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NEWSCONの気になるNEWS(2023年4月第4週)

以前より噂はありましたが、チリ政府が国営のリチウム企業を計画している事が伝わり、海外メディアで多数報道されています。特に欧米の幾つもの投資情報サイトでセンセーショナルに伝わっています。何故かと言えば世界第2位のリチウム生産国であるチリの膨大なリチウム事業の支配権は現在、業界大手のSQM(SQMA.SN:チリの化学会社)とAlbemarle (ALB.N:米国ノースカロライナ企業)が持っており、SQMもAlbemarleも株主の多くは欧米の資産投資運用会社だからです。SQMは元々チリのTianqi Lithium Corp.が過半数に近い支配権を持っていましたが、現在はCapital International Investorsが筆頭株主です。Capital International Investorsは企業租税回避地の1つである英領マン島と南アを拠点とする投資会社です。更に米企業であるAlbemarleの筆頭株主は、あのVanguardでトップ10社は全て欧米の投資会社です。インフレ削減法によって米国で販売されるEVへの補助金はバッテリーの原料調達が米国とのFTA締結国や貿易パートナー国から調達されるものに限定され、FTAを結ぶチリのリチウム利権を持つ先の2社に、欧米の投資機関がこぞって資金を投入してきました。韓国のSK Onはインフレ削減法から3ヶ月でSQMと5年間の水酸化リチウム供給契約を締結していました。そうした権益はチリ政府が国有企業を設立する事で大きな影響を受けます。2社とも鉱山契約が当面残っていますが、国有企業が競争に入るとなると、影響は避けられません。世界最大の銅生産国チリの国営鉱山企業のCodelcoがチリ政府と同件で協力すると見られています。インドネシアのニッケル輸出規制に続き、EV資源の国有化とナショナリズムは大きな波になっています。こうしたカントリーリスクが頻発すると、欧米の投資機関がロビー力を発揮して先進国で投資する規制が強化される為、代替材とリサイクルの両方はより重要性が増すと思われます。
https://www.afr.com/policy/energy-and-climate/chile-unveils-plans-to-nationalise-vast-lithium-industry-20230421-p5d2bv
https://www.weforum.org/agenda/2023/04/corruption-in-the-mining-sector-threatens-a-just-energy-transition/

ゼロ・ウェイスト・ヨーロッパと複数の廃棄物利害関係団体がホワイトペーパー(政策意見書)を発行し、改定が予定されている「EU廃棄物フレームワーク指令」について2029年迄に「リソース フレームワーク指令」に変えるべきと主張しています。また再使用、修理、再製造の規制の緩和、再利用をした場合の「環境パフォーマンス」を明確化するよう求めています。更に拡大生産者責任(EPR)の範囲の明確化、適用する場合の一貫性、リサイクル技術や工程による低・中・高度なリサイクルなどの階層化、廃棄物処理と脱炭素化の支援、を求めています。廃棄物フレームワーク指令は全ての廃棄物関連規則や指令の最上位概念として位置しており、「廃棄物」を「リソース」として定義する事を目指すという、非常に野心的な内容となっています。ただしEUの廃棄物フレームワーク指令は廃棄物のリサイクル以上に廃棄物そのものを発生させない事を最上位の目的に置いており、廃棄物そのものを減らすような制度設計に、より変化していくものと見られています。
https://zerowasteeurope.eu/press-release/white-paper-2040-vision-for-a-sustainable-future-requires-radical-rethink-on-eu-materials-and-waste-policy/

アルミスクラップを利用した全く新しい製品製造プロセスが開発され、専門サイトで注目されています。この研究は米国エネルギー省傘下のパシフィックノースウェスト国立研究所(PNNL)と自動車部品大手のMagna(マグナ)が共同で研究してきたものです。技術はShear Assisted Processing and Extrusion (ShAPE)と呼ばれ、過去に開発され実用化が一部で進められた摩擦攪拌押出し(FSBE)成形技術を更に発展させたものです。アルミスクラップを製品品質にする場合に最も問題となるものは、シリコン、マグネシウム、鉄等の不純物が均一に分散せず、内部で「クラスター(塊)」を形成する事です。現在はこの問題を解決する為に、二次合金ビレットに余熱(550度~)をかけ、更に時間をかけ溶解する事でクラスターの発生を抑えています。新しい技術では走査型の電子顕微鏡と電子後方散乱回折を使用した押し出し工程を行います。テストは6063と建築用のアルミスクラップを使用し行われました。最終製品の内部は各金属粒子の配置と微細構造を画像で測定し、良好な結果を得ています。材料劣化や部品故障の原因となる製造上の欠陥が無く、リサイクルアルミを使用した場合に起こる金属不純物の兆候はありませんでした。発表によると従来の加熱による工法よりもエネルギーを50%削減し、炭素排出量を90%削減する事が可能です。研究チームはEVのバッテリーパックで一般的に使用されている高強度のアルミニウム合金での調査を行っています。Magnaは二次アルミニウムスクラップの全く新しい市場を生み出す可能性がある事に言及しています。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2213846323000111?via%3Dihub

中国のLiPF6(六フッ化リン酸リチウム)価格が3月に前月比29.8%下落し、下流の需要が予想を下回った事が伝えられています。六フッ化リン酸リチウムは長期間保管できなく、保管期限が3-6ヶ月です。短期的な需要回復の見込みがなく、同業他社との競争や下流のバイヤーによる値下げの圧力で価格は急速に下落しました。LiPF6価格は、需要側が在庫削減を継続している事から、4月もゆっくりと下落しています。直近は価格がメーカーの損益分岐点を下回り始めた為、メーカーは価格引き上げに転じています。しかし供給過剰と継続的な炭酸リチウム価格の下落が相まって、LiPF6は引き続き緩やかに下落すると予想されています。
https://news.metal.com/newscontent/102190638/China%E2%80%99s-LiPF6-Price-Plunged-In-March-to-Slow-Declines-In-April/

先月末に米政府のホワイトハウス科学技術政策局から出された新しいレポートが注目されています。このレポートはバイオテクノロジーとバイオ製造に関する大統領令14081を詳しく解説したもので、最も影響をうける1つのセクターは石油から作られる包装用プラスチックと言われています。レポートには今後20年間でリサイクル可能なバイオベースのポリマーを使用したプラスチックを90%にするという目標が掲げられています。大統領令は昨年9月に署名され、10の目標が掲げられており、プラスチックはその中心の1つで「材料のサーキュラーエコノミーに拍車をかける」という目標として記載されています。今後20年以内にバイオベースの原料を90%以上にする為に、費用対効果が高く持続可能なルートを実証する事を約束しています。多国間の利害関係を調整しなければならない欧州と違い、米国は大統領令もしくは議会を通過する事で法案が直ぐにでも実効に移される為、一旦決まるとスピードが速いという特徴があります。バイオベースの代替えプラスチックは、ケミカルリサイクルと共に、今後より投資が入り易い環境になっていくと思われます。
https://www.whitehouse.gov/wp-content/uploads/2023/03/Bold-Goals-for-U.S.-Biotechnology-and-Biomanufacturing-Harnessing-Research-and-Development-To-Further-Societal-Goals-FINAL.pdf

先週、米国でISRI(スクラップ・リサイクル業協会)の会議があり、Recycling Todayが銅に関する主な業界パネリストの意見を載せています。登壇した3人のパネリスト全員が、銅は重要な鉱物資源であり、より多くの銅スクラップを米国内に残す事に賛成し、輸出規制と現在米国でも議論されている「重要な鉱物リスト」に銅を含める事の重要性を述べています。世界の銅の消費量は25年毎に倍増しておりこれは過去に多くのアナリストが行った予測と一致しています。中国は2022年に世界の銅消費量の56%を占め、米国は7%余りですが、米国は世界最大の銅スクラップ輸出国で、輸出量は世界の18%を占めています。これは中国の二次銅精錬が急速に伸びた2000年を境に2001年に米国最後の二次銅製錬所が閉鎖された事によります。今後、米国での精銅の生産と消費は増加に転じると強気の姿勢であり、投資が増えています。今年2月に米国の銅開発協会(CDA)が発行したレポートでは、銅は米国地質調査所(USGS)が指標としている供給リスクのスコア(スコア0.4)を満たしておらず、米国で銅を重要鉱物リストに自動的に含めるよう、促していました。欧州でも最大の銅製錬企業であるAurubisが昨年から今年にかけて、米国、ポーランド、ドイツの生産能力増強計画を発表しており、銅への投資は短期的な景気動向に関わらず継続されています。
https://www.recyclingtoday.com/news/isri-2023-spotlight-on-copper-critical-metal/

中華系の情報サイト36Krが内部情報筋の話として、今年中にCATLとBYDがナトリウムイオン電池をEVに搭載する計画である事を伝えています。既にCATLに関しては、最初の量産EVが中国メーカーCheryのiCarブランドのモデルに採用される事が発表されていましたが、BYDもナトリウムイオン電池を導入する予定との事です。BYDに関しては、情報筋からのインサイダー情報のみで正式な発表ではありませんが、当初はナトリウム電池とリチウム電池の混合物で2023年後半にBYD Seagul の一部として発売される可能性を伝えています。前述のiCARブランドに搭載されるCATLのナトリウムイオン電池も、リチウムイオン電池との混合となるようです。現在リチウム価格が暴落している事もあり、ナトリウムイオン電池への熱が一時的に冷めているようですが、長期的な視点からナトリウムイオン電池の存在に疑問を挟む余地が無いという事です。
https://www.electrive.com/2023/04/21/catl-and-byd-to-use-sodium-ion-batteries-in-evs-this-year/

ポーランドの重要閣僚や元首相が欧州のクリーンエネルギーへの転換を激しく批判し始めています。欧州は1990年に対して2030 年までにGHG排出量を55%以上削減するという目標を掲げています。しかしエネルギー転換は低所得層に一番影響を与えているだけでなく、高価なエネルギーの恩恵を受けるのは限られた先進国のみと警告しています。原油や天然ガス価格が下がった今年2月のドイツの1kWh当りの電気料金は49.5セントユーロです。為替を145円/€とした場合に71.8円となり、東京電力圏内の平均的な家庭での使用量を月間260KWhとして計算した場合、約18,660円と日本の3倍近い料金です。これと略同等なのが英国、イタリア、アイルランドです。EUの平均は28.3セントユーロでしたので、月間10,670円で日本の約1.7倍です。欧州は昨年12月から1月一杯まで暖冬であった為、エネルギー危機問題は緩和されましたが、今一番警戒されているのは、ヒートポンプやEVが普及した場合、電気料金が上がるだけでなく、カリフォルニアで昨年末にEV充電を控える地方政府の要請が起きたように、冬の間、常に停電のリスクを抱えるという事です。この問題は再生可能エネルギーの拡大と共に顕在化し、政治問題となり始めています。
https://www.euractiv.com/section/politics/news/polish-ruling-party-head-slams-eus-fit-for-55-plans-says-only-richest-states-benefit/

米国ワシントン州で電池の拡大生産者責任法(EPR)が可決されています。今後、発効には州知事の署名が必要のみの段階となっています。このEPRは取り外しが可能なポータブル電池を対象としており、2029年1月1日からは中型電池(重量11.0~25.0ポンド)まで対象を広げます。EV等の取り外し不可能な大型電池は対象となっていません。また医療機器、重量が11.0ポンド超の鉛蓄電池、家庭用工具の取り外し不可能な電池は含まれていません。法律で定められた目標は、再利用率を二次電池で60%以上、一次電池で70%以上とする事ですが、期限は法律で定められていません。ワシントン州の環境省は2023年11月30日迄に大型であるEV用電池を管理する為の予備的な政策勧告行う必要があります。資源循環や電池で使用されている高価な金属の回収以上に、直近ではLIBによる火災が相次ぐ事で、生産者への責任範囲の拡大が米国各地で検討されています。
https://app.leg.wa.gov/billsummary?billnumber=5144&year=2023

米国EVメーカーのテスラが4680バッテリーセルに関する詳細な最新情報を発表しています。4680は2020年にテスラが行った「バッテリーデー」で独自のセル戦略を発表して以来注目を集めてきましたが、様々なボトルネックで量産には至っていません。この発表は第1四半期の決算発表後の電話会議で行われたものです。現在4680セルはカリフォルニア州フリーモントのパイロット工場で生産しており、設備の試運転で運用の途中段階であるテキサス工場での量産が開始された場合、他の典型的なセル工場よりも1GWh当りの設備投資が70%低くなります。現在はセカンドバージョンのものを生産しており、カソード、アノード共に精製プロセスや使用薬品を変更する事で設備投資コストを下げています。最初の材料生産を年末迄に行う事を目標に下期に掛けて試運転を開始する計画です。
https://electrek.co/2023/04/21/tesla-update-4680-battery-cell/

欧州議会は「炭素リーケージ」を防ぐ為の活動をHP上で掲載しています。欧州での炭素リーケージとは、企業が炭素排出規制の厳しい地域から緩い地域へ、特に生産を移す事と定義されています。欧州では企業の気候関連コストが増大しており、輸入品と競争できない状況が生まれています。これは雇用にも関係する為、欧州議会は輸入品に野心的な炭素税を課す事を望んでいます。今月、議会は炭素国境調整メカニズム(CBAM)規則を採択しています。CBAMでは製品の輸入業者が生産国で支払われた炭素価格とEUの排出量取引システムとの価格の差額を輸入時に課金として支払う必要があります。輸入者は前四半期に輸入された商品の直接(生産)/間接(輸送を含む)の両方の排出量と生産地で支払われた炭素価格を報告する必要があります。WTOのルール回避の為に「調整メカニズム」と名付けられていますが、事実上の炭素税となり、保護護貿易のツールとしての役割を持ちます。これ以外にも先週議会で採択された森林破壊防止法があり、コーヒーやパーム油などの食品輸入に関して森林破壊防止とデューデリジェンスの報告義務を課す事で、大きな輸入制限を掛ける政策を実施します。これらの政策が実際に機能し国民が幸福になるのか、競争を避けて格差問題が未解決になるのかは今後の大きな社会実験と言えます。既にEUの森林破壊防止法にマレーシア政府は反発しています。
https://www.europarl.europa.eu/news/en/headlines/society/20210303STO99110/carbon-leakage-preventing-firms-from-avoiding-emissions-rules

ロイターが世界経済における米ドルの地位は堅持される旨のコラムを載せたばかりですが、中国のメタルサイトであるSMMが国際貿易における脱米ドル化の潮流をリストとして載せています。ロシアの輸出は既に制裁により影響を受けていますが、インドネシアによる貿易決済通貨の多様化への動き、ブラジル大統領によるBRIC間貿易の米ドル以外での決済オプションの呼びかけ、インドとマレーシアによるルピーでの決済、ブラジルの外貨準備通貨2位に人民元が躍進した事、更にUAEとインドの非石油関連貿易に関するルピー決裁の協議、等を上げています。世界の中央銀行の外貨準備高に占める米ドルの割合は、1999年の70%超から2022年には約59%に低下しました。同時期の世界貿易に占める米国のシェアは14%から11%に低下しています。世界経済での米ドルの地位は当面揺るぎないものですが、貿易では少しずつ地位の変化が起きつつあります。これはブロック化によるリスク回避でもあり、数十年かけて景色が変わる可能性があります。つい最近、日本円は「実質実効為替レート」が50年前の水準となった事が大きく取り上げられていました。他通貨が貿易決済でより使われるような場合、国際決済力としての円の実力は、ポジティブな反応にならない事だけは確かです。
https://news.metal.com/newscontent/102194965/Increasing-Countries-Join-%22De-Dollarisation%22-amid-Currency-Settlement-Diversification-Here-are-Their-Various-Policies-RMB-Internationalisation-is-Accelerating/

欧州議会と加盟国の代表は2025年からEU発の航空機に段階的に持続可能な航空燃料(SAF)を義務化する事に合意しています。SAFは2025年迄に2%、2030年迄に6%、2035年迄に20%、2040年迄に34%、2050年迄に70%の混入率が必要です。SAFは食品、飼料作物、中間作物からのバイオ燃料、パーム脂肪酸蒸留物(PFAD)、パームや大豆由来の材料からのバイオ燃料が含まれます。2025年以降のフライトにEUエコラベルを採用する事も合意しています。航空会社は乗客1人当りの予想炭素排出量と重量1キロ当たりの予想炭素効率を示すラベルを付けてフライト(チケット)を販売可能となります。チケットの購入者はエコラベルによりフライトの環境パフォーマンスを比較できるようになります。
https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20230424IPR82023/fit-for-55-parliament-and-council-reach-deal-on-greener-aviation-fuels

ここで何度か取り上げている風力発電の実態ですが、欧州の風力発電業界団体であるWind Europeが、現在開催中の年次会議でその苦境を明かしています。原材料価格の高騰、戦争による世界経済の低迷、更に欧州の金利上昇という三重苦に苦しんでいます。本来、今年は欧州の風力発電開発業者に最良の年であるはずでした。最近、北海エリア9ヵ国が2030年迄に120GWh、2050年迄に300GWhのオフショア風力発電を目指す事に署名し、業界は好調に見えました。しかし業界の中核企業であるドイツのシーメンスガメサやデンマークのヴェスタス等、欧州の風力タービンメーカーは赤字経営を続けています。更に安価な原材料を武器に受注を増やす中国企業との競争に晒されています。加えてタービン用の磁石製造に必要な原材料は、過度に中国に依存した状態が続いています。フランスのエネルギー大臣は欧州のプロジェクト入札者を優遇する為に入札に必要な要件として「ローカルコンテンツ」(欧州調達)の基準を持たなければならない、と言及しています。特にグリーンテクノロジーは経済原則や科学的分析に基づかずイデオロギー的な政策をバックに投資した企業の多くは、今、脆弱なサプライチェーンの課題に直面し、世界中で大きな問題を抱え始めています。
https://windeurope.org/newsroom/press-releases/windeurope-2023-its-time-to-get-serious-about-speeding-up-the-expansion-of-wind-energy-in-europe/

プラスチックリサイクルで大きな課題とされている脱臭の問題が一歩前進したニュースです。研究機関であるFraunhoferは、実験室規模ながら、加圧水抽出を利用し市販のHDPE包装品からトレーサー・リモネン(香料)を除去する事に成功しています。この方法では有機溶剤を使用しません。より低コストで環境に優しい工法です。この方法を応用する事でプラスチック廃棄物から匂いを除去し、材料品質を短時間で大幅に向上させる事が出来ます。実験では赤外線分光法と質量分析法を使用してリネモンがどの程度除去されたかを測定し、有効性を確認しています。研究者は今後プラスチック廃棄物の処理への応用に自信を見せています。
https://phys.org/news/2023-04-recycling-plastic-packaging-fragrances.html

中国の科学研究紙Chinese Physics Lettersに掲載された研究発表によると、北京の中国科学院の物理学研究所の研究者が、1Kg当り711kWのエネルギー密度のあるリチウム電池を開発した事が伝えられています。現在市販されているものは、エネルギー密度の高いものでも270Wh/Kg程度なので、その2.5倍近いエネルギー密度を達成しています。先週CATLが1Kg当り500Whのエネルギー密度を持つ「凝縮型」電池を航空機向けに発表しました。それを1.4倍上回るものです。今後のEVはシティーユースやエントリーモデルには安価な低密度LIB、プレミアム モデルには高密度LIBを利用する等、コストによりバッテリーの仕様を変える動きがあります。ただしLIBはエネルギー密度と安全性はトレードオフの関係がある為、エネルギー密度が高くなるとバッテリー作動中のリスクが高まります。安全性を確保しながら、エネルギー密度を徐々に向上させる別の技術が必要となってきます。何れにしてもマーケットが拡大するにつれ、技術の進歩の速度が速まり、5-6年で現在の最新技術も過去のものとなる可能性がある分野の為、研究テーマを含めた情報収集が必要な事は確かです。安全性確保の為には多くの研究者が全個体電池の優位性を上げていますが、大型品の量産技術が確立されていない為、今後に注目すべきテーマです。
https://cleantechnica.com/2023/04/25/chinese-researchers-announce-711-kwh-kg-lithium-battery/

今後投資が増える分野に希土類元素のリサイクルがあります。希土類のリサイクル技術開発を行うカナダの新興企業Cyclic Materials が3000万ドル(約40億円)の資金を調達した事が伝えられています。出資はNYの投資会社Energy Impact Partners(EIP)とBWMが母体のBMW i Ventures (BiV)を通じて、複数の投資機関が行っています。希土類元素は廃棄製品の様々な磁性材料を分離する事が難しい為、リサイクルが最も少ない金属の1つです。しかし希土類元素の世界市場は2030年迄に現在の3倍に増加すると予測されています。Cyclic Materialsは技術開発と共にパイロット工場を建設し、見込み顧客にリサイクルされた希土類元素のサンプルを配布してきました。Cyclic Materials社は、今年2月に欧州の大手化学薬品メーカーのソルベイと希土類永久磁石のリサイクルに関するMOUを交わしたばかりです。
https://www.cyclicmaterials.earth/news/cyclic-materials-raises-27m-series-a-to-scale-advanced-critical-metals-recycling-technology

世界79ヵ国の鉄鋼メーカー、業界団体、協会、関連組織がサポートするGlobal Steel Climate Council(GSCC)が、鉄鋼の製造における炭素排出量の測定と報告の為の「基準」を発表しました。この規格は、製鋼製造における技術を分けず、単一の基準によって作成され、スコープ1、2、3の全てのGHGを測定する事を求めています。基準は今後、世界の全ての鉄鋼生産者に等しく適用され、顧客が鉄鋼製品に関係する実際の炭素排出量を知り、比較できる事を目的としています。
https://globalsteelclimatecouncil.org/press-release-standard/

欧州議会の環境委員会は、繊維製品が持続可能で社会的に公正な方法で生産される為のEUの措置(規制)を採択しました。規制手続きの中間ステップですが、かなり野心的な内容です。環境委員会は欧州委員会とEU加盟国に対し、安価で大量に生産され、使用期間の短い「ファスト ファッション」に終止符を打つ措置を採用するよう求めています。繊維製品の生産工程でのエネルギーと水の消費量を減らし、有害物質の使用と放出を回避し、材料と消費のフットプリントを削減する事が要求されています。この措置が発効すると全ての繊維製品と履物にエコデザイン要件が適用されます。採択は賛成68票、反対0票、棄権1票となり、反対票がゼロという圧倒的多数での採択となっています。売れ残った繊維製品や返品された繊維製品の廃棄の禁止、グリーンウォッシングの規制、マイクロプラスチックとマイクロファイバーの放出の防止、が含まれています。
https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20230424IPR82040/ending-fast-fashion-tougher-rules-to-fight-excessive-production-and-consumption

欧州議会の環境委員会と産業委員会はエネルギー産業からのメタン排出を抑制する為のEU規則案に賛成票を投じています。環境・産業委員会は2025年末迄にEUのエネルギー関連部門のメタン排出量に関し、2030年の削減目標を提案するよう要請します。メタンはGHGとして二酸化炭素に次いで2番目に気候変動への影響があります。IEAによるとメタンは、石油、石炭、ガスの採掘と輸送中にインフラから漏れる可能性があり、それらは人間活動に起因するメタン総排出量の40%を占めています。議会が賛成した規則案のテキストでは、ガスのインフラ事業者はメタン漏洩部品を発見次第、最長5日以内に全てを交換又は修理しなければなりません。EUが提案したメタン規制案は、賛成114票、反対15票、棄権3票という大多数の議員によって承認されました。草案は現在5月8日から11 日に行われる議会本会議での投票にかけられ、今後数ヵ月以内に法律を最終決定する為のEU加盟国との交渉を行う事になります。
https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20230424IPR82039/meps-vote-to-boost-methane-emission-reductions-from-the-energy-sector

BMWが新型モデルに利用するリサイクル材の割合を現在の目標の約30%から50%に引き上げるという目標を設定しました。これはBMWが主導しドイツの公的支援を得たCar2Carというプロジェクトで行われるもので、BMWは500台のELVをこの取組に提供します。このプロジェクトでは、自動車の解体工程を最適化する事に加え、シュレッダーで破砕した後の工程に最新の技術を組み合わせ て行われます。テストに利用されるELVはロールスロイスといった超高級自動車からミニまで様々なブランドで構成されています。車の仕様も様々で、ガソリン車、プラグインハイブリッド、EVを含む自社の多様なラインナップから多数のモデルをリサイクルします。
https://www.press.bmwgroup.com/global/article/detail/T0413318EN/from-scrap-to-raw-material:-state-supported-car2car-project-develops-technologies-to-improve-recycling-of-end-of-life-vehicles?language=en
https://www.zigwheels.my/car-news/bmw-car2car-project-targets-50-recycled-materials-usage-for-production

EU加盟国の1つであるアイルランドが、クリーンエアー戦略を発表しています。この戦略は2040年迄にWHOの大気質ガイドラインの数値の達成を義務化するもので、2026年と2030年迄の暫定目標を設定し、進捗状況を確認するものです。提案では次の規制事項が含まれています。自動車などの排出を制限する「低排出ゾーン」の設定、渋滞料金、化石燃料車の移動制限、職場の無料駐車場の廃止、駐車料金の値上げ、交通の排出量削減の為の道路割当、化石燃料と泥炭の使用削減、EV車両の推進、住宅のエネルギー効率の改善。更にアンモニアや非メタン揮発性有機化合物等の農業汚染物質を2030年迄に90%を回収し、化学窒素(製品:肥料等)の使用の削減、草原へのクローバーの追加も含まれます。また大気汚染を大幅に削減する為の新しい「大気浄化法」を策定することを計画しています。化石燃料やエンジン車にとっては厳しい規制となります。
https://www.gov.ie/en/press-release/aa501-government-approves-irelands-first-ever-clean-air-strategy/

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