NEWS
NEWSCONの気になるNEWS(2023年11月第4週)
欧州のリサイクラーにとって最大の注目の1つである「EU廃棄物輸送規則(WSR)」は立法手続きの最終段階に進む事になりました。現在の規則案は欧州議会と欧州理事会で合意を得ました。残る立法手続きは、議会と理事会の正式な「採択」のみとなっており、採択が完了すると、官報に掲載されてから20日目に発効します。新規則では非OECD諸国が(国として)廃棄物を輸入する意思があり、持続可能な方法で管理する能力がある事を欧州委員会に通知した場合にのみ非OECD諸国への廃棄物の輸出を許可する事になります。鉄スクラップ、非鉄スクラップ、古紙等は再生原料として定義されず、廃棄物として一律に管理下に置かれます。新規則ではEUからOECD諸国への廃棄物の輸出についても監視を強化する事が含まれています。更にプラスチック廃棄物の場合は新法の発効から2年半後には特定の例外を除き非OECD諸国への輸出は全面的に禁止される事になります(特定の例外:輸入国が厳格な廃棄物管理基準を満たしている場合に限り非OECD諸国へは5年間輸出は可能)。恐らくですがプラスチックに関して、製品メーカーは現在議論を呼んでいるPPWR(EU包装及び包装廃棄物規則)の進捗と共にプラスチック包装の量を大幅に減らす施策を迫られる事になると思います。当然乍らこの規則(WSR)に反対してきた欧州リサイクル産業協会(EURIC)は即座に声明文を発行し「全文が入手可能になり次第、徹底的に精査し、各条項に関する詳細な声明を発表する予定だ」として反対の姿勢を貫いています。この規則の実施はリサイクラーだけでなく、グレーで輸出してきた業者にとっても転換期となる出来事です。
▶ https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20231114IPR10510/deal-reached-on-stricter-eu-rules-for-waste-shipments
▶ https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_23_5818
▶ https://euric-aisbl.eu/resource-hub/press-releases-statements/eu-negotiators-strike-deal-on-waste-shipments-recyclers-highlight-need-to-preserve-access-to-international-markets
大手多国籍金融グループのINGは「鉄スクラップが重要な戦略原料として浮上している理由」という特別レポートを掲載しています。このレポートは関係者で大変注目を集めており、リサイクル関係のサイトで紹介されています。5つのテーマで纏められており、それぞれ「鉄スクラップは循環経済確立の鍵となる」「世界的な電炉鋼材の生産量の増加により、スクラップの使用量が増加」「脱炭素化の中でスクラップ取引の制限が強化」「海上の鉄スクラップ取引は更に減少する可能性がある」「製鉄所はスクラップ供給の確保を目指す」となっています。鉄スクラップの最新世界情勢を知る上では良い内容に纏められていると思います。少しショッキングなのは、EUは予定通り電炉を増加した場合、国際鉄筋生産輸出業者協会(IREPAS)のデータでは5年でスクラップ純輸出国からスクラップ純輸入国に転じる可能性があるの記載です。英国でも予定されている最大5基の電炉がフル稼働した場合は、鉄スクラップ純輸入国になる可能性があります。
▶ https://think.ing.com/articles/why-is-ferrous-scrap-a-strategic-raw-material/
欧州中央銀行のラガルド総裁は「欧州の生産年齢人口の継続的な減少は、早ければ2025年にも始まり、その対応の為には短期間に巨額の投資が必要となる」と述べ、更に「脱グローバル化、人口動態、脱炭素化が目前に迫っており、欧州は現在重大な岐路にある」と警告しています。また「世界経済は競合するブロックに細分化している兆候が増えている」との注意喚起を行っています。中銀の総裁が政治的な課題についてこれ程の調子で言及するというのは希な事で、事態は言葉以上なのかも知れません。
▶ https://www.cnbc.com/amp/2023/11/17/lagarde-increasing-signs-that-the-global-economy-is-fragmenting.html
最近では日本の商社株の大量購入&売却で「何もせず利益が天から降ってきた」と言及していたウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイですが、今年次々と優良企業株式を手放し、現在、現金保有が記録的な額になっています。2023年を通じて、これまでのところ、バークシャーは購入した株式よりも£190億(3兆4000億円)多い株式を売却しました。バフェットは「利上げの影響で景気循環が大幅に悪化することに賭けている」と見られており、手元資金を増やしているようです。バフェットの方法論は景気後退の前に現金を増やし、景気後退で株価が下がった時点で優良大手株式を買うというものです。
▶ https://www.thisismoney.co.uk/money/markets/article-12753893/amp/Warren-Buffetts-investment-firm-holding-record-126bn-cash.html
プラスチック国際条約に関する多国間交渉の3回目(INC-3)が閉会しました。国際条約は国内法に優先する為、ここでの決定事項はプラスチックの利害関係者全体に影響を及ぼします。予測されていましたが、意味のある具体的な事はほぼ何も決まらなく閉会しました。有害なポリマーや化学物質の削減について「更なる議論を行う」という提案は支持を集めましたが、明確な道筋は何も示されていません。国際汚染物質除去ネットワーク(IPEN)は「大手化石燃料生産者と輸出者は、条約が効率的に前進する取り組みを遅らせた」と非難しています。
▶ https://www.unep.org/news-and-stories/press-release/third-session-negotiations-international-plastics-treaty-advance
大手多国籍食品会社のネスレは水だけを使用して密度と浮力によって混合プラスチックを正確に分離する新技術、バッフル振動分離システム(BOSS)に投資します。ネスレはBOSSシステムを持つリサイクル企業Impact Recyclingに700万ポンド(約13億円)を融資し、プラスチックのリサイクルを推進します。Impact Recyclingには英国政府からも補助金が提供される予定です。工場は2024年秋に稼働予定で処理能力は年間25,000トンです。ネスレは自社製品であるキットカット、ピュリナのペットフード、ラウンツリー製菓、ネスレブランドのシリアル等に軟質包装を利用しており、それらリサイクルが難しい包装にこの技術を利用する予定です。同社は主要なスーパーマーケットに回収ポイントを設置する予定です。
▶ https://www.ecosurety.com/impact/innovation/boss-3d/
▶ https://impact-recycling.com/boss/
現在、欧米のプラスチック製造業者は製品に含まれるリサイクル材の含有量計算にマスバランス方式を採用する様にロビー活動を続けています。次のPPWR(EU包装及び包装廃棄物規則)でも、再生プラスチック含有量を計算する上でのマスバランスは議題に上がっており、英国のプラスチック包装税では採用がほぼ決まっています。そのような情勢の為、化学メーカーがプラスチックのケミカルリサイクルへの投資を活発化させています。化学品グループのLyondellBasellは、自社技術である「MoReTec」技術を使用した触媒によるケミカルリサイクルの実証プラントを建設すると発表しました。この実証施設は年間最大50,000トンのプラスチック包装廃棄物を処理する予定です。
▶ https://www.lyondellbasell.com/en/news-events/corporate–financial-news/lyondellbasell-to-build-industrial-scale-advanced-recycling-plant-in-germany/
英国ではEVの急速な普及に伴い保険会社がEVへの保険の見直しを本格的に検討しています。事故時にEVのバッテリーの交換や修理ができる業者が少ない事や、どの程度修理すべきか評価できる人材が不足している事が大きな要因となっています。米国でも一部の保険会社はEVを除外する所があり、少しずつ問題が顕著化しています。保険会社大手のアリアンツによると現在同社が扱う自動車関連の保険金請求の内、EVの保険金請求は僅か2%に過ぎませんがコストは約10%を占めています。
▶ https://www.wired.co.uk/article/ev-repair-batteries-expensive-insurance
C&CNは最新の世界のリチウムイオン電池リサイクルの状況を纏めたレポートを掲載しています。各企業や国の動向を網羅している為、右クリックで日本語表示にして読む事をお薦めします。
▶ https://cen.acs.org/environment/recycling/Lithium-ion-battery-recycling-goes/101/i38
予想されてきた銅のスーパーサイクルに黄色信号の懸念が浮上しています。同価格は若干の反発にも関わらず、広く予想されていた供給不足は市場に波及しておらず、供給過剰との闘いが続いています。中国の生産量が急増し、インフラ需要があるにも関わらず、鉱山からの鉱石は依然として供給過剰の状態です。チリの国営鉱山会社で世界最大級の銅鉱山企業コデルコは2024年の精製プレミアムを36%低下させています。大きな要因の1つは、期待が先行し需要ペースが実際には予測より下がったEVと風力発電です。そこに供給過剰が起きており、横這いのレンジを抜け出す気配が有りません。世界最大の銅製錬国である中国では、2024年に製錬所の能力が80万トン増加する予定です。これは既に十分な生産レベルを持つ中国の銅生産能力に更に加えられる事になり、過剰生産能力へ繋がると懸念を強めています。鉄鋼だけでなく、銅でも過剰生産に舵を切っている中国の今の経済政策は、世界的にも疑問が持たれつつあります。
▶ https://agmetalminer.com/2023/11/20/copper-mmi-copper-prices-supercycle/
理事会と欧州議会の代表はWEEE指令(電気・電子機器廃棄物指令)の修正案に関する合意を行っています。改正の主な点は(1)2012年8月13日以降に市場に出された太陽光発電パネルからの廃棄物の管理と処分の費用は、EEE(電気・電子機器製品)の生産者の負担となります。(2)2018年のWEEE指令の範囲に追加されたEEE製品に対する拡大生産者責任は、その日以降に市場に投入された電子製品にも適用されます。WEEE指令の改正の発効時には2018年のWEEE指令以降に生産された全ての電気・電子機器類にEPR範囲が広げられる可能性があり、リサイクラーにとっては大きな変更となります。
▶ https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2023/11/21/waste-from-electrical-and-electronic-equipment-council-and-parliament-agree-on-deal-to-align-with-court-ruling/
スウェーデンで再生可能エネルギーを利用したグリーンなEV電池を開発製造しているNorthvolt社はナトリウムイオン電池の開発で前進している事を本日公開しています。エネルギー密度は1Kg当り160Whを超えるとしており、ナトリウムイオン電池としては最高のエネルギー密度と宣伝しています。この電池はアルトリス社との共同開発で生み出され、第一世代のものはEV用ではなく次世代のエネルギー貯蔵システム用に開発しています。その後に開発を続けEV用を目指す予定です。ノースボルトはナトリウムイオンの陰極に「プルシアンホワイト」という特殊材料を使用しています。NMCからLFP、Naナトリウムへの流れは、欧州でも徐々に拡大しつつあります。
▶ https://northvolt.com/articles/northvolt-sodium-ion/
欧州議会が「EU条約」の改正案を誤差で承認しています。今後、理事会との協議が必要ですが、条約改正へ議会は二分しました。提案にはEU加盟国による「国防同盟」及び「エネルギー同盟」の創設、複数の分野における個々の「加盟国の拒否権の撤廃」等が含まれており、かつてない大改革となります。本会議投票では賛成291人、反対274人、棄権44人と議会が真っ二つに割れ、僅かな差による承認となっています。この改正案は議会の言う「前例のない課題と複数の危機の問題」に対応する為としていますが、中央による権力の増強に繋がる為、反対派は民主主義の破壊、或いは「ディストピアの超国家」創設の為の「憲法上のクーデター」と呼んでいます。この改正はEUを根本的に変える事に繋がる為、今後も議論を呼びそうです。実はEU政府の実態は非常に官僚的な組織であり、EU内でも起こっている「分断」を強引に封じ込める狙いがあります。
▶ https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20231117IPR12217/future-of-the-eu-parliament-s-proposals-to-amend-the-treaties
▶ https://www.express.co.uk/news/world/1837902/eu-treaty-reform-brussels-strasbourg
欧州議会はEU包装及び包装廃棄物規則(PPWR)を修正し、採択しています。PPWRは欧州リサイクラーの事業に多大な影響があるだけでなく、生産者の責任が拡大される事で包装のバリューチェーン全体に影響が及びます。その為、この修正採択についてリサイクル関連だけでなく包装業界を含め一斉に報道しています。PPWRでは2029年迄に梱包材に含まれる材料(プラスチック、木材、鉄金属、アルミニウム、ガラス、紙、ボール紙)の90%を確実に分別回収する事がEPR(拡大生産者責任)の範囲として求められます。また2030年迄に全ての包装はリサイクル可能でなければなりません。リサイクル可能=リサイクル可能な設計については今後、技術的な二次法によって定義されます。今回の修正は当初の欧州委員会提案より大幅に緩和されており、環境団体ゼロ・ウェスト・ヨーロッパは即座に修正に反対する声明を出しています。
▶ https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20231117IPR12213/parliament-adopts-revamped-rules-to-reduce-reuse-and-recycle-packaging
▶ https://zerowasteeurope.eu/press-release/a-position-for-the-wrong-century-european-parliaments-vote-on-the-ppwr/
国際リサイクル局(BIR)は、世界の規制当局がEPR(拡大生産者責任)を次々に規制に含めている事から、初めて「意見書」を発行しました。この意見書の主旨は、EPRを採用する場合、リサイクル業者も他のバリューチェーンの利害関係者と同様に利害のバランスが取られるべきであるというものです。BIRは循環性を高める為の政策を支持していますが、EPRによって効率的に経済活動を行っている既存のリサイクラーの市場に混乱が起きない事を求めています。欧米での相次ぐEPRの採用拡大でリサイクラーに影響が続いている為、BIRは初の正式な意見書を発行するに至っています。
▶ https://www.bir.org/news-press/news/item/bir-publishes-first-position-paper-on-epr
日本の木質バイオマス発電所が最も輸入しているエンビバ(Enviva)社ですが、相当な問題に直面しているようです。取引の詳細は不明ですが、欧州向けのある取引で80万トンの木質ペレットの販売価格が1億5,690万ドルに対し、仕入れの支払いが2億9,630万ドルあり、同じ価格で推移した場合、今後2年間で更に約1億4000万ドルの損失が発生する可能性があると説明しています。エンビバは投資銀行、弁護士、アドバイザー、貸し手や取引相手と交渉し、代替案を模索するよう協力を求めています。エンビバは9日のQ3決算発表では恒例のアナリストとの質疑応答にも対応していませんでした。
▶ https://www.msn.com/en-us/money/markets/the-trade-that-backfired-for-america-s-biggest-wood-pellet-exporter/ar-AA1kllXM
プラスチック包装に含まれる「リサイクル材の含有量」について、欧州議会で採択された法律案が議論を再燃させています。欧州のこの決定は今後、世界の潮流になっていく可能性があります。欧州リサイクル産業協会は、昨日欧州議会で採択されたPPWR(EU包装及び包装廃棄物規則)の修正の内、バイオベースのプラスチックをリサイクル材の代替えとして最大50%まで利用できる規定に反対の声明を発表しています。この案は10月24日に欧州議会内の環境委員会で既に採用されたもので、今までプラスチックリサイクルの為に投資を加速させてきたリサイクラーにとって、大きな障害となります。例えば包装材に30%のリサイクルプラスチックが含まれる場合、15%迄は植物油等から作られる新品のバイオベースのプラスチック(ポリマー)を利用する事が可能となります。バイオベースのプラスチックの持続可能性要件については、2025年末迄に詳細が規定される見込みです。軟質包装プラスチックのリサイクルへの投資から、バイオ油の製造に投資がシフトすると見込まれています。
▶ https://euric-aisbl.eu/resource-hub/press-releases-statements/ep-plenary-vote-on-ppwr-advances-circularity-but-fails-to-correct-priority-access-and-using-bio-based-plastics-in-recycled-content-targets
世界4位の自動車メーカーのステランティスは、イタリアのトリノに同社製の車のサーキュラー・エコノミーのハブとなるSUSTAINera Circular Economy Hubをオープンしました。同施設では車のCE向上の為、ギアボックスのリビルト再利用、高電圧EVバッテリーの再製造(再利用)、車両の修理と解体を行います。投資額は4,000万ユーロで、同ハブでは2025 年迄に550人を雇用する予定です。同社は2030年迄にサーキュラー・エコノミー事業で20億ユーロ以上の収益を目指しています。車メーカーが自らCEハブを設立するという動きは、欧州ではルノーに続き2番目となります。
▶ https://www.stellantis.com/en/news/press-releases/2023/november/stellantis-inaugurates-its-first-circular-economy-hub-in-turin-italy
インド鉄鋼省は、インド鉄鋼産業の生産連動インセンティブ1.0 (PLI 1.0)の評価を開始しました。インド鉄鋼省が主導するPLI 1.0スキームは国内で大きな関心を集め、鉄鋼関連業者67社が署名し、50以上の覚書(MoU)が締結されました。これらの契約による総投資額は約40億ドルで追加生産能力は約2,470万トンにのぼります。現在、計画された投資額の1/3、約13億ドルが実施されています。鉄鋼省による評価で、インドの鉄鋼業界における成果と課題の両方が明らかになっています。当局者は、課題は多いものの、今後について楽観視しており、新しい鋼材、特にコーティングされた鋼材(複数のメッキ鋼板)が来年前半までに市場に投入されると予想しています。中国に続きインドの鉄鋼業は国策として伸びています。
▶ https://www.steelguru.com/steel/india-steel-sectors-pli-momentum-assessed
WHOは中国政府に対し、国内の子供の呼吸器疾患の急激な増加について詳細情報を要請しています。これは複数の季節性病原体が流行する中、発熱外来、病院の緊急治療室、小児病棟が急激に混雑しているとの報道を受けたものです。WHOは既知の病原体の循環に関する更なる情報の提供を求めると共に「今回の流行の原因が以前に報告された呼吸器感染症の全体的な増加と関連しているのか、それとも別の原因なのかは不明である」と警戒を表しています。これに対し中国当局者や国内の専門家は、中国北部の感染者数の急増は新型コロナウイルス感染症対策の解除によるものだとの見解を示すに留まっています。
▶ https://www.scmp.com/news/china/science/article/3242628/china-gets-who-note-seeking-details-after-surge-respiratory-illness-among-kids?module=top_story&pgtype=homepage
▶ https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20231114IPR10510/deal-reached-on-stricter-eu-rules-for-waste-shipments
▶ https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_23_5818
▶ https://euric-aisbl.eu/resource-hub/press-releases-statements/eu-negotiators-strike-deal-on-waste-shipments-recyclers-highlight-need-to-preserve-access-to-international-markets
大手多国籍金融グループのINGは「鉄スクラップが重要な戦略原料として浮上している理由」という特別レポートを掲載しています。このレポートは関係者で大変注目を集めており、リサイクル関係のサイトで紹介されています。5つのテーマで纏められており、それぞれ「鉄スクラップは循環経済確立の鍵となる」「世界的な電炉鋼材の生産量の増加により、スクラップの使用量が増加」「脱炭素化の中でスクラップ取引の制限が強化」「海上の鉄スクラップ取引は更に減少する可能性がある」「製鉄所はスクラップ供給の確保を目指す」となっています。鉄スクラップの最新世界情勢を知る上では良い内容に纏められていると思います。少しショッキングなのは、EUは予定通り電炉を増加した場合、国際鉄筋生産輸出業者協会(IREPAS)のデータでは5年でスクラップ純輸出国からスクラップ純輸入国に転じる可能性があるの記載です。英国でも予定されている最大5基の電炉がフル稼働した場合は、鉄スクラップ純輸入国になる可能性があります。
▶ https://think.ing.com/articles/why-is-ferrous-scrap-a-strategic-raw-material/
欧州中央銀行のラガルド総裁は「欧州の生産年齢人口の継続的な減少は、早ければ2025年にも始まり、その対応の為には短期間に巨額の投資が必要となる」と述べ、更に「脱グローバル化、人口動態、脱炭素化が目前に迫っており、欧州は現在重大な岐路にある」と警告しています。また「世界経済は競合するブロックに細分化している兆候が増えている」との注意喚起を行っています。中銀の総裁が政治的な課題についてこれ程の調子で言及するというのは希な事で、事態は言葉以上なのかも知れません。
▶ https://www.cnbc.com/amp/2023/11/17/lagarde-increasing-signs-that-the-global-economy-is-fragmenting.html
最近では日本の商社株の大量購入&売却で「何もせず利益が天から降ってきた」と言及していたウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイですが、今年次々と優良企業株式を手放し、現在、現金保有が記録的な額になっています。2023年を通じて、これまでのところ、バークシャーは購入した株式よりも£190億(3兆4000億円)多い株式を売却しました。バフェットは「利上げの影響で景気循環が大幅に悪化することに賭けている」と見られており、手元資金を増やしているようです。バフェットの方法論は景気後退の前に現金を増やし、景気後退で株価が下がった時点で優良大手株式を買うというものです。
▶ https://www.thisismoney.co.uk/money/markets/article-12753893/amp/Warren-Buffetts-investment-firm-holding-record-126bn-cash.html
プラスチック国際条約に関する多国間交渉の3回目(INC-3)が閉会しました。国際条約は国内法に優先する為、ここでの決定事項はプラスチックの利害関係者全体に影響を及ぼします。予測されていましたが、意味のある具体的な事はほぼ何も決まらなく閉会しました。有害なポリマーや化学物質の削減について「更なる議論を行う」という提案は支持を集めましたが、明確な道筋は何も示されていません。国際汚染物質除去ネットワーク(IPEN)は「大手化石燃料生産者と輸出者は、条約が効率的に前進する取り組みを遅らせた」と非難しています。
▶ https://www.unep.org/news-and-stories/press-release/third-session-negotiations-international-plastics-treaty-advance
大手多国籍食品会社のネスレは水だけを使用して密度と浮力によって混合プラスチックを正確に分離する新技術、バッフル振動分離システム(BOSS)に投資します。ネスレはBOSSシステムを持つリサイクル企業Impact Recyclingに700万ポンド(約13億円)を融資し、プラスチックのリサイクルを推進します。Impact Recyclingには英国政府からも補助金が提供される予定です。工場は2024年秋に稼働予定で処理能力は年間25,000トンです。ネスレは自社製品であるキットカット、ピュリナのペットフード、ラウンツリー製菓、ネスレブランドのシリアル等に軟質包装を利用しており、それらリサイクルが難しい包装にこの技術を利用する予定です。同社は主要なスーパーマーケットに回収ポイントを設置する予定です。
▶ https://www.ecosurety.com/impact/innovation/boss-3d/
▶ https://impact-recycling.com/boss/
現在、欧米のプラスチック製造業者は製品に含まれるリサイクル材の含有量計算にマスバランス方式を採用する様にロビー活動を続けています。次のPPWR(EU包装及び包装廃棄物規則)でも、再生プラスチック含有量を計算する上でのマスバランスは議題に上がっており、英国のプラスチック包装税では採用がほぼ決まっています。そのような情勢の為、化学メーカーがプラスチックのケミカルリサイクルへの投資を活発化させています。化学品グループのLyondellBasellは、自社技術である「MoReTec」技術を使用した触媒によるケミカルリサイクルの実証プラントを建設すると発表しました。この実証施設は年間最大50,000トンのプラスチック包装廃棄物を処理する予定です。
▶ https://www.lyondellbasell.com/en/news-events/corporate–financial-news/lyondellbasell-to-build-industrial-scale-advanced-recycling-plant-in-germany/
英国ではEVの急速な普及に伴い保険会社がEVへの保険の見直しを本格的に検討しています。事故時にEVのバッテリーの交換や修理ができる業者が少ない事や、どの程度修理すべきか評価できる人材が不足している事が大きな要因となっています。米国でも一部の保険会社はEVを除外する所があり、少しずつ問題が顕著化しています。保険会社大手のアリアンツによると現在同社が扱う自動車関連の保険金請求の内、EVの保険金請求は僅か2%に過ぎませんがコストは約10%を占めています。
▶ https://www.wired.co.uk/article/ev-repair-batteries-expensive-insurance
C&CNは最新の世界のリチウムイオン電池リサイクルの状況を纏めたレポートを掲載しています。各企業や国の動向を網羅している為、右クリックで日本語表示にして読む事をお薦めします。
▶ https://cen.acs.org/environment/recycling/Lithium-ion-battery-recycling-goes/101/i38
予想されてきた銅のスーパーサイクルに黄色信号の懸念が浮上しています。同価格は若干の反発にも関わらず、広く予想されていた供給不足は市場に波及しておらず、供給過剰との闘いが続いています。中国の生産量が急増し、インフラ需要があるにも関わらず、鉱山からの鉱石は依然として供給過剰の状態です。チリの国営鉱山会社で世界最大級の銅鉱山企業コデルコは2024年の精製プレミアムを36%低下させています。大きな要因の1つは、期待が先行し需要ペースが実際には予測より下がったEVと風力発電です。そこに供給過剰が起きており、横這いのレンジを抜け出す気配が有りません。世界最大の銅製錬国である中国では、2024年に製錬所の能力が80万トン増加する予定です。これは既に十分な生産レベルを持つ中国の銅生産能力に更に加えられる事になり、過剰生産能力へ繋がると懸念を強めています。鉄鋼だけでなく、銅でも過剰生産に舵を切っている中国の今の経済政策は、世界的にも疑問が持たれつつあります。
▶ https://agmetalminer.com/2023/11/20/copper-mmi-copper-prices-supercycle/
理事会と欧州議会の代表はWEEE指令(電気・電子機器廃棄物指令)の修正案に関する合意を行っています。改正の主な点は(1)2012年8月13日以降に市場に出された太陽光発電パネルからの廃棄物の管理と処分の費用は、EEE(電気・電子機器製品)の生産者の負担となります。(2)2018年のWEEE指令の範囲に追加されたEEE製品に対する拡大生産者責任は、その日以降に市場に投入された電子製品にも適用されます。WEEE指令の改正の発効時には2018年のWEEE指令以降に生産された全ての電気・電子機器類にEPR範囲が広げられる可能性があり、リサイクラーにとっては大きな変更となります。
▶ https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2023/11/21/waste-from-electrical-and-electronic-equipment-council-and-parliament-agree-on-deal-to-align-with-court-ruling/
スウェーデンで再生可能エネルギーを利用したグリーンなEV電池を開発製造しているNorthvolt社はナトリウムイオン電池の開発で前進している事を本日公開しています。エネルギー密度は1Kg当り160Whを超えるとしており、ナトリウムイオン電池としては最高のエネルギー密度と宣伝しています。この電池はアルトリス社との共同開発で生み出され、第一世代のものはEV用ではなく次世代のエネルギー貯蔵システム用に開発しています。その後に開発を続けEV用を目指す予定です。ノースボルトはナトリウムイオンの陰極に「プルシアンホワイト」という特殊材料を使用しています。NMCからLFP、Naナトリウムへの流れは、欧州でも徐々に拡大しつつあります。
▶ https://northvolt.com/articles/northvolt-sodium-ion/
欧州議会が「EU条約」の改正案を誤差で承認しています。今後、理事会との協議が必要ですが、条約改正へ議会は二分しました。提案にはEU加盟国による「国防同盟」及び「エネルギー同盟」の創設、複数の分野における個々の「加盟国の拒否権の撤廃」等が含まれており、かつてない大改革となります。本会議投票では賛成291人、反対274人、棄権44人と議会が真っ二つに割れ、僅かな差による承認となっています。この改正案は議会の言う「前例のない課題と複数の危機の問題」に対応する為としていますが、中央による権力の増強に繋がる為、反対派は民主主義の破壊、或いは「ディストピアの超国家」創設の為の「憲法上のクーデター」と呼んでいます。この改正はEUを根本的に変える事に繋がる為、今後も議論を呼びそうです。実はEU政府の実態は非常に官僚的な組織であり、EU内でも起こっている「分断」を強引に封じ込める狙いがあります。
▶ https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20231117IPR12217/future-of-the-eu-parliament-s-proposals-to-amend-the-treaties
▶ https://www.express.co.uk/news/world/1837902/eu-treaty-reform-brussels-strasbourg
欧州議会はEU包装及び包装廃棄物規則(PPWR)を修正し、採択しています。PPWRは欧州リサイクラーの事業に多大な影響があるだけでなく、生産者の責任が拡大される事で包装のバリューチェーン全体に影響が及びます。その為、この修正採択についてリサイクル関連だけでなく包装業界を含め一斉に報道しています。PPWRでは2029年迄に梱包材に含まれる材料(プラスチック、木材、鉄金属、アルミニウム、ガラス、紙、ボール紙)の90%を確実に分別回収する事がEPR(拡大生産者責任)の範囲として求められます。また2030年迄に全ての包装はリサイクル可能でなければなりません。リサイクル可能=リサイクル可能な設計については今後、技術的な二次法によって定義されます。今回の修正は当初の欧州委員会提案より大幅に緩和されており、環境団体ゼロ・ウェスト・ヨーロッパは即座に修正に反対する声明を出しています。
▶ https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20231117IPR12213/parliament-adopts-revamped-rules-to-reduce-reuse-and-recycle-packaging
▶ https://zerowasteeurope.eu/press-release/a-position-for-the-wrong-century-european-parliaments-vote-on-the-ppwr/
国際リサイクル局(BIR)は、世界の規制当局がEPR(拡大生産者責任)を次々に規制に含めている事から、初めて「意見書」を発行しました。この意見書の主旨は、EPRを採用する場合、リサイクル業者も他のバリューチェーンの利害関係者と同様に利害のバランスが取られるべきであるというものです。BIRは循環性を高める為の政策を支持していますが、EPRによって効率的に経済活動を行っている既存のリサイクラーの市場に混乱が起きない事を求めています。欧米での相次ぐEPRの採用拡大でリサイクラーに影響が続いている為、BIRは初の正式な意見書を発行するに至っています。
▶ https://www.bir.org/news-press/news/item/bir-publishes-first-position-paper-on-epr
日本の木質バイオマス発電所が最も輸入しているエンビバ(Enviva)社ですが、相当な問題に直面しているようです。取引の詳細は不明ですが、欧州向けのある取引で80万トンの木質ペレットの販売価格が1億5,690万ドルに対し、仕入れの支払いが2億9,630万ドルあり、同じ価格で推移した場合、今後2年間で更に約1億4000万ドルの損失が発生する可能性があると説明しています。エンビバは投資銀行、弁護士、アドバイザー、貸し手や取引相手と交渉し、代替案を模索するよう協力を求めています。エンビバは9日のQ3決算発表では恒例のアナリストとの質疑応答にも対応していませんでした。
▶ https://www.msn.com/en-us/money/markets/the-trade-that-backfired-for-america-s-biggest-wood-pellet-exporter/ar-AA1kllXM
プラスチック包装に含まれる「リサイクル材の含有量」について、欧州議会で採択された法律案が議論を再燃させています。欧州のこの決定は今後、世界の潮流になっていく可能性があります。欧州リサイクル産業協会は、昨日欧州議会で採択されたPPWR(EU包装及び包装廃棄物規則)の修正の内、バイオベースのプラスチックをリサイクル材の代替えとして最大50%まで利用できる規定に反対の声明を発表しています。この案は10月24日に欧州議会内の環境委員会で既に採用されたもので、今までプラスチックリサイクルの為に投資を加速させてきたリサイクラーにとって、大きな障害となります。例えば包装材に30%のリサイクルプラスチックが含まれる場合、15%迄は植物油等から作られる新品のバイオベースのプラスチック(ポリマー)を利用する事が可能となります。バイオベースのプラスチックの持続可能性要件については、2025年末迄に詳細が規定される見込みです。軟質包装プラスチックのリサイクルへの投資から、バイオ油の製造に投資がシフトすると見込まれています。
▶ https://euric-aisbl.eu/resource-hub/press-releases-statements/ep-plenary-vote-on-ppwr-advances-circularity-but-fails-to-correct-priority-access-and-using-bio-based-plastics-in-recycled-content-targets
世界4位の自動車メーカーのステランティスは、イタリアのトリノに同社製の車のサーキュラー・エコノミーのハブとなるSUSTAINera Circular Economy Hubをオープンしました。同施設では車のCE向上の為、ギアボックスのリビルト再利用、高電圧EVバッテリーの再製造(再利用)、車両の修理と解体を行います。投資額は4,000万ユーロで、同ハブでは2025 年迄に550人を雇用する予定です。同社は2030年迄にサーキュラー・エコノミー事業で20億ユーロ以上の収益を目指しています。車メーカーが自らCEハブを設立するという動きは、欧州ではルノーに続き2番目となります。
▶ https://www.stellantis.com/en/news/press-releases/2023/november/stellantis-inaugurates-its-first-circular-economy-hub-in-turin-italy
インド鉄鋼省は、インド鉄鋼産業の生産連動インセンティブ1.0 (PLI 1.0)の評価を開始しました。インド鉄鋼省が主導するPLI 1.0スキームは国内で大きな関心を集め、鉄鋼関連業者67社が署名し、50以上の覚書(MoU)が締結されました。これらの契約による総投資額は約40億ドルで追加生産能力は約2,470万トンにのぼります。現在、計画された投資額の1/3、約13億ドルが実施されています。鉄鋼省による評価で、インドの鉄鋼業界における成果と課題の両方が明らかになっています。当局者は、課題は多いものの、今後について楽観視しており、新しい鋼材、特にコーティングされた鋼材(複数のメッキ鋼板)が来年前半までに市場に投入されると予想しています。中国に続きインドの鉄鋼業は国策として伸びています。
▶ https://www.steelguru.com/steel/india-steel-sectors-pli-momentum-assessed
WHOは中国政府に対し、国内の子供の呼吸器疾患の急激な増加について詳細情報を要請しています。これは複数の季節性病原体が流行する中、発熱外来、病院の緊急治療室、小児病棟が急激に混雑しているとの報道を受けたものです。WHOは既知の病原体の循環に関する更なる情報の提供を求めると共に「今回の流行の原因が以前に報告された呼吸器感染症の全体的な増加と関連しているのか、それとも別の原因なのかは不明である」と警戒を表しています。これに対し中国当局者や国内の専門家は、中国北部の感染者数の急増は新型コロナウイルス感染症対策の解除によるものだとの見解を示すに留まっています。
▶ https://www.scmp.com/news/china/science/article/3242628/china-gets-who-note-seeking-details-after-surge-respiratory-illness-among-kids?module=top_story&pgtype=homepage