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NEWSCONの気になるNEWS(2023年5月第1週)
プラスチック汚染に関する条約作成にむけ、第二回の国際交渉が5月末から6月初頭にパリで行われます。これに先駆け、EU の6 カ国がマイクロプラスチックを削減する共同声明に署名しています。署名を行った国は、デンマーク、フランス、ドイツ、ルクセンブルグ、オランダ、ノルウェーでEUが目標とする2030年までにマイクロプラスチックの自然界への流出を30%削減する事に賛成しています。声明では欧州政府に対し、EUの目標を達成する為の措置(規制)を導入する事を提案しています。この2日前にはマイクロプラスチックを人間が摂取した場合、2時間で脳に到達するという研究結果が出て大きな話題となっていました。米国NY州のヴァッサー ・カレッジとオーストラリアの研究者チームが発表した内容では、プラスチックが脳に到達すると、炎症を引き起こし、ニューロンのプロセスを妨害する可能性がある事から、複数の認知疾患に影響するかもしれない、と伝えています。国際的にマイクロプラスチックは5㎜以下のプラスチック小粒子(微粒子)と定義されており、条約が発効した際には、産業の対応に様々な影響が出ると言われています。フィルターや生分解プラスチックの需要は高まると見られています。
▶ https://www.euractiv.com/section/energy-environment/news/six-countries-call-for-ambitious-measures-to-stop-microplastics-pollution/
▶ https://www.dailymail.co.uk/health/article-12012115/Microplastics-reach-brain-leading-Alzheimers-Parkinsons.html
母体はフィンランドのエネルギー企業Fortum(フォータム)で、LIBリサイクルを行うFortumのバッテリーリサイクル部門が欧州としては初の商業ベースでの湿式精錬工場を稼働させています。同社は3月にドイツ南部に廃バッテリーの収集と分解を行う施設を稼働したばかりです。投資額は約2,700万ユーロ(35億円)で、フィンランド南西部のHarjavaltaに建設されています。同社はナスダック・ヘルシンキ証券市場に上場する電気事業会社で、フィンランド(国)が51.26%を保有する半国営企業です。以前より再生可能エネルギーを利用した北欧でのLIBリサイクルに投資していました。2025年までに別の施設を建設し事業を拡張する可能性にも言及しています。今後、直接ライバルとなるのは、NorthvoltのLIBリサイクルとベルギーに2026年に工場を計画しているUmicoreです。Fortumは27日にこの発表を行っていますが、実は4月4日にフィンランドがNATOに加盟した後、先週からFortumのロシア事業をロシア政府が没収するという噂がながれ報道されていました(ロシア政府はドイツのユニパーにも没収を仕掛けています)。26日にはロシア事業のCEOがロシア政府から追放されたという事で、株価が下がっていた中での、この湿式精錬事業の発表でした。
▶ https://www.fortum.com/media/2023/04/fortum-battery-recycling-opens-europes-largest-closed-loop-hydrometallurgical-battery-recycling-facility-finland
ドイツの金属業界団体VDMが最近行った欧州の金属トレーダーの意識調査がRecycling Internationalに掲載されています。2023年第2四半期の最初の月である4月の金属取引は、前四半期より悪化しています。金属トレーダーのアンケートの回答者の内、8%はビジネス状況が改善したと答えていますが、29%は悪化、63%は横這いと答えています。更に第2四半期の予測については、調査対象の企業の 34%が悲観的で(以前より悲観が19%増加)、11%だけが改善を予想しています。また半数以上の55%は、景気が停滞する、と予想しています。調査対象者によると、スクラップの市場供給も悪化しています。現在、企業の29%が供給を良好と評価し、39%が前四半期と比較して悪化と評価しています(悪化は前回から10%増加)。回答者の32%は、需給がバランスしている、と答えています。
▶ https://recyclinginternational.com/business/gloomier-outlook-from-scrap-metal-traders/53108/
中国の国家外為管理局のデータを基にロイターが計算した結果、中国の人民元での貿易決済が、初めて米ドルを上回り、全体の48.4%になりました。ドルは46.7%で前月の48.6%から減少しています。ただし、国際貿易全体を示す3月のSWIFTのデータによると、世界の通貨取引における人民元のシェアは4.5%で、米ドルが83.71%を占めています。ワシントンの戦略国際問題研究所は「世界的に人民元が米ドルに取って代わることはないが、中国の貿易関係の一部は既に人民元になっており、人民元の国際化は、米国の金融制裁に対する中国の脆弱性を軽減する等、北京の目標を達成する可能性がある」と言及しています。現在、世界の貿易の流れはドル、ユーロ、英ポンド、円によって支配されています。中国自身も、中国以外で(中国との貿易によって)蓄えられた人民元を、中国政府がコントロールするのは容易でない事は認識しています。専門家は、人民元の国際化には少なくとも10年以上は掛かり、ゆっくり進むと見ています。
▶ https://www.asiafinancial.com/chinas-moves-to-boost-use-of-the-yuan-starting-to-pay-off
鉄鋼生産設備では世界最大のシェアを誇るイタリアのDanieli Groupが、相次いで電炉に関する設備契約について発表しています。英国のLiberty Steelがオーストラリアのワイアラ工場でスクラップと直接還元鉄(DRI)を原料とする電炉の計画を発表した事をお伝えしましたが、その設備はDanieli製でした。このプロジェクトは高炉から電炉への転換です。更にカナダのAlgoma Steelが設備能力370万トンの電炉への転換計画に、電炉設備を納入する事を発表しています。この転換プロジェクトで注目したいのは、Danieliがスクラップヤード用に4台の全自動クレーンを入れる事で、クレーンにはスキャニング技術が搭載されており、スクラップをクレーンから「バケツ」に移す前に、望ましくない種類の材料をスキャンしてチェックする機能が付加されている、という事です。Danieliによれば世界的に電炉新設プロジェクトはますます増えている、という事です。
▶ https://www.danieli.com/en/
材料の入手性と手ごろな価格からリチウムイオン電池の代替えとして注目を集め、最近CATLとBYDが量産計画を発表しているナトリウムイオン電池ですが、課題の1つとして繰り返し充電によるカソードの劣化があります。この問題に対し、コーネル大学が主導する共同研究により特殊なX線イメージ技術を用いて、充電時に引き起こされるカソード材料の一時的な結晶欠陥を特定することに成功しています。この内容はAdvanced Energy Materialsに掲載され、専門家の間で注目を集めています。欠陥がどのように形成され、自己修復され、検出可能な「傷」が後に残るかを特定できた事で、原因と対策への扉が開かれる可能性があります。研究者は現段階ではバッテリー材料の欠陥が拡張していくメカニズムは完全に理解出来ていないが、今後理解が深まれば、この課題に取り組み始めることができる、と述べています。
▶ https://news.cornell.edu/stories/2023/05/x-ray-imaging-captures-fleeting-defects-sodium-ion-batteries
アリババグループが所有する香港の英字新聞サウスチャイナモーニングポストが「急成長するEV 産業は、中国が中所得層の罠を回避するのに役立つのか」というコラムを上げています。世界銀行と中国国務院発展研究センターによると、1960年に「中所得国」だった 114ヶ国の内、101ヶ国は2008年になっても中所得国のままでした。それ程、中所得国が高所得国へ発展する事は難しいのです。主な理由は中所得国が発展するにつれて賃金が上昇し、繊維等の付加価値の低い産業での競争力が低下します。低賃金産業での競争力が低下する状況を打破する為には、産業をより付加価値の高いものに発展させる必要があります(リサイクルも貿易も同じ)。しかし過去多くの国ではそれが成功しませんでした(日本は例外中の例外)。高所得国への発展に成功した日本や韓国では自動車産業の高度化が経済発展に寄与してきました。既に中国は世界最大のEV市場でありEV生産国です。更に世界第2位の自動車輸出国でもあります。中国の自動車輸出は世界でEV化が本格的に始まった2021年に急上昇し始め、2021年の第1四半期から2023年の第1四半期にかけて450%以上増加しました。中国がEV産業の発展により中所得層の罠を回避出来るかと言えば、中国のような巨大な経済国では1つの産業がGDPに与える影響は他国よりも低い為、必ずしもそうとは言えません。しかし、米国、ドイツ、イタリア、フランス、英国、日本、韓国等、裾野の広い自動車産業を持つ国は高所得国に属しているのは確かです。日本は現在、自動車製造とその関連産業の総就業者数が全就業者数の8%を超えており、EV化で中国との競争に飲み込まれると、様々な影響が出る可能性があります。
▶ https://www.scmp.com/comment/opinion/article/3219001/can-chinas-booming-ev-industry-help-it-avoid-middle-income-trap
「人工知能(AI)のゴッドファーザー」又は「ディープ ラーニングのゴッドファーザー」と呼ばれ、GoogleでAIと人工ニューラル ネットワークの研究第一人者となり、かつトロント大学の研究者でもあるGeoffrey Hinton(ジェフリー・ヒントン)博士の記事が5月1日にNYタイムズ紙で掲載され、その情報が、欧米の主要メディアで紹介されています。10年以上GoogleでAI研究の第一人者であったヒントン博士はGoogleに居てはAIの危険性について自由に発言できない事を理由にGoogleを辞職しました。今年3月、サンフランシスコのスタートアップがChatGPT の新バージョンをリリースした後、世界で1,000人以上のテクノロジー関係者と研究者が、AIテクノロジーが「社会に深刻なリスクをもたらす」可能性がある為、新しいシステムの開発を6ヵ月間一時停止するよう要求する公開書簡に署名しました。数日後には人工知能推進協会の19人の現職及び元リーダーが、AIのリスクを警告する独自の書簡を発表しました。元々Googleは、ヒントン博士と彼の下で働いていた2人の学生が始めた会社を4,400万ドルで買収しています。彼らの作ったシステムは後にChat GPTやGoogle Bard等の新しいチャットボットを含む最新テクノロジーの創生に繋がります。昨年GoogleとOpen AIが博士の想定した以上の大量のデータを使用したシステムを構築した為、彼の見解は変わりました。システムは幾つかの点で人間の脳よりも劣っているが、他の点では人間の知性を凌駕していると考えていました。企業がAIシステムを改善するにつれて、AIはますます危険になると博士は信じています。昨年までGoogleは技術の「適切な管理者」として行動し、害を及ぼす可能性のあるものをリリースしないように注意していましたが、MicrosoftがチャットボットでBing検索エンジンを拡張した今、Googleは同じ種類のテクノロジーの展開を急いでいます。博士によればハイテク大手は止めることは不可能な競争に巻き込まれているという。当面の懸念はインターネットが虚偽の写真、ビデオ、テキストで溢れ、一般的な人が「何が真実か分からなくなる」事であり、将来的にはAIがパラリーガル、秘書、翻訳者等に取って代わる可能性があり、更に「それ以上の人の雇用を奪うかもしれない」と警告しています。潜在的に最も危険なものの1つは「分析する膨大な量のデータから「予期しない動作を学習する事」が多い」事にあり、将来展開されるであろうAIのバーションは、人類に脅威をもたらすのではないかと心配しています。最終的にはAIが真に自律的になり、キラーロボットが現実になる日を恐れています。十数年後は欧米の企業経営も大分変化しそうです。
▶ https://www.nytimes.com/2023/05/01/technology/ai-google-chatbot-engineer-quits-hinton.html
元NATO軍司令部改革の委員でNATOの上級アナリストであったMaurizio GeriがEuractiveに寄稿載したコラムが非常に明示的なので、ご紹介します。南シナ海は現在、世界貿易の5分の1 以上の流通量を占めています。南シナ海とは、周辺に中国、台湾、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、インドネシア、シンガポール、タイ、カンボジア、ベトナムのある海域で、世界有数の通商航路ですが、領有権と管轄権を巡り長年紛争の火種であり続け、現在も中国と周辺諸国だけでなく米国を巻き込む、軍事・安全保障上で最大の注目を集める地域です。現在、世界では主に米国のビックテック(GAFA)が所有する約486本の海底(通信)ケーブルが国際インターネット通信の99%以上を占有しています。
電子メール、銀行決済、軍事機密を含むあらゆるデータは、石油や資源よりも価値があります。膨大なデータ管理は経済生産性の核であり、世界の海底ケーブルは、破壊工作やスパイ行為に対し脆弱になっています。スパイ機関は自分達の領土内のケーブルとそのデータを簡単に盗むことができます。米国と中国の間の地政学的な競争は過去10年、世界の海底ケーブル ネットワークの支配権を巡る競争でもありました。特に今注目されているのは南シナ海を巡る海底ケーブルです。東南アジアのインターネット経済は2030年迄に1兆ドル(135兆円)に達すると予測されています。
中国はアジア、中東、欧州を結ぶ超高速接続ネットワークを構築する為に、総額5億ドルの海底インターネットケーブルネットワークを計画しており、米国が支援する南シナ海を通る海底インターネットケーブルのプロジェクトを阻止してきました。フェイスブックとグーグルは日本、台湾、グアム、フィリピン、インドネシア、シンガポールを接続する12,000 kmの海底通信ケーブル(アプリコット)を推進してきましたが、結果的にアセアン主要国であるマレーシアは、中国との関係強化をする結果となり除外されました。膨大な投資を行ってきた米国のビックテックは、海底ケーブルが設置される予定のスールー諸島の管轄権がマレーシアでなくフィリピンのサバ州にあるという主張を行い、その権利の相続人の弁護士をバックアップしています。これは過去にスールー諸島の管轄権がマレーシアでなくフィリピンのサバ州にあるという国際訴訟と同じ行為となりました。海底ケーブルの支配権にはグローバルなインターネットの未来がかかっています。マレーシアが中国の支配下に置かれた場合、ASEAN全体に大きな影響を与え、ドミノ効果で他の地域の大国が追随する可能性があります。世界貿易の5分の1以上とASEANの巨大なインターネット権益が掛かっている為、米中両方が一歩も引かない状況となっています。このコラムの題のように、南シナ海の緊張は世界のインターネットを支配する為の秘密の戦争であり、それは表に現れず行われてきた、という事です。中国が台湾をどうしても抑えたいという1つの理由でもあります。
▶ https://www.euractiv.com/section/china/opinion/south-china-sea-tensions-conceal-a-secret-war-to-control-the-worlds-internet/
LIBリサイクルで湿式冶金製錬法に代わる、膜を利用した液体反応器法が成功したという情報です。韓国の基礎科学研究所(IBS)の研究チームが開発したもので、単1チャンバー(リアクター)内で多段階の反応を可能にしたもので、水の層が化学結合する事なく攪拌及び乳化し、膜を利用して金属を多段階に分離します。今迄も膜を使用してリアクターを分割する事により1つのリアクターを使いワンステップで金属を抽出する試みが数多く行われてきました。しかし今までは強い攪拌で膜の破損が起きる事が多発し、より大きな反応器(リアクター)では成功していませんでした。現在のLIBリサイクルで利用される湿式冶金法では、複数の抽出/溶剤工程が必要で、コストが増大します。コスト問題を解決する為に、膜を使う反応器による金属抽出技術へのトライが行われてきました。研究チームは開発された方法が湿式冶金製錬法に代わる興味深い方法となり、他の貴重な金属の分離に適用できる可能性もある事を強調しています。
▶ https://techxplore.com/news/2023-05-recycling-valuable-metals-spent-lithium.html】
オランダの銀行INGが「EUの炭素国境税が世界の金属貿易に与える影響」というレポートを掲載しています。EU炭素国境調整メカニズム(通称国境炭素税:CBAM)は、輸入品にEU排出量取引制度(ETS)と同等の炭素税を課します。現在、中国のETSは約8ドル/トンで取引されていますが、EU市場の取引は100ドル/トン程度です。中国からの輸入品は、この差額を支払う必要があります。CBAMが実施された場合に最も明らかな影響は、欧州の消費者が製品に「より高い価格」を支払う事です。輸入が高価になるだけでなく、CBAMが段階的に導入されるにつれて、国内部門の多くへの炭素排出権無料枠の割り当てが減少し、EUの生産者のコストが高くなる為です。CBAMに関連する報告義務もコストを押し上げ、消費者にも転嫁される可能性があります。アルミについてはロシア(戦争で既に影響あるが)、トルコ、中国、UAE、インドが最も影響を受ける国になります。鉄鋼部門も同様で、ロシア、トルコ、中国、インドが影響を受けますが、トルコ、中国、インドのスクラップ利用率の上昇と製造の脱炭素化で影響が薄れていく可能性が指摘されています。現在EUでは鉄鋼生産の60%弱が高炉で約40%が電炉です。CBAMの導入で輸入鋼材コストが8%程度上昇すると見られています。EUは今後、炭素を軸にしたブロック経済になりそうです。
▶ https://www.ing.com/Newsroom/News/How-the-EUs-carbon-border-tax-will-affect-the-global-metals-trade.htm
多国籍石油化学メーカーのIneosが再生プラスチックを50%使用した軟包装用の超薄型硬質フィルムを発表しています。この製品はドイツのHosakawa Alpineと提携し、machine-direction orientation(MDO)という技術を使用して製造された50%の再生プラスチックを含むポリエチレンフィルムです。このフィルム自体もリサイクルが可能です。Ineosによると、バージン材の使用と比較して、炭素排出量を25~50%削減する事が認められたという事です。今後MDO技術を他の柔軟な包装製品に適用していく目論見です。英国では2022年4月1日からプラスチック包装税が始まり、指定の割合の再生材を含まないプラスチック包装には1トン当たり200ポンドの税率が課されています。課税額は2023年4月1日から1トン当たり210.82ポンドになっています。欧州でも包装及び包装廃棄物指令の改訂案が議論されており、非常に厳しい規制の為、プラスチックの代替品や再生プラスチックを含む製品への需要が急速に高まっています。
▶ https://www.ineos.com/news/shared-news/ineos-world-first-with-recyclable-flexible-packaging-film-made-from-more-than-50-recycled-plastic-waste2/
欧州委員会はウクライナ支援の為の「弾薬生産支援法(ASAP)」を採択しました。支援予算は5億ユーロ(750億円)でEUの弾薬生産能力を増強し、現在の弾薬とミサイル及びそれらの部品不足に対処することを目的としています。EUは武器弾薬の支援と供給の為に3つの「トラック(手順)」を用意しており、加盟国からの在庫削減(トラック1)、弾薬の共同調達(トラック2)、今回のものがトラック3にあたり、トラック1と2を支援するものとなります。弾薬の供給問題は緊急性が高い為、欧州委員会は2023年夏までにEUの防衛産業における弾薬とミサイルの生産能力増強への支援を開始できる迅速な採択(議会と欧州理事会)を期待しています。これがスタートすると金属需要が増す可能性があります。ただし大砲の弾薬やミサイルに使用される発射薬、推進剤、爆発物の1つであるニトロセルロース(NC)の主な原料であるコットンリンター(綿花種子の毛羽状繊維)は、中国からの輸入が多く、供給のボトルネックが本当に解消可能かは未知数です。
▶ https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_23_2569
2022年の世界EV販売は55%増加しましたが、英国では中古車になった場合、EVがガソリン車よりも2倍近い速度で価値を下げている事が伝えられています。これは中古車金融のChoose My Carが行った調査の結果判明したもので、2020年モデルのEVの中古車の価値は平均で2023年には約半分になりましたが、同じ時期にガソリン車は37%しか下がりませんでした。専門家はEV市場はまだ初期段階で、このようなケースの価値変動は驚くべきことではなく、有名な車種の中古車価格の下落は、EV中古車市場全体に波及効果をもたらす、と言及しています。この傾向はしばらく続くと予想されていますが、今後、市場が成熟するにつれて最終的には落ち着くと見られています。その為、このような初期モデルの価格下落は EV の長期的な問題を示すものではありません。
▶ https://uk.finance.yahoo.com/news/electric-cars-losing-value-twice-123137171.html
5月12日までの期間でバーゼル条約、ロッテルダム条約、ストックホルム条約の締約国会議(通称:COPs)がスイスで開催されています。
バーゼル条約では前々回にプラスチック廃棄物を付属書II(特別考慮が必要な廃棄物)に含む事を決め、前回は電子機器廃棄物(WEEE)を付属書IIに含めるという事が決まりました。これにより、廃棄物由来のリサイクル材への混入が厳しく制限されるようになります。条約への発言力が強い欧州委員会が今回のCOPsに対する提案をHPに記載しています。バーゼル条約では、「プラスチックと電子廃棄物の管理と取引に関する詳細なガイダンスを提供」する、としており、詳細はまだ明らかではありませんが、規制への細かな文言がガイダンスとして追加される可能性があります。更にEUはプラスチックに関する法的拘束力のある新しい国際協定の採択の促進、世界的に特定の環境問題を引き起こしている電子廃棄物、使用済み車両、繊維廃棄物による汚染を削減するための行動を支援する、としています。
▶ http://www.brsmeas.org/2023COPs/Overview/tabid/9316/language/en-US/Default.aspx
▶ https://environment.ec.europa.eu/news/zero-pollution-eu-advocates-sound-management-chemicals-and-waste-un-environmental-conventions-2023-04-28_en
プラスチックのCE(サーキュラーエコノミー)では国際的な影響力を持つエレンマッカーサー財団が5月末から始まるプラスチック汚染に関する国際条約の第2回の交渉に先立ち、同財団の活動と意見をHP上に掲載しています。国際条約で財団が求めているのは、1)法的拘束力のある国際ルール、2)強力な(サプライチェーンの)上流部門を含む、包括的なCEへのアプローチ、3)持続可能な生産と消費、特に再利用に重点を置く事、4)包装及びその他の(使い捨て等の)短期間しか使用しないものの優先順位付け、を上げています。特に条約の優先事項として、使い捨てから再利用の促進を上げています。第2回の交渉では将来条約の草案に含まれる可能性が高いものの議題を設定しているため、重要なステップであると認識されています。
▶ https://ellenmacarthurfoundation.org/a-un-treaty-to-end-plastic-pollution
アルミ製造の欧州大手が、リサイクル材を主とする大手二次アルミ鋳造メーカーの買収に乗り出し、欧州委員会が無条件で承認を出しています。ノルウェーのアルミニウム生産会社であるNorsk Hydro ASAはポーランドの大手二次アルミ鋳造メーカーAlumetal SAに同社の株式の100%を取得する為の公開買付けを持ちかけました。実は1年前にも同じオファーを出しましたが、その時は欧州委員会がEU合併規則の審査中に公開買い付けの話は無くなりました。Alumetalの株式の購入価格は約2億6,700万ユーロ(2億9,400万ドル)になります。Hydroはこの買収により、年間EBITDAが6,300万ユーロ増加すると予想しています。この買収によりNorskはリサイクル部門のEBITDAを2025年迄にUS$4600万に増加させるという目標に近づきます。Hydroは再生可能エネルギーを利用したグリーンアルミ二ウムへの投資を加速させており、この買収により、より持続可能性を高める目論見です。
▶ https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_23_2566
英国のシンクタンクであるNew Economist Foundationが発表したレポートによると、現在提案中のEU政府財政・債務制限規則が導入された場合、EUの4ヵ国を除くその他全ての国がパリ協定の目標を達成し、地球温暖化を1.5度以下に抑える為の十分な公共投資が出来なくなる事が伝えられています。欧州委員会は先月末に新しい政府の借入規則に関する法律案を提示しています。報告書はこの規則が導入された場合、アイルランド、スウェーデン、ラトビア、デンマークの4ヵ国だけが、実質的に公共投資を対GDPで3%増やす事が可能で、気候変動へのコミットメントを達成できる事を示しています。しかしフランス、イタリア、スペイン、ベルギーを含む国々は、必要な気候変動支出をする為には、他の公共支出を大幅に削減したり、増税したりしなければなりません。これらのデータは財政赤字と政府債務という、欧州のグリーンディールの長年の難題を示しています。財政赤字と政府債務の新しい制限によりグリーン投資に最も苦しむのは、オーストリア、キプロス、チェコ共和国、マルタ、ドイツの5ヶ国としています。政府債務水準が(GDPの)60%を下回るポーランド、ルーマニア、スロバキアでさえ、炭素集約型の経済モデルを変革するには更に大きな財政支援が必要な為、財源が不足すると予測しています。EUのGDPの50%を占める13ヶ国は政府債務や財政赤字の制限(新規則)を破らなければ、EUの気候目標を達成するのに十分な投資を行うことができない、と結論付けています。クリーンエネルギーへの転換は、欧州では電気料金、エネルギー料金の高騰、更に財政赤字や政府債務の増加といった負の部分を生み出し、企業経営を苦しめている事も確かです。
▶ https://neweconomics.org/2023/04/half-of-europe-unable-to-spend-enough-to-meet-climate-targets-under-current-borrowing-rules
欧州やG7はロシア産の原油や石油製品の禁輸措置を取っていますが、その間(コイン)ランドリー国と呼ばれる5ヵ国がロシアの原油輸入量を大幅に増やし、西側はそれらの国々を経由して石油精製品を購入している実態が明らかになっています。この情報は石油やエネルギーの専門サイトでは多く取り上げられています。5ヶ国とは中国、インド、トルコ、UAE、シンガポールでそれらの国々のロシアからの原油の輸入は、侵攻前に比べて+1,000 万トン(侵攻前+26%)、又は187億ユーロ(金額ベースで+80%)となっています。それらの国々で原油は精製され石油製品になり輸出されます。ランドリー国からの石油製品の最大の輸入国はEUで、その輸入額は177 億ユーロに達しました。豪州は侵攻から12ヵ月間に80億ユーロ相当を購入し、米国(66億ユーロ)、英国(50億ユーロ)、日本(48億ユーロ)が続いています。制裁連合国が輸入した石油製品の割合が最も高かったのは、ディーゼル(29%)、ジェット燃料(23%)、ガソリン(13%)でした。中国による欧州とオーストラリアへの石油製品の毎月の輸出は2022年後半に急増し、過去の水準を遥かに上回りました。ロシアからの購入は禁止でも、他国がロシアから買って加工したモノは購入して良いという事で、制裁の実効性にも疑問の声が上がっています。
▶ https://energyandcleanair.org/publication/the-laundromat-how-the-price-cap-coalition-whitewashes-russian-oil-in-third-countries/
今年3月にScience Directに掲載された、プラスチックリサイクル施設から発生するマイクロプラスチックに関しての記事が、一般サイトで取り上げられています。調査は年間22,680トンの様々なプラスチック廃棄物を受け入れる英国の最先端のプラスチックリサイクル工場で行われました。検出サンプルは施設内の4つのプラスチック廃棄物の洗浄水排出流路から収集されました。ろ過機が設置され、50µm粒子フィルターが取り付けられており、そのフィルターを通ったマイクロプラスチックを1.6µmのフィルターで再度捕獲するという方法で実験を行った所、フィルターがあっても、推定で最大半分近くがフィルターを通る微粒子状のマイクロプラスチックである事が判明しています。この実験では50μmではなく、40μmを超える粒子の除去が最も効果が高い事が分かりました。マイクロプラスチックについては現在議論されているプラスチック汚染に関する国際条約に明記される可能性が高く、条約が制定された場合には様々な施設で対策が必要になる可能性があります。
▶ https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2772416623000803
▶ https://www.wired.com/story/yet-another-problem-with-recycling-it-spews-microplastics/
先月開催されたISRIの2023コンベンションでのアルミに関するパネラーの意見がRecycling Todayに掲載されています。要約すると北米での二次アルミへの投資は前例が無い程活発であり、中国に関しては2024年には一次アルミ部門の成長が止まり、より(リサイクル等の)二次金属へと移り、世界的にも一次アルミニウムには多額の投資が行われていない、という事です。インドは過去5 年間に米国から輸入するアルミスクラップの量を「大幅」に増加させており、2018-19年にかけて25 万トンだったものが、2022年4月から2023年 1月には約50万トンに倍増しています。インドは世界第4位の自動車生産国であり、巨大な二次アルミ産業によって自動車部門は支えられています。アルミに関しては、リサイクルへの「パラダイムシフト」がインドで起こっており、6ヶ月以内にインド規格局(BIS)が全ての金属くずの規格を作成する予定です。アップルが巨額な投資をインドで行っているように、インドの経済成長は次の10年の大きなテーマです。
▶ https://www.recyclingtoday.com/news/isri-2023-aluminum-value-chain-investments/
コバルト価格が4年振りの安値に下落した理由について、AG Metal Minorが伝えています。価格下落の最大の要因は需給バランスで、電池で使用される精製コバルトの需要は2023年には8%の増加に留まるものの、供給が24%増加すると予測されている事です。需要が205,000トンに対し、供給は約210,000トンになると予想しています。特に最大の供給国であるコンゴからの供給が増加する事で、今後も価格が上がる可能性が低いと見られています。コンゴは今年180,000トンを出荷する予定ですが、2024年には約225,000トンにまで供給量を増やす可能性があります。ただし将来的には電気自動車や蓄電池の需要の高まりと、供給地域が限られている事から、コバルトの価格は上昇する時が来ると見られています。
▶ https://oilprice.com/Energy/Energy-General/Why-Cobalt-Prices-Have-Fallen-To-A-4-Year-Low.html