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世界の環境関連ニュース(2022年2月第2週)
欧州鉄鋼協会(EUROFER)の事務局長が2022年の欧州における鉄鋼需要の予測をウェブサイトに発表しています。2022年はサプライチェーンのボトルネックとエネルギー価格の高騰で、特に自動車部門の産業活動が抑制されるため、鉄鋼需要は2022年の半ばまでは需要が低下する、と予想しています。特に自動車からの需要減は(自動車と鉄鋼の両産業に)深刻な影響を与えると予測しています。
▶ https://bit.ly/3ur7Vw4
米国のコロラド州で衣料・ファッションのサーキュラーエコノミーを実践する新興企業の「ReCircled」についてGreenBiz誌でレポートしています。このビジネスモデルにファッション業界が提携し始めている事がポイントです。衣料・ファッションのサーキュラーエコノミーはリサイクルに焦点が置かれているのではなく、衣服の衣装デザインから設計段階にあらたなモデルを提供する事に焦点が置かれ、更に中古品の流通を活性化する事にあります。昨年後半から本格的に欧州の政策部門と業界が動き始めており、金属やプラスチックのサーキュラーエコノミーとはかなり違った動きになります。現在、衣料産業の製造はアジアが中心で、特にファスト・ファッションはアジアが中心の為、衣料・ファッションのサーキュラーエコノミーが制度的に発展すると影響が出る事が予想されます。こういったスタートアップ企業が多く出て来て資金が集まる事が欧米の特徴です。
▶ https://recircled.com/
昨年、詳細な指針が発表された改正欧州電池指令ですが、当初予定していた施行期日を6ヶ月早め2027年7月1日からにする事で欧州内にて調整されている事が報じられています。改正電池指令ではリサイクル材料の含有率やカーボンフットプリントの情報開示が含まれるため、EU域内での製造とリサイクルを加速させる必要があります。あとわずか5年しかなく、システムを確立するには、かなり早急な対応が必要になる可能性があります。この政策の背景の1つは電池と材料の中韓依存を減らし域内での産業を育成する目的があるようです。
▶ https://bit.ly/3sds06x
鉄鋼製品の脱炭素化に向けて投資が続いています。
ルクセンブルクの大手多国籍鉄鋼メーカーの「アセロールミッタル(ArcelorMittal)」が、フランス国内の二カ所で総額17億ユーロ(約2,300億円)を投資して電気炉(EAF)を設置、それに付随する直接還元鉄(DRI)の工場を設立する事を発表しています。フランスのダンケルク市に設立予定の工場は年間250万トンのDRI工場を併設し水素を使用して鉄鉱石を変換する予定です。稼働予定は2027年で、2030年迄にフランスにあるArcelorMittalの5つの高炉のうち3つをEAF+DRIに変換する予定と伝えています。
▶ https://bit.ly/3GBj1ky
幾つかの専門メディアで伝えられていますが、2月7日に発行される「New Climate Institute」と「Carbon Market Watch」の共同調査レポートによると、世界の主要企業25社が行っている気候変動に対するグリーン誓約活動の多くが「グリーンウォッシング」の疑いがある可能性が高いという事です。レポートの筆者は、「企業に気候変動対策の圧力が掛かるにつれて野心的な目標の主張が行われ、多くの場合、それらは実体を欠いており、消費者と規制当局の両方を誤解させる可能性がある。比較的うまくやっている企業でさえ誇張している」と伝えています。昨年から業界毎にこのような調査結果が出る事が多く、英国ではグリーンウォッシングに対する政府のガイドラインが発行され、違反には罰則が適用されるようになっています。
▶ https://bit.ly/34EtYEE
European Scientists によると、マイクロプラスチックは胎児の段階から確認されているという研究があるという事です。この問題の大きな要因が(化学)合成繊維であり、また、タイヤから排出されるもののようです。マイクロプラスチックの問題は徐々に脚光を浴びていますが、健康被害への研究は少ないようです。既に欧州では規制に関する動きが始まっており、2022年内に欧州評議会、及び欧州議会による精査が行われる事になっています。
▶ https://bit.ly/3rxY4mm
▶ https://echa.europa.eu/hot-topics/microplastics
元テスラの幹部が設立したEV用電池のリサイクル会社「Redwood Materials社」が欧州への進出を発表しています。ヨーロッパに少なくとも2工場を設立する計画で、投資額は明確にされていませんが、今後数年間で数十億ユーロ(数千億円)と伝えられています。場所は決まっておらず候補としてはスカンジナビア半島、イギリス、東ヨーロッパ、もしくはドイツです。既に米国でテスラのギガ工場に隣接する地区でのリサイクル工場の設立は計画が進んでいます。
▶ https://www.redwoodmaterials.com/press/redwood-materials-expands-into-europe
ドイツの鉄鋼メーカーSalzgitterが「ザルツギッターAG2030」戦略を発表しています。2030年までに、スコープ1&2のCO2排出量を50%以上削減(2018年比)、スクラップリサイクルを年間50%以上、300万トン以上に拡大する事が含まれます。最も注目されるのは、2033年までに水素、及び再生可能エネルギーをベースとしたDRI-EAFのグリーン製鋼プロセスに移行する事で、これは当初目標を12年前倒ししています。2025年には、直接還元プラントと電気炉での生産が本格的に開始され、2026年には年間100万トン以上のグリーンスチールを製造する事が計画されています。現在、欧州での水素ベースの鉄鋼プロジェクトは何れもパイロットベースです。2026年-2030年頃に予定されているETSとCBAM(欧州排出権取引制度の無償手当の廃止と国境炭素税の開始)に鉄鋼業が含まれる事から、幾つかのプロジェクトは商業規模での稼働を必要とします。ザルギッターは、2033年迄に3,000万トン以上の鉄鋼生産が何からの低炭素プロジェクトに関わる事が計画されているようです。
▶ https://bit.ly/34uSqIS
PETの代替え材料となる可能性が高い為、世界的に研究が進められているバイオプラスチックである「ポリエチレンフラネート(Polyethylene furanoate: PEF)」の原料となるフランジカルボン酸(FDCA)の量産工場設立がオランダの新興企業から発表されています。再生可能化学専門のテクノロジー企業であるオランダの「Avantium NV社」が、植物ベースのPEF主要原料であるフランジカルボン酸(FDCA)の生産のための「世界初」の工場を設立する事を発表しています。株主よりその承認を得た事がプレスリリースで伝えられています。工場の建設は2023年末までに完了し、プラントは2024年に完全に稼働する予定です。これにより、FDCAの対象となる植物ベースのリサイクル可能なプラスチックであるポリエチレンフラノエート(PEF)の商業的な立ち上げが可能になると報告しています。
▶ https://bit.ly/3GCmTSi
英国で今年4月より実施される「プラスチック包装税」は、その後欧州でも採用予定となっており、リサイクル材料の含有量が30%以上を必要として、要件を満たさない場合は英国では200ポンド/トン、欧州では800ユーロ/トン(予定)を生産者、販売業者、もしくは輸入業者が支払う事になります。現在問題となっているのは、30%リサイクル材料が含まれているという証明の正当性です。科学的にチェックする方法が今の所ありません。マンチェスター大学が、この問題に対しUV光を当てると蛍光反応を示す分子(ReCon 2)を開発した事を発表しています。リサイクル材料を製造する段階で微量に混ぜる(添加)する事が出来ます。ラボ段階では、HDPE、PP、PETでリサイクル材料の含有量を定量的に測定可能である事が実証されています。有量が10-100%まで測定できる、としています。
▶ https://www.uominnovationfactory.com/projects/recon2/
▶ https://smihub.ac.uk/news/recon2/
既に先週より多くの報道がなされていますが、欧州ではリチウム不足と価格の高騰懸念に加え、環境問題への懸念が伝えられ始めています。南アフリカでは、1トンのリチウムを生産する為に必要な水は220万リットルで、地元での水紛争が起きているという事です。また土壌汚染や一部大気への影響も懸念されています。その為、Libのサイクルは選択肢ではなく、バッテリーと自動車EVメーカーの双方に避けられない必要性の問題、と伝えられています。S&Pプラッツの先週のレポートでは、リチウムは2030年には200万トンの需要予測ですが、現在のプロジェクトが全て順調に進んだとしても22万トンの不足が起こる、としています。その為、その他の材料を使った電池の開発も進められています。
▶ https://bit.ly/3uwANDk
▶ https://www.spglobal.com/en/research-insights/articles/daily-update-february-2-2022
欧州で、新たなLibリサイクル工場建設予定のニュースがありました。
スウェーデンの廃棄物管理、及びリサイクル企業である「Stena Recycling」がスウェーデンの南部の港街であるHalmstad市に新たにLibのリサイクル工場を設立し、スウェーデンのエネルギー庁が約770万ドルを支援する事が発表されています。処理能力は年間約10,000トンで、EV用だけでなく、その他に使われるLibもリサイクルする予定です。また、バッテリーを収集する「バッテリーセンター」を欧州域内の各地に設立する予定です。この投資の目的は、2025年以降に徐々に施行される予定のEU指令に対応することを目的としている、と伝えています。
▶ https://bit.ly/3svPp32