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世界の環境関連ニュース(2022年3月第3週)
米国でバッテリーリサイクル会社の買収がありました。インディアナ州の「RetrievTechnologies社」が、ミシガン州のバッテリーリサイクル業者である「Battery Solutions」を買収した事が報道されています。Battery Solutionsは広域なバッテリー回収網を持つ為、RetrievTechnologies社はEV化による廃棄バッテリーのリサイクル事業ポートフォリオ拡張を目指すと、としています。Retriev社は、既にオハイオ州、カリフォルニア州、ブリティッシュコロンビア州にバッテリーのリサイクル工場を持っています。米国では土地が広い事もあり、広域回収のスキームがポイントになっているようです。
▶ https://www.retrievtech.com/post/retriev-technologies-acquires-battery-solutions
市場調査会社Allied Market Researchが最新の金属リサイクルの市場予測を出しています。世界の金属リサイクル産業は2020年に2,170億ドルで、2030年までに3687.1億ドルに達し、2021年から2030年までの10年間は、年率5.2%で成長すると予測しています。伸びが予測されるのは自動車セクターとインフラを含む建築セクターとしています。アジア太平洋地域全体の金属リサイクル市場は、中国、日本、インド、韓国での成長により、上記10年での成長予測は年間平均成長率が7.4%に達する予測を出しています。
▶ https://www.prnewswire.co.uk/news-releases/metal-recycling-market-to-garner-368-71-bn-globally-by-2030-at-5-2-cagr-allied-market-research-826894058.html
ロシアのウクライナ侵略でロシア排除や調達ルートが変更になり、エネルギーやコモディティー供給に大きなショックが起きています。これは決済手段を停止した事も大きな要因となっています。欧米以外ではあまり報道されていないかもしれませんが、既に欧米の多数の金融機関がロシアからの撤退や一時業務停止をしている中、ドイツ銀行だけが批判の中でもロシアに留まり業務を継続する事を発表しています。表向きのロシアでの運用資金は大した事がありません。ドイツ銀行は様々なスキャンダルを過去に抱えており、現在制裁の対象となっているロシアの多数のエリートとは長年親密な関係がある事は何度も報道されています。昨年12月にはモスクワにロシア本社をオープンしています。同行は、リーマンショック前後は米国のサブプライムの不良債権のプール先としても有名で、その後中東での賄賂資金なども含め、毎年のようにスキャンダルで報道されています。2017年には、ロシア資金100億ドル以上のマネーロンダリングを告発され、米国と英国の金融庁から罰金を科されています。今回の件で、ドイツとロシアは、エネルギーと金融において近しい関係がある事が推測できるものがいくつか浮き彫りになっています。ドイツがウクライナに当初ヘルメット5000個しか供与しなかった理由は、こんなところにも垣間見えます・・・・。
▶ https://www.reuters.com/business/deutsche-bank-ceo-gets-20-pay-rise-2021-2022-03-11/
海運とコモディティーの専門サイトである「Hellening Shipping News Worldwide」が鉄鋼生産の供給と需要に関する最新の欧州の状況をまとめています。最も大きな影響を受けている要因となるのが、CIS諸国による鉄鋼関連のサプライチェーンがほぼ完全にダウンしている事、としています。2021年1-11月の11カ月間に欧州と英国が輸入した半鉄鋼製品(スラブ、ビレット、ブルーム等)の85%がロシア、ウクライナ、ベラルーシからのものでした。EU各国はCIS諸国から2021年1月-11月に計580万トンのスラブを輸入し、50%以上はイタリアとベルギー向けでした。イタリアでは、現在必要な原料の供給が不足している為、一部の工場が生産停止を発表しています。同時期に輸入したビレットは100万トン以上で、ブルガリアとイタリアがそれぞれ559,000トンと374,000トン輸入しています。両国の下工程生産に大きな影響を与えているようです。鉄鋼の完成品も同様に供給の悪化が予測されています。2021年に欧州が輸入した鉄鋼製品のおよそ25%が、CIS諸国からのものです。これ以外にもエネルギー価格の上昇や戦争による様々な不確実性から、欧州内の4月の鉄鋼取引価格が急上昇している、と報告しています。
▶ https://www.hellenicshippingnews.com/war-returns-to-europe-what-does-it-mean-for-steel-buyers/
Financial Timesが今後の世界経済見通しでかなり悲観的な内容の記事を掲載しています。既に欧州ではロジスティックスとサプライチェーンに影響が出ており、それ以外にも、中国の青山集団の前代未聞のニッケルショック等の予想しないリスクについて備えるよう促しています。ニッケルショックの件で欧州鉄鋼協会(Eurofer)がLEMと金融行動監視機構(FCA)に対して再発防止策を要求していますが、過去にも同様な事例があった事から来ているようです。
▶ https://www.ft.com/content/38f41ebc-f64d-467b-b5ef-22eaefaebb7e
同じく欧州鉄鋼協会が欧州政府に対してポジションペーパーを行っています。エネルギー価格の高騰からエネルギー集約産業(鉄鋼等)が深刻な被害を被る可能性を伝え、手頃な価格でエネルギーが入手できるよう政策当事者に訴えています。昨年5月からノルウェーとポーランドを結ぶガスパイプライン(Baltic Pipe)は環境問題から建設が中断されていましたが、今回のウクライナ問題後に、ひそかに建設がスタートしている、と伝えられています。IEAの備蓄解放もあり原油価格はやや落ち着いていますが、サウジアラビアと関係の深い英国が首相を送って直接交渉する予定等、引続き欧州ではエネルギーとサプライチェーンの問題で混乱が続いています。現実の世界での原油生産量は日産60万バレル程度しか落ちておらず、ロシア産排除の影響が大きいようです。現在ロシア産は大ディスカウントで販売しているようですが・・・買い手が限定されているという事です。
▶ https://www.eurofer.eu/publications/position-papers/joint-statement-by-industrial-energy-consumers-on-energy-security-and-affordability/
先週末から欧州ではロシアのスーパーリッチ(富豪)が一斉にUAEに資産を逃避させている、と伝えています。UAEの中央銀行は中国同様に西側の制裁に参加していません。ビットコインで数兆円というものもあり、ドバイの不動産を買い漁っているようです。この戦争が起きる前の1-2月にロシア発の(富豪による)プライベートジェットの飛行発進が通常の10倍近くあったようで、ロシア富豪のDeviousな所が表れています。戦争を見越して先に資産を逃避させており、戦争後に急いで動かしているようです。
▶ https://learningenglish.voanews.com/a/russia-s-rich-move-money-to-dubai/6479567.html
ドイツの大手自動車メーカーであるメルセデスが自社(子会社:LICULAR GmbH)でのバッテリーリサイクル工場をドイツで開始する事を正式に発表し、将来は中国と米国に拡張する事が含まれています。工場はドイツ・クッペンハイムに設立し、プロジェクト開始時期を2023年としています。同工場ではリサイクル率96%の湿式製錬プロセスを使用してテスト予定です。技術パートナーはプリモビウス(Primobius社)です。中国と米国でのプロジェクトは別のパートナーになる可能性を示しています。
▶ https://group.mercedes-benz.com/company/news/recycling-factory-kuppenheim.html
リチウムイオン電池メーカーとして欧州単独資本最大手の「ノースボルト社」が、第三番目の欧州ギガ工場をドイツ北部のハイデ市(Heide)に設立する事を発表しています。工場の最大生産能力は60GWh、EV車台数に換算して100万台分、としています。商業運転の開始は2025年です。 ハイデ市はデンマークとの国境に近く、スウェーデンからは陸路での交通が可能です。ノースボルトは昨年12月に主力工場であるスウェーデンでパイロット生産を開始しています。ノースボルトは低酸素バッテリー製造を会社のアイデンティティーにしており、フォルクスワーゲン社が大株主の1社です。自社でリサイクルにも取り組む会社として宣伝しています。
▶ https://northvolt.com/articles/northvolt-drei/
ガソリン価格が過去最高の平均1ガロン(3.8L)$4.4ドルを超えインフレが加速する米国で、気候変動に対し比較的消極的な共和党への支持が増加している事が、最近多く報じられています。経済対策については、最新のABC News / Ipsosの世論調査を実施し、NEWSWEEK紙が掲載しています。米国民の70%が現在のバイデン政権のインフレと石油政策を承認しておらず、更にパンデミック後の景気回復への対応についても58%が政策を承認せず、この数字は史上最悪の結果、と伝えています。Fact Driven、 No Bias coverageで知られるNewsNationsは、過去7度の米国のリセッションの内、5回が原油価格上昇時期と重なる事を伝え始めています。特に米国は化石燃料をがぶ飲みする社会なので、米国で共和党が議会を秋に奪還すると、気候変動への取組スピードが変わる可能性が十分にあります。戦争が終わってもしばらくはロシアの資源が西側に以前のように入る事が無いので、この問題は少し尾を引くかもしれません。
▶ https://www.newsweek.com/biden-poll-inflation-economy-gas-prices-1687757
米国の景気後退の可能性については、上記のNewsNation以前に、欧州でFinacial Timesが(今年初めて)記載していました。流動性不安から投資ポートフォリオの修正行動が一部で起こっています。予測はあくまで「予想の範囲」ですが、アジアで考えられる以上に欧米でのインフレと景気減速は大きな問題となっています。インフレが実質賃金増以上で収束時期の見込みが立てられなく、物流+供給問題に加えてエネルギー価格の上昇で産業まで影響を受けている為です。
▶ https://www.ft.com/content/d8e60667-0379-4323-9b74-dbbf5a043e38
欧州時間の3月15日、欧州理事会は炭素国境調整メカニズム(CBAM)について正式に合意しました。対象産業はセメント、アルミニウム、肥料、電気エネルギー生産、鉄鋼です。ただし、この合意ではCBAMの段階的導入と欧州排出権取引制度における無償手当の段階的廃止がどのように行われていくのか、まだ明確になっていません。現在、上記の当該産業には無償手当が提供されており、今後その他の問題も含め、徐々に議論され明確になりそうです。
▶ https://bit.ly/3MPd489
Financial Timesがロシアがデフォルトした場合について記載しています。債権利払いには今後30日間の猶予期間がありますが、本日期限の2つの債権クーポンの利払いは履行されなかったようです。国の債務(債権)よりも民間の社債の総額が大きく、こちらの方が(国のデフォルトによる波及効果で)影響が大きいと、様々な欧米メディアで報道され始めています。また、クロスデフォルト(1債務のデフォルト⇒全債務デフォルト認定)を警戒する動きが出ているようです。
▶ https://www.ft.com/content/6cfb5fef-4b61-4432-a5de-4486c95f1d19
リチウムイオン電池のリサイクル機器を開発製造している「BHS-Sonthofen」のテストセンターが破砕試験の正式な承認を受けた事を報告しています。高いフッ化水素酸の処理施設を完備し、窒素充填された2種類のシュレッダーは、内部の圧力や温度が突然上昇した場合には制御システム機能し自動停止します。火災の際は、機械向けに放水設備が備わっています。テストセンターは昨年には計画が発表されていましたが、今回破砕機を含む検査に合格し、承認を得てテスト事業を開始できる事を伝えています。
▶ https://bit.ly/3MYNs8X
尚、同社ですが、バッテリーのリサイクルには関係ありませんが、今後、欧州でも活用が増える予定の「バイオガス」のフィリピンでのプロジェクトに破砕機を導入した事も伝えています。
▶ https://bit.ly/3wdEdeP
国際エネルギー機関(IEA)が来月から市場に「出回らない」ロシア産の石油と石油製品が日産300万バレル分に及ぶと警告を出しています。IEAは、2022年の第2四半期から第4四半期の世界の石油需要の予測を130万バレル/日分引き下げています。ロシアに対する制裁措置が「世界経済の成長を大幅に低下させると予想され」インフレに影響を与えることを示しています。協調して備蓄を放出していますが、今後も引き続きエネルギー価格高騰による欧米景気への影響がありそうです。
▶ https://www.ndtv.com/business/iea-says-3-million-bpd-of-russian-oil-products-could-be-shut-in-next-month-2826095
欧州自動車業界でリサイクルに関するカルテルの疑いがあり、欧州委員会と英国の当局が調査に乗り出す事を発表しています。具体的なカルテルの内容について詳細を言及していませんが、特に廃棄商用車をリサイクルする際に自動車メーカーと業界団体が関与する反競争的行為が行われたと疑っています。この件に対し、当局は非通知による抜き打ち検査を実施する、としています。調査は2022年12月まで続く可能性があります。
2017年、欧州政府は、当時廃鉛バッテリーの買取りに関する価格カルテルで罰金を科しています。2009年から2012年にかけて4つのリサイクル会社がカルテルに参加し、鉛蓄電池のスクラップの購入価格で密約をしました。会社は「Campine(ベルギー)」、「Eco-Bat Technologies(英国)」、「Johnson Controls(米国)」、及び「Recylex(フランス)」でした。罰金額は総額6800万ユーロでした(売上の10%程度になる事が多い)。
▶ https://www.fleetnews.co.uk/news/manufacturer-news/2022/03/16/carmakers-raided-across-europe-on-suspicion-of-breaking-cartel-rules