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世界の環境関連ニュース(2022年4月第2週)

米国の大手鉄鋼メーカーの1社である「Nucor社」が年間生産能力43万トンの鉄筋用ミニミルを建設する事を発表しています。場所はノースカロライナ州レキシントンで、投資は3億5000万ドルを予定しています。Nucor社の棒鋼の生産能力は年間約956万トンです。棒鋼の材料の97%はスクラップ由来のものですが、新工場はほぼ100%をスクラップ由来の原料でまかなう、としています。北米の将来のスクラップ需要がさらに増加する要因となります。
https://www.nucor.com/news-release/#item=19021

米国で「Recycling Infrastructure and Accessibility Act」(リサイクル・インフラ及びアクセシビリティ法)と「Recycling and Composting Accountability Act」(リサイクルおよび堆肥化に関する責任法)が上院で可決されています。リサイクル、及び堆肥化に関する責任法)は、米国環境保護庁(EPA)が全国のリサイクル、及び堆肥化率に関するデータを収集して公開することを義務付けるものです。リサイクル・インフラ及びアクセシビリティ法は、米国環境保護庁(EPA)が試験的なリサイクルプログラムを作成する為のものです。リサイクル用のハブ・アンド・スポークモデルを利用した収集機構を開発し、廃棄物収集とリサイクル施設へのアクセスが行き届いていない地域に対し、リサイクル施設へのアクセスを改善する為に資金を提供します。
https://www.epw.senate.gov/public/index.cfm/2022/4/carper-capito-boozman-applaud-epw-passage-of-recycling-and-composting-legislation

バイオベース、生分解性、堆肥化可能なプラスチックに関する次のEU政策の枠組みが近い将来完成する予定です。2022年1月18日から3月15日まで、欧州委員会はWeb上でパブリックコンサルテーションを募集しました。これは、政策のフレームワークを準備するための情報収集として行われました。新しい政策のフレームワークは2022年の第2四半期に採択される予定で進められています。この政策(法律)は、バイオプラスチック業界にとって重要なものとなります。機械的なリサイクルはリサイクル材の品質面で限界があり、ケミカルリサイクルは廃棄物の大量収集が必要な事、大量のエネルギーを使う事、大量の廃棄物中に混入している有害物質の処理の3点で問題があり、バイオベース/生分解可能なプラスチックはサーキュラ―エコノミーでの利用分野が期待されています。ただし、コスト高とプラスチックとしての性能で限界があり、当初は一定の範囲内での利用に留まる見込みです。
https://bit.ly/3umYNIp

欧州では10日にフランスの大統領選挙があります。マクロン現大統領は有利と言われていますが、直前になって極右政治家のルペンが猛追しており勝敗は決選投票になる可能性が高いと言われています。これも、継続するインフレにより、現政権への不満が原因と言われています。米国では、大統領の次男のハンター・バイデンと弟のジェームズ・バイデンがロシア、ウクライナ、中国の企業から多額の資金を得ていた件で、更に問題が大きくなり始めています。押収されたLaptopからのメール情報が次々に出され、右系のメディアと共和党は大騒ぎで、左系のメディアでも淡々とですが継続して取り上げられています。欧州では脱炭素の路線は変わらず環境規制を緩和し補助金を増額してクリーンエネルギーへの急速な転換を図る方針ですが、米国では中間選挙共和党が勝つとグリーン化への追加法案が通らなくなる可能性が高いと予測されています。
https://www.dailymail.co.uk/news/article-10693351/Hunter-Bidens-associates-called-dad-Joe-big-guy-emails.html
https://www.wsws.org/en/articles/2022/04/06/hunt-a06.html

ドイツの大手自動車メーカーの「BMW」が2次原料を利用し100%再生可能エネルギーで製造されたグリーンアルミ二ウムを同社のホイールに採用していく方針を発表しています。2024年以降にはアルミ二ウム鋳造ホイールの生産に100%再生可能エネルギーを利用します。また、先行して英国オックスフォードで生産されているMINIブランドの車種には70%の再生アルミニウムを使用します。BMWはこの取組により、年間最大500,000トンのCO2の削減が可能になる、としています。BMW グループは、年間約1,000万個の軽合金ホイールを調達し、95%は鋳造アルミニウムで作られています。
https://bit.ly/3rdlz3p

銅の供給クランチ(深刻な不足による危機)が投機市場を活発化する予測が出ています。3月28-30日まで世界銅会議(World Copper Conference)が開催され、今後10年で銅の供給不足が年間600万トンに達するというプレゼンが出され、この不足分を埋める為には、1,000億ドル以上の投資が必要との見解が出されています。この情報は欧米の色々なメディアで取り上げられていました。需要は2030年迄に年間約2550万トンに達すると予想されています。しかし、供給予測は2021年比で12%減少する可能性が指摘されています。品位の高い新規銅鉱床へのアクセスコストの問題や低品位の鉱床に掛かるコスト増もあり、銅価格の上昇圧力が続いています。特に、再生可能エネルギー、建設、エネルギー、運輸業界、そして軍事需要が銅の世界的な需要を牽引しています。
https://bit.ly/3rfjsw0
https://ab.co/3JtDp8W

HSNWの海運ニュースからですが、欧州共同船主協会(ECSA)のフィリポス・フィリス会長が海運業界の脱炭素化に関する燃料代の上昇に懸念を示しています。欧州の海運輸送業界は2023年1月1日から段階的に欧州排出権取引システム(EU ETS)の対象となります。脱炭素の為にはバイオベースや電気分解による代替燃料が必要ですが、価格が現在の燃料の4倍になる為、最も懸念される事項である事を述べています。現状では、まだ解決策がなく、今後普遍的に採用される解決策となる事案もまだ無い状況の為、天然資源との組み合わせが必要になるだろう、との見解を伝えています。
https://www.hellenicshippingnews.com/no-universal-solution-for-shipping-industry-decarbonisation/

先月末にドバイで開催されたグローバル政府サミット以降、「New World Order」について様々な見解が報道されています。「新しい世界秩序」は、今後の時代を変える(であろう)政治的分裂によって急速にもたらされています。特に、ロシア+中国と西側先進国の間にあります。機関投資家への資産配分に関するアドバイザーであるラッセル・ネイピア氏がトロントの機関紙に投稿した内容が投資と今後の政治リスクについて端的に解説しているので、お時間のある方は一読してみてください。ちなみに、日本政府が掲げている「新しい資本主義」とは世界経済フォーラム(のトップであるシュワブ氏が掲げてきた「ステークホルダー資本主義」を日本語に置き換えたもので、それが突然「終わった」とシュワブ氏自身がグローバル政府サミットでプレゼンしたので、もし、これに固執すれば周回遅れになるかもしれません。
https://bit.ly/3vaogUB

欧州でもインフレ上昇が問題となっていますが、米国でも3月の消費者物価が1982年以来の上昇で年率8.5%となっています。2月も7.9%で主にエネルギーと食品の価格高騰に加えて、サプライチェーンの問題による物価上昇も続いています。景気減速懸念も出始めています。米国の一部マスコミではカーター時代の再来と言われ始めています(当時も中東戦争でエネルギーコスト急騰)。
https://bit.ly/3E9qeJg

欧州は、エネルギー価格の暴騰と戦争によるエネルギー自立問題から再生可能エネルギーへの急速なシフトを目指しています。しかし、この動きが原材料価格の上昇を招いています。その為、プロジェクト予算を組むに当り4-5年後の実際の鋼材購入価格の予測ができない状況になっています。これはアルミニウム、銅、ニッケル、コバルト、リチウム、希土類などの資源に対する需要が急激に高まっている為です。アルミと鉄鋼に関しては、ロシアからの調達が今後も制限される見込みとなっており、サプライチェーンの問題にも直面しています。
https://bit.ly/3E3drrG

サステナビリティを企業戦略の中心に置いて脱炭素やサーキュラエコノミーで業界を牽引してきた英国のユニリーバ社が、今年1月の大量リストラと株価の伸び悩みの中でESGの維持(期間)について一部の投資家と議論がされています。コモディティや株価情報を扱うSeekin Alphaでは、以下のように分析しています。
ユニリーバの収益は最近の業界平均を下回っています。同社の総資産利益率は8.2%で、業界平均の11.2%、また資本利益率は16.8%であり、業界平均の20.9%を下回っています。ユニリーバは世界で最も有名なブランドをいくつか所有していますが、収益成長は停滞し経営陣は会社を持続可能な成長の道に戻す明確な計画を持っていません。同社は10年以上にわたって実質的に収益を伸ばしておらず、自社株買いとコスト削減により、過去10年間で収益を伸ばすことができましたが、その収益の伸びはごくわずかです。しかし、ESGの路線は維持する事を明確に示しています。その為、一部の投資家からはESG戦略が収益に結び付く時間軸についての議論が起きています。
同社はCEOがポール・ポールマンの時代からESGやサステナブルを企業戦略として掲げ、業界だけでなく欧州の政策にも影響を与えてきましたが、それが長期的な実質収益に結びついてないという結果です。ESG戦略を宣伝(ブランドイメージ向上)だけに利用するという事では生活用品産業でも収益貢献が難しいという端的な例だと思われます。
https://bit.ly/3KBuROy
https://bit.ly/3LV78ZS

McKinsey & Company がリチウム供給に関する最新の分析レポートを出しています。既に供給不足が懸念される中、最新の「直接リチウム抽出技術(DLE:direct lithium extraction)/(DLP:direct lithium to product)」への投資見込みを含めた分析を行っています。短期的な供給不足のリスクに対してはその後の工程でコストが掛かるものの、低品位のスポジュメン精鉱を供給する事も挙げられています。リサイクルからのリチウムの利用は2030年には6%に留まる見込みです。特にDLE技術の進展を精査して年内にまたMcKinsey & Companyがアップデート版を出すようです。
https://mck.co/3E7hjru

ロシアの中央銀行が発表した2022 Q1の経常黒字は582億ドル(前年同期225億ドル)、純資本流出は642億ドル(前年同期175億ドル)、3月の対中貿易は、2月から減速したが、前年比では12%以上の増加した、という事です 。ドイツのニュースでは、ニッケル、パラジウム、クロムのロシア依存が高く、それらはEUが輸入を禁止にした石炭、木材、セメント等の製品リストには入っていません。ただし、ロシア産原材料購入への圧力が日増しに高まっており、今後あるかもしれない石油の禁止措置がこれらの金属に与える影響(ますます輸入しづらくなる)が大きい、としています。エアバスのCEOはEU政府に対しロシアからのチタン輸入を制限しないよう、発表しています。ロシアへの打撃は軽微だがEU側の打撃が大きい為です。地政学的な判断によっては、突然相場が動く可能性があります。
https://reut.rs/3xlhHS0
https://reut.rs/3rmhqdU
https://bit.ly/3vgnw0d

英国で4月1日よりプラスチック包装税が実施され、リサイクル材料を30%以上含まないプラスチック包装は課税対象になっています。現在、この「税金の抜け穴」として国会議員グループに指摘されているのがプラスチックのケミカルリサイクルによって、一旦石油化学原料(油化)に戻し、それらの原料で作られたプラスチックを30%含むものです。これらは課税対象から外れています。英国ではケミカルリサイクルにより還元された材料は、リサイクル材料と見なされています。指摘のポイントは、ケミカルリサイクルによって生み出される再生原料は、基本的に油化した「燃料」と同じものである為です。ただし、燃料として使用はしない為、これらが燃焼の為のモノではない事から英国では課税対象から外れています。この問題は、油化時にエネルギーを大量に使うケミカルリサイクルについての議論が続く可能性があります。
https://bit.ly/3M0B6M1

欧州最大の鉄鋼会社であるアルセロールミッタル(ベルギー本社)がオーストリアの「Voestalpine」が所有する米国テキサス州のHBI生産工場の80%の株式を取得した事を発表しています。同工場は2016年10月に開設、世界最大級のHBI生産工場で年間生産能力は200万トンです。アルセロールミッタルの目論見は、電炉でHBIを使い高品質の鉄鋼製品を製造する事が含まれています。同HBI工場は米国のノースカロライナ州にある「Midrex Technologies」の技術を使用しており、現在、天然ガスを使用して、鉄鉱石ペレットを鉄含有量91%以上のHBIに直接還元しています。アルセロールミッタルは、将来は天然ガスから100%水素に移行する可能性を示唆しています。
https://bit.ly/3EfToGk

銅の生産慣行と(国連の)持続可能な開発目標を実証・保証するフレームワークである「The Copper Mark(銅マーク)」の枠組みに、新たに国際モリブデン協会(IMOA)、国際亜鉛協会(IZA)、ニッケル研究所(NI)が加わる事が検討されています。このコラボレーションによって、銅マークの枠組みである持続可能で責任ある生産と調達の慣行、及びリスク準備評価(RRA)をモリブデン、ニッケル、亜鉛のバリューチェーンに適用する事が狙いです。銅マークの保証の枠組みは、鉱物と金属の調達に関連する32の異なる環境、社会、ガバナンスの「問題領域」で構成される一連の責任ある生産基準に照らして銅生産者を評価します。TCFDとESGの流れが世界的に拡大する中で、サプライチェーンにおけるデータの取得は重要性を増してきており、今後もこのような保証枠組みの拡大が様々な分野で起こる可能性があります。
https://bit.ly/3rrijlk

米国の大手スーパーマーケットチェーンのウォルマートストアーズが持続可能な包装を提供する会社を繋ぐオンラインツール(ウェブサイト)を開設しています。同社は、2025年までに使用する包装材を100%リサイクル可能、再利用可能、又は堆肥化可能なものにするという目標を掲げています。同社のサステナビリティ―・ハブのウェブ内にある持続可能な包装(Sustaibnable Packaging)には、「Walmart Recycling Playbook」のリンクがあり、リサイクル可能なパッケージングの目標を設定する企業向けの詳細なリソースが規定されています。2年後にはプラスチック廃棄物に関する国際条約が提起される予定で、今後大手を中心に順次対応していくことが予想されます。
https://bit.ly/36e4jE1
https://www.walmartsustainabilityhub.com/waste/sustainable-packaging

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