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NEWSCONの気になるNEWS(2023年3月第5週)
23日に欧州議会とEUの閣僚は、船舶の排出量削減について合意しました。対象は5,000トン以上の船舶に限り、船舶の排出量は2025年迄に2%、2050年迄に80%削減しなければなりません。炭素に加え、メタンと亜酸化窒素の排出も対象としています。欧州委員会は2028年に見直しを行い、この規則を小型船にも課すかどうかを決定します。排出削減率は5年毎に厳しくなります。それぞれの減少率は2030年6%、2035年14.5%、2040年31%、2045年62%、2050年80%となっています。EU港内または、EU港間を航行する全船舶が対象でEU域外船がEU港に寄港(もしくは出航)する場合は、航海で使用されるエネルギーの50%に適用されます。更にコンテナ船と客船は2030年以降、EUの主要港の波止場に係留されている間、全ての電力需要に対して陸上からの電源を使用する事が義務付けられます(エンジンで自家発電は出来ない)。今回の合意の目標を達成出来なかった場合は罰則金が課され、それらは海事部門の脱炭素化に向けたプロジェクトに割り当てられる予定です。バイオバンカー燃料の需要が高まる事とコスト増は避けられない可能性があります。
▶ https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20230320IPR77909/fit-for-55-deal-on-new-eu-rules-for-cleaner-maritime-fuels
在中国米国商工会議所(AmCham China)の会頭が、米国企業が中国でのビジネスに「これまでにないほど消極的だ」という見解を述べています。会頭のマイケル・ハートは、米中対立が「ビジネスを非常に困難なものにしている」と認め、AmCham Chinaが900 社以上の会員を対象に行った年次調査では過半数の55%が、もはや中国を投資優先順位のトップ3と見なしていない事が、初めて示されています。昨年の両国間の貿易額は過去最高の6,906億ドルに達している為、今後が注目されています。両国は関税をお互いに課しており、米国は中国からの輸入品の66.4%、中国は米国からの輸入品の58.3%が課税対象となっており、両国共に関税を引き下げる兆候は殆ど見られません。しかし中国側の見方は異なっており、ハンセン銀行のチーフエコノミストは今後も限られた影響しかなく、米国が代替サプライチェーンを利用しても、その国が中国に大きく依存する構造は変わらない、との認識を示しています。この2大国で世界のGDP の約40%を占める為、敵対関係は市場のボラティリティと不確実性を更に生み出す可能性がある事が懸念されています。経済は政治的判断に左右される為、欧米の対中政策は要注意です。
▶ https://www.bbc.co.uk/news/business-65034881
今週20日、気候変動に関するIPCC AR6 統合レポートが発表されました。日本を含め世界中で注目され、国連総長が「気候の時限爆弾の爆発が迫る」との発言をする等、極めて厳しい認識を示しています。オバマ政権下でエネルギー省の科学担当次官を務め、ニューヨーク大学の都市科学と進歩センターを創設し、そこで教鞭をとっているSteve Koonin(スティーブクーニン)は、IPCCの評価レポートを分析し書物を発行している学者です。今回発表されたIPCCのレポートについて、彼がEuropean scientistsのインタビューに答えています。彼の発言は以前から複数の科学者が同様の事を述べており、英語での情報ソース以外では余り伝わっていないので紹介します。IPCCが公開するのは「完全な」科学的検証データの評価レポートではなく、政策立案者向けに「要約のみ」を統合レポートとして公開します。例えば「気温上昇による死亡者数の増加」について統合レポートでは記載しており、それは本当で間違いないのですが、逆に低温が少なくなった為に死亡者数が大幅に減少した事は伝えていません。つまり発表される「要約」では、気温の上昇で死亡する人数と気温の上昇で低温地域が少なくなる事で死亡が減少する2つの差異を正確に反映していない、というものです。以前の統合レポートも同様で、根底にあるものは科学の誤った表現方法です。事実を知らせるのではなく、気温上昇がもたらす害を説得する事を目的とし過ぎている、という見解です。
実際に、今回3つの作業部会によって出された評価レポートを要約した「統合レポート」は、完全な評価レポートよりも短く、「政策立案者の為の要約」(SPM)(技術的ではない短い概要)と基礎となるレポート部分は計122ページのみです。3つの作業部会がデータを示して作成した「評価レポート」は3,000ページを超えており、要約(統合レポート)はその一部です。統合レポートは専門家だけでなく、政府を含めて(政治家が)数回のレビューを行い発行します。気候変動に対する人間の影響力は着実に高まっている事は間違いありません。しかし最新のIPCC統合報告書では、その原因が人間であると述べており、過去200年間の気候変動は人間が原因であるとニュースも伝えています。しかし、気候や人間活動には浮き沈みがある為、必ずしも正しくありません。例えば2年前の気候モデルと最新の気候モデルの組合せを比較すると、最新の方が感度が40%も高い為、ある部分で敏感過ぎるとみなされています。IPCCの作業部会でもこの点は一部無視しています。世界最高の気候モデラーが出来る限りの努力をしても(入力値に対し敏感に反応し過ぎる為)40%の確率で間違っている可能性があり、非常に当惑させられる、との認識をSteveは示しています。結局3000ページ以上の全評価レポートとその評価方法を全て理解している人は皆無に近く、政治家が関わり、政策立案者向けに作った要約された「統合レポート」だけが1人歩きする危険性を指摘しています。
▶ https://www.europeanscientist.com/en/features/the-greens-are-having-a-coyotte-moment-steven-e-koonin-interview/
金(Gold)は各国の中央銀行が「金準備」として保有したり、工業製品にも多用されたりする、極めて貴重な金属です。落じん灰や電子基板のスクラップも、基本的に金(Gold)の価格で決まるといっても過言でない商材です。今、この金を巡ってGold Mafia(金を扱うマフィア)という言葉が注目されています。これはアルジャジーラの調査隊であるI-Unitが3大陸に跨る数十ヵ所の覆面捜査と数千部の文書を調査した事で判明したもので、そこでは政府関係者(ジンバブエ外交官Uebert Angel)やビジネスマン(あの南アのゴールドリーフたばこのオーナーSimon Rudland)が国境を越えて金(Gold)の違法な売買で膨大な利益を得、マネーロンダリングを行っている実態を明らかにしています。ジンバブエからドバイに「毎月」数十億ドル(数千億円)相当の金が密輸され、犯罪者がダミー会社や偽の請求書を使い、役人に賄賂を支払い、ダーティーマネーを洗浄している実態が明らかになっています。ジンバブエのエマーソン・ムナンガグワ大統領とその政府は、現在同国に課せられた西側諸国の制裁を回避する為に、金の密輸業者を組織的に利用しています。ムナンガグワ大統領の姪のHenrietta Rushwayaはジンバブエの鉱業連合のトップで、金の密輸の重要なパイプ役を務めています。金はジンバブエの輸出の約半分(20億ドル以上) を占めていますが、制裁もあり公式なルートでの輸出が困難となっています。その為、密輸業者はジンバブエからドバイで金を販売するための「公式ライセンス」まで取得しています。昔は金と言えば南アやジンバブエなどアフリカ諸国でしたが、今は中国、ロシア、オーストラリア、米国、カナダ、の順で産出量が多く、アフリカルートのプレゼンスは小さくなっています。しかし、それが闇ルートを活発化させる原因の1つとなっており、非公式で流れたものが公式に市場に出る事で、金価格にも影響を与えています。戦争の影響で各国の中央銀行が金準備を増やす中、益々Gold Mafiaが暗躍しているのが現状です。
▶ https://www.aljazeera.com/news/2023/3/23/gold-mafia-looting-southern-africa
中国最大のバッテリーメーカーであるCATLの会長が24日、今後M3P(リン酸マンガン鉄リチウム)をベースとしたバッテリーの大量生産を開始する計画に言及しています。CATLは現在リン酸鉄リチウムイオン電池(LFP)で世界をリードしていますが、それよりもエネルギー密度が高く、NMCバッテリーよりも安価に製造する事を主張しています。量産は2023年内に開始される予定です。CATLは次世代M3Pバッテリーを利用する事で1回の充電でEVで700Kmの航続距離を達成できる、としています。中国ではここ数ヵ月で40以上のブランドが自動車の価格を引き下げており、1月にテスラが口火を切ってからEVの価格競争が激化しています。ただし世界第2位の自動車市場を持つ米国では、日常的に使う航続距離の長さからFLPは敬遠されており、NMCが主流となっている事は変わりません。
▶ https://www.asiafinancial.com/chinas-catl-to-mass-produce-cheaper-m3p-batteries-this-year
中国の1-2月景気データが発表され、41の主要産業部門の内、28部門で利益が落ち込み、コンピューター、電気通信、及びその他の電子機器の製造業が77%強と最も大きな落ち込みを報告しています。工業部門の利益の数値は年間売上高が2,000万元以上の企業を対象としています。中国の中央銀行は今月、景気回復を支援する為に銀行が保有する準備金の内、現金量を削減しています。中国光大銀行のアナリストよると、自動車部門の利益の減少が製造業の利益を著しく押し下げており、需要の減速、生産コスト増、自動車補助金の減少、価格戦争が原因と分析しています。ただし3月に入ってから鉄鋼生産は回復しており、濃淡のある状況で情報収集と見極めが重要な局面に来ています。
▶ https://www.asiafinancial.com/chinas-industrial-profits-plunge-23-on-weak-global-demand
米国のイリノイ州の下院議会が、発泡スチロール製の食品容器の段階的廃止を定めた法案を可決しています。今後、法案は上院に送られます。この法案では2024年以降、小売店では発泡スチロール製の食品容器を販売もしくは配布を禁止します。一部に免除規定があり、年間の総売上が50万ドル未満のレストランなどの事業体、連邦、州、地方の政府機関が使用する場合、又はボランティアによる炊き出し等は含まれません。PS(ポリスチレン)の一種である発泡スチロールはリサイクルが困難で、廃棄物輸送にも嵩比重が非常に少ない為に単位当たりの輸送費が高くなり、炭素排出量も増えます。その為、PSのリサイクルに関しては欧州でもポリスチレンループイニシアチブ(PS Loop Initiative)が組織される等、社会的な課題となっています。
▶ https://ilga.gov/legislation/billstatus.asp?DocNum=2376&GAID=17&GA=103&DocTypeID=HB&LegID=147453&SessionID=112
米国のパシフィックノースウェスト国立研究所(PNNL)が、廃プラスチックを原料とし、低温で燃料に変換する方法を発表しています。例えばマスクや食品用のパッケージ等、回収してリサイクルする事が困難な使い捨てのプラスチックが問題となっています。通常、化学的にリサイクルする場合は重合を切断又は分解(解重合)する必要があり、大きなエネルギー(熱や圧力)を必要とします。新しい方法では難分解のプラスチックを低温で分解した直後にアルキル化反応によって液体ガソリンの様な燃料への変換を行う事が可能です。プロセスの温度は70前後で単一の反応容器内で分解とアルキル化反応を行います。アルキル化反応では触媒を利用し、同様の触媒反応は、現在、ガソリンのオクタン価を改善するために石油業界で用いられているものと同様なものを用います。PNNLの統合触媒研究所の所長のJohannes Lercher氏は、「この研究は他の多くの研究提案よりも実現性が高く、廃プラスチックの循環を達成できる実用的な解決策となる」との見解で自信を見せています。
▶ https://www.pnnl.gov/news-media/plastic-upcycling-close-carbon-cycle
世界の非鉄の指標となっているロンドン金属取引所(LME)の倉庫管理やシステムの脆弱性が指摘されています。LMEの登録倉庫からトレーダー大手のTrafiguraとStratton Metalsに出荷されたニッケルは、実はただの「石」だった事が判明しています。Trafigura向けのものは到着後、Stratton Metals向けのものは欧州域内で発見されたという事です。ニッケルに関してはTMT Metals及びUD Trading Groupが関与する国際的な詐欺取引があり、上記のTrafigura向けに2022年12月下旬以降出荷されたコンテナの一部が目的地に到着し検査を行った後、ニッケルが全く含まれていなかった事が判明し、今年2月以降に追加検査を行うという大事件に発展しました。最高総額で5億7,700万㌦に及ぶ詐欺であり、Trafiguraは自社HPで声明を出しています。電化での需要が増加しているニッケルを巡っては昨年3月にもXiang Guangdaを巡る大きなトラブルがありました。その他、LMEが関係する銅やアルミのトラブルも一部で伝わっており、倉庫管理での脆弱性が指摘されています。
▶ https://www.reuters.com/markets/commodities/nickel-that-failed-lme-standards-was-found-access-world-warehouses-2023-03-21/
▶ https://www.trafigura.com/press-releases/statement-re-legal-action/
希土類や希少金属の最新抽出技術として注目されており、欧州でもベルギーのカトリーケ大学が欧州政府の助成金を受けて開発を進めた経緯のあるSolvometallurgy(ソルボメタロロジー:ソルボ冶金)を開発するカナダの新興企業ph7が複数のベンチャーキャピタルから資金提供を受けた事を発表しています。資金の合計は1600万㌦で、今回その一部を受け取っています。Solvometallurgyは排水を最小限とし、有毒化学物質を生成せず、高温炉が必要ないという画期的な金属冶金プロセスで注目を集めています。ソルボ冶金は比較的新しい科学的な冶金製法で、商業化に成功した例は殆どありません。しかしレアアースのサプライチェーンの多様化や金属リサイクル技術への関心の高まりから、注目され資金が集まり始めています。
▶ https://www.prnewswire.com/news-releases/tdk-ventures-invests-in-ph7-technologies-for-clean-extraction-and-recycling-of-critical-metals-301782316.html
欧州リサイクル産業協会(EuRIC)は、欧州委員会に対し、鉄鋼のリサイクル目標を様々な製品や廃棄物の法律に設定するよう求める声明をHPに掲載していいます。これは法的拘束力のある使用済み自動車指令や建設製品規則等に設定するよう求めているもので、製品に使われている鉄のリサイクル目標やリサイクル材を設定する事を求めるものです。要求は鉄鉱石を還元して粗鋼を生産する高炉法に比べ、鉄スクラップを溶解する電炉法の方が圧倒的に環境に優しいという事実に基づいています。EuRICは個別の製品に含まれる鉄を再生する為の法律は一部でしかなく、まだ鉄鋼の環境影響の低減には長い道のりが掛かる、との見解を示しています。一旦リサイクル材の利用率やリサイクル率が法律で定まるとリサイクル材の価格の上昇とリサイクラーの存在価値が増します。現在、欧州の鉄鋼メーカーは鉄スクラップを重要な原材料に入れるよう求めており、その動きに対するリサイクル側の牽制の意味も含まれていると思われます。
▶ https://euric-aisbl.eu/news-events/news/steel-recycling
欧州でプラスチック関連の30団体が共同で書簡を発行しています。内容はプラスチックリサイクル材を製品に含める場合の公式な計算式を求めるもので、A mass balance chain of custodyという定義を利用する事を求めています。マス・バランスとは、サプライチェーンにおいて持続可能な材料の正味量を追跡する事です。例えばパーム油の場合、認証を受けていないパーム油と認証されたパーム油を使用した混合物では、認証を受けたものがどの程度あるか(マス・バランス)が特定できません。マス・バランスの計算方法を使っている製品ではサプライチェーンをトレサビした定量計算を用いる事でパーム油が混合物であっても一定量認証パーム油を含んでいると表示できます。このような方法は既に他の分野で行われています。プラスチックのリサイクルでは、別の場所でリサイクルされた材料が入って来るケースや、ケミカルリサイクルと機械的なリサイクル材が混入するケースも想定されます。EU包装及び包装廃棄物指令ではリサイクル材の含有量を指定している為、定量評価ができる計算方法が必要になる為、この書簡を発行しています。
▶ https://www.chemicalrecyclingeurope.eu/post/call-on-eu-harmonised-calculating-rules-for-recycled-content-by-means-of-mass-balance
欧州員会は、欧州議会と理事会のそれぞれと、欧州でのEV充電ステーションと水素燃料ステーションの数を増やすという事で合意しました。特に非鉄に関係しそうな所では欧州の主要幹線道路に60 km毎に少なくとも150 kWの急速充電ステーションを2025年迄に設置する事です。大型車輛用には最小出力350 kWの充電ステーションを設置する必要があり、主要幹線道路では60Km毎、準主要幹線道路では100Km毎となっています。また寄港回数が年間50回以上の大型旅客船が接岸する港、寄港回数が100回以上のコンテナ船が接岸する港には、船舶向けに陸上電力を供給しなければなりません。それにより、船のエンジンをかけて自家発電をする必要が無くなります。今後、欧州議会と理事会の承認が完了すると、本規則は6ヶ月の移行期間を経て発効します。
▶ https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_23_1867
上海石油天然ガス取引所は、中国の国営石油会社CNOOCとフランスのTotal Energiesが初の「人民元決済」によるLNGの売買取引を完了した事を発表しています。中国は近年、国際的に自国通貨の地位を確立し貿易に対するドルの支配力を弱めよる為に、石油とガスの取引を人民元で決済することに重点を置いています。取引はUAEから輸入された約65,000トンのLNGを販売したという事です。この件についてTotal社はガスがUAE産である事を認めましたが、それ以上のコメントを出していません。昨年12月に習近平がサウジアラビアの首都リヤドを訪問した際、中国が石油・ガス取引の人民元決済を行うためのプラットフォームとして上海取引所を「最大限に活用する」と発表していました。エネルギーの国際取引から現実的に米ドル以外の決済通貨のプラットフォームが活用され始めているという事は、歴史的にも大きな出来事と思われます。
▶ https://www.nasdaq.com/articles/china-completes-first-yuan-settled-lng-trade
頻発する輸送時のリチウムイオン電池の火災について、ロジスティクスの業界団体が、LIBの海上輸送に関するガイドラインを発行しています。今後も随時更新される予定の概要を示すガイドラインは全46ページで編集されており、梱包や保管を含む内容となっています。
今後、規制順守チェックリスト、リスク評価及び緊急対応、訓練と教育意識、という3つの詳細なガイドが続く計画となっています。
▶ https://www.ttclub.com/news-and-resources/publications/cins-lithium-ion-batteries-in-containers-guidelines/
気候変動に関して2つの裁判が起こされています。特に1つ目は国際的にも大きな出来事となります。
1つ目はバヌアツが気候変動と汚染を引き起こしている国が法律に違反しているかを国際司法裁判所(ICJ)に求める国連決議を開始した事です。本日採決が行われ国連で決議されています。この動議は119ヵ国が事前に共同で後援しており、国連での採決では130ヶ国 以上の支持を得て多数決で可決されました。これにより国際司法裁判所は各国が気候危機に対処しなければならない義務と、対処しなかった場合の結果を確立するよう求める事ができます。政府の法的責任については裁判所が「勧告的意見」を該当国に提供するという方法で行う事になります。
▶ https://edition.cnn.com/2023/03/29/world/un-advisory-opinion-vanuatu-climate-change/index.html
2つ目はスイスで平均年齢73歳の「スイスの気候高齢者クラブ」が起こした裁判で、気候変動が人権、健康、更には命さえも危険に晒していると主張し、スイス政府に温室効果ガス削減を進めるよう求めています。裁判所に提出された証拠には、気候変動によって起こされた健康被害の医療記録が含まれています。欧州人権裁判所(ECHR)は気候変動による人権への影響を審理するのは初めてです。
▶ https://www.bbc.com/news/world-europe-65107800
米国上院議会の税制委員会の報告書が発表され、最近スイスのUBS グループに買収されたクレディ・スイス(Credit Swiss)が、米国当局との司法取引に違反して、米国の裕福な25の家族が米歳入庁(税)当局(IRS)から7億8,000万ドル(約1,000億円)以上を隠蔽する事を手伝っていた事を指摘しています。脱税に加担したとして非難されています。委員会による2年間の調査により「重大な違反」が明らかにされています。Credit Swissは否定していますが、上院の調査では既に脱税で有罪となっている米国の元大学教授兼ビジネスマンのダン・ホルスキー(Dan Horsky)がCredit Swissを仲介とした2億2000万ドル以上のオフショア口座に関する詳細な記録も入手しています。2016年にホルスキーは「アメリカ史上最大の脱税犯罪事件の1つ」で有罪となっています。「ならずもの銀行」と揶揄されていたCredit Swissですが、買収された後もトップは居残り、誰一人として逮捕者も出ていません。第二次世界大戦の本当の勝者は連合国でもなく米国でもなく「スイス」だ、と言われる事も頷けます・・
▶ https://www.investopedia.com/credit-suisse-senate-probe-tax-evasion-7372699
スクラップを原料とする3Dプリンター用の金属粉末を製造する新しい取組が商業化に向かいます。フィンランドのリサイクル企業であるOutokumpu Oyjは3Dプリンター用の金属粉末ビジネスに参入する事を発表しました。製品となる粉末はステンレス・スクラップが含まれる原料を使い、製造は同社のドイツ工場で行います。量産は4月にスタートし将来的には年間約330トンにまで伸ばす予定です。技術開発と製造はドイツのSMS Group と提携して行います。金属粉末を使いレーザーで溶解し積層する(Additive Manufacturing)3Dプリンター技術はドイツを中心に2014年頃から急速に拡大しています。今回アトマイズ工法によりスクラップを含むステンレス材料を原料にして3Dプリンター用の品質に見合う仕様の金属粉を製造する画期的な事業と言えます。
▶ https://www.outokumpu.com/en
複数のメディアで大きく取り扱われていますが、中国の最大手不動産ディベロッパーの1つであるCountry Garden Holdingsが 2022年の決算を発表し、記録的な赤字を計上しています。16年振りの大赤字で8億8,700万ドル(60.5億元)の純損失を計上しています。2021年の純利益が268 億元でしたので、劇的ともいえる損失高と報道されています。損失の要因は昨年の中国不動産債務危機に起因するコア利益の急落(90%急落)によるもの、としています。中国当局は多くの支援策を発表していますが、開発業者は「市場は一晩では回復しない」事を強調し、引続き慎重姿勢である事を指摘しています。
▶ https://www.marketscreener.com/quote/stock/COUNTRY-GARDEN-HOLDINGS-C-1412616/news/Country-Garden-Reports-First-Annual-Loss-in-Over-a-Decade-43376079/
EUは先週、今後12ヶ月でウクライナに100万発の弾薬(Ammunition)を援助する事で合意しています。EU諸国は自国の備蓄からウクライナに弾薬を寄付し、補充の為に新しい砲弾を共同で一般購入する予定です。これに対し、ロシアの国防会社は年末迄に軍需品の生産を7倍から8倍に増やす事を、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相に報告しています。またロシア製の武器を大量に保有するブルガリアは、仲介者を通じて大量の弾薬をウクライナに売却する可能性を示唆しています。これは元国防相のボイコ・ノエフが言及したものです。ブルガリアが保有する武器弾薬はウクライナ軍が使い慣れたロシア製である事から戦況に大きな影響を与える可能性があると指摘されています。この売却分は今後西側の新しい武器弾薬により補充される予定にて、ブルガリアはEUの武器一般購入に参加を表明していません。戦争開始直後にも欧州で秘密裡に潜水艦の増産計画があり、ステンレス鋼に使用するニッケルが上昇しました。
▶ https://www.aa.com.tr/en/russia-ukraine-war/poland-to-step-up-production-of-ammunition-for-ukraine-premier/2857148
欧州で非鉄需要が増加する法案の暫定合意がなされています。欧州理事会と欧州議会の交渉担当者は30日に2030年迄にEUのエネルギー消費の42.5%を再生可能エネルギーから得る事に暫定的に合意した事を発表しています。現在、EUの再生可能エネルギーの割合は22.1%の為、この比率をほぼ2倍にする事になります。交渉担当者の1人は、この協定が「原子力の特定の役割」を認めている事に言及していますので、原子力の扱いについての今後の方針を注視する必要があります。更にEU加盟国は2030年迄に再生可能エネルギーを使用する事で輸送における温室効果ガスを14.5%削減するか、運輸部門のエネルギーの最終消費に占める再生可能エネルギーの割合を少なくとも29%にするか、どちらかを達成する必要があります。これは法的拘束力を持つ目標となります。しかし、一部ではこの合意に批判も上がっています。森林を破壊する「木質バイオマス」がEUでは再生可能エネルギーとして認められている事から、森林保護グループのFernは、この合意により木質バイオマス発電が増える事で森林破壊を促進し、生物多様性に害を及ぼす可能性を指摘しています。
▶ https://bit.ly/3M3ho5y
欧州連合の統計を扱うEurostatが欧州各国の2022年の「時給」を発表しています。この時給は雇用者に支払う給与やボーナスを時給換算したもので、雇用主の得る報酬は含まれておりません。国別ではブルガリアが最も低く8.2ユーロとなっており、次に低いのがルーマニアの9.5 ユーロ、最も高い国はルクセンブルグで50.7 ユーロ、それに続くのがデンマークの46.8 ユーロ、ベルギーの43.5ユーロで、2022年のEU全体の平均時給は30.5ユーロでした。通貨ユーロを使うユーロ圏20ヵ国の平均はEU全体より高く、34.3ユーロでした。2021年の平均時給はEU全体が29.0ユーロ、ユーロ圏は32.8ユーロでしたので、上昇しています。
産業界全体ではEU平均が30.7ユーロ、ユーロ圏で36.6ユーロでした。建設業はEU平均が27.3ユーロ、 ユーロ圏平均が30.8ユーロで、サービス業の平均時給はEU平均が 30.2 ユーロ、ユーロ圏で33.3 ユーロでした。欧州の工場、特にリサイクル工場で働くワーカーは、ブルガリア、ルーマニア、リトアニア、ラトビア、エストニア人等が圧倒的に多く、賃金の高い地域の労働力不足を安い地域の労働力が埋めています(製造業の生産工場はポーランド人が多い)。最近、日本のすし職人や介護士が海外に出稼ぎに出ると給料が2-3倍に増えると言われていますが、EUの平均労働時間が週37.5時間で年間52週、法定有給休暇が25日で日本円換算すると、平均にしてはそれなりに高い値となります(ただし物価も相当高いです)。あまり語られる事はありませんが、過去30年、国際化で相対的に新興国への投資が増え国際競争力が増す中、日本はイノベーションに送れ「低賃金化」で何とか国際競争力を維持してきたという実態がありますので、なかなか難しい問題だと思います。
▶ https://ec.europa.eu/eurostat/web/products-eurostat-news/w/DDN-20230330-3