NEWS
世界の環境関連ニュース(2021年6月第4週)
ルクセンブルクの「Befesa SA」が米国「American Zinc Recycling LLC(AZR)」を4億5,000万ドル(約500億円) で買収しました。AZRは製鉄所から出るダスト(粉塵)から亜鉛をリサイクル抽出する技術を持つ大手で、リサイクル材は高品位品(SHG)や連続亜鉛メッキ(CGG)の品質に準拠した亜鉛を生産しています。リサイクルは溶媒抽出と電解採取処理技術によって行われます。この買収でBefesa SAのスチールダストリサイクル能力は、ヨーロッパ、アジア、米国の12個所の施設で40%増加、計170万トンになります。金属価格の上昇と共に、原料調達を拡大する動きは活発な状況が続いています。
▶ https://www.befesa.com/export/sites/befesa2014/resources/pdf/accionistas_e_inversores/Acquisition-of-American-Zinc-Recycling-Corp.pdf
何度かお伝えしている包装材料大手の「Mondi社」ですが、パレットをラップするプラスチックフィルムを紙ベースのものに代替えする製品を発表しています。特許出願中のAdvantage Stretch Wrapと呼ばれる製品で、紙ベースでありながら収縮し、軽量な製品となっています。それらの特徴によって輸送中の商品を保護する能力を持っています。リサイクルしても再生品の価格が安い樹脂やフィルム&ビニール袋のように機械リサイクルが難しいものは規制が実施されるとコスト増になる為、代替材料の開発が進んでいます。
▶ https://www.mondigroup.com/en/newsroom/press-release/2021/that-s-a-wrap-mondi-s-new-advantage-stretchwrap-paper-offers-a-more-sustainable-choice-for-pallet-wrapping/
最終草案に入っている欧州再生可能エネルギー指令の改正案について、ここ1-2日で様々なニュースが流れています。木質バイオマスに関しては、燃料の持続可能性の保証を適用する発電所のサイズを20メガワットから5メガワットにまで下げる事以外は、あまり変わらないようです。一旦、現草案は圧力で否定されたようですが、EU委員会の長であるフォンデアライエンが直接介入して草案を押し通した、と伝えられています。フォンデアライエンは日本では全く情報が流れる事はないと思いますが、過去に色々とスキャンダルがある人物でもあり、EU委員長にも突然(予想もされていなかったが理事会から)推薦された経緯のある方です。「結果的」に彼女が2019年にEU委員長になってから脱炭素&サーキュラー法案が次々に通っているように見えます。
▶ https://euobserver.com/climate/152174
▶ https://www.euractiv.com/section/energy/news/leak-eus-draft-renewable-energy-law-meets-criticism-from-industry-ngos/
デンマークのコンサルタント会社「Sea Intelligence」が世界の主要な海上貨物ラインの収益レポートの概要を出しています。2021年第1四半期は前海上貨物ラインの経常利益が大幅なプラスを記録しています。7社が10億ドル、3社が20億ドルを超える経常利益を確保しています。過去10年で5億ドルを超える経常利益は数回のみだった主要11社のQ1の経常利益の合計は161.9億ドルとなり、これは過去数十年からみても「驚異的」な収益です。コンテナ価格が急上昇している理由の1つです。
▶ https://www.sea-intelligence.com/press-room
スキンケアの高級ブランドの「Molton Brown」が、パッケージの返還スキームを始めると報じられています。返還スキームでは、インセンティブとして300mlのボトル、或いは合計300mlのボトルを返品した場合、次回に製品を購入する時に10%の割引を受けられる、としています。化粧品やスキンケアには適用されませんが、欧州ではEU指令2019/904によって、2024年12月31日から食品及び飲料容器に拡大製造者責任(EPR)が適用される為、プラスチック容器に対する企業の責任が益々重要になっています。
▶ https://www.globalcosmeticsnews.com/molton-brown-launches-recycling-reward-scheme/
クリーンエネルギーアソシエイツが発表したデータによると世界のリチウムイオン電池セルの生産能力は2025年までに2,500GWhを超えると予想しています。2020年にコロナの影響で世界のエネルギー貯蔵市場が4%縮小したが、リチウムイオン電池の実装は2019の17 GWhから2020年には 21 GWhと、およそ24%増加した、という事です。今後、大幅な生産能力の増強によりサプライチェーンが複雑化される事で材料価格が上がる、としています。英語のサマリーは一番下のリンクから登録する事でダウンロードできます。
▶ https://www.einnews.com/pr_news/544367320/latest-energy-storage-survey-projects-global-lithium-ion-battery-cell-production-capacity-to-exceed-2-500-gwh-by-2025
▶ https://www.cea3.com/cea-blog/energy-storage-system-supplier-market-intelligence-report-h1-2021
プラスチック代替材として植物繊維が注目される中、以前もご紹介した「Pulpac社(スウェーデン)」より食品グレードに対応したセルロースファイバー用乾式成形生産システムが発表されています。セルロース繊維から食品用の品質に合致するスプーンの製造を開始します。年間生産能力は2億3000万個(スプーン数)で、2021年7月1日にEU全体で施行される使い捨てプラススチックスプーンの需要を満たす事が目的です。Pulpac社はセルロースの成形技術を開発する企業で、低コストで高性能の繊維パッケージ、プラスチック使い捨て製品の代替品を開発しています。欧州では食品用に使われるプラスチック代替製品や材料の開発が大きく進んでる事と同時に、その製造についても一日の長があります。
▶ https://www.pulpac.com/news/
ウェブサイトWeste Todayによると、米国でのrPET需要の増加に伴い、廃棄ペットボトルのベール需要が増加し価格が上昇している、という事です。ミネソタ州では2021年の第一四半期だけでベール価格が2倍近くなった、と伝えられています。欧州でも価格が上昇しており、ボトル用食品グレードのrPETは1トンあたり1,400ユーロ近い価格になっています。rPETはボトル用のグレードだけでなく、食品トレイやパッケージ用のものも需要が増えつつあり、暫くは廃棄物の供給量が追い付かず、価格が下がる予測は出ていません。
▶ https://www.wastetodaymagazine.com/article/strong-pet-demand-challenges/
英国南部のポートランドで廃棄物発電プラントの計画を発表している「Powerfuel社」が、英国環境省との協議を開始した事が伝えられています。予定している工場の処理能力は年間最大202,000トン、都市から出る一般廃棄物と商業産業廃棄物の両方を固形燃料(RDF)化して焼却、エネルギーとして利用します。廃棄物のエネルギー利用で使用されるRDFの需要も増しています。最近、英国では廃棄物がインドやベトナムに違法に輸出されている事が一般紙でも取り上げられ問題となっており、更に廃棄物の行き場としてのエネルギー活用がここ1-2年で急激に活発化しています。
▶ https://www.letsrecycle.com/news/latest-news/consultation-on-portland-efw-application-opens/
6月22日に世界鉄鋼協会が発表したデータでは、2021年5月の世界の鉄鋼生産量は過去18カ月で最高を記録しており、需要は急回復している、としています。米国でもアメリカ鉄鋼協会(AISI)によるデータでは2021年6月19日までの週で米国全体の鉄鋼生産稼働率が82.9%に達し184万トン弱の国内生鋼生産が行われた、としています。米国内のスクラップ需要も堅調を維持している、という事です。
▶ https://www.worldsteel.org/media-centre/press-releases/2021/may-2021-crude-steel-production.html
米国大手スーパーマーケットの「ターゲット(Target Corp))が6月22日に持続可能性戦略を発表しています。Target Forwardと名付けられた戦略で、「公平で再生可能な未来を共創することを目指す」としています。代表的なものは、2040年までに同社ブランドの製品を100%循環型に設計し、高耐久性、修理可能、リサイクル可能な製品とする事、2040年までにネットゼロを達成する事、が含まれます。米国大手企業でも欧州と似たようなコミットメントをする所が増えています。
▶ https://corporate.target.com/article/2021/06/target-forward
スチレンやABSの大手メーカー「INEOS Styrolution」が、選別機械メーカー「TOMRA」と協力して開発した純度99.9%の再生ポリスチレンを発表しています。リサイクルはTomraのNIR選別装置を利用して機械的に行われます。ポリスチレン(PS)は機械的なリサイクルで高純度、かつ食品用に利用出来るグレードの再生材を作る事は困難とされていました。その為、画期的なプロセスと言えます。PSのリサイクルでは、その他に欧州プロジェクトとして「PolyStyreneLoop」があり、最近工場がオランダで稼働したばかりです。技術はケミカルリサイクルの一種である「CreaSolv®」という技術を使っています。INEOS Styrolutionは従業員約3,600人、10か国で20か所の生産拠点を運営しています。
▶ https://www.ineos-styrolution.com/news/INEOS-Styrolution-offers-mechanically-recycled-polystyrene-developed-in-close-collaboration-with-TOMRA
Toy用ブロックで世界最大手のレゴ(Leg)社がリサイクルPETで作られたブロックのプロトタイプを発表しています。プロトタイプは米国食品医薬品局(FDA)、及び欧州食品安全機関(EFSA)が承認したプロセスを使用する米国のサプライヤーから供給されたリサイクルPETを使い、品質、安全性、遊びの要件を満たすものである、としています。レゴグループは持続可能性戦略として2022年までの3年間で最大4億米ドルを投資する計画です。
▶ https://www.lego.com/en-gb/aboutus/news/2021/june/prototype-lego-brick-recycled-plastic
▶ https://www.lego.com/en-gb/aboutus/sustainability
7月14日に草案が提出予定のEUの海運業に関するグリーン燃料規制(指令/法)、通称「FuelEU Maritime」についてリークされた内容が一般紙で取り上げられています。要約すると、業界団体の猛反発があり現実的に水素やアンモニアという脱炭素燃料への切替えは難しく、LNGとバイオ燃料の比率増加による緩やかな脱カーボンへの規制になりそうだ、という事です。航空機のように直接燃料規制ではなく「温室効果ガス強度」を設定する「目標ベース」のアプローチになる、という事です。EUは2030年までに温室効果ガス排出量を少なくとも1990年比で55%削減し、2050年までに気候中立になるという目標を設定しており、2050年までに輸送部門からの排出量を90%削減する必要があります。
▶ https://www.theguardian.com/environment/2021/jun/23/eu-policy-to-cut-shipping-carbon-emissions-would-be-disaster-leak