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NEWSCONの気になるNEWS(2023年1月第4週)
米国のインフレ削減法(IRA)成立以降、北米でのEV関連投資が増加し、その額はBloomberg NEFによれば約280億ドルに達しています。欧州資本でドイツのフォルクスワーゲン等が出資しているスウェーデンのILBメーカーノースボルト社も、ドイツに計画している工場よりも米国での拡大を優先する可能性がある事が伝えられています。IRAは3,690億ドルの巨額な政策で、多額の補助金と米国のエネルギーコストの安さから、欧州でなく米国での事業を再考する企業が増えています。ノースボルトは昨年欧州のエネルギーコスト増から2025年後半の生産開始を延期しました。その際CEOが米国での投資を優先する可能性を言及し、一昨日、戦略担当役員が同じ発言を繰り返しています。エネルギー高、インフレ、原材料コストの上昇により欧州のEV関連投資は中韓の電池メーカーを除き計画が延期されるケースが増えています。英国のブリティッシュボルトの倒産もあり、バッテリーとEV投資に関する欧州資本の実態は、報道されているものよりも悪いかも知れません。
▶ https://europe.autonews.com/suppliers/northvolt-says-germany-battery-plant-talks-continue
英国でも当局によるガイダンスが始まっている「グリーンウォッシング規制」について、数週間以内に欧州委員会が罰則を含む規制案を提出する事が伝えられています。この草案では、現在、企業が宣伝する「グリーン」、「エコ」、「環境にやさしい」などの製品に関する宣伝の40%は「根拠のない」ものであると、記載されています。規制ではグリーンウォッシングを監視する市場監視当局の役割を大幅に強化する予定です。欧州では200を超える種類の「エコラベル」が使用されており、それぞれが異なる測定と方法論により作られており、これも企業がグリーンウォッシングを行う原因の1つとなっています。
▶ https://www.euractiv.com/section/energy-environment/news/leak-eu-to-slap-penalties-on-companies-making-false-green-claims/
本日26ヵ国が共同で、貿易、気候、及び持続可能な開発の問題に特化した閣僚レベルの国際フォーラムである「The Coalition of Trade Ministers on Climate」を立ち上げました。日本、米国、EU、カナダ、韓国、豪州、ニュージーランド等が含まれています。このフォーラムをリードするのはエクアドル、EU、ケニア、ニュージーランドの4ヵ国/地域となります。この共同体は世界経済フォーラムの年次総会で正式に発足しました。目的は「現在の気候危機に貿易政策が貢献する方法を特定する事」としています。次回の会議は2024 年初頭に予定されている次の WTO 閣僚会議中に開催される事が予定されています。ただし人口と経済規模が大きいBRICsは1ヵ国も入っていなく、東南アジアからもシンガポールとフィリピンだけで、次回会合が1年後・・・・30年以上前に戻った「西側の仲間の会議」のようで実効性があるのか疑問の残るフォーラムです。分断の溝は深そうです。
▶ https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_23_248
毎回話題に上る内容でゴシップのようなものですが、今回は論争が起きているネタになるので紹介します。WEFの年次総会の期間中には、毎回スイスに1,000機以上のプライベートジェットが離着陸し、ダボスまで大型高級車で移動するのが参加者の恒例となっています。環境団体のグリーンピースは世界経済フォーラムを「超汚染イベント」と非難し、それに対し欧州ビジネス航空協会(EBAA)、全米ビジネス航空協会(NBAA)、全米航空輸送協会(NATA)の3団体が共同署名で反論声明を出しています。普段からプライベートジェットが多い地域なので実際にはプライベートジェットの増加は500機程度で、保安上の理由もありVIPには必要だ、との見解です。この論争と似たものが米国でもあり、気候変動で海面が上昇し高波や浸食で人が住めなくなる、と言って予算をグリーン政策につぎ込む政治家が海岸線の高級住宅地に別荘を多く所有していたり、今回も「地球は危機の真っただ中だ」とWEFで(毎回)熱弁をふるう某元副大統領もあちこちをプライベートジェットで飛び回り、同国の平均世帯の21倍から34倍のエネルギーを使う住宅に住んでいる「偽善者」だと非難が起きたりしています。2020年にグラスゴーで開かれたCOP26では英国政府がカーボンニュートラルなイベントにすると大々的に発表していましたが、終わってみれば史上最も温室効果ガス発生が多いCOPであった事は、一部のメディアでしか伝えられませんでした。どちら側のメディアなのか、公平なメディアなのかは、伝える内容を見ると良く分かります。
▶ https://www.greenpeace.org/international/story/57899/dont-get-distracted-by-world-economic-forum-wef-set-another-world-is-possible/
▶ https://www.euractiv.com/section/energy-environment/opinion/debunking-the-myths-the-true-impact-of-business-jet-traffic-during-the-world-economic-forum/
英国政府はイングランド、ウェールズ、北アイルランドで2025年にペットボトルと飲料缶のデポジットスキーム(保証金返還制度)を導入する事を発表しました。計画より1年遅れての実施となります。ガラス瓶はイングランドと北アイルランドでは除外されます。スキーム開始後3年で廃棄飲料容器を85%削減する事を目指しています。毎年、英国では推定で140億個のプラスチック飲料ボトルと90億個の缶が消費されています。スコットランドでは8月にガラス瓶で同様のスキームが開始される予定です。
▶ https://www.gov.uk/government/news/deposit-return-scheme-for-drinks-containers-moves-a-step-closer
単層グラフェン材料を開発製造するナノテックエナジー(Nanotech Energy)が英国に10億ポンド(約1,550億円)を投資してバッテリー工場を計画している事が報じられています。同社はグラフェンベースのエネルギー貯蔵製品を開発製造する新興企業で42件の特許を所有し、不燃性で費用対効果の高いリチウムイオン電池を製造できる現在世界唯一の企業です。2014年に設立され、UCLA等の研究を基にグラフェン材料とその用途開発を行っています。グラフェンは軽量、高熱・電気伝導度、高強度の為、バッテリーの電極材料として応用すれば高容量化が可能です。米国のナノグラフ社、ナノテクエナジー社、リアルグラフェン社、アピア社と、中国のヤデア社が同素材を開発しており、特にナノテクノロジー社はバッテリーの販売を既に開始しています。
▶ https://nanotechenergy.com/
▶ https://www.prnewswire.com/news-releases/nanotech-energy-inc-reveals-plans-for-new-1bn-uk-gigafactory-301725266.html
欧州リサイクル産業協会(EuRIC)が衣料品の再利用に関するライフサイクルアセスメントについてプレスリリースを掲載しています。この研究によると繊維(製品)を再利用する事でCO2と水を大幅に節約出来る事が確認されています。再利用による環境影響は新品を製造する70分の1としています。ただし、ファストファッションで多く用いられる合成繊維製品は中古品での需要があまり無い事から処分や埋立てされるよりもリサイクルに向けた方が環境上のメリットがある、としています。欧州では今年中に繊維製品への規制強化が発表されると言われており、業界も動き出しているようです。しかし、このポジションペーパーの原文を読む限りでは、中古衣料を集めて輸出を禁止しないように促すニュアンスが行間に読み取れます。
▶ https://www.euric-aisbl.eu/position-papers/item/644-press-release-clothing-reuse-has-a-70-times-lower-environmental-impact-reveals-new-study
欧州廃棄物輸送指令に関して欧州鉄鋼協会(EUROFER)が「前進だがEUは廃棄物の問題を海外に輸出することを許可すべきではない」という不満を表明しています。EUROFERは以下の様に述べています。「2021年に鉄スクラップは1,950万トンが域外に輸出されました。鉄スクラップ1トンをリサイクルする事で1.5トンのCO2が削減でき、ステンレス鋼の場合は約5トンのCO2を削減できます。スクラップは既に希少資源である事が認められている為、むしろ重要な原材料と見なされるべきです。OECD諸国への輸出も、より強力な監視システムが絶対に必要です」。メーカーとスクラップ業界との真っ向からの意見の対立は、指令の改正で更に過熱しています。
▶ https://www.eurofer.eu/press-releases/ep-vote-is-step-in-the-right-direction-but-more-efforts-needed-to-ensure-watertight-environmental-and-social-standards-in-waste-shipments-to-third-countries-says-eurofer/
Resource Recyclingがリサイクル選別工場(英語ではMaterials Recovery Facilities:MRFと定義される事が一般的)でのAIとロボットの普及について意見を掲載しています。日本のみならず欧米ではリサイクル・廃棄物管理産業は現在人手不足の影響を大きく受けています。米国のMRFの平均処理能力は約190トン/日で2000年比2倍ですが、これ以上の伸びには限界があります。現在のAIは億単位の画像データから毎秒12メートルでコンベア上を流れる廃棄物を精度95%超で特定・認識し、それをロボット信号に変えピッキングをする事ができる所まで開発が進んでいます。AIシステムには休憩時間やダウンタイムが無く、更に勤務時間外や週末に稼働させる事でMRFの生産効率を最大2倍から4倍にする事が可能です。欧州では新興企業と大手廃棄物管理会社がパートナーを組んで幾つかのプロジェクトが進んでいます。画像データ以外にも電子透かしを利用したプラスチック容器の選別プロジェクトも進行中です。
▶ https://resource-recycling.com/recycling/2023/01/23/in-my-opinion-making-rapid-innovation-a-reality/
Oil.comが銅市場予測を掲載し、投資家が2023年の銅価格に対して強気な事を紹介しています。個人投資家の45%、職業投資家の 36%が、銅を今年最もパフォーマンスの高いコモディティと見なしており、GSは「非常に逼迫した市場の中で銅価格が記録を更新する可能性がある」と予測しています。これは23日に発表されたブルームバーグのMLIVパルスに掲載された内容で供給増が限定される中、先進国の政策目標と環境対応が相次ぎ、既に供給不足が存在している、という見解を載せています。グレンコアは先月、銅の大幅な不足が迫っていると述べ、業界関係者やアナリストからの警告を繰り返していました。
▶ https://oilprice.com/Metals/Commodities/Extremely-Tight-Market-Could-Push-Copper-Prices-To-Record-Highs.html
中韓の投資が続いているインドネシアのニッケルですが、独化学大手のBASFと仏鉱業大手のErametが、EV市場向けのニッケル処理工場を設立する為に26億ドル規模のパートナーシップ契約を計画しています。インドネシア政府はインドネシアを国際的な EV関連国にすると言う目論見があり、ニッケルを戦略資源と位置付けています。同国が現在、中国のBYDグループ、米国のテスラとのEV生産施設への投資交渉をしている事も伝えています。ロシア産のニッケルを西側先進国が避けている事から、インドネシアの国際的なプレゼンスは急上昇しています。
▶ https://batteriesnews.com/indonesia-says-basf-eramet-near-26-bln-deal-process-nickel-ev-batteries/
Transport & Environmentの最新の分析で、EUが米国のインフレ削減法のような政策を実施する事で2030年までにバッテリーとその材料の中国依存を解決する事ができると伝えています。EUは2027年迄に十分な量のリチウムイオン電池セルを生産し、中国をサプライ チェーンから切り離す事が出来る、としています。米国のインフレ削減法(IRA)が昨年実施されてから、補助金や税制優遇措置によりEV関連の投資が米国で増え、投資が欧州から米国に流れています。EUは3月までに重要な原材料法の原案を発表し、更に今年中にIRAに対抗する「グリーンディール産業計画」につて詳細を発表する予定です。結局グリーン化により保護的な政策と貿易が結果として生み出されるというのは、皮肉なものです。そこまで投資余力の無い途上国は今後どうなるのか?全く解が見えていません。
▶ https://www.theguardian.com/business/2023/jan/24/eu-could-end-reliance-on-china-electric-car-batteries-by-2030-investment-joe-biden-369bn-green-subsidies
北欧の「人道大国」を自称してきたスウェーデンが移民に対する大きな政策転換をしています。スウェーデンは移民が同国に来るのを思いとどまらせる為の「国際的なキャンペーン」を開始すると発表しました。昨年の選挙で右派が躍進した事も理由の1つも移民問題で、穏健派議員であるHanif Bali氏でさえ、昨年「マルメ地方では小学生の僅か32%がスウェーデン生まれの両親を持ち、ヨーテボリとストックホルムではそれぞれ46%と50%であり、これらの数字は年々縮小している」と移民政策の転換を訴えていました。都市の荒廃や犯罪など移民関連の問題が山積する同国は首相に就任したUlf Kristerssonが「スウェーデンを正す」と選挙公約で示すなど、大きな社会問題となっています。出生率の急落と高齢化に悩まされているスウェーデンはここ数十年、労働力不足と年金問題を是正する為に大量の移民を受け入れ、移民制限を発言すると左翼系のマスコミから「人種差別主義者」「人種偏見」と攻撃を受ける状況が続いてきました。結局問題が解決不能状態になって政策を大転換するという欧州の典型的な例と言えます。マスコミも一斉にスローダウンしています。ドイツの石炭大量消費にも同じような兆候が見られます。
▶ https://sputniknews.com/20230125/sweden-launches-international-campaign-to-stifle-migrant-flow-1106673764.html
バーゼル条約が2025年1月1日から改正され、主に電子・電気機器廃棄物(WEEE)とその構成部品が新たに付属書IIのY49 品目として追加され「特別な考慮が必要な廃棄物」となります。これは輸出の際に、事前に相手国側の同意を必要とする事(PICと呼ぶ)とEUでは付属書IIに記載された品目は基本的に途上国への輸出が禁止となります。このような改正になった原因となる国がアフリカの「ガーナ共和国」である事は殆ど知られていません。WEEEのガーナ問題として長年取り上げられてきました。その内容をフランスの記者ポール・マーシャルが「アフリカ:資本主義のゴミ箱」と題したレポートを掲載しています。WEEEはEUから、EU付加価値税の適用外であるスペインのカナリア諸島を輸出地として「中古品」として何千トンも「ガーナ共和国」に送られ、中古品として30%が売買され、残りはガーナで人の手で分解選別され、貴金属回収の為に焼却に回されます。それらの土壌の重金属汚染は許容範囲の数十倍から百倍になる事も珍しくありません。ガーナの前は中国、マレーシア、フィリピン等が同じ役割をしていました。規制と税制の網をくぐり行き場所をさまようEUの廃棄物問題は、ようやく規制がかかりそうです。
▶ https://internationalviewpoint.org/spip.php?article7963
欧州の化粧品とパーソナルケア製品の貿易協会である「コスメティックヨーロッパ」のトップが、今年欧州の化粧品業界が別の事業領域と関係を強化する必要に迫られる、と発言しています。これは改定されるEU都市排水処理指令とEU包装及び包装廃棄物指令により業界が別分野の関係者との事業を行う必要がある事を示したものです。EU包装及び包装廃棄物指令の改定案では、拡大生産者責任の採用、詰め替えの促進、全ての包装をリサイクル可能にする事、包装廃棄物の削減、が数値として記載されており、食品業界のみならず、あらゆる業界が対応する必要に迫られています。特に食品や化粧品の様に人間の体に接触する物(吸収される物)の包装品へのカテゴライズが今後の焦点になっています。
▶ https://www.cosmeticsdesign-europe.com/Article/2023/01/23/cosmetics-europe-director-general-discusses-unprecedented-2023-regulatory-change-for-beauty-personal-care
既報ですが、インドのタタスチールが計画を発表していたパンジャブ州の電炉が着工した事が伝わっています。同工場は鉄筋を生産し、能力は年間75万トンです。投資額は3億2千100万ドルで(約390億円)で、既に所有するスクラップ処理工場(処理能力50万トン)を通じて鉄スクラップを供給します。タタスチールは英国で年間360万トンの鉄鋼製品を生産していますが、電炉への切替投資に対し政府の助成を要求してきました。電炉への切替え機運が高まる中、今後、欧州ではグリーンスチールの需要と鉄鋼生産の炭素削減要求が増し、各地で鉄スクラップの需要が伸びると予測されています。
▶ https://www.steelorbis.com/steel-news/latest-news/tata-steel-starts-construction-of-scrap-based-mill-in-northern-indian-state-of-punjab-1276377.htm
ドイツのタイヤリサイクル企業Pyrum Innovations AGとノルウェーのPolyfuels Group ABが共同でタイヤリサイクルの為の熱分解プラントを4工場設立する事を発表しています。各工場の処理能力は使用済みタイヤ(ELT)で年間20,000トン、1年以内に工場設立に向け合併会社を設立します。工場は2030年までに、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、エストニアで建設する計画で、各工場にはそれぞれ3個の熱分解リアクターを設置する予定です。Pyrumの技術は、ELTを1~12 mmに裁断し、メタル分の除去後に熱分解を行い、発生蒸気を凝縮行程でコンデンスし、分解後のオイル分とガスを分離させる事にあります。熱分解のリアクターは同社の特許技術になります。
▶ https://polyfuels.group/pyrum-and-polyfuels-sign-letter-of-intent-to-jointly-build-and-operate-four-pyrolysis-plants/
▶ https://www.pyrum.net/en/for-a-cleaner-world-start/
ここ2週間程、欧米でニュースが続いているものに、「膨張した世界の債務残高が持続不可能になる危険がある事」があります。様々な欧米経済紙の紙面を飾っていますが、無料版で読めるものが少ないので、少し前のS&Pの記事を引用します。世界の債務残高は300兆ドルを既に超え、世界経済のGDPの349%に達しています。特に政府債務残高は2007年から2022年に76%増加し、現在対GDP比で102%に達しています。負債の内、変動金利が全体の35%であると仮定すると、金利が2022年に欧米で平均3%上昇した事から既に3兆ドル以上の利払いが増える計算になります。企業債務では中国の企業債務が世界の凡そ1/3を占め、サンプリングした6,000社の平均は対売上比で6倍、この数字は世界平均の凡そ倍の比率となります。ブルームバーグは世界の不動産不良債権が凡そ1750億ドルと推計していおり、資金調達コストの上昇と共に借り換えコストも上がると予測しています。最近イエレンがWEFにも出席せず中国を訪問していましたが、日本に次ぐ米国債の債権国である中国が米国債から金へと投資先を替えつつあり、交渉に行った事が本音のようです。この辺りの動きを象徴するものかもしれません。
▶ https://www.spglobal.com/en/research-insights/featured/special-editorial/look-forward/global-debt-leverage-is-a-great-reset-coming
▶ https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-01-23/RORVLKT1UM0Y01
アナリストによる欧州排出権取引市場の炭素価格予測が引き上げられています。2023年は炭素1トンの平均€81.40、2024年は€94.14、2025年は€102.24になると予測し、2022年10 月の予測からそれぞれ4.2%、1.9%、0.6%上昇しています。これは最近発表されている欧州圏の経済指標がエネルギー価格の下落と共に予測を上回るものとなっている事が要因です。最近発表されたドイツのPMIも50を超えており、予測以上に底堅いものがあります。欧州の天然ガス価格は、貯蔵量の増加と温暖な冬の影響で、今月は現在までに25%下落しています。
▶ https://www.euronews.com/next/2023/01/26/eu-carbon-poll
グリーン化に向けて欧州委員会のメンバーが鉱業企業とその流通者に資金を提供するよう要請しています。欧州委員会は3月8日に「重要な原材料法」案を発表する予定です。重要な原材料の供給を増加させる為に、一部の銀行に融資を増加するよう直接依頼した事が報じられています。重要な原材料法にどのような鉱物が入るかは未発表ですが、現在の重要な原材料リストに加え、ニッケル、マンガン、グラファイト、マグネシウム、アルミニウム、ニッケル、銅、コバルト、パラジウムやその一部が入る可能性があります。この法律によって、資源ナショナリズムとリサイクルが更に加速しそうです。
▶ https://www.mining.com/web/eu-urges-european-banks-to-step-up-funding-for-critical-minerals/
今後3年で米国に200万トン分のアルミニウム圧延工場が追加される事で、原料となるアルミ製使用済み飲料缶(UBC)の供給逼迫が懸念されています。この規模の生産能力の追加は主に原料としてスクラップを数種類組み合わせる事に焦点を当てていますが、比較的高品質のアルミニウム スクラップが入手できない可能性が指摘されています。UBCの不足分を他のアルミスクラップ(Zorba やTwitch)に置き換える事を検討していますが、技術的課題が多く遅れています。ただし、地域や供給網の確保によっては不足に至らない企業もあります。低炭素需要が高まる中でスクラップ供給量の確保とその品質問題は、メーカーにとって徐々に現実的な課題となっています。
▶ https://www.spglobal.com/commodityinsights/en/market-insights/latest-news/metals/012523-new-us-aluminum-sheet-mills-to-put-scrap-supply-in-focus-industry-experts
英国資本でLIBギガ工場を計画し倒産したブリティッシュボルトの負債が1億2000万ポンド(約200億円)に上る事が判明しています。まだ工場の建設前の段階です。同社はFTSE100のGlencore、Ashtead、abrdn(Tritax)等から支援を受け、英国では競争相手が限られた事から前政権時代には「旗艦プロジェクト」と見なされていました。現在、複数の企業が跡地の買収などに興味を示していますが、今は具体的な進展の話がありません。欧州ではゼロスタートのバッテリー新興企業の殆どが具体的な進捗を見せておらず、欧州資本最大のメーカーであるノースボルト社も過去1年は進捗情報が以前より多く無く、ドイツでの生産延期発表後、その後の具体的な期日を示していません。巨額の費用を必要とし技術的にも難しいILBのギガ工場は、華々しい計画発表と巨額のマネーの流入をもたらしましたが、ブリティッシュボルトのように倒産した時の反動は逆に大きなものとなるようです。インフラ整備の遅れ、補助金に頼るEV販売、中韓以外の競争力のあるLIB関連部材の供給網不足と、実態はかなり慎重に評価する必要がありそうです。外部調達資金が多い為、ブリティッシュボルトのように倒産数か月前まで殆ど悪い情報が出てきません。
▶ https://www.theguardian.com/business/2023/jan/26/britishvolt-collapsed-owing-120m-as-uk-car-industry-reports-dismal-year