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NEWSCONの気になるNEWS(2023年2月第3週)
本日開催された欧州首脳会議で、欧州をグリーン製品の製造拠点とし、米国と中国に対抗するために「一時的に的を絞った相応の」支援を行う事で合意しています。現在、ソーラーパネル、風力タービンブレード、EVバッテリー分野は中国が独占しており、欧州市場の 50%以上を占めています。欧州委員会は次回のEU首脳会議までに環境関連プロジェクトの許認可を容易にし、中国への依存度を下げ、リサイクルを促進し、調達を多様化するための「重要原材料法」を提案する予定です。今年はEUの金属資源ナショナリズムが本格化する年になりそうです。
▶ https://www.reuters.com/world/china/eu-leaders-agree-targeted-temporary-support-green-industry-2023-02-10/
国連貿易開発会議(UNCTAD)がプラスチックの代替材料の重要性を掲載しています。2020年の世界のプラスチック代替品とその製品の取引額は約3,880 億ドルで、化石燃料から作られたプラスチックの取引量の約3分の1です。その為、潜在的な市場規模は1兆ドル規模である事が示されています。UNCTADはプラスチック代替品とそれぞれの関連品目の製品コード(HSコード)のリストを作成しました。HSコードは国際貿易で各国が共通して利用する製品分類コードです。このコードの作成、運用の目的は、有望なプラスチック代替品を特定し、輸出入時にそれらの製品の関税を引き下げる事で普及を促進する事にあります。プラスチックの代替え材料となる原料としては、植物や海藻の研究が進んでいます。欧州で採用が進むプラスチック包装税やプラスチック廃棄物の輸出全面禁止案が出る中で、代替品への動機が高まっています。
▶ https://unctad.org/news/scaling-plastic-substitutes-key-tackling-pollution
欧州議会の環境・公衆衛生・食品安全委員会が、現在欧州委員会が提案している「企業の持続可能性デューデリジェンス指令」に関し投票し、多数で採択しています。この指令では、企業が炭素排出量を削減し環境影響を防ぐための計画を作成することを義務付けます。具体的には企業のバリューチェンで生物多様性と生態系の維持を含む環境デューデリジェンスを強化し、科学的な目標を設定する事です。炭素排出量はスコープ1、2、3 を含む為、直接的な排出量以外にも間接的な排出量を計画に含める必要が生じます。欧州委員会の提案は、4月に議会に上程される予定です。
▶ https://www.europarl.europa.eu/committees/en/envi/home/highlights
mining.comが「Cobalt電池ブームの崩壊」というセンセーショナルなタイトルの記事を掲載しています。LIBに使われるコバルトの需要の伸びの鈍化と価格の低下、更にバンク・オブ・アメリカが示唆する「コバルトとリチウムの違いは、自動車メーカーがリチウム供給を強力に進めているとは反対に、脱コバルト、減コバルトに強力にシフトしている事」という事実に基づいています。特に水酸化コバルトの価格にそれが顕著に表れています。また購入方法の変更も影響を与えています。年間契約にせずスポット市場を拡大した事も価格下落に拍車をかけています。大手鉱業企業のグレンコアは一部の契約で水酸化コバルトを過去最大の割引価格で販売し、2019年の底値に近付いている、という事です。
▶ https://www.mining.com/web/cobalts-battery-powered-boom-has-turned-to-bust/
2月8日、ジャーナリスト最高の栄誉賞の1つであるピューリッツァー賞を受賞した著名ジャーナリストのシーモア・ハーシュがサブスタックに掲載した記事が大きな反響を呼んでいます。これは事件が起こった直後の昨年9月末に米国内で「リーク情報」として一部で同じ事が報じられましたが、直ぐに鎮静化し、その後、全く報道が止まった「ミステリー」とされる話題です。
ハーシュがリークしたのは、ロシアとドイツを繋ぐノルド・ストリーム・ガス・パイプラインを爆発したのは、バイデン大統領の命令で米国によって実行されたと主張している事です。これは2021年12月に攻撃を計画する為にワシントンで開催された会議に参加した「匿名の情報源」から得た情報、としています。 この情報によれば、フロリダ州パナマシティにある米海軍の潜水救助センターから、熟練したダイバーが2022年6月にバルト海で行われたNATOの年次演習であるBALTOPS 22で爆発物を海底パイプラインに仕掛け、その後9月 26日に遠隔で爆発させたと主張しています。 ノルウェー海軍のP8哨戒機が9月26日に必要なソナーブイを海に投下した後、爆破が遠隔で行われました。 4つのノルドストリームパイプラインの内、爆風によって3つが破壊されました。パイプラインを爆破する決定はバイデン米大統領が下し、最初の正式な会議は2021年12月に開催されました。これは欧州がウクライナへの資金と武器の供給に躊躇し、一部がガス利権の為に抵抗する事を終わらせ、EUをより積極的な反ロシアの姿勢に向けさせる事を目的として米国政権が下した判断である、としています。面白いのは、爆破があった当時、欧州の首脳の殆どがさして驚いた様子もなく猛烈な反応もせず、ロシアを暗に非難しただけだった事です。無論ホワイトハウスのスポークスマンは、ハーシュの記事を「虚偽で完全なフィクション」 であると一蹴しています。
実はロシアがウクライナに進行する直前の2月初頭、バイデン大統領もホワイトハウスの担当官も「ロシアが1歩でもウクライナ領に入ったらノルドストリームを完全に終わらせる」と強調しており、記者から「どのように終わらせるのか?」との質問に「とにかく完全に終わらせる」と繰り返していました。この爆破で漏れ出たメタンの「膨大な量」はデンマークの年間CO2排出量を上回ります。ロシアのウクライナ侵攻以降、米国から欧州へのLNG輸出量は137%以上増加し、欧州の輸入LNGの半分以上が米国産となりました。米国の歴代政権はドイツのノルドストリーム2を中止するよう何度もドイツに警告していましたが、ドイツと欧州首脳陣は無視をして進めてきました。米政権の自作自演はよくある事で、古くはトンキン湾事件から多数あり、今回も誰がやったか分からないミステリーとして近代史の中に葬られそうです。何十年も後になって真相がわかる現代の「ミステリー」で幕を閉じそうです。
▶ https://seymourhersh.substack.com/p/how-america-took-out-the-nord-stream
NATOがウクライナへの武器許与で枯渇しつつある各国の軍事備蓄を増やすよう加盟国に要請するようです。既にロシアのウクライナ侵攻後に一部で(原材料や半導体)軍需特需が起きていましたが、現在、NATOの弾薬備蓄が低下している為、更に需要が増す可能性があります。軍事備蓄の顕著な不足は、ウクライナ軍によって頻繁に使用される155mm砲弾、HIMARSミサイル、IRIS-T、パトリオット、ゲパルドなどの防空システム用の弾薬です。14日、15日にNATOの国防相が会合を開くという事です。軍需は比較的大きな量となる為、金属価格にも影響が出ると思われます。
▶ https://www.reuters.com/business/aerospace-defense/nato-expected-raise-munitions-stockpile-targets-war-depletes-reserves-2023-02-13/
英国政府は、増加する廃棄物関連の犯罪及び悪用を取り締まる為、廃棄物取扱いの「許可」ではなく、「免除(Exemption)制度」の取り締まり強化を発表しました。この改革は「危険な廃棄物の流通業者や違法行為の取り締まり」及び「廃棄物の備蓄と脱税を防ぐための廃棄物処理場での活動の精査」という2点の強化方針を掲げています。イングランドとウェールズの現在の規則では「登録制度」により特定の低リスクで小規模な廃棄物の管理活動を行うことが許されています。この制度では「環境許可(Environmental Permit)」を取得し保持する必要が免除されています。その為、この制度を悪用した廃棄物管理に関わる犯罪行為が行われる元凶となっていました。対象となる免除の削除は 3 つで「使用済み自動車部品の使用」、「タイヤの処理」、「金属くずの回収」を対象としています。英国政府は先週発表された環境改善計画で「制度の抜け穴を塞ぐ計画」を確認し、2043年(20年後)までに廃棄物犯罪を撲滅することを約束しました。
▶ https://www.gov.uk/government/consultations/reducing-crime-at-sites-handling-waste-and-introducing-fixed-penalties-for-waste-duty-of-care/outcome/government-response
▶ https://www.gov.uk/government/news/government-moves-ahead-with-plans-to-crack-down-on-illegal-waste
米国とEUが「重要な鉱物クラブ」の設立を検討している事が伝えられています。これはフランスとドイツの代表者が米国の主要当局者と会談した中で提案されたもので、米国のインフレ削減法が保護的で米国以外に何等かの「ペナルティー」を与える可能性があるという懸念に基づき、それを回避する1つの方法として提案されたものです。これは既に11月17日のダボス会議の講演で欧州委員長のフォン・デア・ライエンが述べていたもので、EU、日本、英国、米国のクリーンテクノロジー補助金が「公正で相互に強化され」、「大西洋全体で規模の経済を生み出すか、共通の基準を設定」する事を強調していました。事実上の中国、インド、トルコ等の国々への依存を減らす事を目的にしています。BRICsはロシア制裁に加わらず資源を輸入し続けている事も政治判断の材料となっているようです。
▶ https://www.theregister.com/2023/02/08/us_and_eu_critical_minerals/
▶ https://www.laprensalatina.com/eu-proposes-raw-materials-club-to-thwart-chinese-monopoly/
欧州の自動車メーカーやディーラーを含む複数の業界団体が連名で欧州議会に対し書簡を発行しています。書簡の内容は「内燃エンジンのトラックやバスの販売を早期に禁止することは、欧州の道路貨物業界を危険にさらす可能性がある」というものです。書簡では、化石燃料がバイオ燃料や電子燃料などの低炭素でネットゼロの液体燃料に置き換えられる限り、内燃エンジン技術がEUの気候目標に適合するものであると考えるよう政策立案者に奨励しています。運送業者を代表する国際道路輸送連合(IRU)はEUのトラック輸送部門はまだ完全な電化を受け入れる準備が出来ていない、と警告しています。業界の大きな懸念材料の1つは充電インフラの不足で、十分な充電インフラが無い状況でのEVトラックやバスのEVへの強制的な切り替えはリスクが高すぎると主張しています。英国でも昨年EVは販売を伸ばしましたが充電インフラ不足もありEV販売の伸び率はやや鈍化しています。
▶ https://www.fuelseurope.eu/publications/publications/joint-statement-of-the-eu-industry-co2-regulation-for-heavy-duty-vehicles-should-recognise-decarbonisation-potential-of-sustainable-and-renewable-fuels
EU の廃棄衣料の国際流通の行先の1つであるパキスタンへの流れが紹介されています。現在、欧州では毎年約 210 万トンの使用済み衣類と家庭用の繊維が回収されています。これは、EU 市場に出回る繊維製品の約 38% に相当します。残りは様々な廃棄物と混ざった状態で廃棄物管理の流れで捨てられます。EUは廃棄衣料や中古衣料品約4,600万ドルをパキスタンに輸出しています。それらはパキスタンの再販市場を通じてパキスタン国内で中古品として販売され、一部はグローバル市場に輸出されています。残りはパキスタンで再生繊維となり、それ以外は廃棄されます。EUは今年、繊維製品の規制強化を検討しておりエコデザインを推進する為に、繊維製品の品質、耐久性、長期使用、修理、再利用を含む設計要件の導入をより推進する計画です。この規制によりEUの繊維産業は使用済みの繊維に「第二の命を与える」という義務を追う事になります。これはバリューチェーン全体の大きな変化を要求し、熟練労働者の確保、廃棄物の階層別な効率的収集、更にリサイクルのための技術的進歩が求められ、今後は古着の処理に焦点が当たる事になります。パキスタンを仲介して国際的に繊維廃棄物と古着が流通する仕組みは、この規制で大きく変わると予測されています。サーキュラ―エコノミーのNext Big Thingは繊維産業という事が現実味を帯びています。
▶ https://www.brecorder.com/news/40226094
EVバッテリーがリン酸鉄系バッテリーに代わる事で中国勢の優位性が増す事が確実視されています。重量が重くエネルギー密度がNMCやNCAセルよりも低いリン酸鉄系のバッテリーですが、コストやサイクル回数の優位性により市販EVモデルに採用され始めています。中国政府やドイツ政府がEVの補助金を見直す中、テスラがモデル 3 とモデル Y にリン酸鉄系のバッテリーを採用し車輛価格を下げられる事で他メーカーよりも優位に立つ状況が生まれ、現在、他メーカーにも値下げ圧力が掛かっています。主にCATLを中心とした中国企業が開発製造をほぼ寡占しているLFP バッテリーは、 車輛メーカーの関心を集めています。最近、米大手のゼネラルモーターズ(GM)は4番目の電池工場の建設計画を変更しました。プロジェクト中止の理由は公表していませんがGMがLFP技術を考慮している事は業界では共通認識です。独大手のVWや米フォードモーターズも韓国製のNMC バッテリーから CATL製の安価なLFPセルに置き換えることを検討しています。フォードは米ミシガン州でLFPの新工場の計画を発表すると伝えられています。フォードとCATLの工場誘致にはミシガン州とバージニア州が参加していましたが、バージニア州は、米中経済摩擦の中で中国の電池メーカーが米国で今後どのように展開するか予測できない、として誘致レースから降りています。今現在は、複雑な知財(特許)の回避や製造技術面で圧倒的に優位なCATL無しでLFPセルを大量生産する事は事実上不可能と見らえており、フォードの決断がどのように影響するか今後を見守っている状況です。
▶ https://www.autoevolution.com/news/korean-battery-producers-set-to-lose-big-to-china-as-us-carmakers-switch-to-lfp-cells-210191.html
本日、欧州議会で2035年から実質ガソリン/ディーゼル車の新車販売を禁止する法案が採択されています。しかし再生可能燃料を使用可能とする特別条項が残されており、この問題は、今後の理事会承認でも論議を呼ぶと思われています。投票のうち自動車メーカーを持たないオランダ等の国は賛成票を投じましたが、ドイツなど自動車産業を持つ国は賛成票を投じていません。
米国のNYタイムズ紙がEUの米国製のワクチン購入を巡り欧州委員会に対し法定訴訟をおこしています。元々は欧州の執行機関である委員会の委員長ウルスラ・フォン・デ・ライエンが米国のワクチンメーカーであるファイザー社のCEO アルバート・ボウルラに送ったテキストメッセージの公開を求めていたもので、これに応じなかった欧州委員会に対し、訴訟を起こしたというものです。ニュース Web サイトnetzpolitik.orgのジャーナリストであるアレキサンダー・ファンタが当該のメッセージへのアクセスを要求しましたが、欧州委員会は「それらのメッセージを「特定」できず、もはやそれらを見つけることが出来なかった」と回答してメッセージ自体が特定できないし見つける事もできなので公開できないと反応しました。その為、NYタイムズはEUの最高裁判所で訴訟を起こし、欧州委員会はメッセージを公開する法的義務を追う可能性が出てきました。メッセージには数十億ユーロ相当のワクチンを購入する欧州政府とファイザー社との取引に関する情報が含まれる可能性があると伝えられています。欧州委員会はEUオンブズマンの要求にも応じていません。実はこの問題(ワクチンメーカーと各国との交渉経緯)は欧州だけでなく、各国で情報が殆ど公開されておらず、情報の透明性確保を推進する欧州政府も例外では無いという事です。問題が無ければ公開すれば良いのですが、公開できないという事で、様々な憶測が広がっています。
▶ https://www.politico.eu/article/new-york-times-sue-european-union-ursula-von-der-leyen-pfizer-texts/
トルコ大地震によりトルコの鉄鋼生産能力の3分の1が現在「麻痺」しており、特に地震の震源地に近いイスケンデルンとオスマニエ地域の約12工場の生産に影響が出ています。ただし阪神淡路大震災後の復興で鉄鋼需要が急増したように、トルコでも復興による確実な需要増が起きると専門家は見ています。今年後半から数年間は続くものと考えられています。北米での電炉の追加稼働とトルコの需要増でマクロ環境としては鉄スクラップ需要が弱まる材料は少ない可能性が高いと言えます。
▶ https://www.recyclingtoday.com/news/turkey-earthquake-steel-industry-rebuilding-ferrous-scrap-demand-prices/
2035年からEUで事実上の化石燃料車の新車販売が禁止される事が議会で承認を受けた事に対し、専門紙であるAutomotive News Europeが分析記事を載せています。このままいけば自動車メーカーは現行のビジネスモデルや調達モデルでは対応できない為、主に以下の3点に取り組む重要性を紹介しています。1)新しい商業モデル(リース、レンタル、共有等)によるサービスとしての製品性向上、2) 修理、改修、改造、再製造による製品寿命の延長、3)リサイクル用に設計された車両と部品による廃棄物の再利用。メーカーがリサイクル性を含めた技術開発を行い包括的なアプローチを行うようになった時にリサイクラーの立ち位置がどのようになるのか、これは重要な問題であり大きなチャンスです。
▶ https://europe.autonews.com/sponsored/all-or-nothing-why-circular-business-models-require-holistic-approach
欧州のプラスチックリサイクル業界は、欧州委員会の規制強化により劇的に変化しています。これらの規制はリサイクル業者等、最も影響を受ける人々の声に耳を傾けることなく起草されたようです。規制の早急な強化によって生じている様々な課題についてRecycling Magazineが特集を組んで解説しています。例えば、「再利用」の目標は2030年1月迄にノンアルコール飲料ボトルの10%、ホットとコールドの持ち帰り用飲料容器の20%を達成する事です。更に2040年迄に段階的に容器量を削減する事も含まれており、目標達成の責任は製造業者と最終販売業者にも課されます。技術的な課題が殆ど解決されていない中で強引に提案された内容とあって業界は猛反発を始めています。プラスチックは廃棄物による環境汚染を防止する為に非常に厳しい規制が短時間に提案されており、製造業者もリサイクル業者も非常に難しい立場に立たされています。
▶ https://www.recycling-magazine.com/2023/02/15/commission-must-clarify-sustainability-targets/
米政府と民間のコラボ研究機関であるLi-Bridgeはリチウムイオン電池の世界的な需要が2030年迄に5倍以上に急増すると予想しています。EVだけでなくエネルギー貯蔵システムを利用する人口が増えているためです。特に米国での需要は6倍以上になり、年間550 億ドルに達すると予想されています。しかし米国内の供給だけでは不足する為、製品の輸入に頼る構造自体は維持される見込みです。
▶ https://www.reuters.com/markets/commodities/global-demand-lithium-batteries-leap-five-fold-by-2030-li-bridge-2023-02-15/
欧州が木質バイオマスの定義をめぐり対立しています。再生可能エネルギー指令の改定案では「一次バイオマス」をエネルギーのみに利用する事を事実上禁止する方向で議会が賛成となり、カスケード原則を採用しています。しかしこの「一次バイオマス」の定義が曖昧で欧州委員会、理事会、議会の 3者間で協議が行われました。妥協案では「工業用グレードの丸太」と「粗破砕木質片」は再生可能から除外される事が提案されています。しかし議長国であるスウェーデンやその他の木質バイオマス産業を持つ国はカスケード原則を緩和する案を提示しており、今回の交渉でも膠着しました。木質バイオマスの燃焼は欧州委員会の委任を受けた科学者によるレポートが炭素排出にむしろマイナスであるという結論を出し、世界中の科学者も反対しています。しかし巨額な再生可能エネルギーの補助金による利権構造に大手投資機関が加わり、政治家を動かすロビー活動に常に科学が負けてきました。欧州の悪しき事例の1つと言えます。
▶ https://www.euractiv.com/section/biomass/news/biomass-fight-leaves-eu-renewable-energy-talks-in-a-deadlock/
パキスタンでは金融危機から港に滞留する工業原料の輸入が出来ない状態が続いています。深刻な外貨準備金不足に陥っているパキスタン政府は国際通貨基金(IMF)との救命措置が合意されるまで、必要不可欠な食品と医薬品以外の輸入を全て禁止しています。その為、現在、鉄鋼、繊維、製薬などの産業はほとんど機能せず、数千ヶ所の工場が閉鎖しており、失業懸念が深刻化しています。長年のマクロ経済政策の失政に加え、昨年の大洪水が原因で深刻な外貨準備と食糧不足を招き、金融危機に陥っています。中央銀行の外貨準備高は僅か29億ドルで通常の輸入額の3週間分よりも少ない額となっています。地元の鉄鋼メーカーは深刻なスクラップ不足に直面していると伝えられています。
▶ https://profit.pakistantoday.com.pk/2023/02/14/rising-panic-over-blocked-imports-in-crisis-hit-pakistan/
シンガポール政府がスーパーマーケットでの使い捨てビニール袋を有料制にする事(最低5セント)を含む資源の持続可能性法案を提出しました。この法案ではプラスチック廃棄物の汚染に取り組む事を目的の1つにしています。タイ、インドネシア、マレーシアでも今後同様の措置が取られると見られています。この動きにより、地域のリサイクル原料市場が逼迫する可能性が伝えられています。既に廃プラスチックの輸入がバーゼル条約の改訂で大幅に影響を受けており、同地域で急成長するリサイクル産業の廃プラのニーズを満たす事ができなくなり、再生原料の値段が上昇する懸念も出始めています。
▶ https://theindependent.sg/bill-to-impose-plastic-bag-charge-at-supermarket-tabled-in-parliament/
欧州でプラスチックリサイクルへの投資が加速しない理由を投資サイトが分析しています。世界は過去20年で2倍の量のプラスチック廃棄物を生みだしてきました。2019年に世界でリサイクルされたプラスチック廃棄物はわずか9%で、49%が埋め立てられ、22%が不法投棄となり、19%が焼却処分となっています。OECDは2060年に至っても、プラスチック廃棄物の50%が埋立られ、焼却はリサイクル量を超えると予測しています。リサイクルが加速しない最大の理由は対投資効果が得られない為であり、その原因は効率よく安価にリサイクルできるプラスチックの種類が極めて限られている事にあります。現在極めて厳しい法規制が課され、補助金も準備されていますが、投資家が前向きにならない原因は分別収集を含めたリサイクルの困難さに起因しているケースが圧倒的に多い為です。廃プラスチックによる環境破壊を防ぐための唯一の現実的な方法は、総量規制によるプラスチックそのものの量を劇的に減らす事ですが、これは、一部の環境保護団体が訴えるだけで、世界的にどの国も規制案を出していません。
▶ https://www.investmentmonitor.ai/features/why-isnt-europe-investing-more-in-recycling-plastic/