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世界の環境関連ニュース(2022年5月第5週)
WEF(世界経済フォーラム)の年次総会でUAE経済省とWEFが「包括的な戦略的パートナーシップ協定」を結んでいます。その後に「Markets of Tomorrow」イニシアチブを立ち上げる事も発表しています。UAEは更に第4次産業革命のアプリケーション開発に関してWEFとの合意に署名しています。 「Markets of Tomorrow」イニシアチブは、UAEでの新しいビジネスモデルをサポートする事でスタートアップ企業を強化し、将来のデジタル、及び技術開発に焦点を当てます。ポスト・オイル経済の新しいビジョンを開発し、政府と民間部門の協力を支援し、将来の市場を形成する事が目的と発表されています。WEFがロシア無き後(ロシア大富豪を失った後)、UAEと組む意味は何なのか?は深く理解する必要がありそうです。
▶ https://bit.ly/3MTqP5n
シリンダータイプのリチウムイオンバッテリーに関して幾つかのニュースが報じられています。英国最大のリチウムイオン電池メーカーであるブリティッシュボルト(Britishvolt)がドイツのバッテリーセル開発/製造業者のEASを3600万ユーロ(約49億円)で買収した事が報じられています。EASは、コンパクトな電極の製造技術を持ち、それらを利用したシリンダータイプのリチウムイオン電池「46xx」(46は直系46㎜、XXは長さ)の開発・製造を行う企業です。特に高性能なアプリケーション用に開発しており、ブリティッシュボルトがスポーツカーメーカーであるアストンマーチンやロータス用に高性能EVバッテリーを開発しているニーズにマッチします。買収は、EASを所有するブルガリアのMonbatグループから行います。また、高性能自動車メーカーを代表するドイツのBMWもCATLから2025年を目途に「シリンダータイプ」のバッテリーの供給を受ける契約を結んでいる事が発表されています。現在CATLは、ほとんどの自動車メーカーに正方形のセルバッテリーを供給しています。テスラは最近、シリンダータイプの「4680」リチウムイオン電池の製造を開始しています。直径46ミリ、長さ80ミリの円筒形セルで、現在の小型の2170セルの約5倍のエネルギーがある事が特徴です。
▶ https://bit.ly/3asahTF
▶ https://eas-batteries.com/
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タイの大手石油科学メーカーでPET製造メーカーでもある「Indorama Ventures Public Company Limited(IVL)」が、複数の企業と共同で廃PETトレイからPETトレイへのリサイクル技術の開発と検証を目的としたプロジェクトを立ち上げています。同社は既に6年を掛けて、多層を含む廃PET樹脂のリサイクル技術開発に取り組んでいます。このプロジェクトで開発した技術により、廃PETトレイ5000万個を埋め立て地や焼却からリサイクルに向ける事ができる、としています。このニュースのポイントは、同社がベトナムを代表するPET包装企業の1つである「Ngoc Nghia Industry / Trading Joint Stock Company(NN)」の買収した事で、アジア市場でr-PETの需要が将来急増する事に先手を打つ戦略となっています。
▶ https://bit.ly/39ZOC4K
▶ https://bit.ly/3PLlbUD
英国のタイヤリサイクル大手の「Wastefront社」が、UAEドバイの商社である「Gateway Resources社」と提携して英国東北部に大型の廃タイヤリサイクル工場を建設する事を発表しています。投資額は約160億円で、処理能力は年間8万トンです。工場はバイオ燃料やカーボンブラック等の製品を製造する為で、セメント製造での廃タイヤの燃焼を減らす事が目的です。Wastefrontのカーボンブラックは、タイヤ生産におけるバージンカーボンブラックの代替材となり、総(炭素)排出量を80%削減する見込みです。主要なタイヤメーカーは、既に顧客としてリサイクル材料の販売先である、と報じています。ウクライナ戦争を機に、欧州で主に合成ゴムとカーボンブラック(CB)の供給に圧力がかかり、再生ゴムや原料の共有に関心が高まっています。
▶ https://bit.ly/3GvCaWI
Business Wire が世界の電池陰極(負極)材料市場の分析レポートを発行しています。今後5年で毎年平均5.6%の成長が見込まれ、2026年には207億ドルに達すると分析しています。この内、中国は2026年迄に63億ドル、欧州は68憶ドルに達すると予測されています。注目すべき市場として日本とカナダが挙げられており、年率平均の成長が2026年までそれぞれ3.3%と4.3%と予測されています。エレクトロニクス、自動車産業のリチウムイオン電池の需要の大幅な増加によりカソード材料の需要が上がり、その他の業界でもエネルギー転換により市場は堅調な成長になると見られています。
▶ https://bwnews.pr/3NK0BC6
上記の需給情報を基にした市場分析とは異なる研究結果が上がっており、注目を集めています。欧米で話題になっているゴールドマンサックスの産業用金属リサーチ責任者のNick Snowdon (ニック・スノードン:前ドイツ銀金属アナリスト、元スタンダードチャータード銀行金属アナリスト)氏とそのチームによるリチウムイオン電池金属の最新マーケット予測です。29日に「メモ」として発行されています。スノードン氏は著名な金属市場アナリストで、昨年5月に「銅は次の石油である」というレポートを上げ、更に「コモディティーはスーパーサイクルに入っている」と分析して、ある程度その後の市場の方向性を当てています。コモディティーの最近のスーパーサイクルが「構造的な投資不足と供給だけでなく、構造的に強い需要」という2つの要因を示した事で、評価されています。その彼(のチーム)が「コバルト、リチウム、ニッケルの3つの主要な電池金属の価格は、投資家がグリーンエネルギー転換が早期に実現するとして投資(投機)を「積み上げすぎた」ため、(その反動で)今後2年間で下落する」との分析結果を出して話題になっています。現在、一部の金属(コモディティー)は需給だけでなく、投資・投機マネーや地政学の問題にも強く影響を受ける為、需給だけを見ても先が読みにくいという状況の中での分析となるようです。現状Niなどは市場を介さず店頭取引によるポジションが積みあがっている事もあり、なかなか見えづらい市場になっているようです。3月のNiのSqueezeは、まさに投機マネーのパイリングで起こった出来事でした。
▶ https://www.youtube.com/watch?v=y7TwDsm2tUE
欧州廃棄物輸送規則(WSR)改正議論が一段と熱を増しています。トルコのイスタンブールで開催されているIREPAS鉄鋼会議で欧州リサイクル産業連盟(EuRIC)のオリビエ・フランソワ会長が、「この問題についてWTOに訴える必要がある」と述べて注目を集めています。既にArgusでも一部が報じられていますが、トルコの地元機関紙が詳細を伝えています。改正の最大の焦点は、機械的に選別された金属スクラップを「廃棄物」として定義するか、という事になります。「廃棄物」はEU域外への輸出が原則禁止されており、実施された場合は、欧州の発生量からおよそ20%を輸入しているトルコの鉄鋼業界にも影響が出ます。この問題に対して、先般バルセロナで開催されたBIRの年次総会では、欧州最大の鉄鋼メーカーであるアルセロールミッタルの代表が「スクラップ輸出はヨーロッパで適切に管理されるべきである」としてBIRの代表と真っ向から対立していました。BIRは「スクラップ輸出の自由を犠牲にして脱炭素目標を達成すべきでない」という立場です。産業での雇用数が鉄鋼業の方が多い事や、スクラップを域外輸出する場合の炭素排出の問題もあり、欧州議会の環境委員会や鉄鋼・製錬メーカーのロビーは強く、遠くない将来にスクラップが「廃棄物」と欧州で定義される可能性が高まっています。欧州廃棄物輸送規制は、11月までに最終提案が欧州議会で投票にかけられる事が予定されています。
▶ https://bit.ly/3PV5Qkj
▶ https://bit.ly/3z8uV5y
欧州委員会より計画案の発表があったRe Power EUのソーラーパネルの設置義務について、フィンランドが反対の意向を示しています。欧州委員会の計画案では、2025年までに太陽光発電容量を2倍にして、2030年までには600GWの能力を設置、新規の公共・商業ビルと住宅ビルにソーラーパネルを設置する法的義務を段階的に導入する、としています。これに対しフィンランドのエネルギー産業連盟の最高顧問が「エネルギー効率の向上は絶対だが、強制的な義務にはすべきでない。大規模な投資も中国への依存度を高める」と指摘し反対を表明しています。フィンランド商務連盟の政策アドバイザーも「ソーラーパネルを設置する義務は、再生可能エネルギー間の競争を歪め、ひいては消費者物価を上昇させる」として反対しています。様々な政治的圧力があり急速なグリーンエナジー化による「悪い情報」があまり報道されませんが、実は様々な面でネガティブな結果となっているものも多く、義務化という事に対しては抵抗もあります。
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EUによるロシア制裁の第6パッケージの影響について、幾つか触れられているものがあります。一部では、恐らく最も効果がある可能性があるものが、6か月後に効力を発揮する(計画の)ロシアから欧州以外の他国に海上輸送される石油の保険適用(海運保険)を禁止する事です。保険の95%は欧州内、殆どがロンドンの保険会社を通じて行われている、という事です。保険引き受け禁止により欧州以外の他国に輸出する石油を海運する場合に大きな問題が生じる事になり、グローバルな石油供給(量)にも多大な影響が生じると見られています。S&Pのアナリストは、石油価格が非常に不安定で上振れし易くなる、と警告しています。またIEAのトップも夏には欧州でエネルギー危機が深刻化する事を懸念しています。現在のエネルギー危機は1970年代の石油ショックよりも「はるかに大きく長期化する」と警告しています。ドミノ式にアジアだけでなく途上国を中心に様々な問題が発生しそうです。既に欧州では自動車販売にかなりの影響が出始めています。
▶ https://cnb.cx/3PPfVPP
▶ https://bit.ly/38EaKBG
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中国景気に関してCNBCが中国の債務問題に焦点を当てて報じ、そのニュースが各方面で拡散されています。
中国では今年最初の4か月間で不動産開発への投資が前年比2.7%減少しています。また政府の資金不足(収支ギャップ)が6兆元(1兆ドル:118兆円)まで膨らんでおり、今後政府債務が増加する予測が出ています。特にインフラ投資への圧力が掛かる可能性が指摘されています。4月下旬に中国政府がインフラ開発の全国的な推進を呼びかけましたが、プロジェクトの規模や時間枠が明確になっていないままです。地方自治体の支出は増加し収入は減少しており、財政圧力が増す中で土地の売り上げも大幅に減少しています。中央政府は財政予算を修正し地方政府を援助する為に債券発行を増す可能性がある、と分析しています。景気にも影響が出る可能性があります。
▶ https://cnb.cx/3t3Zw0f
Recycling Todayがバルセロナで開催されたBIRでの廃プラスチックのサプライチェーン問題について報じています。リサイクルプラスチックの材料市場は、2020年から2025年にかけて約30%成長し456億ドル規模の市場になると予測されています。リサイクル業界にとっては良いニュースですが、(政府や民間企業による)必要なインフラ投資が行われるまで、リサイクル材料の不足は年間最低600万トンに上る、と報告されています。英国では既にプラスチックパッケージ税が導入されており、欧州でも各国が国内法に落とし込む見込みです。既に世界的な大手飲料・家庭用品メーカーはリサイクル材の含有率や利用量を提示しており需要は高まる一方となっています。
▶ https://bit.ly/3anX3ak
木材製品のリサーチを行うLespromが、日本が4月に輸入した木質ペレットの価格が4.6%上昇している事を報告しています。輸入量は、前年同月比32.8%増の33万4000トンで輸入額は38.9%増の6,290万ドルでした。木質ペレットの平均価格は前年比4.6%上昇して1トン当たり188.5ドルです。ロシア産が欧州向けに止まり、世界的なフローに若干の変更が現れはじめているようです。木質輸入ペレットについては日本でも既にカーボンニュートラルへの疑問が一般紙で取り上げられるようになりました。材料不足は世界的に顕著になりつつあり、今後価格が下落しにくい状況となりそうです。欧州ではロシアからのチップや木材供給が減り、故紙の需要と価格が高止まりしています。
▶ https://bit.ly/3N9BLff
3月に行われた国連環境会議で国際的なプラスチック廃棄物の条約策定に向け合意した事を受けて、世界的にプラスチックリサイクルの機運が高まっています。同条約の基本指針は、消費者だけでなくメーカーや流通業者まで含む包括的なものになるという事で、プラスチックリサイクルの技術、特にリサイクルが困難な廃プラスチックのケミカルリサイクルに向けての投資が増えつつあります。条約の内容は2024年までに決まり、25年には批准が開始される予定です。日本の三菱ケミカルや米国のダウ・ケミカルが技術使用のライセンスを購入した英国のMura Technology社が、米国の科学技術エンジニアリング企業であるKBR社から1億ドルの出資を受けた事を発表しています。プラスチック廃棄物とリサイクルに関しては規制により大きく影響を受ける為、欧米では規制を出し取りした投資が既に活発化しています。
▶ https://bit.ly/3PRdUTr
CNNの欧州版(ロンドン)や英テレグラフ紙が、現在加熱しているESG投資も将来は不確実であるという懸念を投資家が抱き始めている、と伝えています。投資機関によるESG投資の急増は、実際に(ESGの)目標達成に役立ったのか?それとも、銀行や投資マネージャーが「古い商品を再パッケージ化し「グリーン」ラベルを付けてより望ましいものに見えるようにした」小手先の早業だったのか?と分析をしています。これは、今、グリーンウォッシングに対する当局の取り締まりの強化が始まった事に端を発しています。最近、米国証券取引委員会がBNYメロンの投資運用部門にESGに関する「虚偽表示と不作為」を告発しています。BNYメロンは150万ドルの罰金を支払うことに同意しています。ただし、150万ドル程度の低い罰金を払っても、虚偽性を認めておらず、罰金を払う以上に宣伝効果があるとBNYメロンは考えています。今週はドイツの検察庁が内部告発者による「グリーンウォッシング」の申し立てを受けて、資産運用会社のDWSと過半数を所有者しているドイツ銀行の本部を捜査しました。現在、欧米ではグリーンウォッシングが横行していますが、規制が曖昧で統一した基準がありません。米大手投資銀行のトップもESGの現在の分類はしばしば役に立たないことを認めています。投資というものは「新しいもの(新しい社会変革なら相当な量)」や「動き(例え相場の下落でも)」が無いと利益には繋がらない為、新たな概念であるESGは投資家が熱狂するのは当然です。そこに、新たにグリーンウォッシング規制の強化が持ち上がっている事が1つの大きな(投資家の)懸念事項として浮上しています。
▶ https://cnn.it/3PTHvLL
▶ https://yhoo.it/3MeUnsO
米国では「プロレス」となっているイーロン・マスク対ビル・ゲイツ、あるいは別の対立ではプロレス型の民主党対共和党の気候変動対決です。保守系のメディアであるニューヨークポストがイーロン・マスク対ビル・ゲイツの最近の加熱している対立を報じています。マスク氏が「(ゲイツ氏が)地球温暖化を支援すると主張しながら、(温暖化防止に貢献するEVメーカーの)テスラ株に対して20億ドルのショート・ポジションを持つのはゲイツ氏への信頼(関係)が揺らぐ」、とツイートしたものです。マスク氏のツイッター買収発表とほぼ同時に(テスラには人種差別があるという理由で)NY証券取引所のESG ETFからテスラ株が外され、マスク氏が気候変動対策に消極的な共和党に投票すると発表した後、「イーロン・マスクがTwitterでフリースピーチ(表現の自由)を復活させた場合、 Twitterへの広告ボイコットを推進する公開書簡」を世界の26のNGOが共同で署名し発表しています。その組織のうち11団体にゲイツ財団から数億ドルが寄付された、というものです。Foundation for Freedom Online(FFO)が、ビル&メリンダ・ゲイツ財団から同書簡署名者への数億ドルの寄付を追跡するため、公的書類を分析しています。Twitterは先日、マスク氏が買収前に気候変動に関するフェイクニュース(気候変動に反する意見)を取り締まる内部コードを発表しています。これは、他のソーシャルメディアでも同様です。気候変動対策では「巨額なマネー」と「票」が動きますので、こういった場外乱闘は今後も起きる可能性があり、億万長者同士の「プロレス」として楽しめそうです。
▶ https://bit.ly/3t65u0D
▶ https://bit.ly/3m5sf0y