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世界の環境関連ニュース(2021年7月第2週)

韓国の「SKグローバルケミカル」が2025年迄に5億2200万ドルを投資してプラスチック廃棄物のケミカルリサイクルを行う事を発表しています。2024年迄に廃棄物の様々なソリューションを提供する米「Brightmark LLC」と協力し、韓国ウルサンに工場を建設予定です。年間の処理量は年間10万トン以上。ケミカルリサイクルで生産されたオイルは、SKグローバルケミカルの石油化学製品の燃料として使用されます。ケミカルリサイクルは、世界的にも化学(製品)工業のメーカーそのものが行うケースが増えています。
http://koreabizwire.com/sk-global-chemical-to-build-massive-plastic-recycling-plant-in-ulsan/194143

CE Delftによる調査で、EU19ヵ国で最もCO2を大量に消費する15の産業セクターと航空がEU ETSから得た利益が、2008年から2019年の間に凡そ300億から500億ユーロの利益を得ていた事をレポートしています。利益は鉄鋼セクターで最も高く(119億ユーロから161億ユーロ)、次にセメント(71億ユーロから103億ユーロ)、製油所(59〜113億ユーロ)です。これらの利益の元は、下記によるものです。
1.無料排出枠の過剰配分による利益。
2.コンプライアンスの為により安価な国際オフセットを使用することによる利益。
3.自由に取得した手当の機会(オフセット)費用(の一部)を製品価格に転嫁することによる利益。
産業(航空を除く)が2008年から2019年の期間に排出量をカバーする為に必要とされるよりも多くの無料の手当(Allowance)を受け取った為、排出量の割り当て超過による利益が生み出されました。平均して、これらの国のCO2集約型セクターは、EUETSに基づく炭素排出量をカバーする為に排出枠を支払う必要が無くなった事が理由です。これらは、新たなEU ETSの見直し時に無くなる予定です。
https://cedelft.eu/publications/additional-profits-of-sectors-and-firms-from-the-eu-ets/
https://carbonmarketwatch.org/publications/additional-profits-of-sectors-and-firms-from-the-eu-ets-2008-2019/

同じくEUの排出量(権)取引制度(ETS)からのニュースですが、現在法案の改定が進むEU ETSに家庭用暖房燃料と自動車の燃料にも炭素価格が拡大される事を懸念する声が多く上がっているという事です。このEU ETSの法案は、7月14日に提案される様々な法案パッケージの一部になると予想されています。この一連の法案パッケージは、EUが2030年迄に純排出量を55%削減するという目標を確実に達成することを目的としたものです。ただし、貧しい人々に対する負担となる事から、政治的な問題に発展する事が懸念されています。この話題と直接関係ありませんが、炭素以上に欧州(や世界)の気候に(短期・長期的に)影響を与える可能性があると欧州で伝えられ始めたものに、大西洋の「thermohaline circulation(日本語では「大西洋熱塩循環」)」の鈍化があり、しばしば欧州では新聞報道に出ます。興味がある方は調べてみる事をお薦めします。太平洋にはエルニーニョやラニーニャのような気象に影響を与える海洋温度の変化がありますが、大西洋でも今まで1000年単位で観測されない程の循環の鈍化が始まっているようです。
https://uk.finance.yahoo.com/news/analysis-europes-carbon-push-stokes-053518322.html

2021年1月1日から非OECD諸国へのプラスチック廃棄物輸出がバーゼル条約で禁止されてから、イギリスはマレーシアへの輸出が事実上出来なくなりました。2020年にはイギリスのプラスチック廃棄物の40%はトルコに輸出されました。輸出の上位3ヵ国はトルコ、オランダ、ポーランドです。トルコが先週受け入れを禁止しましたが、その1週間後のトルコ環境大臣の圧力で輸入を再開したようです。イギリスには自国でプラスチック廃棄物全量を処理する能力が無く、急速に廃棄物発電処理施設が増えています。
https://www.telegraph.co.uk/environment/2021/07/11/turkey-u-turn-plastic-waste-imports-risks-british-recycling/

廃棄物管理を始めとする様々な持続可能性のライフサイクル管理サービスを行う世界最大のプロバイダーである「TES」が、欧州最大の港であるロッテルダム港とバッテリーリサイクル施設の為の10,000平方メートルの土地借款契約を結んだ事が伝えられています。この土地はロッテルダム港の水路に隣接し40,000平方メートル(約430,000平方フィート)に拡張するオプションを備えています。既に同地区では廃棄物管理ライセンスを所有しています。新たな施設では、リチウム電池を受け取り、保管し、電池の工場生産スクラップを管理し、アルカリ電池を破砕する許可を得る予定です。施設は2022年後半までに稼働予定で、オランダで最初のリチウム電池リサイクルプラントとなり、グルノーブル(フランス)とシンガポールにあるTESのリチウム電池リサイクル施設を補完する予定です。欧州最大の港、フランスとシンガポールは、国際的な戦略的拡張計画と言えます。
https://www.tes-amm.com/battery-recycling
https://www.prnewswire.com/news-releases/tes-closes-deal-on-10-000-sqm-battery-recycling-facility-with-europes-largest-seaport-301331167.html

2020年に設立したばかりのフランスのリチウムイオン電池メーカー「Verkor社」が、2024年に16 GWhのバッテリーセル製造を実現し、2030年までに50 GWhに拡張する計画を遂行する為、1憶ユーロ(約130億円)の資金供給をパートナー企業から受けている事を発表しています。16GWhプラントの費用は約10億ユーロ(約1300億円)としており、2030年には20GWhのバッテリー製品がルノーグループに供給される予定です。工場建設は2023年に開始、稼働開始は2025年で、フル生産は2026年を見込んでいます。この資金調達は「EQT Ventures」と「Renaultグループ」が共同で主導し、フランス政府とAuvergne-Rhône-Alpes地域の参加を得ています。
https://www.verkor.com/en/verkor-brings-five-new-partners-on-board-raising-e100m-to-develop-high-performance-sustainable-battery-cells-in-france/

欧州の主要リサイクル団体が共同でリチウムイオン電池の火災に関する調査レポートを発行しています。エグゼクティブサマリーでは「廃棄リチウムイオン電池の火災が続く現在の状況はバッテリーとWEEEを管理する業界に影響を与えており、引き起こされる火災は廃棄物管理施設にとって非常に深刻な問題になる可能性がある」、としています。「今後数量が増えるにつれ、毎年数百万ユーロの費用がかかる事が予想されている」、としています。レポートは又、「WEEEを含むバッテリーによる火災のリスクをゼロにする魔法のような方法は無い」と結論付けています。イギリスでもLiBの火災事故があり、廃棄LiBの入札枠が無くなった業者がある旨聞いております。
https://www.euric-aisbl.eu/images/Position_papers/RECOMMENDATIONS_TACKLING_FIRES_CAUSED_BY_LITHIUM_BATTERIES_IN_WEEE_formatted_-_FINAL-8July2021.pdf

EU再生可能エネルギー法の改定案発表を前に様々な環境団体からコメントが出ています。日本の再生可能エネルギー発電でも伸びが予測されている木質バイオマスに関しても、世界最大の環境団体の1つであるモンガベイが見解を発表しています。業用木質ペレットの世界需要は2017年の1,400万トン超から2027年までの10年間に、2倍以上の3600万トンになると予測されています。この問題のヨーロッパの政治家の本音は地政学的に石炭廃止が第一目的なので、科学的な判断がなされる可能性は少ないようです。
https://news.mongabay.com/2021/07/the-science-of-forest-biomass-conflicting-studies-map-the-controversy/

欧州委員会と欧州対外行動局(EEAS)は企業によるデューデリジェンスの取り組みを強化するガイダンスを発表しています。このガイダンスは、EU域内の企業が国際基準に沿って業務とサプライチェーン内の強制労働に対処するデューデリジェンスに関するものです。今後このガイダンスに従い、EU企業が事業とサプライチェーンにおける持続可能性への影響を特定、防止、軽減、および説明することを要求する強制的なデューデリジェンス義務(法律)を導入する事になります。
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_21_3664

7月14日、EU委員会が2030年に温室効果ガスを1990年比で55%削減する為の一連の法案パッケージを出しました。主要な部分のみ記載します。

EU排出権取引制度(ETS)については以下:
・航空の無料排出枠を段階的に廃止する事で調整。
・EU ETSに初めて輸送部門の排出量を含める。
・道路輸送と建物の排出削減の為に別の新しい排出権取引システムが設定される。
・土地利用、林業、農業に関する規制により、2030年までに3億1000万トンのCO2排出量に相当する炭素除去の目標を設定する。
・2030年までにヨーロッパ全体に30億本の木を植える計画を立てる。
・バイオエナジーの使用に関する持続可能性の基準が強化される。
・加盟国は木質バイオマス使用のカスケード原則(繰り返す事で自然の劣化防止し効率的、持続的に運用する事)を尊重する方法で援助スキームを設計する。
・全加盟国の年間の省エネ義務をほぼ2倍にする。
・自動車とバンのCO2排出基準の強化。新車の平均排出量を2030年から55%、2035年から100%削減する必要がある。つまり2035年からは100%電気自動車か水素燃料電池車しか新車販売できない。
・航空燃料はブレンドする持続可能な航空燃料の増加。
・船舶が使用するエネルギーの温室効果ガス含有量に上限を設定する。持続可能な海上燃料とゼロエミッション技術の普及の促進。(ヨーロッパの港に寄港する船舶対象)。
・エネルギー製品の税制改革。エネルギー課税指令の改正をすることを提案。クリーン技術の推進。 ・炭素国境調整メカニズムの導入。
・社会気候基金の導入。上記法律の移行で影響を受ける中小、零細企業の支援。EU予算によって賄われ、建築及び道路輸送燃料の排出権取引の予想収益の25%に相当する金額を使用する。2025年から2032年の期間に加盟国に722億ユーロの資金を提供。
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_21_3541

大手鉄鋼メーカーの「アセロールミッタル(Arcelor Mittal SA))が、世界初の大規模なゼロ・カーボンによる鉄鋼生産プラントを建設する事が、複数のメディアで伝えられています。投資額は10億ユーロ(12億ドル)で、スペイン政府との覚書に署名した、とされています。Gijonの自社工場でグリーン水素を使用して鉄鉱石を処理するラインを建設する予定です。再生可能エネルギーの電力を使用して年間160万トンのゼロ・カーボン鋼を生産する為にSestaoの工場に供給する、としています。
https://www.bloomberg.com/news/articles/2021-07-13/arcelormittal-signs-mou-for-large-green-steel-plant-in-spain

米メイン州が、州で販売される包装(パッケージ製品)の生産者に、拡大生産者責任(EPR)を課す法案を可決しています。この動きは米国の州としては初のものです。リサイクル業者には、自治体による支援を行うパッケージスチュワードシッププログラムを提供します。支援資金は生産者が負担します。メイン州の環境保護局(ME DEP)を介し、リサイクル業者はスチュワードシップ組織と契約します。これにより、リサイクルが促進される事になる仕組みです。この動きは徐々に広まると言われています。
https://mainelegislature.org/legis/bills/getPDF.asp?paper=HP1146&item=11&snum=130

EUの気候変動対策法案パッケージを受けて、ロイターが非鉄需要増を伝えています。アナリスト予測として、地球温暖化を2℃未満に制限するシナリオでは、今後20年間で3億6000万トンのアルミニウム、9千万トンの銅、3000万トンのニッケルが追加で必要になると予測しています。記事の内容は大したことありませんが、報道が出る事で非鉄価格への影響が出ると思われます。

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