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NEWSCONの気になるNEWS(2023年5月第2週)
14日に世界最大の鉄スクラップ輸入国であるトルコの大統領選挙が行われます。トルコは現大統領のエルドアンが統治して20年が経っています。就任当初の2002年から2007年迄は経済成長率が年平均7%を超え、世界有数の新興市場となり、その中心は製造業者と輸出業者でした。特に鉄鋼業は製造と輸出で基幹産業の1つに成長しました。製造業では多くの日系企業もトルコに投資しました。しかし、ここ5-6年は激しいインフレ、外貨準備の減少、通貨暴落、高金利によって経済的な失敗が顕著になっています。トルコ統計局は4月のインフレ率を44%弱と発表していますが、独立調査機関であるENA Grupは実質インフレ率が2倍以上の105%であると推定しています。10年前の2013年5月には1ドルは2トルコリラ未満でしたが、現在1ドルは20トルコリラ付近です。10年で対ドルの価値が10分の1になるという大暴落です。自動車から衣料品に至る強力な製造業、EUとの関税同盟協定、欧州、中東等の市場への供給に理想的な地理的位置など、依然として大きなセールスポイントがありますが、エルドアンが再選された場合はリスク再燃の可能性があり、野党が勝利しても、経済運営で新政府は困難なジレンマに直面すると予想されています。鉄鋼業を含む製造業は現在の与党AK党の支持者でエルドアン政権で大きく伸びた業種です。選挙で政権交代となった場合、多少の影響がある可能性が指摘されています。
▶ https://www.reuters.com/world/middle-east/turkeys-erdogan-doesnt-flinch-fight-political-life-2023-05-07/
国際銅研究グループが最新の銅需給予測を出しています。2022年は需給バランスが431,000トンの供給不足、2023年は114,000トンの供給不足と予測していますが、2024年には298,000トンの供給余剰になると見積もっています。これはEV需要やエネルギー転換で銅が不足するという大半の予測に反するものです。2024年には世界のほぼ全ての地域で銅の需要は伸びますが、それ以上に供給が上回る予測となっており、結果として需給バランスは供給過剰となると予測しています。
▶ https://icsg.org/press-releases/
蘭米英の多国籍化学企業で世界最大のプラスチック、化学薬品、化学精製品の製造企業の1つであるLyondell-Basellがプラスチックリサイクル企業を完全子会社化しています。100%子会社化されるプラスチックのリサイクル企業はQuality Circular Polymers(QCP)で現在の共同所有者(50%)は廃棄物の大手企業であるVeoliaのベルギー法人(Veolia Belgium)が所有しています。QPCはオランダとベルギーで事業を展開している新興企業で、Lyondell-BasellとVeoliaは、同社を2018年に共同で買収しています。Lyondell-Basellは年間200万トンの再生ポリマー/生分解ポリマーの製造と販売を目標として掲げており、今回の完全子会社化は、そのプロセスの1つとなります。QCPは2020年末にベルギーのプラスチック リサイクル業者Tivacoを買収したばかりです。QPCの主要なリサイクル材はrPPとrPEになります。欧米では2025年に発効される見込みの国際条約の影響もあり、プラスチックリサイクルは徐々に化学メーカーの仕事となってきています。
▶ https://www.lyondellbasell.com/en/news-events/corporate–financial-news/lyondellbasell-and-veolia-restructure-their-plastics-recycling-joint-venture-qcp/
中国の鉄鋼メーカー向けに地方政府が減産要請を出しているという情報です。中国最大の鉄鋼生産地域である唐山市豊南区の各鉄鋼メーカーは地方政府から本年度の合理的な生産計画を策定し、粗鋼生産量を抑える取り組みを強化するよう、文章で正式に要求されたという事です。要請文章ではシェア維持のために量産を続けるのではなく、高品質製品の開発を追求するよう奨励されている事も伝えられています。
▶ https://www.mysteel.net/news/all/5038669-production-cut-news-in-tangshan-buoy-china-steel-market
自主的炭素市場に影響を与える可能性がある情報です。中国が独自で発行している中国認定排出削減プログラム(CCER)の炭素クレジットが、6年ぶりに登録を再開する可能性が高い事が伝えられています。CCERは今年後半、もしくは来年初めには再開される予定です。中国は世界の自主的炭素市場(VCM)で最大の炭素クレジットの供給者です。2023年第1四半期には世界の自主的な炭素クレジット市場で20.8%の供給シェア―を占めています。データは現在のVCM市場のデファクトスタンダードである以下の4つの団体からのものです:Verra、Gold Standard、American Carbon Registry、Climate Action Reserve。中国当局は将来、CCERを輸出可能なクレジットとして認証する可能性があり、そうなった場合は現在のVCMクレジットよりも明らかに有利になります。また、中国政府はインフラと取引市場プラットフォームの強化により、CCERを国際的に拡大するサポートを行っています。Beijing Green Exchange(北京グリーン取引所)はCCERの中国国内取引プラットフォームであり、長期的には国際取引ハブになることを目標としています。更に中国の規制当局は南の島である海南省を世界的な自由貿易の拠点にしようとしています。ハイナン国際炭素排出取引所(Hainan International Carbon Emissions Exchange)はシンガポールの国営投資会社であるTemasek Holdingsとシンガポール取引所の両方と協力して、中国の炭素市場(クレジット)を国際化しようとしている事も伝わっています。これは自主的炭素市場を牛耳る欧米の国際金融資本にとっては非常に厄介なニュースになり得るものです。パリ協定の6条問題も、多数派で中国を牽制できないかもしれません。政府間でなくこのエリア(欧米の金融)にまで中国政府が介入するとなると、本当の意味で米中摩擦が起きる可能性があります。
▶ https://www.spglobal.com/commodityinsights/en/market-insights/latest-news/energy-transition/050823-chinas-domestic-voluntary-carbon-market-reboot-to-shake-up-global-offsets-trade
また大手石油・化学メーカーによるプラスチックリサイクル企業の買収の話題です。フランスの大手石油化学メーカーであるTotal Energyはスペインのプラスチックリサイクル企業であるIber Resinasを買収したことを発表しました。Iberは機械的にプラスチックリサイクルを行う企業です。この買収は機械的に選別・分類されたリサイクルプラスチック材の供給を自社傘下に置く事を目論みとしています。Total Energyは再生ポリマーの割合を2030年に30%まで増やすという目標を掲げています。それよりも重要な事は今年6月に発表される予定の欧州のELV指令(使用済み自動車指令)の改訂案で、電池のように自動車に使用されるプラスチックにリサイクル材を含める事が規定される見込みである事が背景にあるようです。その場合、自動車部品産業にも大きな影響を与える事になります。他国でこの方針が追随される事になった場合は特に黒色PP等のエンプラへの取組や架橋密度の高い塗装剤が塗布されたプラスチック部品への取組が価値を持つ可能性があります。
▶ https://totalenergies.com/media/news/press-releases/plastic-recycling-totalenergies-expands-activities-europe-acquiring-iber
欧州議会がメタン排出量の削減を目的としたEU全体の法律案に賛成しています。先日、議会の環境委員会が賛成したものと同じで議会の投票では賛成499票、反対73票、棄権55票となり、圧倒的多数で賛成しています。メタン排出規制はエネルギー部門に限定されており、石油、化石ガス、石炭部門からのメタン排出とガスネットワークを通じて供給されるバイオメタンからのメタン排出が対象となります。注目すべきは輸入された化石エネルギーも新しい規制が適用される事で今後理事会との交渉で議論となりそうです。現在EUで消費される石油とガスの80%以上は輸入が占めています。今回の賛成の立場表明により、欧州議会は2026年から、石炭、石油、ガスの輸入業者に対し、輸入化石エネルギーにも新しい規制の義務化を望んでいます。メタン排出に関してEUと同様の規制要件を持つ国からの輸入品は免除されます。EUは2030年迄に世界のメタン排出量を2020年のレベルから少なくとも30%削減する事を目標とする「グローバルメタンプレッジ」に署名しています。
▶ https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20230505IPR84920/fit-for-55-meps-boost-methane-emission-reductions-from-the-energy-sector
ドイツの保険会社アリアンツの調査によると、EV化により欧州の自動車市場は中国からの輸入が増加し、将来的に欧州の自動車産業は大きな打撃を受けると結論づけられています。この報告書は「ヨーロッパの自動車産業に対する中国の挑戦」と題されています。報告書では欧州の政策立案者は輸入車に対する相互関税、及びバッテリー技術の開発を進め、中国の自動車メーカーが欧州で自動車を製造出来るようにする必要がある、としています。もしも政策を怠れば2030年迄に年間70億ユーロ(77億ドル)の損失を被る可能性があります。既に1月にはStellantis(ステランティス)のCEOが欧州の自動車産業が中国の輸入業者との戦いに直面している事を警告していました。現在SUVタイプのEVは中国市場で過密状態となっており、メーカーは規制の強い米国でなく欧州市場に輸出する意向を強めています。アリアンツによると中国製のEV輸入は2030年に欧州連合の経済生産高で240億ユーロ以上、またはブロックの国内総生産の0.15%に匹敵する、としています。特にドイツ、スロバキア、チェコ共和国等の自動車産業が盛んな国の経済はGDPの0.3%から0.4%を失う可能性がります。報告書は米国のインフレ削減法(IRA)により欧州市場が中国の輸出の標的になっている事を指摘しています。
▶ https://europe.autonews.com/automakers/chinese-ev-imports-threaten-europe-car-company-profits
ドイツの大手金属リサイクラーのTSR Recyclingが能力45万トン/年のリサイクル工場をドイツDuisburg市に設立しています。投入物はELV、混合スクラップ、大型家電製品で、国内で公的援助を受けて行われた高品質の鉄鋼リサイクル材料を選別する「REDERS研究プロジェクト」の技術が使われています。同プロジェクトにはテッセンクルップも参画しており、鉄鋼メーカーを中心とした国内での鉄スクラップの循環性を高める取りくみで生まれた工場となります。
▶ https://www.tsr.eu/en/press/article/a-milestone-on-the-path-towards-a-circular-economy/
米国でIRA(インフレ削減法)が実施され、EUでグリーンディール産業計画が発表された後、現在何も無い英国で産業戦略を制定するように英国製造業者の団体が政府に対し呼びかけをしています。この呼び掛けは製造業者の団体であるMake UKが5月9日に発表したレポート「Industrial Strategy – A Manufacturing Ambition」で行われました。米国のインフレ削減法(IRA)は、米国にグリーン投資を引き寄せ、米国のGDPを1.5%押し上げる効果があると予測しています。EUも同様の産業戦略を発表しており、先進国でこのような戦略が無い英国は経済と投資の両方で今後圧迫されるリスクがあります。ここ数年は競合国、特にフランスとドイツは2030年に向けて広範な産業戦略を実施しています。レポートでは製造部門を英国のGDPの15% まで成長させるという目標を設定しています。これによりMake UKの推定では年間生産高が1,420億ポンド増加し、高スキルで高価値の雇用が創出されると予測しています。これは単なる経済のブロック化ではなく、戦争を機にブロック化したそれぞれがマクロ経済戦略の再構築を余儀なくされ、遅れれば中東やアジア(中国)に飲み込まれるという危機感でもあります。
▶ https://www.makeuk.org/insights/reports/industrial-strategy-a-manufacturing-ambition
スイスの大手鉱山企業でGlencoreは既にグローバルで提携を発表しているカナダのLIBリサイクル企業であるLi-Cycleと共同で、イタリアのSardinia(サルデーニャ)島の港湾工業地帯であるPortovesme(ポルトヴェスメ)に欧州最大のLIB用の湿式地金製錬工場を設立する計画を発表しています。LIB用のリサイクル工場は既にGlencoreが持つポルトヴェスメ地区の冶金複合工場を拡張するものです。計画段階であり、今後60日以内に現実可能性の調査を開始します。工場設立の場合は合弁会社を50:50で設立する計画も発表しています。年間最大処理能力はBMで50,000~70,000トン規模になる予定です。サルデーニャ島は近年経済特区となり助成金や税制面での優遇、流入住民への優遇等を実施しています。Glencoreはインフラ、従業員、許可等の面から英国でのLIBリサイクル工場の計画発表時も今回と同じように自社施設を能増する事で計画を発表しています。
▶ https://www.glencore.com/media-and-insights/news/glencore-and-li-cycle-announce-joint-study-to-develop-a-european-recycling-hub
英国の廃棄物管理・リサイクル企業のEnvaが風力発電用のタービンブレードのリサイクルサービスを開始しました。英国は11,000基を超える風力発電機が設置されており、第一世代の風力タービンの寿命が近づいています。欧州では、もっと数が多く2023年末迄に欧州全土で約14,000枚の風力タービンブレードが廃棄されると予測されています。また2025年には欧州ではこれらの廃棄物の埋め立てが禁止されます。その為、複合素材で作られたタービンブレードのリサイクルは喫緊の課題となっています。Envaは現在、使用済みのタービンブレードを細断、粉砕して鉄鋼メーカー等の回収施設で利用できる品質に加工するソリューションを展開しています。また最終的な残留物質はEfW(廃棄物のエネルギー施設:ごみ発電)で、化石燃料の代替品として使用しています。
つい最近、デンマークのオーフス大学ナノサイエンスセンターが、ルテニウムベースの触媒を使用し、エポキシ樹脂の特定のC-O結合を分解する技術を開発して話題となっています。ただし実験段階であり、暫くは埋め立てできない場合は、燃やすという処理になりそうです。
▶ https://enva.com/news-pr/enva-launches-wind-turbine-blade-recycling-service
▶ https://www.chemistryworld.com/news/recycling-wind-turbine-blades-by-breaking-them-down-into-their-constituent-chemicals/4017385.article
生分解性プラスチックの研究で面白い記事がありましたのでご紹介します。生分解性のプラスチックを分解できる微生物は既に多く発見されています。しかし、それらの微生物の殆どは、通常30℃以上の温度でのみ活動(活性化)します。商業利用する場合は、熱を外部から加える必要があり、コスト高となり、利用が難しいのが現状です。20°C未満の温度で分解する能力を持つ微生物株は、殆ど報告されていません。スイス連邦研究所WSLの研究チームは、グリーンランド、スバールバル諸島、スイスで地面に1年間放置、又は意図的に埋めたプラスチックで増殖する細菌19株と真菌15株をサンプリングし、15℃で培養し増殖させました。その後、それらの菌類を使い様々な種類のプラスチックを消化出来るかどうかをテストしました。テストされたプラスチックは、非生分解性PE、生分解性ポリエステル、ポリウレタン(PUR)、ブチレン アジペート テレフタレート(PBAT)とポリ乳酸(PLA)の混合物(混合物の一部には生分解性のものが含まれる)です。結果126日間の培養で、どの菌株も非生物分解性のPEを消化出来ませんでした。しかし11の菌類と8つの細菌を含む19菌株は15℃でPURを消化でき、14の菌類と3つの細菌もPBATとPLA の混合物を消化できました。最も優れた性能を発揮する菌種をテストしたところ、それらはネオデブリシア属とラクネルラ属の2つの未特徴の真菌種であり、PEを除く全てのテストされた生分解性のプラスチックを常温で消化出来る事が判明しました。常温での分解が可能な微生物と対象となるプラスチックの組合せは、バイオプラスチック製造とリサイクルにおける1つの進歩となる可能性があります。
▶ https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmicb.2023.1178474/full
5月10日はドイツのクリスティアン・リンドナー財務大臣が、中国の財務大臣劉昆との会談が予定されていた日でした。しかし2日前に急遽中国側がこの会談をキャンセルしました。これはリンドナー財務大臣がリベラル派で、比較的中国と距離を置いた立場を取っていた人物という為でなく、3月に同じ政権内の閣僚で同じFDP党(リベラル自由民主党)に所属するベッティナ・シュタルク=ヴァツィンガー教育大臣が台湾を訪問した際、「台湾との協力を促進することが重要でパートナーである」と発言した事に対抗する措置と見られています。中国側は「ドイツの公約に矛盾がある」と主張して会談を直前でキャンセルしました。先日まで行われていたアジア最大の上海自動車展示会では、BMWが展示会場内で人種差別により不名誉な攻撃を受ける等、関係が悪化しています。英国で最も歴史のあるシンクタンクのChatham Houseは1年前に「独中関係の黄金時代は終わった」という特別レポートを発行し、クリントン政権時代から中国を経済的に開放し、リベラルな世界秩序に統合する米国の戦略の完全な失敗により、その恩恵を受けたドイツが最も影響を受けるだろう、と予測していました。5月9日には中国政府はカナダの外交官の追放も発表しています。ドイツ経済の2010年代はバラ色でした。労働者の平均労働時間は年間1,400時間しかなく、夏は3週間の休暇、それでもプライマリーバランスが黒字という経済的強みはロシアと中国との蜜月関係に支えられてきました。中国は今やドイツの技術と資本(ドイツからの投資)の必要性を徐々に減らしており、立場が逆転しています。昨年11月にはドイツのショルツ首相がBASF、BMW、VWのトップを引き連れて中国を訪問し、中国との関係維持、投資の受け入れ継続をお願いしていましたが、逆に欧州で猛反発を受けました。ドイツは発表予定だった「対中戦略」を何度も延期し、未だに発表していません。またドイツはロシアにも膨大な投資をしましたが、ほぼ全てが失われ、今、同じく膨大な投資をしてきた中国との関係維持は、国の経済の大きな課題となっています。現在EUのトップであるフォン・デ・ライエン欧州委員長は、メルケル政権時代の閣僚で中ソとの関係強化をしてきた党派の1人です。EUのNo.2で気候変動と欧州グリーンディ―ルのEUの責任者であるフランシス・ティメルマンス欧州委員会副委員長はオランダの公務員時代にロシア大使館で勤務しロシアとの関係があり、オランダの外務大臣時代の2014年にはアムステルダム空港を出発したマレーシア航空17便がウクライナ上空でロシア軍に撃墜されオランダ人194名が死亡した時でさえ、ロシアを猛烈に非難する事が無く、遺族の配慮を優先するという人物です(なぜ撃墜されたのか、未だに謎です)。結局今、欧州でインフレ、景気減速、移民問題、選挙で右派勝利が続いているのは、こうした親中露政策を基にした経済によって支えられてきたものが逆転した為で、環境タカ派な政策もそれらの経済基盤があっての政策でした。前提条件が変わった今、環境タカ派はまだ非常に頑張っていますが、何れはブロック経済化しなければ、持たない状況になってきています。
▶ https://www.chathamhouse.org/2022/05/how-germany-changing-its-china-strategy
化粧品メーカーが社内リサイクルに投資している先進事例を紹介します。英国でコスメティック製品とその小売りブランドで世界に900店舗以上を持つLush(ラッシュ)は230万ポンド(約4憶円)を投資したリサイクルセンターを稼働させ、英国内での工場発生廃棄物の80%以上を処理していると発表しました。工場の敷地は凡そ3,700平方メートルで、年間500トンの廃水処理及び週20トンのプラスチックの処理能力があります。新工場は以前の工場の3倍の規模で、品物の修理と再利用にも取り組んでいます。施設自体は1年前に開設し、現在フル稼働状態ではありません。2022年には自社工場発生の廃棄物の81%を処理し、107,000個の製品を再利用の為に寄付しています。Lushはこの工場への現地訪問を通じて、地方自治体、企業、各種協会との協力を促進する意向を示しています。Lushは2015年からこの取組を行い、徐々に拡大しています。
▶ https://weare.lush.com/lush-life/our-impact-reports/go-circular/
リサイクルの革新技術にマイクロソフトの気候イノベーション・ファンドが投資をした情報です。画像解析とAIシステムの組合せによる選別の自働化を行うAMP Roboticsがマイクロソフトの気候イノベーション基金からの投資を受けた事を発表しています。AIを利用した高度自動選別は生産性の向上、労働力不足への対処、回収率の改善、ブランド企業によるコンテンツの循環性の向上など、需要が増しています。更に多くの国や自治体がリサイクル目標を掲げ、拡大生産者責任規制を導入している為、リサイクルにとって追い風となり、新たな投資機会を生み出しています。センサーを利用した「元素や色」を特定する選別方法から、画像解析とAI学習機能による選別方法へと大きな革新の波が来ています。マイクロソフトの気候イノベーション・ファンドの様な超大型の投資家が、この分野に投資するという事が今後の発展を予測させます。リサイクルで利用されるAIにはMicrosoftのAzureをベースとしたものを利用するものもあります。CEやEPRによってリサイクルにも高品質が求められる時代が到来し、投入物に対する超高度選別の需要が高まる為、このような革新技術への投資が行われると考えられます。
▶ https://www.amprobotics.com/news-articles/amp-robotics-raises-additional-series-c-investment-from-microsoft-climate-innovation-fund
専門分野のコンサルティングサービスを国際的に展開しているEY(East &Young)の調査報告が注目されています。現在、インフレや地政学問題に起因するコスト増に対応する為、世界中の企業がサプライチェーンの回復力強化とコスト効率を高める為に東・南ヨーロッパが投資先として好まれていることが判明しています。これはウクライナでの戦争を機に海外から欧州への直接投資(FDI: Foreign Direct Investment)が停滞しているにも関わらず、明らかな傾向を表す結果となっています。2022年ポルトガル(南欧)への投資件数は24%増加、ポーランド(中欧)は23%増加、イタリア(南欧)が17%増加、ルーマニア(東欧)は86%と大幅に増加しています。西欧から東・南欧への方向転換は部分的には世界的なサプライチェーンの再構成と製造(工場労働者)とオフィス業務のコスト競争力によるものです。コストだけでなく、パンデミックや地政学的問題で悪化する貿易の混乱に対する「耐性」を高める事が東南欧が検討された理由として挙げられています。昨年欧州全土のFDIプロジェクトは5,962件で前年比僅か1%増に留まりました。更にFDIによる雇用数は16%も減少しました。東南欧以外では低税率で世界の企業を引き寄せ続けているアイルランドが21%の増加で目立ちました。米国はIRAで中国を避け国内とインドに向かい、欧州域外と西欧は東南欧に向かい、中国は飽和産業が輸出と東南アジアに向かう、という流れが2022年には始まり、この新しい流れを読み間違えると時代に乗り遅れる可能性があります。
▶ https://www.insurancejournal.com/news/international/2023/05/11/720444.htm
5月から6月初頭に開催される第二回プラスチック廃棄物国際条約の交渉を前にオランダの持続可能な開発投資家協会(VBDO)が「プラスチック危機」に対処する為の行動を求める共同声明を発行しています。共同声明ではプラスチックの「ライフサイクルの全体」が環境、気候、生物多様性、人権、公衆衛生に対して深刻かつ増大する脅威をもたらしていると警告しています。特に企業に対してプラスチック危機への対応を大幅に強化するよう求めています。具体的には材料消費量を大幅に削減し、使い捨て包装を廃止し、再利用可能な包装システムを望んでいます。更に明確な「タイムライン」のある行動計画を示し、進捗報告を行う必要がある、と要求しています。これはエレンマッカーサー財団が掲げる内容とほぼ一致しており、国際条約でも盛んにロビー活動が行われている内容です。この条約がかなり野心的なものになるよう、欧州の各団体から意思表明がなされています。
▶ https://www.vbdo.nl/en/2023/05/investors-with-us10-trillion-aum-call-on-corporates-to-drastically-ramp-up-action-on-plastics/
中国でデフレ懸念が上がっています。11日に中国の国家統計局(NBS)が4月の消費者物価指数を発表し、結果は前年比僅か0.1%の上昇にとどまり、2021年2月以来の低インフレ率となりました。2月の上昇率は1.0%、3月の上昇率は0.7%でした。生産者物価指数は3.6%下落し、過去3年で最大のマイナスとなっています。マイナスは7ヵ月連続です。現在、中国人民銀行(PBOC)が金利を引き下げ、資金注入を行っている中での物価の停滞は、内需の弱さを示唆しています。その為、中国の経済回復の力強さについて大きな疑問が生じています。昨年末にフィナンシャルタイムズは中国の不動産暴落:「スローモーションの金融危機」という特別コラムを掲載していました。バブル期にはGDPの30%近くを占めた不動産・建築部門が大きな債務不履行問題を抱え、政府や金融セクターは数十億ドルの不動産ローンを吸収しようとして、日本型の「失われた20年」に直面している、と警告していました。特に膨れ上がった鉄鋼生産能力は政府の減産要請が無ければシェア維持の為に増産を行い、飽和状態の国内市場からダンピング輸出に向かうという悪い流れが起き始めているようです。欧米の投資機関は昨年末に中国がコロナから復帰した際に銅価格の上昇を一斉に報じていましたが、蓋を開ければ逆方向となっており、金属価格への影響が大きい為、暫くは中国の各セクターの実態を把握する必要がありそうです。中国は膨大な供給能力がある為、内需が細ればデフレと輸出という傾向が強まり易いです。
▶ https://edition.cnn.com/2023/05/11/economy/china-april-cpi-ppi-intl-hnk/index.html