992
あまり語られませんが、グリーン化を進めるとインフレが加速し、それは(特に欧米の)投資家にとって「蜜の味」という事は、知る人は良く知る事実です。30年以上の経験を持つプロの投資アドバイザーであり、自らもLundgreen’s CapitalのCEOであるPeter Lundgreen氏がその内情の一部をコラムで載せています。
大気中の二酸化炭素を削減するコストは実は天文学的に高額になる為、将来的に多くの環境に優しい税金や関税が課せられ、更に本格的なグリーンフレーションが起こる可能性があります。公的資金を含む巨額の資金がグリーン投資に流れる事で相場上昇を期待する投資家にとって、脱炭素はエキサイティングな投資先です。低炭素技術を生み出す為の鉱物需要の総量は2040年迄に4倍に増加すると予想されています。しかし鉱石の採掘と精製は非常に少数の生産者に集中していますので、コスト増と投資家の旨味の2つが存在します。欧州では2022年4月から戦争によってエネルギー危機とインフレが加速したと言われていますが、実はインフレは2021年から始まっており、原油価格とガス価格が劇的に下がった現在でも、なお厄介なインフレが収まらず、金利の引き上げが続いています。金利上昇は資金調達コストを上昇させ、更にグリーン化事業のコストを増大させるという悪循環を生みます。本当のグリーンフレーションはここから加速すると言われており、その事はよく理解しておく必要が有りそうです。
▶ https://www.manilatimes.net/2023/07/22/business/top-business/greenflation-will-be-honey-for-investors/1901746
▶ https://www.fxstreet.com/analysis/greenflation-how-inflationary-is-the-energy-transition-202307251212
EU加盟国は欧州全土にEV充電器を増設する新しい法律を採択しています。この法律は2025年から全てのEU加盟国に主要道路の少なくとも60Km毎に150kWの急速充電ステーションを設置する事を義務付けるものです。乗用車とトラック向けの水素ステーションは2030年以降、全ての都市及び主要幹線道路に200 km毎に配設置義務が生じます。これ以外にも大型旅客船、またはコンテナ船が寄港する港湾は2030年迄に船舶に陸上から電力を供給しなければならず、空港では2025年迄に全ゲートで2030年迄に全遠隔エリアで静止している航空機に電力を供給する必要があるという事も採択されています。最終投票で新法に反対票を投じたのは、ポーランドとルーマニアで、イタリアとラトビアは棄権しています。他の加盟国は新法に賛成票を投じた為、過半数を超えて採択されています。欧州全土の充電ステーションは2022年末で479,000台あり、上記の義務を果たす為に必要な充電ステーション数は600,000台と言われていますので、後1年半で110,000~120,000台を増やす事になります。この法律により欧州の非鉄需要は一定の範囲で上昇すると見られています。
▶ https://bit.ly/44GrQGN
中国のSMMが「中国の銅スクラップ市場調査」を掲載しています。銅スクラップを産業スクラップ(PIR)と消費者スクラップ(PCR)に分けて解説しており、工場から直接リターンされるPIRではなく、主に使用済み製品から発生する消費者スクラップ(PCR)についての調査内容となります。SMMの統計によると、2022年の中国の銅スクラップ生産量は約227万トンでその内訳はPCRが159万6000トン、PIRが67万8000トンでした。銅スクラップの需要は約398万トンで需給ギャップは約170.6万トンの不足です。中国の銅スクラップ輸入政策の強化と国内の廃棄物リサイクルシステムの改善により、銅スクラップの輸入量は将来的に減少し、銅需要の増加により国内の銅スクラップの供給は増加すると予想されています。PCRに関しては、2022年の電力産業での発生量は約47万7,000トンで、PCR全体の約30%を占めました。運輸業界の銅スクラップ量は約36万2000トンで約23%を占めています。耐久消費財からの発生量は37.7万トンで約24%を占めています。建設分野の電線、変圧器、変電所キャビネット等の銅製品やEVが寿命を迎えリサイクルに向かうようになると、それらが銅スクラップの供給増加の主な要因となる見込みです。需給ギャップは徐々に減少に向かう方向となっています。
▶ https://news.metal.com/newscontent/102305392/China-Copper-Scrap-Market-Research
欧州鉄鋼生産者協会EUROFERはプレスリリースを発行し、今年の欧州の鉄鋼産業の見通しを▲3%と見込んでいる事を発表しています。エネルギー価格の高騰、生産コストの上昇、更にウクライナ戦争等、下振れ要因が長引き、2023年の鉄鋼市場の見通は▲3%と予測しています。過去5年間で4回目のマイナス業績となる見通しですが、2024年は力強い回復を見込み、+6.2%になると予想しています。欧州全体で弱い需要が続いていますが、鉄鋼の輸入品は依然として22%と歴史的にみても高い市場シェアを維持している事を懸念しています。EUROFERは輸入鋼に対する規制をロビー活動しており、総需要が今後伸びない場合は何等かの政策的保護がある可能性が指摘され始めています。
▶ https://www.eurofer.eu/press-releases/outlook-deteriorates-for-2023-as-uncertainty-persists-but-stronger-recovery-expected-in-2024/
英国は包装廃棄物に対する拡大生産者責任制度(EPR)の運用を予定されていた2024年10月から次期総選挙後の2025年まで実施しない事を決めました。英国での包装リサイクルは改革が遅れる事になりました。管轄する環境食糧農村省(Defra)は昨年、包装材製造業者向けのEPR制度は2023年には運用しない事を明言していましたが、今回の発表で2025年以降に更に遅れる事になりました。包装廃棄物に対するEPRは業界から猛烈な反対意見が噴出し続けており、実施や運用が難しいだけでなく議員へのロビーもあり、今回のような結論になったと見られています。企業団体はEPRの実施は消費者のコスト上昇に繋がる可能性があり、現在進行中の生活費高騰とインフレ上昇の中で更なるコスト増要因となると警告し続けてきました。欧州でも同じような状況が見られ、包装及び包装廃棄物指令の改正案が大きな批判の対象となっています。プラスチック汚染を巡る政策は、環境先進地域を自称する欧州や英国でも抵抗にあっています。それだけ社会と産業はプラスチックに依存しているという証でもあります。
▶ https://www.gov.uk/guidance/extended-producer-responsibility-for-packaging-who-is-affected-and-what-to-do
先週インド政府は非バスマティ種白米(non-basmati white rice)の輸出を禁止し、世界に衝撃を走らせました。来年の選挙を前に国内のインフレを抑制する目的で輸出量の1/4を占める非バスマティ種白米に規制を掛ける事にしたのです。インドは米の世界輸出量の40%以上を占め、約1000万トンに上る量が市場から消える事態となったのです。カナダやオーストラリアでは米の値段が一時3倍になる所も現れパニック買いが発生し、ベトナムでも米の確保に動く等、世界で様々な動きが続いています。この決定はウクライナが黒海経由で穀物を輸出出来るようにする協定からロシアが離脱した同じ週に起こりました。ロシアの決定を受けて、小麦の価格が13%、トウモロコシの価格が9%急騰しました。それに追い打ちをかける事態となっています。IMFはインドの措置により食料価格が10-15%上昇、インフレ要因になると警告し、今日になってインド政府に禁輸措置を再考するよう依頼しています。食糧農業機関(FAO)によると世界最大の輸出国であるインドが米の禁輸を続ければ、11年振りの高値に達している米価格はさらに高騰し、数百万人が飢餓に陥る可能性が高いと言います。アジアは「食料安全保障の中心」であり、インド、タイ(約15%)、ベトナム(約14%)の3ヵ国だけで、米の国際輸出市場の70%を占めています。今年はメガ・エルニーニョが予測されている事もあり、米の産地であるアジアの降雨量に問題が発生する可能性が指摘されています。タイは今年の降水量が例年より28%少ない状況が続いています。
▶ https://uk.finance.yahoo.com/news/why-india-rice-export-ban-114030848.html
タイヤのリサイクルに関して、欧州リサイクル産業連盟(EuRIC)は非常に強力なメッセージを政策担当者宛てに出しています。27日に発効されたプレスリリースでは、EUからの使用済みタイヤの輸出禁止とリサイクルゴム中の化学物質等、測定に関して合意できるアプローチを取るよう提言しています。PAHとマイクロプラスチック規制により、使用済みタイヤから製造されるゴムチップ(主に人工芝用)は8年後に事実上禁止されます。エネルギー危機により古タイヤが燃料化される傾向が強まり、また科学物質の規制による安全性確保の問題から現在欧州の古タイヤは輸出に出される量が増え、タイヤリサイクル業者は使用済みタイヤの確保に苦労し始めています。EuRICの論点はリサイクルゴムを利用した場合、天然ゴムを利用するよりも遥かに炭素排出量が少ない為、微量の化学物質の問題やマイクロプラスチックの流出問題のみに焦点を当てるのではなく、バランスを取った政策をすべきというものです。人工芝充填材であるゴムチップは80%が使用済みタイヤ由来のものです。英国では2022年に推定年間合計約228,000トンの使用済みタイヤが海外に輸出されました。その大多数がインドであり、最大の輸入業者の1つがMumbai Fabrics Pvtと言われています。英国から人件費が安く環境規制が緩いインドへの使用済みタイヤの輸出は、今後年間30万トンに達すると言われています。英国でも欧州でも逆有償でタイヤを処分するシステムである以上、規制の強化により有償(中古として)での使用済みタイヤ輸出の増加は止まらないと思われます。英国では1本1ポンド(180円)前後で輸出業者に売ると聞いています。
▶ https://euric.org/resource-hub/position-papers/position-paper-euric-urgently-demands-the-european-commission-to-halt-the-export-and-incineration-of-tyres-collected-in-europe-outside-its-borders
欧米のアルミニウムの業界団体は、持続可能なアルミニウム生産の為に共同歩調を取っています。米国のAluminium Association(アルミニウム協会)と欧州のEuropean Aluminium(ヨーロピアンアルミニウム)は、米国通商代表部とEU執行副大統領兼通商委員に共同書簡を送り、7月中旬に欧米間で協議が開始された「Global Arrangement on Sustainable Steel and Aluminium (GSA:持続可能な鉄鋼及びアルミニウムに関する世界的な取り決め(GSA))を、今年10月迄に実施するよう促しています。この協定は、実は低炭素で持続可能なアルミニウム生産を軸に欧米間での関税の撤廃や自由貿易を促進する代わりに、それ以外の地域からの炭素排出の多いアルミ二ウムの貿易を締め出すという狙いがあります。アルミは徐々に地政学上で重要な金属になり始めています。新たなリサイクルテクノロジーやメーカーとのスキームを拡張する時期かも知れません。
▶ https://european-aluminium.eu/resource-hub/news-events/
中国企業が、またハンガリーに大型の電池工場を建設する予定です。中国の電池メーカーでは比較的小規模なSunwoda Electronicは最大2億7471万ドル(約380億円)の初期投資をかけて、ハンガリーにEV用電池工場を建設する計画です。Sunwoda社は27日に深セン証券取引所への提出書類の中でこの計画を明らかにしています。CATLもハンガリーに81億3000万ドル(約1兆1,400億円)規模の電池工場を建設しており、EVEエナジーも大型のシリンダー電池を製造する工場を設立すると発表しています。ここ数年、オルバン政権のハンガリーと中国は非常に良好な関係を保っており、過去に無い程の中国による投資が続いています。今後、欧州の電池ハブとして、ハンガリー、ポーランド、スロバキア、そしてアフリカのモロッコが台頭するのは間違いなさそうです。
▶ https://www.zawya.com/en/projects/bri/chinas-sunwoda-to-invest-2747mln-in-car-battery-factory-in-hungary-klqso2ov
何かと話題の中国大手不動産ディベロッパーの恒大グループですが、そのEV部門(恒大NEV)が2年振りに財務諸表を公開し、2021年と2022年の合計純損失が99億5000万ドル(約1兆3,900億円)に上る事が分かりました。2日前に中国首脳部が経済支援を約束しましたが具体的な言及が無く、一時上がった不動産関連株や非鉄先物も幾つかは既に下げ始めています。中国の地方政府の債務はエコノミストの試算では9兆ドル(126兆円)を超えると言われており、具体的にどのような政策で改善できるのか、金融セクターへの影響等、悲観的な意見の方が多い様です。若年層の失業率が20%以上となり、雇用問題も浮き彫りになって来る中、色々と中国情報を取った方が良さそうです。
▶ https://www.asiafinancial.com/china-politburo-says-little-on-solutions-for-economic-woes
半導体チップを巡り世界で様々な動きがある中で、欧州理事会の評議会が「EUチップ法」と呼ばれる法律を承認しています。これは欧州の半導体システムを強化する為の規制で、半導体分野における産業基盤発展の条件を整え、投資を呼び込み、研究とイノベーションを促進し、将来のチップ供給危機に備えることを目的としています。この法律はEUの半導体世界市場シェアを現在の10%から2030年までに少なくとも20%にする事を目標とし、更に官民投資で総額430億ユーロ(そのうちEU予算から33億ユーロ)を捻出する必要がある事を強調しています。
▶ https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2023/07/25/chips-act-council-gives-its-final-approval/
廃棄物の心理学を研究しているバージニア大学の研究者グループのレポートが、様々なメディアで報道されています。同研究チームは最近、厳格なジャーナリズムを重んじるニュースサイト『The Conversation』に消費者のリサイクル心理に関する研究データを発表しました。特に米国で顕著なものですが「リデュース、リユース、リサイクル」というスローガンは、現在、過度に強調され過ぎており、結果が裏目に出始めている事が明らかになっています。一般消費者はそもそも、どの商品が実際にどのようなリサイクル方法でリサイクルが可能なのかを正確に認識できず、単に「リサイクルする事」で全てが解決すると信じています。その為、気軽にリサイクル出来るものと出来ないものを意識して分けずにリサイクルに出しています。結果、リサイクル出来るものを再度仕分けするコストが賄えず、回収した多くのものを埋立や焼却処分するという惨事を起こしている、というものです。廃棄するのか、再利用するのか、リサイクルに出すのか、その責任の多くは消費者にあります。消費者は廃棄物管理とリサイクルついて十分な知識が無く、現在のままでは世界的な廃棄物危機に殆ど対処できない、というのが研究結果です。間違った認識を齎す宣伝はプラスチック廃棄物の国際条約交渉でも顕著に表れており、産油国や産業発展の著しい新興国の一部は、プラスチックの生産総量規制をせず「リサイクル」を強調する事により「持続可能」という宣伝を過度に行う事態が発生しています。
▶ https://theconversation.com/decades-of-public-messages-about-recycling-in-the-us-have-crowded-out-more-sustainable-ways-to-manage-waste-208924
▶ https://www.asiafinancial.com/chinas-dalian-wanda-may-be-next-property-giant-to-fall
今後EV市場に大きな影響をもたらす可能性のある中国のEV電池の過剰生産能力問題について中国紙が報じています。中国のEV向け電池の生産能力は2025年迄に国内EV需要の4倍に達する見込みです。その為、小規模なEV電池企業は倒産する可能性が指摘されています。現状の予測では中国のメーカー約50社のEV電池容量は2025年には何と4,800GWhに達します。5月の設置容量は合計28.1GWhで前年比にて44%も増加しています。現在、上位10社の電池メーカーが中国市場シェアの97%を占めています。アナリストは中国のEV電池産業が今後2年間で深刻な生産能力過剰に直面し、多くの小規模企業が倒産すると警告しています。1GWhの生産能力で約10,000台のEVに電池を供給可能です。鉄鋼や不動産も同じですが、国家政策によって民間投資資金が過熱化し、あっという間に過剰生産に陥るケースです。余剰製品によるダンピングがどの程度周辺地域への影響を及ぼすのか懸念されます。中国の上位6社の世界市場に占めるシェアは既に今年の1-5月の期間に62.6%に達しています。2023年には中国だけで世界のリチウム供給量の62.5%、コバルトの76%、世界の天然黒鉛供給量の65%、人工黒鉛供給量の72.5%が精製されると予測されています。
▶ https://www.scmp.com/business/china-business/article/3228224/overcapacity-chinas-ev-battery-industry-reach-four-times-demand-2025-putting-small-players-risk
再生可能エネルギーへの投資指標の1つと言われているS&P Global Clean Energy Indexの過去1年のYieldがマイナス5.04%、2023年は現在までマイナス5.84%と下げ基調が続いています。7月単月ではプラス2.2%ですが、今年に入っての下げトレンドを回復する力強さがありません。インフレによる建設コストや人権費の高騰、世界景気の鈍化等が要因と見られ、メディアで宣伝されるより投資家は冷静に見ているようです。この傾向は米国でのビルド・バック・ベター法でも同じような状況となっており、高騰する建設コストで補助金によるメリットが薄れている事が多く伝わるようになっています。
▶ https://www.spglobal.com/spdji/en/indices/esg/sp-global-clean-energy-index/#overview
米国のLIBリサイクル企業Aqua Metalsは韓国の電池及び電池材料企業のYulho Co. Ltd(ユルホ)とその子会社であるYulho Materialsと戦略的提携を結んだ事を発表しています。ユルホはAqua Metalsに500万ドルの株式投資を行う予定です。Aqua Metalsは自社の特許技術をユルホにライセンスする契約を締結し、ユルホは同技術を韓国でLIBリサイクルに利用する事も同時に発表しています。
▶ https://aquametals.com/news/aqua-metals-and-yulho-partnership-unlocking-global-potential-for-sustainable-recycling/
欧州委員会の副委員長でEU気候変動のトップ、欧州グリーンディールのトップであるフランシス・ティメルマンスが、次期オランダの首相を目指し出馬する為に、欧州委員会の職を辞する事が伝えられています。欧州グリーンディールの重鎮中の重鎮であり欧州グリーンディールが最も重要な時期に離脱する事から大きなニュースとなっています。取り敢えず、欧州のグリーンディールに多少の空白が出来る事は避けられない状況です。米国のジョン・ケリーと共に気候変動政策を次々に出してきた張本人でもある為、今後、影響が出る事は間違いありません。
▶ https://www.politico.eu/article/eu-climate-czar-timmermans-to-leave-brussels-to-run-in-dutch-election/
欧州最大の鉄鋼メーカーが発生先とのスクラップ提携に動いています。欧州最大の鉄鋼メーカーアルセロールミタルのフラットロール部門であるアルセロールミタルヨーロッパは、ドイツの自動車ボディーTire1サプライヤーの大手Gestamp Metal Forming GmbH(ゲシュタンプ)と鉄スクラップの取り扱いに関する契約を締結したと発表しています。この合意には「両社間で鉄リサイクルを強化する循環計画の共同プロジェクトとその実施が含まれる」と伝えられています。契約ではゲシュタンプから発生するプレス・スクラップの収集と処理、そして最終的にはリサイクル材を含む「アルセロールミッタルXCarb鋼」製品の原料としての使用が含まれています。つまり発生したスクラップをそのままリサイクル材を含む製品として戻すという事になります。アルセロールミタルは、これを「循環協定」の枠組みの1つと定義しています。大手の需要家や発生先と提携し、種類別の新断スクラップを完全に混ざり物がない状態で収集する事で循環性を高めるという試みは今後加速する可能性があります。
▶ https://corporate.arcelormittal.com/media/news-articles/arcelormittal-and-gestamp-sign-circularity-agreement-to-boost-sustainability-of-automotive-supply-chain
洋上風力発電事業の頓挫が相次いでいます。スペインの再生可能エネルギー開発大手のIberdrola SAは米国マサチューセッツ州沖に計画されている風力発電所からの電力販売契約をキャンセルする事に同意しています。またデンマークの風力発電大手のOrsted A/Sは米国ロードアイランド州への洋上風力発電供給の入札に敗れ、その理由に大幅なコスト上昇を挙げています。更にスウェーデン国営電力会社Vattenfall ABはインフレを理由に英国沖の風力発電所計画を中止しました。再生可能エネルギーの需要が急増しているにも関わらず様々なコストの高騰により、洋上風力発電プロジェクトが相次いで頓挫しています。材料費の高騰で風力タービンメーカーは製品の価格を引き上げただけでなく、タービンを設置するための専用船等、他のサービスのコストも大幅に高騰しています。更に金利の上昇により借入コストが上がった事で全体のプロジェクトの資金繰りと回収に大きな変化が起きています。この状況は現在行われているPJTでも同じ事が言えますが表に出てきておりません。エネルギーで言えば低酸素(グリーン)水素と洋上風力発電は元々コスト高が言われ続けていましたので、今後も注意が必要です(宣伝されていますが、過去の一部を除けば、殆ど商業的に成功していないという実態があります)。
▶ https://www.mining.com/web/worlds-biggest-wind-power-projects-are-in-crisis-just-when-world-needs-them-most/
22日まで4日間インドで開催されたG20では、一部の化石燃料の生産国による反対を受け、化石燃料の使用を段階的に削減するロードマップについて合意できず、石炭については言及すら無かった事が話題となっています。G20による総GHG排出量と総GDPは世界の4分の3以上を占めており、G20による脱炭素化への積極的な取組は非常に重要であると見られてきました。今年5月にはG7で「化石燃料の段階的廃止を加速する」事を合意しましたが、G20では同じ事が実現しませんでした。
▶ https://www.scmp.com/economy/global-economy/article/3228628/g20-energy-ministers-fail-agree-road-map-ending-use-fossil-fuels
7月21日に中国初となるリチウム先物取引が広州先物取引所(GFEX)で開始されました。初日の取引での2024年1月渡しの炭酸リチウム先物価格はトン当たり21万5,100人民元で、基準価格のトン当たり24万6,000人民元から12%以上も下落し、話題となっています。2024年2月-2024年7月渡しの先物契約はトン当たり21万1600人民元となり、基準価格より14%も下落し、初日の下限に達しました。分析では来年のリチウム供給過剰の予想、及び欧米でのサプライチェーンの独自構築という側面がある一方で中国の備蓄は毎年第1四半期にはやや遅い事が価格下落に寄与した可能性が指摘されています。中国での炭酸リチウム生産のコストの下限は1トン当たり約150,000元と見なされており、今年4月20日の約180,000万元/トンを底に上昇し始め、一時期は32万元/トンまで反発しましたが、現在は28万~30万元/トンの範囲で落ちついています。
▶ http://www.aastocks.com/en/stocks/news/aafn-con/NOW.1280249/recommend-news/HK6
23日にスペインの総選挙が行われ、右派が最大得票率を獲得し躍進しましたが、右派、左派政党は共に過半数に達せず、政治的空白が生まれる事態となっています。今年に入り、欧州各国の選挙では今まで政権を担っていた中道左派から右傾化が進み、今回のスペイン選挙でも同様に保守(右)派が躍進しています。欧州では、夏休み前の選挙はこのスペインの選挙で一旦終わりますが、その後も多くの選挙が控えています。夏休み明けには、スロバキアで9月30日に総選挙が予定されており、その次にルクセンブルクの議会選挙が10月8日の投票で予定されています。更に秋にはスイスで議会選挙と国民投票、ポーランドでは議会選挙が行われる予定です。その後11月22日にはオランダで議会選挙が行われる予定です。欧州では比較的景気が良かったパンデミック前にはグリーン化と移民受入を主軸に左派政党が躍進してきましたが、戦争でロシアからの資源の禁輸によるエネルギー危機、高インフレ、更に分断による中国との関係悪化もあり、全く逆の動きが出始めています。
▶ https://www.theguardian.com/world/2023/jul/24/what-happened-spain-snap-general-election
先日、欧州理事会によってEU重要な原材料法(CRM)にアルミニウムが追加されました。当初欧州委員会の案ではアルミを含める事が検討されていましたが、結果的に正式な法案には含まれていませんでした。中国商務省と中国税関は7月3日に国家安全保障と国益の保護を目的に希少金属のガリウム及びゲルマニウムの関連製品を8月1日から輸出管理の対象に加えると発表しました。ガリウムは半導体、光ファイバー、衛星用太陽電池の生産に不可欠な原材料です。ガリウムは中国が世界の生産量の94%を占めており、EUの需要の80%を供給しています。ガリウムはアルミナをアルミニウムにする工程で生成される副生成物の1つです(アルミン酸ソーダ溶液)。過去、中国産のアルミニウムに価格で歯が立たなくなった多くの先進国では、多くのアルミ二ウムとアルミが使われた製品を中国から輸入するようになり、必然的に中国でのガリウムの生産も増え、価格も低下しました。欧州のアルミ業界団体であるEUROPEAN ALUMINIUMは7月3日に中国政府によるガリウムとゲルマニウム製品の輸出規制の発表当日にこの重大な問題を即座にTweetし、欧米の半導体メーカーも一斉に原料確保と調達の不安払拭の声明を発表していました。アルミ二ウムの生産は地政学的な原材料供給の問題から何れは欧州に戻らざるを得ない状況です。「EU重要な原材料法」はスクラップにも規制が掛かる為、スクラップ業者にも影響が出る事が避けられないものとなります。
▶ https://twitter.com/EU_Aluminium/status/1679479155765792772
中国国際テレビ網(CGTN)は、中国の政府と政府研究機関による大規模なLIBリサイクルの取組について報道しています。2023年の1月~5月に中国でリサイクルされたLIBバッテリーの総量は約11万5,000トンで既に2022年の総量を上回っています。中国工業情報化部(MIIT)傘下のCCIDコンサルティングによると、中国の廃バッテリーは大幅に増加しており、2022年には約27万7,000トンの動力用電池(LIB)が廃棄バッテリーとなっています。2025年以降は、使用済みのバッテリーは年間100万トンに達すると予想されています。このような状況から中国科学院傘下の青海塩湖研究所の研究チームは使用済みのLIBから膜分離技術を応用して酸浸出によりリチウムを抽出する方法を発明し、回収した炭酸リチウムの純度を99.69%にまで高める事に成功してます。この工法では全工程でのリチウムの回収率は92.24%に達しています。研究チームはリサイクル会社と協力してこの新しい技術を導入し始めています。この技術を利用した河北省邯鄲市のプロジェクトでは年間2万トンの廃LIBを処理する事ができ、現在テストを開始しています。中国では政府省庁もリサイクル企業が技術を向上させるよう指導する政策を打ち出しています。
▶ https://news.cgtn.com/news/2023-07-25/China-boosts-recycling-tech-to-meet-power-battery-challenge-1lIEUVwHxcc/index.html
中国の習金平主席は24日、中国共産党中央委員会政治局のグループ学習会を主宰し、政策調整と経済刺激策を示唆しています。この指示により今後数ヵ月以内に内需の拡大、信頼感の向上、リスクの防止に焦点を当てた、更なる政策支援が展開される事が予想されています。新華社通信によれば、中国政府は自動車、電子機器、家庭用品の需要を高め、観光を促進し、更に不動産政策の調整を行う事に言及しています。この発言から中国政府が不動産規制を更に緩和するとの観測が強まり、香港のハンセン本土不動産指数は14.4%上昇、CSI300不動産指数は8%以上上昇しました。ただしアナリストの多くは、地方政府や民間の債務リスクの増大に対する懸念から、政策当局者が「積極的な刺激策」を講じる可能性はあまり高くないと見ています。
▶ https://english.news.cn/home.htm
欧州委員会は、重要企業レジリエンス指令(CER)の対象となる11の産業分野のリストを採択しています(resilience:リジリエンスとは「回復力」の事で、戦争や地政学的な問題で何かが影響を受けても「直ぐに回復できる」という事を目的にした指令です)。リストに入った産業分野は、エネルギー、輸送、銀行業務、飲料水、下水、食品の生産と加工と流通、健康、宇宙、金融市場インフラとデジタルインフラストラクチャーの各分野です。これは国境を跨いだ主要なインフラを利用するサービスの相互が増大している為です。特定された産業は回復力を強化する為の措置を講じる事が求められます。これにはエネルギーや原材料のサプライチェーンも含まれてくる為、それらの流通業務にも影響が出ると考えられます。
▶ https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_23_3992
あまり語られませんが、グリーン化を進めるとインフレが加速し、それは(特に欧米の)投資家にとって「蜜の味」という事は、知る人は良く知る事実です。30年以上の経験を持つプロの投資アドバイザーであり、自らもLundgreen’s CapitalのCEOであるPeter Lundgreen氏がその内情の一部をコラムで載せています。
大気中の二酸化炭素を削減するコストは実は天文学的に高額になる為、将来的に多くの環境に優しい税金や関税が課せられ、更に本格的なグリーンフレーションが起こる可能性があります。公的資金を含む巨額の資金がグリーン投資に流れる事で相場上昇を期待する投資家にとって、脱炭素はエキサイティングな投資先です。低炭素技術を生み出す為の鉱物需要の総量は2040年迄に4倍に増加すると予想されています。しかし鉱石の採掘と精製は非常に少数の生産者に集中していますので、コスト増と投資家の旨味の2つが存在します。欧州では2022年4月から戦争によってエネルギー危機とインフレが加速したと言われていますが、実はインフレは2021年から始まっており、原油価格とガス価格が劇的に下がった現在でも、なお厄介なインフレが収まらず、金利の引き上げが続いています。金利上昇は資金調達コストを上昇させ、更にグリーン化事業のコストを増大させるという悪循環を生みます。本当のグリーンフレーションはここから加速すると言われており、その事はよく理解しておく必要が有りそうです。
▶ https://www.manilatimes.net/2023/07/22/business/top-business/greenflation-will-be-honey-for-investors/1901746
▶ https://www.fxstreet.com/analysis/greenflation-how-inflationary-is-the-energy-transition-202307251212
EU加盟国は欧州全土にEV充電器を増設する新しい法律を採択しています。この法律は2025年から全てのEU加盟国に主要道路の少なくとも60Km毎に150kWの急速充電ステーションを設置する事を義務付けるものです。乗用車とトラック向けの水素ステーションは2030年以降、全ての都市及び主要幹線道路に200 km毎に配設置義務が生じます。これ以外にも大型旅客船、またはコンテナ船が寄港する港湾は2030年迄に船舶に陸上から電力を供給しなければならず、空港では2025年迄に全ゲートで2030年迄に全遠隔エリアで静止している航空機に電力を供給する必要があるという事も採択されています。最終投票で新法に反対票を投じたのは、ポーランドとルーマニアで、イタリアとラトビアは棄権しています。他の加盟国は新法に賛成票を投じた為、過半数を超えて採択されています。欧州全土の充電ステーションは2022年末で479,000台あり、上記の義務を果たす為に必要な充電ステーション数は600,000台と言われていますので、後1年半で110,000~120,000台を増やす事になります。この法律により欧州の非鉄需要は一定の範囲で上昇すると見られています。
▶ https://bit.ly/44GrQGN
中国のSMMが「中国の銅スクラップ市場調査」を掲載しています。銅スクラップを産業スクラップ(PIR)と消費者スクラップ(PCR)に分けて解説しており、工場から直接リターンされるPIRではなく、主に使用済み製品から発生する消費者スクラップ(PCR)についての調査内容となります。SMMの統計によると、2022年の中国の銅スクラップ生産量は約227万トンでその内訳はPCRが159万6000トン、PIRが67万8000トンでした。銅スクラップの需要は約398万トンで需給ギャップは約170.6万トンの不足です。中国の銅スクラップ輸入政策の強化と国内の廃棄物リサイクルシステムの改善により、銅スクラップの輸入量は将来的に減少し、銅需要の増加により国内の銅スクラップの供給は増加すると予想されています。PCRに関しては、2022年の電力産業での発生量は約47万7,000トンで、PCR全体の約30%を占めました。運輸業界の銅スクラップ量は約36万2000トンで約23%を占めています。耐久消費財からの発生量は37.7万トンで約24%を占めています。建設分野の電線、変圧器、変電所キャビネット等の銅製品やEVが寿命を迎えリサイクルに向かうようになると、それらが銅スクラップの供給増加の主な要因となる見込みです。需給ギャップは徐々に減少に向かう方向となっています。
▶ https://news.metal.com/newscontent/102305392/China-Copper-Scrap-Market-Research
欧州鉄鋼生産者協会EUROFERはプレスリリースを発行し、今年の欧州の鉄鋼産業の見通しを▲3%と見込んでいる事を発表しています。エネルギー価格の高騰、生産コストの上昇、更にウクライナ戦争等、下振れ要因が長引き、2023年の鉄鋼市場の見通は▲3%と予測しています。過去5年間で4回目のマイナス業績となる見通しですが、2024年は力強い回復を見込み、+6.2%になると予想しています。欧州全体で弱い需要が続いていますが、鉄鋼の輸入品は依然として22%と歴史的にみても高い市場シェアを維持している事を懸念しています。EUROFERは輸入鋼に対する規制をロビー活動しており、総需要が今後伸びない場合は何等かの政策的保護がある可能性が指摘され始めています。
▶ https://www.eurofer.eu/press-releases/outlook-deteriorates-for-2023-as-uncertainty-persists-but-stronger-recovery-expected-in-2024/
英国は包装廃棄物に対する拡大生産者責任制度(EPR)の運用を予定されていた2024年10月から次期総選挙後の2025年まで実施しない事を決めました。英国での包装リサイクルは改革が遅れる事になりました。管轄する環境食糧農村省(Defra)は昨年、包装材製造業者向けのEPR制度は2023年には運用しない事を明言していましたが、今回の発表で2025年以降に更に遅れる事になりました。包装廃棄物に対するEPRは業界から猛烈な反対意見が噴出し続けており、実施や運用が難しいだけでなく議員へのロビーもあり、今回のような結論になったと見られています。企業団体はEPRの実施は消費者のコスト上昇に繋がる可能性があり、現在進行中の生活費高騰とインフレ上昇の中で更なるコスト増要因となると警告し続けてきました。欧州でも同じような状況が見られ、包装及び包装廃棄物指令の改正案が大きな批判の対象となっています。プラスチック汚染を巡る政策は、環境先進地域を自称する欧州や英国でも抵抗にあっています。それだけ社会と産業はプラスチックに依存しているという証でもあります。
▶ https://www.gov.uk/guidance/extended-producer-responsibility-for-packaging-who-is-affected-and-what-to-do
先週インド政府は非バスマティ種白米(non-basmati white rice)の輸出を禁止し、世界に衝撃を走らせました。来年の選挙を前に国内のインフレを抑制する目的で輸出量の1/4を占める非バスマティ種白米に規制を掛ける事にしたのです。インドは米の世界輸出量の40%以上を占め、約1000万トンに上る量が市場から消える事態となったのです。カナダやオーストラリアでは米の値段が一時3倍になる所も現れパニック買いが発生し、ベトナムでも米の確保に動く等、世界で様々な動きが続いています。この決定はウクライナが黒海経由で穀物を輸出出来るようにする協定からロシアが離脱した同じ週に起こりました。ロシアの決定を受けて、小麦の価格が13%、トウモロコシの価格が9%急騰しました。それに追い打ちをかける事態となっています。IMFはインドの措置により食料価格が10-15%上昇、インフレ要因になると警告し、今日になってインド政府に禁輸措置を再考するよう依頼しています。食糧農業機関(FAO)によると世界最大の輸出国であるインドが米の禁輸を続ければ、11年振りの高値に達している米価格はさらに高騰し、数百万人が飢餓に陥る可能性が高いと言います。アジアは「食料安全保障の中心」であり、インド、タイ(約15%)、ベトナム(約14%)の3ヵ国だけで、米の国際輸出市場の70%を占めています。今年はメガ・エルニーニョが予測されている事もあり、米の産地であるアジアの降雨量に問題が発生する可能性が指摘されています。タイは今年の降水量が例年より28%少ない状況が続いています。
▶ https://uk.finance.yahoo.com/news/why-india-rice-export-ban-114030848.html
タイヤのリサイクルに関して、欧州リサイクル産業連盟(EuRIC)は非常に強力なメッセージを政策担当者宛てに出しています。27日に発効されたプレスリリースでは、EUからの使用済みタイヤの輸出禁止とリサイクルゴム中の化学物質等、測定に関して合意できるアプローチを取るよう提言しています。PAHとマイクロプラスチック規制により、使用済みタイヤから製造されるゴムチップ(主に人工芝用)は8年後に事実上禁止されます。エネルギー危機により古タイヤが燃料化される傾向が強まり、また科学物質の規制による安全性確保の問題から現在欧州の古タイヤは輸出に出される量が増え、タイヤリサイクル業者は使用済みタイヤの確保に苦労し始めています。EuRICの論点はリサイクルゴムを利用した場合、天然ゴムを利用するよりも遥かに炭素排出量が少ない為、微量の化学物質の問題やマイクロプラスチックの流出問題のみに焦点を当てるのではなく、バランスを取った政策をすべきというものです。人工芝充填材であるゴムチップは80%が使用済みタイヤ由来のものです。英国では2022年に推定年間合計約228,000トンの使用済みタイヤが海外に輸出されました。その大多数がインドであり、最大の輸入業者の1つがMumbai Fabrics Pvtと言われています。英国から人件費が安く環境規制が緩いインドへの使用済みタイヤの輸出は、今後年間30万トンに達すると言われています。英国でも欧州でも逆有償でタイヤを処分するシステムである以上、規制の強化により有償(中古として)での使用済みタイヤ輸出の増加は止まらないと思われます。英国では1本1ポンド(180円)前後で輸出業者に売ると聞いています。
▶ https://euric.org/resource-hub/position-papers/position-paper-euric-urgently-demands-the-european-commission-to-halt-the-export-and-incineration-of-tyres-collected-in-europe-outside-its-borders
欧米のアルミニウムの業界団体は、持続可能なアルミニウム生産の為に共同歩調を取っています。米国のAluminium Association(アルミニウム協会)と欧州のEuropean Aluminium(ヨーロピアンアルミニウム)は、米国通商代表部とEU執行副大統領兼通商委員に共同書簡を送り、7月中旬に欧米間で協議が開始された「Global Arrangement on Sustainable Steel and Aluminium (GSA:持続可能な鉄鋼及びアルミニウムに関する世界的な取り決め(GSA))を、今年10月迄に実施するよう促しています。この協定は、実は低炭素で持続可能なアルミニウム生産を軸に欧米間での関税の撤廃や自由貿易を促進する代わりに、それ以外の地域からの炭素排出の多いアルミ二ウムの貿易を締め出すという狙いがあります。アルミは徐々に地政学上で重要な金属になり始めています。新たなリサイクルテクノロジーやメーカーとのスキームを拡張する時期かも知れません。
▶ https://european-aluminium.eu/resource-hub/news-events/
中国企業が、またハンガリーに大型の電池工場を建設する予定です。中国の電池メーカーでは比較的小規模なSunwoda Electronicは最大2億7471万ドル(約380億円)の初期投資をかけて、ハンガリーにEV用電池工場を建設する計画です。Sunwoda社は27日に深セン証券取引所への提出書類の中でこの計画を明らかにしています。CATLもハンガリーに81億3000万ドル(約1兆1,400億円)規模の電池工場を建設しており、EVEエナジーも大型のシリンダー電池を製造する工場を設立すると発表しています。ここ数年、オルバン政権のハンガリーと中国は非常に良好な関係を保っており、過去に無い程の中国による投資が続いています。今後、欧州の電池ハブとして、ハンガリー、ポーランド、スロバキア、そしてアフリカのモロッコが台頭するのは間違いなさそうです。
▶ https://www.zawya.com/en/projects/bri/chinas-sunwoda-to-invest-2747mln-in-car-battery-factory-in-hungary-klqso2ov
何かと話題の中国大手不動産ディベロッパーの恒大グループですが、そのEV部門(恒大NEV)が2年振りに財務諸表を公開し、2021年と2022年の合計純損失が99億5000万ドル(約1兆3,900億円)に上る事が分かりました。2日前に中国首脳部が経済支援を約束しましたが具体的な言及が無く、一時上がった不動産関連株や非鉄先物も幾つかは既に下げ始めています。中国の地方政府の債務はエコノミストの試算では9兆ドル(126兆円)を超えると言われており、具体的にどのような政策で改善できるのか、金融セクターへの影響等、悲観的な意見の方が多い様です。若年層の失業率が20%以上となり、雇用問題も浮き彫りになって来る中、色々と中国情報を取った方が良さそうです。
▶ https://www.asiafinancial.com/china-politburo-says-little-on-solutions-for-economic-woes
半導体チップを巡り世界で様々な動きがある中で、欧州理事会の評議会が「EUチップ法」と呼ばれる法律を承認しています。これは欧州の半導体システムを強化する為の規制で、半導体分野における産業基盤発展の条件を整え、投資を呼び込み、研究とイノベーションを促進し、将来のチップ供給危機に備えることを目的としています。この法律はEUの半導体世界市場シェアを現在の10%から2030年までに少なくとも20%にする事を目標とし、更に官民投資で総額430億ユーロ(そのうちEU予算から33億ユーロ)を捻出する必要がある事を強調しています。
▶ https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2023/07/25/chips-act-council-gives-its-final-approval/
廃棄物の心理学を研究しているバージニア大学の研究者グループのレポートが、様々なメディアで報道されています。同研究チームは最近、厳格なジャーナリズムを重んじるニュースサイト『The Conversation』に消費者のリサイクル心理に関する研究データを発表しました。特に米国で顕著なものですが「リデュース、リユース、リサイクル」というスローガンは、現在、過度に強調され過ぎており、結果が裏目に出始めている事が明らかになっています。一般消費者はそもそも、どの商品が実際にどのようなリサイクル方法でリサイクルが可能なのかを正確に認識できず、単に「リサイクルする事」で全てが解決すると信じています。その為、気軽にリサイクル出来るものと出来ないものを意識して分けずにリサイクルに出しています。結果、リサイクル出来るものを再度仕分けするコストが賄えず、回収した多くのものを埋立や焼却処分するという惨事を起こしている、というものです。廃棄するのか、再利用するのか、リサイクルに出すのか、その責任の多くは消費者にあります。消費者は廃棄物管理とリサイクルついて十分な知識が無く、現在のままでは世界的な廃棄物危機に殆ど対処できない、というのが研究結果です。間違った認識を齎す宣伝はプラスチック廃棄物の国際条約交渉でも顕著に表れており、産油国や産業発展の著しい新興国の一部は、プラスチックの生産総量規制をせず「リサイクル」を強調する事により「持続可能」という宣伝を過度に行う事態が発生しています。
▶ https://theconversation.com/decades-of-public-messages-about-recycling-in-the-us-have-crowded-out-more-sustainable-ways-to-manage-waste-208924