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世界の環境関連ニュース(2021年8月第1週)
世界最大の鉄鋼メーカーの1社である「アセロールミッタル」がグループの気候行動レポートを発表し、炭素削減の為、製品製造により多くの鉄スクラップを使用する予定であることを記載しています。電子アーク炉(EAF)でのスクラップの使用に加えて、高炉-転炉(BF-BOF)製鋼でのスクラップの使用を増やす、としています。又、石炭ベースの炉法から天然ガスベースの直接還元鉄(DRI)への移行を推進する5つの技術の1つとして挙げています。注目したいのは、高品質のカーボンオフセットを購入するか、クレジットのプロジェクトを立ち上げる事が戦略に入っている事です。
▶ https://corporate.arcelormittal.com/media/press-releases/arcelormittal-publishes-second-group-climate-action-report
欧州ではプラスチック代替製品のニュースが毎日のように報道されています。プラスチック代替材料として紙ベースの製品包装を手掛けるフィンランドの「Huhtamaki Group」が、今週幾つかの製品を発表しています。今週発表されたものの一つに薬用のタブレットパッケージがあります。PVCとアルミニウムで作られた従来のプッシュ・スルー・パッケージに代わるタブレット薬の紙ベースの包装材です。製品名は「PushTab」で、FSC認定紙から作られています。同社は上場企業ですが、サステナブルの流れもあり安定して株価も上昇しています。
▶ https://www.huhtamaki.com/en/media/media/press-release/2021/huhtamaki-launches-push-tab-paper-an-industry-first-sustainable-renewable-paper-based-blister-solution-ideal-for-the-global-healthcare-industry/
▶ https://www.huhtamaki.com/en/investors/
ジャカルタ・ポストがロイター電情報として多国籍企業が行ってきたプラスチックのケミカルリサイクルの幾つかが失敗に終わった事を、企業名を挙げて報じています。過去3-4年で、大手石油/化学会社や生活用品の多国籍企業は、燃料化やケミカルリサイクルを行う為に新興企業と契約を結び取組を始めましたが、少なくとも4つの注目されたプロジェクトが商業的には失敗したか無期限延期となっている、と伝えています。大々的に花火を上げて宣伝したものの、実商業的に成功させるためには様々な問題があり、技術だけでは解決が難しいようです。特に途上国での野心的な取り組みを成功させることは、難しいようです。
▶ https://www.thejakartapost.com/life/2021/08/02/from-shell-to-unilever-plastics-polluters-back-recycling-tech-flops.html
南欧が熱波に覆われて、複数の国で大規模な山火事が発生しています。トルコは東部で山火事が発生し、ここ100年で最も悪い状況と伝わっています。偏西風の蛇行によって先月はドイツやベルギーで大洪水もありました。今まで欧州は比較的安定した気候でしたが、ここ数年は熱波や寒気団、大雨等、気象の変動が顕著です。ドイツなどでは、気候変動対策が選挙にもかなり影響しています。
▶ https://www.independent.co.uk/climate-change/news/wildfires-turkey-greece-italy-europe-latest-b1894968.html
英国の化学及び貴金属の多国籍大手である「ジョンソン・マッセイ(JM)」が、同じく英国のリチウム硫黄電池のパイオニアである「オクシス・エナジー(Oxis Energy)」の知的財産と資産を買収した事を発表しています。ジョンソン・マッセイは、また英国オックスフォードのカルハム・サイエンス・パークの敷地内の施設も引き受けます。契約は交渉後、僅か2か月の7月28日に成立しています。
▶ https://matthey.com/en/news/2021/oxis
既に一部では報じられていますが、世界最大級のリチウムイオン電池メーカーである中国の「CATL」が第一世代のナトリウムイオン電池をリリースする事を発表しています。ナトリウムイオン電池はエネルギー密度がリチウムイオン電池より劣る為、体積が増すという欠点がありますが、CATLではリチウムイオン電池との統合によるパッケージ化を考えています。また今後、膨大な量が必要で価格が上がるとされているリチウムへの依存を減らすことになります。
▶ https://www.catl.com/en/news/665.html
米国でも使い捨てビニール袋への関心が高まっています。業界団体は反対していますが、法制度化の機運も徐々に高まっています。サーキュラーエコノミーに焦点をあてた投資会社である「Closed Loop Partners(ニューヨーク)」が管理するコンソーシアムが、使い捨てのビニール袋代替品の為の小売パイロットプロジェクトを立ち上げました。2021年2月に同コンソーシアムは持続可能なバックを開発する「Beyond the Bagチャレンジ」を行い、9団体(人)の優秀者を発表しています。その中の4つがこのパイロットプログラムで使われます。パイロットは、北カリフォルニアのCVS Health、Target、Walmartの9店舗で6週間実施される予定です。現在、米国では毎年1,000億個の使い捨てビニール袋が使われており、環境負荷を低減しながら顧客のニーズをよりよく満たす小売向けのバッグ・ソリューションを構築する、という事が目的としています。具体的には、顧客のニーズに応え、その上で小売バッグの耐用年数を延ばし、バッグのライフサイクルを可視化する事です。欧州では既に進んでいますが、包装及び袋のプラスチック代替材料と製品開発は今後も活発化すると思われます。プラスチックリサイクルは、どうしても価格の高いPP、PE、ABS、PETに向かいます。PSやビニールはケミカルリサイクルか代替品が化学や石油化学メーカーを主体に一定のシェアを持つ事になりそうです。
▶ https://www.closedlooppartners.com/cvs-health-target-walmart-together-launch-in-store-pilots-tests-of-new-design-solutions-to-combat-plastic-waste/
世界的な特殊材料会社である「イーストマン(Eastman))が、生活用品の世界的大手「P&G」とプラスチック包装材のケミカルリサイクルで協力する契約をした事を発表しています。また、P&Gの一部の製品の包装に再生材料を使う事も発表しています。P&Gは材料の収集、処理、及び再利用に取り組み、イーストマンは自社のケミカルリサイクル技術を提供します。また両社は、サーキュラーエコノミーを推進してバージンプラスチックの量を減らす目的としたイニシアチブで協力します。P&Gは2030年までにパッケージを100%リサイクル可能、または再利用できるようにするという目標を設定しています。
▶ https://us.pg.com/blogs/pg-partners-with-durham-university-and-imperial-college/
「USスチール」が第2四半期の財務結果を発表しており、大幅な増益を記録した事を発表しています。純利益は10億1,200万ドルと急増しています。昨年末に「Big River Steel(BRS:アーカンソー州)」を買収しており、同社のEAFのフラットロールの生産量は年間330万トン/年、同社のラインへの投資を発表しています。この投資により自動車OEMとの提携が可能になる、としています。自動車メーカーも環境に配慮した鉄鋼製品への流れが加速しており、欧米では徐々にレンドを形成しています。
▶ https://investors.ussteel.com/news/news-details/2021/United-States-Steel-Corporation-Reports-Second-Quarter-2021-Results/default.aspx
英国で包装材料を販売する「Kite社」が2021年に英国でカーボンニュートラルを達成し認定を受けています。
事業のカーボンニュートラルで問題となるロジスティクス事業は、燃料と使用エネルギーを脱炭素化、もしくはクレジットによる排出ネットゼロで達成しています。使用するエネルギーは、風力、波力、太陽エネルギーに移行しています。又、検証済みカーボンクレジットを使用して、削減できないカーボンを相殺しています。日本では殆ど意識されていませんが、排出枠(権)の規定がない産業で自主的炭素市場から安価に長期で炭素クレジットを購入するスキームはカーボンニュートラル達成に大変重要な要素になっています。
▶ https://www.kitepackaging.co.uk/blog/kite-delivers-on-being-carbon-neutral-in-2021/
米国ワシントン州のタイヤリサイクル会社である「Prism Worldwide LLC」が「使用済みタイヤを再生ゴム又はプラスチックポリマーに変換する技術を開発(特許取得済み)」し、新たに外部から1,050万ドルの資金を調達した事が伝わっています。リサイクルされたゴムは「Prism Thermoplastic Rubber (PTR)」と呼ばれ、「ゴム又はプラスチックの製品の原料として供給する事ができる」、「最も効率的でクリーンなタイヤリサイクル技術で、需要の高い材料の再生と二酸化炭素排出量削減に貢献し、業界に大きな変革をもたらす」、としています。技術的には硫化物の「橋(鎖)」を「分解(破壊)」するのではなく、「再調整反応」をするだけでポリマーの鎖を保ったまま再生する、という方法のようです。調達資金は、新たに同技術の研究開発と商業利用の為に使われるようです。
▶ https://prismww.com/
米国とインドの地方紙がマイクロプラスチックの汚染について伝えています。マイクロプラスチックは河川や海洋に広く存在し、酒類、塩、甲殻類、或いは飲料水などの食品や飲料に広く存在しています。Friends of the Earthの報告によると、場所にもよりますが、人は1週間に5グラム程度のプラスチックを(体内に)消費している、という事です。5gというのは、クレジットカードの1枚相当の量です。インドのグジャラート州でも、科学者を中心に調査が行われ、塩の中に多くのマイクロプラスチックが混入しているというデータが出た事が報道されています。グジャラート州はインドの76%の塩を生産しています。
▶ https://www.cleveland.com/letters/2021/08/plastic-waste-is-a-huge-problem-making-profits-for-companies-but-no-one-else.html
▶ https://timesofindia.indiatimes.com/city/ahmedabad/plastic-in-salt-study-calls-for-better-processing/articleshow/85021387.cms
▶ https://timesofindia.indiatimes.com/city/ahmedabad/using-salt-you-are-taking-a-pinch-of-plastic/articleshow/85020552.cms
ゼロカーボンリチウムを生産するオーストリア/ドイツの「バルカンエナジー(Vulcan Energy)」が、ルノーとのオフテイク契約を発表しています。このオフテイク契約によって、バルカンエナジーがルノーに5年間リチウムを供給します。ルノーグループは2026年からドイツの地熱ブライン鉱床から年間6,000~17,000トンのリチウムを受け取る予定です。バルカンエナジーは先週、韓国の「LGエナジーソリューション(LGES)」とのリチウム供給の契約を結んでいます。LGESは、ポーランドのバッテリーセル工場で水酸化リチウムを処理することが出来、バルカンは2024年半ば迄に約5,000トンの水酸化リチウムを供給する予定です。LGESのバッテリーはルノーの電気自動車に搭載される可能性があります。各国と各地でギガ工場が相次いで発表されており、コバルトとリチウムの供給は現実的にその量をカバーできないと言われています。
▶ https://vul.live.irmau.com/site/PDF/4c4b07c5-b971-4200-8a0f-747782068277/RenaultpartnersVulcanintheZeroCarbonLithiumProject