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世界の環境関連ニュース(2021年8月第2週)
再生可能エネルギーとのエネルギーミックスの難しさを知らせるニュースです。英国の規制当局がエネルギー価格の上限を139ポンド引き上げると発表しています。これは過去6か月で2回目となります。価格の急上昇の要因はガス価格の高騰と炭素価格(ニュートラル化)への対応、としています。欧州大陸のように隣国からエネルギーを購入する手段の無い島国の特徴でもあります。この上限引き上げにより、新たに約50万人の英国人が暖房用燃料の高騰から貧困に陥る可能性があると警告しています。適用されるエネルギー価格の引き上げは、約1,500万世帯に12%のエネルギー価格の上昇をもたらすと予測されています。英国では既に約240万人がエネルギー価格の高騰による貧困者となっていると言われています。英国政府は、より安価な再生可能なエネルギー源への恒久的な切り替えを成功させる必要がある、としています。現実的には再生可能エネルギーの大半は補助金とサーチャージにより運営されています。
▶ https://uk.finance.yahoo.com/news/energy-price-cap-rise-could-130313464.html
米国での自動車燃費規制の大幅な引き上げ案のニュースです。既に欧州ではユーロ6bがスタートしていますが、米国でもバイデン政権が2026年から1ガロン当たりの燃費を52マイルにするという提案をするという事が伝えられています。この政策が実現した場合、米国環境保護庁は2026年迄に米国の新車販売の8%がEVもしくはプラグインハイブリッドになると予測しています。米国でもバッテリー需要が増加する事で、確実に材料金属の需要が増すと思われます。
▶ https://www.reuters.com/business/environment/us-epa-proposes-big-boost-vehicle-emissions-stringency-through-2026-2021-08-05/
ヨーロピアンサイエンティストが面白い記事を載せています。
温室効果ガスの発生をネットゼロにする為に「最後の25%」という、減らす事が非常に困難なモノについて、どのように対応すべきかを英国オックスフォード大学の研究チームが調査した内容を記載しています。主に3つの対策分野を上げていますが、実際にはまだ研究の余地が多く現実化できるものでは無いようです。オックスフォード大学の当該内容のリンクはこちらです。
▶ https://www.ox.ac.uk/news/2021-08-05-final-25-how-tackle-hard-reach-emissions-0
▶ https://www.europeanscientist.com/en/environment/the-final-25-how-to-find-the-hidden-greenhouse-gas-emissions/
環境問題に直接関係ありませんが、ブラジルのコーヒーが数ヵ月前の乾燥と直近の霜で大打撃を受けて、国際的なコーヒー豆の取引価格が7年振りの高値になっています。運賃の上昇もあって、引続き価格が下げる気配がないと伝えられています。スターバックスやネスレのような大手は既にヘッジをしているのでRetail価格に直ぐに影響は出ないようですが、豆(や粉)を買うコーヒー好きの方は早めに購入した方がベターかも知れません。
今週の欧州での一番のニュースは、IPCCが発表した2030年~2040年頃に地球の平均気温が1.5度程度上昇する、という報告書です。様々なメディアが大々的に報じています。11月のCOP26では、より野心的な政策が出る事が期待されている内容です。
▶ https://www.bbc.co.uk/news/science-environment-58138714
▶ https://www.theguardian.com/science/2021/aug/09/humans-have-caused-unprecedented-and-irreversible-change-to-climate-scientists-warn
米オレゴン州が「パッケージ」に対する拡大製造者責任法を施行する事が伝えられています。包装材料、紙製品、食品サービス製品をオレゴン州に販売する企業の所有者は、それらの包装材をオレゴン州でリサイクルする事、またリサイクルのインフラストラクチャを改善する為のスチュワードシップ組織に参加し、資金を提供する事が必要になります。この方式のEPRを採用する州としては全米で2番目となります。
▶ https://olis.oregonlegislature.gov/liz/2021R1/Measures/Overview/SB582
▶ https://www.oregon.gov/deq/recycling/Documents/SB582A-FactSheet.pdf
米国で独立系のLiBリサイクル会社である「Li-Cycle社」が明日ニューヨーク証券取引所に公開する事を発表しています。今年2月に「Peridot Acquisition Corp」と共同で設立した特別目的会社(SPAC)の株式公開を通じて得られた資金が5億8000万ドルに上り、資金調達を終了、Li-Cycleがニューヨーク証券市場に上場する予定です。Li-Cycleは以前、水中破砕法を用いたリサイクルを行う会社として紹介した会社です。
▶ https://li-cycle.com/news/li-cycle-aims-to-change-the-game-for-recycling-lithium-ion-batteries/
▶ https://peridotspac.com/wp-content/uploads/2021/02/Li-Cycle-Definitive-Agreement-Announcement-Press-Release-2.15.21_vF4_clean.pdf
欧州最大級の銅精錬メーカーである「Aurubis」が、オランダのフラットロール工場と英国のスリッター工場を売却する予と発表しています。この売却はAurubisが中核事業である銅の精錬、リサイクル、及び同社の非鉄ポートフォリオに集中する為、としています。前四半期の財務結果では、フラットロール工場は1,000万ユーロの営業利益を出していますが、今後、需要と価格が増える見込みである銅を中心とする非鉄に事業を集中する戦略と見られています。
▶ https://www.aurubis.com/en/media/press-releases/press-releases-2021/partial-sale-of-flat-rolled-products-segment-aurubis-signs-term-sheet-with-intek-holding
米国ダラスのEスクラップの大手「Re-Teck」が面白い取組を始めた事を発表しています。Re-Teckの子会社である「Great Focus Inc.」が、リサイクルに関して一般の人々を教育する為に、新しいゲームソフトの開発を進めています。そのゲームのコンセプトは、Re-Teckが主催するコンテストで高校生によって作成された、という事です。
▶ https://www.re-teck.com/re-teck-a-leader-in-e-waste-recycling-seeks-to-save-the-planet-through-gaming/
欧州環境庁/環境機関(EEA)によるグリーンディールの課題提起の中で、投資家を批判する声が上がっている事をEuractivが伝えています。EEAの報告書によると「消費よりも広い意味で、社会の進歩の概念を再考し、再構成する必要がある」としています。グリーンテクノロジーが資源効率を改善し、温室効果ガス排出削減に役立つとしても、技術が物質的な影響を完全に排除することは出来ない、と主張しています。投資家に対しても資産配分と期待収益についての選択を再考する必要性を訴えています。難解な言い回しですが、物質を使い続け経済成長を続ける限り、プロセスやエネルギー源が変わっても環境負荷が軽減される事が無く、そこに経済的価値を求める投資家が居る限り、カタチは変わっても環境負荷は継続する、という事です。最近欧州ではまともな科学者や哲学者は、同様な事を主張し始めています。
▶ https://www.euractiv.com/section/energy-environment/opinion/the-eea-is-right-europes-green-deal-is-unsustainable/
既に様々なメディアで伝わっていますが、米国の上院がインフラ投資法案を可決しています。道路、橋等のインフラに1,100億ドル、旅客/貨物鉄道に660億ドル、電力網に650億ドル、ブロードバンドインターネット開発に650億ドル、飲料水インフラとシステムに540億ドル、電気自動車(EV)の充電容量設備に75億ドル、です。需要が増大する見込みの全米鉄鋼協会は賛辞のコメントを掲載しています。欧州のグリーンディールも含めてかつてない規模の投資になる為、金属需要のスーパーサイクルに既に突入しており、中期的に相場に与える影響は大きいと見られています。
▶ https://www.theguardian.com/us-news/live/2021/aug/10/us-senate-bipartisan-infrastructure-bill-schumer-house-pelosi-joe-biden-us-politics-latest-updates
▶ https://www.steel.org/2021/08/aisi-applauds-senate-passage-of-infrastructure-bill/
環境団体 「Surfers Against Sewage」による報告( Brand Audit Report)が発表され、英国で自然界に投棄されるゴミのブランド別のシェアが掲載されています。ゴミ汚染の75%は12のブランド(企業の製品)だったという事です。このような調査は、最近欧米の環境団体の幾つかで行われ、年次監査報告として公開されています。12のブランドとは、Coca-Cola, PepsiCo, Anheuser-Bush InBev, McDonalds, Mondelez International, Heineken, Tesco, Carlsberg Group, Suntory, Haribo, Mars、そしてAldi、です。日本のサントリーが入っています。大手企業がプラスチックリサイクルと削減をコミットしている理由の一つです。
▶ https://www.sas.org.uk/news/exposed-dirty-dozen
本日パーム油に関する幾つかのニュースが伝わっています。ロイター電によるとマレーシアのパーム油生産が引続き減少しており、価格が高値圏を維持している、という事です。この生産減は継続すると見られています。
又、飲料の世界的な大手「ネスレ」は既にパーム油の調達と持続可能性に関する専用のページを開設していますが、今回『Beneath the Surface』というビデオでのインタラクティブなプラットフォームを提供しています。ビデオを見て、Yes, Noを回答し次に進む形式で、消費者に選択を委ねるという方法となっており、大変面白い取組です。森林保護や生物多様性という事で、真っ先に欧州でやり玉に挙げられる事が多い場所がアマゾンとパームヤシ農園です。
▶ https://www.reuters.com/article/malaysia-palmoil-mpob/update-1-malaysia-end-july-palm-oil-stocks-slump-to-4-month-low-as-output-shrinks-idUSL1N2PI09D
▶ https://www.nestle.com/csv/raw-materials/palm-oil
▶ https://www.nestle.com/beneath-the-surface
米国のパッケージメーカー「Sealed Air (ニューヨーク証券取引所上場) 」が、米国とカナダでのプラスチックの回収とリサイクルを促進するために、「クローズド・ループ・サーキュラー・プラスチックファンド(Closed Loop Circular Plastics Fund)」に500万ドルを投資した事を「Closed Loop Partners」が発表しています。Closed Loop Partnersはニューヨークの投資ファンドです。既にダウケミカル、リヨンデルバーゼル、ノバ・ケミカルズが同クローズド・ループ・サーキュラー・プラスチックファンドに2,500万ドルの投資を行っており、SKグローバル・ケミカルも1,000万ドルのコミットメントを行っています。Closed Loop Partnersは、リサイクル技術、最新機器へのアップグレード、インフラの整備に1億ドルを投入するという目標を掲げています。リサイクルのターゲットは再生ポリエチレン(PE)とポリプロピレン(PP)です。何故、投資会社がプラスチックリサイクルとファンドなのか?を理解しないと、欧米のサーキュラーエコノミーの実態を理解する事は出来ないと思います。EPRが制度化されれば、rPEとrPPは大きなリターンが期待できるからです。
▶ https://www.closedlooppartners.com/sealed-air-invests-5-million-in-closed-loop-partners-circular-plastics-fund-to-scale-plastics-recycling/
テスラが2020年のImpact reportを発行しており、ネバダ州の自社工場で本格的なバッテリーリサイクルを行い、電池1,000kWhに対し921kWh分(すなわち92.1%)の原材料をリサイクルする事を記載しています(下記リンクの26ページ)。当初は他社と協力しながら、自社のバッテリーリサイクルもネバダの工場で拡張する方針です。車のバッテリーの場合、自動車リサイクル法上、メーカーが(又はメーカーが指定した業者)回収してリサイクルする為、今後は材料確保の為にも自社で乗り出すか、バッテリーメーカーと組んで行うか、という流れになる可能性があります。テスラ、VW、ルノー、そしてノースボルトとブリティッシュボルトは、この点でかなり先鋭的に動いています。
▶ https://www.tesla.com/ns_videos/2020-tesla-impact-report.pdf
自動車部品の世界大手でタイヤ製造メーカーでもある「コンチネンタル(Continental)社」が、2022年からタイヤの生産にrPET材料を使用すると発表しています。ドイツ経済研究所(DIW)の調査によると、1トンのプラスチックの生産で2トン余りのCO2が発生し、廃棄タイヤを燃やすと2.7トンのCO2が発生する、という事です。欧州のタイヤメーカーはサーキュラーエコノミーへの対応に迫られており、ミシュランは先行してリサイクル会社に出資して取り組んでいます。日本は廃タイヤの熱利用(燃料化⇒燃焼)が60%を超えており、欧州のおよそ倍近い比率ですので、タイヤメーカーのサーキュラーエコノミーと脱炭素対応はかなり大掛かりになると思われます(が現実、今は動けない・・・・?のでは)。
▶ https://www.continental.com/en/press/press-releases/20210803-rpet-otiz/