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NEWSCONの気になるNEWS(2023年6月第4週)
中国は2023年の最初の5ヵ月間で既に2022年通年でリサイクルしたEVバッテリーの量を上回り、国の強力な支援によりEVバッテリーのリサイクルが加速している実情が報告されています。今年5月末迄にリサイクルされたEVバッテリーは11万5000トンで、2022年通年のリサイクル量は10万2000トンでした。中国工業情報化部(MIIT)によれば、中国には国内に1万カ所以上の電池回収拠点があり更に電池リサイクル業界の基準を満たす指定企業が84社もあるという事です。今後、国の支援もあり、その数が増える事が予測されています。
▶ https://www.caixinglobal.com/2023-06-22/ev-battery-recycling-accelerates-in-china-with-strong-state-support-102068324.html
中国の炭酸リチウムのスポット価格は先週、過去2ヵ月間で約2倍のトン当たり31万7500元(4万4146.27ドル)となりました、しかしこの上昇は主に在庫補充によるもので、今後も供給が需要を上回る予測が出ており、価格が下がる可能性が高い事が指摘されています。中国内のアナリストの多くは最近の価格の反発は短期的なものとみており、一部には今年の中国の炭酸リチウム価格は平均トン当たり21~30万元になると予想しています。
▶ https://www.reuters.com/markets/commodities/china-lithium-price-rebound-be-capped-by-growing-supply-analysts-2023-06-21/
EU製紙産業連盟(CPI)は、声明を出し、EU包装及び包装廃棄物指令の改正により、プラスチックが大幅に増える可能性がある事を警告しています。改正案で規定されている再利用可能な包装要件を導入した場合、2030年迄に更に400万トンの新たな包装材が市場に出されると予測しており、プラスチックそのものの削減にはならないとの見解を示しています。CPIのトップは「修正案が提出されたのを見て非常に残念に思う。あまりにも多くの人が再利用可能な包装が常に正しい答えでなければならないと思い込んでいます。リサイクル可能なパッケージと再利用可能なパッケージはどちらも果たすべき役割がありますが、必要とされるプラスチックの大幅な増加については考慮されていません。非常に多くの場合、これは近視眼的なものであり、実際には環境に悪影響を及ぼします」と述べています。この規制により技術開発が進み、再利用可能な包装がリサイクル可能な包装よりも優先されれば、段ボール包装は一度か二度しか再利用できない為、再利用できるプラスチックの包装材と競合する事は出来ないと考えられています。仮に10回再利用され、その後にリサイクルされるプラスチック包装がある場合、紙から置き換えられる可能性が非常に高いと見られています。つまり紙が減り、プラスチックが増える、と言う事になります。業界は段ボール箱が減り、プラスチック製の箱に置き換わる可能性が高い事を懸念しています。
▶ https://www.paper.org.uk/CPI/Content/News/Press-Releases/2023/Amendments-to-new-EU-Packaging-Regulation-could-lead-to-a-tsunami-of-plastics.aspx
インドネシアは2024年内に銅精鉱の輸出を禁止する事を発表しています。これはジョコ・ウィドド大統領が22日に行った演説で示したもので「フリーポート・インドネシアとアンマン・ミネラル・インターナショナルが、来年それぞれの精錬所の建設を完了次第、銅精鉱の輸出を停止する」と述べた事によります。両施設は2024年5月に生産を開始する計画です。インドネシアはニッケルに続き、銅のバリューチェーンの川上を政府の管理下に置く事を次の焦点とする見通しです。
▶ https://www.mining.com/web/indonesia-to-ban-copper-exports-once-freeport-amman-plants-open/
英国や東欧で顕著ですが、頑固なインフレで中央銀行が新たな「痛み」の段階に入りつつある事が色々な所で報道されています。欧州と英国の中央銀行が利上げを行い、米国は年内に2回の利上げが予測されている中、頑固なインフレを抑える為には景気の停滞を伴う判断を中銀がせざるを得ない、との論調が主流になりつつあります。英国はブレグジットによるサプライチェーンの問題以外にもEU離脱による労働力不足から賃金インフレが加速し、全ての面でインフレが止まらない状況が続いています。今後G7の景気の足枷になる利上げの継続に関しては、情報を先取りしながら状況判断をする段階に来ているようです。
▶ https://www.reuters.com/world/uk/uk-economy-stumbles-price-pressures-remain-high-flash-pmi-2023-06-23/
欧州の選挙で右傾化がさらに鮮明になっています。5月に続き2回目のギリシャの総選挙が25日に行われ、キリアコス・ミツォタキス首相率いる新民主主義党(EPP)が過半数を超え絶対多数派を獲得すると同時に左派野党の獲得議席減、そして極右勢力の台頭が明らかになりました。選挙の大きな話題の一つは新しく創設された(超)極右政党「スパルタンズ」の成功で、同党は得票率約4.7%を獲得し、議会参入の基準となる3%を超えました。同党に加え、国家主義者のギリシャ解決党、超保守的なニキ党と合わせて、極右3政党の得票率は13%近くに達し34議席を獲得しました。ギリシャの金融危機の真っただ中に発足し、2019年まで続いた政権であった急進左派連合政党SYRIZAは得票率が17.84%まで沈み、47議席(300議席中)に留まりました。難民やエネルギー等、ポピュリズムな話題は有権者に感心が低く、国内経済問題が最大の関心事である事が投票結果に表れました。欧州では多数を占めるやや左翼系メディアの報道が続いていても、コロナ後の選挙で右傾化が続いている事に、時代を読む鍵がありそうです。
▶ https://apnews.com/article/greece-elections-prime-minister-parliament-e87e05317a208f66d877244eba5b947c
懸案となっていた船舶の安全で環境に配慮したリサイクルに関する香港条約(HKC)は6月26日に発効に必要な要件を満たす事になりそうです。香港条約が発効する為には総トン数で世界の商船の40%を占める最低15ヶ国が批准する必要があり、バングラデシュとリベリアが条約批准文章を提出するかに注目が集まっていました。26日にバングラデシュとリベリアがロンドンの国際海事機関(IMO)に批准文書を提出する見通しとなり、条約が発効する予定です。船舶及び海洋資産の安全なリサイクルに関する香港条約の承認は、世界の海事産業、特に持続可能な船舶リサイクルの分野において非常に重要と見られてきました。バングラデシュは50年以上に亘り船舶リサイクルに積極的に関わっており、主要なリサイクルサイトであるチッタゴンだけでも40以上のリサイクル施設が運営されています。ただし安全や持続可能なリサイクルを行うインフラについて、欧州で幾つか問題点が指摘されてきました。バングラディッシュによる条約の批准を受けて、韓国の大手船主も解体・リサイクルにバングラディッシュのサイトを選択する等、鉄スクラップの供給源である船舶リサイクルの場所にも今後影響が出る事は確実と見られています。
▶ https://www.rivieramm.com/news-content-hub/news-content-hub/what-is-the-link-between-cash-buyers-and-green-ship-recycling-76674
▶ https://www.offshore-energy.biz/h-line-shipping-turns-to-bangladesh-for-1st-green-ship-recycling/
中国の大手コバルトサプライヤーである華友コバルトと、中国のリチウムイオン電池正極前駆体メーカーであるCNGRアドバンストマテリアルは幾つかの海外PJTを発表しています。華友はハンガリーに高ニッケルの三元系リチウム電池用の正極材料工場を建設します。投資額は14億ドルです。PJTは幾つかのフェーズに分かれていますが、第1段階では年間生産量25,000トンの工場の設立となります。またCNGRは11億ドルを投じて韓国最大の鉄鋼メーカー、ポスコと合弁会社を設立し、韓国の浦項市にリチウム電池材料の工場を設立する事を発表しています。
▶ https://www.yicaiglobal.com/news/20230626-09-chinese-lithium-battery-material-suppliers-huayou-cngr-to-build-overseas-plants
スウェーデンでは、ノースボルトというLIBメーカーが「世界で1番グリーンな電池を製造する」という社提を掲げ、Spotify始め、多くのスウェーデン企業からお金を集め、欧州の大手自動車メーカーやスウェーデンの電力会社も参画し、LIBをスウェーデンの一大産業に育てる目論見があります。しかし発表から3年以上も経った現在、市販EV車には1セルも搭載されておらず、宣伝ばかりが先行して計画は大幅に遅れています。殆ど一般的には報じられませんが、この状況を生み出している大きな要因の1つに、電池材料を取り巻く「政治カード」を中国政府が暗黙の内に切っている事があげられます。2020年、中国はLIB材料である2種類の黒鉛の輸出をスウェーデン向けに非公式に止めました。2015年位から人権問題等で徐々に悪化し始めた中国とスウェーデンの関係は2019年から2020年にかけて大幅に悪化し、中国によるLIB用の2種類の黒鉛のスウェーデンへの輸出は2021年と2022年には完全に消滅しました。中国商務省は公式に輸出禁止令を出していません。しかし多くの中国黒鉛輸出業者は輸出許可が当局から出ない為、スウェーデンに黒鉛を輸出する事が出来ません。中国が世界の天然黒鉛の60%以上と人工黒鉛のほぼ全て供給している事を考えると、黒鉛陽極を中国に依存しているメーカーにとっては一大事です。コロナ後に産業が軌道に乗り始めたスウェーデンにとって、中国政府による輸出の全面禁止は深刻なダメージを与える可能性があります。この問題で実は唯一の公式声明を発表したのは欧州委員会で、今年初めに中国の黒鉛輸出が無い為に「欧州の電池生産に悪影響を及ぼしている」と発表していました。スウェーデン政府もノースボルトも、当初この問題は解決できると考えていたようですが、その目論見は甘く、サプライチェーンの再構築も行えず、価格も中国製に全く歯が立たず、事業そのものが遅延し続けています。ドイツを始め欧州他国も中国には相当気を遣っており、予定している対中国戦略も延期が続いています。中国と関係の良いハンガリー、ポーランド、スロバキアは、電池産業で欧州内のプレゼンスを高めています。この問題は重希土類やソーラーパネルの材料供給にも同じ事が言え、欧州政府は対策の切り札の1つとして「リサイクル」を推しています。華友コバルトやCNGRも同じですが、中国や中国企業の出資先が欧州の中でも独裁や権威主義と呼ばれる国に傾いている事は、抑えておく必要がありそうです。
▶ https://www.economist.com/business/2023/06/22/why-is-china-blocking-graphite-exports-to-sweden
元々欧州のロイターが伝えた記事ですが、投資サイトの多くで拡散されています。それはプライベート・エクイティ(PE)会社の取引額が4年振りの最低水準になっている事です。世界的な景気後退リスクと金利上昇が主な要因としています。PEの取引額は前年同期比で▲63%と大幅な減少となっています。金利の上昇により、資金調達には(担保等の)資産が更に必要になり、加えてインフレによって(買収)対象企業の利益率が減少している事が大幅減の具体的な要因です。しかし会社を売りたい企業は依然として2021年型の評価を期待しています。一部のアナリストはPE会社が投資から(評価損等で)撤退するのが難しくなり、新規株式公開(IPO)市場が不利になった事が景気減速の一因になったと指摘しています。銀行も企業向け融資を減速させている中、現在PE会社から買収される、又はPE会社から資金調達行う企業や新興企業の資金調達環境は可也複雑化しています。欧米のグリーンビジネスの多くの新興企業はPE会社との関わりが多い為、何かのきっかけで倒産や廃業というケースが出てくるかもしれません。取引量の増加は今の金利サイクルと経済サイクルが一巡するまで掛かりそうだ、という見解もあります。
▶ https://www.marketscreener.com/news/latest/Recession-risk-rate-rises-drive-down-private-equity-deal-volumes-to-4-year-low–44185802/
7月に予定されているEU使用済み自動車指令(EU ELV指令)の改定案では、ELVから回収する必要がある部品、再利用できない部品のリストが規制案の一部として採用される予定です。これは今月スイスで行われた国際自動車リサイクル会議で参加者により言及されたものです。改正案では付属書にリサイクル、再利用、再製造の為の部品の取り外し、それらの保管と取扱、汚染の除去、それらの報告が定められる予定です。欧州委員会のELV政策責任者であり、重要原材料(CRM)に関する報告書の著者でもあるジャコ・ユイスマン氏は改定案が「自動車産業の発展を後押しする強力な新しい法的枠組み」である事を強調しています。同氏はリサイクル、再利用、再製造、収集における品質向上の為の規制の6つの重点分野を定めました。
1)より「循環性の高い」な車輛設計、
2)リサイクル材料の使用の義務化、
3)取扱いの向上、
4)EPRを含むガバナンスの改善、
5)ELVと部品の収集能力の向上、
6)対象となる車両の範囲の拡大、が挙げられています。
これらの規制がどこまで実施されるか分かりませんが、全て実施された場合、欧州ではELVはメーカーが管理する事にならざるを得ないと思われます。
▶ https://recyclinginternational.com/car-recycling/new-eu-rules-to-specify-recovered-elv-components/53950/
S&P Global Commodity Insightsは、「ウクライナ戦争が今後何年にもわたって世界の銑鉄貿易を変えるゲームチェンジャーになりうる」というコラムをあげています。戦争により、ウクライナの黒海とアゾフ海の港は、穀物輸出の合意を除き、ウクライナ企業が貿易に利用できなくなりました。伝統的に生産量の殆どを主に黒海経由で輸出していたウクライナの鉄鋼産業は特に悪影響を受けています。マリウポリ地域にある大規模な生産能力の破壊により、鉄鋼の輸出量を戦前の水準に戻すことは現在不可能です。またロシアの月次輸出量は2022年以降、前年の35万~40万トンから23万~28万トンに減少しています。戦前ロシアの銑鉄輸出の約50%を占めていた米国への出荷は、戦争開始後の数か月で事実上停止し、ロシアの銑鉄業者は高炉の一時停止を通じて生産を削減し、供給ルートや体制を変更する事で輸出市場の損失に対処しています。ロシアの銑鉄輸出業者の最も目に見える変化は価格設定です。以前はブラジルの競合他社と同等でしたが、ロシアの工場は現在FOBベースでブラジルの競合他社より100ドル/トンほど下回って販売しています。ウクライナの銑鉄供給は生産能力の損傷によって無期限に抑制され、ロシアが安価で極東や中東への新たな販路を構築しながら輸出量を減らす事で、銑鉄貿易は今後も戦争以前とは全く変わった図式で行われる事になりそうです。
▶ https://www.spglobal.com/commodityinsights/en/market-insights/blogs/metals/062623-game-changer-ukraine-war-to-transform-global-pig-iron-trade-for-years-to-come
スイスに本拠を置くプラスチックのケミカルリサイクルスタートアップ企業が1,380万ドルを調達したと発表しています。この資金はBASF Venture CapitalとWingman Venturesが共同で主導し、Beiersdorf、Infinity Recycling、CIECH Ventures、Angel Invest等の著名な投資家や投資企業が出資しています。同社は現在、年間50トンのPET、またはポリエステルを処理可能なパイロットプラントを運営しています。同社は2020年に設立され、当時から欧州では注目されていました。社員は僅か17人の新興企業ですが、上記以外にも既に様々な資金を調達しています。DePolyは2019 年にVenture Kick Stage 2で優勝し、2020年から2022年に掛けてスイス・スタートアップアワードのTOP100にランクされていました。技術の詳細は外部に公開していませんが、PETやその他のエステルベースのプラスチックを室温で更に非加圧で解重合する新工法と公表されています。創業者はローザンヌ連邦工科大学とチューリッヒ工科大学の卒業生で、この技術を開発した研究者となります。プラスチックのケミカルリサイクルの最大の弱点はマテリアルのハンドリングとエネルギーコストの為、この技術への注目度は過去より可也高いものでした。テクノロジーには資金が集まり易い、という良い例と言えるかも知れません。
▶ https://www.depoly.co/article/seed-funding-round
欧米では様々なソースで報じられていましたが、業績好調の中国の電池及びEVメーカーであるBYDの株式をウォーレン・バフェットのバークシャー・ハサウェイ社が売却し、株式保有率を8.98%まで下げました。BYDは、2022年には、世界最大のプラグインハイブリッド車及び純電気自動車メーカーとなり、合計186万台の自動車を販売し、テスラを上回るペースで成長してきました。今年最初の5ヵ月間で、BYDの販売は前年比で98%も伸びていました。収益性の成長曲線の鈍化を見越したのか、噂されるBYDと政府との関係か、地政学的なものか、又はバフェット氏と彼の代理人との関係なのか、憶測が飛んでいます。儲からない株を手放すという事は無いので、中国のEVの本当の内情を探る事は、重要かも知れません。
▶ https://www.benzinga.com/markets/asia/23/06/33018193/are-warren-buffett-and-charlie-munger-at-odds-berkshires-byd-sell-off-leaves-investors-guessing
欧州会計検査院(ECA)は欧州がバッテリー競争で負ける可能性があると警告を出しました。原材料とエネルギー価格の上昇により、2020年末時点でバッテリーパックのコストが、それ以前に想定した計画額の2倍以上となっている事実を指摘しています。ECAは新しいレポートを発表し、大幅な資金不足の為に欧州は2030年迄に1990年より炭素排出量を55%削減するという目標を達成できない可能性がある、と警告しています。ECAは期待される民間部門からの資金が決定的に不足している事を特に懸念しています。この報告書では「2030年のEU目標が行動に移されるという実態は、これまでのところほとんど見つかっていない」と指摘し、「2030年の目標を達成する為に十分な資金が利用可能になるという情報もない」と記載しています。EUは2027年迄の予算の30%、約870億ユーロを気候変動目標の達成に充てています。しかしこの額は約1兆ユーロと推定される2030年の目標を達成する為に必要な総投資額の10%にも満たず、残りは国家予算か民間部門の資金から捻出する必要があります。このような膨大な額の資金が投資される兆候はありません。世界で一番早く内燃機関乗用車を禁止する事を発表した欧州ですが、EVの主要部品であるバッテリーで現実的には競争力を持てず、炭素削減の目標には資金が足りないという現実が浮き彫りになっています。実際に脱炭素を行う為にどれ程のコストが掛かり資金を捻出できるか、これはあらゆる意味で良い教訓と言えます。欧州の気候変動対策への資金不足と資金を捻出する為の新しい制度への批判はこの問題をより複雑にしており、左翼系のEuraciveでさえ「欧州のグリーン産業政策の予想通りの失敗」と題したコラム上げる所まで来ています。
▶ https://www.eca.europa.eu/en/news/NEWS-SR-2023-18
▶ https://www.euractiv.com/section/energy-environment/news/the-predictable-flop-of-europes-green-industrial-policy/
米国エネルギー省(DOE)のエネルギー高等研究計画局(ARPA-E)は、鉄鋼の脱炭素化の為に最大3,500万ドルの資金提供を行う事を発表しました。鉄鋼製品の輸入削減に加え、鉄鋼製造における炭素排出量削減を目的としています。DOEは鉱石から鉄鋼への革新(ROSIE:Revolutionizing Ore to Steel to Impact Emissions)プログラムを実施しており、プログラムには製鉄プロセスからの温室効果ガス (GHG) 排出ゼロや、鉄鋼製品1トン当たりの超低ライフサイクルGHG排出量等の指標が含まれています。
▶ https://arpa-e.energy.gov/news-and-media/press-releases/us-department-energy-announces-35-million-decarbonize-domestic-iron-steel-production
中国のCATLは、今年夏にハンガリーに欧州では最大規模となるLIB工場を建設開始予定です。そのCATLが欧州でバッテリーのリサイクルに進出する為に、現在パートナーとなる企業との交渉を続けている事をBloomberg UKが伝えています。CATLは、世界最大の電池メーカーとして、欧州で複数の電池工場を建設する可能性を何度か言及してきました。しかし、パートナーと直接リサイクルに乗り出すという事は欧州では初の事です。
また上記とは別に中国政府が7兆ドル規模(約900兆円)という膨大な資金規模のエネルギー転換政策を計画しているようで、バッテリーの「ゴールドラッシュ」が巻き起こるとFTが今日伝えています。インド政府も2030年迄に26億3000万ドル(約3000億円規模)の電池製造への補助金を提供する政策の草案を準備している、という事です。これらのニュースを受け、海外の鉱山関係のサイトはリチウムの供給問題について報じ始めています。
▶ https://www.reuters.com/world/india/india-gears-up-multibillion-dollar-battery-subsidies-ft-2023-06-28/
世界中の金属市場の倉庫で銅在庫が急激に減少しているという不可解な事が起こっています。少し前からこの現象があり、金属専門のサイトで少しずつニュースになっていましたが、今回ロイターが特別コラムで詳細を説明しています。LME、CME、ShFE(上海先物取引所)に登録されている銅在庫の合計は、先週末時点で合計16万5000トンでした。世界の銅の取引所在庫は、年初から4万5500トン減少しており、2008年以来の最低水準となっています。特に欧米での生産活動が停滞している現在、LMEの在庫の減少は不可解と言えます。取引所の銅在庫の減少はLMEだけでなく世界的に起きています。
コラムでは明快な結論を出せていませんが、どうやら中国が銅の純輸入と生産を増やしている事が原因のようです。中国は5月に過去最高となる256万トンの精鉱を輸入し、過去最高となる110万トンの精銅を生産しています。中国への銅の流入量も5月は27万6,000トンに増加し、月間合計では1月以来最高となっています。中国の輸入意欲を示す指標として注目されている陽山銅プレミアム価格は5月から2倍以上に急上昇しています。中国は4月と5月に3万トン近くの銅を「輸入」しましたが、恐らく有料契約に基づいて無税輸出の対象となった銅が国内市場に再び戻された事を示していると考えられます。最近、鉱山投資家で億万長者のロバート・フリードランド(Robert Friedland)氏はBloombergのインタビューで銅鉱山業界は「需要の加速」に先立って供給を増やす事が出来ていない為、銅市場はクラッシュに向かっている。価格が10倍になる可能性さえあると警告したばかりでした。銅鉱山開発の遅れと需要の増加は以前から言われてきた事ですが、中国が国内に大量の銅を供給し始めた事は不気味です。銅が大幅な供給問題に直面すると言われている2025年からの国際動向を先取りしているのかも知れません(特に対米戦略で)。銅に関しては直近の市場だけでなく、鉱山開発や鉱山投資まで遡り、世界的な供給構造を見る事も重要な時代になったのかも知れません。既にその流れは欧米で始まっています。
▶ https://www.reuters.com/markets/commodities/global-exchange-copper-stocks-sink-15-year-lows-2023-06-27/
先週、チェコの環境大臣ペトル・フラディク氏は、EU環境理事会で、リサイクル材料から作られた製品に対し、より低い付加価値税(VAT:日本の消費税に相当)を導入するべきという提案を行いました。フラディク氏は、この方法により最終顧客がリサイクル材で作られた製品をより購入する事になると考えています。チェコの内閣は既にこのような政策への支持を表明しています。この提案に対し、欧州リサイクル産業連盟(EuRIC)はプレスリリースを発行し「強い支持」を表明しています。欧州の場合、VATが19-23%と非常に高い税率なので効果はあると思われます。しかしダウングレードしない限り、バージン材より再生材の方が、価格が高い場合が多いのが現実です。その為、製品そのものの価格が下げられるかという問題の方が大きい可能性があります。欧州では同じ食品グレードに対応できる再生PETはバージンPETの価格の1.5倍程度しますし、鉄スクラップから超ハイテン鋼は作れないので、そもそも作れない製品も多いと言えます。
▶ https://euric.org/resource-hub/press-releases-statements/press-release-euric-strongly-supports-the-czech-proposal-to-lower-vat-for-products-made-of-recycled-materials
欧州会計検査院は、欧州が2030年に目標とする温室効果ガス排出量の削減を達成する事が資金的に困難であると警告を発しました。同じく英国でも気候変動委員会が英国の目標とする2030年の温室効果ガスの排出量(1990年レベルから68%削減)の達成が困難である報告書を出しています。目標達成の為には、非電力部門の排出削減率を年間1.2%から4.7%、約4倍にする必要があると述べています。英国の温室効果ガス排出量は1990年の水準から46%減少していますが、英国気候変動委員会は、英国が気候変動対策における世界的なリーダーの地位を失ったと結論付けています。更に米国のインフレ削減法やEUのグリーンディール産業計画に対する英国独自の政策が遅れており、今やグリーン投資を英国から遠ざける強力な要因となっている、としています。
▶ https://www.theccc.org.uk/2023/06/28/better-transparency-is-no-substitute-for-real-delivery/
英国の政治家が、英国の鉄鋼業に対するグリーン投資政策の推進を強調しています。今後、鉄鋼関連製品の保護貿易に繋がる可能性があります。英国はG7の中で政府が防衛契約に国産鉄鋼の使用を規定していない唯一の国であり、G20の中で鉄鋼生産が減少している唯一の国で、しかも英国の鉄鋼生産における電力コストはドイツよりも62%も高い為、鉄鋼業への投資インセンティブがありません。今週、英国の鉄鋼業界団体は、EUが炭素国境調整メカニズムを導入した場合、その高い炭素コストから、英国の鉄鋼市場は「破壊」される可能性があり、英国政府の措置がなければ、毎年2,300万トンの非EU国で生産された鉄鋼が英国市場に流入する可能性がある、と警告を発しています。英国の労働党は30億ポンドのグリーン鉄鋼計画を発表していますが、現在の政権は動いていません。欧州鉄鋼生産者協会(EUROFER)は、鉄スクラップを「EUの重要な原材料」にするように強力なロビー活動を続けていますが、上記のような動きから、意外と英国の方が早く輸出制限が始まるかも知れません。
▶ https://eandt.theiet.org/content/articles/2023/06/uk-must-invest-in-green-steel-and-protect-its-industry-ministers-warned/
現時点ではまだ小規模ですが、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリアでベンチャーキャピタルが投資規模を拡大している事が伝えられています。エンジェル投資家の中には、シード投資の肥沃な土壌と見ている人も多くいます。米国や西欧から見ると規模は小さいように見えますが、これらの「未熟な」市場は、既にポーランドや西欧以外の欧州諸国に徐々に似てきました。同地域へのベンチャーキャピタル投資は2022年に過去最高に達し、特に情報通信技術がその投資の79%を占めました。金融サービスプロバイダーIban FirstのCEOは「恐らく今後3-4年以内に、この地域には大きな変化が起こるだろう。その時点で、外部の投資家はこの地域と西欧との比較の仕方を変えるだろう」と述べ、今後の投資機会の拡大を予測しています。
▶ https://www.euractiv.com/section/economy-jobs/news/venture-capital-in-hungary-romania-bulgaria-small-but-growing/