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NEWSCONの気になるNEWS(2023年11月第3週)

欧州は所謂、自然再生法について、立法の手続きの1つである理事会議長国と欧州議会の代表者との間で合意に達しています。この法律は2030年迄にEUの陸地と海域の少なくとも20%を回復し、2050年迄に回復が必要な全ての生態系を回復させる事を義務付けるものです。また特定の種の生息地と種の回復目標を規定しています。この法律は、実現が困難な事と農業や経済発展を妨げる要因になるとして、免除条項や緩和条項が相次いで盛り込まれ、激しい議論の対立を生み出してきました。最終的に合意に達したものは「骨抜きバージョン」と呼ばれ、今後、議会での最終投票に進む予定となっています。グリーンを先導してきた欧州では過去1年に、こうしたグリーン規制の後退と保護主義的な政策転換が続いています。
https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2023/11/09/nature-restoration-council-and-parliament-reach-agreement-on-new-rules-to-restore-and-preserve-degraded-habitats-in-the-eu/

パラジウム価格は急速に下落し、先週5年振りの安値である1オンス=1000ドルを下回りました。この下落の要因は自動車メーカーが触媒用に、より安価なプラチナを選択した事です。主要なパラジウム生産国であるロシアのNornickel社は供給の増加が需要を上回った事から2024年迄にパラジウム市場が30万オンスの供給過多に転じると予測しています。過剰在庫も市場に影響を与えています。部品メーカーや製品メーカーは生産に十分な在庫を持ち合わせています。アナリストの一部は、需要の悪化によってパラジウム価格が更に下落すると指摘しています。短期的には価格が若干リバウンドする可能性はありますが中・長期的にはパラジウム価格は弱気の見方が優勢です。
https://www.reuters.com/markets/commodities/palladiums-slide-accelerates-prospects-surplus-next-year-2023-11-10/#:~:text=Top%20producer%20Russia’s%20Nornickel%20expects,boosted%20by%20recycling%2C%20outpacing%20demand.

中国当局は「グリーンアルミニウム」の生産と認定を加速させています。中国政府が支援する中国グリーンメタル認証センター(CGMC)は年末迄に約275万トの低炭素アルミニウムの認定を予定しています。この量は中国のアルミニウム総生産量の約7%に相当し、2024年には認証品が400万トンに増えると予想しています。Apple、Audi、BMWなどの主要ブランドの需要が高まり、グリーン認証材料の採用が急激に増えています。CGMCは既に28社の225万トン分のアルミニウムにグリーン認証を与えており、現在50万トンが審議中です。グリーン認証のコストは1トン当たり2元(僅か約0.2748ドル)です。EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)の導入により、グリーンアルミニウムの需要が増える可能性があり、中国は対応を急いでいます。
https://aluminiuminsider.com/china-to-expand-green-aluminium-certification-amid-rising-global-demand/

年末年始に掛けての鉄鋼製品価格に影響がありそうな情報です。鉄鉱石は2023年の残りの期間で供給不足になる見込みです。GSが出した最新の試算によると、2023年の世界の鉄鉱石供給量は当初に予測された15億5,700万トンから15億3,600万トンに減る予定です。この下方修正はQ3に起きた鉱山の問題で、オーストラリアとブラジルからの供給がQ4に減る事が理由です。その為、2023年の残りの期間、62%品位の鉄鉱石の価格が上昇し、通年平均を117ドルに押し上げる見込みです。2024年についても当初予想から22%上昇し、通年平均で110ドルになると見込んでいます。原料価格の上昇は、国内供給のある中国勢にやや有利に働く可能性があります。
https://www.cnbc.com/amp/2023/11/10/goldman-sachs-sees-clear-deficit-of-iron-ore-for-the-rest-of-the-year.html

最近、鉄スクラップの買いが戻り価格上昇のきっかけを作ったトルコですが、内需が正常に戻りつつあり、インフレは来年下半期に低下し始める見込みです。枯渇していた外貨ですが、経済政策転換が行われる中、今週は4月以来、初めてドル債市場での取引で25億ドルを調達しています。トルコに対する市場のセンチメントは引き続き改善しており、中央銀行によるオーソドックスな金融政策への移行を信じ始めている投資家が増えています。1ケ月以上前にFT始め、欧米の経済紙数紙が年末に掛けてトルコへの投資がやや戻ると予測していたような展開になっています。ただし未だ本当の力強さを戻すまでには至っていないという状況のようです。
https://think.ing.com/articles/monitoring-turkey-inflation-to-persist/

中国最大のモバイルコマースサイト、淘宝網(タオバオ)で電動二輪スクーター用のナトリウムイオン電池の販売があり、既に2輪スクーターへの搭載を前提とした市販化が始まっています。現在ナトリウムイオン電池の開発が積極的に進められており、今後、第2世代と第3世代の(固体型)ナトリウムイオン電池が市場に出る事が期待されています。それらは、エネルギー密度とライフサイクルを向上させ、かつ価格が安いという事が前提となっています。一部メーカーは来年以降、ナトリウムイオン電池を搭載した小型スクーターが中国市場に参入し、小型二輪におけるナトリウムイオン電池の市場シェアは将来的に30~40%に達すると予測しています。中国では航続距離が短い配達用の二輪業界に的を絞ったナトリウムイオン電池の普及は目の前に迫っているようです。
https://www.scmp.com/news/china/science/article/3240882/sodium-batteries-china-sparking-new-revolution-electric-vehicle-industry

プラスチック国際条約の多国間交渉の第3回は、13日から19日までケニアのナイロビで開催されます。それに先立ち、12日には地域協議が行われました。明確になったのは、プラスチック生産量と使用量の削減を条約に含めるかという問題を巡る国際的な分断です。石油・石油化学製品の輸出国は、生産量や使用量の削減は行わず、リサイクルや再利用といった「循環性」に焦点を当てるよう訴え、逆にEU、日本、カナダ、ケニアを含む数十カ国は、生産量と使用の削減、更にPVC等の有害プラスチックの排除や規制を主張しています。
米国は当初、プラスチックを規制する方向を望んでいましたが、ここ数ヵ月で立場を修正しています。言い方はオブラートに包まれた様な分かりにくい表現ですが、プラスチック生産量や使用の削減は「意味があり、実現可能な」世界的に合意された目標を反映すべきという立場を取り、事実上プラスチック生産量や使用の制限には積極的でありません。産油国の代表であるサウジアラビアは11日にロシア、イラン、キューバ、中国、バーレーンを含む国々と「プラスチックの持続可能性のための世界連合」と呼ばれる連合を立ち上げ、プラスチックの生産を管理するのではなく「廃棄物」に焦点を当てた条約を推進する事を目指す目論見を明らかにしています。12日には国際的な科学者20人のグループが公開書簡を送り、交渉の中心を人々の健康に据え、プラスチックの生産量を削減し「プラスチックに含まれる全ての化学物質の適切な検査を義務付ける」という項目を条約に含むよう求めました。ウクライナと中東を機に、欧米のイデオロギーが目指したインクルージブ(分け隔てなく全てを包含する世界)という概念は完全に消滅し、あらゆる点で分断し、多国間交渉が前進出来ないという状況が続いています。
https://www.unep.org/inc-plastic-pollution/session-3

中国の国策による安価な商品の津波に懸念が広がり始めています。中国人民銀行の融資データによると、不動産業への融資は前年比で0.2%減少しましたが、製造業への融資は38.2%増加しています。これは中国政府が製造業の高度化を誘導し、半導体からEVに至るまでハイテク製品のメーカーに資金を供給している為です。国策による産業の高度化推進は需要に対する過剰生産能力を呼び、安価な製品の輸出を増やす動きに繋がります。北京の欧州商工会議所会頭は「中国では消費が減っている中、電池、太陽光発電、化学品等で大規模な過剰生産能力がある」と述べています。地方政府もグリーン開発、先端製造業、戦略的産業に向けた政府融資の割合を増している事が判明しています。中国乗用車協会(CPCA)のデータでは、中国の自動車メーカーは、2022年末時点で既に年間4,300万台の自動車を生産する能力があり、工場の稼働率は僅か54.5%でした。中国は10月に需要に対する供給過剰から、デフレに逆戻りしています。不動産の不況を、政治的に製造業の高度化で克服する試みが上手くいくのか注視すべきかも知れません。
https://www.reuters.com/world/china/with-manufacturing-loans-rising-can-china-avoid-new-supply-glut-2023-11-12/

ワシントン・ポストは「ノルドストリーム2」の爆破事件にウクライナ特殊部隊の司令官が「調整役」として関与していたというニュースを流しました。これはワシントン・ポスト紙とドイツの週刊ニュース紙Der Spiegelによる共同調査により判明したと報じています。
丁度、今月に入り、欧州ではウクライナへの200億ユーロの追加軍事援助を巡り加盟国で激しい議論になっていました。来週初めにEUの外務大臣と国防大臣がブリュッセルで会合し、ウクライナ支援に関する協議を行いますが、事前に全く合意が得られない状況です。特にドイツを中心とする数ヶ国は200億ユーロという超巨額の資金を何年も前から約束することに難色を示しています。またEUは2024年3月までにウクライナに100万発の弾薬を提供するという別の公約を達成する事がほぼ無理な状況になっています。米国ではイスラエルのガザ進行で、共和党が支配する下院議会がウクライナから完全にイスラエル支援にシフトしており、ウクライナへの関与を弱める動きが強まりつつあります。そうした中で偶然にしては絶妙のタイミングで、ワシントン・ポスト(米)とDer Spiegel(独)によるノルドストリーム爆破の「ウクライナ関与」が報道され、背後に意図がある疑念も生じています。爆破当時、あれ程ロシアを非難していた欧米各国は、この報道に沈黙を保っているのは何故なのか。次の一手が見えそうです。
https://www.france24.com/en/europe/20231112-media-investigation-finds-ukrainian-officer-played-key-role-in-nord-stream-pipelines-attack

EU政府と欧州議会の担当者はEU重要鉱物法について合意に達しました。最も注目すべきポイントは、廃棄物からの重要鉱物のリサイクル目標を規定する法律を2027年迄には制定する事です。EUは2030年迄に16種類の「戦略的原材料」について年間需要量の10%を(鉱石から)抽出し、15%をリサイクルから供給し、40%を製錬などの精製/加工処理をする必要が生じます。またこの法律では、採掘、リサイクル、加工プロジェクトに期限を設けると共にサプライチェーンのリスク評価を義務付けます。アルミニウムは戦略的原材料に追加する事でも合意しています。早ければこの法律は2024年春以降に発効する可能性があります。
https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20231113IPR10401/critical-raw-materials-deal-on-securing-the-eu-s-supply-and-sovereignty

カナダの大手LIBリサイクル企業Li-CycleはQ3の決算を発表しました。Q3の純損失は1億3,050万ドル(2022年同期は2,060万ドル)と巨額となっています。Q2も純損失は3,530万ドル(約51.2億円)でした。Q3の調整後EBITDAは、3,890万ドルの損失でした。ハブ&スポークをビジネスモデルとするLi-Cycleにとって最重要拠点であるローチェスターのハブの建設は現在も停止しています。同施設の建設コストの上昇もあり、Q3期末で資産の減損評価を実施、減損額は 9,650万ドルとなっています。現在ローチェスターのハブ・プロジェクトは「包括的な見直し」を行っているとの事です。以前より営業実態に疑念が伝えられていましたが、今回の巨額損失は表面化された大きな出来事です。
https://li-cycle.com/press-releases/li-cycle-reports-third-quarter-2023-financial-results-and-provides-business-update/

英国政府は2026年からEUと同様の炭素国境税(炭素国境調整メカニズム)を導入する予定です。新税制により気候関連法や炭素取引市場の無い国から輸入される炭素集約型製品に税を課す予定です。EUは既に炭素国境調整メカニズム(CBAM)をスタートしています。英国で同様の措置を導入しなければ、英国にとって最大の貿易相手国であるEUとの貿易に悪影響を及ぼす可能性が高いという懸念が高まっています。最近の英国企業を対象とした調査では約3/4が欧州と同様の炭素国境調整メカニズム(CBAM)の導入を支持すると回答しています。CBAMは炭素を基にした事実上の保護貿易政策である事から、インドや中国はWTOへの交渉に入っています。CBAMが発効した場合、どの程度域内のインフレが加速するのか検討されておらず、注視する必要があります。
https://carbonherald.com/uk-plans-to-introduce-carbon-border-tax-in-2026/

欧州は過去10年間だけで鉄鋼生産能力が2,600万トン減少し、雇用の1/4を失いました。EUは中国やトルコなどの国々から安価で高炭素の鉄鋼を輸入する国になっています。EUの輸入鉄鋼製品の市場シェアは現在28%という記録的な値に達しています。欧州鉄鋼生産者協会(EUROFER)の事務局長であるAxel Eggertは、Euractiveに鉄鋼メーカーによる鉄スクラップへのアクセス確保を含む欧州鉄鋼産業マニフェストの5つの優先事項を詳説しています。これが現在のEUROFERのロビー活動の内容と考えてよいと思います。欧州鉄鋼生産者協会は、鉄スクラップを「重要な原材料」に含めるという運動方針をやや変え、電炉への補助金の強化と原材料(鉄スクラップ)の「確保」を優先するよう規制強化を求める方向になっています。電炉の補助金を大幅に増加し、地産スクラップ購入の余裕を持たせること、更に炭素国境調整メカニズム(国境炭素税)を厳格に進める事で鉄スクラップを一旦輸出して海外で製造された鉄鋼製品の再輸入の締め出しを求めています。域内での電炉の増加もあり3-5年で欧州発の鉄スクラップ輸出は大きな転機を迎える可能性が高いと言えます。
https://www.euractiv.com/section/economy-jobs/opinion/resilience-cant-be-imported-european-steel-makes-the-eu-stronger/

木質バイオマス発電の重要な原料である木質ベレットの関連企業で様々な事が起きています。Q3決算で巨額損失と事業継続の危機を伝えた世界最大の発電用バイオマス製造企業(木質ペレット製造企業)の米国Enviva(エンビバ)は株主集団訴訟を起こされています。株主集団訴訟を専門とする法律事務所Bragar Eagel & Squire, P.C.は一定の期間内にエンビバの株式を購入した株主達に連絡するよう通知しました。エンビバの株価は9日のQ3決算発表以降2日間で一時80%の下落となっていました。この集団訴訟では原告(株主集団)は、被告(エンビバ)が期間を通じて虚偽や誤解を招く陳述を行った、或いは同社の財務状況に関する重要な情報を開示しなかったと主張しています。エンビバは日本向けの長期契約を最も多く持つサプライヤーの1社です。
また今年夏には世界最大のバイオマス発電企業Drax(英国)がバイオマス発電所にて持続可能性の要件の満たしていない事から補助金削減の危機に瀕し、9月には主に米国からが多い木質ベレットの輸入量が59%も激減しました。同社は年間1千万トンを購入する巨大需要家でエンビバは供給先大手の1社です。更にBBCによる半年間の特別調査で、Draxが持つカナダの木質ぺレット生産工場(旧パシフィックバイオエナジー)が、木材の持続可能性要件を満たさず木質ペレットを製造し続けているといスキャンダルを報じ、現在も大問題となっています。
また英国政府は、輸入ペレットを燃焼させて発電しているDraxに対し炭素回収装置への補助金を出したという事で、環境団体から炭素会計の乱用を理由で訴訟を起こされています。この訴訟の結果次第ではEU内での木質バイオマス発電と炭素回収装置の組合せに大きな影響が出ると言われています。
一昨日には日本でもイーレックスの通期利益予測が220億円の純損失という事で大きな話題となっていました。実は安価で持続可能性要件を満たさない闇ルートのロシア、ベラルーシ、(エストニア)産の大量の木質ベレットが西側市場から締め出され1年経ち、ドミノ効果で影響を受け始めた西側先進国のバイオマス発電は大きな転機に差し掛かっています。
https://www.businesswire.com/news/home/20231110182551/en/ENVIVA-DEADLINE-ALERT-Bragar-Eagel-Squire-P.C.-Reminds-Investors-that-a-Class-Action-Lawsuit-Has-Been-Filed-Against-Enviva-Inc.-and-Encourages-Investors-to-Contact-the-Firm

英国の鉄鋼業はネットゼロに耐えられないという論調が強まっています。インド資本のタタスチールは、オランダで800人、英国で数千人規模の人員削減を検討しています。9,200人の雇用があるオランダの工場では約9%に当る800人を削減する事を正式に発表しました。また8,000人以上を雇用する英国のウェールズ工場は、2基の高炉を廃止し電炉に転換する為、最大で3,000人の雇用削減を検討しています。英国ではそれ以外にも中国資本のブリティッシュスチールがスカンソープ群の工場で月あたり約3,000万ポンドの赤字状態の為、3,200人の雇用者のうち最大で2,000人を解雇する可能性があります。この工場も電炉設置を発表しています。電炉への転換で行われる人員削減の悪影響と、排出量削減の効果を比較した場合、どの程度社会的にメリットがあるのか?今大きな問題となっています。タタスチールが2基の高炉を停止し電炉にした場合、英国の総GHG排出量から1.5%程GHGを削減すると試算されています。英国のGHG排出量は世界の総GHG排出量の1.03%です。その為3,000人の雇用で得られる地球的なGHG排出量の削減は0.01%しかありません。3,000人は直接雇用の削減である為、間接的な影響を受ける人数は数万人と言われています。人口1人当たりのGHG排出量も英国は、米国、カナダ、豪州、サウジの3分の1以下で、日本よりも3割程度低い為、地球規模では効果が殆どなく、逆に地域社会が受ける悪影響の方が圧倒的に大きいという事が議論の根拠となっています。
https://www.spiked-online.com/2023/11/14/british-steelmaking-wont-survive-net-zero/

米国のIRA税控除から中国企業の電池が排除される可能性が出てきました。米国の上院議員でエネルギー委員会の民主党ジョー・マンチン氏は米国財務省に対して中国産の鉱物や中国の電池会社がIRAのEV税額控除を獲得するのを防ぐ為に「可能な限り厳しい基準」を採用するよう要請しました。現在、米国の財務省は米国企業が電池生産に関する投資決定を行う際に何が「懸念される外国企業」と見做されるのか?その詳細規定を作っており、米国の自動車業界はその情報を待っている状況です。この制限は「外国懸念企業規則」と呼ばれ、完成電池には2024年から、電池の重要な材料には2025年から適用される予定です。適用された外国企業が生産した材料で作られた製品は、IRAの税控除を受ける事ができません。
米国では下院議会は共和党支配、上院議会は議員数が50:50で共和党と民主党が半々です。上院の議長は副大統領が務める為、投票数がイコールの場合は議長票が加算されて民主党が多数となります。しかし民主党員であるジョー・マンチンは、保守派中の保守で幾度となく多数決をひっくり返す、もしくは法案を骨抜きにしてきました。既に上院議会の共和党は中国排除を強く求めており、マンチンの1票は今後の法案で多数決の最終決定票となると見られています。バイデン大統領と習近平主席が会う直前のタイミングというのは選挙戦を意識した動きと言えますが、米国の電池産業から中国が排除されるとなると、EV全体のペースにも影響が出ます。EUも中国製EVの調査に入っており、過剰生産能力を抱えた中国の電池産業の今後の動きは、注意深く情報を集める必要がありそうです。
https://www.reuters.com/business/autos-transportation/senator-asks-treasury-bar-chinese-battery-firms-minerals-us-ev-tax-credits-2023-11-13/

上記と関連しますが、中国国内で過剰生産状態となっている中国LIB企業は、現在、欧州に投資を加速させています。2年前迄は韓国の電池企業は欧州での生産シェアが70.6%もあり寡占状態でした。LGエネ、サムスンSDI、SK Onの3社が欧州EV電池市場での最大勢力でした。しかし今年1~7月までに中国電池メーカーがシェアを40.1%まで押し上げており、韓国勢3社のシェアは57%に低下しています。欧州の自動車メーカーは安価な中国製バッテリーの採用を増やしており、高価格帯以外のバッテリーでは中国企業が優位に立つ勢いが増しています。特にLFPでは中国が圧倒的に強く、今後、大衆車への搭載が増えていく可能性があります。今後、欧州政府が政治的に米国の様な(中国排除の)判断をしていくのか常に議論となっています。ドイツEVメーカーは、中国製電池で価格を下げる事を目論んでいますが、ロシアのガスと同じ事が起きるとしてジレンマに陥っています。
https://www.nationthailand.com/world/asia-pacific/40032865

風力発電事業は欧米で逆風の真っ只中にあります。ドイツの重電大手シーメンス・エナジーは2023会計年度の決算を発表し、49億8000万ドル(45億9000万ユーロ)の巨額損失を計上しました。この純損失は主に風力タービン製造事業会社であるシーメンス・ガメサが抱える問題から来ており、従来の事業は好調でした。同社は「風力事業は依然として大きな課題であり、2023年の純損失に繋がった。予期せぬ風力タービンの深刻な品質問題に見舞われた」と会見で述べています。ドイツ政府は巨額の純損失に見舞われたシーメンス・エナジーへの76億ドル(75億ユーロ)の保証に同意しています。この保証はドイツ政府が同社との間で締結した150億ユーロのエネルギープロジェクトの内の75億ユーロを融資保証するものです。欧州のこの手の失敗の根本的な原因というのは、試算の甘さや科学的根拠に乏しい、イデオロギーが先行したグリーン計画とそのプロジェクトによるものです。ロシアのガスで失敗したドイツは、その解決として風力発電を倍増させるという「グリーンエネルギー」政策の推進を打ち出しました。しかし当初から科学的根拠に乏しい政策と言われていました。こうしたプロジェクトは欧州各地でことごとく失敗に終わり、結果、巨額な税金がつぎ込まれています。次世代に回される負の遺産は大きな代償となりそうです・・・。
https://www.siemens-energy.com/global/en/home/press-releases/excellent-performance-of-conventional–businesses-in-fiscal-year.html

米国のニューヨーク市は、大手食品・飲料会社のペプシコに対してバッファロー川の汚染を引き起こし、生態系に損害を与えているとして郡の裁判所に訴訟を起こしました。今迄であればメーカーが河川のごみで地方自治体から訴えられるというような事はありませんでしたが、EPR(拡大生産者責任)によって企業の責任範囲は大幅に広がっています。バッファロー川流域沿いの13の廃棄物集積所で見つかった廃棄物の内、識別可能なペプシコ製品の廃棄物の割合は17%以上もありました。訴状では、これは単一のブランドとしては不釣り合いな程に多いと指摘しています。先週コカ・コーラ、ダノン、ネスレの3社がペットボトルに関してグリーンウォッシングをしていると告発されたばかりでした。ペプシコは世界第2位の食品会社です。EPRにより他の多くの大企業が環境への影響を巡って地方自治体から訴訟に直面しています。ペプシコは少なくとも85の飲料ブランドと25のスナック食品ブランドを製造、包装しており、主に使い捨てのプラスチック容器が包装で使われています。
https://www.forbes.com/sites/anafaguy/2023/11/15/heres-why-ny-is-suing-pepsico-over-plastic-pollution-concerns/?sh=3b61120864a7

オーストラリア政府は、衣料販売大手企業に対して持続可能性へのイニシアチブに参加するよう要請しています。今年6月にオーストラリアでは、オーストラリア ファッション評議会(AFC)が主導する「シームレス・イニシアチブ」が立ち上げられました。このイニシアチブでは衣料の再販、修理、リサイクルの為に賦課金制度(1個5セント)を導入しています。しかしオーストラリアのコングロマリットであるWesfarmers(ウェスファーマーズ)傘下の豪州最大の小売業者Kマート・グループ(ブランドはK MartとTARGET)は、このイニシアチブに参加しませんでした。それだけでは無く6月7日にイニシアチブが開始される直前にKマート・グループはオーストラリア政府に対して、この制度の発表を中止するよう要請していました。豪州や北米に行ったことがある方はご存知と思いますが、K-MartとTARGETはどの町にもある巨大小売り業者です。現在オーストラリアに輸入される衣料品全体の推定20%はKマートとターゲットによるものです。オーストラリアは年間14億2000万点の衣料品を輸入し、その内約2/3に当る量と同等の廃棄物が発生しています。僅か7,000トンのみがダウンリサイクルされ、断熱材、ペレット、またはボードに再利用されています。繊維製品に関しては、欧州と米国のBlue Statesの一部以外はCEに消極的な為、その端的な例となっています。
https://www.theguardian.com/environment/2023/nov/16/kmart-industry-textile-recycling-scheme-regulation-levy-government

米国政府は国内電池製造業を強化する為に35億ドル(5250億円)をIRAから拠出する事を発表しています。米国エネルギー省(DOE)によるこの助成金政策は電池グレードの重要鉱物、前駆体材料、電池部品、セル及びパック製造の為の国内施設の新設、改修、拡張の為に行われます。現政権は2030年迄に乗用車の新車販売の半分をEVにする事を目標としています。
https://www.energy.gov/articles/biden-harris-administration-announces-35-billion-strengthen-domestic-battery-manufacturing

欧州政府のトップであるフォンデアライエン欧州委員長は「中国の(EV)過剰生産能力は直接的/間接的な補助金によってもたらされ、過剰生産能力は確実に輸出に回される」という懸念と共に「その影響は欧州市場を歪める事になる」と中国への強い牽制を行っています。また「中国の内需は回復せず、状況は更に悪化する」という見通しを述べています。改めて中国政府によるEV産業への補助金の公平性について、EU内で調査する事を強調しています。一昨日の米議会の動きと同じ様に欧州でも中国EVへの何等かの規制が行われる可能性が高くなっています。中国は不動産業で傷ついた経済をグリーンとハイテク産業への資金投入で復活させようとしていますが、2大市場である米国と欧州はその動きを牽制する政策に出ると思われます。市場を解放している日本への影響は一層強くなる可能性があります。
https://www.politico.eu/article/china-ev-overcapacity-will-get-worse-eu-commission-von-der-leyen-warns/



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