NEWS
NEWSCONの気になるNEWS(2023年4月第1週)
スウェーデンの鉄鋼メーカーであるSSABは、化石燃料を使用せず製造するSSAB Zero™鋼を発表しています。今年後半に販売開始予定で、自動車メーカーのボルボ・グループは既に納入契約を結んでいます。SSABによれば、この新製品は高炉と電炉を組み合わせた工法で製造されており、リサイクル材を含みますが、マスバランスについては発表していません。製造量目標は2023年に4万トン、2025年に約10万トンまで増産する事を計画しています。自動車にネットゼロ鋼が使われるというのは画期的な出来事です。スウェーデンのボルボは中国の吉利控股集団が所有しています。
▶ https://www.steeltimesint.com/news/ssab-launches-zero-emission-steel
中国とブラジルが米ドルを利用せず自国通貨で取引することで合意に達した事をブラジル政府が発表しています。この措置により世界第2位の経済大国である中国と、ラテンアメリカ最大の経済国であるブラジルが、人民元とレアルを使い、貿易や金融取引で交互に交換する事が可能となります。中国はブラジルにとって最大の貿易相手国であり、2022年の二国間貿易額は過去最高の1,505億ドルに上ります。2月にはイラクが中国との貿易決済を人民元で行う事を計画している事が報道されています。中国はロシア、パキスタンとも同様の通貨協定を結んでいます。
▶ https://www.thenationalnews.com/business/economy/2023/03/30/china-and-brazil-strike-deal-to-use-own-currencies-for-trade-instead-of-dollar/
コンテナ船の価格分析を行うXenetaがコンテナ輸送価格指数(XSI)が3月も下降傾向を続けているが、2月よりも下落ペースが遅くなっている事を指摘しています。3月は特に欧州から極東への取引料金が下落しました。今後、米国で年間契約を行っている荷主が4月、特に5月に多く契約更新を行う為、昨年の運賃が高い契約から更新される事になり、輸送価格指数は一層ダウンする傾向にある、としています。「指数」のダウンが直接スポット価格とは連動しませんが、全体として荷動きが悪い傾向がこの結果に反映されている事が示されています。
▶ https://www.xeneta.com/blog/xeneta-shipping-index-xsi-contract-market-march-2023
欧州では来週から各国で選挙が連続して行われます。フィンランド、ブルガリア、モンテネグロで重要な事案への投票、アンドラでの選挙、フランスでは4つの選挙区での選挙、イタリアとスイスの地方選挙などです。何れも現政権への信認と批判が判断されます。欧州では最近、各地の選挙で中道左派から中道右派へと流れが傾きつつある状況がある為、その流れを確認できる機会となります。最近の選挙ではスウェーデンやイタリアでも中道右派や右派系の政党が勝利しており、ドイツでも政権与党が地方選挙で敗北する等、産業政策や移民政策への不満が結果に表れ始めています。移民を多数受け入れ自由で開かれた社会を目指していたEUにとって、一連の選挙結果は今後を占う試金石になりそうです。
▶ https://www.euractiv.com/section/politics/news/super-election-week-in-europe-heres-what-to-watch-out-for/
エアコンやヒートポンプ産業に影響がある法案が欧州議会で可決されています。欧州議会は高い温室効果がある「フッ素化ガス(Fガス)」を早いペースで段階的に削減する事に賛成しています。投票は賛成426、反対109 人、棄権52で可決されています。今後、理事会の承認後に立法プロセスに入る事になります。フッ素化ガスは種類にもよりますが、最大で二酸化炭素の24,000倍の環境影響をもたらし、現在のEUの温室効果ガス排出量の2.5%に当ると推定されています。フッ素化ガスはヒートポンプやエアコンで使用されている主な冷媒で、この法案に対してメーカーは早急な削減に反対するロビー活動を行ってきた事が伝えられています。法案では2015年比で2024 年に23.6%まで削減、2027年以降は11%まで削減し、2050年には使用ゼロとなります。輸入品に対しても厳格な検査と規制を行う事が盛り込まれています。フロン以外の冷媒ガスにはアンモニア、CO2、プロパン等があります。冷媒の性能が落ちるとアルミや銅を多用する熱交換器のサイズが大きくなる為、非鉄の需要にも影響がある分野と言えます。
▶ https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20230327IPR78543/fluorinated-gases-reinforced-eu-action-to-cut-emissions
スウェーデンのタイヤリサイクル企業Scandinavian Enviro Systemsとプライベートエクイティ企業であるAntin Infrastructure Partners (Antin)が世界初の大規模なタイヤリサイクル工場を実現する為に合弁会社の設立を発表しています。JVは2030年迄に年間最大計100 万トンの使用済みタイヤをリサイクルする工場を欧州内各地に設立する計画です。タイヤメーカー最大手の1つであるフランスのミシュランは、同工場からリサイクル材料の供給を受ける契約に署名し、JVをサポートします。またミシュランは、将来パートナーとして合弁会社に参加する予定です。最初の商用プラントはスウェーデンのウッデバラに建設予定で、当初の同工場の処理能力は34,500トンで、この量はスウェーデンの使用済みタイヤの年間排出量の約40%に相当します。工場は2025年迄に稼働する予定です。Enviroは欧州各地でリサイクル工場を展開する予定で、業界紙はこの動きを初の本格的なタイヤからタイヤへのリサイクルの先駆け、と紹介し始めています。
▶ https://envirosystems.se/investor/press-releases/enviro-and-antin-infrastructure-partners-to-create-the-worlds-first-large-scale-tire-recycling-group-supported-by-michelin-cid-F53DB1711A34A830/
LMEは同市場を強化する為の2年間のプログラムをHPで発表しています。これは主に2022年3月に起きたニッケル取引での事件の是正勧告に対処するものです。この措置は、以下を含んでいます。規制当局の調査結果を織り込み、制御を強化しリスク管理を行う事、LMEの参加者とメンバーに弾力性のある流動性を提供できるようにする事、LMEグループの市場の運営とガバナンスに対する信頼と透明性を構築する事、市場構造を進化させ、近代化と変化をもたらすLMEグループの能力を実証する事、となります。
▶ https://www.lme.com/en/Trading/Initiatives/Strengthening-the-market
欧州リサイクル産業協会が3月30日に行われたEU政府の政策立案者との年次会議についてプレスリリースを出しています。やはり年次会議でテーマとなったものは、重要な原材料法が示された事で加速している「廃棄物から(廃棄物は最早廃棄物ではなく)資源」という流れ、サーキュラーエコノミーの大きなテーマとして指令の改正と新規の規制が示される予定の「包装」と「繊維」、更に「LCA=ライフサイクルアセスメント」、そして「古着」です。製品デジタルパスポートによりリサイクル業も大きな影響を受けると言われており、リサイクル業を取り巻く欧州の環境は数年で大きな変化が起きる事は間違いありません。
▶ https://euric-aisbl.eu/resource-hub/press-releases-statements/press-release-euric-gathers-recyclers-and-policymakers-in-brussels-for-successful-event
韓国通商省によると3月の韓国の商品輸出額は551億2000万ドルで前年同期比13.6%減少しています。1-3月の輸出は前年比12.6%減少し、2020年の第2四半期以来の悪い結果となっています。半導体輸出は8ヵ月連続下落し34.5%と大幅な落ち込み、石油化学製品輸出は25.1%減少、しかし自動車輸出は持ち直し64.2%増加して過去最高を記録しています。3 月の貿易赤字は46億2000万ドルで13ヵ月連続の赤字ですが、赤字幅は2022年9月以来最小でした。
▶ https://www.icis.com/explore/resources/news/2023/04/03/10872176/s-korea-petrochemicals-mar-exports-fall-25-overall-shipments-down-13-6/
中国の富裕層による海外資産購入が増加しているというニュースです。パンデミックの規制解除後に中国の富裕層がシンガポール、バンコク、クアラルンプール、シドニー、メルボルン、カナダの不動産に投資を再開しています。中国ではキャピタルフライトの規制以後、ある程度海外不動産投資が鎮静化していましたが、水面下でまた活発化しているようです。米国では州によって規制も開始されようとしています。
▶ https://www.asiafinancial.com/rich-chinese-back-buying-up-property-in-se-asia-australia
日曜日に行われたフィンランドの総選挙では中道左派の現政権党(19.9%)が誤差で敗れ、保守党(20.8%)が勝利しています。右派のフィンランド党 (アイデンティティと民主主義)は記録的な2位の20.1%を獲得しており、連立政権の他の3つの政党である中央党、左翼連合、緑の党は大敗しています。NATO加盟を巡り現政権への評価は高かったものの、経済政策や債務問題で右派が躍進する結果となり、ここ1年欧州で続いている保守化の流れが継続している事を示しています。今後どのように連立を組むかによって政策の方向性が変わりそうですが、現首相は負けを認め政権が交代する予定です。滅多に語られませんが2019年、39歳で史上最年少のフィンランドの首相の座についたサンナ・マリン現首相は、世界経済フォーラムのヤンググローバルリーダーフォーラムの出身です。WEFの同じフォーラム出身のカナダのトルドー首相と同じで、就任当時、閣僚を個別能力より多様性優先で採用する試みを行い、連立政権を組んだ5政党のトップは全て女性でした。更に5党の内、4人が40歳以下でした。これは(WEFやその一派がスポンサーする)世界のマスコミで絶賛され、日本でも報道されました。しかし危機時の経済政策や政権運営に問題を抱え、結局、選挙で負けました。同じ世界経済フォーラムのヤンググローバルリーダーフォーラムの出身の元ニュージーランド首相のジャシンダ・アーダーン(こちらも女性最年少首相)も今年2月に辞任し4-5年に及ぶWEF出身の若手女性首相が連続して入れ替わる事になりました。最新の調査ではカナダのトルドー首相の支持率は過去3ヵ月で6ポイント低下し、37%しかなく、同じWEF出身のフランスのマクロン大統領の支持率は、年初来8ポイントも低下し、政権に満足しているのは僅か28%に留まっています。戦争が起き、グローバリズムで進められてきたサプライチェーンの分断により、インフレと高金利とエネルギー高が起こり、相次ぐ補助金のバラマキによる債務で社会保障が削られるという悪循環に陥り、欧州の時代は確実に変化しています。実は政策側も焦っていて、何としても来年のEU議会選挙前には野心的なグリーン化の法制度や指令を通したい意向です。
▶ https://www.bbc.co.uk/news/world-europe-65157357
▶ https://www.younggloballeaders.org/community?utf8=%E2%9C%93&q=Sanna+Marin
Sure Energyが現在のリチウム価格の下落動向を分析してレポートしています。GSは今年炭酸リチウムの供給が年間33%増加するのに対し需要の増加は25%留まると予測しています。その為、炭酸リチウムの価格は34,000ドルにまで下落し、更にそれ以降も最大36% の下落を予想しています。この価格帯では中国のリチウム精製業者は事業が成り立ちにくい事も指摘しています。問題はこの需給バランスの不均衡の本当の理由です。今迄は中国政府によるEV車への補助金の終了と、インフレや景気低迷に伴う欧州でのEV販売不振をあげていましたが、専門家は考えていたよりも早く新しい鉱山からの供給増と処理業者の生産増により供給不足問題が解決されている事を指摘しています。短期的には更に下落する可能性があります。
▶ https://www.saurenergy.com/solar-energy-blog/crash-in-lithium-prices-a-boon-for-ev-buyers-or-unsustainable-trend
Metal Minorのレポートによると、今年インドの鉄鋼生産が継続して2桁の伸びになる事が予想されています。調査機関ICRAの予測では2023年のインドの鉄鋼需要の伸びは11.3%(2022年は11.5%) となり、インド政府がインフラ整備を続ける経済政策に後押しされています。インド政府の設備投資支出は2024年は更に37%増加する見込みです。また最新のデータではインドへの半製品の輸出の第2 位にロシアが上がっており、およそ 1年前から劇的に上昇していることを明らかにしています。The Hindu Business lineのレポートではロシアはインド向けで熱間圧延コイル(HRC)とストリップの第 2 位のサプライヤーとなり、日本を抜きました。またベトナムからの輸入量も300%増加、29万トンに達しています。ロシアとベトナムからインドへの輸出が急増し、逆にインドへの主要な鉄鋼製品の供給源であったインドネシアと台湾が減少しています。
▶ https://agmetalminer.com/2023/03/31/steel-news-sources-report-increase-in-indian-production-consumption/
中国の国内鉄スクラップ価格は、限定的だが4月も若干上昇する見込みである事をMySteel Globalが伝えています。全国の247のBF(高炉関連)設備の稼働率は3月末迄に21ヵ月振りの最高値である90.56%に達し、前月比でも3.59%上昇しました。87の独立系電炉メーカーの稼働率も3月は月間で14.94%と大幅に上昇し、3月31日時点で68.18%に達しています。これは2022年5月以来の最高値です。この為、足元での鉄スクラップ価格も上昇傾向を見せています。鉄鋼メーカーの増産は在庫不足を補充する目的が多いようですが、需要そのものが伸びない傾向が判明した場合は、急ブレーキがかかる可能性も指摘されています。4月のスクラップ価格の上昇は限定的になるとの予測です。
▶ https://www.mysteel.net/news/all/5037613-mysteel-chinas-steel-scrap-prices-to-see-uptrend-in-apr
3月30日、英国政府は炭素排出と国境炭素税に関係するオープンコンサルテーションを開始する事を発表しています。この措置はEU が2023年10月から予備的に炭素国境調整メカニズム(CBAM:別名国境炭素税)を開始する為、それに対応する事を迫られての事です。EUと貿易量が多い英国では、英国産業をCBAMに対応させる必要があります。それ以外にも英国政府は製品が英国へ輸入される場合、輸入製品の生産で排出される炭素に課す独自の英国版 CBAM を検討しています。原産国で既に適用されている炭素価格と、製品が英国で生産されていた場合に発生したであろう炭素価格との間のギャップを埋めるメカニズムとなります。現時点では英国の CBAMの範囲は何も決まっていませんが、英国の排出量取引制度の対象となる製品が含まれる可能性があり、また段階的に展開される可能性もあります。国境炭素税は当事国の一方が行うと保護貿易化するため、貿易量が多い他方も対応しなければならない政策です。
▶ https://www.gov.uk/government/consultations/addressing-carbon-leakage-risk-to-support-decarbonisation/factsheet-consultation-on-measures-to-mitigate-future-carbon-leakage-risk
4月3日に発表された中国人民銀行(PBOC)が発表した新しいレポートによると、中国人は今年の第1四半期に消費と投資に積極的になった一方で、節約する人は少ないというデータが示されています。またローン需要が11年間で最高に急増したことを示しました。この調査結果は、借り入れコスト低下による企業向け長期融資が急増している銀行の貸出データと一致しています。これは現在の住宅セクターの混乱による一般家庭向けローンのレバレッジ解消とは対照的な動きです。この報道は中国メディアではポジティブに報道されています。しかしプロの投資家向け情報ソースの1つでもあるZero Hedgeは、対照的な見方をしています。中国企業のマクロ経済指数は2023年第1四半期に1年前の水準まで回復しただけで、収益性指数は2020年3月以来の最低水準まで落ち込んでいます。その結果、本格的な景気回復とは程遠く、これらの企業向け長期ローンの急増はその一部が事業拡大への融資ではなく既存の債務を借り換えるために新しい資金を借りている可能性があると分析しています。
▶ https://www.yicaiglobal.com/news/chinese-consume-invest-more-in-first-quarter-pboc-report-shows
▶ https://www.zerohedge.com/markets/chinas-credit-boom-overstates-its-business-recovery
4月3日、ワシントンポストがノルドストリームの爆破事件について続報を出しています。内容は先の著名ジャーナリストのシーモア・ハーシュによる「ノルドストリームは米国政府が破壊した」というリーク情報に対する、その後突然出てきた「親ウクライナのパルチザンが不正な作戦で実行した」という情報についての詳細で、前者は世界のメインストリームメディアはほぼ無視しましたが、後者は何故か世界中で大々的に報道されました。親ウクライナのパルチザンによる破壊工作を捜査しているドイツの捜査官によると、後者の説には不明瞭で懐疑的な点が多くあると指摘しています。その為、ハーシュのリークを葬る為に後から作られたものだとする見解がある事を紹介しています。また何より欧州のある上級外交官は「ノルドストリームについて話してはならない」と語り、西側の指導者は真実が明かされても殆ど利益を得られない、と述べている事が、この問題の核心を物語っています。そもそも、親ウクライナのパルチザンがノルドストリームを破壊しても何のメリットも無く、技術的にも大変困難です。この問題は真相が明かされる事がなく、うやむやに人々の記憶から忘れ去られる「事件」になる事はほぼ確実です。
▶ https://www.washingtonpost.com/national-security/2023/04/03/nord-stream-bombing-yacht-andromeda/
ドイツ産業連盟(BDI)は現在凍結されているEUと中国の投資協定の再交渉を暗に要求しています。これは欧州とフランスのトップ2人が北京を訪問する事に合わせてBDIの会長が行ったものです。欧州委員長就任後、初めて訪中するフォンデア・ライエンは先週、EU は中国との関係で依存度の高いグリーン技術や鉱物を含むリスクを削減しなければならない、と述べて関係の再考を示唆しました。これは米国からの政治的圧力が常にある事も1つの理由です。この発言に対し、中国メディアのグローバル・タイムズ紙は、欧州は結局中国との経済関係を断ち切ろうとする試みに苦しむだろう、と警告しました。ドイツの過去20年の繁栄は、経済力に見合わない安い通貨ユーロ、ロシアのエネルギーと資源、中国の市場、に依存しており、この方程式が崩れて新たな産業モデルの構築が困難になっています。最新のIFO研究所の予測では、現在のエネルギー価格の大幅な下落を鑑みてもドイツの2023年の経済成長は0.3%と見込まれています。フォンデア・ライエンは元メルケル政権の閣僚でドイツ人です。戦争の長期化は欧州経済に様々な問題を引き起こしています。
▶ https://twitter.com/fbermingham/status/1643514512614588416/photo/1
ベルギーの「スーパーマーケットで販売されている製品」のインフレが史上最高となっています。3 月の価格は1年前より20.6%も上昇しています。主な要因は生鮮野菜です。これはエネルギー価格の上昇により、冬季の温室栽培野菜の生産量が大幅に減少した事が要因です。このインフレによりベルギーの世帯は1年前よりもスーパーでの買い物に1ヵ月当り平均約89ユーロの支出増となります。主要なものでは、きゅうり(+51%)、玉ねぎ(+50%)、冷凍フライドポテト(+50%) 、ゴーダチーズ(+42%)、卵(+34%)、クリーム(+33%)、セミスキムミルク(+29%)等、日常必要とする食品が大幅に値上がりしています。
▶ https://www.test-achats.be/famille-prive/supermarches/news/inflation-mars-2023
インドのGFGアライアンス傘下で英国のLIBERTY SteelはオーストラリアのWayallaにある高炉(BF)を廃止し、電炉と直接還元鉄(DRI)に投資する事を発表しています。この投資により従来の高炉からCO2 排出量を90%削減する予定です。オーストラリア産のマグネタイト鉱石を処理する直接還元鉄工場の生産能力は年間180万トンで、還元材は当初、天然ガスとグリーン水素の混合ガスを使用します。将来、供給量が確保できた時点でグリーン水素に完全に移行します。DRIは鉄スクラップと共に電炉で製品化されます。GFGアライアンスは元々世界で一番グリーンスチールへの移行を進めていましたが、ソフトバンクグループが絡むグリーンシルによる資金調達が断たれ1年程動きが止まっていました。DRIはメタンの主原料である天然ガスが安価に入手できる地域が有利で、北米、インド、オーストラリアで相次いて投資が進んでいます。ただし水素は吸熱反応(燃えると回りの熱を奪う)があり、拡散係数が大きく、燃焼速度はメタンの7倍弱もある事から、実際にアルセロールミッタルのカナダ工場のテストでも水素濃度を6.8%に上げたテストケースしか発表されていません。グリーン水素は常に過大宣伝が付きまとうエネルギーである事から、天然ガスからの置き換えには課題が山積みというのが実態と思われます。
▶ https://libertysteelgroup.com/liberty-steel-in-whyalla-announces-the-phase-out-of-coal-based-steelmaking-with-purchase-of-a-low-carbon-emissions-electric-arc-furnace/
LIBに関する2つのニュースが伝わっています。1つ目はフォードモーターやサムスンSDI向けのLIB材料を供給する韓国のEcoproグループが韓国で製造拠点を拡大する計画を立てている事です。この投資は同社の韓国での2ヵ所目の工場に向けたもので、リサイクル施設を併設し、前駆体等の製品を生産する予定です。関係者の1人によると、エコプロは今まで拡大投資計画を延期しており、米政権によるインフレ削減法について米当局者から詳細が明確になるのを待っているとの事です。先週末に米政権はガイダンスを発表し、陰極と陽極の材料は「部品」ではなく「重要鉱物」に分類される為、企業は韓国の工場で生産を続け、米国の自動車メーカーに供給できる事が確認されています。
もう1つは、WSJが伝えた内容で、欧州自動車メーカーのステランティスと BMW が日本のパナソニックと共同で北米にバッテリー工場を開設することを検討しているという事です。BMWは以前にEnvision AESC と協力する意向を発表していました。しかしBMWは米国でのバッテリー調達要件の厳格化に加え、中国と米国との政治的緊張により大型の円筒形セルについてはエンビジョンAESCとの協力を控え、代わりにパナソニックと協力する可能性があると、WSJは伝えています。ただし両自動車メーカーもこの噂についてまだコメントせず、パナソニックも控えめな姿勢を保っています。
▶ https://finance.yahoo.com/news/ford-battery-partner-eyes-expansion-013912518.html
▶ https://www.electrive.com/2023/04/05/stellantis-bmw-consider-battery-plant-in-the-usa/
米国ロードアイランド州(地区)で「環境正義」に関する法律が提案されています。環境正義(EJ:Environmental Justice)は欧米で定義が進められてきたもので、法制度として徐々に具現化しつつあります。ロードアイランドの法案では、汚染物質を排出する工業用地の使用を許可する際に、州当局がより裁量を持つ「環境正義の重点分野」を作成する事を義務化するものです。この法案は環境正義法(HB 6196)と定義され、地域のメンバーの意見を聴取し、許可書を発行する際に規制当局に多くの裁量権を与えるものです。この法案により規制当局は特定の地域や害を及ぼす許可(許認可)を拒否する権限を持つ事が出来るようになります。リサイクル業はこの範疇に入ります。「環境正義」は今後聞くテーマとなると思います。
▶ https://www.epa.gov/environmentaljustice/learn-about-environmental-justice
中国のMysteel Globalが主要な金属コモディティに関する予測をあげています。銅は金融危機やトレーダーの慎重姿勢にも関わらず短期的には上昇の可能性が高い事、リチウム化合物は短期的には下落し続ける事、硫酸ニッケルは当面の間緩やかな下落を続ける事、硫酸コバルトは足元の売買交渉で下落傾向にある事、三元前駆体の価格は直近安定する事、三元系カソード材料は数日後には下落が止まり安定する可能性が高い事、リン酸鉄リチウムは短期的に下落する事、です。また中国では鉄鉱石価格が今後下落する可能性が十分にあり、今年後半は期待する程の鉄鋼需要が生まれず、上値が重い展開が予想されています。
▶ https://www.mysteel.net/top-news/all/
既に中国/日本発で世界に広く報道され始めていますが、中国がレアアースを含む磁石技術の輸出禁止を計画している事が伝わっています。これは欧米日によるコンピュータチップの輸出規制に対抗したものです。カナダやオーストラリアが中国に代わるレアアースの供給地として期待されていますが、採掘や処理時に発生する有毒物質が問題となっています。それらには希酸、重金属、カドミウム、鉛、トリウム等が含まれ、特別な環境対応が必要で、実際に西側だけで価格競争力のある供給網を構築するには問題が山積みです。中国の方針は、減量技術、代替材、そして新たなリサイクル需要を生み出す事になる可能性があります。
▶ https://www.asiafinancial.com/china-contemplating-export-ban-on-rare-earth-magnets-nikkei