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NEWSCONの気になるNEWS(2023年5月第3週)

国際鉄筋輸出生産者協会(IREPAS)が5月7日~9日まで行った第88回の会合の簡易議事録を掲載しています。注目すべきは、原材料サプライヤー委員会のイェンス・ビョークマン委員長の発言で「EUの鉄鋼生産は、掲げられたグリーンスチール生産の目標値を達成する為、5年以内に欧州域内で発生するスクラップの大部分をEUメーカーが消費する事になる」と指摘した事です。鉄スクラップにとって重要なトルコに関しては、大統領選挙後に動きがある可能性を示唆しつつ、今後数ヵ月間は「需要の鈍化」が予想される、と述べています。またオマーンやエジプト産の鉄筋とも価格競争が激化しており、3月31日の時点で、トルコがEUの鉄筋輸入枠の5%未満しか使用していないという事実にも触れています。IREPASの会長は、トルコが伝統的な輸出市場とその主導的地位を失っていると述べています。エジプト、インドネシア等、かつてトルコが輸出していた国々は自らが輸出国になっており、トルコの輸出で抱える貿易問題にも触れ、トルコが鉄筋をアメリカ、カナダ、EUに売るのは難しく、シンガポール、香港に売るのはほぼ不可能との見解を示しています。世界最大の鉄スクラップ輸入国であり、鉄スクラップ国際価格指標の中心にあったトルコの地位も、徐々に変わりつつある事が伝えられた、内容のある議事録です。
https://www.irepas.com/?p=5819

欧州委員会は「汚染者負担」の原則について、市民や利害関係者と協議する為、公開協議を開始しました。これは欧州委員会が2年前に発表した「公害ゼロ行動計画」の一環で、将来的な環境政策における「汚染者負担」の原則をより適切に実施する為に行われます。「汚染者負担の原則」はEU連合の条約Functioning of the European Unionの第191条第2項に明記されているものです。しかし2021年に欧州会計監査院が発行した報告書では「汚染者負担の原則は適用されてはいるが、実施は不完全である」と結論付けています。これは本来汚染者にある原状復帰や浄化の費用が国民の税金によって支払われており、公的資金への負荷が重くなっている事が原因でした。汚染者負担の原則が厳格に適用された場合、企業の付保を含めた負担が大きくなります。その事で汚染源を根本的に減らすという事が目論見です。欧州委員会は、企業や自治体が汚染を予防、管理、是正する費用を確実に負担する為の政策に向け動いており、規制はより厳格化に向かうと見られています。
https://environment.ec.europa.eu/news/zero-pollution-commission-consults-citizens-and-stakeholders-polluter-pays-principle-2023-05-12_en

5月11日に欧州議会は製品のラベル表示と耐久性を改善し、誤解を招く表示を阻止するための法案を賛成多数で可決しています。この法案はリサイクル業界にも関係するものです。この法案の目的は、企業が自社製品に耐久性と持続可能性を追求する事を促し、消費者が環境に優しい製品を選択できるようラベル表示を見直すものです。また誤解を招く広告やグリーンウォッシングを禁止する事も含まれています。詳細な証拠が伴わない場合には「環境に優しい」「自然」「生分解性」「気候中立」「エコ」等の用語を禁止します。更にカーボン・オフセット制度のみに基づくグリーンの主張を禁止することも目的としています。製品の寿命を制限する、製品の早期故障に繋がる設計を禁止し、メーカーは他社製の消耗品、スペアパーツ、または付属品(充電器やインクカートリッジ等)と一緒に使用される製品の機能の制限を規制します(つまり他社製の消耗品やスペアパーツを利用し易くする)。
https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20230505IPR85011/parliament-backs-new-rules-for-sustainable-durable-products-and-no-greenwashing

5月12日に2つのLIBメーカーが欧州での投資を発表しています。1つはスウェーデンのノースボルトで、詳細は明かしていませんが、ドイツに約30~50億ユーロを投資します。また欧州のグリーン産業計画の一環としてドイツ政府から約5億ユーロの補助金を受ける可能性も報道されています。2026年には自動車メーカーに納入を開始する予定で、生産能力は最大60ギガワット時まで増強する予定です。EV約100万台に供給可能な規模に能増する計画です。ノースボルトは、独シュレースヴィヒ・ホルシュタイン州と2022年3月に電池工場を設立する覚書に署名しましたが、エネルギー高や米国の有利な補助金制度により計画発表が遅れていました。欧州資本で家電を含めて電池メーカーとしては全くの新興企業の為、果たして本当に量産できるのかは未知数です。
もう1つは、台湾のプロロージウム社(ProLogium)で、初の海外EV用バッテリー工場をフランスに立てる事を発表しています。生産開始は2026年の予定です。誘致に参加したドイツやオランダに勝ったフランスに有利に働いたのは、価格競争力のある非化石電力で、原子力発電だけでなく洋上風力発電所や太陽光発電によっても供給電力が生産される事です。フランス政府はEV生産時に要求される低炭素基準を満たす車両に5,000ユーロの現金奨励金を条件付けする事で、欧州製以外のEVを締め出し、需要を喚起する事を計画しています。
https://www.reuters.com/technology/northvolt-build-multi-billion-euro-battery-plant-germany-2023-05-12/
https://www.reuters.com/business/france-bags-battery-gigafactory-with-aggressive-lobbying-incentives-2023-05-11/

5月12日にストックホルムでEU外相会議が開催されています。この会議用に用意された対中戦略に関する内部文章が話題になっています。13日にはインド太平洋と欧州諸国から60人の閣僚がストックホルムに集まり、南シナ海の安全保障と台湾問題を議論する予定です。しかし、この会議に中国と台湾は出席しません。そのような過程での内部文章のリークという事で大きな話題となっています。現在、米国が中国に対してよりタカ派的な姿勢を維持している一方で、欧州は中国に対する統一的なアプローチに合意していません。「中国との関係の再構築、中国との関与、中国との競争」と題された内部文書では、EUの「リスク回避」戦略を表明しており、中国の影響力拡大に伴うリスクの軽減と、中国への過剰依存の削減を加速するよう、求めています。また対中戦略は、中国が欧州にどのように対応するかによって左右される、と言及しています。同文章では中国に対する政策変更が必要と認めつつも、これ以上疎遠になる事は出来ない立場を取っています。重要な本音の1つは、EUに輸入される先端半導体の約90%が台湾産であり、台湾海峡での有事で受けるEUの打撃は計り知れない、という背景があります。この内部文章では、中国は経済成長の減速と人口動態の変化により「国内で前例のない経済的・政治的課題に直面する可能性が高い」とし、中国の国内発展についてはネガティブな見通しを立てています。11日には(ドイツの)副首相や地方省庁の反対を押し切り、物議を醸している独ハンブルク港への中国投資を承認した独ショルツ首相に対し、ドイツ政府閣内からも「対ロシアにおける致命的な失敗から何も学んでいない対外経済政策」と批判されていますが、中国依存にどっぷりと浸かったドイツやフランスは、舵取りが出来ないというのが現状の様です。
https://www.politico.eu/article/china-xi-jinping-taiwan-beijing-brussels-tells-eu-capitals/

インドの鉄鋼企業がEU炭素国境調整メカニズム(国境炭素税:CBAM)にどのように対応しているのかを紹介します。2023年10月1日より段階的に運用が始まるCBAMは、インドにとって当初から大きな課題でした。鉄鋼メーカーのJSW Steelは2030年迄に使用電力の最大60%を再生可能エネルギーから供給する事を目指し、Tata Steelも2030年迄に使用電力100%を再生可能エネルギーから調達する計画です。自家用発電への投資に加え、民間の再生可能エネルギー生産者との供給契約を推進しています。アルセロールミッタルはアンドラプラデシュ州で989MWの風力と太陽光のハイブリッド再生可能エネルギープロジェクトを開発しています。グジャラート州の製鉄所でこの電力を利用し、炭素排出量を年間150万トン削減する予定です。一部のインド企業は「内部炭素価格」を自主的に計算しています。Tata Steel、JSW Steel、Sanyo Special Steel、Hindalco Industriesの各社は既に「内部炭素価格」を導入する事を宣言しており、これらの情報は炭素排出量を算定・報告する為に用意される事になります。この点でインドの大手の動きは早いです。
https://www.bqprime.com/opinion/how-indian-firms-should-deal-with-the-european-carbon-border-levy

LMEのアルミ在庫(倉庫使用)の半数がロシア産になっている事が伝えられています。これは先週AG Metal Minerが報じたもので、ロシア産を自主制裁する企業が増えた事と米国によるロシア産アルミへの200%関税の開始で1月末の時点でLMEのロシア産一次アルミニウムの倉庫利用が42%、2月に46%、3月には53%に達しています。LMEは2022年11月にロシア産アルミに関してはいかなる制限も課さないことを選択しました。専門機関は当時LMEが各国の規制・制裁にも関わらずロシア産を取り扱う事で、ロシア産の在庫増のリスクが高まると指摘していました。しかしLMEは、それらのリスクは誇張されていると見なしていました。結果として現実となりました。LMEはロシア産の金属を制限する事で、それらが上海市場に流れて国際的な地位を失う事を最も懸念していました。在庫増による価格への影響もあり、今後もLMEが国際市場価格の指標を正確に反映できるのか、戦争の影響がここにも出ています。
https://oilprice.com/Metals/Commodities/Russian-Supply-Glut-Forces-LME-Aluminum-Prices-Lower.html

国際エネルギー機関(IEA)が今年末に開催されるCOP28についての見解を載せています。現時点で事業活動からの排出削減計画を発表している石油・ガス会社が生産する石油、ガスは世界の生産量の半分にも満たない。半分以上を生産する企業群は未だに排出削減計画を発表していません。更に発表された公約の多くは、曖昧であるか、目標を達成する為の明確な戦略に裏付けられていません。IEAはCOP28に先立ち、石油・ガス生産者がネットゼロへの移行に向けた道筋を示す特別報告書を公表する予定です。石油・ガス業界には2030年迄に排出量を60%削減する為の技術、資金、ノウハウがあり、またそれを実施する責任があります。COP28は石油・ガス業界の気候変動に対する取り組みにとって正念場となります。しかし石油・ガス業界はCOP27において、COP26を上回る大量の人数の業界人をロビー活動の為に送り込んでおり、今回の開催地がドバイという事もあり、果たしてどのような成果が上げられるのか、懸念も残されています。
https://www.iea.org/commentaries/cop28-is-a-moment-of-truth-for-the-oil-and-gas-industry-s-efforts-on-climate

中国人民銀行が公開市場で1,250億元の1年中期貸出制度(MLF)オペを実施し、市場に流動性を供給しています。1年物MLF入札金利は2.75%のまま、9ヶ月連続で据え置いています。市場は景気回復を支援する為に、今後数ヵ月間の金融緩和は避けられないか、その可能性が高い事を予想しています。人民銀行は市場金利が急速に低下しているものの、利下げが実施出来るかどうかは依然として景気回復の進捗状況に左右される、と判断しています。ここ数ヵ月、主要金属の価格と中国の景気が連動している動きを見せている為、中国景気の実態を推測する情報の1つとして、流動性の供給と金利はウォッチする必要がありそうです。
https://www.reuters.com/markets/rates-bonds/china-cbank-rolls-over-medium-term-policy-loans-rate-unchanged-2023-05-15/

ベトナムのEVメーカーVin Fastは、特別買収目的会社(SPAC)との合併で米国に上場すると発表しました。Black Spade Acquisition Co (BSAQ)との合併により上場するもので、新会社の企業価値は約270億ドルになります。Vin FastのグローバルCEOは、同社が国際市場に迅速に参入できる能力をすでに有しており、Black Spadeとの提携による米国での上場は、世界展開に向けた資金調達手段である事を強調しています。Vin Fastの年間EV生産能力は約30万台です。
https://vinfastauto.us/newsroom/press-release/vinfast-to-publicly-list-through-business-combination-with-black-spade

欧州の経済指標と予測が発表されています。欧州委員会が発表した経済予測ではEU27ヶ国の2023年の成長率は1%で、従来予想の0.8%から若干上方に修正されました。ユーロ圏加盟20ヶ国は1.1%、フランスの2023年は0.7%の成長で、ドイツ経済は0.2%に留まります。しかしユーロ圏のインフレ率は依然コア・インフレが高止まりしている事から2023年に5.8%、2024年に2.8%と予測してます。欧州委員会は景気の下振れリスクが高まっている事を認め、拡大する財政政策を継続する事で、インフレが加速する可能性を示唆しています。またイングランド銀行によると、英国の2023年の成長率は僅か0.25%で、2024年も0.75%に留まります。ドイツに関しては、欧州委員会と経済研究機関の見解が若干異なっています。ドイツで最も有名な経済研究機関であるZEWが発表したドイツ景況感指数の内、経済センチメントは予想のマイナス5.0%から実態はマイナス10.7へと大幅に低下し、現況指数もマイナス32.5からマイナス34.8に低下しました。金融専門家はドイツ経済が今後6ヵ月で更に悪化すると予想しています。欧州最大であるドイツ経済は穏やかな景気後退に陥る可能性が言及されています。
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/IP_23_2723
https://www.zew.de/en/press/latest-press-releases/expectations-decline-sharply

詳細は明らかになっていませんが、トルコ政府は国による炭素クレジットプログラムを設立する計画がある事を発表しています。同国は2053年にネットゼロになる事を計画していますが、その為に炭素クレジットの供給を増やす事が必要で、国家的なプログラムに着手する事が報じられています。また同時に炭素取引市場を計画している事も報じられています。2023年10月に開始され、移行期間を経て2026年から制度が法的に運用されるEU炭素国境調整メカニズム(CBAM)に対し、トルコは早急に対応する必要があり、特に鉄鋼業界からも複数の要望が出ていました。
https://carbon-pulse.com/203314/

複数の海外金属サイトでプラチナの大幅な不足の予測が出ています。これは世界プラチナ投資評議会が発表した予測に基づいたもので、今年の世界のプラチナ需要は昨年比28%も増加する一方で、供給は昨年比で1%減少する事から、ここ数年で最大の供給不足となる事が示された為です。同じ白金類であるプラチナとパラジウムは自動車の廃棄ガスの浄化用触媒に利用されています。長年パラジウムは旺盛な需要と供給不足により価格が上昇してきました。一方で消費の低迷と供給過剰からプラチナの価格は低く抑えられてきました。世界プラチナ投資評議会は、今年のプラチナ市場は少なくとも2014年以来最大となる98万3,000オンスの不足を予測しています。自動車メーカーは現在コスト削減の為にパラジウムからプラチナへの移行を進めており、プラチナを大量に使用する大型車の生産が増加し、自動車メーカーの使用量が11%増加する事を予測しています。
https://platinuminvestment.com/

調査会社のInsight Ace Analyticgが発行した「世界のリチウムイオン電池リサイクル市場規模、シェア及び傾向分析」レポートの概要がDigital Journalのサイトに掲載されています。概要には世界で指標となる主なLIBリサイクル企業の名前が記載されています。地域の傾向として、アジア太平洋地域のリサイクル市場は収益ベースで最大のシェアを持つ地域になり、近い将来、年率での成長率が最も高い地域となります。次に北米地域がエネルギー転換による貯蔵用バッテリーの需要増と政府の補助金により伸びる地域とされています。
https://www.digitaljournal.com/pr/news/insightace-analytic/lithium-ion-battery-recycling-market-know-the-latest-innovations-in-the-industry

欧州の生の実態を調査するジャーナリスト達によるサイトInvestigate Europeによると、欧州の廃棄物輸送規則は犯罪者に寛容で、監視当局は実際には能力不足で不法廃棄物取引の追跡に苦戦している現実が取り上げられています。欧州には廃棄物取引の闇市場が存在し、コストメリットと当局による違反者に対する証拠収集能力の欠如が闇市場を大きくしています。西欧諸国の違法廃棄物処分業者が支払う金額はポーランド向けで1トン当たり30ユーロから50ユーロの間です。同じものをドイツのリサイクル施設で合法的に処理した場合、1トンあたり300ユーロの費用が掛かる可能性があります。英国で廃棄物を埋め立て地に投棄すると1トン当たりの処理費用は113ユーロです。この費用は違法サイトが蔓延しているポーランド、ルーマニア、ブルガリア、クロアチアで埋め立てる場合の2倍以上です。つまりポーランドやルーマニアで違法に埋立をする事でコストを大幅に削減する事ができます。東欧は不法廃棄物投棄のホットスポットで、例えばポーランドでは2018年だけでも130以上の埋立地で野焼き処理が行われました。しかし放火で有罪判決を受けた人は僅か10人未満でした。欧州委員会の循環経済総局の元上級専門家は環境犯罪、特にプラスチック廃棄物に関する欧州の法律が犯罪者に寛大な事を認めています。法律が犯罪の立証を困難にしている為、ほとんどの場合において闇市場の違法行為者は法廷で起訴されない事にも触れています。また多くの加盟国では検査員が不足しており、更に検査は主に薬物やアルコールに焦点が当てられており、廃棄物そのものが違法かどうかに焦点が当てられていない実態が紹介されています。現在EU廃棄物輸送指令の改訂案では、大幅な域外輸出の規制強化を提示していますが、域内は逆に移動しやすくするという建付けになっています。このような事実もあり、包装及び包装廃棄物指令の改訂では、生産者の責任範囲の拡大とリサイクルコンテンツの閾値を導入しています。最近インドの高官がリサイクルの会議で欧州には立派な法律があるが、実態はザルであるという趣旨の発言をしていました。
https://www.investigate-europe.eu/en/2023/authorities-struggle-to-track-europes-illegal-waste-trade/

プラスチック廃棄物削減の国際条約策定に向けた第2回交渉を前に、国連環境計画(UNEP)が、プラスチック廃棄物汚染を削減する政策方針について発表しました。プラスチックにおける循環型経済を達成する為には、3つの主要な市場の変化が必要、としています。それらは、再利用、リサイクル、包装材の代替素材への転換です。UNEPは、詰め替えボトル システムやデポジット返還制度を政府が推進することで、2040年迄にプラスチック廃棄物の30%を削減できる可能性があると推定しています。またリサイクルが安定して収益性の高い事業となる事で化石燃料への補助金が廃止されれば、更に削減率を20%高める可能性があり、プラスチックを堆肥化可能な代替材に置き換えることで更に17%削減できる、としています。交渉に当たってはノルウェー、ルワンダ、ニュージーランド、欧州連合を主体とするタカ派国は、バージンプラスチックの生産削減や化石燃料への補助金の廃止目標を設定する「トップダウンアプローチ」を求めています。また拡大生産者責任の必要最小限の規則についても検討される見込みです。条約交渉は5月29日から6月2日までパリで行われます。トップダウンアプローチがより多く採用された場合、あらゆる経済活動、企業活動に影響が及ぶと考えられています。
https://www.unep.org/news-and-stories/press-release/un-roadmap-outlines-solutions-cut-global-plastic-pollution

Mysteel Globalが中国の電池材料市場の近況を掲載しています。今後短期的に硫酸ニッケル価格は下落、硫酸コバルトの価格は底打ちから上昇に転じる、リチウム化合物の価格はスポット市場の復活もあり高水準で安定の可能性がり、三元前駆体の価格は数日以内に下落、三元陰極の価格も下落、リン酸鉄リチウム(LFP)は在庫削減が進んでおりメーカーが積極的に材料購入に動いていない為下落、との予測です。LFPに関しては、工場側の予想とスポット市場の価格に大きな乖離があり、製品需要自体は良好である事が示されています。
https://www.mysteel.net/news/all/5038991-a-glance-of-china-lithium-ion-battery-materials-week-3-may-2023

グリーン水素、肥料、電子機器、大型貨物車輌の排ガス浄化装置などに必要不可欠で、今後も需要が増す白金族元素(PGM)ですが、産出国が南アフリカ、ロシア、アメリカ、カナダ、ジンバブエの5ヵ国にほぼ限られており、特にパラジウムはロシアが世界最大の在庫数量(供給シェア40%程度)を持つ国と言われています。地政学的な影響もあり、リサイクルへの投資が継続しています。貴金属製品製造と白金族元素の大手リサイクラーであるドイツHeraeus Precious Metalsが全世界で約3億ユーロ(450億円)のリサイクル能力拡張計画を発表し、その内3,500万ユーロ(50億円)をドイツ工場のリサイクル能力増強に投資する事を発表しています。この大型プロジェクトに関してHeraeusはPGMの入手可能性が限られている事と、抽出と加工時のCO2排出量が多い為、リサイクル能力を拡張する事で使用済み製品からの回収量を増やす事が不可欠と考えています。更にリサイクル原料の生産は鉱山から一次原料を生産するよりも、二酸化炭素排出量を最大98%削減する事ができる事を挙げています。PGMは既にEU重要な原材料法のリストに入っており、PGMが含まれる製品はこの法律が制定されると各国で回収する義務が生じます。また基板を含む電子機器廃棄物は2025年から発効するバーゼル条約の改定により付属書II(特別な考慮が必要な廃棄物)に含まれる事になる為、欧州では域外輸出が制限されます。欧州の製錬メーカーや貴金属リサイクラーが相次いで投資を加速している背景には、こうした複数の囲い込み制度が背景にあります。
https://www.heraeus.com/en/hpm/company/hpm_news/2023_hpm_news/35_million_euros_in_the_expansion_of_precious_metals_recycling.html

16日、17日の2日間で開催されている欧州鉄鋼市場会議の内容の一部がKallanishに掲載されています。欧州で特徴的なのは、昨年後半から始まった代理店等の流通サプライチェーンでの大幅な在庫削減です。この傾向は現在も続いており、来年に掛けても継続すると予測されています。しかし需要家による鉄鋼の実質消費は今年は前年比で0.3%増加すると予想しています。特に自動車産業の需要が回復基調にある為です。現在、流通在庫が足りず、生産も様々な要因で制約がある為に問題が生じている状況を説明しています。欧州ではエネルギー価格の高騰、金利の上昇、需要家の減速により流通在庫を減らす動きが昨年後半より加速しました。その為、需要が回復しても直ぐに対応できず、また生産側も高炉の休止や圧延ラインの一時停止を行っている事で対応に限界があります。欧州鉄鋼製造者協会(EUROFER)は今年の欧州の鉄鋼消費量が前年比で1%減少すると見込んでいますが、これは流通業者が在庫を減らしている為で最終需要家の需要は僅かながら回復傾向にあります。この需給ギャップにより製品価格は上昇する可能性がありますが、必ずしも生産側が原材料を高値で買う動機にはならず、製品価格と原料との間の連動にズレが出そうです。
https://www.kallanish.com/en/news/steel/market-reports/article-details/european-apparent-steel-demand-to-remain-below-real-consumption-kse-0523/

インドネシアのニッケルの様に多くの金属資源がコモディティから国家による戦略物資に変わっています。現在物議を醸しているチリのリチウム権益の国有化に関し、mining.comがチリの鉱業大臣に独占インタビューした内容が記載されています。リチウム権益の国有化は政策ではなく「戦略」である事が明言されています。16日チリ政府は「Lithium and Salt Flats(リチウムと塩原)」委員会を立ち上げました。これはリチウム開発に参加する様々な省庁や公共団体、地方自治体を調整し、技術諮問機関としても機能する委員会です。現在チリでリチウムの生産を認可されているのはSQMとAlbemarleの2社だけです。場所もアタカマ塩原に限定されています。チリ政府はアタカマ塩原を含め既に確認されている18の塩原の一部、又はその全てで生産を拡大する意向です。アタカマ塩原以外での開発には他の国営鉱山企業であるEnamiとCodelcoが主体となり、選択的に(海外企業との)協業を行う計画です。既に中国やカナダを含む約50の利害関係者がチリ当局に事業参加を打診しています。アナリストによると、このチリの国営化戦略は海外からの投資にとってプラスに働くと見ています。チリが早急に海外投資を受け入れ開発を進展させない場合、現在世界第2位の生産大国の地位が2030年には中国、豪州、アルゼンチンに次ぐ第4位に転落すると予測しています。インドネシアは大きな内需と製品輸出市場のある中国が膨大な投資をしてニッケル権益を確立していきましたが、チリは欧米と中国との対決の場となりそうです。
https://www.mining.com/chile-to-negotiate-with-lithium-partners-on-case-by-case-basis-minister/

欧州委員会は1968年の関税同盟の創設以来最も野心的なEU関税同盟改革案を発表しています。目的は関税収入を増やす違法な輸入の撲滅、電子商取引に対応した関税システムの確立、EU加盟国の税関運用を統一する、という4点となります。またEU VAT 指令を変更する事も計画しています。今まで悪用が指摘され、年間数億個以上が対象となっている「150ユーロ未満の商品輸入」は関税免除規定が廃止されます。数百を超える関税カテゴリーを4つに縮小し、小口荷物の関税の計算を容易にすると共に10億件余りの電子商取引での購入品の管理を強化します。これらを達成する為にEU加盟国で運用出来る包括的な関税制度を採用し、EU税関データハブ(プラットフォーム)を新設します。それにより「関税のワンストップショップ」を実現します。ワンストップショップ化により企業は複数のEU加盟国で輸入を行っている場合でも、個別に対応する必要がなくなります。更に「Trust & Check」Traders(トラスト&チェック・トレーダー)スキームを採用します。税関当局は、商品の移動を追跡する企業の電子システムへのアクセスが許可されます。その見返りとして企業は税関当局との協議を経ず、独自に商品を移動し、関税の支払いも延期する事が出来るようになります。この提案は今後10~15年以内に展開される予定です。欧州委員会はEU関税局の新しい規制、EU税関データハブ、電子商取引の新しい規則を先ず2028年に施行する事を計画しています。新規則の評価を2035年に行い、その後2038年には全ての貿易業者にEU税関データハブの使用が義務付けられる可能性があります。これは欧州委員会が言うように、世界的にもかつてないレベルの大がかりな関税改革と言えます。スクラップにどのような影響が出るかは未知数ですが、閾値の管理がより厳格化され、トレサビに関する当局の権限は増す事になると思われます。
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_23_2643

膨大な量の鉄スクラップが生まれる可能性のあるニュースです。世界最大の海運組織BIMCOが発表した最新分析では、予測を上回る大量のスクラップが船舶解体から出ると予測しています。これはグリーン規制が強化された為、老朽化した大量の商船が雪崩を打って解体に向かう為です。BIMCOは貿易船の4分の1以上に相当する総重量6億トン以上、15,000隻以上の船舶が、2032年迄にリサイクルされると予測しており、これは過去10年間に比較し2倍の量です。過去10年間で船舶の載貨重量にして2億8500万トン、7,780隻が解体リサイクルされました。リサイクルされた60%は1990年代に建設された船舶です。今後10年間は2000年代に建造された船舶が順次リサイクルされます。そして2000年代は世界の船舶数が劇的に増加した時期です。歴史的にはバルク船、タンカー、コンテナ船の載貨重量容量の約50%が船齢25年迄にリサイクルされ、船齢30~35年迄に90%がリサイクルされています。このリサイクルパターンを現在取引されている船舶に適用すると、今後10年間のスクラップ船舶数が15,000 隻になる事になります。また国際的な規制がますます厳しくなっている為、多くの古い船舶が通常より早くリサイクルされる事が予想されています。船舶リサイクルの大国のインドとトルコは電炉シェアが高い国です。船舶リサイクルの世界最大のシェアはバングラディッシュが53%で、続いてインド、パキスタン、トルコの順となっています。これら上位4カ国は過去5年間に載貨重量の96%、船舶の77%をリサイクルしています。この量は鉄スクラップの国際流通にも影響があると思われます。
https://www.bimco.org/news-and-trends/market-reports/shipping-number-of-the-week/20230516-snow

スイスの世界気象機関(WMO)がプレスリリースを出しています。今後5年間で温室効果ガスとエルニーニョ現象の影響により、地球の気温が記録的な水準にまで上昇する可能性を警告しています。2027年迄に地表の年間平均気温は少なくとも1年間、産業革命前の水準より1.5℃以上高くなる可能性が66%、今後5年間の少なくとも1年、又は5年間全体を通じて、観測史上最高の気温になる可能性は98%と報告しています。エルニーニョは今年12月から少なくとも2024年2月まで発生する可能性が高いと見られています。エルニーニョの発生により、インドネシア、アマゾン、中米の一部とオーストラリアの一部で降雨量が減少する可能性があります。また北極は他の地域よりも温暖化が進むと予測されています。今後5年間の北半球の冬の異常気象数は地球全体の異常気象数の3倍になると予想されています。南半球の地域はより乾燥すると予想される一方、北欧と英国では今後5年間、5月から9月にかけて降水量が増えると予想されています。
https://public.wmo.int/en/media/press-release/global-temperatures-set-reach-new-records-next-five-years

G7の日程と一部重なる18日、19日で、中国の習近平国家主席が中央アジア5ヶ国の首脳との首脳会談を行っています。これはソ連崩壊後初めての事です。参加するのはカザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの指導者で、長年ロシアの裏庭と呼ばれた地域であり、経済的にも政治的にもロシアの影響力が大きな地域です。余り報道される事はありませんが、世界は過去1年、カザフスタンとウズベキスタンを巡って綱引きをくり返してきました。カザフスタンの石油埋蔵量はユーラシアではロシアに次ぎ2番目の大きさです。カザフスタンの輸出は石油やガス製品が大半を占めていますが、ロシアへの販売には様々な工業製品が含まれています。欧米からの制裁によって補給路を断たれているロシアは、カザフスタンやウズベキスタンにその供給先を変更しています。その地域を経由して中国の工業製品を迂回輸入する可能性も指摘されています。カザフスタンは、ロシアへの輸出品が米国の「軍用二重用途懸念商品リスト」に抵触し、欧米の二次制裁を受ける可能性が指摘され続けています。

昨年9月に習国家主席はウズベキスタンとカザフスタンに(国賓として)訪問しました。その後(慌てた)欧州議会議長も10月に両国を訪問、11月にはプーチン大統領がカザフスタンとウズベキスタンに「三者ガス連合」を提案し、ロシア産が急速に縮小する欧州市場に代わり、アジアのガス市場に本格進出する連合を提案しています。今年に入り、ブリンケン米国務長官がカザフスタンとウズベキスタンを訪問し「ロシアに協力したら制裁する」と牽制したと言われています(表向きは欧米が中露に変わり投資協力をするという話でしたが)。この地域の囲い込みは、今後のロシアの戦争の行方とアジア(特に中国)のエネルギー政策を左右する重要な地政学カードの1つと言われ続けています。

中国にとって中央アジアは、アフガニスタンなどの地域からの安全保障上の緩衝地帯の国々です。今年に入り、中国の中央アジア諸国からの輸入は前年同期比で37.3%も増加し、その55%は石炭、原油、天然ガス等のエネルギー関連品です。中国の多くの都市はトルクメニスタンの天然ガスに依存しています。中央アジアのこれらの国々は中国が一帯一路で資金提供する鉄道、石油やガスのパイプライン、更に海洋を使用せず列車で欧州へ向かう輸送ルートの重要な拠点です。欧州にとってカザフスタンは、ロシアの戦争の脅威を弱体化させる最重要国の1つでもあります。中国が上記5か国との首脳会談を行っている18日、突然EU政府がカザフスタン全国民に対するビザ制度円滑化の公式協議を開始することに合意した、と発表しています。

欧米、ロシア、中国の3つの勢力が「囲い込み」を仕掛け続けたこの1年後、G7の日程に合わせて、中国がそれら5か国との首脳会談を古代シルクロードの重要な都市「西安」で開催しているという事実が、歴史の面白さを感じさせます。
https://www.aljazeera.com/news/2023/5/18/chinas-xi-hosts-central-asia-summit-as-russian-influence-wanes

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