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世界の環境関連ニュース(2021年9月第4週)

NY証券取引所に上場しているアルミ部品製造の大手「コンステリウム(Constellium SE:本社はフランス)」が幾つかのEVへのアルミ利用に関する発表をしています。電池パッケージだけでなく、車体構造部品にもリサイクル可能なアルミを利用します。EV化によりアルミが増えるだけでなく、構造部材や電池パッケージなど衝撃吸収を含む高機能アルミ材のリサイクルには、リサイクル工程での高度な選別技術も必要になります。電池のように自動車メーカーそのものが廃棄材料を取り扱う流れになる前に、技術的な蓄積とノウハウは抑えておきたいポイントになると思われます。
https://bit.ly/3EOOikn
https://bit.ly/3u8DLLQ

NMC(ニッケルマンガンコバルト)やNCA(ニッケルコバルトアルミニウム)電池に比べて、エネルギー密度の点で劣るLFP(リン酸鉄リチウム(LiFePO4カソード)電池を、欧米の自動車メーカーが採用する動きが今週多く報道されています。これは主に、コバルトが2025年頃には供給不足が起こるという懸念からで、安価なEVモデルにLFPバッテリーを採用する事を、OEMが検討に入っているという事です。既にGM、BY、Teslaは採用車種を発表していますが、フォード、VWグループ、ステランティスもLFP採用を計画しています。LG Energy SolutionsもLFPバッテリーの生産計画を発表しています。ただし、LFPバッテリーの関連特許は中国の研究機関が保有するものが多く、この点で他国のメーカーが積極的に中国以外で生産に乗り出すかは不透明です。
https://www.eetasia.com/the-surging-lfp-battery/
https://bit.ly/3kDUJyG

今後のリサイクル工程でどこまで利用可能か不明ですが、オランダの磁気選別システム開発の専門メーカー「Goudsmit Magnetics」が、リチウム電池に用いられるリチウムイオン粉末(原料)から金属を除去する自動クリーニング機構付きの回転式磁気分離器を発表しています。同社のHPでは、カソード粉末の純度を上げる為に粉末内の鉄含有金属等の汚染物質を取り除くのが目的、としています。セルフクリーニング機構付きで、リチウム粉体から30ミクロンの極小金属粒子を磁気分離する、としています。マグネットバー(Magnetic Bar)を使うタイプで、磁束は12000ガウス、鉄粒子以外にも酸化鉄やステンレスなどの常磁性粒子を捕捉できる、としています。基本的には電池製造現場での利用や、その前段階の材料の純度向上を目的として作られています。
https://bit.ly/3lYLusg
https://www.youtube.com/watch?v=CDvdsyao63U

英国の野党である労働党が、英国内の製鋼業がグリーンスチールを推進する為に30億ポンド(約4,500億円)を支出する野党キャビネットの案を発表しています。欧米の政府は雇用創出の為に鉄鋼のグリーン化を急速に進めており、中国、インド等の新興国に移転した鉄鋼生産をグリーン化で巻き戻す事に大きな労力を割いています。同時に、需要家である自動車メーカーも動きを活発化しつつあります。ベンツが出資するスウェーデンのH2 Green Steelやボルボにグリーンスチールをサンプル提供しはじめたHybrit社(いずれも水素直接還元(H-DR) の動きを自動車専門誌が伝えています。自動車専門誌までもがグリーンスチールの問題を取り上げるという事が、この問題の重要な方向性を示しています。
https://bit.ly/2Zr0x6q
https://bit.ly/3kMIaRT

生活用品の世界的大手「P&G」が持続可能性戦略を発表しています。GHGを2040年までに全事業分野でネットゼロにする事を始め、その前段階の2030年までに事業全体の排出量を50%削減し、サプライチェーン全体の排出量を40%削減する事をコミットしています。最近ペプシコが同じように2040年までにネットゼロを発表しています。P&Gはプラスチックについて2016年にエレンマッカーサー財団とともに「HolyGrailイニシアチブ」を設立しています。このイニシアチブは、現在2.0にバージョンアップしており[電子透かし]を使用して廃棄物の分別とリサイクルの効率を改善する事を目指しています。電子透かしの実証実験は今月初めにコペンハーゲン市で開始されています。P&Gは、プラスチック廃棄物を無くす為の同盟(Alliance to End Plastic Waste. In Europe)の一員で、この同盟が上記イニシアチブに参画しています。
https://bit.ly/3AZUCU5

木質セルロースを材料にしたプラスチック包装の代替品として初めて酸素バリア性と耐油性を有する製品が発表されています。スウェーデンの「Ahlstrom-Munksjö社」が開発した「PureBarrier™」という製品で、現在はリサイクルができないプラスチック系の酸素バリア包装の代替品になります。食品等の酸化しやすい製品の場合、今まで生分解できる木質の成分であるセルロースから多孔子構造のガスバリア性の高い材料を製造する事は困難とされてきました。プラスチックパッケージ税や製造者責任の拡大で、製品販売後に廃棄物の回収やリサイクル管理でコストを掛けるよりも、マーケティング的にも多少コストが掛かってもリサイクル可能なモノの方が良い為、プラスチック代替材料は欧州のプラスチック指令(使い捨てプラスチック禁止指令)以来、急速に開発が進んでいます。
https://bit.ly/39FZnGe

複数の欧米メディアで報じられていますが、米国の「フォードモーター」が電気自動車にシフトする為に、韓国の「SKイノベーション」と共に新たに3つの新しいバッテリー工場とピックアップトラック工場に投資し、米国での電気自動車の生産能力を増強する計画を発表しています。既にフォードは2030年までに300億ドル以上を電動化に投資する事を発表していますが、今回のSKイノベーションとの投資額は114億ドル(1兆2500億円)に上ります。SKイノベーションは、この計画を含めると米国で年間約150GWhのバッテリー生産容量を確保する予定です。既に目標としている2025年までの世界生産能力200GWhはこの計画により上回る、としています。自動車大国かつガソリン大国の米国でこの投資が成功するのか、日系企業への影響も大きくなると思います。
https://ford.to/3oe9xpP

スウェーデンの「ボルボ」と同社を所有する中国の「吉利」が持つ新興EVメーカーの「Polster(ポルスター:スウェーデン)」が、来年上場する計画である事を発表しています。新興企業の上場ではよく取られる手法の1つである特別目的買収会社(SPAC)の買収(計画的)を通じての上場です。この特別目的買収会社(名前はゴレスグッゲンハイム)は、米国の投資会社であるゴレスグループとグッゲンハイムキャピタルによって設立されるものです。同社のバッテリー調達先の1つは同じスウェーデンのノースボルトです。合併による企業価値は約200億ドルと試算しています。ちなみに、EVメーカーとして世界最大の時価総額を持つテスラは、7500億ドル(約82兆円)で、トヨタの約32兆円の2.5倍以上です。販売台数はトヨタの7~8%ですが、これがパラダイムチェンジでお金の向かう先が変わる怖い所です。
https://bit.ly/3kJTH4m

鉄鋼大手の「Arcelor Mittal」が脱炭素化の為にベルギーの工場に約13億ドル(約1500億円)を投資する事を発表しています。その内の2億8000万ユーロは、政府支援に基づく欧州投資銀行(EIB)によるものです。250万トンの直接還元鉄(DRI)工場と2基の電気アーク炉(EAF)の建設が含まれています。年間390万メートルトンのCO2排出量を削減する予定です。DRIプラントは、石炭の代わりに天然ガスを使用し、一部は水素利用を検討する、としています。この両プラントが運用後に、現在の高炉の1つを廃止する予定です。
https://bit.ly/3ASroGD

先週、EUと米国は2020年比で2030年までにメタン排出量を30%削減するというコミットメントを発表しました。石油とガス産業から排出されるメタンを標的にしており、達成の為に予算を割り当てています。メタンの温室効果はCO2の84倍と言われており、EUの総GHG排出量の11%を占めています。廃棄物の埋立地やその過程から発生するものも多く、リサイクル率の向上や埋立量の低減の為に、廃棄物のエネルギー利用の促進が図られるものと予測されています。その為、EUの廃棄物エネルギー業界団体がこのメタン削減政策を歓迎しています。欧米政策は、このメタン削減政策に他国の参画を強く要望しており、COP26でこの議題が本格的になると、他国でも廃棄物のエネルギー活用が活発化すると思われます。
https://bit.ly/2ZIXNl9

カナダの大手Libリサイクル企業「American Manganese」が、NMC-811(ニッケル-マンガン-コバルト)のEV用バッテリーから「カソード前駆体」の製造に成功したと発表しています。既にNMC-622では同じ事を発表済みです。この発表は、ニッケルリッチなLibにEVメーカーがシフトする中で、EVメーカーからバッテリーが提供された、としています。日本ではAmerican Manganese社について正確に伝わっていないと思いますが、同社は市場を通じた外部資金調達により事業を展開・継続しています。今年4月末までの会計年度第三四半期までの赤字は$3.5ミリオンですが、株価は5月以降も安定しています。色々と海外のLibリサイクル業者はマーケットを魅了する「花火」を打ち上げていますが、事業単体での黒字化を発表している所はほぼ皆無で、将来性と将来の必要性から市場での資金調達を事業継続の柱にしている所が殆どです。
https://bit.ly/3ozCIEj

フランスの「Carbios社」は、自社が開発した酵素C-ZYMEによってPETの重合体を分解(解重合)します。酵素による複数の異なったPET((透明、着色、不透明、複合材)の解重合によるリサイクルを行う事ができます。実証プラントには、バッチ式で1サイクル2トンの処理能力、PETボトル100,000本に相当します。機械的、ケミカル、につづく第三のプラスチックリサイクル、特に埋め立てられるものへの利用期待が高まっています。
https://bit.ly/3iizVLq

「ネスレ」はメキシコで軟質系プラスチック包装を処理するケミカルリサイクル工場を建設すると発表しています。この工場は英国のプラスチックリサイクル技術会社である「Greenback Recycling Technologies」と共同で行われます。両社はメキシコ工場に向け契約を締結しています。契約では、現在リサイクルされていない包装用プラスチックを対象としており、多層軟質系のプラスチックやアルミニウムラミネートプラスチックが対象に含まれます。コア技術は英国の「Enval」が開発したマイクロ波誘導熱分解技術を使用します。この技術の特徴は、プラスチック包装用のアルミニウムラミネート付きのものを石油系原料(プラスチック分解)とアルミに分ける事ができる事です。同社によれば、現在世界で唯一の技術であると言われています。初年度のリサイクル容量は約6,000トンです。
https://bit.ly/3kRZAfI

アイルランドが、OECDが提案した(この後すぐ更新される予定の)最低法人税15%へ同意する意向が伝えられています。ハンガリーと共にOECD提案の受け入れを拒んでいましたが、ここに来て同意の意向を政府高官が示しています。アイルランドの法人税は12.5%と極めて低く、かつオランダとの租税条約で配当への課税が免除されるというものがあり、Starbucks、Google、Facebook、Apple等の多国籍企業が欧州で極めて効果的な節税対策を行ってきました。これら多国籍企業の節税について違法性の疑われるものもあり、ここ数年、上記の企業向けにEU裁判所が罰金を科すケースが増えています。あまり知られていませんが、米国は国内にタックスヘイブンを持ち、イギリス、アイルランド、ハンガリー、スイス等は合法的なタックスヘイブン国ともいえる措置が多く存在しており、デューデリジェンスが重んじられる昨今、次第に流れが変わりつつあります。スイスや英国がEUに加盟しない理由の大きな1つはタックスヘイブンによる世界の資産(家の資金)の流入です。
https://yhoo.it/3in2RCh

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