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NEWSCONの気になるNEWS(2023年7月第3週)

欧州委員会は「使用済み自動車指令(ELV指令)」を改定し、新たに「規則」として提案を発表しました。リサイクラーへの影響は、車の設計の改善、強化された拡大生産者責任の適用、重要な原材料リストの材料の回収となります。
主なポイントは以下の通りです。
・再利用やリサイクルの為に、材料、部品、構成部位の取り外しを容易に出来るよう車を設計する事。
・新車に使用されるプラスチックの少なくとも25%がリサイクル由来である事(更にその25%の内、1/4(25%)は「ELV由来のもの」である必要がある)
・EU重要な原材料リストの材料、プラスチック、鉄、アルミニウム等、多くの原材料を高度な品質の状態で回収するようにする事。破砕前にそれらが含まれる部品や材料をELVから外し、高品質な(状態を維持して)リサイクル出来るよう、廃棄物処理を改善する必要がある。
・自動車が「廃棄物」となった時点で、生産者はその自動車に対して経済的責任を負う事。ELV処理の適切な資金調達を確保し、リサイクル業者に品質向上の動機を与える。
・ELVの検査を強化する事。各国の自動車登録システムの相互運用、中古車とELVの区別の改善、走行に適さない中古車の輸出禁止、等の措置により、車両の「行方不明」に歯止めをかける。
・対象車輛を拡大する事。オートバイ、トラック、バス等の新しいカテゴリーを含める。段階的に規則の範囲を拡大し、適切な廃棄処理を保証する。
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/qanda_23_3820

スイスの大手金融機関INGは、ニッケルの市場予測レポートを発行しました。ニッケルは、今年LMEで最もパフォーマンスの悪い金属です。価格は上半期に37%下落しました。この傾向は2023年下半期に向けても続く可能性が高く、価格は低い水準を試す可能性が高いと結論付けています。中国の景気低迷、インドネシアの増産、世界景気の低迷等が重なり、ニッケル価格は短期的には引続き圧力を受けます。今年の第3四半期の平均価格は1トン当たり21,000ドル、第4四半期は1トン当たり20,000ドルになると予測しています。
https://think.ing.com/articles/nickel-underperforms-in-h1-as-surplus-builds/

中国の炭酸リチウムの価格は短期的には上値が重い動きとなる事が伝えられています。エネルギー貯蔵部門の需要は引続き強いが、LFPの生産が急増しているのに比べ、三元系は需要不振の為、在庫削減に重点を置いており、バランスを取っています。炭酸リチウムそのものの生産量は6月に前月比21.6%増の39,400トンとなり、7月には最大40,000トンに達すると予想されています。ただし増産にも関わらず、7月は2,500トンの供給不足が見込まれています。これらの事を総合すると、炭酸リチウムの価格は7月中に29万~31万元/トンの範囲で推移すると見られています。
https://www.mysteel.net/news/all/5040986-lithium-carbonate-prices-projected-to-fall-fractionally-in-july

中国は景気減速が顕著の中でも上半期の原油処理量は前年比10%増加と大幅な伸びを示しています。これは石油製品を輸出主導に切り替える事で起きており、この状況は暫く続く可能性が高い事が伝えられています。統計に表れにくいロシア産のディスカウント原油の購入量が大幅に増えている事は確かです。現在アジア地区での米国産原油の輸入量は安定していますが、台湾がインドに代わり米国産原油の輸入国のアジア第三位になる等、明らかにエネルギーの流れが変わりつつあります。インドは米国からの原油調達よりも、ディスカウントされたロシア産を多く購入し続けています。中国は、余剰生産能力のある鉄鋼部門を輸出攻勢に切り替えています。鈍化したとは言え、中国保税区の銅在庫が大幅に減少している事等、金属とエネルギーの流通がアジアで大きな変化を見せています。直接統計に出にくい内容なので、幾つかの指標を組み合わせて見る必要がありそうです。端的に言えば、欧米が金属資源とエネルギーでインフレになっても安価なロシア産の流通と中国が欧米にダンピングできない状況もあり、アジアは連動しにくい状況かと推測できます。
https://www.spglobal.com/commodityinsights/en/market-insights/latest-news/oil/071723-china-data-h1-crude-oil-throughput-jumps-10-on-year-amid-55-gdp-growth

欧州廃棄物リサイクル産業協会(EuRIC)は、EU重要な原材料法への新たな提案について激しく抗議しています。6月末にスウェーデンによりEU重要な原材料法に提案された追加条項は、「廃棄物処理を終了して輸出される重要な原材料は、欧州指令2008/98/EC(EU廃棄物枠組み指令)と関連する欧州の法律に従って条件を満たす義務がある」となっています。これはリサイクル材料(金属やプラスチックのスクラップ)の輸出が廃棄物枠組み指令による規制を受ける事を意味します。現在も物議をかもしている「欧州廃棄物輸送規則」の改定案でも、法律で「リサイクルされた原料(recycled Materials)」という用語の定義が採用されず、リサイクル処理された2次原料(金属やプラスチック)は「廃棄物」と明確な区別が設けられませんでした。今回、銅やアルミを含むEU重要な原材料リストの原材料を含むリサイクル処理された金属が「EU廃棄物枠組み指令」の規制を受ける事で、輸出の際に「廃棄物」と同じ要求事項を満たす必要が出てきます。これはリサイクル原料を輸出する事で成り立っているリサイクル業者にとって死活問題となる為、EuRICが正式なリリースを発行して猛反発しています。ただしEUでのこの流れ(廃棄物=資源戦略の対象)は、戦争による地政学の変化やエネルギー危機と相まって、変える事はできないと見られています。輸出で稼いでいた多くの西欧のリサイクル会社は今後輸出に規制が掛かると、廃棄物をリサイクルしてもエネルギー高と人件費からコストが合わず、廃棄物が域内の東欧やバルカン半島、旧ソ連領により多く流れる可能性があります。
https://euric.org/resource-hub/press-releases-statements/statement-euric-statement-on-end-of-waste-in-the-compromise-text-presented-by-the-swedish-presidency-for-the-critical-raw-materials-act

欧州政府は本格的な2国間の資源戦略に乗り出しています。欧州委員会は17日に「持続可能な原材料のバリューチェーンに関するEUとチリ間のパートナーシップ確立に関する覚書」を締結しています。チリは世界最大級の銅とリチウムの生産国で、米国や中国も政府や政府系企業が投資や資源協定に動いています。チリ政府は銅やリチウムを戦略物資として国有化し、権益の拡大を図っています。
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_23_3897

英国の中堅リサイクル企業H.Ripley & Coは、米国のセンサー選別装置を開発製造するAustin AI社製の「レーザー誘起破壊分光法 (LIBS)」を導入し、混合アルミスクラップから6063を選別する事が可能となった事を伝えています。この技術は光学センサーシステムを開発するOcean Insight社製のOcean Appliedレーザー分光ヘッドSpeedSorter?を利用した改良型の「レーザー誘起破壊分光法(LIBS)」を用いた画期的なアルミの分離法で、非鉄スクラップ選別用に専用設計されたセンシングシステムです。Austin AI社の担当者によると、同社のアルミLIBSシステムを利用し、毎時4~5トンで稼働させた場合、システム導入の初期コスト、運用費、人件費等を含む総合的なコストはアルミ1kg当りの選別で「僅か数¢」になると計算しています。レーザーヘッドを開発したOcean Insightの担当はTwitchやZorbaから単一の合金を正確に選別する機能を開発する事に成功し、過去のLIBSセンサーの問題を克服したと述べています。
アルミはEU重要な原材料リストにも追加され、EV化により大量に使用される事が予測されており、更にELV規則の変更による高度なリサイクルが必要となり、今後、選別技術開発が進む分野と見られています。
https://recyclinginternational.com/product-spotlight/uk-scrap-processor-uses-libs-sorting-to-get-6063/54253/
https://www.austinai.com/
https://www.oceaninsight.com/products/metal-analyzers/speedsorter/

アルミ市場を巡って地政学的な影響が増大し始めています。現在LME倉庫のアルミの80%はロシア産で様々な批判の中でもLMEがロシア産を取引し続ける中、需要家がロシア産を避け、それ以外の産地のものを巡る競争が起きている事が伝えられています。こうした状況にも関わらずアルミ価格は下落しており、いつ反転するのか、不確実な状況が続いています。ロシア産の競合先であるインド産のアルミに対し、米国は大半の関税を撤廃しました。これは市場を驚かせました。この辺りは需給だけでは判断できない地政学的な要素として、価格予測にはより広い情報を取る必要がありそうです。
https://agmetalminer.com/2023/07/18/aluminum-mmi-russian-metal-hits-80-of-lme-aluminum-prices-rise-in-july/

プラスチック廃棄物の汚染に関する条約の議論が進められている中、堆肥可能なプラスチック代替材料の開発や投資が進んでいます。最近、名誉あるトムフォードプラスチックイノベーション賞で1位を受賞した米カリフォルニア州の新興企業のSway社が注目を集めています。同社のフィルムは海藻から作られ、家庭で堆肥化可能です。同社が開発している100%バイオベースのフィルムは大部分が海藻で出来ており、柔軟性と耐久性を備え、更に空気や油の透過性が低く、シール性能が他のプラスチック材料に近いものがあります。また色やテクスチャのカスタマイズも可能です。現在商業化前のパイロット試験の段階で今後アウトドア、アパレル、食品業界向けにブランドを拡大し、大規模な商業生産を計画しています。海藻からのバイオプラスチックの研究は古くからありますが、フィルムへの展開や商業化に成功している所は少なく、今後、このような企業への注目がさらに高まると予想されています。
https://swaythefuture.com/

欧州鉄鋼生産者協会(EUROFER)は、高騰するEUの電力価格に対し、欧州政府が主導するEUの電力市場改革が不十分であるとの警告を発しています。これは欧州議会の産業・研究・エネルギー(ITR)委員会が採択したEU電力市場の改革修正案に対するもので、修正の幾つかは電力市場を改善するものの、電力価格高騰の根本原因には対処しておらず、脱炭素化の取り組みを妨げ、欧州産業の競争力を損なうと批判しています。現在EUの鉄鋼部門は年間約75TWhの電力を消費しています。EUROFERの推計によれば、水素をベースとしたグリーンスチールを含む低炭素技術への移行には、2030年迄に165 TWhを鉄鋼部門が消費し、更に2050年には最大400TWhまで電力消費量が大幅に増加します。化石燃料を使わない電力を中核とするグリーン技術に取り組んでいる企業は、高価な電力価格の為に、運営が持続不可能なリスクに晒される可能性があります。現在、鉄鋼や非鉄メーカーは電力価格に苦しんでおり、解決の目途が立っていません。欧州の政治家はグリーン電力について科学的根拠に基づいたロードマップでなく、その場に応じた理想的な政策を展開してきた歴史があり、結局、足元で産業競争力を弱めており、対処する為に、保護政策に急速に方向性を切り替えています。
https://www.eurofer.eu/press-releases/electricity-market-design-eu-not-there-yet-to-ensure-sustainable-prices-for-europes-decarbonisation-cautions-eurofer/

中国が景気刺激策を強化する方向に動いています。中国経済国家計画のトップは18日に、家計収入の増加、民間企業のビジネス環境の改善、若者の雇用の安定等、成長を促進する為の広範な計画を実施し消費を回復させる事を強調しています。国家発展改革委員会の当局者ジン・シェンドン氏は、北京での同委員会の月例記者会見で、中国の継続的な景気回復は、需要不足、勢いの弱さ、信頼感の弱さに直面している事を認めました。ジン氏は「効果的な政策措置を可及的速やかに実施する」と述べ、「消費を回復・拡大する政策を速やかに策定・導入し、大規模消費の安定化、自動車・電子製品の消費促進、地方消費の拡大、消費環境の最適化等の政策を打ち出す」と付け加えました。こうしたこともあり、一部の欧米投資機関は刺激策による景気の持ち直しに賭ける動きも出始めています。需要不足に直面している中国経済は、政府主導で消費回復への刺激を行うようです。このあたりは、注視する必要がありそうです。
https://www.cnbc.com/2023/07/18/china-vows-to-restore-and-expand-consumption-to-boost-growth.html

欧州政府は、鉄鋼部門の脱炭素化を促進する為に、加盟国による鉄鋼メーカーへの大規模な補助金に対し承認を行っています。欧州委員会はドイツの大手鉄鋼メーカーであるティッセンクルップ・スチール・ヨーロッパに対し、脱炭素化と再生可能水素の利用促進を支援する為、ドイツ政府が5億5,000万ユーロの直接補助金と最大14億5,000万ユーロの条件付の援助を行う事を承認しています。この支援金はテッセンクルップがデュイスブルクにある既存の高炉を水素DRIと2基の電気炉に置き換え、稼働によるコスト増を賄う為に使われます。更に欧州委員会は、欧州最大の鉄鋼メーカーであるアルセロールミタルのフランス・ダンケルクでの鉄鋼生産の脱炭素化を支援する為、フランス政府が行う8億5000万ユーロの補助金を承認しています。ダンケルクでの鉄鋼生産は低炭素による水素DRIと電気炉を組み合わせたものとなります。DRIはせいぜい300万トン/年の生産力なので、このような途方もない膨大な補助金でしか製造できない鉄鋼製品の競争力は、国境炭素税と炭素取引市場が無くして、果たして将来があるのか、疑問が残る所です。
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_23_3928
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_23_3925

インドのコングロマリットであるタタグループは、欧州最大級となるEV用バッテリー工場を英国に建設する計画を認めています。投資額は40億ポンド(約51億7000万ドル/約7100億円!)以上で、4,000人の直接雇用を創出します。バッテリーの供給先はタタ・モーターズの子会社であるジャガー・ランドローバーを含む複数の自動車メーカーとみられ、早ければ2026年にも生産開始を目指しています。英国政府は2030年迄にガソリン車とディーゼル車の新車販売を禁止する計画を既に発表しており、英国での電池生産は重要な問題となっていました。タタは正式には生産能力を発表していませんが、一部では40GWhという報道があり、投資額から推測してほぼ当たっているとすれば、間違いなく欧州最大のEVバッテリー工場となります。
https://www.reuters.com/business/autos-transportation/tata-picks-britain-new-ev-battery-plant-2023-07-19/

大手調査機関2社により、EVに利用される将来の銅需要が下方修正されています。下方修正したのはGoldman Sachs & Consultancy 及びCRU Groupの国際的な大手2社で、2030年迄に平均的なEVが使用する銅の量を、GSは72Kgから65KgにCRUは65~66Kgから51~56Kgにそれぞれ下げています。これらの数字は、銅市場に対する投資に関係する為、非常に重要です。両社が発行したレポートでは自動車メーカーがEV設計時に効率性を重視しており、使用される銅の量が減少し続けていると言及しています。また業界アナリストの一部は、グリーンエネルギーに対する銅需要のこれまでの予測は、楽観的すぎると警告しており、技術の進歩と共に、銅需要の将来の予測値が下がる可能性が大きい事を示唆しています。
https://agmetalminer.com/2023/07/20/copper-demand-and-copper-uses/

EU重要な原材料法が製品にどのような影響をもたらすのかは、未だにハッキリとした分析がありません。最近、IDTechExは、EVに使われるモーター、特に希土類磁石に対し「EU重要な原材料法」がどのように影響を及ぼすのかについて、レポートを上げています。
EVモーターにおける希土類磁石の年間需要量は2031年迄に10億kgを超えると予測されています。2022年には世界のEVの82%で希土類磁石モーターが使用されていました。欧州メーカーのルノー、BMW、メルセデス、アウディは、永久磁石を使用しない「巻き線界磁式モーター」や「誘導モーター」などの新技術を発表しています。高速走行や大型車にはそれら新技術が適している部分もありますが、小型車を含め、希土類磁石の需要は伸び続ける事は確実視されています。EU重要な原材料法は、リストの原材料に関してEU域内での加工および精製を40%以上とし、リサイクルから得られる原料を15%以上とする事を義務化しています。それらの含有量に関して、この法律は自動車メーカーや輸入販売業者に規制を満たす責任を課しています。その為、今後EU地域から材料を調達できるメーカーは、非EU地域からしか材料や部品を調達できないメーカーよりも圧倒的に有利になると見られ、メーカーが材料確保に直接関与せざるを得ない状況を生み出します。この法律は間違いなく、現在欧州で殆ど行われていない希土類磁石のリサイクルを、より活発化させると見られています。
https://bit.ly/43zG9ve

ノルウェーのリサイクル機器大手のTomraが16日から業務の一部を停止しています。サイバー攻撃を受け、社内ITサービスと一部のバックオフィスアプリケーションがオフラインのままで、サプライチェーン管理に影響を与えています。同社製の選別機が影響を受ける事はありませんが、リモートサービスは中断しています。
https://www.tomra.com/news-and-media/news/2023/tomra—july-19th-update-on-cyberattack



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