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世界の環境関連ニュース(2021年8月第4週)
Recycling Todayが直近の鉄鉱石の急落の分析をしています。年末に掛けて中国のマクロ経済指標から鉄鋼原料の価格下落リスクが大きいというものと、中国政府の生産制限等による季節要因という意見でした。2023年から鉄鋼製品はEUの国境炭素税の対象になり(セメント、電気、肥料、鉄鋼、アルミニウムは対象)、移行期間の3年間は、炭素フットプリントの計算と報告義務が生じます。基本的に生産プロセスと流通全体のサプライチェーンを変更する為には、3年は短いと評価されています。中国政府が鉄スクラップの利用増を進めている中、大連商品交易所で鉄スクラップ先物契約がまもなく導入される可能性がある、と伝えられています。
▶ https://bit.ly/3y8cLfY
米国ワシントンのプラスチックリサイクル業者協会(APR)は、プラスチックリサイクルを可能とする設計を網羅した「APR優先カテゴリ」を満たす包装製品を製造する企業を表彰する新しいプログラムを開始した事を伝えています。欧州では本格的に始まっていますが、米国でもリサイクルを製品設計に盛り込む動きが本格的になっています。
▶ https://bit.ly/3z9r2dG
幾つかの専門メディアで紹介されていますが、今年9月22日から24日までジュネーブで開催されるICBR(バッテリーリサイクル国際会議:International Congress for Battery Recycling ) で新たなバッテリー向けの法律が議論されるようです。欧州委員会が新しいEUバッテリー法の提案を準備中という事で、主な変更点は、電池指令からヨーロッパ全体の規制への移行、社会的責任と環境持続可能性に関する新しい要件の追加、としています。脱炭素、資源管理、リサイクルの促進を含めて様々な規制が議論されるようで、世界の電池業界は非常に警戒している、と伝えられています。この問題は、随時アップデートしていきます。
▶ https://bit.ly/3moPy7f
ここ数年偏西風の蛇行や海洋温度上昇でスペインを中心に夏の南欧の熱波が常態化しており、原力料金が急上昇している事が問題視されています。欧州では再生可能エネルギー比率を高める数値目標が出ていますが、その中で天然ガスの需要が増加しており、価格の上昇を招いています。
▶ https://bit.ly/3k7wbNe
「Tataスチール」がインドで合弁のリサイクル工場のコミッション(運転)を開始した事は既報となりますが、面白いのはこの工場での調達に、携帯アプリの「FerroHaat app」という電子調達方式を採用している事です。支払い条件や検収条件等の細かな事は触れていませんが、電子化と効率化では先進的な取り組みだと思います。
▶ https://bit.ly/3D4dPW1
▶ https://bit.ly/3D7urMt
自動車の電動化に関するニュースは毎日のようにありますが、自動車業界自体がEVに向け大きな再編を続けている、というニュースです。世界のM&A市場は2021年上半期全体で $51.1 billion、その内、最大のセクターが自動車産業のM&Aで$26.7 billionで全体の52%を占めている、というものです。その内、4件は特別目的会社SPACによるEV関連という事です。2021年上半期にM&A市場で急速に回復したものは、新たな資金調達を目的としたSPAC、EVへの投資、全自動車関連産業のイノベーションとテクノロジーに関わるもの、としています。金額の上位10件の内、8件は米国でのものです。動き出すと(資金の回転)スピードが速いです。
▶ https://pwc.to/2Wa304b
ロイターの欧州版にて欧州政府が希土類磁石の生産を本格的に援助する政策を用意しているという事を伝えています。欧州政府が注目しているのは、永久磁石に使用される鉱物(希土類)です。需要は2050年までに10倍以上の急増となる見込みで、依存度の高い中国からの独立を目指しています。この動きは既に米国では今年に入ってから始まっています。電池だけでなく、この分野も今後はより注目されるリサイクルの領域(金属)に移っていくと思われます。
▶ https://reut.rs/3zhSyWE
Recycling Todayがバルク船の滞留問題について報道しています。コロナ対策の規制強化で特に中国を始め、各国での港での滞船期間が長くなり、既に滞留が問題になっているコンテナに続いてバルク船も可能性が高い事を伝えています。鉄スクラップ用のばら積み船は絶対数は多くないものの、他のばら積み船の滞留により影響が出ている、という事です。
▶ https://bit.ly/38bdXVw
Euractiveが国境炭素税によるロシアの影響を伝えています。このような報道というのは殆どありませんが、国境炭素税の大きな理由の一つでもあります。欧州にとってロシアは歴史的に地政学上の長い脅威であり、過去20年は経済安全保障上のパラドックスでもあったため、炭素税により大きな変化がもたらされると言われています。欧州の国境炭素税で影響を受けるのはロシア、中国、トルコ、そして英国と言われています。ロシアは自国の炭素計算を国際的に利用可能なものにするように動き始めているようです。
▶ https://bit.ly/3knE2pI
英Guardian紙がウェブサイトの「ビジネスライブ」のページで現在の、特に先進国の経済状況を端的に記載しています。英米では深刻な労働者不足、特に英国での(品物の)供給不足と在庫の低水準化、欧州でもサプライチェーンの問題は解決されておらず、日本とオーストラリアはコロナの制限とサプライチェーンの問題でやや経済的にやや後退している、という内容です。年末にかけてコモディティーが再上昇する機運が若干薄れているようです。
▶ https://bit.ly/3koJusN
世界最大のコンテナ海運業社であり2050年までにカーボンニュートラルを宣言しているデンマークの「マースク社」が、現代重工業に8隻の大型メタノール船を発注した事を発表しています。発注額は14億ドルです。2025年に4隻を追加する予定です。エタノール船は、2024年の第1四半期迄に廃止される古い船に代わるものです。8隻全てが稼働すると、CO2の発生量が100万トン少なくなると推定しています。同社は世界の海運業社の中で唯一、先進的な取り組みをしています。海運はEU ETSの対象になる事が議論されており、先取りした動きとも言えます。
▶ https://bit.ly/3msWWyp
欧州の幾つかの化学系のニュースで報じられていますが、カールスルーエ工科大学とヘルムホルツ研究所ウルム(HIU)(共にドイツ)が陽極に金属リチウムを使う超高エネルギー密度のリチウム金属電池を開発した事が報じられています。ドイツは昨年、次世代リチウム貯蔵中核研究組織(POLiS: Cluster of Excellence Post-Lithium Storage)を発表し、上記の両研究機関はその組織の一部です。金属リチウム電池は、エネルギー密度を高く出来る事は分かっていたが、電圧が不安定なのが問題視されていました。英国もそうですが、ドイツも国を上げてバッテリーのイノベーションに力を入れています。リチウム金属電池については米国での研究も複数報告されています。
▶ https://bit.ly/3ku3g6e
▶ https://bit.ly/3gyuS93
Argusが、中国が7月に輸出したリチウムイオン電池の前駆体が急増している事を伝えています。中国の7月のリチウム-ニッケル-コバルト-マンガン(NCM)前駆体の輸出は、海外の電気自動車(EV)の旺盛な需要に支えられて増加。7月に12,817トンのNCM前駆体を輸出し、前年比75%増、6月から4%増。供給不足による原料価格の上昇により、平均輸出価格は前年比13%上昇して13.80 / kg。EV化は始まったばかりなので、今後の需要は増加し続けると見られています。
▶ https://bit.ly/3zhtJtN
インド第三位の鉄鋼メーカー兼エネルギー会社であるジンダルスチールのMD(社長)がインド鉄鋼産業について見解を述べている内容が興味深いので送ります。インドは2030年までに3億トンの粗鋼生産を目指し、それだけ国内需要が急増しているという事です。中国の影響、石炭の国際流通価格、脱炭素もあり、自国の石炭鉱床を利用した石炭のガス化⇒DRI⇒EAFへの流れを示唆しています。欧州(米も)では、この生産方式が改めて注目されて投資がいくつか発表されています。欧米版は天然ガスを利用します。ドイツやスウェーデンではグリーン水素での実証実験計画が発表されています。
▶ https://bit.ly/3yfAbjH
複数の欧米メディアで取り上げられていますが、半導体の供給不足は欧州でも問題化が顕著になってきており、アジアでのコロナの影響もあり、数か月は改善の見込みがないという事です。アウディ、ダイムラー、トヨタ、フォルクスワーゲン等の欧州にある自動車メーカーの工場は、すべて今後2週間で停止に直面しており、一部は既に生産調整を実施しています。米株式市場では来年に掛けても半導体不足は続くという予測が出始めて株価に影響が出ている(投資予定の会社の株価が上がる)という事が起きているようです。
▶ https://bit.ly/3jklwPU
▶ https://bit.ly/3gCDtHF
リプトンのアイスティーで有名な「Robinsons社」が500mmlのティーボトルに100%rPETを利用し市場に投入した事を発表しています。このrPETは「Esterform Packaging Limited社」の新工場で生産され、工場は100%再生可能エネルギーを使用しています。英国で食品グレードのrPETを安全に供給できる最新の設備を備え、投資額はおよそ500万ポンドです。rPETはバージン材よりもエネルギー使用が多いのか議論があり、価格もバージン材よりも1.5倍程します。同工場では再生可能エネルギーを利用する事で、炭素発生量を抑えています。同社は、この切替えで毎年1,354トンのバージンプラスチックを節約できる、としています。欧州の有名飲料ブランドでは、rPETは既にマストになり始めています。
▶ https://bit.ly/3sQaG7e
グリーンウォッシングが法廷に持ち込まれたケースが欧米の複数のメディアで伝えられています。この問題は、今後あらゆる企業のリスクとして認識される可能性があります。オーストラリアで2番目に大きい独立石油会社である「サントス社(Santos)」は、2040年までに「クリーンな燃料」を生産し、カーボンニュートラルになる事を発表しています。しかし実際には、「2040年以降にも石油とガスを生産するつもりである」として、オーストラリア企業責任センター(ACCR)を代表し、環境アクティビストが訴えを起こしています。サントス社は、天然ガスをクリーンエネルギーと定義している事が主なグリーンウォッシングの争点です。グリーンウォッシング(greenwashing)とは、環境配慮をしているように装い宣伝することを言います。
▶ https://bit.ly/3gxk4Ik